ハイスクールD×D×O〜悪魔と龍と王の物語〜   作:カノサワ

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前回の三つのあらすじ!

一つ!アザゼルの誘いに乗り、彼の住むマンションへ向かったマリヒコとイッセー!

二つ!!語られたかつて自らの身に起きた飛行機事故。その真実は自らが持つオーズの力によって引き起こされた物だった!!

そして三つ!!!オーズの力を解放したのは自らの責任だと思い詰めるマリヒコ!!!


第5話=痛みと扉と紙袋=

…アザゼルに真実を知った次の日。ハッキリ言って気分は最悪だった。

夢見はいつも通り悪く…いや、今日のは酷かったものと言って良いだろう。

 

「マリヒコ君…大丈夫?目のクマ酷いけど」

 

朝食、今日のご飯はカルボナーラにサラダ。俺の好物の一つであるが今日はどうも食欲が無く、食べる気がしない。

だが残すのはおじさんに悪い、フォークで巻いて食べるもどうも味気がしない。

 

「…キツそうなら学校休んだら?」

 

「あー…大丈夫だよおじさん」

 

そしてご飯をどうにか食べ切り学校へ向かう。

 

「行ってらっしゃい、早退する時は連絡してねー」

 

「だから大丈夫だって…行ってきます」

 

…重い足取りで玄関を出て学校へ向かう。

 

_▲▼▲▼_

 

「それでなイッセーよ、俺はやっぱオッパイは丸型がいいと思う」

 

「いや、敢えてロケット型も良いかもだぞ」

 

オッス俺イッセー。今は昼休みで相変わらず松田と元浜とエロ雑談をしていた。

 

「それはそれとして…マリヒコは大丈夫なのかよ」

 

元浜がマリヒコの方を見る。アイツは今日…どうも心ここに在らずという状態だ。

…多分昨日の話が原因だ。相変わらずアイツは自分で自分を追い詰める癖が治ってなく、例の話で悪化しちまったんだろうな。

 

「よし!俺が元気つけてやる!マリヒコ!お前オッパイはどんな形が好きだ!!」

 

松田がそう問いかけてくる。いや今のアイツにそれは…

 

「埴輪」

 

…そう気の抜けた答えが返ってきた。

 

「………埴輪ぁああぁああぁあぁああ!?」

 

「お、おま…そうきたかぁ…!?相当マニアックだな…!?」

 

変態二人が驚愕し始める。俺は確認の為質問する。

 

「な、なぁマリヒコ…質問の意味わかってる??」

 

「…あ、悪い話聞いてなかった」

 

じゃあなんだ埴輪って!?どう言う意味を持ってして答えたの!?

 

「は、埴輪…また一つ新たなトリビアが生まれちまった…!!」

 

「マリヒコ…お前もステージに上がってきたか…!!」

 

松田、元浜よ。マリヒコは適当に答えただけだと思うぞ…にしても重症すぎる。

 

「あ、それとマリヒコ…部長から呼び出されてるの忘れるなよ?」

 

「…うん」

 

マリヒコは部長から放課後来るよう伝えられていた。

_多分昨日のだろうな、流石に堕天使総督に会ったにも関わらず何もありませんでしたじゃ済まされない。

 

「埴輪…埴輪…!?」

 

「考えれば考えるほど深い…埴輪オッパイ…!!」

 

それとマリヒコ、あの二人がヤバい方にイッちまった。しかし埴輪オッパイか……今度深く考えてみよう。

 

_▲▼▲▼_

 

 

放課後のオカ研部室、そこには今重苦しい空気が流れていた。

 

「…説明してもらえるよね?マリヒコ」

 

今ソファに座ってる俺に、そう部長もソファに座って対面していた。

…流石に追及は避けられない。俺もそれは覚悟していたのだけど。

 

「………」

 

「マリヒコ君?だんまりはいけませんわよ。もし下手な接触で問題が起きれば、貴方だけの責任じゃ済まされませんわ」

 

俺から見て左のソファに座る朱乃さんが言う。

…わかってる。流石に昨日は軽率過ぎた。

…なら話すか?自分の過去を、そしてオーズの力がこの世界に復活した原因を、だけどそれは_

 

「……すいません。今は話したくありません」

 

…声を震わせながら、今言える言葉を告げる。

 

「!…マリヒコ、言っている意味がわかる?貴方は下手したらこう捉えかねないのよ。堕天使と悪魔を行きゆきしているスパイだって」

 

「ぶ、部長!?それは流石に_」

 

「…会談が終わり次第全部話します。今は言える自信がありません、けど部長ら…オカ研仲間に情報を明け渡すような真似はしていません…!!」

 

