ハイスクールD×D×O〜悪魔と龍と王の物語〜   作:カノサワ

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るろ剣リメイク放送されましたね。
OPである飛天が最初聴いた時驚きましたけど、聴き続けたら好きになりました!では…私の推しが出てくる回。どうぞ!


第3話=引きこもりと魔眼と囁き=

あのカオスな授業参観から次の日。

俺達、オカ研部員全員は旧校舎一階にある『開かずの教室』と呼ばれている部屋の扉前に立っていた。

俺も時々掃除してる途中に目に入った扉には、まるで事件現場の様に『keep out‼︎』と書かれた黄色テープが幾重も貼られており、記憶に残る物だった。

 

「ここにアーシアの他に、『僧侶』がいるんですよね…?」

 

昨日の夜にオカ研のメッセージグループにて、もう一人の『僧侶』を紹介…基封印を解く事が部長のメッセージから伝えられていた。

封印されているからどんな問題児なのか、こう言っては悪いが変な想像が膨らんできた。上手くやれれば良いけど…

俺が朱乃さんに質問した後、俺の不安そうな顔を察したのか、微笑みつつ語りかけてくる。

 

「えぇ、フェニックス家の一戦、及びコカビエルとの戦いで部長の評価が上がり、封印を解く事が許されましたのよ。それともう一人の『僧侶』は性格面では問題は無いですのよ。問題は…会ってから説明した方がいいですわね」

 

そう朱乃さんが説明している間、部長も部屋の封印を解いてる間に説明する様語りかける。

 

「えぇ、この部屋にいる子は一日中ここに住んでいるの。一応深夜には術が解けて旧校舎内だけなら部屋から出ていいのだけれど、中にいる子自身はそれを拒否しているの」

 

「ひ、引きこもりなんですか?」

 

その説明にイッセーが少し驚く様に言う。

 

「大丈夫なんですかそれ…日にも当たらないで、いや悪魔にとって太陽は天敵だけど、一日中篭りっぱなしなんて…」

 

…テープを取り払う木場を見つつ、少し考える。

…どうも少し親近感が湧いてきた。俺もこの町へ来た頃ははっきり言って誰も関わりを持ちたくなかったタチだ。

もしイッセーに出会わなかったらと思うと…

 

「…朱乃さん。その『僧侶』と話がしてみたいです」

 

「それは大丈夫だけれど…あの子自身少し人間が苦手、と言うより怖いのよ。マリヒコ君なら大丈夫だと思うけれど」

 

と、俺と朱乃さんが少し話をした後…部長が封印が解かれた扉に手をかけ…

 

「_さて、扉を開けるわよ」

 

ゆっくりと、扉が開かれて_

 

「イヤアァアアァアアァアアァアアァッッ!!??」

 

ッ_開かれた扉から突然鼓膜が揺れるほどの絶叫が響き渡る。

 

「う、うるさ…!?」

 

その大声に俺は咄嗟に耳を塞ぐ。

だが、部長や朱乃さんは全く驚く事なく。寧ろ慣れてる様子でため息をつくなり、二人は部屋に入っていった。

 

「…大丈夫かな。これ」

 

「さぁ…」

 

その俺のボヤキに、イッセーはすっかり驚いた様子でそう呟いた。

 

『ご機嫌そう、元気そうで何よりだわ』

 

『な、な、何事なんですかあぁぁぁ!?』

 

「…男、女…?」

 

そのやりとりを聞き、絶叫混じりの声から相手がどんなのか予想してみる。

声音自体は中性的と言うか、可愛らしい声だ。だがまだわからない。

 

『あらあら、封印が解けたのですよ?もうお外に出られるのです。それに新しい仲間もいますのよ?さ、私達と一緒に出ましょう』

 

『いぃいやぁあですぅううぅ!!ここがいいですぅぅぅ!外に行きたく無い!人に会いたくないぃぃぃ!!』

 

…朱乃さんがそう優しく語りかけるも、引きこもり『僧侶』は酷く狼狽した様子で答える。

 

「…じゅ、重症だぁ」

 

「…お前の時はこれぐらい酷くなかったけど、いやこれは…」

 

「?…マリヒコさんも引きこもりだったのですか?」

 

俺とイッセーのぼやきに、アーシアがそう怪訝そうな顔になる。

 

「あー…まぁまたそれは今度、えと…入っても大丈夫かな」

 

俺とイッセーやアーシアが顔を見合わせた後、部屋の方に目を向ける。

 

「…あまり刺激させない様に」

 

