━━翌朝
キヨタカは昨夜の話の詳細を聞くために瑠衣達の元を訪れ、カフェの隣にある瑠衣達の家で今後について話し合いを行っていた。
家の中のリビングでは長方形の机をキヨタカ、瑠衣、鈴、瞬で囲む様に座りながら詳細について話が行われている。
キヨタカ「つまり、マスターが以前にヤタベさんから紹介された物件に住むってことですか?」
瞬「ああ、そこに住んでもらいたいと考えているんだが・・・」
瞬は新たなキヨタカの住居については以前、ヤタベから紹介されたアパートを紹介している。元は万が一の時のために身を隠すための場所としてヤタベに紹介された物件であり、部屋はそこまで広くはないが、台所と居間と風呂付きの部屋という独り暮らしに十分な設備と広さだった。場所は中央通りの路地裏にひっそりとあり、瑠衣達の住居にも比較的近いためいざとなったらいつでも連絡することが出来る。
瞬「すまないね、急に無理なことを頼んでしまって・・・」
瑠衣「ごめんね・・・」
鈴「瑠衣ちゃん・・・ マスター・・・」
キヨタカの引っ越し問題に責任を感じる瑠衣と瞬は申し訳なさそうにし、それを側で聞いていた鈴もどこか心配そうにしている。
キヨタカ「い、いやいや!こっちは全然大丈夫なんで気にしないで下さい!」
瑠衣「でも・・・」
キヨタカ「大丈夫!大丈夫!親にも住み込みのバイトって言って話してあるんで!」
瑠衣「キヨタカくん・・・」
瑠衣「キヨタカくん、ありがとう・・・」
キヨタカ「い、いやぁ〜 なんのなんの(デレデレ)」
瞬「・・・」
鈴「・・・」
瞬(大丈夫だろうか・・・)
鈴(キヨタカさん・・・ 自分が命を狙われてるかもしれないって分かってるのかな・・・)
あまりにも能天気なキヨタカに対して瞬と鈴はこれからのことが一気に不安になるのだった。
そうして瞬は能天気なキヨタカに現実的な話を切り出すのだった。
瞬「さて、キヨタカくん、引っ越しの件はここまでにして、生活の話をしようか」
キヨタカ「え? あ、はい」
瑠衣の笑顔に悩殺されていたキヨタカは瞬の声でふと我に帰る。
瞬「生活拠点についてはさっき話した通りだ、だが、ここから生活費についてなんだが・・・」
キヨタカ「!」
キヨタカ(まさか・・・ 生活費が出せない!? 冗談じゃねぇよ!こっちはそっちが頼りなんだぞ!?)
キヨタカは内心の不満を極力出さないように瞬に質問する。
キヨタカ「それは・・・ 生活費が出せないってことですか・・・?」
瞬「ん?いや、生活費は出せるが、その他のプライベートな面での費用は出せないと言おうとしたんだが・・・」
キヨタカ「な、なんだ~ ビックリしましたよ~」
瞬「?」
瑠衣「キヨタカくん、心配し過ぎだよ それぐらいはこっちでだすからさ?」
キヨタカ「い、いや~ごめん、ごめん」
キヨタカは生活費が無事に支払われることを確認すると一気に気を良くするのだった。
瑠衣はキヨタカが生活費の心配をしていると思いながらキヨタカを諭す(心配している理由事態は大分違うが)。瞬はキヨタカの先程の様子に怪訝に頭を傾げていた。二人はキヨタカが支給される生活費を頼りにしているという考えはないらしい・・・ ある人物を覗いて。
鈴「・・・」
鈴(キヨタカさん・・・ もしかして始めから・・・)
元々、この三人の中で、唯一キヨタカにあまり良い印象がなかった鈴は確証こそないが、キヨタカの魂胆に薄々気づいていたようだ。
瑠衣「鈴、どうかした?」
鈴「え?」
瑠衣「何だか、ぼ〜っとしてたから」