スパイ、その発言にイッセーが反発するよう言おうとするが、俺は頭を下げながら部長に頼み込む。

 

「………わかったわ。けど完全に信用したわけじゃない、先ず会談が終わるまでベルトとメダルは預からせてもらうわ。そして」

 

部長が指を弾くと、ポン!と俺の横に紅いコウモリ。部長の使い魔が現れる。

 

「しばらく貴方はその子に監視してもらうわ。もし下手な動きを取ってもすぐわかるようにね」

 

キー、と鳴きつつ俺の肩に使い魔が停まる。

 

「…わかりました」

 

俺はポケットからベルトとメダルを取り出し、机に置く。

 

「…これで貴方は戦えない。もし危険な目に遭いそうな時はこれを使って?」

 

朱乃さんが俺に悪魔を呼ぶ為のチラシを差し出す。恐らく何かあった際にこれを使えと言う意味だろう。

それを受け取り、去ろうとすると…。

 

「…厳しい事を言うけど今のマリヒコ君は聖剣事件の時の僕と同じだ。頼む、自分の苦しみで殻を作らないでくれ。相談出来る時に相談しないと絶対後悔する」

 

そう、木場は俺に問い詰める様に言う。

 

「…ありがとう木場、落ち着いたら話すよ」

 

「マリヒコ君…!!」

 

俺は後ろ髪を引っ張られる様な感覚を感じながら、振り返らず部室から出て行った。

 

_▲▼▲▼_

 

…旧校舎の廊下を歩きながら考える。

言うべきだったか、それとも…

 

「…クソっ」

 

どうも嫌になる。この事態を招いて尚、自分の過去を話せない自分に。

はっきり言って俺は部長やみんなの優しさに甘えている。だからこそ話してしまえば…。

 

「…」

 

けどそれは自分が、人殺しだと軽蔑される可能性がある。

 

「っ!」

 

ガッ!!と自分の頭に衝撃が走る…当たり前だ。何せ自分の頬付近を自分の拳で殴ったからだ。

 

「キッ!?」

 

部長の使い魔が俺のとった奇行に驚いたか、心配そうに俺を顔の横を飛び回る。

 

「…ごめん。大丈夫、部長には言わないでくれよ?」

 

「キィ…」

 

まだ納得して無いか。心配そうに俺の横を飛び続ける。

…何を考えているんだ俺は、それじゃまるで部長達を信頼してないと同然じゃないか。

…廊下を歩くとふと、ギャスパーの部屋に続く扉を見つける。

 

「……」

 

その扉を見て、俺は苦笑しながら自分の手を見つめる。

 

…結局俺はオーズなんて力を手に入れて前に進めた気がしたけど、少しも進んで無い。

それに…ついギャスパーと自分を比べてしまった事に嫌悪する。そして拳を握り…

 

「キッ!!」

 

「いっ!?」

 

ガブっ!と使い魔が俺の腕に噛み付く。

だけど、俺に攻撃する為でなく、さっきの奇行を止める為に噛みついていた。

 

「キッ!!キキ!!」

 

「わ、わかったって!もうしないから離し…」

 

「…あ、あの、何かご用で」

 

…扉の隙間がいつの間に開いてて、その隙間からギャスパーの目がこちらを見つめていた。

 

「あ、ごめんギャスパー君…騒がしくして」

 

「…ジー」

 

多分俺と使い魔が騒いだせいでギャスパー君が気を散らしてしまっただろうか、何故かこちらを見つめていた。

 

「…怒らせた?」

 

「い、いいいいいえ!!…その、今のマリヒコさんの顔…」

 

「顔?」

 

ギャスパー君はどうやら別に俺が騒いだ事には気にしてない様で…そう呟く様に答えた。そう言えばさっき自分で殴ったから跡でも付いたのか…?

 

「…僕の、その…いじめられてた時の顔に似て…いえなんでもありませんごめんなさい!お大事に!失礼しま…」

 

「あれ、マリヒコとギャスパーじゃんか」

 

そんな事を言いながら扉を閉めようとしたギャスパーに、ふとイッセーが横から話しかけてきた。

 

「い、イッセー?」

 

「て…お前どうしたその顔!?」

 

俺の顔を見て、そう心配そうに問い詰めるイッセー。

イッセーも俺のさっきの奇行で着いた跡に流石に気づいただろうか…。

 

「あ、あぁこれ?…ちょっと転んで顔を打ってしまって」

 

「…本当か?」

 

ジッ、と疑う様に俺の顔をイッセーは見つめる。

 

