ハイスクールD×D×O〜悪魔と龍と王の物語〜   作:カノサワ

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※割りかしシリアスな為注意。


第4話=真実と棺と力=

夜の7時半、俺は自転車を漕いである所へ向かっていた。

アザゼルさんのいるマンション。位置自体はもう何度も向かっている為分かっている。

この件は完全に自分の問題、みんなには知らせていない。

 

「よっ、と」

 

そしてマンションへ着くなり、駐輪場に自転車を置いて降りる。

と、そこへ俺の肩に何かが乗る様な感覚がした。そっちの方を見ると、「キー」と鳴く赤いコウモリが俺の肩に乗っていて、すぐさま向こうへ飛んでいった。その方向には。

 

「…わり、後つけて来た」

 

…自転車に乗るイッセーが目に見えた。

 

「お、お前…」

 

「悪い!けどどうしても気になってな…部長に使い魔借りて尾行させたんだ」

 

謝りつつもイッセーは自らが乗る自転車を駐輪場へ置いて降りる。

 

「ついて来たのは俺だけだよ。けどアザゼルの所行くなんて…部長に知られたら大目玉だぞ?黙っておく代わりに俺もついて行くぜ」

 

「…わかったよ」

 

恐らく何を言っても引かないであろうイッセー。俺は説得するのはやめ、イッセーと一緒にアザゼルさんのいる部屋にまで移動し始めた。

 

_▲▼▲▼_

 

「まさか赤龍帝まで来るとはな?ま、いいや。何か飲むか?」

 

「…いえ」

 

「いらねぇよ」

 

アザゼルさんの部屋のリビング。俺らは用意したソファに座り、テーブル越しでそちらもソファに座るアザゼルさんと対面していた。

…妙な空気が流れていた。言葉を発しようにも上手く言えない気がする。

そして…切り出したのは。

 

「そうかい、で、聞きたいことがあるんだろ?お前も聞くか」

 

「?…聞きたい事?何だよそれ」

 

と、アザゼルさんが先に切り出し、イッセーは怪訝そうな様子で返す。

 

「おいおい、お前何も言ってねぇのかよ?ま、いいや。あの事故の真実について教えてやるよ。なんでアレほどの規模になったのか」

 

「………」

 

その言葉に俺は何も言わずに頷く。イッセーは頭を傾げて質問する。

 

「あの事故?なんだそれ」

 

「赤龍帝、10何年か前に起きた飛行機事故。ある国に飛行機が落ちて大火災になった事件は知ってるか?町一つが壊滅しかけた事故だ」

 

___飛行機事故。

 

「?…あ、時々テレビにある奴か?確か大型飛行機がどっかエネルギー発電所とかに落ちて大爆発したとか…」

 

イッセーの言う通り、アレは時折テレビに取り上げられるほどの事件だ。

10何年前に起きたジャンボ飛行機事故。その飛行機には客だけでなく、珍しい遺物などが詰め込まれていた。

 

「そうだ。何故飛行機が落ちたかはわからん、フライトレコーダーすら何故か消えていた。あの事故の生き残りは僅かしかいねぇ、その上身元も不明だ」

 

_生き残り、アレで生き残った人はほぼいないと言えよう。

全て燃え盛り、空すらも黒く染まった地獄の光景。

全身黒く焼け、俺に手を伸ばす人。

既に生き絶えた赤ん坊を俺に向けて助けを乞う人。

最後の最後で手が届かず目の前で瓦礫に埋もれてしまった少女。

 

「アザゼル…お前何を言って」

 

「そいつはな。その事故の生き残りなんだよ」

 

「っ!?」

 

…その事実にイッセーは驚愕する。

ずっと誰にも言わなかった事実。だが問題はそこじゃ無い。

 

「…アザゼルさん。何が言いたい、あの事故と貴方に何の関係が」

 

「もしその事故にオーズ。メダルの力が関わってるとしたら?」

 

___今、何て?

 

「よく思い出してみろ、あそこにいたのは本当に人間だけだったか?」

 

__待て、待ってくれ。

確かあの時いたのは黒焦げになりながら彷徨う人………いや。

 

「お前も最近会っただろ?」

 

_アレは本当に人間だっただろうか?