鈴「う、うんうん!な、なんでもないよ瑠衣ちゃん!」
瑠衣「? そう?」
キヨタカ「?」
鈴の推測を知らない瑠衣とその元凶であるキヨタカは不思議そうに鈴を見つめていた。
それからしばらくして説明は終わり、今後についての話し合いは終了しようとしていた。
瞬「では、これで引っ越しについては終わりだ、手続きは後日伝えよう」
キヨタカ「はい、これかよろしくお願いします!」
瞬「ああ、こちらこそよろしく頼むよ」
瑠衣「うん、よろしくね、キヨタカくん」
鈴「よろしくお願いします・・・」
キヨタカは三人とこれから世話になることへの挨拶を済まし、三人と別れると中央通りに向かって歩を進める。
キヨタカ「へへっ やったぜ・・・ これから俺の夢の生活が始まる・・・!」
キヨタカ「いや~ しかし、生活費を出してもらえるわ、瑠衣ちゃんの近くに住めるわ、いいこと尽くしだな♪」
キヨタカ「本音を言えば、生活費以外の雑費を出してもらえたら最高だったんだけどなぁ〜」
キヨタカ「でも〜、瑠衣ちゃんの前でそんなこと言ったら嫌われちゃうんだもん♪」
キヨタカは気持ち悪い口調で三人の前では隠していた本音を漏らしながらニヤニヤと笑みを浮かべていた。
キヨタカ「ま、いざ金が必要となれば母さんに頼めばいいし?」
キヨタカ「俺って頭も良いし?運も持ってるし?俺ってば超人かよ!ははっ!」
キヨタカは心底、愉快そうに中央通りに続く道を歩くのだった。
━━中央通り
その頃、中央通りでは一人の少年が気怠げに道行く人達を見つめていた。
少年「・・・」
その人物は昨夜の戦いの傷の手当てをし、服の下は包帯だらけの状態のアキトであった。
アキト「暇だな・・・」
アキトは特に目的もなく壁にもたれがなら道行く人達を見ている。
最初は瑠衣か自警団に会おうかとも考えていたが、昨日のことを考えるとどうしても会おうという気にはなれなかった。
アキト「・・・」
アキト(別にあんなことは初めてではないのに・・・)
昨夜の瑠衣とキヨタカから向けられ敵意や畏怖の宿った瞳を思い出す。あの姿を恐れられるのは初めてではないのにどうしてもアキトは気にしてしまう。
アキト「俺らしくないな・・・」
アキトはそう自嘲しながら、やはり帰宅しようかと考えていると意外な人物から声を掛けられる。
?「あら、こんなところで会うなんて奇遇ね」
アキト「・・・?」
アキトが声の先に視線を向けると日傘を指し、上品な紫の衣服を着用した麗人がいた。
アキト「・・・妖主」
怜「随分、元気が無いわね? 以前、私に挑んできた時とは別人のようだわ」
アキト「・・・何の用だ」
怜「そう身構えないで、カゲヤシが人間との敵対を止めたのを忘れたのかしら?」
アキト「身構えたつもりはない、アンタを信用してないだけだ」
怜「これは随分な物言いね」
怜はアキトの刺のある言葉に気を悪くした様にも見せず、自然に受け流していた。
怜(てっきり瑠衣と一緒にいると思ったのだけど・・・ 案外、会う機会が少ないのかしら?)
怜(まあ、今はそんなことより・・・)
怜「アキト、ここで会ったのも何かの縁だわ、少し付き合ってくれないかしら?」
アキト「?」
怜「大したことではないわ、ほんの世間話よ」
アキト「・・・」
アキト「世間話か」
怜「ええ、世間話よ」
アキト「分かった、ただし、妙な真似をしたら瑠衣の母親といえど容赦しない」
怜「そう、信用してもらって何よりだわ」
アキトは警戒しつつも、怜からのお誘いを承諾するのだった。