小猫ちゃんは入っても大丈夫、と言った感じでため息混じりで答える。

意を決し、俺たちは部屋の中に入り始めた。

 

「…くらっ」

 

「そうか?……あ、お前人間だったか」

 

部屋の中は明かりどころかカーテンの窓も無く、はっきり言って闇の空間そのものだった。

イッセー、基俺以外の部員はみんな悪魔な為か、余闇をも見通せる視力があるのかその暗闇に気にしてない様子だった。

…ドアから入った光のお陰か、少しずつ部屋の内装が見えてきた。

中は可愛らしく装飾されており、ハートの形をした小さい白テーブル、クマなどの動物のぬいぐるみなども置かれていた。そしてど真ん中には…吸血鬼でも入っててもおかしくない棺桶が置かれていた。

 

「僕の事はほっといてくださいぃぃぃ…」

 

と、そんな狼狽した声の方を見ると、部長と朱乃さんと…。

 

「ぉお!?金髪の美少女!?しかも僕っ子!」

 

…金髪の赤目の可愛らしい少女がそこにいた、アーシアとは違い髪は短髪であるが、その顔付きは可愛く整っていた。

彼女はすっかり床にへたれこむように座り込んでいて、涙目で震えていた。そんな彼女をみたイッセーはすっかり興奮していた、頼むからセクハラして拗らせないでくれよ。

 

「見た目、女の子だけれど、この子は紛れもない男の子よ」

 

_興奮気味のイッセーに、部長は首を横に振りながら信じられない事を言った。

…男??え??薄暗い部屋だから判別できなかったかもだけれど、よく見てもこの子は可愛らしい女の子にしか見えなかった。え、マジ?

 

「この子、女装趣味があるのですよ」

 

すっかり狼狽した俺の横で朱乃さんが平然と答えた。

 

「えぇええぇええぇえええぇえぇえぇ!?」

 

「…まぁじかぁ」

 

その衝撃的な事実にイッセーが驚いた様に大声を上げ、俺もそうぼやく事しかできなかった。

 

「ヒィィィィィ!?ごめんなさい!!ごめんなさぁあああぁあい!!」

 

彼女…いや彼と言った方がいいか。イッセーの大声にビビったのか悲鳴をあげ謝り倒した。

 

「あ、いや!こっちが悪いから…イッセー、気持ちはわかるけど落ち着いてくれ」

 

こっちも謝りつつ、イッセーの方を見ると…。

 

「神様は無慈悲か…!?いや神様いなかったな…無慈悲っ…理不尽っ…無情っ…!!こんな可愛い子になぜっ…!!残酷すぎるっ…!!完全に美少女な姿なのにっ…!!【ピー】がついてるだなんて…!!」

 

ぐにゃああぁあぁ…!!と効果音が出ても不思議でないほど顔が歪んだのち、頭を抱え込んでる姿が目に映ってしまった。

 

「…下品な単語禁止」

 

と、俺らに続いて入ってきた小猫ちゃんがツッコむ。

 

「ゴメンよ小猫ちゃん…けどこれは酷い話だよ…!!」

 

…落ち込んだ様子の変態に、俺は顔を見合わせて励ます様に言う。

 

「イッセー、お前出ていけ」

 

「地の文と全く噛み合ってねぇよ!?確実に『ウザいから出ていけ』言う目をしてるよお前ぇ!?つーかなんで女装癖!?引きこもりな上女装癖ておま…誰かに見せるための女装ですかぁ!?」

 

と、軽いメタ発言かましたのちにそう女装少年に詰め寄る変態(あわれなひと)

だが、女装少年は涙目ながら訴える。

 

「だ、だ、だ、だ、だって女の子の服の方が可愛いもん!」

 

「可愛いもん!とか言うなあぁあぁあぁ!?クソっ!!野郎のクセにぃぃぃ!俺の夢返せ!俺は!さっきまでの俺は!アーシアとお前でダブル金髪美少女『僧侶』と言う夢を一瞬だけ見たんだぞ!?返せ!返してくれよぉ!俺の夢ぇ!」

 

「…人の夢と書いて、儚い」

 

「お、小猫ちゃんお上手」

 

「二人ともおぉおおぉ!?シャレにならんから!」

 

と、イッセーと女装少年の漫才を見て小猫ちゃんはズバッと言う。

そして女装少年が俺、イッセー、アーシアとゼノヴィアを涙目で見つつ言う。

 

「と、とと、ところで、この方達は誰ですか?」

 

「貴方がここにいる間に増えた仲間よ。『兵士』の兵藤一誠、『騎士』のゼノヴィア、貴方と同じ『僧侶』のアーシア。そして…唯一の人間である独也マリヒコよ」

 

