「聖剣計画…ですか?」
その言葉に朱乃さんがうなづく。
あの後俺らは部活動を一通り終え、みんなはそれぞれ帰宅した。
その際朱乃さんは木場がなぜあの様子になったのか説明すべく、俺の部屋に上がり、今その説明が行われていた。
「ええ、祐斗君はその計画の生き残りなの」
「生き残り?…それってどういう事ですか?」
その問いに朱乃さんの表情が僅かに曇り、説明を続ける。
「数年前、キリスト教内で聖剣エクスカリバーが扱える人物を育てる計画が存在していたのよ。マリヒコ君が言った通り生き残りて言うのは…祐斗君以外の人。エクスカリバーを使える様に育てたけど、扱えずに処分された人の事ですわ」
_その言葉に僅かに喉が詰まる。
処分…その言葉の意味は理解したく無い。
「…木場は、その、生き残ったて言うのは…木場もエクスカリバーを使えるて言う事ですか?」
…その感情を一旦しまうかの様に質問する。今ここであれこれ騒いでもどうにもならない。
そしてその質問に首を横を振り、口を開く。
「いえ、祐斗君も聖剣に適合できなかった。彼も例外無く処分…そう、計画に関わった被験者は『不良品』として殺された」
「っ_」
ドン!と部屋にそう音が鳴り響く。
…自身の右手に衝撃が走るのを感じた。自身の右拳がちゃぶ台を叩きつけた音だ。
「それって…教会の人達がみんなを、殺したって事ですか…!?」
…正直信じられなかった、教会と言えば神に祈りを捧げ、平和を祈る人達の集まりだと思う。そんな人達が聖剣を扱えないなんて理由で殺すなんて…!
「…ええ、私も部長から聞かされた話ですけど、私も聞いた時はショックを受けましたわ。その後祐斗君が部長に悪魔と転生し、そして第二の人生を歩み始めた。部長曰く、祐斗君が持つ剣の才能は復讐にこだわるのはもったいない、せめて悪魔としての性を有意義に使って貰いたかった…と」
…俺のその様子に僅かに驚きを見せつつ、そう語る。
もし木場が聖剣計画なんて言うものを忘れ、第二の生を謳歌してくれれば幸せを得ただろう、が_
「それでも。あの子は忘れられなかった、聖剣を、計画の犠牲になった仲間たち。そして教会の者たちを_」
_自身だけ生き残り、そして仲間の仇を討ちたいと言う復讐心。
その木場の心は全て理解出来るなんて偉そうな事は言えない。
「…しばらく祐斗君は見守ると部長は仰ってましたわ。マリヒコ君も祐斗君を見かけましても見守る様にお願いしますわね」
「はいっ…にしてもなんで、いきなり…」
なぜ木場があの様子に至ったか…そう言えばこないだイッセーの黒歴史アルバム事件である一枚の写真見た時、木場の様子が変だったな…
「少し調べてみるかな…失礼します」
と、朱乃さんにそう断りを入れ、スマホでイッセーに【木場が見た写真、送ってくれるか?】とメッセージを入れると、すぐに【これか?】と例の写真を添付したメッセージが返ってきた。
一言お礼のメッセージを送ったのち、その写真を朱乃さんに見せる。
「どうですか?これが木場が見た写真ですけど…」
その写真を見て朱乃さんは少し考えたのち、口を開く。
「恐らくこの剣が『聖剣』ですわね、祐斗君はこれを見て復讐心を思い出したのね…一応聞くけど、マリヒコ君はこの栗毛の子は知り合い?」
「あ、いえ。俺が駒王町に来たのは小学2年ぐらいの歳ですから会ってないですね。イッセーも知り合ったのはその時だし」
「なるほど…ありがとうね、とりあえずこの件は祐斗の機嫌が直るまで様子見ですわね」
とりあえず木場の件は一旦ここで保留する事にした。
…もうそろそろ夜もふけてきた。朱乃さんは今日うちに泊まると言うことですおじさんに話をつけている。
勿論寝る部屋は別々だ、空いてる部屋を朱乃さんが使っていいと言う許可がおじさんから降りてるため、寝床は問題無い。
「それじゃ、折角だし少しお話でもしましょう?貴方のことも少し知りたいし」
