修行二日目、俺が目覚めた時間はもう午後になっていた。
理由はレーティングゲームは深夜に行われるらしく、人間である俺は体内時間をその夜の時間にズラす為と部長は説明した…が。
「…座学はほぼ自習ですか」
「ええ。流石にマリヒコ君の時間に合わせては少し難しいですので、私とマンツーマンですわよ」
そう。修行の時間がなんと深夜の3時半までになっていてすっかり体力がない俺だけが、午前の座学…悪魔の社会や堕天使や天使、第三勢力に関する授業は受けれないと言うわけだ…なんか申し訳ない。
故に朱乃さんと一緒に必要な所だけを学ぶと言うわけだ。
「それじゃ、私達の王に当たる『魔王』様、四大魔王様を答えてください」
「えーと…ルシファー様、ベルゼブブ様、それと…レビアタン様?とアスモウス様?」
「最初の二人はあっていますけれど…残念ですわ、レヴィアタン様に、アスモデウス様ですわ」
うっ、惜しい…ビ、じゃなくてヴィだったか、惜しい。
「マリヒコ君ももしかしたら魔王様にお逢いするかもしれませんので、名前を間違えたら大変失礼ですわよ?」
「は、はいっ」
そして座学を終えた後、俺は外にいるみんなと合流し修行に取り組んだ…
__
修行に取り組んで何日か経った後、俺は自室でベッドに寝て考え事をしていた…修行の中で俺は分かったことがいくつもあった。俺とオカ研のみんなとの実力差があり過ぎたことだ。
まず言わずもがな部長に朱乃さん。この二人はいくら俺が逆立ちをした所で敵うはずもない。
そして木場と小猫ちゃん。木場との剣術特訓じゃ一本もマトモに取れず、小猫ちゃんとの体術じゃ何発もぶっ飛ばされた。
そして肝心のイッセー…イッセーには『赤龍帝の籠手』に、悪魔の力を持っている、イッセー自身の剣術、体術は俺とドッコイドッコイといった所だが…
…そう、俺に『オーズ』の力が無ければただの人間。
魔力も練れなければ、悪魔が耐えれる様なダメージでも受ければ死ぬ。自身に伝説の龍の力もない…変なのが入ってるのは知ってるけどそれも正体不明だ。
「…はぁ、なんか寝れないや」
そんな思考に頭がグチャグチャになりそうで、俺は夜風を浴びようと思いベッドから出て、外にで始める。
「…ふぅ」
夜風を浴びて軽くため息をつく、軽い現実逃避かもしれないが、うじうじ悩んでてもどうしようもない…軽く別荘の周りを歩いた後戻ろうと思った矢先、俺の目にある人物が映る、朱乃さんだ。
噴水の近くにあるベンチに座り、本を読んでいる。
「…あら、マリヒコ君?」
「あ、こんばんはです朱乃さん。こんな夜中に何を…」
「ふふ、レーティングゲームに向けての勉強ていったところですわ。そう言うマリヒコ君こそ何をしてらっしゃいますの?」
「あー…俺はその、夜風に当たると言うか…」
うん、まさかみんなより弱いと言う現実が少し嫌で軽く歩き回って誤魔化そうなんて言えない、少し男としての維持が…
「…緊張していますの?無理も無いですわね…よろしければ横、いいですわよ」
「あ、どうもっ」
朱乃さんに誘われるがまま俺はベンチに座る…少し緊張するな。
「…朱乃さん。少し聞いてもいいですか?」
「ええ、いいですわよ」
「その…今回の修行で自分の実力とみんなの実力差が分かって。自分にオーズの力が無ければすぐやられるんだなぁと…」
…いかん、言葉が詰まってなんて言えばいいかわからなくなってくる。そんな俺をじっと見て朱乃さんは口を開く。
「そうですわね…確かにマリヒコ君がもしオーズの力を持たずにレーティングゲームに参加をすれば、相手から見ればいい獲物ですわね」
「…ごもっともです」
「それで…レーティングゲームから降りますの?今ならグレイフィア様に言えば…」
