咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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丸々2週間も空いてしまった……本当にすみません。そしてお待たせしました、ようやく更新です(´ω`)

記念すべき100話目なので見直し追記あれこれしてたらこんなにも時間が……アプリのイベントとかも次々と来ましたし、走行娘始まりましたしでてんやわんやでした←

fgoでは恐竜が来てくれました。ボイジャー? ああ、エックスとかジードとかのOP歌ってる人ですよね。

ゆゆゆいでは友奈、銀に続いてUR夏凜が来てくれました。神世紀赤属性URにはどうにも縁があるようです。3周年ですし、ラジオ来るし、ショートアニメになるし、ゆゆゆいの勢いは衰えませんな。

東方ロスワではレミリアと幽々子、ユウキの誕生日から再スタートしたメモデフでは10人もの星6ユウキが。天華百剣も琉球三宝刀揃いましたし……fgoとのこの温度差はなんだ←

さて、今回はアンケートで最多だったお話です。それでは、どうぞ。


番外編 未来の花達は突然に

 「……また、ここに来ちゃったんだねぇ」

 

 気付けば、楓は気持ちの良いそよ風が吹く緑生い茂る原っぱの上に居た。遠くには高い山々が見え、太陽の光を反射したキラキラと光る湖畔。視認する直前まで何処に居るのかも分からず混乱したが、次々と脳裏に浮かぶ記憶がこの場所の事を彼に教えてくれる。

 

 ここは以前にもやってきた、或いは夢で見た“夢空間”のような場所。以前は様々な可能性の世界の少女達と邂逅し、奇跡か夢でしかあり得ない体験をした場所である。そう思い返しながら、楓は以前はコミカルな大きな城があった場所に体ごと向き直り……。

 

 

 

 「……なんかパワーアップしてる……!?」

 

 

 

 彼にしては珍しく、目を見開いて驚愕した。以前に見た下は小さく上は大きい、まるで飛び出す絵本のようなコミカルな桜色の大きなお城。今回はその上に、直接乗せたかのように真っ白な大きな教会が()()()()()。上の方には黄金の鐘があり、揺れてリンゴンリンゴンと大きく綺麗な音を響かせている。

 

 更に、以前もあった入口の所の大きな看板の文字が“楓くん歓迎”から“うぇるかむかえでくん”と何故かひらがなかつ達筆に書かれている。行きたくないな……と内心思うものの行かなくてはならないという謎の使命感を持って城なのか教会なのかわからない建物へと足を運ぶ楓。そしてそのまま以前のように内部が見えない入口を通って中へと入った先で、彼は見た。

 

 「こっちもなんか増えてる……」

 

 床の上を、足の踏み場も無い程に埋め尽くす、色とりどりのサンチョ達。奥には前回と違って扉が1つだけであり、ひとまずはそこを目指す……前に、楓は足下のサンチョの中から1匹の紫色のサンチョを抱き上げて凝視する。

 

 そのサンチョは他のサンチョと違い、何故かカツラを被っていた。しかもそのカツラの髪型が園子と同じなのだから笑うべきか笑わないべきか悩む。というか、カツラの髪の長さが明らかにサンチョに合っていない。他に居ないのかと見回してみると、同じように勇者部メンバーの髪型のカツラを着けたサンチョがちらほら。そして、抱き上げられたサンチョが一言。

 

 

 

 「テ アモ」

 

 「なんで声はあのダンディな声のままなんだ……というか何語なんだろうねぇ」

 

 「スペイン語で“愛してる”という意味だよ、チコ」

 

 「ああ、そう……!?」

 

 

 

 見た目に反してダンディな男性の声で喋るサンチョ(園子ヘアー)。ふと疑問に思った楓が何となく呟くと流暢な日本語で返ってくる。一瞬の間を起き、目の前のサンチョが話してきたのだと理解した楓は思いっきり驚き、思わずサンチョを手離してしまう。そのまま他のサンチョ達に埋もれて姿が見えなくなった。

 