「えぇ?…面白く無いですよ?」
「それは私が判断する事ですわ?それじゃ、アルバムの貴方がなんでそこまで恥ずかしがり屋だったのかが知りたいわね」
うっ、何かと黒歴史を聞こうとしますな朱乃さん…流石は究極のS。
まぁ別に言いたく無い訳じゃないからいいか。
「まぁなんて言うか、俺の髪の色が他の人と違うからそれが少し嫌だっただけなんですけどね、なんだったら墨汁被って黒く染めようとしたぐらいですし…」
今は流石にそんな事はしないけどね。
「そう…私は綺麗だと思うわよ?その髪の色」
そう朱乃さんが微笑んで言う、なんか照れ臭いな…。
「と、もうそろそろ寝る時間ですわね、変な事聞いてごめんなさい?じゃあお休みなさい」
「あ、はいっ。また明日」
そして朱乃さんは一礼して俺の部屋を出た。
「…俺も寝よっと」
自身の髪を少し撫で、部屋の明かりを消してベッドに寝た_
▲▼▲▼▲▼▲▼
朱乃side_
「…少し聞きすぎたかしら」
私は今日泊まる部屋に転移しておいたベッドに寝てそう呟く。
なぜ彼の事をそこまで聞いたか、少し自問自答をしていて。
「少し可愛い弟見たいな子でしたけど…」
…どうも彼の笑顔が見たい。別にあの子は笑顔が少ない訳じゃない、ただ少しいつも見せる笑顔が、作り笑顔ていうか、ただその場に合わせて出している感じがしてならない。
だからと言って彼が別に悪人て言う訳じゃなく、寧ろ善人と言った所だ。何せ部長やイッセー君が困っていた時に彼は必死になって戦っていたからだ。少し尺だけれども、あの堕天使がメダルの怪人になった際、救出を彼は申し出たのだ。
「…なんであの子はそこまで必死かしら」
_…離せ!もういやなんだよ!あの時みたいな…俺だけ助けられたんじゃ意味が…_
ふと、彼のその言葉が脳裏に浮かび上がる、あの時みたいな_
「…これ以上考えても仕方ないわね」
そして私は、瞳を閉じて眠りについた_
▲▼▲▼▲▼▲▼
マリヒコside_
次の日、俺は朝早く目覚めて早速外に出る準備をし、その後おじさんに一言挨拶し外に出た。
理由は日課であるランニングをする事だ。あの合宿とかで鍛えられたもののまだ不安な所もある。
そしてランニングを終え自宅へ戻る。
「ただいまー」
「あ、お帰り〜マリヒコ君」
「お帰りなさい」
と、朝食を用意してるおじさんと、その手伝いをしてる朱乃さんが目に入る。
「て、朱乃さん、何もそこまでしなくても…」
「一宿一飯て言葉がありますわよね?私も借りを作られたままじゃ気が済まないタチでしてよ?」
そう笑顔で答える朱乃さん。
「…しょうがないな、けど俺も手伝いますからね」
「ふふ、わかりましたわ」
その後一緒に手伝いをし、朝食を済ませた。
朝食の内容は味噌汁や焼き魚などの和風な物だ。これも美味しかった。
▲▼▲▼▲▼▲▼
そしてその後の学校、今俺は旧校舎の中を掃除している。
イッセーはと言うと例のフェニックスの件で『禁手』の代償で支払った影響で龍の手になったのだが、部長がある方法でそのドラゴンの力を散らし、普通の手に戻す儀式をしているようだ。
どうやらアーシアにもその方法を教えているらしく、その儀式を行う部屋でイッセー、アーシア、部長がその儀式をしているようだ。
「…変な事にならなきゃいいけど」
雑巾をバケツの上で絞り、そう呟く。
まぁ流石に真面目な儀式で変な事にはならないだろうけど…うん。
「お疲れ様、マリヒコ君」
「ん、朱乃さん」
と、振り返ると朱乃さんがいつも通りの笑顔で俺に挨拶をする。
「本当なら旧校舎の掃除は使い魔の仕事ですけれど…ごめんなさい」
「あ、いえ、自分で好きにしているので気にしないでください」
俺はそう言いながら今やってる掃除を切り上げ、立ち上がる。
「ふふ…少しお喋りでもしない?」
「んー…そう言っても話題持ってませんよ?俺」
そう苦笑しながら言うも、朱乃さんは気にしないでと言った様子で話す。
