「…匙?」
「え…独也?」
俺と匙が目があった瞬間、お互い意外そうな顔で軽く硬直する。
「あら…貴方は時々匙と一緒にいる独成君ね。確かオカ研で唯一の純粋な人間の」
「え?独成はリアス先輩の下僕悪魔じゃないんですか?」
そう怪訝そうに匙が支取会長に言うと、会長は指で眼鏡を動かし言う。
「ええ、彼には悪魔の気配が無いもの」
「あのー…なんで生徒会の人がここにいるんですか?」
「うん?なんだリアス先輩。もしかして俺たちの事を兵藤達に話して無いんですか?まぁ独成ならともかく同じ悪魔なのに気付かない方がおかしいけどさ」
そのイッセーの問いに匙はそう答える。
…同じ悪魔?て事は匙と支取会長てもしかして…
「サジ、基本的に私たちは『表』の生活以外ではお互いに干渉しないことになっているのだから仕方ないのよ。それに兵藤君は悪魔になって日が浅いし、独成君も悪魔に関わってからも日が浅いわ。二人は当然の反応をしているだけ」
「…え、えーと、つまりお二人は悪魔…ですね?」
「それどころが、生徒会みんながですわ。この学園の生徒会長、支取蒼那様の真実のお名前はソーナ・シトリー。上級悪魔シトリー家の時期当主様ですわ」
疑問そうに言った俺にそう朱乃さんが説明する。
…え、えぇ!?生徒会みんなが悪魔ぁ!?しかもシトリー家!?フェニックス事件の後色々悪魔の座学や、七十二柱とかで名前は聞いたけど、まさかその人が目の前にいるとは…しかも時々廊下ですれ違ったし!
「マリヒコ君も知っての通りシトリー家もグレモリーやフェニックス同様、大昔の戦争で生き残った七十二柱の一つ。この学園は実質グレモリー家が実権を握っていますが、『表』の生活では生徒会_そう、シトリー家に支配を一任しております。昼と夜で学園での分担をわけたのです」
「な、なるほど…」
うん、後でゆっくり整理しよう、少しこんがらがってきた!
そんな様子の俺やイッセーを見て、匙が口を開く。
「少し考えてる所悪いが自己紹介をさせてもらうぜ。俺の名前は匙元士郎。まぁ独成は知ってるだろうけど兵藤は初対面だよな?そんでもって二年生で会長の『兵士』だ。まぁ会長や俺たちシトリー眷属の悪魔が日中動き回っているからこそ平和な学園生活を送れているんだ。それだけは覚えてくれてもバチは当たらないぜ?」
そうイッセーに言った後俺らに向けてもそう言う。
いつもご苦労様です生徒会の皆さん…ん?そう言えばいつも機械の修理とか頼む時匙に案内された時には匙以外の生徒会の人見かけなかったような…
「おっ!同学年で同じ『兵士』か!ちょっといいな、この学園で俺以外の『兵士』がいるって!」
と、イッセーがそう嬉しそうに言う。
まぁ気が合いそうな人に会えてよかったな…と、そんな思いとは裏腹に匙は溜息つく。
「俺としては、変態三人組の一人であるお前と同じなんてのが酷くプライドが傷つくんだけどな…」
「な、なんだと!?」
「うん、そりゃ正論だな」
そんな匙のセリフに軽くムッとした様子を見せるイッセー。
まぁドンマイだイッセー。
「おっ?やるか?こう見えても俺は駒四つ消費の『兵士』だぜ?最近悪魔になったばかりだが、兵藤に負けるかよ」
そんな挑発的に言う匙に、会長は鋭く睨みを入れて言う。
「サジ、お止めなさい」
「し、しかし会長!」
「今日ここに来たのは、この学園を根城にする上級悪魔同士、最近下僕にした悪魔を紹介し合うためです。つまり、あなたとリアスのところの兵藤くんとアルジェントさんを会わせるための会合です。私の眷属なら、私に恥をかかせないこと。それに_」
会長の視線が俺とイッセーに向けられる。
「サジ、今の貴方では兵藤君、それに独成君には勝てません。フェニックスの三男を倒したのはこの二人なのだから。__『兵士』の駒を八つ消費した兵藤君に、古代の王…『オーズ』の力を駆使する独成君は伊達では無いと言う事です」
「駒八つ!?しかもオーズってあの!?それにフェニックスをこの二人が…てっきりあのライザーを倒したのが木場か姫島先輩な物かと…」
