咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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また2週間空いてしまった事をお詫び申し上げます。雨が連続で降って仕事の疲労が増えたり、8割程書き上げた後に致命的なミスが見付かって8割中5割を書き直すことになったり最近頭痛がしたりしてますが私は減気(誤字にあらず)です(ヽ´ω`)

また色々イベント来てますね。fgoはQPの稼が時なのでガンガン周回しなければ。コトダマンではラムが来たので鬼レム満幅出来そうです。

天華百剣は超電磁砲とのコラボですね。爆死しましたが。東方ロスワはもこたん出ましたね。ガチャで出たのは橙でしたが。今月も爆死とそれなりに良い結果がいったり来たりなようです←

何年かぶりにドラクエのゲームを買いました。9ですけど。私のドラクエはDSテリワンで止まってたので新鮮です楽しいです。やはりRPGは良いものだ……黄金の太陽リメイクされないかな。

ゆゆゆいの新イベントのSR絵見て死にました。ゆうみも最高やでホンマ……本作の場合だと楓と隣に白無垢を着たゆうみもの姿があるかも知れません。姉さんは親族席で号泣してます←

さて、前書き(と言う名のゲーム報告)が長くなりましたが久しぶりの本編です。それでは、どうぞ。


花結いのきらめき ― 14 ―

 部室から樹海へと飛ばされた自分達が最初にしたことは、部室に居なかったメンバーと連絡し、勇者アプリのレーダーを使いながら1ヶ所に集合することだった。幸いと言うべきかそれほど離れていなかったようで直ぐに全員が集まる事が出来、勇者へと変身しながらレーダーに映る敵の反応に向けて移動する。

 

 「これ乗ってみたかったんだよねー♪ にしても、空から見ても見渡す限り相変わらずの樹海だぁねっと」

 

 「雪花、なんか上機嫌ね? 乗ってみたかったってだけじゃなさそうだけど」

 

 「いやー神奈を可愛く着飾れたこともあるけど、最近はこの任務にも遣り甲斐を感じている訳よ。ここは雑音が無いのが最高……味方か敵かだけ」

 

 「……北海道では、大変だったみたいですねぇ」

 

 移動する為の足として楓が普段よりも大きく光の絨毯を作り出し、全員が乗ったところで飛び上がる。絨毯から顔を出して樹海を見下ろす者、戦いに備えて瞑想する者、リラックスしているように談笑する者と思い思いに過ごす中で、雪花がふとそう呟いた。

 

 反応したのは近くに居た風。上機嫌な理由が今呟いたことだけではないと感じた彼女が聞いてみると、ニコニコと笑う雪花はそう語る。ただ、最初はともかく後半は少し声のトーンが落ちたので楓が顔を向けずに呟くように言うと、雪花は苦笑いを浮かべた。

 

 「……もうずっと、皆でここに居ればいいんじゃないかな」

 

 「あはは……まぁ、そういう訳にはいかないよねぇ」

 

 「だよねー」

 

 「……ん? どしたの東郷」

 

 「敵発見。1つのところから動きません」

 

 それは本心か、それとも冗談なのか。苦笑いのまま紡がれたその言葉に返せたのは近くで聞いていた楓だけだった。知っていた、そう笑いながら流す雪花。そんな彼女を見ていた風は、弟のように何かを言うことは出来ずに居た。

 

 そんな風だったが、ふと美森が険しい顔をしているのを見付ける。そして彼女の言葉を聞いた風……いや、気こえたのだろう全員が意識を前方へと集中させ、強化された勇者の視力がそれを捉えた。

 

 普段であれば、樹海に在る神樹を目指して進んでくるバーテックスの群れ。それが1ヶ所に止まったまま動かずに居た。特に何か拠点のようなモノが在る訳ではない。何か特別な物体が在る訳でもない。ただ、いつものような小型から大型まで存在するバーテックスが動かないだけ。

 

 「ふむ……守ってるってことかしら」

 

 「神樹様曰く、敵はあの位置を守護しているから攻めてくる事はない……こちらから仕掛けるしか」

 

 「神樹様曰く……ご神託ということですか? 東郷さん」

 