「そうですわね…マリヒコ君、何か欲しい物ってあります?」
「唐突ですね…欲しいもの、かぁ…」
…少し考える、調理器具とかは大体あるしなぁ。機械修理のための工具も大体あるし…
「…特に無いですね、すいません何か」
「謝らなくてもいいのよ?この間部長を救ってくれたお礼に、何かご褒美でもあげようかと思いましたのよ?」
そう笑顔で言う。
…ご褒美かぁ、そう言われても特に思いつかないな。
「エッチなご褒美もいいですわよ?イッセー君や部長みたいにそう言うのも…」
「ブフォッ!?…な、何を言ってるんですか朱乃さん!?」
そんなとんでも無い言葉につい咳込む。
そんな様子に揶揄うような笑顔を見せる朱乃さん…流石究極のS。
「もう、ウブですわね…本当に無欲な子」
「もうからかわんでくださいよ…」
「…本当に欲しいものは無いの?何でも、て言えないけど私なら大抵の事は出来ますわよ?」
…そう朱乃さんはジッと見つめて言う。
今日はどうしたんだろ?何か様子が変だな。
「大丈夫ですよ、俺も今の生活には満足してますし…後は木場の問題も解決すれば文句は無いですよ」
…笑顔でそう答える。
「…マリヒコ君、貴方は_」
朱乃さんが何か言おうとした時_
「ありがとうございます部長!アーシアも頑張ったな!」
「いえ、イッセーさんのお役に立てたのなら…」
「アーシアも大分上手くなってきてるわよ?この調子ならもうすぐアーシア一人でもいけそうよ?」
と、俺の背後からドアを開ける音と共にそう会話が聞こえて来る。
「と…イッセー、儀式が終わったのか?」
俺は振り向きそう言う。
「おう!お陰で腕もこの調子!いやぁ色んな意味で助かります部長!」
「もう、イッセーたら…」
そう腕を見せて笑顔で答える。アーシアと部長もその様子で満足げな笑顔を見せていた。
「と…そう言えば朱乃さん、何か言いかけましたか?」
そう俺は視線を戻して言う。
「…ううん?何でもありませんわ?」
そう答える。何もなければ良いけど…
「イッセー、アーシア、私は今日調べ物があるから一緒には帰れないわ。ごめんなさい」
「はい、わかりました」
「あ、わかりました。とそろそろ教室行かないとな…マリヒコ急ぐぞ!」
「唐突だなもう…はいよっ」
イッセーとアーシアが部長に挨拶し、俺も朱乃さんと部長に挨拶してイッセーらについて行った。
▲▼▲▼▲▼▲▼
朱乃side_
「…余計だったかしら?」
部長は私にそう言う。
「いえ…ちょっと踏み入りすぎましたから助かりましたわ」
自分でもなぜあそこまで言ったかわからない。
彼が心配だから?…それもあるけど、どうも違う気がする。
「珍しいじゃ無い、朱乃が男の人にあそこまで言うなんて。普段の貴女なら気にかけなかったじゃ無い?」
そう意地悪そうに言う。
「あら?それは部長もじゃありません?イッセー君にあそこまで惚れ込んでいて。最近は恋愛のマニュアル本なんて読んでいる事だって知ってますわよ?」
「っ!?何でそれを…もう、余計な事を知っちゃって」
そう赤い顔をして言うも、仕切り直すかのように口を開く。
「貴女はどうなの?マリヒコの事は。気持ちをハッキリさせないと後悔するわよ?」
「…そうですわね、私はあの子の笑顔が少し気になったのかもしれないわ」
「笑顔?…そこに惚れた訳?」
「いえ…あの子の笑顔が、少し作り笑顔に見えたから、もしかしたら私は…」
_本当の笑顔を見たい。ただそれだけの我がままね。
「…そう、それなら私はこれ以上踏み込まないわ」
その返答に笑顔でそう部長は答える。
…この気持ちの整理はまだつきそうに無いかもしれない。
__
マリヒコside_
「マリヒコよ、俺のおっぱいのルーツについて教えてやろう。そう、あれは俺が七つの頃であった_」
「へー…アーシアの契約先のお客さんて優しい人ばかりなんだな」
