AKIBA'S TRIP SWORD   作:ノブにまやら

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第二章 愛情

時計が午前を指す頃、カゲヤシのアジトでは先程の瑠衣が目撃した事件について話し合いが行われていた(優のみ以前の傷を癒すため療養中)。

 

怜「まさか、貴方まで武装魔を目撃するとはね・・・ 瑠衣」

 

瑠衣「母さんまで、あの怪物のことを知ってたなんて・・・」

 

怜「奴等の・・・ 武装魔のことは大体のことは瞬から聞いてるわね?」

 

瑠衣「うん、武器が人間に取り憑いた存在だって・・・」

 

怜「ええ、さっきも話したけれど武装魔は既にこの街に潜み、末端達を襲っている」

 

怜「犯人は優が見つけたみたいなのだけど、逆に返り討ちにあって今は傷を癒してるわ」

 

瑠衣「兄さんが・・・ それに、あの怪物と同じ存在がこの街にいるなんて・・・」

 

瑠衣「それにさっきの話・・・」

 

先程、怜から聞かされた話に瑠衣は心臓が止まりそうになった、その内容は自分達らカゲヤシの治癒能力が効かないこと、ランドで見た怪物と同じような存在が複数いること、人知れず人間とカゲヤシがその怪物によって襲われているという事実。

 

舞那「っていうかアンタ!何でディズニーランドなんかに居たのよ!」

 

瑠衣「え・・・? 友達と遊びに・・・」

 

瀬那「友達? それはそこの末端の子のこと?」

 

瀬那は瑠衣の後ろにいる鈴の方に視線を向ける。

 

鈴「い、いえ!、あの、私じゃないんです・・・」

 

瀬那「じゃあ、誰と?」

 

瑠衣「それは・・・」

 

瑠衣がキヨタカの名を出そうとした時に思いもよらない言葉を出される。

 

怜「アキトかしら?」

 

瑠衣「・・・!」

 

瑠衣「ち、違うよ!最近出来た新しい友達・・・!」

 

怜「あら、そうなの?案外、貴方も変わり身が早いのね? てっきりアキトと・・・」

 

瑠衣「か、変わり身が早いって・・・!?」

 

怜「どうしたの? そんなに慌てて?」

 

瑠衣「か、母さん・・・!」

 

怜は瑠衣をからかっているらしく、瑠衣はどんどん顔を赤くしていく。

 

瀬那「・・・」

 

舞那(なによ! 瑠衣の奴・・・ ママと楽しそうにしちゃってさ!)

 

瀬那は他愛もない会話を続けている怜と瑠衣を無言で見つめ、舞那の方は分かりやすく嫉妬を燃やしていた。

 

瞬「ごほん! 怜、瑠衣をからかうのも程々に・・・ 瑠衣も落ち着け」

 

瑠衣「はい・・・」

 

怜「そうね、冗談はこれくらいにして、瑠衣、その友達以外にこの話を知ってる者は?」

 

瑠衣「いないけど・・・ でもキヨタカくんは自警団のみんなに伝えとくって」

 

瞬「それはマズイな・・・」

 

怜「ええ 瑠衣、今すぐそのキヨタカという人間にそれを止めるように言いなさい」

 

瑠衣「え? どうして・・・」

 

怜「武装魔に二種類のタイプがいるわ、野生の動物の様に本能のまま生きる者もいれば、統率した組織のように集団で行動する武装魔もいるの」

 

怜「貴方が見た武装魔が後者だとしたら、自分達の存在を知った人間を・・・」

 

瑠衣「・・・!」

 

瑠衣「そんな!直ぐに連絡しなきゃ!」

 

瑠衣「ごめんなさい!母さん!わたし、今すぐ連絡して止めてもらうよ!」

 

鈴「あっ! 瑠衣ちゃん待って!」

 

瞬「やれやれ」

 

そうして瑠衣は急いで連絡をとるためにアジトの外に出ていき、鈴と瞬もその後を追って行った。

 

怜「はぁ~ 全く・・・」

 