 

「そもそも、飛行機に乗っていた時に何かがあった筈だ」

 

_飛行機が揺れた直前。俺は。

 

『お母さん!ボクトイレいってくる!』

 

『そう?気をつけてね、◾️◾️◾️』

 

_あの時の会話が最後の会話。

 

「あの飛行機にはある物が積まれていた」

 

『ん?あれなんだろ』

 

アザゼルの言葉と共に一つずつ記憶が、あの時の自分の行動が思い出していく。

トイレを済ませた後、飛行機内のある一室を覗いた。そこには客がフライト中でもある程度楽しめるよう古代遺物が展示されている部屋だ。

 

『箱?…何か光ってる!』

 

石の箱、今の俺が見たら棺が何かと思うだろう。だけどあの時の幼い俺にとっては。

 

『…触らなければいいよね?』

 

宝箱か何かと思った。箱の隙間から溢れる光に興味を持った俺はそれに近づいてしまった。

あの時、大人に知らせていれば。

あの時、不用意に近づかなければ。

 

『?…何か落ちてる?コイン?』

 

ふと地面を見ると、鈍い光を放つコイン…否、メダルが落ちていた。

それに手を伸ばした瞬間。

箱の隙間から。

 

『…わぁあぁっ!?』

 

_大量のメダルが箱から溢れ、俺を飲み込み_

 

「_っ!!!!」

 

…目覚めた後の光景が脳裏に過ぎった。

_ミイラの化け物が彷徨い。人を襲っていた。

 

「…ヤミー…!!」

 

「あぁ。あの時事故現場には複数体のヤミーが彷徨っていた…そして、石化したオーズのベルトを持ってた子どももいた。それが…お前だ」

 

…つまり、あの時の地獄のような…否、地獄そのものを生み出した原因は…オーズの、力。

 

「あの飛行機には本来、どっかの裏に関わる組織がオーズの力を掘り当てやがってな。莫大な金との取引で明け渡す為に隠れ蓑として積んでいたんだ。だが何かの偶然か不安定なまま開いた結果、溜まりに溜まっていたエネルギーが暴発してあの事件を引き起こしたわけだ」

 

「…じゃあ、じゃあ何だって言うんですか…!!俺が…俺があの時箱に近づいたから…あの棺に近づいたからオーズの力は解放されたのですか…!!」

 

俺はアザゼルの説明に、震える声で問いただす。

違う、アレは偶然だ。

もしアレが俺が近づいた事で引き起こった事態なら…俺は…!!

 

「あぁ、その可能性はあるな」

 

「っ_」

 

その言葉に、胃に何か湧き上がる感覚を引き起こす。ソレを引き起こさないよう口を手で塞ぐ。

 

「アザゼルっ!!お前…マリヒコが原因だっていいてぇのか!?」

 

「そこまでは言ってねーよ。ただメダルにはまだ分からん部分が多い。自らを解放させる為人を引き寄せた、俺はただ可能性のある話をしただけだ」

 

アザゼルのその言葉にイッセーはそう怒鳴る。

 

「帰るぞマリヒコ!!!コイツの話なんて…!!」

 

「待て!!待ってくれイッセー…大丈夫だ。アザゼルさん…何で貴方はそこまで詳しいのですか…!!」

 

そう俺に帰るよう促すも、まだ聞き足りない事がある。

なぜ相手がそこまで知っているのか、それを聞くまで帰れない。

 

「単純な話だ。俺はその飛行機に追跡していたんだよ、着いた先でオーズの力が収まった箱…棺を奪う為にな?一応念の為言っておくけどな、しっかり封印する為にだぜ?無論その後俺はお前さんを引き取ろうとしたけどよ…丁度お前が入った病院にお前のおじさん。哲郎がいたんだよ」

 

「…おじさんが?」

 

「あぁ。アイツがまだ考古学者だった頃は何度か出会ったんだ。まぁアイツにゃ俺の正体は教えてねぇが…アイツ、変な蛇に噛まれて入院していたんだよ」

 