「はい!皆さんとても親切で…けどお喋りだけして対価を貰ってよろしいでしょうか?少し申し訳ない気が…」
「うーん…まぁお喋りだけでも助かるて人がいるからいいんじゃない?」
「おいマリヒコぉ!!!何俺のありがたい話を無視してアーシアと楽しそうに話ししてんだ!俺も混ぜてくれ!」
一日の学業と部活動を終え、俺とイッセー、アーシアは軽い雑談をしながら家路についていた。
おっぱいのルーツ?うん聞かなくていいな。
「それじゃ、またなマリヒコ」
「おう、また明日」
イッセーが家に着いて、玄関へ向かおうとした時…
「…っ!?」
「っ…」
イッセーの様子が急におかしくなる、それと同時にアーシアも震える手でイッセーの手を掴む。
「ん?どうしたんだイッセー?」
「…感じるんだ。あの時アーシアと会った時に教会を感じた悪寒を」
「は…?」
それって、悪魔が弱点とする聖なる力とかそう言う…まさか!!
イッセーも察したのか否や、急いで扉を開け家に入る。
同時に俺もその開いた扉を通り、急いで靴を脱いで廊下をかける!
…まさか教会関係、それかはぐれ悪魔祓い?何にしてももし、例のフリードみたいな_あの惨殺された遺体が脳裏に浮かび上がる。
「っ_」
ふざけるな、イッセーもその思いなのか、急いで一緒に台所などを見るもお袋さんは見かけなかった。
て事は…そして俺らはリビングへ向かう。そうすると笑い声らしきものがリビングから聞こえてきた。
間に合わなかったのか!?…そう足早に入った時。
「でね、これがイッセーの小学生時代の写真なのよ。ほらほらこっちなんて、プールで海パンが破れた時も流れる滑り台に行っちゃって…それにこの子はマリヒコ君て言ってね、もう素直で可愛い子なのよ」
「…か、母さん?」
「…無事、でしたか?」
…俺らの目に入ったのは、見知らぬ女性二人に楽しそうにアルバムを見せるお袋さんの姿だった。
「はぅぅぅ…よかったですぅ」
「あら、イッセーにアーシアちゃんお帰りなさい。マリヒコ君もこんにちは…どうしたの?みんな血相変えて。アーシアちゃんも座り込んじゃって」
そんな様子の俺らに不思議そうに言う。
アーシアも安堵のためか、力が抜け落ちるように座り込んだ。
…イッセーと俺も無事が確認でき、落ち着くように息を吐くも、二人の女性を見る。
_相手は勿論誰かは知らない、栗毛の女性に緑色のメッシュを入れた目つきが鋭い女性。その首にかけた十字架といい、着込んでいる白いローブ。恐らく相手は教会の人間だろう。
「こんにちは、兵藤一誠君に、それと貴方がマリヒコ君ね?」
「は、初めまして」
「ど、どうも」
イッセーと俺の順にそう挨拶を返す。
何かイッセーが嫌な物を見るような目で女性の傍にある布で巻かれた長い物を見てる…恐らくは武器だろうが、イッセーの反応を見る限り普通の武器ではなさそうだ。
「あれ?覚えてないの一誠君、私だよ?」
「え…知り合いかイッセー?」
「え、いや俺全然覚えないけど…いや誰かと間違えてませんか?」
そんな反応を見たお袋さんが一枚の写真を取り出し、俺らに見せた。
あの聖剣が飾ってあった幼い頃のイッセーとその幼なじみの写真だ。
「この子よ、紫藤イリナちゃん。この時は男の子っぽかったけど、今じゃ立派な女の子になって、お母さんもビックリしちゃったの」
「…えぇええええええ!!??こ、この子が幼い頃一緒に遊んでた子!?」
「…まぁじかぁ」
そう驚きを隠せぬ様子を見せるイッセー。
うん、俺も驚いたよ…改めて写真を見ても、栗毛の子がどうしても男の子にしか見えない。
「お久しぶり、イッセー君。男の子と間違えてた?まぁ仕方ないよね。あの頃私ったら男の子顔負けにヤンチャだったから。でも互い会わないうちに色々あったみたいだね。それと貴方が小学生からの幼馴染みのマリヒコ君だっけ?貴方もその様子なら色々知ってそうね」
そう意味深に言う。
…彼女はイッセーや、俺の事情に気づいたか?
