AKIBA'S TRIP SWORD   作:ノブにまやら

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第三章
第三章 真実とささやかなワガママ


怜からの誘いを受けたアキトは怜に連れられ、それに付いていくと近くのガレージに着き、そこに黒塗りの車があり、近くには運転手とおもしき人物がいた。

 

アキト「何だこれは」

 

怜「あら、車を知らないのかしら?」

 

アキト「車ぐらい知っている、この車は何だと聞いている」

 

怜「これから向かうところは少し遠いのよ、だからこれに乗って向かうわ」

 

アキト「・・・」

 

アキトは遠いところへ向かうと聞き、警戒を強める。

 

怜「そう警戒しないで、これから行くのは私の行き付けのレストランなの」

 

アキト「レストラン・・・?」

 

怜「ええ、シーフードがとても美味しいのよ 瑠衣とも何度か一緒に行ったわ」

 

アキト「・・・」

 

怜「ふふっ、まだ、警戒しているようね」

 

アキト「・・・」

 

怜(はぁ、やれやれ・・・)

 

怜「いいでしょう、カゲヤシの長として貴方に対して危害を加えないことをここで誓うわ」

 

アキト「・・・」

 

怜「これでも、まだ信用出来ないかしら?」

 

アキト「いや・・・」

 

アキト(嘘・・・ ではないようだな・・・)

 

アキトは口調こそ人を食ったような態度の怜衣の先程の誓いを口にした時の表情がとても嘘をついてるように見えなかったため、ひとまず信用することにしたのだった。

 

二人は車に乗ると運転手が後から車に乗り、車は動き出すのだった。

 

怜「こうして話すのは初めてね」

 

アキト「最初に会ってからそう時間も経っていないからな」

 

怜「そうね」

 

アキト「そうだ」

 

怜「・・・」

 

アキト「・・・」

 

運転手(うぅ、空気が重い・・・)

 

車内には独特の重苦しい空気が漂っていた。

 

そうしていると秋葉原から随分と離れた人気のない山奥へと着いた。

 

運転手「到着しました」

 

怜「そう、ご苦労様」

 

アキト「ここは何処だ?」

 

怜「この林の先にレストランがあるの」

 

アキト「こんな山奥にか?」

 

怜「ふっ、付いてきなさい」

 

怜は微かに笑うとアキトを連れ、運転手をその場に残し、林の向こうへと進んでいった。

 

しばらくして林を越えるとそこには豪華ではないが、清楚な雰囲気のレストランが建っていた。

 

アキト「・・・」

 

怜「ほら、言った通り罠でもなんでもないでしょう?」

 

アキト「・・・」

 

アキトは釈然としないまま、怜の後に続き、レストランへと入って行った。

 

レストラン内は落ち着いた雰囲気でお洒落なビンテージ物のワインセラーやギターなどが置かれ、十数人程度の客が過ごせるスペースで机や椅子が置かれていた。

 

店内に入るとすぐさまに支配人らしき人物が現れた。

 

その人物は店の雰囲気にそぐわず、落ち着いた雰囲気の身なりの良い、壮年の男性だった。

 

支配人「これは姉小路様、よくぞいらっしゃって下さいました、今回はお嬢様はご一緒ではないようで・・・ おや、そちらの方は?」

 

怜「娘の婿候補と言ったところかしら?」

 

アキト「は?」

 

支配人「ほほほ、それはそれは、ならば当店も全力でおもてなしなくては」

 

怜と支配人旧知の仲らしく、楽しげに会話をしている(アキトを除いて)。

 

そうして二人は支配人に席に案内され、席に着く。

 

アキト「俺達以外誰もいないのか・・・」

 

怜「今日は貸し切りにしてあるの」

 

アキト「何?」

 

怜「二人きりで話したかったのでね、貸し切りにしてもらったの」

 

アキト「その口調から察すると、始めから俺をここに連れてくる気みたいだったようだな」

 

