「よーし!てめぇら今日はその辺にするぞー!片付けろー!」
練習メニューをこなしていた翔希を始めとする部員達はキョトンとした顔で雷蔵を見ていた。
それもそのはずいつもは19時頃に終わっている練習を17時に片付けろと指示したためだ。
「まあ、たまにはそんな日もあっていいんじゃないかな?とにかく片付けようぜ」
「おっ!いい声掛けだ!キャプテン流石だな!」
3年生が全員退部したため、2年生ながらキャプテンとして選ばれた山内豊がキョトンとしていた翔希達に片付けるよう促したのを見て雷蔵がサムズアップをしつつ冷やかす。
「俺あんまキャプテンって呼ばれるの慣れてないんで冷やかさないでくださいよ…」
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「えー今日は早く切り上げるが明日は練習試合だからな各々準備しておけよ!」
「「「…………………」」」
「ん?なんだ?反応悪いなお前ら。どうした?」
「いやポジションとか結局どうするか決められてないのに急に監督が言い出したのでビックリしてると思いますよ」
キャプテンの山内がそう口を開くと、そういえばそうだなと呟く。
「まああれだ。三野と北原と真田に3イニングずつ投げてもらうぐらいしか決めてなかったわ。まあ後は俺の方で考えるから明日のお楽しみだな。悪いな」
「あと俺は試合は楽しめがモットーだからサイン出さねぇ!実際にグラウンドに立って闘ってるのはお前らだ!だから考えて楽しめ!そして勝て!以上だ!」
部員達は雷蔵の奇想天外な部分に慣れつつあったが、もう考えて突っ込むことをやめた瞬間であった。
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「昨日、僕たちに勝てって監督言いましたよね」
「それがどうした?」
「向こう、普通に3年生がいて、こちらに3年生いないんですが大丈夫ですかね?」
「まあなるようになる、こんなことで簡単に負けるようなヤワな練習はさせてないぜキャプテン」
そう言われ雷蔵が顧問になってからの苦しい練習を思い出しハッとする。そうだ俺たちはいっぱい練習したんだと。
しかし試合が始まると1回表いきなり先発の三野がコントロールを乱し四球が絡み5失点してしまう。
1回表が終わり守備に戻ってくるチームの足取りは重く、悪い空気が流れる。
静かで重い空気が流れており各々水分補給などしているのを見て雷蔵は敢えて何も声はかけなかった。
(まあ確かに山内の言う通り厳しい。けどこれも経験だ。こういう空気をどうするか、チームを見極めたいからな。)
「よし!じゃあ取られた分取り返していきますか!」
そう声を出したのは1番バッターとして用意をしていた翔希だった。
「まだまだ1回ですよ!1イニング1点ずつでも9点取れますから」
その翔希の声に続いたのは真田だった。
(クソ!何1年に励まされてんだ…消去法のキャプテンだとしてもチームを盛り上げるのは俺なのに)
「よし!北原と真田の言う通りだ!どんどん打って三野を助けていこうぜ!」
その3人の声を聞き一気に盛り上る薬師ベンチ、翔希と真田と意外な人物達が熱い性格をしていると分かっただけでも十分だなと雷蔵はそのまま視線をバッターボックスに入る翔希に目を向ける。
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「お願いします!」
バッターボックスに入る前に球審に挨拶し左バッターボックスに入る。
(確かに初回に5失点したけどこんなの野球が出来ないことより全然マシや!!)
相手チームのバッテリーが選んだ初球はアウトコースのストレート。それを翔希は狙い打ち振り抜き3塁線を破るツーベースを放つ。
その後2番の1年生増田大輝、3番の真田が連続四球であっという間にノーアウト満塁でバッターは4番の山内。
山内は初球ストライクを取りに来た甘い球を叩いて走者一掃のツーベースヒットで3点を返す。
「北原、初球狙ってたのか?」
「まあ様子見してくるためにアウトコースにストレート来たらいいなぐらいで待ってたんですけどまさか本当に来てくれるとは思わなかったですね、まあおかげでピッチャーがあんまりしっくり来てないように思い込んでくれたので良かったです」
「おま、そこまで考えてやがったのか」
雷蔵は思わず驚いてしまう。1番バッターに勢いをある者を据えようと考えていた時フリーバッティングで鋭い打球を放っていた翔希を1番に据えたがそこまで考えているとは思っていなかったからだ。
その後三野が立ち直り打線も試合をひっくり返すことに成功し、6-5の1点リードの4回表に翔希がマウンドに上がった。