う、うむ…なんか評価されてるけど、あのライザーを倒せたのはほぼ偶然見たいなものだしな。イッセーがアーシアから借りた十字架や聖水、それにグレイフィアさん…基魔王様から貰ったライオンのメダルが無ければ勝利は無かったと言ってもいい。
「ごめんなさい、兵藤一誠君、独成マリヒコ君、アーシア・アルジェントさん。うちの眷属は貴方たちよりも実績がないので、失礼な部分が多いのですが、よろしければ同じ新人の悪魔同士、仲良くしてあげてください。独成君も匙とはもう前から仲が良い様子でしょうが」
そう頭を下げたのち、薄い微笑みを浮かび上げながら会長はそう言った。
「サジ」
「え…あ、はい!……よろしく」
匙は不満げにイッセーに軽く頭を下げた。
「はい、よろしくお願いします」
その後アーシアが微笑ましい笑顔を見せて匙に挨拶する。
「うん!アーシアさんよろしくね!」
するとイッセーの時とは大違いな程いい笑顔でアーシアにそう言いつつ手を取る。
…あ、こいつ意外と女好きだったな、まぁ流石にイッセー程は酷く無いだろうが、そんなイッセーはアーシアの手を掴んでる匙の手を引き剥がし、思いっきり力を込めた様子で握手する、うん私怨がよう見える握手の仕方だあれ。
「あはははは!匙くん!俺の事もよろしくね!それとアーシアに手を出したらマジで殺すからね。匙くん!」
「うんうん!よろしくね、兵藤君!金髪美少女を独り占めだなんて、噂通りの本当にエロエロな鬼畜くんなんだね!あー天罰でも起きないかな!落雷とかに当たって死んだり、異世界に迷ってぶっ殺されたりしないかな!と言うか今そうなっちまえ!」
お互い無理やり作った笑顔でそう言い合う。
オーケー君ら、一旦落ち着こうか、部長や会長がお互い苦笑してますぞ。
「…あ、そういや思い出したけど匙」
「ん?なんだよ」
俺のその問いに匙は握手の手を離し、痛そうに手を振りつつ俺を見る。
「この間の資料用のラミネート機が壊れたて言ってただろ?あれそろそろ直り…」
「わーっ!!??バカ!お前それ会長の目の前で…」
と、匙がこの間俺に頼んだラミネート機がどうも満足に機能しないと言う事で修理を頼んだのを思い出し、そろそろ直りそうだからそれを伝えようとした瞬間、何か慌てたように言い始める。
「……サジ?確か言ったはずですよね、これ以上部外者を私達生徒会に無理に関わらせないように、確かに機械の修理自体は助かりますが、もし一般の人に悪魔の存在を知られればどれほど問題か…」
「…すいません、会長」
「…あのー、もしかして俺まずい事してた?」
その問いに、会長ははぁ、と溜息をつき言う。
「…まぁ彼も悪魔社会に関わっていますから、今回は許します。それと独成君。今度からは機械の修理はこちらがしますから、貴方は無理に引き受け無くてもいいですよ」
「う、うーん…その、生徒会がもし大変な時とかあれば修理は引き受けますけど」
まぁ、色々機械を弄るのは楽しいからね…人の機械を弄るときはかなりの神経使うが。
「…そう、もしもの時はお願いするわね、匙。そろそろ行きます」
「あ、はい!…ふぅ」
そして二人がこの場を後にしようとした時、イッセーが挨拶を入れる。
「会長_いえ、ソーナ・シトリーさん…様!これからもよろしくお願いします」
「よ、よろしくおねします!」
「あ、えーと…色々迷惑かけてすいませんでした」
イッセー、アーシア、そして俺の順に頭を下げて挨拶をする。
…俺だけつい謝ったけど、大丈夫かな…会長は「ええ、よろしくお願いします」と言った後、「気にしないでいいわ」と返してくれた…優しい。
「リアス、球技大会が楽しみね」
「えぇ、本当に」
そして部室を出る際、部長と会長がそうお互いそれぞれの笑顔で返した。
▲▼▲▼▲▼▲▼
そして球技大会の日。
今日の天気予報は午後から雨のようだが、時間さえ合えば雨が降るまで大会終了時間までは間に合うようだ。
先ず行われたのは、クラス対抗戦であるテニス大会で部長が出陣し、その相手はなんと生徒会会長である支取先輩だ。
その大会内容はもう俺が知ってるテニスとは大違いで、球が音速で動くわトンデモ軌道を描くわ、こんなのテニスじゃないわ!ただの超次元球技よ!と声を出して言いたかったほどだ。