 驚きのあまりバクバクとしている胸を焦った表情で抑えつつ、扉へと歩み寄る楓。勿論、サンチョ達を踏まないようにゆっくりと。少し時間を掛けて辿り着いた彼は扉に手を掛け、ゆっくりと開いて中へと入った。

 

 そこは真っ白な広い部屋だった。中央には丸いテーブルと1つの椅子、そしてその奥に大きなベッド。他には何もないシンプルな部屋であった。

 

 「また、シンプルな……っ!? 扉が……開かない?」

 

 部屋を軽く見渡した瞬間、扉がドゴォッ! と無駄に鈍く大きな音を立てて閉まる。直ぐに開けようとしたが、どういう訳か開く気配がなかった。試しに蹴ったり体当たりしたりとしてみたが、やはり開かない。そこで楓は以前に会った少女の1人が“扉が開かなかった”と言っていたのを思い出す。

 

 (……今回は自分が“待つ側”なのかねぇ?)

 

 以前は自分が扉を開けていく側に居たが、今回は逆に“開けられる側”なのだと思い至る。勿論確証はないが、こんな何でもありな場所で一々確証を探すのも面倒だと楓は扉から離れて部屋の中央に向かい、椅子に座って待ってみることにする。

 

 さて、今回は誰と出会うことになるのか。どんな可能性の世界の人がやってくるのか。少しの不安とワクワクを感じつつ扉の方を見ること数分、唐突にガチャッ……と音を立てて扉が開いた。そして、入ってきた人物を見て楓はまた大きく目を見開く。

 

 

 

 「あれ、楓? にしては背と髪が……?」

 

 「……銀ちゃん? にしては背と()()が……!?」

 

 

 

 入ってきたのは三ノ輪 銀だった。しかし、彼の記憶の彼女とは色々と変わっている。

 

 150と少しだった身長はどう見ても楓と同じくらいまで伸びており、髪も大分伸びていて首の後ろで纏めている。明らかに年齢が楓の記憶よりも上であり、1番の違いはその大きく膨らんだお腹。つまり、妊娠していることであった。

 

 「……とりあえず、こっちにどうぞ。椅子に座って下さいねぇ」

 

 「え? あ、ありがとう……えっと、楓……で、いいんだよな?」

 

 「そうですよ。そちらは三ノ輪 銀……で、いいんですかねぇ?」

 

 「あ、うん。もう“三ノ輪”じゃないけどさ」

 

 立ち上がって彼女に近付き、その手を引いていつの間に増えていた椅子にゆっくりと誘導し、座ったのを見てから対面の椅子に座る楓。お互いにお互いのことを把握しながらも疑問が抜けないことに苦笑いしつつ確認し合う2人。そこで銀が呟いたことに疑問を持った楓が首を傾げると、銀はクスッと笑って口を開いた。

 

 「今はあたし、()()() 銀なんだ」

 

 「……成る程、今回はそういう感じなのか」

 

 「そういう感じ? 楓はここがどういう場所なのか知ってるのか? いや、なんかあたしも覚えがあるというかなんというか……それに、楓もなんかちっさいしさ」

 

 「それは今から説明しますねぇ」

 

 銀のセリフで今回の流れを概ね把握した楓は彼女の疑問に答え、この世界の自身で分かる範囲で説明する。ここが様々な可能性の世界……パラレルワールドの誰かと出会える場所であること。以前にも同じようにここに来たことがあること。そして、いつ元の世界に戻れる……夢から覚めるかはわからないこと。

 

 説明を聞いた銀は驚きつつも彼がこんな嘘を付くはずがないと言う。更に言えば彼女自身もここに来たことで似たような空間……園子の夢空間での記憶が甦っていたこともあって彼女なりに理解を示していた。ここまで話す際、大人の銀相手ということで敬語で話していた楓だったが、彼女からの申し出で中学生の時と同じ対応で構わないと告げられたので敬語は抜けている。

 

 「今回は多分、自分と一緒になった誰かと出会うことになるんだろうねぇ」

 