部長に軽く挨拶するよう促された為、俺ら4人で軽く挨拶するも、相手はもうすっかり怯えた様子でプルプルと震えていた。

…気のせいか、一瞬だけ俺の顔を見た途端。恐怖に染まった顔と言っていいか、そんな感じの顔をしたのち顔を背けた。

確か朱乃さんが人間が苦手とか言ってたけど…それはそれとして重症過ぎる。

 

「お願いだから、外に出ましょう?ね?もう貴方は封印されなくてもいいのよ?」

 

「嫌ですぅぅぅ!!僕に外の世界なんて無理なんだぁぁぁぁぁっ!!怖い!お外怖い!どうせ僕が出てっても迷惑かけるだけだよぉぉぉぉっ!!」

 

部長がそう優しく言うも、すっかり縮こまった様子で泣き叫んでしまうだけだった。

 

「…なんか腹立ってきたな、たく!部長が外に出ろって_」

 

「待って!…俺が行ってみる」

 

すっかりその様子にイラついたイッセーが女装少年に近づこうとするも、俺が手を出し抑えて言う。

 

「お、おう…まぁ。俺じゃビビらせるかもか。任せたぞ」

 

そして俺は彼に近づき、縮こまっている彼の顔と同じ高さにまで膝を突いて、自己紹介する。

 

「初めまして、俺は…さっき部長に紹介された独也マリヒコ。宜しかったら君の事を聞かせても_」

 

「っ!!ダメ!!近づかないで!!」

 

女装少年がそう叫んだ瞬間_。

視界が一瞬白くなり_。

 

「…あ、あれ?」

 

視界には、先程までそこにいたはずの女装少年が消えていた。

 

「な、なんだ?」

 

「おかしいです。何か今一瞬…」

 

「…何かされたのは確かだね」

 

その謎の現象に俺と同じく、驚いた様子を見せるイッセーとアーシアとゼノヴィア。

だが、その俺ら以外のメンバーは特に動揺もせずため息をつくだけだった。そして女装少年を探そうと辺りを見回すと…。

 

「違うっ!!違うんです!!僕はそんなつもりじゃ…お願い!!怒らないで!!石を投げないでくださいぃぃぃ!!」

 

…部屋の隅っこで泣き叫んでいた。どうも怖がり方が普通じゃない。

すっかり彼にかけるべき声を失った俺に、朱乃さんが説明する。

 

「その子は興奮すると、視界に移した全ての物の時間を一時的に停止することが出来る、神器を持っているのです」

 

「…つまり、時間を止めれるって事ですか?」

 

俺の言葉に、肯定する様に頷く。

と言う事は先程の現象は、俺達の時間を止めてあそこから移動したと言うわけか。それならこの部屋から出ればいいだけの話だけど…それほどここから出たくないのだろう。

 

「彼は神器を制御できない為、大公及び魔王サーゼクス様の命でここに封じられていたのです」

 

その続きの言葉に俺とイッセーは理解した様子になる。

時を止める。そこから発生するアドバンテージは大き過ぎる…だが、制御出来なかったら危険なものだ。

部長は女装少年を優しく抱きしめて言う。

 

「この子はギャスパー・武らでも。私の眷属『僧侶』。一応駒王学園の一年生なの。そして…転生前は人間と吸血鬼のハーフよ」

 

_▲▼▲▼_

 

停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)??」

 

「随分と長い名前ですね…」

 

「えぇ、それがギャスパーの持っている神器の名前。とても強力だけど、今は制御出来ないの」

 

俺達の問いに部長が答える。

ギャスパー事彼…彼と呼んでいいだろうか。それはともかく彼自身はその力に恐怖し、引きこもっているわけだ。

 

「けど時間を停めるって、もう最強じゃ無いですか」

 

「そうかもしれないわね。けれどイッセーの倍加の力も、マリヒコのあらゆる動物や虫の力を使いこなす力。それに白龍皇の半減の力も最強クラスなのよ?」

 

イッセーの言葉に部長はそうサラッと答える。

言われてみればそうだけど、時を停めるなんてとんでもない能力だと思う。何せ相手を無力化できると同然だ。

 

「さっきも言った様に問題はその神器を制御できないところ。それ故ギャスパーは今まで封じられてきたのよ。自分の意思とは関係無く神器を発動してしまうのが問題視されていた所なの」

 

「けどそんな強力な神器を持った奴を、よく部長は下僕に出来ましたね。俺は『兵士』の駒全部使わなきゃ下僕に出来なかったのに」

 