「あ、あぁ…それよりギャスパー君に用事あるんじゃなかったのか?」

 

「…まぁそう言う事にしとくか、ギャスパー。部長の指示で俺と一緒に悪魔稼業に行く事になったけど」

 

「…え?」

 

俺が話を逸らす様にそう言った後、イッセーがまだ腑に落ちない様子でそう言う、それを聞いたギャスパー君がキョトンとした顔になる。

 

「…無理ですぅううううぅう!!僕が外に出たら迷惑かけるぅ!!インターネットで契約取れればいいんだぁ!!」

 

「だ、大丈夫だ!ダンボール箱に入ったままで大丈夫だって!」

 

泣き喚くギャスパー君に、イッセーがそんな提案をする。いやダンボールに入ったままて…。

 

「わ、わかりましたぁああぁ…絶対開けないならそれでいいですぅううぅ…」

 

多分半分しか…いや2、1割しか納得してないギャスパー君がダンボール箱を持ちながら出てくる。いいのか?

 

「…そ、それとマリヒコ先輩。その…」

 

ふと、ギャスパーが俺におずおずした様子で何かを取り出し…。

 

「い、嫌な事あったら暗い部屋でこの子を抱きながら寝ると、す、少しはリラックス出来ますよ…」

 

…それは可愛らしいクマのぬいぐるみだ。多分ギャスパー君の部屋にあったものだろうか。

 

「え、えーと…」

 

「こ、これはお仕事でネット経由から貰ったものですけど同じのが二つありまして…ご、ごめんなさい!!」

 

ギャスパー君なりの心配だろうか…流石に無碍にするのも心が痛む。

 

「いや、謝らなくていいよ…とりあえずこれは預かる形でいいかな?」

 

そう言いながら俺はギャスパー君の持つクマのぬいぐるみを受け取る。

…帰り、これ持ち帰りながら歩くのかな。

 

「…それと、女装をしたらもっと落ち着くかと」

 

「ギャスパー君???」

 

「ご、ごめんなさいぃいいぃい!!出過ぎた真似でしたぁ!!」

 

_▲▼▲▼_

 

あの後俺は自宅、イッセーは悪魔稼業としてギャスパー君と一緒に…いや、自転車にギャスパー君が詰まったダンボール箱を乗せて走って行った。

流石にそれなりのサイズのクマのぬいぐるみを持って帰ってきた時はおじさんは驚いたけど、友人からの預かり物として誤魔化しておいた。

 

そして夕飯などを済ませ、夜。俺は電気を消した自室のベッドに寝転がりながらクマのぬいぐるみを持って見つめていた。

 

「…アイツなりの慰めかな」

 

その茶色い生地の可愛らしいクマのぬいぐるみの触り心地はモフモフとしてとても良く、良いものだと伺える。

 

「…」

 

試しに、軽く抱きしめながら寝てみる。

…どうも変な気分だ。とは言え悪い気分じゃ無い、まぁ流石にこんな姿見られたら多分軽い恥もんだろう。こう言うのは女の子が_。

 

「っ!!」

 

そう言えば、あの時の瓦礫に埋もれた子も、これぐらいのぬいぐるみを。

 

「…ああもう、なんで」

 

いつもの事だ。あの事件は一時も忘れなかった事はない…けどアザゼルから話を聞いた時からずっと脳裏にこびりついてしまい、事あることに連想してしまう。

…気づけば、ぬいぐるみを抱きしめる力が強まっていたのか、腕の中のぬいぐるみが少し潰れてしまっていた。

 

「や、やば…!」

 

力を緩めると元に戻る。流石に借り物だから乱暴な扱いはするべきでは無い。

…これじゃ落ち着くどころかまた眠れなくなった。とは言えギャスパーに非は無い。

すると、机に置いたスマホの画面が暗い部屋を照らした。

 

「?…なんだ?」

 

俺はぬいぐるみをベッドに置いて、部屋の灯りをつけて机にあるスマホを手に取り確認する。画面にはイッセーからのメッセージが映し出されていた。こんな時間に、とは脳裏によぎったものの悪魔稼業としてはこの時間が仕事時間だろう。そしてその内容は…。

 

【緊急事態!またギャスパーが引きこもった!こんな時間に悪いけど来れるか!?】

 

「…まぁじかぁ」

 

内容を確認し、俺は嘆息するよう呟く。とは言え流石にほっとく訳にも行かず俺は学園へ向かうべく寝てるおじさんに気づかれないようにこっそりと家を出る事にした。

 

_▲▼▲▼_

 

『ふぇええぇえええええぇええぇええぇえん!!!!』

 