 「美森ちゃんは巫女の適性もあるからねぇ。この世界に来る前にもそういう事があったし」

 

 「そうみたいなの」

 

 風がそう考察し、美森は今正に神託からイメージを通して伝えられた神託通りに肯定する。彼女にも巫女の適性は存在するのだ、ひなたと水都……神奈のように神託が降りるのは不思議ではない。が、それを知るのは楓を除けば後は小学生組くらいなもの。杏が聞くのは仕方ないだろう。

 

 肯定したのは本人ではなく楓。過去にも起きた出来事を軽く説明し、美森本人も頷く……だが、彼女の内心はあまり穏やかではない。彼女に起きた神託、或いは予知夢のようなモノ。それは過去に2回起き、そして2回共が後に心に深いキズを負わせているのだから。

 

 「東郷さん万能だなぁ。凄いね」

 

 「私より友奈ちゃんと楓君……ううん、皆の方が凄いわ」

 

 そしてそのキズも、まだ刻まれていれど乗り越えつつある。絶望に染まりきっていた自分を、心を救いだしてくれた仲間達、親友達の存在があるから。一緒に居ると言葉にしてくれた、また自分の側に戻ってきてくれた人達が居るから。だからこうして今、美森は笑って居られるのだ。

 

 「あれ? ウチの須美にもそういう才能あるのか?」

 

 「実感は無いけれど、ある……とは言われているわね」

 

 「この世界に来る前にそういう説明はされたねぇ」

 

 「わっしーは無限の可能性を秘めているんだね~。アマっちとミノさんも~」

 

 あまり当時の話を聞いていなかった、それとも忘れていたのか首を傾げる銀に須美は自信無さげに頷く。新士が言うように、巫女の適性があるという説明は受けている。が、目の前の美森や部室に居る巫女3人のような神託を受けたことが無い以上、半信半疑とはいかないまでも実感は湧かないのだろう。そんな会話をする3人を見ながら、園子(小)がそう締めた。

 

 「タマにもあるかも知れんな。そういう特異な才能というものが!」

 

 「巫女の才能よりはネコの才能の方があるかもしれないねぇ。あだ名的に」

 

 「どんな才能!? 確かにタマのあだ名はネコっぽいかもしんないけどな!?」

 

 「ネコちゃんって何でか“タマ”とか“シロ”って名前のイメージがあるよねー」

 

 「ワンちゃんだと“ポチ”とかねー。あれなんでだろ?」

 

 「はいはい、無駄話は終わり! いい加減陣取ってる敵を叩きに行くわよ。敵が攻めてこないってんなら楽に終わるかもしれないし」

 

 球子がそう言うと、楓はくつくつと笑いながら茶化すように呟く。何人かが小さく笑って球子が思わずツッコむ傍ら、友奈と高嶋がお互いに顔を見合せながらそんな話をしていると風がパンパンと手を鳴らし、敵へと視線を向けると仲間達も同じように敵へと意識を移す。

 

 未だに敵に動きはない。だがいつも通り数は多く、大型の敵も存在する。そして今回は自分達が攻める側……なのだが、やることはいつも通りにバーテックスを倒すことだ。

 

 「よし、今回はこのまま突っ込んで下さい楓さん! あたしが先陣を切って敵をスライスしてやりますよ!」

 

 「おっと、先陣を切る役目は譲れないねぇ……でも、少し落ち着こうか銀ちゃん。今回はいつもと勝手が違うんだから」

 

 「そうよ銀。落ち着きなさい」

 

 「いつもの親友インターセプト!?」

 

 「あはは……相手は動かない分、意外な方法で攻撃してくる可能性があるから慎重に行きましょう」

 

 「そうね、ゲームでもそういう敵の方が厄介だったりするものよ。早まって突っ込もうとしないで、銀ちゃん」

 

 「姉さんみたいに不用意に攻撃して爆発に巻き込まれたりするかもしれないからねぇ」

 

 「いい加減忘れてよ!?」

 

 (ふふ……良い先輩勇者じゃないか、千景)

 

 意気揚々と斧を握り締めて気合いを入れて突撃姿勢に入る銀(小)だったが、いつも通りに新士と須美によって制止させる。尤も、今は楓によって落ちないように両足を光で固定されてるので動けないのだが。これは彼女だけでなく全員同じである。