言われてみれば確かに。イッセーの腕には神器の中でも凄まじい力を持つ神滅具と呼ばれる『赤龍帝の籠手』が宿っている。

悪魔に転生させる際には『兵士』の駒を全て使わなきゃ転生できないほどのものだ。

 

「_『変異の駒』(ミューテーション・ピース)よ」

 

「ミューテーション…」

 

「ピース?」

 

部長の答えに俺らは燻げな様子で答えた。

 

「通常の『悪魔の駒』とは違い、明らかに複数の駒を使わなければいけない転生体が、一つで済んでしまったりする特異な現象を起こす駒の事だよ」

 

俺達の疑問に答える様木場が解説する。

 

「へぇ…つまりもし、その特別な駒がもしあったらイッセーはその一つの駒で転生できてたって事?」

 

「えぇ、とは言え誰しも持ってるものではございませんわ。部長は稀にその駒を有していたのです」

 

その言葉を肯定するかの様朱乃さんはそう言って、続け様解説する。

 

「大体上位悪魔の十人に一人は一つぐらい持っているのよ。『悪魔の駒』のシステムを作り出した時に生まれたイレギュラーやバグの代物らしいけれど、それも一興としてそのままにしたらしいのですよ。ギャスパー君はその駒を使った一人ですの」

 

なるほど、駒にはそう言うのもあるのか。

…もしもう一個あれば俺も悪魔に転生できたりしたのかな。

 

「問題はギャスパーの才能よ」

 

「才能?」

 

俺の疑問に、部長は目を伏せながら答え始める。

 

「彼は類稀な才能の持ち主で、無意識のうちに神器の力が高まっていくみたいなの。私の目から分かるほど彼の力は日々増していってるわ…上の話では、将来的に『禁手』へ至る可能性があると言う話よ」

 

「バ、バランスブレイカーですか!?」

 

「それってイッセーが腕を犠牲にしたりしなきゃ至れない奴ですよね…木場もアレほどの奇跡がなければ至れなかったのも…!」

 

その説明にイッセーは驚愕し、俺は今までのを思い出す。

イッセーはライザーとの決着で対抗すべく、腕を龍…基籠手に宿った『赤龍帝』に捧げ、その結果片腕は龍の腕と化した。これは部長の処置でどうにか人の腕には保てている。

 

木場はコカビエルとの戦いで、聖剣計画と呼ばれる人体実験の犠牲になった子たちの、魂の鼓舞で至った。

だがギャスパーは何もせず、力が高まりいずれ『禁手』へ至る訳だ…俺達がその事実に驚いているのを察したか、困った様子で額に手を当て説明を続けた。

 

「けれどそれは危うい状態なの。もし制御出来る力も無く『禁手』に至ればその被害は未知数。だけど私の評価が認められた為、今ならギャスパーを制御出来るかもしれないと判断されたそうよ。私がイッセーと祐斗を『禁手』に至らせたと上の人は評価したでしょうね」

 

「ぅぅうぅ……ぼぼ、僕の事なんてほっといてぇ…僕の話なんてしなくていいのにぃ…」

 

部長が説明する傍ら、俺らのそばで…大きなダンボールから情けない声が聞こえる。

ダンボール妖怪?いいえ、ギャスパーがただダンボールの中に入ってるだけです。重症すぎる。

 

「ギャスパー君…さっきは馴れ馴れしくしてごめん。驚かせたかな」

 

「僕が悪いんですぅぅ…だ、だから部屋に戻してぇぇ…もう二度と出れないほどガッチガチな封印してくださいぃぃ…」

 

俺は先程の事を謝るも、すっかり彼は完全引きこもり体制に入ってしまった。

 

「…この子はこう見えても能力的には朱乃に次いで二番目なんじゃ無いかしら。ハーフとはいえ、由緒正しい吸血鬼に家柄だし、強力な神器も人間としての部分を手に入れている。吸血鬼の能力も有しているし、人間の魔法使いが扱える魔術も秀でているわ。本来なら『僧侶』の駒一つで転生出来ない程の逸材。『変異の駒』があった事が本当に幸運ね」

 

その部長の説明に俺とイッセーはすっかり感心した様子だった。

ギャスパー君、随分良いとこどりで凄い…後は彼の臆病っぷりが問題か。

 

「そういえば部長、吸血鬼って太陽に弱いんですよね?こいつは大丈夫なんですか?」

 

「あ、言われてみれば…続けて質問なんですけど、血とか吸いますよね?そこら辺はどうしています?」

 