▲▼▲▼▲▼▲▼
あの後イリナともう一人の女性は軽く話をしてから帰って行った。
まぁ会話はほとんどお袋さんがしたんだけどね。イッセーとアーシアは色々訳ありだし…まぁ何事も無かったけど。
そして部長も急いで帰ってきて、俺らの無事を確認した後安心した様子を見せた。俺も軽く会話をした後自身の家へ帰って行った。
そして帰宅後、オカ研グループに部長からメッセージが入った。
【明日の放課後、教会関係者が私に交渉を持ちかけて来たから全員部室に集合よ】
…何事もなければいいが。
▲▼▲▼▲▼▲▼
そして放課後、俺らオカ研メンバーは部長の指示通りに部室に集まった。勿論…木場もそこにいる。
ソファには朱乃さんと部長、そして昨日あった二人組の女性が座っていた。
俺らは隅っこでそのやりとりを見ていた…イッセーとアーシアは緊張した様子を見せ、小猫ちゃんは冷静な顔を保っている。
そして木場は恐ろしい程の殺気を込めた目で教会関係者二人を睨んでいる…頼むから騒ぎ起こさないでくれよ。
「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側に保管、管理されていたエクスカリバーが奪われました」
そんな中で先に話を切り出したのは教会側の紫藤イリナだった。
て…エクスカリバーが奪われた!?確かそれってアーサー王が持ってた有名な聖剣…ん?でもカトリックにプロテスタント…それに正教会?まるでエクスカリバーが複数あるみたいな言い方だな。イッセーの方を見ると勿論疑問そうな顔を浮かべていた。
「聖剣エクスカリバーそのものは現存していないわ」
俺らの様子を見た部長がそう答える。
現存していない?じゃあ奪われたエクスカリバーは?
「イッセー君、マリヒコ君、エクスカリバーは大昔の戦争で折れたの」
折れた!?そんなイリナの説明でそう驚きを隠せなかった。
エクスカリバーて確かそう簡単に折れないはずじゃ…それほど戦争が激しかったのか?
「今はこの様な姿さ」
そして髪に緑色のメッシュを入れた女性が布に巻かれた物を取り出し、それを解き放つ。そして俺らの目に入ったのは_
「これがエクスカリバーだ」
_一本の長剣だ。それは美しい色を放っていて、見た物を魅了させるには充分な物だ。けどイッセーの方を見るとそれを恐れるような目で見ていた…聖なる力は確か悪魔には毒だったか。それも伝説の剣の名を持つほどのレベルは相当な物だ。
「大昔の戦争で四散したエクスカリバー。破片を拾い集めて錬金術によって新たな姿になったのさ。その時7本作られたのだが、これがその一つ。
「…リサイクル?」
「少し空気読んでください」
小猫ちゃんにそう軽く突っ込まれた後、緑のメッシュの女性が微妙な顔でこっちを見ながらエクスカリバーを布で覆った。ごめんつい。
「もう、形を変えて私達に力を貸してくれるて言って貰いたいわね」
そう言ってイリナの方も何か細長い紐の様な物を懐から取り出す。
それはまるで意思を持つ様にウネウネと動き出し、そして_一本の日本刀の様な形になった。
「これが私が持つ
そう自慢げに言う、やはり彼女の聖剣を見るも、何か神々しい物を感じ、つい拝みたくなる感じがする…まぁイッセーらにとっちゃヤバイ物だろうけど。
「イリナ…悪魔にわざわざエクスカリバーの能力を喋る必要もないだろう?」
「あら、ゼノヴィア。いくら相手が悪魔だからと言っても信頼関係を築かなければ、この場ではしょうがないでしょう?それに私達の剣は能力が知られたからと言って、悪魔の皆さんに遅れを取るなんて事は無いわ」
そう自信満々に言うイリナ。確かに伝説の聖剣が二本もあれば余裕も出来るだろうけど…何か違和感がある。
アーサー王が持つ伝説の聖剣エクスカリバー…大昔に折れてそれを現代に蘇らせた。確かに話としては凄いけど…と、あれこれ考えてると何かプレッシャーを感じた_木場だ。