 「で、あたしが1番乗りって訳か。楓がちっさいのも納得したわ。中学生の時の楓か……もう10年以上前になるのか。懐かしいなぁ」

 

 「銀ちゃんは大人になったねぇ……うん、綺麗になった。綺麗なお嫁さんと一緒になって、そっちの自分は幸福(しあわせ)だろうねぇ」

 

 「へへっ、そうかな……うん、あたしも素敵な旦那さんが居て幸福だよ。最高の形で夢を叶えてくれた……自慢の旦那様さ」

 

 昔を懐かしむ銀に楓は朗らかに笑いながら呟く。今の彼には想像することしか出来ない未来の姿。彼女の人となりを知るからこそ、夫婦になった別の世界の自分は幸福であることは疑いようがない。その証拠として目の前に幸福そうに笑う銀の姿があり、そのお腹の中には2人の愛の結晶が産まれる瞬間を待っている。

 

 改めて、大人になった彼女の姿を見る。伸びた身長、長くなった髪、可愛いというより綺麗になった顔立ち、女性らしく丸みを帯びた体。控え目に言っても美人という言葉が出るだろう。膨らんだお腹を撫でる手は優しく、会話をしていても落ち着きがある。だがその笑顔は楓が知る中学生の彼女と変わらなかった。

 

 それから少しの間、楓は銀の世界の話を聞いた。銀は専業主婦として家を守り、彼女の世界での楓は大赦に所属し、同じく大赦で上の地位に着いた園子の秘書のようなモノをしているらしい。勇者部の皆とも交流は続いており、頻繁に連絡も取り合うし一緒に食事をするのも珍しくないそうだ。

 

 身重になってからは夫が家事をするようになり、家に居ない間は大赦からお手伝いさんが来るようだ。そのお手伝いさんは銀よりも小柄ながらてきぱきと家事をこなし、特に掃除に関しては凄まじいの一言だそうな。お陰で銀も助かっており、帰宅した楓と共に3人で晩御飯を食べることも多いとのこと。初対面の時にいきなり“かつての勇者様のお手伝いが出来るなんて光栄です!!”といきなり土下座をされて驚いたとか。

 

 「そういえば、お腹の子の性別とか名前とかは決まっているのかい?」

 

 「女の子だってさ。名前は……まだ。あたしと楓みたいに何か1文字にしたいんだけど」

 

 「悩みどころだねぇ……おや?」

 

 そうして2人で悩んでいると、ガチャリと音を立てて扉が開いた。銀が振り返り、楓もそちらへと視線を送る。入ってきたのは、やはり楓にとって見知った顔だが少し大人っぽくなっている女性。その女性は2人の顔を見ると笑顔を浮かべながら2人に向かって歩いてくる……両手に2人の赤ん坊を抱き抱えながら。

 

 

 

 「楓くん! 銀ちゃん! 良かったー、私以外にも人が……あれ、楓くん小さくなった? 髪も長いままだし……あれ? 銀ちゃん妊娠したの!?」

 

 「あうー」

 

 「きゃうー」

 

 「ああ、やっぱり友奈なんだねぇ……今度は子供まで……しかも2人……それに、何だが覚えのある感覚が……」

 

 「別の世界の友奈ってことなんだろうけど、ここまであたしの知る友奈と変わらないと不思議な気分だなー。子供は居なかったけどさ」

 

 

 

 入ってきたのは、友奈であった。成長した彼女は楓よりも背が高くなっており、纏めていた髪は下ろしている。体つきもすっかり大人の女性へと成長しており、胸も風と同じくらいには大きくなっている。

 

 そして目につくのは、やはり抱き抱えている双子と思わしき赤ん坊達。友奈の赤い髪と、恐らく父親と同じなのだろう黄色い髪を生やしているその子達は、楓の方へと笑顔と共に手を伸ばしていた。赤ん坊に何となく感じた覚えのある感覚を抱く楓だが、流石にその正体までは掴めなかった。

 

