怜が瀬那達に作戦を伝えている頃、瑠衣は急いでキヨタカに電話をしていた。
瑠衣「キヨタカくん・・・! 早く出て・・・!」
切羽詰まった表情で瑠衣は一刻も早く電話が繋がることを願う。その後ろでは心配そうに瞬と鈴が見つめていた。
すると電話が繋がり、受話口の向こうからキヨタカの声が聞こえてきた。
キヨタカ「もしもし、瑠衣ちゃん?どうしたのこんな時間に」
瑠衣「キヨタカくん!? 怪物のこと自警団のみんなに話した!?」
キヨタカ「え!? 何!?どうしたの、そんなに慌てて・・・」
瑠衣「あの怪物について、自警団のみんなに話したの!?」
キヨタカは予想外の瑠衣の危機迫った声に驚愕する。
キヨタカ「ま、まだ伝えてないよ! みんなには話の内容は明日に伝えるって言ったから・・・」
瑠衣「本当?」
キヨタカ「う、うん」
瑠衣「そ、そっか・・・ 良かったぁ〜」
瑠衣はとりあえず手遅れではなかったことに安堵する。
キヨタカ「あの、俺、なんか怒らせることしたかな・・・?」
瑠衣「え?」
キヨタカ「なんか瑠衣ちゃん・・・ すげぇ怒ってるみたいだったから」
瑠衣「あっ! ち、違うの! 別に怒ってたわけじゃなくて・・・」
瑠衣は事情を説明するため、先程の怜から聞かされた話をキヨタカに伝えるのだった。
キヨタカ「マジで・・・? じゃあ、俺も・・・」
瑠衣「ごめんなさい!わたしがキヨタカくんを巻き込んでしまったから・・・」
キヨタカ「・・・」
キヨタカ(俺、命狙われてるかもしれないのか・・・? そんな・・・!)
キヨタカ(まだ、彼女もいない、瑠衣ちゃんとも付き合えてない、何より童貞だってのに・・・!)
キヨタカ(それなのに・・・!)
瑠衣「キヨタカくん?大丈夫・・・?」
キヨタカ「い、いや、なんでもないよ」
瑠衣「謝って済むことじゃないけど・・・ ごめんなさい・・・」
キヨタカ「い、いや、あの時、待ってろと言ったのに勝手に付いていったのは俺だし・・・」
キヨタカは必死に瑠衣に当たり障りないように気を使う。
そうして、暫くの沈黙の後に瑠衣が重い口を開く。
瑠衣「キヨタカくん、あのね、聞いてほしいことがあるんだけど・・・」
キヨタカ「な、何・・・?」
瑠衣「これからうちのカフェの近くに住むことって出来ないかな・・・?」
キヨタカ「え!?」
瑠衣「ご、ごめんね? いきなりビックリしたよね? でもなるべく私達の近くに居た方がいいって叔父さんが言うから・・・」
瑠衣「も、勿論、場所も生活費もこっちが用意させてもらうから」
キヨタカ「・・・」
瑠衣「急に言われても無理だよね・・・」
瑠衣「わたしのせいで・・・」
瑠衣「こんなことに巻き込んでしまって、本当にごめんなさい・・・」
瑠衣は責めれても仕方ないと考え、次の言葉を覚悟して待つが、返ってきたのは思いもよらない返答だった。
キヨタカ「いいよ」
瑠衣「え?」
キヨタカ「俺、そこに住むよ!」
瑠衣「で、でも・・・ いいの?家族の人には・・・」
キヨタカ「あ、ああ、大丈夫、大丈夫! 俺独り暮らしだから!」
瑠衣「でも、急な話なのに・・・」
瑠衣「本当にいいの?」
キヨタカ「勿論、全然OKだよ!」
瑠衣「・・・」
瑠衣「分かった 叔父さんにも伝えておくよ」
瑠衣「・・・キヨタカくん」
キヨタカ「何?瑠衣ちゃん」
瑠衣「本当にごめんなさい・・・ わたしのせいでこんな・・・」
キヨタカ「そんな!駅前でも言ったじゃん!瑠衣ちゃんのせいじゃないってさ!だから、瑠衣ちゃんが気にする必要ないって!」
キヨタカ(良いこと言うよな、俺ってカッコいい〜!)
