第二章 甘い逃避
真夜中の秋葉原は人気もなく、静寂のみが広がり、ただ街を闇が包んでいた。
そんな闇の中で「ガキン!」という剣戟の音が響く。
その音の正体は武装魔との戦闘を行っている最中のアキトの剣戟だった。
アキト「クソッ!逃がさん!」
ガキン!ガキン!
蝙蝠の武装魔「ギャギャ!完全体にならないのか?」
アキト「くっ・・・!」
蝙蝠のような姿をし、両手からハサミを生やした武装魔はいかにもバカにした口調でアキトと見下ろし、アキトは苦々しい表情で武装魔を睨んでいた。
アキト(奴は俺が完全体になったらすぐに逃げる気だな・・・)
アキト(奴の核は背中・・・隙をついて一撃で仕留めなくては・・・!)
そこからアキトは武装魔の背中の核を狙おうと背後に回り込み背中に向かって斬りかかるも武装魔は即座にそれをハサミで防ぎ、アキトの間合いから距離をとり、再びアキトを見下ろす。
蝙蝠の武装魔「どうした?どうした?本気じゃないのか?それともそれが限界か?ドラグ・ルシオン?」
アキト(奴め、俺がわざと化身しないのを分かってて挑発しているな)
アキト(なら・・・)
アキト「その挑発、乗ってやろう」
ヒュッ!
蝙蝠の武装魔「!?」
そう告げるとアキトとは武装魔に対して紅龍を投げつける。
敵もまさか自分の武器を投げつけてくるとは思っていなかったため一瞬、反応が遅れるもなんとか回避する。
蝙蝠の武装魔「武器を投げつけるなんて・・・!」
蝙蝠の武装魔「・・・!奴は!?」
武装魔が回避し、下を見下ろすとそこにはアキトの姿は無かった。
アキト「油断大敵だな・・・紅龍!」
ドクン!ドクン!ドクン!
アキト「ガアァァァ!」
蝙蝠の武装魔「な!?」
武装魔が声のした背後へ振り向くとそこには紅龍を持ち、赤龍騎神〈ドラグ・ルシオン〉と化したアキトが自分に向かって刃を振り下ろそうとしていた。
ザシュッ!!
蝙蝠の武装魔「ギャ・・・ギ・・ャ・・・!」
ドサッ
アキト「面倒を掛けてくれる」
武装魔を背中の核ごと一刀両断し、アキトは武装魔の体が朽ちるのを待つ(武装魔の元となった武器とあればグリシードを回収するため)
シュ~・・・コロンッ
武装魔体が消滅し、小さな石ころのような物と割れたハサミが出てきた。
アキト「奴の元となった武器とグリシードか・・・」
アキト「グリシードを残すぐらいには強かったか」
アキト「依頼された訳じゃないが、カルマのところに持っていくとするか」
化身を解くとアキトは辟易した表情でハサミとグリシードを持って、カルマの元に向かうのだった。
それから日は上り、街に光が指し始めた頃、キヨタカは実家の自室でまさに幸せと言わんばかりに意気意気としていた。
キヨタカ「あぁ~明日はいよいよ瑠衣ちゃんとのデートかぁ」
キヨタカ「服もバッチリなのを買ったし、髪も切って髭も剃り残しなし!」
キヨタカ「準備OKだぜ!」
キヨタカ(もし、上手くいけば瑠衣ちゃんと深い仲に・・・ いや、もしかしたらその先だって・・・!)
キヨタカ「ふふふふふ」
キヨタカがそんなことを考えていると後ろから声がした。
キヨタカ母「キヨちゃん? どうかしたの?」
キヨタカ「!?」
キヨタカ「いつから部屋に!?」
キヨタカ母「今来たばかりだけど・・・呼んでもこないから、また引きこもったのかと・・・」
キヨタカ「ごめんごめん、ちょっと考え事してて」
キヨタカ「そう?ならご飯にしましょ?」
キヨタカ「うん」
そう母に促され、食事の用意がされているであろう居間に向かうキヨタカだった。
居間に来るとキヨタカの父がコーヒーを飲んでいた。
キヨタカ父「起きたかキヨタカ、機嫌が良さそうじゃないか」
キヨタカ「うん、まあね」
キヨタカ父「この間から随分調子が悪そうだったからな 何事もないならよかった・・・」
キヨタカ「うん、心配かけたよ」
数ヵ月前に突然部屋に引きこもっていた息子を心配しながらも父親はどこかバツが悪そうに話題を切り出してきた。
キヨタカ父「・・・・・それで朝からこんなことは言いたくないんだが・・」
キヨタカ(ヤバい・・・!またあれだ・・・!)
キヨタカ父「いや、まぁ・・・その、なんだ、そろそろ仕事に就かないか・・・?」
キヨタカ「・・・!(ギクッ)」
キヨタカ父「何も厳しいのやれとは言わない!なんならお前の好きな秋葉原で仕事を探せばいいんじゃないか?」
キヨタカ「・・・」
親の前で変に強気に出ると逆効果になり得ないため、仕事関係の話題が出た時のキヨタカは実に大人しい。
キヨタカ(そんなの・・・!自分でも分かってんだよ!)