 一先ずまたいつの間にか生えていた椅子へと誘導し、この世界の説明をする楓。話を理解したのかしていないのか笑顔で頷く友奈を見て、楓は大人になっても変わらないなと苦笑い。尚、やはり敬語は抜きで言いと言われた。

 

 「ところで、この子達の父親はやっぱり……」

 

 「うん! 楓くんだよ」

 

 「やっぱりねぇ……別の世界の自分だと分かっていても、夫だ父親だと2人の女性から言われると何とも言えない感覚になるんだけどねぇ……」

 

 「あたしも正直何とも言えない感覚になるゾ……」

 

 「きゃーう♪」

 

 「ぶーぅ」

 

 赤ん坊とは言えずっと2人を抱き上げているのはしんどいだろうと黄色い髪の赤ん坊を抱きながら友奈に問う楓。返ってきた答えは予想通りではあったが、今の楓はまだ中学卒業前。こうも夫だ父親だと、それも同級生だった相手に、複数から言われるのは中々に複雑な心境になる。それは自分の夫が別世界とは言え他の相手と子を成していると言われた銀もそうだが。

 

 苦笑いを浮かべる楓に抱き抱えられた赤ん坊が機嫌が良さそうに笑いながらペタペタと彼の頬に触れる。逆に友奈に抱き抱えられたままの赤い髪の赤ん坊は不満そうに黄色い髪の赤ん坊を見ていた。随分と表情が分かりやすいなと思いつつ、自身と同じ髪を撫でるとまたきゃらきゃらと笑った。

 

 「なぁ友奈、そっちの子達の名前って何て言うんだ? あたし達の子はまだ決まってなくてさ、参考に……な」

 

 「こっちの赤い髪の子が“かなで”ちゃんで、楓くんが抱っこしてる黄色い髪の子が“かなみ”ちゃんだよー。かなでちゃんは私達の名前の一部、かなみちゃんは私達と東郷さんの名前を一文字ずつにしたんだー」

 

 「やっぱり美森ちゃんとも交流は続いているんだねぇ。勇者部は大人になっても仲良しなようで何よりだよ」

 

 「うん! それにお隣さんなんだ! 夫婦で買った新しい家でもお隣さんなんて凄い偶然だよねー。たまにこの子達の相手してもらったり、家事を教えてもらったりしてるんだよ! お陰で立派な主婦になれました!」

 

 (そこはあたしのところの須美と変わらないのか……いや、夫婦の隣の家って……それ絶対偶然じゃないだろ)

 

 「そっか、美森ちゃんには感謝だねぇ」

 

 (いや、その一言で片付けられるような事じゃないだろ……あれ、あたしがおかしいのかな)

 

 お腹の子の名前を決める参考にと銀が聞くと、友奈は快く教えてくれた。聞かされた名前を良いなと思いつつ、銀は脳内にメモをする。友奈としても気に入っているのだろう、話している最中はずっと笑顔だった。

 

 彼女の世界でも勇者部の仲の良さは変わらないようだと聞いて安堵する楓と話の内容の所々に不穏さを感じる銀。しかしあまりに普通に、楽しげに2人が会話しているものだから自分の方がおかしいのでは……と悩んでしまった。

 

 それからまた少しの間、今度は友奈の世界の話を聞いた。楓が髪を切って短くしているだとか、たまに風が襲来するだとか、やっぱり楓は大赦に所属して園子の部下として働いてるだとか、ダブルベッドで一緒に寝ているだとか、寝るときはいつも手を繋いでくれるだとか。

 

 そして友奈の話が一段落した時、再び扉が開く音がした。3人は話を止め、扉を注視する。次は誰が来るのか……そんな緊張感を伴う3人の前に現れたのは、金髪の女性……ではなく。

 

 

 

 「おお? おお! ミノ姉さんとゆーゆ姉さんじゃないか! そっちの人は……父様に似ているな」

 

 「そうですねー、紅葉くん。写真で見たお父様の幼い頃にそっくりですねー……でもあんまり今と変わらないんですねー」

 

 「そうだな、父様をそのまま小さくしたみたいだ! ということはやっぱり自分の父様レーダーは正しかったようだぞ楓子!」

 

 「紅葉くんは凄いですねー。わたしはまだそこまで正確じゃなくてー」

 

 (((誰!?)))