「!…いえ、それはしません。自分から参加する様に言いましたし、責任を放棄する様な真似は…」
俺は朱乃さんにそう言うと、ふふ。と朱乃さんが笑い俺に言う。
「そこですわよ。マリヒコ君にはそのしっかりとした意思がある事を自身に持つべきよ。それに今回の修行はマリヒコ君にとって無意味じゃないものですわ」
!…朱乃さんのその言葉を聞いて俺はハッ、とした…そうだよな。
今回の修行は自分とみんなの実力の差があるとかじゃなく、自分がこれから色々な事に立ち向かえる様にと取り組んだ修行だ。
そんな事を忘れて自分の弱さに嘆いていて…少し恥ずかしい。
「…朱乃さん、ありがとうございます。少し自信が付きました」
「ふふ…力になれて嬉しいですわ」
「それじゃ、そろそろ自室に戻りますね…お休みなさい」
「ええ、お休みなさい。いい夢が見れるといいですわね」
俺は朱乃さんにそう挨拶をすると自室に戻った…朱乃さんにあれ程信頼されているんだ。頑張らないとな。
__
「イッセー、マリヒコ、『赤龍帝の籠手』と『オーズ』の力の使用禁止をとくわ。存分に使いなさい」
次の日。練習を始める前に部長が俺とイッセーにそう言った。
そう、山への修行に取り組む際俺とイッセーは自信が持つ力の使用を禁止されていた…今日はそれの解禁日だ。
「最初はイッセー、祐斗と相手ね」
「はいっ!」
そしてイッセーと木場が一歩前に出る。
部長がイッセーに戦う前に籠手の力、力を2乗、3乗させる能力をギリギリまでに発動する様に言う。
「よしっ!…ブースト!」
《Boost!!》
イッセーが籠手を発動させ、構える…籠手が何度も音を上げ、最後には《Exproion!!》と音声を放った。
あの音声は力の増加を止める意味らしく、その音声の後イッセーは木場に構えを取る。
「さ、そろそろいいわね…二人とも、準備はいいかしら?」
その言葉に木場とイッセーははいっ!と答える。
「それじゃ…始め!!」
その言葉と共にまずは木場が先手を打つ、木場が『騎士』の能力を発揮し、神速による動きでイッセーに攻めより、一撃を放つが…
「うぉっと!」
「っ!?」
ガッ!!とその一撃はイッセーが腕を交互防ぐ、そしてその瞬間木場が驚いた顔を見せる、その隙を逃さないとイッセーは木場に拳を放つ。
だがスッ、と木場は軽やかに上空へ飛ぶように避け、イッセーの拳は空を切った。
「っ!?どこだ…!」
イッセーはその避けた木場を確認出来ないのか一瞬戸惑う様子を見せるも、すぐに木場を探すように首を動かす、そして上空を見上げ、木場を見つける、だが…。
ゴッ!!と木場の木刀がイッセーの頭にぶつかり、鈍い音が響き渡る。
「いっ…!」
だがイッセーはその攻撃に僅かに怯むものの後退はせず、すぐさま着地した木場を追うように蹴りを放つも、ヒュッ、と軽やかにかわされる。
「イッセー!魔力の一撃を撃ってみなさい!」
部長がそうイッセーに指示を下すと、イッセーは了承したかのように魔力を練り始める…が、大きさ自体は米粒並みだ。
「っ…こうなりゃヤケクソだぁ!!」
そう叫び、イッセーがその魔力を木場に放り投げると__
グオォォォォオオオン!!とその小さな魔力が一瞬にして巨大な物になり、木場に一直線に迫る!
「っ!!」
木場はその魔力を見ると、素早く回避行動に出る、スッ、とかわし、そして目標を見失った魔力の塊はそのまま向こうの山に飛んでいき__
ドゴォオオオオオオオオオオオン!!!…と、爆音を上げて向こうの山が吹き飛んだ…て!?
「え…ぇえええええええええ!!?」
「や、山が…抉れたぁ!?」
尚等の抉った本人は驚いた声をあげてます…いやこれ環境破壊じゃね!?