キヨタカ母「あなた!キヨちゃん?無理しなくていいからね?」
キヨタカ「うん・・・」
キヨタカ(ふぅ 助かった・・・!)
キヨタカ父「しかし・・・」
キヨタカ母「あなたは黙ってて!キヨちゃん、今日はキヨちゃんの好きなベーコンエッグよ?」
キヨタカ「うん ありがとう・・・」
キヨタカ(朝からたまんねぇよな~ 説教とかよ~)
キヨタカ父「・・・」
キヨタカ(相変わらず父さんはうるさい・・・ そんなことより後で、母さんから交通費貰わねぇとな)
居間には気まずい空気と沈黙が続いてるにも関わらずキヨタカの心中はそんな空気とは真逆の陽気なものだった。
父が会社に行くのを見計らい、いつものように母から小遣いを貰うとキヨタカは秋葉原に向かうのだった(貰うのを父に見つかると止められる恐れがあるため)。
秋葉原に向かう電車に乗りながらキヨタカはふと社内を見る。
キヨタカ(サラリーマンばっかだな・・・この時間帯は)
キヨタカ(・・・・・・俺もいつかは)
キヨタカ(いやいや!今は嫌なことを考えるのはやめよう!せっかく瑠衣ちゃんに会いに行くんだから!)
キヨタカ(明日は瑠衣ちゃんとのデートなんだから・・・!)
キヨタカはそんなことを考えながら、必死で現実逃避するのだった・・・(ちなみに交通費や向こうでのパス代は事前に二人分、母から貰ってある)
キヨタカが秋葉原に向かってる頃、瑠衣は瞬のカフェを手伝っていた。鈴は本来のアルバイトである本屋があるため、今日は休みである。土曜ということもあり、店にはコスプレをしたオタクや様々な客が来ていた。
瑠衣「ご注文お聞きしてもよろしいでしょうか?」
オタク1「は、はい!じゃあ・・・このハヤシライスで・・・」
忍者オタク「拙者はミックスジュースで!」
オタク2「僕はハンバーグで~(デレデレ)」
キザなオタク「ふっ、俺はスパゲッティを頼むよ」
瑠衣「はい!ハヤシライス、ミックスジュース、ハンバーグ、スパゲッティのそれぞれ一点でよろしいでしょうか?」
オタク達「は~い(///)」
瑠衣「それではしばらくお待ち下さい(ニコッ)」
オタク達(ズキューン!!!)
瑠衣がメニューを聞き、ニコッと笑顔を見せると店に来ていたオタク達は全員、昇天してしまった。
瑠衣「おじさん、オーダーいい?」
瞬「あぁ、頼む」
瑠衣「ハヤシライス、ハンバーグ、ミックスジュース、スパゲッティが一つずつ」
瞬「分かった、直ぐに作るのでお客さんの相手でもしていてくれ」
瑠衣「うん!分かったよ」
タタッ
瞬(ここのところの瑠衣は本当に楽しそうだ・・・こんなあの子が見れるのも君のおかげだよ、アキト君)
そう感慨に浸りながららお客の方に向かっていく瑠衣を見つめているとある人物の姿が見える。
瞬(あれは・・・キヨタカ君?)
瑠衣「あ、いらっしゃいま・・・キヨタカくん」
キヨタカ「や、やあ瑠衣ちゃん///」
オタク達(ギロッ!)
キヨタカ(ちっ!キモオタどもが・・・お前らが瑠衣ちゃん相手にしてもらえると思ってんのか?)
そうやってキヨタカトが内心で毒を吐いてると瑠衣が話しかけてきた。
瑠衣「あれ、約束は明日じゃなかったっけ?」
キヨタカ「い、いや 約束は明日だよ」
瑠衣「なら、どうして?」
キヨタカ「あの、なんとなくここに来たいなって思ってさ・・・」
瑠衣「そっか、ならゆっくりしていってね」
キヨタカ「う、うん(///)」
そうキヨタカと瑠衣が話しているとさっきまで食事待っていたオタク達が慌てて瑠衣に話しかけてきた。
オタク1「あ、あの、その人は!?」
忍者オタク「ひ、姫!約束とは一体!?」
オタク「ま、まさか・・・!その男は・・・!」
キザなオタク「ふんっ、あり得ないね、瑠衣ちゃんがそんな男と(ガタガタガタッ)」
キヨタカ(ちっ!好き勝手言いやがって・・・教えてやるよ!俺とお前らとの違いを!)
キヨタカ「いや~実は明日二人でディズニーランドに行くんですよね~」
キヨタカはわざとらしく彼らによく分かるようにそう言った。
オタク達「!!!」
忍者オタク「ほ、本当でござるか!?姫!」
瑠衣「はい そうなんです(姫?)」
オタク達(そ、そんな~!!!)
オタク達「・・・」
キヨタカ「ふっ じゃあ何頼もうかな~」
瑠衣「あの人達は・・・」
キヨタカ「いいから、いいから!」
瑠衣「う、うん(大丈夫かな・・・)」
そうしてキヨタカは勝ち誇りながら瑠衣にコーヒーを注文するのだった。