 

 

 

 現れたのは黄色い髪の少年と少女。少年の方は楓とよく似た顔立ちをしており、髪型も楓と同じだが首までの長さ。少女は園子にそっくりで、髪型も彼女と同じ。年の頃は小学生に成り立てと言ったところだろう。どうやら3人の事は知っているようで、3人を見て紅葉と呼ばれた少年のテンションが上がっており、そんな少年を見て楓子と呼ばれた少女は朗らかに笑っていた。

 

 予想外の人物が現れたことで驚愕していた3人だったが、その容姿を見て誰の子かを悟り……その直ぐ後にまた誰かが入ってくる。そしてその姿は、今度こそ予想していた人物の姿だった。

 

 「紅葉も楓子も速いよ~。お母さんを置いてったら悲しいよ~?」

 

 「母様がサンチョと戯れていたからだぞ。そんな事よりほら、あの人達! 父様とミノ姉さんとゆーゆ姉さんだ!」

 

 「おお? おお~、本当にカエっちとミノさんとゆーゆだ~。でもカエっちは昔の姿だし、ミノさんはお腹が……ゆーゆも赤ちゃん抱っこしてるね~。カエっちも……ん~」

 

 「やっぱりお父様なんですかねー? そもそもここはどこなんでしょう?」

 

 「ああ、やっぱりのこちゃんなんだねぇ。すっかりお母さんになって……成長したんだねぇ」

 

 「あーぶ」

 

 「それはどういう目線なんだ楓」

 

 「園ちゃんは見た目変わらないなー」

 

 パタパタと足音を立てながら入ってきた2人に近付き、苦笑いする女性。その姿は紛れもなく楓達が知る乃木 園子であり、中学生の容姿をそのままに大人にしたような姿をしていた。白い縦じまセーターに青いジーンズというシンプルな服装の上に白いエプロンを着けている姿は新婚の主婦という言葉を連想させる。

 

 呆れつつも園子の手を握りながら3人を指差す紅葉の指先を目で追う園子はその姿を見て一瞬を目を見開き、直ぐに情報をぶつぶつと呟きながら脳内で纏めていく。その隣で紅葉と同じように彼女を手を握っていた楓子が疑問を呟く。その姿は考え事をする園子と瓜二つであった。

 

 一連の動きが自身の知る彼女と変わらないことと親子の仲の良さを見た楓は感動しながら朗らかに微笑み、何故か抱っこされているかなみも同じように笑う。銀と友奈もそれぞれ苦笑いとぽやぽやとした笑みを浮かべた後、考えが纏まったのか園子が口を開く。

 

 「成る程成る程……だいたい分かったよ~」

 

 「本当に分かったのか? 母様」

 

 「こんな訳の分からん空間だと流石に分からんだろ……」

 

 「ここはわたしが勇者時代に精霊の力で作った“夢空間”と似たような場所なんだね~。カエっち達はわたし達の知ってる皆とは別の存在で、“もしもの世界の人”なのかな? それで、この場所にはその“もしもの世界の人”が集まってきてるんだね~。多分、カエっちと一緒になった人が呼ばれてるのかな~」

 

 「流石のこちゃんだねぇ。ほぼ完璧に言い当てたよ」

 

 「お母様、流石ですー♪」

 

 「園ちゃんすごーい! 私全然分からなくて混乱したのに」

 

 「「本当に分かってた!?」」

 

 息子と別世界の親友から疑わしげな目で見られたものの、楓達が説明するまでもなく現状をほぼ正確に言い当てる園子。似たような朗らかな笑顔で称賛する楓と娘、そして普通に驚いている友奈。見れば双子の赤ん坊達も驚きからか園子を目を大きく開けて見ていた。

 