 

 いつものやり取りを見て苦笑いする杏が危険性を説き、千景はゲームと照らし合わせ、楓はくすくすと笑いながらからかう様に言うと風が顔を赤くして叫ぶ。そして若葉は銀(小)へと注意する千景を見て、自分達の元の時間である西暦に居た時と比べて随分変わったモノだと微笑ましそうに笑った。

 

 「楓、そろそろ光を外してくれ。杏が言ったように慎重に仕掛ける」

 

 「ええ、分かりました。皆、今から足を固定している光を外すけど準備はいいかい?」

 

 【勿論!】

 

 「だそうですよ若葉さん。さ、外しましたよ」

 

 「頼もしい限りだな。では行くぞ。勇者達よ、私に続け!!」

 

 若葉に言われ、仲間達の返事を聞いてから楓は足を固定していた光を外す。そして若葉は自身の武器である刀の“生太刀”を抜き、切っ先をバーテックス達に向け……その言葉と共に絨毯から飛び降りた。それに続き、次々と仲間達も飛び降り……すれ違い様に最も近くに居たバーテックスを撃破していく。

 

 いつものように地上で暴れる組と楓の光の絨毯で空を飛びながら制圧する遠距離組。普段通りの組分けと動きは、今回の攻勢でも問題なく通じた。因みに、雪花は槍で直接攻撃する場合もあるので地上組である。

 

 「……あれ? 反撃とかは特に無い……? タマちゃん、棗さん、どう思う?」

 

 「これは楽勝ムードだな。油断はしないけどな……ふふん、そこがタマの強い理由だ。分かるかシルバー、新士」

 

 「はい! 球子さん!」

 

 「流石、球子さんですねぇ」

 

 「良い声だ、尊敬と情熱、そして何故だか微笑ましく見られてる気がして……新士のでちょっとマイナスして27タマポイントをやろう」

 

 幾らか倒して進んだ際、不意に友奈が疑問の声を上げる。敵の数からして勇者達が攻撃し、撃破したバーテックスの数はまだまだ少なく、進んだ距離も短い。だが、その僅かな距離での戦闘で敵が反撃してくることはなかったのだ。と言っても、無駄に漂っている訳ではない。明らかに、勇者達に道を妨げるように動いてはいる。ただ、反撃として攻撃してくる事がないのだ。

 

 邪魔はされるが攻撃すればするだけ倒せるし、倒せば倒すだけ進める。球子がそう言うのも仕方ないかもしれない。自信満々ながら警戒は怠らない彼女に銀(小)は元気よく返事をし、新士はいつもの朗らかな笑みを浮かべる。その笑みは球子のポイントを聞いたことで直ぐに苦笑いに変わったが。

 

 「この調子でガンガン攻めていくべきだろう。海もそう言っている」

 

 「ようし、畳み掛けて殲滅よ! 諸行無常ってね!」

 

 「いえ、ちょっと待って下さい! 何だか、バーテックスの様子がおかしいです!」

 

 「やや? 敵はオーラみたいなものを纏ってるわね」

 

 「杏ちゃん、気付くのが早いねぇ。頼もしい限りだよ」

 

 どのみち進まねばならない以上、相手が反撃してこないのは都合が良いと棗、夏凜がそう言って更に敵陣へと踏み込んで行く。だが、そうする2人に空から杏が待ったをかけ、彼女の言葉に全員が攻撃の手を少し緩めつつ敵へと意識を向ける。

 

 いつの間にか、或いは見えていなかったのが見えるようになったのか、歌野が言うように勇者達を邪魔するバーテックス達の奥に居る1体のバーテックスが“もや”のようなモノ……アニメや漫画等にある、俗に言うオーラのようなモノを纏っていた。全員がそれを確認し、楓が真っ先に気付いた杏を褒めると彼女は照れたように目を伏せた。

 

 「お、臆病だから敵の動きに敏感なんです。空に居るから敵の全体像も見やすいですし」

 

 「よっと。臆病なのは良いことよ。生存に直結するわ」

 