キヨタカ(瑠衣ちゃんに謝られるどころか、糞みたいな実家を出れて、生活費も出してもらえて、何より瑠衣ちゃんの近くに住める! パラダイスじゃん!)
瑠衣「それじゃあ明日、うちのカフェに来てくれる?詳しく話したいから・・・」
キヨタカ「う、うん! 了解!」
瑠衣「うん、それじゃあ、お休みなさい・・・ 今日は本当にごめんね」
キヨタカ「もういいってば」
瑠衣「うん、じゃあね、キヨタカくん」
キヨタカ「うん、お休み」
そうして瑠衣は電話を切るのだった。
瑠衣「はぁ~ 良かったぁ〜」
瞬「瑠衣、どうだった?」
瑠衣「まだ、みんなには伝えてないって」
鈴「本当!良かったね!瑠衣ちゃん」
瑠衣「うん、本当に・・・」
とりあえずは最悪の事態は回避できたことに三人は一安心するのだった。
瑠衣「でも、驚いたよ 叔父さんがあんな提案してくるなんて・・・」
瞬「奴等はどこからでも襲ってくるからな、万が一のことも考えて、提案したんだ 秋葉原なら私や自警団の皆さん共、直ぐに連絡をとることができるからな」
瞬(それに、原因は瑠衣にもあるみたいだからな・・・)
鈴「でも、よく承諾してくれたよね? キヨタカさん、こんな急な話なのに・・・」
瑠衣「うん、独り暮らしって言ってたから、それもあるみたい」
瞬「そうか」
瞬「じゃあ・・・」
鈴「帰るとしましょうか!」
瑠衣「うん」
瑠衣と鈴の二人が帰宅しようとすると瞬は表情を変え、それを止める。
瞬「いや、今から行うのは説教だ」
瑠衣「え?」
鈴「へ?」
瞬「今までもそうだったが、瑠衣、お前は少々、軽率過ぎるぞ・・・」
瞬「勢いで行動することが多すぎる、そのせいでアキト君に迷惑をかけたこともあっただろう?」
瑠衣「それは・・・」
瞬「今回の件でキヨタカ君を巻き込み、下手をすれば自警団の人達も巻き込んでいたかもしれないんだぞ」
瑠衣「はい・・・」
鈴「・・・」
それからUD+では小一時間程、瞬の説教は続くのだった。
そして、瑠衣は改めて自身の軽率さを悔やむのだった。
その頃、キヨタカは自宅の自室で布団の中で震えていた。
ただし、それは決して恐怖によるものではなく、むしろ逆の理由だった。
キヨタカ「やった・・・」
キヨタカ「俺も遂にリア充の仲間入りだー!」
キヨタカ「この実家からも出ていけて、働かずに生活費も貰え、オマケに瑠衣ちゃんの近くに住むことが出来る!」
キヨタカ「できれば、同居ならベストだったんだけど・・・」
キヨタカ「まあ、この際、文句は言えないよな」
キヨタカはさっきまで命を狙われるかもしれないと怯えていたにも関わらず、安定した生活を得られる上に瑠衣の住居の近くに住めること知った途端にこの調子である。
どうやら自身にとって都合の良い情報で頭が一杯のようだ。
キヨタカ「さて、この事をどう親に話すか、色々、根掘り葉掘りって聞かれんだろうなぁ」
キヨタカ「まあ!いつも通り母さんを味方につけておけば、大丈夫だな」
キヨタカ「父さん、母さんには弱いし・・・」
キヨタカ「さてと、それじゃあ、明日に備えて寝るとしますかー」
そうしてキヨタカは眠りに就こうとする。
キヨタカ(俺の新しい人生が始まる・・・!)
キヨタカ(へへへ、キヨタカ伝説始動! なんつってな(笑))
そんな呑気なことを考えながら、キヨタカは眠りに就くのだった。
ちなみに次の日の朝にはキヨタカの目論み通り、母を味方につけ、父親には実家を出ることを承諾させることに成功するのだった(住み込みのバイトを見つけた嘘をつき、納得させた)。