旧校舎へ着くなり、ギャスパー君の泣き声が響き渡っていた。

そのギャスパー君の部屋の前には部長達が集まり、彼に扉越しに声をかけていた。

 

「御免なさいギャスパー。イッセーと仕事をすればもしかしたら為になると思って…」

 

部長はそう謝るも、当の本人はただ泣き喚いてばかりであった。一体何が…。

 

「イッセー。これは何事で…」

 

「お、マリヒコか…実はな」

 

…イッセーから聞いた話では、仕事で森沢さんと言う前にイッセーが担当した人にギャスパー君を紹介した所、なんとあろうことかギャスパー君に興奮して変態じみた顔をしながらにじり寄って来たそうだ。

当然そんな物に耐えれるはずもなく、また神器が暴走して森沢さんとイッセーの時を停めてしまったとの事だ。

 

「…そ、それは何とも」

 

「それに…あの子の過去も少し話しておくべきね。いいわよね?」

 

朱乃さんがそう扉越しで確認すると、ギャスパー君が力無く『はい…』とだけ答えた。

_彼の生まれ、基父親は名門である吸血鬼だが、母親は人間だった。

純潔を何よりも重んじる吸血鬼には人間の血が混じってるギャスパーは差別対象でもあり、腹違い。つまり母が吸血鬼である兄弟からは小さい時から虐められていた。

…何より、吸血鬼どころか人間嫌いの理由は人間界に行っても異物扱いされ、居場所すらなかったと言う。

 

「…そんな」

 

「仲良くしようとしても、少しの拍子で相手を停めてしまう。自分はその気じゃなくても相手にとっては恐怖の対象…そしてギャスパー君はそれを何度も体験して、今に至ったわけ」

 

そんな彼の過去に、俺が言葉にならない様子で精一杯の言葉を呟くと、朱乃さんは目を伏せて答える。

居場所、家族、仲間。ギャスパー君にはその全てがほぼ無い…逆に才能を持ってしまった為時が経つにつれ、どんどん力が増していくばかりだ。

今は確かにオカ研と言う同じ異能を持つ仲間がいる、だが彼の過去が外へ出る勇気を失わせていたのだ。

 

「……」

 

彼の待遇と、俺の過去をつい重ね合わせてしまうかの様に扉を眺める。

俺には家族がいないし、容姿も金髪と言う物だから子供の頃はよくそれに揶揄われた…が、その度にイッセーが揶揄った子達に立ち向かい、俺の髪を褒めたものだ。

それに家に帰ればおじさんもいて、安らげる場所だ。だが…

もし、イッセーに出会わなかったら、もしおじさんに引き取られなかったら……俺はギャスパー君と同じ、否…もっと酷い事態になっていたのかもしれない。

 

『ぼ…僕は…こんな神器いらない!!だ、だってみんな停まっちゃうんだ!!怖がる!嫌がる!僕だって嫌だ…!と、友達を…な、仲間を停めたくないよ…大切な人の停まった顔を見るのは…も、もう嫌だ…!』

 

扉越しにそう涙声でギャスパー君はそう訴える。

…神器は確かに側から見れば素晴らしい力だ。知らず知らずのうちにある程度発揮してプロスポーツ選手にもなれる人もいるし、イッセーみたいにとてつも無い力が手に入る事はある。

だが全員全員がそうでは無い、アーシアは神器で悪魔を癒した故に魔女と蔑まれて教会から追放された。

もし使い所を間違えたら…否、例え持ち主が間違えないようにしても力が不幸を引き寄せ、望まぬ結果を孕んでしまう事もある。

 

「困ったわ…この子をまた引きこもらせてしまうなんて。これじゃ私は『王』失格ね…」

 

落ち込むように呟く部長。この事態は誰が悪いとかそう言う問題では無い。

なら今の彼に必要なのは?鉄をも切り裂く爪を持つ欲望の王の力?全てを焼き尽くすほどの龍の力?

違う、そんな物はただ相手を傷つけるだけの力。今必要な力は…。

 

「部長、これからサーゼクス様との打ち合わせがありますが…」

 

「そうね…けどもう少しだけ時間を延ばして貰うわ。今はギャスパーが優先…」

 

「すいません。ここからは俺に任せてください」

 

朱乃さんがこれからの用事を部長に伝えた後、そう考えて今はギャスパー君を優先すると答えようとしたが、俺はそれを遮るよう提案する。

いきなりの提案に二人は目を見開かせるも、続け様にイッセーも言い始める。

 

「俺にも任せてください!部長らにも大事な用事があるんですよね?せっかく出来た男子の後輩!ここで俺が何とかしなきゃどうにもなりません!」

 