《Reset》
籠手からそう音声がなる、これはどうやら籠手に溜まった力が抜ける合図のようだ…にしてもあれヤバイなおい、下手したらこの山の付近の地図を描き直さなきゃいけないんじゃないか?と、俺が驚いている間部長がイッセーにその力を説明し終えた様で、俺に目を向ける。
「さ、次はマリヒコね、貴方の課題はオーズに変身した際の持続力。つまりスタミナね」
「はいっ、それで俺の相手は…」
俺はドライバーを装着しメダルを装填しつつ、部長に聞く。
「ええ。小猫、相手をお願いできるかしら?」
「…はいっ」
どうやら相手は小猫ちゃんの様だ…うっ、今まで殴られてきた記憶が…
「小猫ちゃん、よろしくお願いします!」
「手加減は…しません」
さて、ベルトにメダルを装填したし…俺はオースキャナーを構え…
「…変身!!」
キン!キン!!キィン!!!とメダルをスキャンする_
《タカ!》
《トラ!!》
《バッタ!!!》
《タットッバ!!タトバタットッバ!!!》
_俺はオーズに変身をし、小猫ちゃんに構える。
同時に小猫ちゃんも俺に対して構え、部長の合図を待つ…
「…始め!!」
ザッ!!とお互い同時に駆け寄る、まず小猫ちゃんがボッ!!と音を上げ拳を前に出す、その拳をギリギリに避け、俺は軽く張り手をする。
「…甘い」
が、その手を掴まれ一気に背後に回られてしまい、ギチギチと締め上げられる…っ!
「っ、ぐ…!」
それをどうにか耐え、曲げられている方とは違う方へ戻そうとする。
「っ…このっ」
小猫ちゃんも負けじと俺の腕を曲げにかかる…その隙をつくかの様に俺は真ん中のメダルを取り替える、そして素早くスキャンする!
《タカ!》
《カマキリ!!》
《バッタ!!!》
「っ!?」
そしてスキャンが完了し、真ん中の胴体が緑色に変わり、そして腕に先ほどまでトラの様な爪だった物が、カマキリの様な剣に変わる。
「ごめん!!」
そして掴まれている腕とは逆に、自由になってる左手でカマキリの剣を展開し、峰の方で攻撃をする!咄嗟にメダルを変え変身したのを驚いたのか、その隙を突いて小猫ちゃんに峰打ちが決まり、その反動で腕を離す!
「よっ!」
ザッ!とバッタの脚力で素早く離れ、カマキリの剣を両手で構える。
「…驚きました。掴まれている際にメダルを変えるとは」
「へへっ、少しは見直したか?」
「…余り調子に乗らない様にっ」
そう言うと、小猫ちゃんが脚力を利用した踏み込みで速攻で近づき、何度も拳を放つ!が、何度も何度も殴られたその拳に慣れてきたか、オーズ自体の視力が優れてるかわからないが、軽やかにかわしていく!
「…そこっ!」
ガッ!とかわした隙を見て俺はカマキリの剣の峰の方で小猫ちゃんの背中を軽く叩く!
「っ…大分いい動きをしてきましたね」
その攻撃に少し動きを止めるも、姿勢を素早く直してすぐさま殴りかかる!その動きに慣れてきて、何度もかわすも…
「…はっ」
ドッ!と唐突に俺の足に衝撃が入り姿勢が崩される…足払いをかけられたか!どうしようも出来ずに倒れてしまい、その際にトドメを刺そうと小猫ちゃんが拳を構える…
「っ…!!」
やられるぐらいならせめて一撃でも…俺はその想いで剣を振る!
「そこまでっ!!」
が、部長のその一言でお互いの攻撃がギリギリの所で止まる。
「…ふぅ、凄かったな小猫ちゃん」
「…一点に集中しすぎです」
小猫ちゃんの容赦のない一言でウッ、と思いつつも変身を解除する。
「ですが…動き自体はいいものでした、初日よりもしっかりとした動きです」
「え…そうか?」
「所でマリヒコ君、体の調子はどうですの?」
「ん?体の調子…てっ」
朱乃さんがそう尋ねる…そう言えば疲れがそこまでないな、軽い疲労感はあるもののそこまで酷い物ではない、軽く運動した後に残る程度だ。
「部長…どうやらマリヒコ君にも成長の兆しが見えてきましたわね」
「そうね…イッセーもマリヒコもお互い。いい経験を積めれたって事ね」
部長と朱乃さんの言葉に俺とイッセーは顔を合わせる…そうか、俺とイッセーは強くなれたんだ、と心からそう実感できた。
「恐らく二人は今回のゲームの要ね…二人とも、貴方をバカにしたフェニックスに見せつけてやりましょう。リアス・グレモリーとその眷属がどれほど強いのか、思い知らせましょう!!」
『はいっ!!』
全員がそう強く返事する。
そうだよな…俺は一人で戦う訳じゃない、仲間がいる、きっと勝てる、俺はそう心に強く思った。
_そして山籠りの修行を終え、戦いの時が迫ろうとしていた。