普段の木場から想像もつかない様な鬼の形相でエクスカリバーと、その持ち主である彼女らを睨んでた。
「木場!…バカな真似するんじゃないぞ」
「…分かってる、今は手出ししないさ」
そんな様子につい声をかけるが、睨みをエクスカリバーの方へ入れたままそう言う…本当に大丈夫か?そう俺が木場を少し宥めてる間も部長は二人に話を進めていた。ほんと冷静に対処してくれて助かります…どうやら聖剣を盗んだ人物はこの町に潜伏している様だ。おいマジか…
「私の縄張りでは出来事が豊富ね…それでエクスカリバーを奪ったのは?」
額に指を当てながら皮肉そうに言う部長。自分の住んでる町に色々あっちゃ気が参りますな…
「奪ったのは
グリゴリ_まさかの堕天使の仕業と聞いて部長が目を見開いた。
「堕天使の組織に聖剣を奪われたの?失態どころではないわね。確かに最近堕天使側の動きは怪しいけどそこまでしてくるなんて…」
部長はため息を吐きながら言う。例のメダル怪人もまだそこまで手掛かりが掴めてない上に聖剣…堕天使は一体何を考えているんだ?
「奪った主な連中は把握している。グリゴリの幹部、コカビエルだ」
コカビエル!?…それってグリゴリの偉い人じゃないか!?もうなんか凄い事になってないか?エクスカリバーやら、コカビエルやら…もうこの部室に入って数ヶ月、トンデモ事件が多すぎて頭の整理がつかなさそうだ。
けど流石にそれもほっとくのはいかんだろうし、彼女らに協力を…そう思ったが相手はその考えとは裏腹の事を言って来た。
「私達の依頼…いや、注文は私達と堕天使のエクスカリバー争奪の戦いにこの町に巣食う悪魔が一切介入してこない事…つまり、そちらは今回の事件に関わるなと言いに来た」
「えっ…て、手伝ったらいかんのですか?」
その注文にそうつい言ってしまうも、彼女、ゼノヴィアは苦笑しつつも言う。
「その通りだ。上は悪魔を信用していない。もし聖剣を神側から取り払えれば悪魔にとっても驚異も薄まる。堕天使共々お互い利益があるて言うことさ。それゆえ手を組んでもおかしく無い。だから牽制球を放つ。これが上の答えさ…それで、どうかな?リアス・グレモリー」
そうゼノヴィアは部長に言う。
そして部長は鋭い目でゼノヴィアを見て、言い放つ。
「…中々言ってくれるじゃない。ならば言わせてもらうわ。私は堕天使などと手を組まないわ。グレモリーの名にかけてその様な真似は絶対に」
…お互いに一瞬緊張が走るも、その答えを聞いたゼノヴィアはフッと笑った。
「それが聞けただけでもいいさ。一応コカビエルがこの町にエクスカリバーを持って潜んでいる事をそちらに伝えたかったのでね、それにそこの悪魔じゃない人間君。余り余計な事は言わない方がいいぞ?」
お互いの緊張が解けた後俺の方を向いて、そうゼノヴィアは俺に言う。本当にすいませんつい…
「正教会からの派遣は?」
「奴らは今回この話を保留した。仮に私とイリナが奪還に失敗したとしても、残った一本を死守するつもりなのだろうさ」
部長の問いにそう答え、呆れた様子で再び言う。
「二人で聖剣を奪還するつもり?無謀ね、堕天使の幹部相手に…死ぬつもり?」
「そうよ」
「私もイリナに同意見だが、出来るだけ死にたくはないな」
「っ_死ぬ覚悟でこの日本に来たと言うの?相変わらずあなた達の信仰は常軌を逸しているわね」
「我々の信仰をバカにしないでちょうだい、リアス・グレモリー。ね、ゼノヴィア」
「まあね、堕天使に聖剣を利用されるぐらいなら先にこちらから破壊しても構わないと教会は決定した。私達の役目は最低でもうエクスカリバーを堕天使の手から無くすこと。その為なら私達は死んでもいいのさ」
_その言葉に一瞬頭が理解を拒んだ。
死んでもいいて…何でそんなに簡単に言えるんだよ。
これが信仰による覚悟か…?