 照れたように笑う園子に息子と親友の驚愕の声が飛ぶ。まさか本当に分かってるとは思いもよらなかったことだろう。2人が驚いている内に彼女は子供の手を引いて銀と友奈が居るテーブルの空いている場所にいつの間にか生えていた3つの椅子に腰掛け、子供達も同じように座る。

 

 そして行われるのは、銀と友奈の世界での話と園子達の世界での話。2人の話を楽しそうに聞いた後、園子はにこにことしながら自分達の馴れ初めや日常を語ってくれた。

 

 「そっちだと楓は婿養子なのか……まあ園子の家は大赦の中でも上里と並んでトップだしなぁ」

 

 「そうなんよ~。カエっちがわたしと同じ名字なのは変わらないんだけど、わたしとしては犬吠埼 園子でも良かったんだけどな~」

 

 「乃木 楓、か。場合によっては三ノ輪 楓だったり結城 楓だったりしたのかもねぇ」

 

 「この子達も結城 かなで、とか結城 かなみ、とかだったりしたのかもね。でもやっぱり、犬吠埼で良かったかな。ああ、私はこの人と結婚したんだ……って強く思えたから」

 

 「ゆーゆはこの中だと1番早くカエっちと付き合ったんだっけ。わたしミノさんは高校の終わりくらいだし」

 

 「あたしと園子の世界だと告白する側と結果は逆なんだよな……」

 

 園子の話を聞いて楓は未来の自分を想像する。こうしてifの自分の妻達を見ても流石に未来図は想像しにくいが……円満な家庭を築けているのは分かる。それだけでなく、未来では誰もが自分の夢を叶えているのだと言う。銀は主婦で、園子は小説家で、美森は歴史学者としての地位を確固たるモノにしているとか。

 

 因みにこの大人達……楓はまだ中学生だが……による会話の最中、子供達もそれなりに交流を深めていた。楓子はかなでを抱っこさせてもらいながら楓の隣に座り、紅葉は何故か楓が抱っこしているかなみとの間にバチバチと見えない火花を散らしている。どうやら楓に抱っこされているのが羨ましいようだ。

 

 「告白はやっぱり楓から?」

 

 「そうだよー。びっくりして、でも泣いちゃうくらい嬉しくて……」

 

 「わたしも最初は信じられなかったな~。でも現実だって、夢じゃないんだって……うん、胸の奥から幸福が溢れてくるよ~」

 

 (誰か助けてくれないかねぇ……)

 

 3人が思い出しながら幸福そうに笑い、それぞれ薬指にハマっている指輪を眺める。はにかんだ笑顔を見せる3人が思い出に浸っている傍らで、楓は自分の知らない自分の話を聞かされ続けて流石に羞恥心が沸き上がっている。因みにこの時、楓子が紅葉にかなでを預け、楽しそうに楓の髪を弄って園子や紅葉と同じ髪型にして遊んでいた。

 

 話は自分達の話から夫の話へとシフトする。3人の世界の共通点として、楓が結婚を折に長い髪をうなじが見えるくらいまでにバッサリと切ってしまっているらしい。仕事は銀と友奈の世界では大赦に所属して園子の部下、園子の世界では婿入りしたことで乃木家の当主として必要な知識を収めつつ、現当主の義父の手伝いをしているとのこと。

 

 「家だといっぱい甘えさせてくれるんだよね~」

 

 「そうそう、学生の時の東郷さんとの夫婦みたいなやり取りを本当の夫婦として出来るんだよねー。膝枕とか、耳掻きとか、頭撫でてもらったり……」

 

 「あれ羨ましかったんだよなぁ……今じゃあたしが羨ましがられる方だけどさ」

 

 「お父様、お顔が真っ赤ですねー」

 

 「やっぱり父様も恥ずかしがるんだな」

 

 「そりゃあ、まぁねぇ。未来の自分の話なんて聞くもんじゃないねぇ」

 

 「あーうー」

 

 未来の自分との惚気話を聞かされると流石の楓も顔が赤くなる。夫婦仲は睦まじいようで何よりであるが、今の彼としては未来の自分との甘々な生活ややり取り等聞いていて恥ずかしいことこの上ない。そんな彼を子供達はにまにまと笑いながら見ていた。