アザゼルさんがおじさんの知り合いだった事を告げられる。

それより、本来ならアザゼルさんに引き取られるはずだった俺がなぜおじさんの元へ…それについても相手は語り始めた。

 

「あの時哲郎は、お前を引き取るって言ったんだ。最初は俺が育てるって言ったけどよ…アイツはこう言ったんだ」

 

『…僕はね、この子に色々な世界を見せたくなったし、色々経験させたくなったんだ。僕ももう歳だし…日本でレストランでもやろうかなって思ってさ!それもただのレストランじゃない…世界中の遺跡とか歴史をモチーフにしたレストラン!!それをこの子に見せたいんだ!』

 

_おじさんの夢、それがきっと今のロストトラベル。

…だけど。

 

「ま、根負けして哲郎に任せた訳だ。結果としては正解だったけど…色々大変だったぞ?裏から手回ししたりして…」

 

「…言いたい事は何となくわかったけどよ。結局アンタどうしたいんだよ」

 

イッセーがそう詰め寄るようにアザゼルさんに問いただす。

そして、相手が出した言葉は。

 

「そいつが真実知りたいから教えてやっただけだ。どう受け止めるかはそいつ次第だよ」

 

_そうだ、結局の所この苦しみは自業自得。

知りたいからここへ来た。

それが例えどんな真実であろうとも…俺は受け止めなければ行けない。

 

「ま、大体こんなもんだ。外も降ってきたし…今日は泊まるか?」

 

…窓を見れば、外には雨が降っていた。

 

「…いいよ、大体堕天使総督と泊まったら部長にマジで怒られる」

 

「俺も…帰ります」

 

イッセーと俺がそう返し、アザゼルは「あそ、気をつけろよ」とだけ言った。

そして俺らは席を立ち、部屋から出ようとすると…

 

「おいマリヒコ」

 

と、不意にアザゼルさんが呼び止めた。

 

「…馬鹿な真似だけはすんなよ?起こった事は取り返しはつかねーけど、自分を捨てて償っても何もプラスにはならん。しぶとく生きてしっかり人生を謳歌するのが償いだと思いな」

 

「…はい」

 

俺はそう返事するだけして、部屋を出て行った。

 

_▲▼▲▼_

 

「うわ、降ってるな…あー、なんだ。マリヒコ…」

 

「…」

 

駐輪場へ向かう最中、外はすっかり雨が降っていた。

雨自体はまだそこまで激しい降りではなく、急いで帰ればそこまで濡れないほどだった。

 

「…アイツの言葉は気にすんなよ。その、なんて言っていいか」

 

「イッセー、頼みがある」

 

俺の言葉にイッセーは目を見開かせるも、静かに聞く体制に入った。

 

「この事は部長らには内緒にしてほしいし…それに、明日からでも俺とは普通に接してくれれば嬉しい」

 

…俺は俯きながらも、喉が詰まる感覚を堪えながら呟く。

 

「俺は大丈夫、明日からでも普通に頑張る。だから…」

 

「……わかった」

 

イッセーは俺の頼みを聞き入れたのか、そう言った。

駐輪場へ着くと、イッセーは自転車に乗り始める。

 

「…けど、マジで苦しいなら俺に相談しろよ!…一緒に帰るか?」

 

「いや、一人で帰る…イッセー、また、明日」

 

「…おう、また明日な」

 

そしてイッセーは、自転車を漕いでその場を去った。

 

「………」

 

俺は自転車に乗らず、押し進める。

 

「………」

 

雨が少しずつ強くなっていく。

 

「………」

 

おじさんの夢。

ロストトラベル。

俺に色々な世界を見せたくて、少しずつ作り上げた夢の店、だけど…俺は。

 

「………俺は」

 

人殺し

 

「っ!!!!」

 

その一言が脳裏に走った瞬間、自転車を強く押し走り始める。

ソレだけは知りたくなかった。

あの事故の原因は俺のせいかもしれない。

 

「…たくなかった」

 

知るべきだった真実、だけど本当は。

 

「知りたくなかった…!!」

 

俺のせいじゃ無い、あくまでアレは事故、だけどそうじゃ無かった。

俺が不用意にあの箱…オーズの力が封印された棺に近づいた事で引き起こった事件。

 