ふと、イッセーがその疑問に口を出した後、俺も続け様に言う。

部長はその質問にうなづいて語る。

 

「彼はデイウォーカーと呼ばれる日中活動できる特殊な吸血鬼の血を引いてるから問題ないわ、けれど苦手ではあるでしょうけれど」

 

デイウォーカー?そう言うのもいるのか…後で図書館とかで調べてみるか。載ってるかはわからないけど。

 

「日の光なんて嫌いですぅぅううぅ!!太陽なんて無くなっちゃえばいいんだあぁぁあぁぁぁ!!太陽は極悪人だあぁぁぁぁ!!」

 

なんて事を言うんだこの女装少年。確かに吸血鬼や悪魔は太陽は苦手と言うが、太陽なかったら植物とか育たないぞ。麦も野菜も育たなきゃ料理も出来ない。後極悪人と言うが、太陽は人じゃないと思う。

と、俺はある疑問がまた浮かび上がる。

 

「…そう言えば授業とかどうしているんですか?」

 

「完全に自習ね…流石に教室には入れないもの。彼自身行きたく無いみたいだけれど」

 

部長は完全に困り果てた様子で答えた。

確かに神器が暴走したら授業どころでは無いが…。

 

「おいおい…それは流石にマズイぞ?力を克服してクラスと打ち解けなきゃダメだぞ?」

 

イッセーがそうギャスパー君に語りかけるも、すっかり喚くだけでダンボール箱からすらも出ようとはしなかった。

 

「嫌ですぅ!!!僕はこのダンボールの中だけで充分ですっ!!!外界の空気と光は僕にとって害的なんですぅぅ!!箱入り息子って事で許してくださああぁあぁあいっ!!!」

 

いや、箱入り息子って少し違う気がする。

 

「…マリヒコの疑問だけれど、彼自体ハーフだからそこまで血に飢えているわけでは無いわ。10日に一度、輸血用の血液を補給すれば問題ないわ。まぁ元々血を飲むのは苦手みたいだけれど」

 

「血、嫌いですぅぅぅ!!生臭いのダメェェェェ!!レバーも嫌いですぅぅぅ!!」

 

………コイツ本当に吸血鬼???

 

「意外と思うけれど、あの子は中にいる眷属の中でも一番の稼ぎ柱なのよ」

 

と、朱乃さんが俺らにそう言う。

え、嘘?どうやって契約取っているの?

 

「パソコンを介して特殊な契約を人間と取り行っているのよ。人間の中には直接私達と会いたくない人もいて。彼がその手のタイプの人にパソコンを介して解決しているの。パソコンでの取引率は新鋭悪魔の眷属の中でも上位に入るほどの数字を出しているの」

 

…まぁじかぁ。いや前から悪魔はハイテク化が進んでいるとは思っていたけれどまさかそこまでとは思わなかった。

そしてギャスパー君の方へ目線へ向けると、未だ喚いているダンボール箱妖怪に小猫ちゃんがジト目で見て…。

 

「へたれヴァンパイア」

 

「うわあぁぁぁぁぁん!!小猫ちゃんがいじめるぅぅぅぅ!!」

 

そんな吐き捨てる様な言葉に泣き叫ぶ事しか出来ないギャスパー氏。

…南無。と心だけで哀れみを送った。実際念仏とか唱えると悪魔にダメージが入るみたいだからここじゃ唱えれないけど。

 

「とりあえず私達が戻ってくる間だけでも、イッセー、アーシア、小猫、マリヒコ、ゼノヴィア。貴方達にギャスパーの教育を頼むわ。私と朱乃は三すくみトップ会談の会場打ち合わせをしてくるから。それと祐斗、お兄様が貴方の『禁手』について詳しく知りたいらしいから、ついてきてちょうだい」

 

「はい、部長」

 

部長や朱乃さんも忙しいものだと、つくづく思った。

やはり上に立つ人間てのは色々厄介ごとがあるものだろうか。俺もせめて助けになれれば良いけれど…

それにしても木場も呼ばれるなんて、やっぱりあの時の『禁手』は色々特別な物だろうか。神の死によって本来あり得ない融合_聖魔剣なんて物を生み出したのだから。

 

「イッセー君。マリヒコ君。悪いけれどギャスパー君の事をお願いするね」

 

そんな木場の言葉にイッセーは自らの胸を叩くよう手を当て、自信満々に答える。

 

「あぁ!任せろ木場!まぁ皆もいるし何とかなると思うぜ。多分だけど」

 

いや、多分かい。けどそう言うにも無理はない。

_時を停めるなんてとんでもない神器を持つギャスパー。だけど制御が出来ない。

俺達で彼をどうにか導けるのか…?