怜「ええ、部下を使って貴方が秋葉原でよく訪れる場所を調べさせてね、あんなに直ぐに見つかるとは思わなかったわ」

 

アキト「悪趣味だな・・・」

 

怜「あら、それが食事をご馳走になる相手に対する態度かしら?」

 

アキト「頼んだ覚えもないし、まだ、注文もしていない」

 

怜「それならご心配なく、コース料理を二人分をもう頼んであるわ」

 

アキト「・・・」

 

そこまで先手を打たれていては、アキトはもう黙るしかなかった。

 

怜「最近、あの子の様子はどうかしら?」

 

アキト「あの子?」

 

怜「あら、案外鈍いのね、瑠衣のことよ」

 

アキト「瑠衣のこと・・・?いつも通り森泉達と楽しそうにしているようだが」

 

怜「そう、それで?」

 

アキト「他にも俺の知り合いとも最近、交流を持つようになったらしい」

 

アキト「充実はしているみたいだ」

 

怜「・・・」

 

アキト「俺が知っているのはこれぐらいだ」

 

怜「そう、話してくれてありがとう・・・ 楽しそうなのなら、良かったわ・・・」

 

怜はアキトの話を聞き終えるとどこか安心したような表情で机の上のグラスの水を少し飲む。

 

アキト「何を考えている」

 

怜「あら、何が?」

 

アキト「惚けるな」

 

アキト「部下を使ってまで俺をここに連れてきたり、瑠衣の様子を探ったり、普段のアンタがするような言動とは思えない」

 

アキト「一体何が狙いだ」

 

怜「・・・」

 

怜「はぁ、こんな誤魔化しは貴方には効くとは思ってないけれど、あっさり本題を切り出してこられるとはね・・・」

 

怜はどこか観念したかのような表情で口を開いた。

 

怜「武装魔」

 

アキト「!?」

 

アキト(今、何て・・・!)

 

怜「というより貴方、武装魔なのかしら?」

 

怜「いえ、それとも完全体と言った方がいいかしら?」

 

アキト「・・・何のことだ?」

 

怜「先程、私に言った言葉をそのまま返すわ」

 

それはアキトに対しては今さら誤魔化しは無駄と意味する言葉だった。

 

怜「貴方は・・・ 初めからカゲヤシの力・・・ 瑠衣の血の力など手に入れていないでしょう?」

 

アキト「何・・・?」

 

怜「初めて貴方と戦った時、あの強さはカゲヤシのそれとは全く違う、いくら瑠衣の血を飲んだと言ってもあの強さはそんなレベルではなかった・・・」

 

怜「そして、貴方は・・・ あまりにも戦いに慣れすぎている」

 

アキト「・・・」

 

怜「あの戦闘センス、そして私達カゲヤシとNIROの二大勢力を相手にあれだけの人員を集め、勝利へと導いたの冷静な状況判断能力」

 

怜「そして、それだけの能力を誰にも悟らせない用心深さ」

 

怜「どう考えても一般人と呼ぶには無理があるわ」

 

アキト「だが、それだけでその、武装魔とかいうのとは限らないだろ」

 

怜「深夜の公園」

 

アキト「!?」

 

その言葉を聞いた時、アキトは深夜の公園での死闘を思い出す。

 

アキト(まさか、見られていたのか・・・!?)

 

怜「心配しなくても、あれを見たのは偶然よ、私以外の誰にも言っていないわ」

 

怜「あの近辺で、カゲヤシが武装魔に襲われているという報告を聞いて、私自身が確認するために現地を単独で調べていたの」

 

怜「そしたら、貴方と猿みたいな怪物を目撃したの」

 

怜「後は貴方自身が誰より知っているでしょ」

 

怜はそれだけ話すと静かにアキトを見つめる。

 

アキト「・・・」

 

アキト「・・・何故だ」

 

怜「ん?」

 

アキト「何故、あの姿のことを誰にも言わない、その前に武装魔のことを何処で・・・」

 

怜「昔、色々とあったのよ」

 

怜「その時に武装魔やクリサリスのことを知ったの・・・」

 