「二人とも…わかったわ。あの子の事は二人に任せるわ」

 

「お願いね?…ギャスパー君の事。元気つけてあげてね」

 

部長と朱乃さんはそれに了承したかの様に笑顔を見せる。

二人はまだ心配そうな様子を見せつつ、ギャスパー君の部屋の扉を一瞥した後この場を後にした。

 

「ギャスパー君。俺は君と色々話したい、いいかな??」

 

「あぁ。それと俺はお前が出てくるまでここから一歩も動かないぜ!」

 

俺は扉越しにそう告げた後、イッセーはそう宣言して扉の前に座り込む。

 

『………』

 

それでも彼は無言を貫き通した。

 

「えーと…ギャスパー君はさ。好きな食べ物とかある?」

 

『……カップ麺』

 

「…栄養偏らない?」

 

『…悪魔なので平気です』

 

と、まぁなんかこう…湿った会話になり始めた。

とは言え焦っては行けない、少しずつ歩み寄ろう。

 

「じゃあさ、ギャスパー君はパソコンでどうやって契約取ってるの?」

 

『…チャットや、写真などを相手に送って対価をネット経由で貰っています』

 

写真?…色々気になるけど、ギャスパー君の話も少しずつ聞けてきた。

 

『…どうして、マリヒコ先輩やイッセー先輩は僕に構うんですか?』

 

次に、相手から質問が来た。

なぜ構うか…少し考えるとギャスパー君が続け様に言う。

 

『こ、怖く無いんですか…?ぼ、僕は二人みたいに力を使いこなせなくてみんなに迷惑をかけてばかりで…』

 

「怖くねーよ。まぁ最初時を停めれるて聞いた時は驚いたけど、ギャスパーは別に悪い事に使おうと思ってないだろ?」

 

そうイッセーが返した後、俺も続けて言う。

 

「何で構うかか…ギャスパー君をこのままほっといていない者するのは簡単だけど、そうしたらギャスパー君はずっと一人で部屋の中にいる事になるじゃ無いか。俺はそれが嫌でギャスパー君の友達になりたいと思ってるんだ」

 

俺の正直な思いを告げた後、次にイッセーが語る。

 

「それにさ、力を使いこなしてると言っても俺は…正直自分の神器が怖いさ。確かにこの手には最強のドラゴンが宿った神器を使ってるけど、俺は他のみんなみたいに凄い経験をした訳でも無い普通の男子高校生なんだよ。だからさ…」

 

イッセーが自らの左手を見つめ、物静かに語る。

 

「…ドラゴンの力を使う度に普通じゃ無くなる自分が怖くなる。コイツを使う度に体の何処かが変わっていく感じがするんだ。悪魔やドラゴンの事…それにヴァンパイアの事だってまだ全然知らないしわからない、けどそれを理由に立ち止まりたく無いし、前に進もうと思う」

 

その言葉を聞いて、俺はハッとする。

…力に苦しんでるのは俺やギャスパーだけじゃ無く、イッセーもだった。

普段のイッセーはそれでこそ明るい様子を見せ、時折…いや毎日変態じみた発言でそう思えなかったが、コイツもコイツで内心抱え込んでいるものがあった。

 

…自分だけが苦しんでると勘違いし、塞ぎ込んで耳も目を塞いで逃げてしまう。それは確かに自己防衛の一つの手段でもあり、決して悪では無い。だがそれだけでは前には進めない。

 

「それに…実は俺、オーズのベルトを川に投げ捨てようとしたんだ。こんな物があるからいけないんだって、けど捨てれなかった」

 

あの時の事を白状するように呟きつつ、今は何も入って無いポケットをさする。

俺のその発言にイッセーは驚いた様子を見せるも、何も言わなかった。

 

『…どうしてですか?も、もしかしたら自分の力で大事なものを失うかもしれないんですよ?…せ、先輩達はどうして力と向き合えるんですか?…す、捨ててしまえば楽になれるのに…』

 

「確かにそうかもしれない…けど、捨ててしまったら自分の価値が無くなると思って捨てれなかったんだ。オーズの力を捨ててしまえばオカ研に俺がいる意味が無くなる…最低だよな。これじゃ部長らを疑ってると同然だ」

 

軽く自虐する様に返す。オカ研に…否、悪魔の世界に入るきっかけになったオーズの力。忌むべき過去を生み出したのは確かだ。

 

「それに…ライザー・フェニックスとのレーティングゲームで俺らは負けたんだ。俺がやられた時はそりゃもうボコボコにされて最後ら辺の記憶が無いほど酷かったもんだ。それでも覚えてるんだ…部長が泣いているところだけは覚えてやがる」