舞那「瑠衣の奴!ロクなことしないんだから!」

 

瀬那「それより・・・ ママ、私達はこれからどうすれば・・・」

 

怜「そうね・・・ 最悪、この街を出るという考えもあったのだけど・・・」

 

舞那「街を出るって、どういうこと!? 」

 

瀬那「舞那、ママがまだ喋ってる」

 

舞那「あっ・・・ ごめんなさいママ、姉さん」

 

怜「瀬那、ありがとう 舞那もよく聞きなさい、それはあくまで最終手段よ、でも、どうやら武装魔の連中はこの街以外にも手を延ばしてきてるみたいね・・・」

 

舞那「?」

 

瀬那「だとしたら、迂闊に拠点を変えるの危険・・・ だよね、ママ」

 

怜「貴方達も夜間の外出はなるべく控えなさい」

 

舞那「え? なんで?」

 

瀬那「武装魔は基本的に夜の間に活動を始めるから」

 

瀬那「前にママが言ってたの忘れた?」

 

舞那「い、いや・・・ あの、一応事実確認を・・・」

 

瀬那「これからは忘れないように」

 

舞那「はい、すいませんでした・・・」

 

瀬那「瀬那、良い子ね 舞那も次からは忘れないようにね?」

 

舞那「はい・・・」

 

怜「それでは私の考えを伝えるわね?」

 

怜「これから武装魔との戦いに備え、全国から末端達を集めようと思う」

 

怜「本格的な戦闘が始まるのはこの街とは限らないけど・・・ 警戒を怠らないようにね」

二人「はい」

 

怜「武装魔達の前では私達は人間と大差ない・・・ 少しでも戦力差を埋めないと・・・」

 

そうして怜は表情を厳しいものにする。

 

怜「瀬那!舞那!」

 

二人「はい!」

 

怜「これから二人は末端全員に武装魔についての基本情報と夜間での行動の自粛、どうしても行動する必要がある場合は複数で行動すること、そしてなるべく民間人を巻き込まないように伝えて頂戴」

 

二人「はい!」

 

怜からの指示を聞き、二人は無言で顔を見合わせ、頷き合う。

 

そして、瀬那はある事実に気づく。

 

瀬那(ママが人間の身を案じるなんて・・・)

 

以前の母の人間に対する憎悪を知っているため、その変化に瀬那は心底驚いている(怜が変わった理由は知らないが)。

 

怜(この私が人間の心配するなんてね・・・ でも、あの子との約束だもの・・・)

 

あれ程、憎んでいた人間の身を案じる自身に怜は半ば呆れている。

 

しかし、かつて瑠衣とした約束・・・ 人間への敵対を辞めること、そしてもう一度、人間を信じるといった約束を破るつもりは怜には毛頭なかった。

 

大切な我が子と交わしたその約束を放棄するなど今の怜には考えられなかった。何より人間を憎むきっかけを作りながらも、自身が初めて愛した男であり、自身と瑠衣を捨てた瑠衣の父親を、夫をもう一度信じたいと想いを裏切ることは出来なかった。

 

怜「そして、武装魔相手では今使っているよな日常品では意味がない、ちゃんとした武器を支給しておいて欲しい」

 

舞那「ちゃんとした武器って・・・?」

 

怜「近接系統の武器ともしもの時のために拳銃類も必要ね」

 

怜「その筋のルートの情報は後で送るわ」

 

瀬那「分かった、ところでママは?」

 

怜「私はカゲヤシの本家に戻り、一度、全国にいる眷族達を召集するわ」

 

怜「一度、全員で武装魔に対する対策を話し合わないとね・・・」

 

舞那「ママ!でも、今、移動するの危険って・・・!」

 

瀬那「大丈夫よ、私はNIROの時だって逃げきれていたのだから」

 

舞那「でも!」

 

瀬那「舞那! ママの言うこと聞けない?」

 

舞那「うぅ はい・・・」

 

瀬那「でも、ママ、無茶はしないでね・・・」

 