 「それにしても……バーテックス、正確にはバーテックスもどきは個性豊かな敵ね。爆発したり守りに専念したり」

 

 「色々な顔を見せる……造反神の特徴に起因しているのかもしれません」

 

 照れる杏に楓は朗らかな笑みを向け、雪花が良い事だと臆病である事を肯定する。地上と空中で距離が開いているが、変身することで強化されている身体能力、五感は距離があっても問題なく会話を可能にしているのだ。故に、雪花の声が聞こえた杏はまた照れてはにかんだ笑みを浮かべた。

 

 その近くで、美森は右手を顎へとやりながらこの世界でこれまで敵対してきたバーテックス達の事を振り返っていた。元の世界でのバーテックスに比べ、この世界ではその特徴やバリエーションはかなりの数になる。それを聞いた須美は同じようなポーズを取りつつ考察する。

 

 「……何故だろうか。こいつらからは海の香りがする」

 

 「棗はとりあえず海って言ってない? ま、別に良いんだけどね」

 

 「確かに、しょっちゅう聞いてる気がしますねぇ……というかバーテックスのどこに海の要素が?」

 

 「そ、それは誤解だ。いや、確かに新士の言うとおりしょっちゅう海海言ってるか……だがよく考えるとそれは恥ずべき事ではないな」

 

 「夏凜もとりあえず煮干し食べてない?」

 

 「そこまで頻繁に食べてないわよ! って、あれ!」

 

 地上では棗がすんすんと鼻を動かし、バーテックス達から彼女にしかわからないであろう海の香りが漂うことに気付き不思議そうにする。夏凜がそれに反応して敵を切り伏せながら呟き、新士も同じように爪で切り裂きつつ苦笑いを浮かべる。

 

 2人から言われて慌てる棗だったが、よくよく思い返すと結構な頻度で言っていると自覚するが、別に問題ないと自分の中で完結させる。その直ぐ後に風がにやにやとしながら夏凜に言うと即座に反論し……敵から視線を外して居なかった故に、直ぐに敵の様子が変わった事に気付いた。

 

 「ああ、明らかにあの敵のオーラが増した。話しながらも敵から視線を切っていないのは流石だな、夏凜」

 

 「敵さん反撃開始ってところかしら? じゃあ、ちょっと突っついてみましょうか」

 

 「はいよーっと! っの! 1度で全部倒せないのってもどかしいわね……」

 

 若葉が言うように、最奥に鎮座する巨大なバーテックスが纏っていたオーラが明らかに大きくなったのだ。加えて、進行を邪魔するように動いていたバーテックスの一部が勇者達に向かって来る。それに伴い、勇者達も攻める手を強める。

 

 雪花が迫るバーテックス目掛けて槍を投げつける。投げた槍はバーテックスを貫き、更に奥のバーテックスをも貫いていく。風は大剣を振るい、両断。だが数が多く、一撃で全てを屠ることが出来ないのが悔しいのか表情を歪ませる。残った敵は返す刃で切り裂いたが。

 

 「1匹の怪人を倒すのに2話使うとか、特撮でもよくあることですんで!」

 

 「戦闘員みたいにわらわら居るけどねぇ……」

 

 「詳しいのね。新士君はあまりそういうのを見るイメージは無かったわ。銀ちゃんは……ああ、確か弟が居たんだったわね」

 

 「特撮見てたのは主に姉さんでしたけどねぇ」

 

 「小さい頃の話でしょ!?」

 

 そんな会話をしつつ、倒し方を学習した勇者達は次々とバーテックスを屠って行く。連続攻撃が得意な者は連撃で、或いは2人以上で連携して。特に攻撃を受けることもないまま少しずつ、しかし確実に進んでいく。

 

 次第に、オーラを纏ったバーテックスとの距離も縮んでいく。スパートを掛けるように全員が攻撃の速度や勢いを強める。普段は大人しい樹ですら、今は勢いに乗っているのか体も気持ちも前に出始めていた。

 

 「さぁ皆さん! どんどん行きましょう!」

 

 「ふふ、樹も自分を出すことが増えたねぇ。良いことだ」

 

 「そうね。樹ちゃんを見習って私達も声を出していきましょうか」

 