 

イッセーが悔しそうに歯をギュッ。と食いしばる様な表情を見せて握り拳を作る。

 

「イッセー…お前」

 

「ぼ、僕はその時いませんでした…」

 

イッセーの方を見た途端ふと、ギィ…と部屋の扉が少し開く音がした。ギャスパー君が少しだけ不安そうな顔を出していた

 

「大丈夫、責めやしないさ。ギャスパー君もこれから一緒に進まないか?」

 

「…ぼ、僕じゃご、ご迷惑をかけるだけです…引きこもりだし、人見知りも激しいし…神器もまともに使えないし…」

 

俺はそう説得する様問いかけるも、まだ不安が拭いきれない様子を見せていた。

…俺はその顔を逸らさず、ジッと見つめて言う。

 

「…友達になろうギャスパー君。俺は何度停められても絶対ギャスパー君を嫌わないし否定しない」

 

「あぁ、俺もお前の事を嫌わないぞ。俺らがずっと面倒見てやる…まぁ。悪魔としてはお前が先輩だろうけど、実生活は俺らが先輩だから任せろ」

 

_俺らの言葉にギャスパー君は目を見開かせる。

 

「俺もギャスパー君の事はまだよく知らないし、色々話してみたいんだ。約束する、何度停められたって絶対ギャスパー君を見捨てやしない。ね?」

 

俺はゆっくりと問いかけつつ、平手を上にギャスパー君に手を差し伸べる。

_ギャスパー君に必要なのはあの時と同じ、誰かに差し伸べる手だ。

彼が転生悪魔になった経緯は家を追い出された後、ヴァンパイアハンターに襲われて死にかけた時に部長に拾われ、転生悪魔となった。決して誰もがギャスパー君を見捨てたわけではない。

それでも俺自身の今の願いは、彼に手を差し伸べたい。同情心から来る行為かもしれないが。何より…彼とは友達になりたい。ただそれだけだ。

 

「力を貸してくれ、俺らと一緒に部長を支えよう。大丈夫だぞ?コイツは底なしのお人好しだから絶対お前には酷いことしないぜ。もしお前に酷いことするなら俺らがぶっ飛ばしてやるぜ。俺には伝説のドラゴンの力が宿っているんだぜ?」

 

屈託のない笑顔を見せながら左腕を見せるイッセー。だが当の相手はコメントに困った様子でオドオドしていた。

 

「俺の血飲むか?アザゼルの野郎が言っていた事がマジなら、俺の血を飲めば神器を扱えるかもしれないぞ」

 

「…怖いんです。生きたものから直接血を吸うのが、ただでさえ自分の力が怖いのに…これ以上何かが高まったりしたら…僕は…僕は…」

 

イッセーの提案を聞くも、震えながら呟くギャスパー君。

 

「ギャスパー君…」

 

「自分の力を制御出来ない自分が嫌か。ちょっと不謹慎だけど俺はお前の能力が羨ましいけどな」

 

「っ_」

 

そのイッセーの言葉にギャスパー君は目を見開かせる。何せ自分の忌まわしい力が羨ましい、と言われればそりゃ面食らうだろう。

 

「だって時間を停められたら最高じゃ無いか。俺がその神器を持っていたら大変な事になってたに違いない。きっとこの学園中の女子達にいかがわしい事をしていたいに違いない。そうだな…単純にその女子の時を停めてはスカートを覗き見していたな。そして…ぶ、部長の時を停めてお、オッパイをこの手で好きに…!!」

 

「アホ!!」

 

ペシィ!!と思いっきりイッセーをしばく、おま…酷いぞそれは。良い雰囲気を何大無しにしてくれとんだこの変態は。だが俺の思いとは裏腹にギャスパー君は何故か微笑んでいた。

 

「…お二人先輩は優しいんですね」

 

「…まー、ごめんなこんな奴で…俺だったらもっとマシな使い方してるよ。そうだな…誰かの頭上に瓦礫とか落ちてきたらそれを停める、とか」

 

少し詰まりそうな喉を絞り出すように行ってみる。そんな能力を持っていればきっと…誰かを助けれたに違いない。

 

「そんな風に言われたのは初めてです。羨ましいとか人を助けるために使いたいだなんて。それにお二人は仲がいいんですね?」

 

そりゃ小学生からの腐れ縁みたいなものですしね。

 

「コイツは俺と違ってまだウブいしな。俺には夢がある!赤龍帝の力を_部長のおっぱいに譲渡したい!」

 

「してどうすんだよ」

 