「っ!!」

 

ガッ!!と自転車のタイヤに何か石のような物が引っかかり、ガシャン、と音を立てながら俺と一緒に自転車は倒れた。

 

「………」

 

…起き上がる事はせず、ただ強くなる雨に打たれ続けた。あの時と同じだ。

ただ何もせず倒れ、諦めてしまったあの時…ふと、少し横を見ると河川敷が見え、少し流れが強くなった川が目に入った。

 

「………」

 

這い上がるよう起き上がり、その川にゆっくり近づく。

 

「………そうだ」

 

お前のせいだ。そう思いながらポケットにしまったオーズドライバーに手をかける。

 

「こんな物が」

 

それを取り出し、川の目の前にまで辿り着いた。

 

「こんな物が無かったら…!!」

 

あの事件は起きなかった。街の人が巻き添えになる事は無かった。

飛行機の人達も、父さんも母さんも死ぬ事は無かった。

 

「…こんな」

 

だったら簡単だ、捨ててしまえばいい。

それを大きく振り上げるよう持ち上げ…。

 

「こんな…ものっ!!」

 

___振りかぶった瞬間。手が途中で止まる。

 

「…っ…!」

 

捨てれば終わる、それなのに…コレが手から離れない。否、離さない。

捨ててしまえば、全部終わる。自分の数少ない価値であるオーズの力が使えると言う価値すら失せる。

 

「…なんで」

 

ひたすら自問自答する。こんな危険な物は早く捨てるべきだ。

|捨てればみんなを危険な目に合わせないで済む《捨てればもう戦えない》。

沢山の命を奪ったこんな物(今までみんなを助けてきた力)

俺の全てを奪った力(俺を今まで助けてきた力)

 

「…くっ…!」

 

どさり、と膝を着くと目から熱い感覚が流れる。

しばらく、ずっと流してなかったものだ。

この力があったからコカビエルを倒せた。

この力で部長の危機を乗り越えた。

この力でアーシアとレイナーレを救えた。

この力が、父さん、母さん、そして関係無い人々を巻き添えにしてしまった。

 

「………帰ろう」

 

力が入らない足を無理矢理立たせ、オーズドライバーをポケットに捩じ込むよう入れて乗り捨てた自転車のところまで戻る。

 

「…あ、傷」

 

その倒れた自転車は転んだ拍子にフレームに傷が入ってしまい、雨に打たれ続けた。

 

「…」

 

その自転車を立たせ、ゆっくりと雨に打たれながら通し歩いた。

 

_▲▼▲▼_

 

「ど、どうしたのマリヒコ君!?ボロボロじゃ無いか!?」

 

「…ただいま」

 

家に帰るなりおじさんが出迎える。帰りの遅くなった俺に心配したのかそう聞く。

 

「ほら!とりあえず着替えてお風呂に…」

 

「…ごめん、今日は早く寝たい」

 

そう俺に促すも、俺はそう力ない声で答えた。

 

「…そっか、けど着替えてから寝てね?風引いたら大変だし」

 

俺は何も言わず、おじさんに一礼して風呂の脱衣所まで行き、パジャマへと着替えて部屋へ向かい始めた。

 

「マリヒコ君…お休み」

 

「…お休みおじさん」

 

そう挨拶だけ交わし、階段を上り部屋へ入るなり、ベッドに潜り込み始める。

 

「…っ、くっ…」

 

ベッドに潜り込むと、目から溢れる物が止まらない。

そしてアザゼルさんが伝えたおじさんの言葉を思い出す。

 

『…僕はね、この子に色々な世界を見せたくなったし、色々経験させたくなったんだ。僕ももう歳だし…日本でレストランでもやろうかなって思ってさ!それもただのレストランじゃない…世界中の遺跡とか歴史をモチーフにしたレストラン!!それをこの子に見せたいんだ!』

 

「…ごめん…!ごめんおじさん…俺にはそんな資格…俺にそこまでしてもらっていい資格なんて…!!」

 

_人殺しの俺に、そんな幸せを貰う資格は無い。

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