 「東郷さんの言うとおりね。声を出していきましょう!」

 

 「樹が皆に檄を飛ばしている! あるのね、樹にもリーダーの素養が!」

 

 「感動するのは良いけど、戦いの手は緩めないでよ姉さん」

 

 樹が仲間達に声をかける姿を微笑ましげに見守る楓と美森。彼女の言葉を聞いた歌野が鞭を振るいながら同意している隣で、風が妹の姿に感激している。涙すら流しそうな未来の姉の姿に、思わず新士は苦笑い。注意をしつつ、彼もまたバーテックスを切り裂いていく。

 

 やがて、オーラを纏ったバーテックス……後に“スケルツォ”と呼称される巨大なエビを縦にしたような、曲げた手を地面に着いているかのような形をした相変わらず説明に困る奇妙な姿をしたバーテックスが射撃組の射程距離に入る。そこまで近付いた所で、上空の杏から全体に1度止まるように声が届いた。

 

 「皆さん、一旦止まって下さい! 私達飛び道具チームであのバーテックスに攻撃してみましょう!」

 

 「私や樹ちゃん、球子さんは参加不可?」

 

 「伸縮系は飛び道具系より負傷のリスクが高くなるので参加不可です!」

 

 「歌野、あんずの言うことだからここは聞いておこう」

 

 「ですね。的確な助言をしてくれます」

 

 「はい、杏さん。了解しました。南無八幡……大菩薩!」

 

 「文字通り突っついてやりましょ! そーらそらそらそらそら!!」

 

 「美森ちゃん、自分達も続くよ。“満開”より威力は下がるけど、この状態でも射てないことはないよねぇ」

 

 「ええ、楓君。狙撃します!!」

 

 光の絨毯の上に居る4人と地上に居る雪花が武器を構え、攻撃の姿勢を取る。途中、歌野が質問してくるが杏は直ぐに答えを返し、球子と樹も彼女の言うことだからと頷く。そして、攻撃が開始される。

 

 スケルツォに向けて杏のボウガンの矢が、須美の目の前に現れた紋章を通して放たれたミサイルの如き威力の矢が、連続で投げ付けられる雪花の槍が、楓の右手の水晶からは満開の時のようなレーザーが、美森の狙撃銃からは光の弾丸が放たれ、その全てが着弾する。が、その巨体と堅牢そうな見た目に違わない耐久を誇るのか無傷とはいかないが健在であった。

 

 「中々硬いねぇ……」

 

 「およ? 楓くん、見てみて。あのバーテックス、何か……って!?」

 

 「星屑をべろんって吐き出したー!?」

 

 「オウ、グレートジャーニー……ってあいつこっちに来るわよ!」

 

  遠距離組5人による連続攻撃を受けても尚健在の敵に、楓は睨み付けるように目を細めながら呟く。最奥に居ることやその堅牢さからあのバーテックスこそが土地の守護者のような存在なのだろうと誰もが予想出来る中、友奈が何かに気付く。そしてそれを周知させようとした時の事だった。

 

 曲げた手という説明を続けるなら、丁度手首の位置にある口のような部分が開き、そこから大量に、さながら吐き出すように星屑が出てきたのだ。高嶋と歌野が仲間達を代表するように驚きの声を上げると、更に今まで動かなかったスケルツォがゆっくりと、だが確実に勇者達に向けて動き始めた。

 

 「数が多い……先に星屑を倒すか。樹、久々に合わせるよ!」

 

 「うん! ええーい! てやっ! お仕置き!」

 

 「ほっほっほ、これが我が弟と妹の実力よ。バーテックスがまとめてスライス&串刺しよ」

 

 「アマっち先輩と樹先輩の武器って本当に凄いね~。応用効きまくりだよ~」

 

 「応用に関しては、のこちゃんも大概だと思うけどねぇ。槍が盾になったり階段になったり大きな光の槍になったり」

 

 迫り来る巨体も気になるが、まずは吐き出された大量の星屑が邪魔だと感じたのか楓は絨毯を巧みに操作して迫る星屑を避けつつ、樹と共に光のワイヤーを使って一気に殲滅に掛かる。それは他の勇者達の誰よりも迅速に、かつ効率的に撃破していった。