アキト「なら、あの街で起きていることも・・・」

 

怜「ええ、最初は仮定だったけど、優の報告を聞いて、武装魔だと確信したわ」

 

怜はそう話を終えるといつの間にか運ばれていたワインをグラスに注ぐ。

 

アキト「もう一度聞く、何故、俺の正体を周りに言わない・・・」

 

怜「貴方が言ったんじゃなかったかしら?」

 

アキト「・・・?」

 

怜「あの人が何処かで見ていると・・・」

 

怜「私はその話を信じ、貴方という人物を信じようと思った」

 

アキト「・・・!」

 

怜「それに、あの子を守ってくれるのなら誰であろうと関係ないもの」

 

アキト「・・・」

 

怜はアキトに対して、一つ一つの言葉に自身の思いを込め、アキトに伝える。その怜の瞳は真剣さと偽り一つ無いと言えるほどに力強い瞳だった。

 

アキトはその瞳から怜の覚悟を悟る。武装魔かもしれない自身と二人きりで会うこと事態が怜からすれば自殺行為に等しく、それほどまでの覚悟を見せる怜に誤魔化しは効かないとアキトは悟り、自身も覚悟を決めるべきだと考える。

 

アキト(もう、隠し通すのは無理だな・・・)

 

アキト「一つ、聞いてもいいか・・・?」

 

怜「何かしら」

 

アキト「アンタは俺が異形の存在と知った上でも瑠衣を守ると信じられるのか?」

 

怜「信じるもなにも、あれだけ瑠衣の肩を持っていた貴方がそれを言うのかしら?」

 

アキト「・・・」

 

怜「それに、貴方はあの子のワガママを叶えてくれたでしょう?」

 

怜「私が叶えられなかった、いいえ、叶えようともしなかったあの子のワガママを・・・」

 

怜「それだけで私が貴方を信じるのは十分よ」

 

その言葉は妖主としての言葉でもカゲヤシとしての言葉でもなく、一人の娘を想う母としての言葉だった。

 

その言葉を聞いたアキトは静かに怜に自身の真実を告げる。

 

アキト「・・・俺は武装魔じゃない」

 

アキト「俺は完全体だ、人としての自我もあるし、外見も年齢も見た目通りの18歳だ・・・」

 

アキト「俺はある武装魔を追っている、そのついでに他の武装魔達を狩っている」

 

アキト「俺の話はこれで全てだ、他に隠してることは一切ない」

 

怜「そう、話してくれてありがとう」

 

怜「ところで貴方が追っている武装魔とは、一体どんな武装魔なの?」

 

アキト「それは言わない、アンタにも他の奴らにも関係ないことだ」

 

怜「そう・・・」

 

怜はこれ以上深く聞いても意味がないと悟ったの追及はしてこなかった。

 

怜「アキト、これからカゲヤシ全体が武装魔達との抗争が始まるの可能性があるわ」

 

アキト「・・・」

 

怜「だから、お願いがあるの・・・」

 

怜「これは、私のささやかなワガママ・・・」

 

怜「あの子を・・・ 瑠衣を・・・」

 

怜「私とあの人の大切な娘を・・・」

 

怜「守って欲しい・・・!」

 

その言葉を告げた怜の表情は今までにないほどに苦しげでどこか辛そうな表情だった。

 

アキト「・・・」

 

アキト(瑠衣を守る、か)

 

アキト(ただ武装魔を殺戮することしか出来ない俺が・・・)

 

アキト(でも、そんな俺でも守れるとしたら・・・)

 

アキトは自問しつつ、静かに言葉を紡ぐ。

 

アキト「俺はあの子のボディーガードじゃない・・・」

 

怜「・・・」

 

アキト「だが・・・ もし、アンタが母として瑠衣のことを頼むなら・・・」

 

アキト「アンタのささやかなワガママを叶えてやる」

 

かつて目の前にいる女性の娘に告げた、その言葉をアキトは再び口にするのだった。

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