 

 それはそれとして、と楓は再び話し合っている3人を見る。未来の自分の妻達。勇者部の仲間だった彼女達。前世のこともあり、彼にとって彼女達はどうしても年下の子供として見てしまう。それ故に恋人に、夫婦になるかもしれないという可能性を口にはしても本当にそうなるとはあまり思っていなかった。

 

 勇者という特殊な立ち位置や他の人には言えない秘密。それは交遊関係にも影響し、勇者部というある種の閉鎖された空間と関係は彼女達から楓以外の異性との交流を浅くさせた。だからこそ楓は、彼女達が勇者という肩書きから解放されて交遊関係を広め、他の異性との交流を広く持って恋や愛を知っていくのを望んだ。

 

 “自分以外にも男性は居て、その中にはきっと彼女達にとって好い人が居る”のだと。

 

 (……それは、自分の独り善がりだったのかも知れないねぇ)

 

 だが、目の前の彼女達を見て自分の考えは間違っていたのではないかと思ってしまった。自分達の結婚生活や夫婦仲の良さを話す彼女達の姿は、誰がどう見ても幸福そうで。こうして楓が抱き抱えている赤ん坊や隣に座る子供達、お腹の中に居る赤ん坊が居る程に愛しあって。

 

 そして……彼女達を子供だとか、他に好い人が居るとか思っていたハズなのに……彼女達に恋して、彼女達を愛して、告白して、結婚した未来の自分が居る。

 

 「未来はわからないモノだねぇ」

 

 「あうー」

 

 「そういえば父様はまだ母様と結婚していないんだな」

 

 「そうだねぇ。結婚どころか誰とも付き合ってもいないねぇ」

 

 「好きな人は居ないんですかー? やっぱりお母様がー?」

 

 「ふふ、好きな人……勇者部の皆が好きだからねぇ。あんな風に誰かと付き合うかもしれないし、まだ会ったこともない誰かと付き合うかもしれない。未来は、わからないからねぇ」

 

 抱っこしているかなみの頭を撫でながら、紅葉と楓子の疑問質問に答える。今の彼は自身が誰かと付き合うというのは想像しにくい。だが、目の前にその可能性がある以上、誰かと付き合う可能性はある。

 

 友奈と付き合う未来。銀と付き合う未来。園子と付き合う未来。それら以外にも美森と付き合う未来があるかもしれない。夏凜と付き合う未来があるかもしれない。雪花と付き合う未来があるかもしれない。

 

 いや、可能性……ifの世界など無数に存在するのだ。楓の世界にとってあり得ないことでも、もしかしたら有り得る世界があるのかもしれない。未来はわからない。わからないからこそ、幾らでも想像出来てしまう。そうして想像することのなんと楽しいことだろうか。

 

 「3人とも」

 

 「「「うん?」」」

 

 楓は問う。彼女達の口から改めて聞きたいと思ったから。未来の自分との生活が、子供達が居る生活が、自分にとっての未来が、彼女達にとっての現在が。そして、その手の中に居る小さな命に、お腹の中に居る生まれる前の命に、両隣の子供達に、友奈の手の中の命にとって。

 

 

 

 「今、幸福(しあわせ)かい?」

 

 「「「勿論!」」」

 

 

 

 そうして咲き誇ったのは……笑顔の花達。

 

 直後、再び扉が開く音がした。全員がそちらへと視線を向け、ゆっくりと開く扉のその向こうに……長い黒髪をした女性と同じ髪色の少女。そして、茶髪の女性の姿をその目に映して……。

 

 

 

 

 

 

 気付けば、楓は自室にて朝を迎えていた。何か良い夢を見ていた気がする。そんな風に思いつつ、彼はベッドから降りて窓に掛かるカーテンを開けて外を眺める。

 

 「……うん。今日も良い朝だ」

 

 そして今日もまた、彼らは未来に向かって日常を過ごしていく。

 

 

 

 

 

 

