夜の秋葉原は人気が無く、店のシャッターも降り、町全体がとても静かだ。そんな夜の町にはギターを背負った銀髪の目付きの悪い青年が徘徊していた。
それは母である妖主からの連続してカゲヤシを刃物で襲う犯人を探せという命令を受けた阿倍野優だった。
優「クソ!昼から歩き回ってるが、それらしい奴なんて一人もいねぇ!本当にカゲヤシを刃物で襲ってるやつなんているのかよ・・・」
そうぶつぶついいながら人通りのない路地裏を歩いていると嗅ぎ覚えのある臭いがしてきた。自分が何度も嗅いだあの臭い・・・
優「こりゃあ、血の臭いだな・・・! それもカゲヤシの・・・」
優「だとしたら・・・ ビンゴだぜ!(ニヤッ)」
そうと分かれば急いで優は臭いの元へと向かうのだった。
路地裏の奥では黒いコートと白いスーツを着用し、白髪のオールバックの髪型をした壮年の男と地面に倒れているカゲヤシがいた。
???「こいつも我を満足させてはくれなかったか・・・」
目の前で倒れている末端と思われるカゲヤシを見下ろし、そんなことを呟き、立ち去ろうとした時、背後から殺気を感じ、振り向くと自分に向かってギターで殴りかかろうとしている男がいた。
優「おらぁぁぁ!」
ブォン!
???「ふんっ」
ヒュッ!
優は凄まじい勢いで殴りかかるも、簡単に避けられ、しかも、それを鼻で笑われてしまった。
優「ちっ!外した!」
???「いきなり、背後から襲うとは・・・ 随分と無作法な者だ」
優「あぁ? てめぇだな? 最近ずいぶんと俺らカゲヤシ相手に舐めた真似してくれてる奴は」
???「ふん 少し遊びの相手をしてもらおうとしただけなのだが、あまりにも弱いのでな カゲヤシと言ったな? 人間より強いとは聞いていたが、期待はずれだったぞ」
優「なら、良かったなぁ、俺はそこに倒れてるやつとは格が違うぜ?」
???「・・・だといいがな その言葉が偽りだった時は貴様がこうなることになるぞ?」
優「なっ!?」
そう男に告げられ、倒れているカゲヤシにふと目線を向けるとそのカゲヤシは夜にも関わらず灰となって消えていってしまった。
???「貴様らは死ぬと灰になるらしいな」
優「一体、何をしやがった!」
???「斬っただけだ、今までは殺す前に逃げられてばかりだったが・・・ 久しぶりに肉を斬る感触を味わえた」
優「へぇ~、そりゃよかったな?だが、俺がさっきの奴と同じと思うと後悔するぜ?」
???「弱い犬ほどよく吠えるものだ」
優「てめぇ!ぶっ殺してやるよ!」
そんな軽い口調で挑発され、優は怒りのままに飛びかかる。しかし攻撃しようとした瞬間、優は腹部にドガッ!と強烈な蹴りをいれられ、ふっ飛び、ドサッと崩れ落ちてしまう。
???「どうした?そんなものか?」
優「クソッ・・・!なんだ今の蹴りの威力は!?」
???「あの程度の蹴りで狼狽えるな、情けない」
優「なっ!?上等だぁ!」
優はそういいながらギターに渾身の力を込め、男の頭部に目掛けて振り下ろす。ギターが男の頭に当たる瞬間、優は勝ちを確信する。しかしそうはならなかった。
ガキン!
優「!?」
コロン、コロン
気づいたときにはギターが弾き飛ばされ、地面に転がっていた。そしていつの間にか男の手には西洋風の剣が握られていた。
???「今の攻撃は良かったぞ 我も久しぶりに剣に力を込めて振ったわ」
優「一体どこからそんなもんを!?」
???「お前には説明したところで理解できんさ」
優「この・・・・!!! クソがぁぁぁ!!!」
???「その殺気や良し」
優はそうして防御もかなぐり捨て、突っ込んでいく。しかし、その攻撃はものの見事に避けられ、剣で受け止められ、弾かれ、全く当たらない。
優(クソ!当たらねぇ!なんでだ!)
ブォン!ブォン!
風切り音ばかりが響き、なかなか当たらない。それに対して、男の方は汗一つかかずに余裕の表情でかわしている。
???「なんだ?全く当たらんではないか はぁ・・・ 期待はずれだ、少しは楽しめると思ったのだがな・・・」
優「まだだ!俺はこの程度で・・・!」
???「だが、お前のさっきの良い攻撃に免じて、我の本当の姿を特別に見せてやろう」
???「このゾルトゲインのな」
ゾルトゲイン「はぁぁぁ!」
ゾルトゲインは剣を掲げると剣から黒い煙の様なものがゾルトゲインの体を覆い始める。そして少しずつ煙は消えていき、煙の中からは騎士の様な姿をした怪物が姿を現した。
優「な、なんなんだ・・・! こいつは・・・!」
ゾルトゲイン「これが我の本来の姿! 我はこの世に凶乱をもたらす武装魔!魔剣ゾルトゲインなり!」
目の前の怪物は不気味な声で自身の名を高らかに叫ぶ。
優「魔剣!?武装魔!? なんなんだよ一体!」
ゾルトゲイン「ふん、動揺している場合か?」
優「っ!」
ザシュッ!
優「がはっ!」
ゾルトゲインは動揺している優に容赦なく斬りかかり、優の右肩を斬り裂く。しかし、咄嗟に後ろに飛ばれ、致命傷には至らなかった。
優の肩は傷が塞がることはなく、血が滴り落ちている。
優(クソッ!傷が直らねぇってのはこういうことか!)
優は本来なら既に修復が始まっているにも関わらず、一向に治らない傷を見て苦々しい表情をする。
ゾルトゲイン「手傷を負ったとはいえ今の攻撃で致命傷に至らぬとはな 今、我は本気でお前を殺す気で斬ろうとした お前はそれなりの価値があるのやもしれんな・・・」
優「んだと!」
ゾルトゲイン「だが、それでも足らぬ」
ゾルトゲインはそう告げると再び自分に向かってくる優に対して神速の斬撃で全身を切り刻む。
優「ぐああぁぁ!!」
優(ちく・・・しょう・・・!)
ドサッ!
目にも止まらぬ速度の剣捌きを前に優は為す術もなく地に顔を着けることとなった。
ゾルトゲイン「ふん 急所は外しておいてやった 次会うときはもっと強くなっていることを期待している・・・さらばだ」
ゾルトゲインは姿を人間の姿に戻すと闇の中へと消えていった。
優「あの・・・や・・・ろう・・・!」
優「クソッ・・・お袋に・・・伝えねぇと・・・」
優は悔しさに震えながらも、カゲヤシとしての仕事果たすため、傷ついた体を引きずりながらカゲヤシのアジトに向かうのだった。