 

「マリヒコ君。不安そうな顔をしてたらギャスパー君も不安になりますわよ?ね?ギャスパー君?」

 

「僕にふらないでくださぃぃぃぃ!!不安ならもうほっといてええええぇぇぇ!!!」

 

俺の顔を見てそう朱乃さんがギャスパー君に向けて言った後、また喚き始める。

…俺に出来る事。それは。

 

「…ギャスパー君とおしゃべりかな?俺もそこまで口達者じゃ無いけどコミュニケーション能力を鍛えるとか」

 

「それはいいですわね。マリヒコ君、お願いね」

 

俺が絞り出した答えに朱乃さんは笑顔で答え、俺に託す様告げた。

 

「はいっ、えーとギャスパー君…よろしくお願いします」

 

「ひぃいいいぃいぃ…!?夜路死苦ですかぁぁああぁああぁ!?夜の道で僕を苦しめながら殺すんですかあぁあぁあ!?」

 

………不安になってきた。

 

_▲▼▲▼_

 

_夕暮れに差し掛かった時間帯。

旧校舎近くの運動などが出来る広場で男女が追いかけっこをしていた。まぁ男は女と見違えるほどの女装少年なのだが。

 

「ほら、走れ。ディウォーカーなら日中でも走れるはずだよ。私のデュランダルに斬られたく無かったら全力で走るんだ」

 

「ヒィィィィィ!?デュランダルだなんて怖い聖剣振り回しながら追いかけないでぇえぇええぇえぇええぇ!?」

 

_青春、汗を流し聖剣を振り回す少女。それから逃げ惑う女装男子。

これは正にかけがえ無い青春の1ページ_

 

「いややり過ぎ!!??ストップストップ!!??」

 

なんて事は無い。ゼノヴィア曰く「健全な精神は健全な肉体に宿る。即ち死中に活を求める。と言う日本の諺を参考にしてみようと思う」との事だ。

それはそれとしてやり過ぎだとは思う。もし当たったら即死じゃ無いのそれ!?

 

「…ギャー君。ニンニクを食べれば健康になれる」

 

「いやあああぁぁぁん!!??小猫ちゃんが僕をいじめるぅぅぅぅ!!」

 

更には小猫ちゃんがにんにくを持ち、ゼノヴィアと共にギャスパー君を追いかけてくると来た物だ。本当に吸血鬼がニンニク嫌いなのは驚いた。

それはそれとして1年同士仲が良いものだろうか、小猫ちゃん自身ギャスパーを「ギャー君」とあだ名で呼んでいた。

 

「おーおー、やってるやってる」

 

「あ、匙」

 

そこへ生徒会の顔見知りである匙がやってきた。

 

「お、独也に兵藤か。解禁された引きこもり眷属がいるって聞いてちょいと見にきたぜ」

 

「あぁ、あそこだ。ゼノヴィアに追いかけ交わされてるのがそうだぜ」

 

「マジで??ゼノヴィア嬢伝説の聖剣振り回して追いかけてるって良いのかあれ?俺ら悪魔の天敵武器だぞ?それに何で塔上ちゃんはニンニク振り回してるの?新手の儀式??…てアレか!?あの子か!?引きこもり眷属ってのは!!??金髪美少女!?」

 

イッセーが酷い鬼ごっこをしてる3人を指差し、そんな鬼ごっこに匙は驚いた矢先ギャスパーを見るなり興奮した様子になる。

 

「あー、その…彼、女装してるんだ。男なんだ」

 

俺の言葉に匙は項垂れ、心底ガックリした様子を見せる。

 

「嘘だそんな事…詐欺だよ詐欺。てか女装って誰かに見せたいからするものだろ?それで引きこもりて…矛盾過ぎないか?難易度高く無い?」

 

「いや俺に言われても…所でその格好は?花壇の手入れでもするの?」

 

何とも言えない匙の嘆きに苦笑しつつ、相手の姿を見る。

今の匙の格好はジャージな上に手には軍手をしていて、尚且つ花壇手入れの為の小さいシャベルを持っていた。

 

「お、よくわかったな?一週間前から会長から手入れする様に命じられているんだ。ほら、ここ最近学校の行事が多かっただろ?その上今度魔王様がここへいらっしゃる。学園を綺麗に見せるのが生徒会の『兵士』たる俺の仕事だ」

 