 無数に枝分かれした可能性の世界。その可能性が、千に、万に、億に、兆に、京に……もっと多く、そして遥かに小さな可能性であったとしても……決して、ゼロではないのなら。

 

 

 

 

 

 

 「行ってらっしゃい、楓。気を付けてね」

 

 「行ってくるよ、風姉さん」

 

 「もう、また姉さんって言ってるわよ」

 

 「……そうだねぇ。改めて行ってくるよ……“風”」

 

 

 

 

 

 

 「今日のスケジュールも埋まりに埋まってるねぇ。人気なようで夫としては嬉しい限りだよ」

 

 「あんまり忙しいと甘えられる時間がないよ……あ、でも今日は一緒に出演する番組があるんだね。やっぱり夫婦だからかな?」

 

 「マネージャー兼元義理の兄妹兼夫なんててんこ盛りな肩書きだからねぇ、自分」

 

 「えへへ……でも、ずっと一緒だから嬉しいなぁ」

 

 

 

 

 

 

 「おはよう……貴方」

 

 「おはよう。ふふ……やっと詰まらずに言えるようになったねぇ」

 

 「まだ恥ずかしいよ……でも、奇跡に奇跡が重なって今があるからね……何度でも貴方って呼びたいんだ。こうして得た人の身で貴方ともっと……もっと触れ合いたいんだ」

 

 「自分もだよ、友奈。それとも昔みたいに“神奈”って呼ぼうか?」

 

 

 

 

 

 

 「時々ね、この時間が嘘なんじゃないかって思うんだ。だって私は貴方にとって間違いなく敵だったハズで……こうして一緒になるどころか、触れ合うことすら有り得なかったハズで……」

 

 「でも、こうして自分達は触れ合ってる。自分と君は、皆から祝われて一緒になった。自分も、自分の意思で君を選んだんだ」

 

 「うん……えへへ、嬉しいのに、幸福なのに、怖くて涙が出るんだ。人間って不思議だよね」

 

 「怖いなら、怖くなくなるまで手を握っていてあげるよ。それが君を好いた男の……夫の役目で、してあげたいことだからねぇ」

 

 

 

 

 

 

 きっと……こんな世界だって有り得るのだろう。




今回の補足

登場したのは既に書いた親密√の“幸福になった後”の3人+α達。

犬吠埼 銀:幸福な夫婦生活満喫中。お腹の中には新たな命が。名前はまだ決まってない。

犬吠埼 友奈:銀同様に夫婦生活満喫中。そうでもなかった家事能力は東郷さんのお陰で申し分ないレベルに。髪は下ろすようになった。

かなで&かなみ:双子の赤ん坊。名前の由来は今話の通り。その中身は……流石の楓も不思議に思いつつも最後まで気付けなかった。父>母

乃木 園子:他の2人の√とは違い、こちらでは主婦兼小説家。察しの良さは変わらない。実は今回の話の中では最も年上。

紅葉&楓子:こちらも双子。生まれた順番で紅葉の方が兄。園子の好奇心の強さをがっつり引き継いでいる。楓子は逆にのんびりした部分を引き継ぎ、語尾を伸ばすのも両親の影響。



という訳で、未来の嫁&子供襲来のお話でした。舞台は友奈顔襲来時と同じなような違うような。ifが入り交じる設定だと凄い使いやすい舞台だからね、仕方ないね。

大人になった彼女達はきっと恋やぶれても変わらない友人関係を築いていると妄想。本作の銀ちゃんは幸福です。お嫁さんです。子供も出来ました。二次でくらいいいじゃないか(半泣き

赤ん坊の言葉って結構悩むんですよね。いっそ書かないようにするかとも悩みましたが結局台詞ありに。あーうーとか書いてると昔を思い出しますね←

さて、100話記念番外編はお楽しみ頂けたでしょうか? 今後も簡潔まで鈍くてもしっかりと進んで行きます。時折番外編として横路に逸れたりもしますが、どうか最後までお付き合い頂ければ幸いです。前書きのガチャ結果日記もどうか許して下さい。

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)
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