そんで観戦者も対戦相手がお互い有名人であるがため相当な声援や、応援がもの凄かった。特にイッセーお前のそのいやらしい視線もな。
ちなみにお互いは負けた方が勝った方にうどん屋である小西屋のトッピングを全て乗せたうどんを奢ると言う、なんともお嬢様らしかぬ賭けをしていた。まぁ確かにあのうどん屋は美味しいよね。なんならトッピングを単品頼むだけでも満足できるし。
最終的に試合の結果は、お互いラケットが粉砕してしまったため同位優勝となった…いいのかなぁ。そして…
「よーし…ストレッチはこれぐらいでいいかな」
「そうですわね、次はドッヂボール大会だから足とかほぐしておかないといけませんわね」
そろそろ部活対抗戦が近づき、俺は朱乃さんに手伝って貰ってストレッチをしていた。
部活対抗戦の内容はドッヂボール。最後にやったのいつだろ…小学生辺りかな、なんかいつも直ぐにボールが当たって外野になった記憶しか無い…
「おーい、みんなー」
「うん?どした?」
そのイッセーの呼びかけにオカ研メンバーが集まる。
イッセーはへへっ、と言った笑みを浮かべながら何かを配る…細長い布だ。これってもしかして…
「これを巻いてチーム一丸頑張ろうぜ!」
「ハチマキ?…お、刺繍があるな」
その貰ったハチマキを広げてみると【オカルト研究部】と刺繍が施されており、出来も素人ながらしっかりとしてた。
「うん、イッセーて意外に器用ね。上手くできているわ」
「へへへ、実はこっそり練習してました」
その部長の言葉にイッセーは嬉しそうな反応を示していた。
こいつは意外にやろうと思えば直ぐ身につくんだよな…駒王学園にも入学できたのも動機が不純とはいえ、しっかり勉強もしてたし。
「…予想がいの出来栄えです」
「お、ありがとう小猫ちゃん!」
そう言いながら頭にそのハチマキを着ける小猫ちゃん。
そして俺もそれを頭に巻いて付けてみる…うん、何かこうやる気が湧いてくるな。
「ええ、確かにこういうものでしたらチーム一丸になる為にも、良いアイテムですわね」
「ありがとうございます朱乃さん!いやー夜なべして作った甲斐がありましたよ…」
そう言って朱乃さんや部長も頭にそのハチマキを着ける。
…俺も何か作ってくればよかったかな。
「ほら、木場」
そして未だにボーッとした様子が抜けない木場にもイッセーはハチマキを手渡す。
「…うん、ありがとう」
「…今は勝つことに集中しろよ」
「…勝つか。そうだね…勝つ事が大事だ」
…うん?なんだろ。まるで別の事みたいに言ってる様子だけど…
『オカルト研究部の皆さんと野球部の皆さんはグラウンドへお集まりください』
と、アナウンスがそう呼び出しをする。
さぁ…悔いの無いように戦うぞ!
▲▼▲▼▲▼▲▼
「狙え!兵藤を狙うんだ!!」
「うぉおおおおおお!!??テメェらふざけんなぁぁぁあああ!!!」
そう涙目になりながら飛んでくる豪速球のボールをかわすイッセー。
何故こうなったかと言うと…
もし部長、そして朱乃さんにボールをぶつけようならそのファン達に怒りを買う。
アーシアや小猫ちゃんにボールをぶつけようならばかわいそうで、皆んなに怒りを買う。
木場はモテない男子生徒にとってはめっちゃ当てたいが、もしボールをぶつけたのであれば女子生徒に恨まれてますます当てづらくなる。
そしてイッセー、こいつはいつもながら変態なクセして最近アーシアや部長の近くにいて、嫉妬の対象。つまり当てたら即英雄。と言うか当ててもドンドンぶつけてやれという感じで狙われてしまっている。
え、俺?…俺も最近朱乃さんと登下校してる為嫉妬の対象と化してしまい、ゲームが始まった瞬間速攻で狙われて数秒でボールをぶつけられたよ…直ぐに外野て、不甲斐なさすぎる。
そして相手は見事外野である俺にボールを渡さず、相手の外野と連携しイッセーを狙う様に恨み言を吐きながらボールを投げていた。君らそのコントロールを野球で使えれば甲子園も夢じゃないよね?
「クソォ!恨まれてもいい!!イケメンめぇえええええ!!」
と、一人の野球少年が木場にボールを定め、憎悪を込めてぶん投げた!