そう誇り高く胸を張る匙。中々感心するものだ。

俺も軽い手伝いで花壇の手入れは何回かしているがこれまた難しい。花の揃え方や雑草の抜き方、どれもこれも手が抜けないものだ。

 

「俺も手伝おうか?」

 

「出来れば頼みたい所だけどコレは俺の仕事だ。お前にはあの金髪女装野郎の面倒を見る仕事があるだろ?」

 

と、そんな話をしていると誰かの足音がしてきた。

俺らがその足音の方を見ると…

 

「へぇ。魔王眷属の悪魔さん方はここに集まってお遊戯をしてるわけか」

 

浴衣を着た見覚えのある男_アザゼルさんが俺達に近づいてきていた。

 

「っ!!」

 

「アザゼル…!!」

 

俺とイッセーがすぐさま警戒体制に入ると相手は軽く返事をしてくる。

 

「よっお二人さん。あの夜以来だな、そう警戒するなって?俺は戦う気はねぇぞ」

 

_この場にいる戦える者は全員相手に対して戦意を発している。

イッセーはアーシアを守る様後ろに下げて『赤龍帝の籠手』を発動させている。

ゼノヴィアも既に剣を構え、小猫ちゃんもいつでも行ける様に格闘体制に入っていた。

 

「な、なぁ…アザゼルって!」

 

匙が予想外の人物の登場で驚きつつも右手の甲に可愛らしくデフォルメされたようなトカゲの頭を出す。匙の神器、あのトカゲから舌を出し相手の動きを防ぎつつ、力を吸収する中々手強い神器だ。

 

「…俺とイッセーは数日前に何回も会ってるんだ」

 

匙の疑問に答える様俺はそう言いながらオーズドライバーを取り出す。

だが、戦闘体制に入った俺らに対してアザゼルは苦笑しつつやる気のなさそうな態度で返す。

 

「やる気のある若者ってのは嫌いじゃ無いけどさぁ。人の話は聞こうぜ?さっきも言った通り戦う気はねぇよ。構えを解きな?コカビエルにも勝てなかったお前らが俺に敵うわけないだろ?ちょっと散歩がてらに寄っただけさ。聖魔剣使いはいるか?是非とも見てみたくてね」

 

そう相手は言うが、俺らは誰も構えを解かなかった。

それに木場に用事?確かに木場は珍しいタイプの『禁手』に至った。なら神器を狙っていると聞く堕天使側が見逃すはずがない。

 

「木場ならいないさ!木場を狙ってるならそうはさせねぇぞ!」

 

そうイッセーが啖呵を切るも、アザゼルさんはやれやれと言った様子で頭を掻きながらこちらへ歩いてきた。

 

「たくっ…やる気だけなら一流ときたもんか。それで勝てるなら苦労しないもんだ…そうか、聖魔剣使いはいないのか。つまんねぇな」

 

「…用が無いなら帰ってください」

 

相手には何も殺気も感じない。だがそれが逆に不気味だ。

 

「つれないねぇ?前まではあんなに仲良くゲームしてたってのに。折角暇つぶしがてらアドバイスしてやろうと思ったのに…そこに隠れているヴァンパイアにな」

 

アザゼルさんはとある木に対してそう言った。

そこにはいつの間にか木陰に隠れていたギャスパーがすっかり怯えた様にガクガクと震えていた。

そしてアザゼルがギャスパーへ近づくなり、まじまじと見つめ始める。

 

「『停止世界の邪眼』の持ち主なんだろう?そいつは使いこなせないと害悪になる代物だ。神器の補助具で不足している要素を補えば良いと思うが…そういや悪魔は神器の研究が進んでいなかったな。五感から発動する神器は持ち主のキャパシティが足りないと自然に動き出して危険極まりない」

 

_そんなアザゼルさんの解説に全員が唖然とした。ギャスパーはすっかり怯えた様子で震えていたが。

 

「それ、『黒い龍脈(アブソープション・ライン)』か??練習するならそれを使ってみろ。このヴァンパイアに接続して神器の余計なパワーを吸い取りつつ発動すれば、暴走も少なく済むだろうさ」

 

次に匙を見てまたそう説明するアザゼルさん。何のつもりだ…?