…そう俺があれこれ考えているうちに彼女らの会話は終わり、二人が帰ろうとした時。二人の視線がある方へ向く、アーシアの方だ。
「_兵藤一誠の家で出会った時。もしやと思ったが、『魔女』アーシア・アルジェントか?まさかこの地で出会おうとは」
そうゼノヴィアが言う。
『魔女』と呼ばれビグっと体をアーシアは震わせる。
その様子にイリナも気づいたか、アーシアをまじまじと見てくる。
「あなたが一時的に内部で噂になっていた『魔女』になった元『聖女』さん?悪魔や堕天使を癒す能力を持っていたらしいわね?追放されたてのは聞いたけど、まさか悪魔になっているとは思わなかったわ」
「…あ、あの……私は…」
「大丈夫よ、ここで見た事は上には伝えないから安心して」
「しかし悪魔か…『聖女』と呼ばれていた者。墜ちるところまで墜ちるものだな。それでもまだ我らの神を信じているのか?」
「ゼノヴィア、悪魔になった彼女が信仰しているはずがないでしょう?」
そう呆れた様子でイリナは言うも、ゼノヴィアは軽く目を細めながらアーシアを見て言う。
「いや、その子から信仰の匂い…いや、香りがする。抽象的な言い方かもしれないが、私はそう言うのに敏感でね。背信行為をする輩でも罪の意識を感じながら、信仰心を忘れない者がいる。それと同じものがその子から伝わってくるんだよ」
「そうなの?アーシアさんは悪魔になった身でも主を信じているのかしら?」
その問いにアーシアは、悲しげな表情で顔を下げて言う。
「…捨て切れないだけです。ずっと信じて来たのですから」
それを聞いたゼノヴィアが、布に包まれていた聖剣を突き出す。
「そうか、それならば今すぐ私たちに斬られるといい。今から神の名の下に断罪しよう。罪深くとも我らの神ならば救いの手を差し伸べて下さるはずだ」
_それを聞き、咄嗟にアーシアの前に立つ。
イッセーもアーシアの前に立ち、ハッキリと言う
「触れるな」
「待ってください!!」
その言葉の後にそう俺も言う
「アーシアに近づいたら俺が許さない。あんた、アーシアが『魔女』だと言ったな?」
「それに罪深いてなんですか!!アーシアが悪い事したんですか!?」
「そうだよ。少なくとも今の彼女は『魔女』と呼ばれるだけの存在ではあると思うが?それに悪い事?ああしたとも。悪魔を治しただけではなくその身を悪魔に堕としたのだからな」
っ…なんでそんな事が言えるんだよ!アーシアの夢も知らないのに…イッセーやみんなに出会って幸せそうなあのアーシアの顔も知らないのに…!