当然木場ならあれぐらいは避けれる…が。
「…」
…木場?ボーッとしてるけど…て。
「木場!危ない!!」
「何ボーッとしてやがるんだ!」
俺のその言葉の後にイッセーが庇う様に立つ。
「…え?」
木場自身はまだボーッとした様子が抜けておらず、ボールはそのままフォークボールの様に降下し…
「っ___」
ドゴォ!!…と、イッセーの…イッセーに直撃した。
「い…イッセェエエエエェェェエエ!!!!」
そして当然、男にしかわからぬ痛みが走ったであろうイッセーはその場に倒れ込む。オカ研部員達が駆け寄り、俺もそれに駆け寄り様態を見る…うわ、なんとも言えない表情。でもわかる…その痛み。
「ぶ、部長…た、玉が…俺の…」
「ボールならあるわ!大丈夫よイッセー!…さぁ、私のかわいいイッセーをやった輩を退治しましょうか!」
そんな様子のイッセーを抱き抱え、競技用のボールを見せてしっかりした目で励ます部長。
「あ、あの部長…恐らくですね、ええと、イッセーの大事な物にボールが当たったかと…」
「…それってもしかして」
「ええ、恐らく違うボールが大変な事になっている様ですわね?」
その朱乃さんの言葉の後に、部長は絶句した様子を見せる。
「な、なんて事…アーシア、ちょっと来て。こんな事で不能になったら困るわ!」
「は、はい!…イッセーさん、どこを怪我なされましたか!?」
「あ、アーシア…ダメだ、ここは流石に見せれねぇ…」
「小猫、人の見えないところまでイッセーを連れて行ってあげれるかしら?」
「…了解」
大事な息子を直撃され、悶えるイッセーの横で深刻な表情で指示を下す部長…愛されてるなぁイッセー。
そんなイッセーはズルズルと小猫ちゃんに引きずられ、体育館の方向へと行った…そんなイッセーを俺は敬礼を送った。
「イッセーの弔い合戦よ!」
その怒りの声と共に試合は再開された。イッセーは死んでないけどね…まぁイッセーJr.は死にかけたけど。
▲▼▲▼▲▼▲▼
球技大会が終わった後に、ザァッとすっかり外は雨模様になっていた。
その中に、パン!と雨音に混じり、何かを叩く音が響く。
「どう?少しは目が覚めたかしら」
その音の正体は部長が木場の頬を叩く音だ。
あの悲劇の後からどうにかイッセー達は復帰し、チーム一丸となり勝利をしてにしたが、木場だけが試合に参加せずただぼぉっとしてた様子でいた。
部長が怒っていたのは木場がただ試合に貢献しなかったわけではなく、みんなに協力するより他に何かがあってどうでもいいと言うその態度にあった。
だが当の本人は朴を叩かれても無表情で、何も言わずにいた。
「もういいですか?球技大会も終わりました。球技の練習もしなくていいでしょうし、夜の時間まで休ませてもらってもいいですよね?少し疲れましたので部活は休ませてください。昼間は申し訳ございませんでした。どうも調子が悪かったみたいです」
唐突にいつもの笑顔を見せ、そう言う木場。
その態度にいても経ってもいられない様子のイッセーが問いかける。
「木場、お前最近変だぞ?」
「君には関係ないよ」
「俺だって心配しちまうよ」
その問いに作り笑顔をしつつ答え、素っ気なく返してくる。
「心配?誰が誰をだい?基本利己的なのが悪魔の生き方だと思うけど?まぁ主に従わなかった僕が今回悪かったと思っているよ」
「…木場?お前本当にどうしたんだよ。いつものお前ならそんな投げやりな態度取らんと思うぞ?」
そして俺もそう木場に言うが、苦笑して返してくる。
「いつものね…君は何も分かってないからいいけど、決めつけは良くないんじゃないか?」
「じゃあ説明してくれよ。何かあったのか…」
「関係無いよ」
「関係無いて…俺ら仲間だろ?」
「ああ、チーム一丸に纏まって行こうとしていた矢先でこんな調子じゃ困る。この間の一戦でどんだけ痛い目に遭ったか、俺ら感じ取った事だろう?お互い足りない部分を補うようにしなきゃこれからダメなんじゃねぇかな?マリヒコの言う通り俺らは仲間なんだからさ」
イッセーのその言葉に木場は表情を落とす。
「仲間、か」
「そう、仲間だ」
「君は熱いね。イッセー君にマリヒコ君、僕はね、ここのところ基本的なことを思い出していたんだ」
「基本的な事?」
その言葉に疑問を持つイッセー。
「ああ、僕が何の為に戦っているか、を」
「部長のためじゃ無いのか?」
「ああ、何か他にあるのか?」
基本部長の眷属であるイッセーらが戦う理由は王である部長の為。まぁイッセーみたいに自身の夢の為動く人もいるだろうけど。
だが今の木場はそれ以上に大事なものがあるように、否定の後に語り始める。
「違うよ。僕は復讐のために生きている…聖剣エクスカリバー
。それを破壊するのが僕の戦う意味だ」
その怨念が篭ったであろう言葉に、強い決意を込めた表情。
そして木場は踵を返し、去ろうとする。
「待っ…」
俺とイッセーがその後を追いかけようとするが、部長が「今はそっとしてあげて」と言い、俺らは雨に打たれているその後ろ姿をただ見ることしか出来なかった。