「分からないのかいマリヒコ君。赤龍帝の譲渡とは場合によってはそのモノの真の力を発揮するという。言わば部長のおっぱいが真の力を発揮する。真の魅力を溢れ出す、つまり部長のおっぱいは最強だ。わかったかいマリヒコ君???」

 

ダメだこいつ。はやくなんとかしないと、けどギャスパー君は完全にイッセーを尊敬するような目で見ていた。なんでだよ。

 

「す…凄いですイッセー先輩!強大な神器を持っていながらそこまで卑猥に前向きに向き合えるなんて…ぼ、僕には到底及ばない思考回路ですが、何故だが少しだけ夢と希望を感じました!イッセー先輩の煩悩って勇気に溢れていますね」

 

「ギャスパー君。こんな奴を尊敬してはいけない、それと一つ聞きたい事があるけどいいかな?」

 

そんな熱弁に軽く引きながら、俺はそう質問する。

 

「?…なんでしょうか」

 

「あの時なんで俺にぬいぐるみを貸してくれたんだ?別に嫌じゃないけど、あれも大事な物じゃないのか?」

 

その質問に、ギャスパー君は少し顔を伏せて言う。

 

「…失礼ですけど、あの時のマリヒコ先輩の顔…昔の僕に似ていました」

 

「似てた…?」

 

「…兄弟や人間に怖がられていじめられ、全部が嫌になった時に雨で出来た水溜りを見た時、泣きそうで、だけどどうしようも出来ない僕の顔…そんな顔に似てましたからつい…ご、ごめんなさい!出過ぎた真似でした!」

 

_あの時の俺はそんな顔をしていたのか。全部が嫌になって、もうどうしようも無いあの時の感情。

 

「…大丈夫だよ。それに…ぬいぐるみの抱き心地も悪くなかったし。今は家にあるけど今度返すね?」

 

「!…そ、そうですか!けどぬいぐるみは差し上げます!…友情の証という事でいいですか?」

 

「よしよし、二人とも仲良くしてくれて嬉しいよ。二人とも見よ、俺はこの手で部長の乳を揉んだことがある」

 

俺らの会話に割り込むようイッセーがそう言う。何堂々とセクハラ発言してるんだよコイツ、だけどギャスパーは驚いた後にイッセーを食いつくように見始める。

 

「ほ、本当ですか?あ、主人でもある上級悪魔のむ、む、胸を揉むだなんて…イッセー先輩といると驚くことばかりです…」

 

「頼むよギャスパー君。君はこんな奴みたいにならないでくれ」

 

と、和気藹々…時々カオスな会話をいつの間にかギャスパー君の部屋に入り込んで話し込んでいた。

 

「流石二人とも、ギャスパー君とすぐに談笑出来るなんてね」

 

「あ、木場」

 

そんな最中部屋を覗き込むよう扉を開けて入る木場が、彼も自分の仕事が終わったのだろうか?

すると、イッセーが何か思いついたような顔になり木場に問いかける。

 

「木場、話がある」

 

「なんだい?イッセー君」

 

「俺とマリヒコとお前とギャスパーは男だ」

 

「なんだよ突然」

 

俺は怪訝そうに、今に始まったことでもないが変な事を言い始めるイッセーにそう聞く。まぁ嫌な予感がする。

 

「まーよく聞け、俺はグレモリー眷属の男子チームで行える連携を考えた」

 

「ふむ…それは興味あるね。どう言うのかな?」

 

木場は興味深そうに問いただす。そして自信満々にイッセーは語り始めた。

 

「まず俺がパワーを貯める、そしてその力をギャスパーに譲渡して周囲の時を止める。その間俺は停止した女子を触り放題だ」

 

「わーい案の定だー」

 

「…ま、またエッチな妄想をしていたんだね。それはそうと、それはだけなら僕らの役目は無いんじゃないの?それとマリヒコ君。気をしっかりしてくれ、君は彼の幼馴染なんだろ?」

 

そんなアホなプランに俺は最早気が抜けた返答しか出来ず、木場も言葉を失いかけながらもそう言ってくる。

コイツの煩悩は酷い物だけど、神器を手にしてから益々酷くなってる気がしてならないぞ。

 

「いいやある。お前らはオーズの力と聖魔剣で俺を守れ、もしかしたらエッチなことをしている間にも敵が襲来してくるかもしれない。いいか?チームワークは大事だ、俺が力を溜め、その力を譲渡してギャスパーが女子を停め、俺が堪能してる最中お前らが俺を守る。素晴らしいチームワークだ」

 