「ふざけるなッ!!救いを求めていた彼女を誰一人助けなかったんだろ!?アーシアの優しさを理解できない連中なんか、みんなただの馬鹿野郎だ!!友達になってくれる奴もいないなんて、そんなの間違っている!!」
「アーシアは…『聖女』て呼ばれるのが夢じゃないんですよ!ただ普通に友達と買い物したり遊んだりして…そんな普通な、幸せな夢が許されないんですか!?」
「『聖女』に友人が必要だと思うか?それに普通な夢?違う。『聖女』の夢は神に従える事だ。大切なのは分け隔てない慈悲と慈愛だ。他者に友情と愛情を求めた時『聖女』は終わる。彼女は神からの愛だけあれば生きていけたはずなんだ。最初からアーシア・アルジェントに『聖女』の資格はなかったのだろう」
そう当然かの様にゼノヴィアは口にした。
…なんでそう言い切れるんだよ。誰かに優しくしちゃダメなのか!?それが自分らにとって不都合になったら悪同然なのかよそれ!?
「アーシアの苦しみを誰もわからなかったくせによ!!何が神だ!何が愛だ!!その神様はアーシアがピンチだった時に何もしてくれなかったじゃないか!!」
そうイッセーは叫ぶ様に言うも、冷静にゼノヴィアは言う。
「神は愛してくれていた。何も起こらなかったとすれば、彼女の信仰が足りなかったか、もしくは偽りだっただけだよ」
_もう俺も我慢の限界が来たか、口を開き言い放つ。
「さっき大切なのは分け隔てない慈悲と慈愛だって言いましたよね?じゃあアーシアにはそれが充分あったはずだ!」
「ほう?なぜそう言い切れるんだ?」
「だってアーシアは傷ついてる悪魔を見捨てずに治したんだよな?じゃあそれが分け隔てない愛じゃないですか!!神器が…『聖母の微笑』がアーシアに宿ったのに理由があるとすれば!!悪魔だろうと堕天使だろうが、見捨てずに治すようにて言う思し召しなんじゃないですか!?そちらに合わせて言うんなら!!」
そう啖呵を切って言うと、ゼノヴィアが僅かに目をひくつかせて言うが、もう敬語を少しずつ崩して言う。
「神器が神様の贈り物なら!きっと世界を少しでも良くしようとアーシアに贈られて_」
_俺の首元に刃が突きつけられる。ゼノヴィアが持つエクスカリバーの刃だ。
「我らの前で神を語るとはいい度胸だな?それに先ほど言ったはずだ。余り余計な事は言わない方がいい、と」
「てめぇ!!アーシアだけじゃなくマリヒコにも手を出す気かよ!?」
「ああ、神の御心を知らずに勝手に語るのも侮辱さ。それにキミらはアーシアのなんだ?」
そう俺の首に剣を突き立てたままゼノヴィアはイッセーと俺に言う。
「家族だ!友達だ!!仲間だ!!!…だからアーシアを助ける!守る!お前たちはアーシアに手を出すなら俺はお前ら全員敵に回してでも戦うぜ!」
「家族じゃないけど…仲間ですよ。それにこんな簡単にそんな凄い剣を脅しがわりに突き立てるなんて、反論するならもう少しマシな方法があると思うんですけどね!」
そうゼノヴィアを見てはっきりと言う。その言葉に目を細める。
「それは私たち_我ら教会全てへの挑戦か?一介に悪魔にすぎない者が大きな口を叩くね。それに首に剣を突き立てられても随分と余裕そうだな?余程その首が惜しくないと見える」
そしてゼノヴィアは俺の首に、聖剣の刃を近づけ…
「イッセー!マリヒコ!お止め_」
…刃が当たるか当たらないかのところで声を上げ、俺らを落ち着かせようとした部長だったが、突如木場が前に介入する。
「ちょうどいい。僕が相手になろう_ああ、その汚らしい剣はさっさとマリヒコ君の首から離してくれないかな?君も不愉快だろう?」
恐ろしいほどの殺気を放ちながら剣を携える木場。
ゼノヴィアはエクスカリバーを俺の首から離し、問いかける。
「誰だ?キミは」
「キミたちの先輩だよ_失敗だったそうだけどね」
そう不適に笑った瞬間、部室に無数の魔剣が現れた_
メリークリスマス!…あ、遅かったか。
作者は今年もクリボッチですが、新しい趣味などを始めたため寂しくは無いです…次の更新は来年ぐらいになりそうですが、更新停止になるのだけは避けたいです。