舞那は瀬那に嗜められ、渋々といったように納得する。しかし、瀬那もその表情から不安を隠しきれてない様子。

 

怜「ふふっ ありがとう瀬那、舞那」

 

怜「・・・」

 

舞那「ママ?」

 

怜「二人共こちらに来なさい」

 

瀬那「え?」

 

舞那「な、何・・・?」

 

怜「いいから」

 

二人は先程のことを怒られのではと思いながら、恐る恐る怜に近づく。

 

ギュッ

 

二人「!?」

 

二人が恐る恐ると近づくと怜は優しく、二人を抱きしめた。

 

瀬那「ま、ママ!?」

 

舞那「え? え? どういう・・・」

 

怜「母親が娘を抱きしめるのに理由がいるのかしら?」

 

 

二人「・・・(ドキドキ)」

 

二人はまさか、怜が自分達を抱きしめてくれるとは思っていなかったので、かなり驚いてる。実際は抱きしめてもらうのは初めてではないが、それは全て自分達からの母親に対しての甘えるためのもので、母親である怜からしてもらうのは初めてだった。

 

怜「二人とも本当に大きくなったわね」

 

瀬那「ママ・・・」

 

舞那「えへへ・・・ ママ〜」

 

瀬那は今だに状況が理解できないのか、硬直しており、対照的に舞那は嬉しそうに母を抱きしめ返している。

 

瀬那(初めてだ・・・ ママが自分から・・・)

 

怜「瀬那」

 

瀬那「え、何?」

 

怜「今さらだと思ってる?」

 

瀬那「な、何が・・・?」

 

怜「貴方達には今まで何もしてあげていないのに、今さらと思われても仕方ないと思ってね・・・」

 

瀬那「・・・」

 

瀬那「・・・・ねえ、ママ」

 

怜「ん?」

 

瀬那「私達と瑠衣、どっちが大切?」

 

舞那「!」

 

怜「どちらもよ」

 

瀬那「そっか・・・」

 

瀬那(いつもと同じ答え・・・ でも本当は・・・)

 

怜「と前の私ならそう言って誤魔化してたわね」

 

瀬那「え・・・」

 

怜「一番は瑠衣よ・・・」

 

瀬那「そっか・・・」

 

舞那「・・・」

 

瀬那(そんなことは初めから・・・)

 

怜「でもね」

 

二人「え?」

 

怜「貴方達が私の娘であることを私は心から誇りに思うわ」

 

二人「・・・!」

 

怜「純粋で一途で努力家で嫉妬深くて・・・」

 

怜「一度は自分達を捨てた、こんな母親を愛してくれる」

 

怜「そんな、私の自慢の娘達よ」

 

その言葉は今までのように瑠衣に嫉妬する二人を諭すための上皮な言葉ではなく、心から愛する娘に向けての言葉だった。それらの言動は以前の怜からは考えられない言葉だった。もう一度人間を信じると決めた時から怜の中で何かが変わったのかもしれない。

 

瀬那「・・・」

 

瀬那(初めて、本音で話してくれたね・・・ ママ)

 

舞那「ママ・・・!」

 

二人は顔を赤くしながら怜を更に強く抱きしめる。

 

怜「二人ともそんなに強くすると痛いわ・・・」

 

舞那「えへへ、今だけ~」

 

怜「全く、もう」

 

瀬那「ねぇ、ママ」

 

怜「ん?」

 

瀬那「大好きだよ」

 

怜「あら、私もよ」

 

瀬那「えへへ」

 

瀬那は普段は滅多に見せない無邪気な笑顔を向けながら母を抱きしめるのだった。

 

怜「・・・」

 

怜(これは今日まで何もしてあげられなかったことへの罪滅ぼし・・・)

 

怜(これが最初で最後になるかもしれないものね・・・)

 

そうして瀬那と舞那はある意味、初めての母との親子の交流を経験するのだった。そして怜は新たに始まる戦いへの覚悟を隠しながら、娘達に出来る限りの愛情を込めて、抱きしめるのだった。

 

 

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