「イッセー君……僕はイッセー君のためになら何でもするけど…一度今後の事を真剣に話そうよ?力の使い方がエッチ過ぎる。ドライグ泣くよ?」

 

「そうだそうだ。女の子の服を脱がせる技とかお前…そんな物のために使われるドライグの身にもなれ」

 

『二人は良い奴だなぁ…オーズの力を継ぎし者…いやマリヒコ。お前はあの王とは違い善性なる者と認めよう』

 

ふと、脳にドライグの声がそう聞こえる。いやそれでいいの??ドライグも苦労しているんだなぁ…

 

「なんだいなんだい!二人してそんな憐憫な眼差しを向けて!ええい!!こうなりゃ澄ましたお前らの化けの皮を剥がしてやる!!腹割って話すぞ!即ち_第一回『女子のこんな所が堪らなく好きだ選手権』!!まずは俺からだ!俺は女子のおっぱいと脚を見るね!!」

 

「お前優勝でいいよ。俺辞退な」

 

「ま、まぁまぁ…付き合ってあげようよ」

 

そんなアホな選手権を開くイッセー。木場も苦笑した様子だがそこまで嫌じゃ無さそうだ、まぁギャスパー君を和ませる為にはいいかも…?

とまぁそんな阿呆な事を加えて俺らは談笑し始めるが…。

 

「…ギャスパー君。大丈夫か?」

 

…震えてる彼を俺らは見逃さなかった。まだ複数人の会話に慣れないのか、否。彼は時折俺らに目を向けないようにしている…恐らく神器がまた暴発する事を恐れてであろうか。

 

「す、すいません…ダンボールの中でもいいですか…?蓋は閉めないので、ただ、人と話すのはダンボールの中が落ち着くのです…」

 

ギャスパー君は俺らに申し訳なさそうにそう言う、流石に無理はさせれない。俺らはそれを許すよう頷いた。

 

「あぁー…落ち着きますぅ。これですよぉ、ダンボールの中だけが僕の心のオアシスなんです……」

 

「そんなにいいんだ。ダンボール箱…ん?何してんだイッセー?」

 

そんなダンボール吸血鬼に苦笑してると、イッセーが部屋にあった紙袋を手に取っていた。

 

「あぁ。そんなに人と目を合わすのが嫌ならって、思いついたんだけど…」

 

するとイッセーはその紙袋に二つの穴を開け、それを…ギャスパー君の頭に被せた。

 

「こ、これは…」

 

「…わー」

 

そこには、薄暗い部屋に紙袋を頭部に被せた女装少年が誕生した。

いや、何と言うか…穴から見える赤い眼光がより一層雰囲気を立たせている。

 

「ど、どうですか〜?似合いますか〜?」

 

「す、凄い雰囲気出てるよギャスパー君」

 

当の本人は視界がそこまで良くないか、紙袋を被ったままノロノロと、言わばゾンビのように歩いて近づいてくる。

いや…これはこれで別次元の怖さだ。

 

「そ、そうですかぁ…?これを被れば僕も吸血鬼としてのハクがつくかも……」

 

いいのそれで?奇怪!!紙袋を被った女装吸血鬼現る!?と言うのが脳裏に流れたのは黙っておこう。

 

「ま、まぁ…さて次はマリヒコだ。女性のどこが好きだ?」

 

そんな紙袋女装吸血鬼に苦笑しつつも、あのアホな選手権が続行されたかのように質問するイッセー。

 

「…答えないとダメ?」

 

「ギャスパーも勇気出したんだ。お前が答えなきゃどうする」

 

………仕方ない、と思い俺は目を伏せ考える。

女性の好きな所か…そんな事言われても…。

_ふと、脳裏にある事を思い出すように浮かび上がる。

最初のメダル、タカメダルを拾ったあの時…校門近くで出会った彼女の夕焼けに照らされた_。

 

「……髪の毛??」

 

目を開け、ふとそんな事を言ってしまう。

 

「ほほう…いい所に目をつけたな。髪は女性の命とも言う!部長のあの美しき紅い髪!朱乃さんの艶やかな黒!アーシアの純金の様な金髪!小猫ちゃんの純粋なる白!ゼノヴィアの青き髪!いやはやマリヒコよ…お前にも素晴らしい欲があったもんだ」

 

うざったらしい程そう熱弁するイッセー。殴っていいだろうか?

そんなこんなで夜通しの男子だけの猥談が始まってしまった。ちなみにまさか木場がイッセー曰く『アイツもスケベであったか』との事だった。




9月入ってから涼しくなった気がしたけどまだ暑いですね。
この小説を読んで頂いてる皆様には感謝しかございません。本当ありがとうございます。
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