 

「…お、俺の神器、相手の神器の力も吸えるのか?ただ単に敵のパワーを吸い取って弱らせるだけかと…」

 

「たくっ…最近の神器使いは便利な道具だと思ってその力の真意をろくに知ろうとしない。『黒い龍脈』は伝説の五大龍王の一匹、『黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン)』ヴリトラの力を宿している。まぁこれは最近の研究で発覚した事だがな。そいつはどんな物体にも接続することが出来て、繋いだものの力を散らせるんだよ。短時間なら持ち主側のラインを引き離して他の者や、物に接続させることも可能だ」

 

五大龍王、ヴリトラ、そんなとんでもなさそうなワードを連発するなかそう説明していく。

匙はその説明を受けて驚いたか、ゆっくりと口を開く。

 

「じゃ、じゃあ俺側のラインを…例えば兵藤とか独也とかに繋げれるのか?そして二人の方にパワーが流れると?」

 

「あぁ、成長すればラインの本数も増える。そうすりゃ吸い取る出力も倍々だ」

 

…その説明の後、しぃん…と匙だけでなく俺らも静まり返る。

 

「神器上達で一番手っ取り早いのは、赤龍帝の宿した者の血を飲む事だ。ヴァンパイアには血でも飲ませておけば力がつくさ。それと…」

 

そしてアザゼルさんはイッセーの方を向いて…

 

「ヴァーリ。ウチの白龍皇が勝手に接触して悪かったな。さぞ驚いただろう?アイツは変わったやつだが、今すぐ赤白ライバルの完全決着をしようだなんて思っちゃいないだろうさ」

 

と、軽く謝罪をした。それより気になることもある。

 

「…あの機械のタカと言い、銀のスーツの人。アレは貴方が関与しているんですか?」

 

セルメダルを取ったり、俺の方に来たあの機械のタカ。

それに、コカビエルの戦いで乱入した銀の機械のスーツの人、アレの正体を聞いてみる。

 

「あー…それを語るのは会談の時な、ま、後は自分達でやってみろよ」

 

と、それについて語る事なく去ろうとするアザゼルさん。

…何事もなくてよかった。そう思った瞬間…。

 

「あ、そうそう」

 

と、俺の横にすれ違おうとした時。

 

「…あの事故…事件の真実。知りたいなら今夜俺のマンションに来な」

 

「っ!!」

 

_それだけ言い残し、去っていた。

…何で、何でアイツがそれを知っているんだ?

あの事故は誰にも話していない。おじさんもそう口は軽く無いはずだ。

心臓の鼓動が高まり、その胸打つ音がうるさく聴こえる。

 

「_ヒコ」

 

あの事故の…否、事件の真実?アレはただの事故じゃないのか?言われてみればアレは_

 

「_リヒコ」

 

息が荒くなる。俺の目、脳裏に映るのは_

炎に燃え盛るあの_

 

「マリヒコ!!」

 

「っ!!」

 

…その声で我に帰ると、イッセーが目の前にいた。

 

「お前…どうしたんだ?アザゼルになんか言われたのか?」

 

…先程の俺の様子に心配したか、そう聞いてくる。

 

「あ、あぁ…大丈夫。大丈夫だよイッセー」

 

「けれどお顔の色が悪いですよ?」

 

その横でアーシアもそう心配そうに聞いてくる。

 

「…今日の所は帰って休んだ方がいいかと」

 

「けど…」

 

流石に帰るわけにはいかない。俺は休む様言った小猫ちゃんにそう反論しようとするが…。

 

「お前、手が震えてるぞ?それに汗も…マジ帰って休んだ方がいいって」

 

「アザゼルが変な術をかけたわけでもなさそうだし…どうしたと言うのだ?」

 

匙、ゼノヴィアも俺の様子を見たのか、そう言ってくる。

…ふと手を見ると、確かに震えていた上に手汗で濡れた感覚が広がっていた。

 

「………わかった。ごめん…今日は帰る」

 

…申し訳ない気持ちでみんなにそう答える。

何をしているんだ俺、こんな事考えてる場合じゃないだろ。

 

「マリヒコ先輩いいぃぃ…もしかして僕のせいですかぁ!?知らないうちに神器の効果がマリヒコ先輩に…うわああぁぁん!!」

 

「…ギャー君のせいじゃないし、それとうるさい」

 

「小猫ちゃんがいじめるうぅぅぅ!!…マリヒコ先輩お大事にぃぃぃぃ!!」

 

ギャスパー君が一瞬自分のせいかと思い込み、泣き叫ぶも小猫ちゃんの冷たいツッコミが炸裂する。

…俺はみんなに一礼し、その場を去っていった。

 

『…あの事故…事件の真相。知りたいなら今夜俺のマンションに来な』

 

…アレに何の真相があるって言うんだ。

アレはただの事故。

…けど、どうしてもその言葉が俺の脳裏から離れなかった。




次回。それなりのシリアス回になるかもしれません。
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