 

 愛する弟と妹が活躍にご満悦な風。だが周りとしてはワイヤーによって縦に横にとスライスされたり串刺しにされたりと中々にエグい末路を辿ったバーテックス、そしてそれを成した空と地上の兄妹を見て苦笑い気味である。園子(小)は相変わらずぽやぽやとしつつ称賛し、新士が彼女の武器も似たようなモノだと朗らかな笑みと共に呟いた。

 

 「それにしてもあの敵、攻撃すると増えるって中々に危ないね」

 

 「もう1度だけ試してみましょう。実験も努力も積み重ねよ」

 

 「東郷さーん! もう1回ばきゅーんってお願ーい!」

 

 「ご指名だよ美森ちゃん。頼んだよ」

 

 「ふふ、任せて楓君、友奈ちゃん。ふっ!」

 

 増えた星屑は一掃されたものの根本的な解決は出来ていない。改めて星屑を吐き出したバーテックスと見ながら高嶋が呟くと夏凜がそう提案し、友奈が上空の美森へと頼む。楓がくすくすと笑いながら同じように頼むと、美森もクスリと笑い、直ぐに真剣な表情へと変えて狙撃銃の引き金を引く。それは間もなく敵の口らしき部分の上……位置的に額の部分に着弾した。

 

 「さっすが東郷、ナーイスヘッドショット。あそこが頭なのか分からんけどね」

 

 「あっ、アマっち見てみて。またペッて新しい敵を吐き出したよ~」

 

 「やっぱり攻撃したら増えるみたいだねぇ。となると、連続で攻撃するのは危険かもしれないねぇ」

 

 「吐き出すとか行儀が悪い奴だな……須美……じゃなくて母ちゃんに怒られるぞー!」

 

 「誰が母ちゃんよ! って銀! 星屑がそっちに!」

 

 「私に任せろ。せやっ!!」

 

 着弾した部分を見て反射的にそう言ったもののバーテックスにそんなものはあるのかと自分で疑問を口にして苦笑いする雪花。彼女がそう言っている間に園子(小)が言った通り、また口らしき部分が開いて中から星屑が数体出てくる。これにより、敵を攻撃すると星屑が吐き出されるという行動が正しいと認識する。

 

 新士が真剣な表情で頷き、銀(小)は食事時の須美と何かしらあったのか嫌そうな顔をしながら敵に向かって叫ぶ。それが聞こえたのだろう須美が空から怒鳴るが、真っ直ぐ銀(小)へと向かっている星屑を見て焦ったように言い……直ぐに前に出た棗がその手のヌンチャクで撃破、更に1匹をオーバーヘッドで蹴りつけ、撃破した。

 

 「おお! オーバーヘッドキック! 棗さんカッコいい!」

 

 「で、そろそろタマのあんずが作戦を考えたことじゃないかと思うんだ。あんずー! どうだー!」

 

 「はい、作戦を立案しました! 今から説明します!」

 

 棗の動きに友奈が感動を覚えていると球子が空に向かって叫び、杏が全員に聞こえるように叫び返す。彼女が考えた作戦とは至ってシンプル。

 

 生半可な攻撃を闇雲にしたところで敵の数が増え、いずれこの人数でも対応仕切れない程になる可能性がある。そうなれば必然、勇者達は敗北するだろう。故に、攻撃力が高い者達で吐き出している本体を攻撃し、他の勇者は吐き出される星屑と戦い、出てくる端から撃破していくというモノだった。

 

 「分かりやすくていいわ。つまり、アタシみたいなのは本体。手数で攻めるのは星屑ね」

 

 「どれだけ増えても纏めて倒すのみよ……この鎌でね。命を刈り取る形をしてるでしょう?」

 

 「国土を返してもらう……新士君、そのっち、銀、皆と一緒にお役目を果たす!」

 

 「わたし達はミノさん以外は星屑かな~?」

 

 「あたしが1番攻撃力あるしな。本体はこの銀様にまっかせなさい! ふっふっふ……今宵のあたしの斧はバーテックスの血に飢えている……」

 

 「バーテックスに血は流れてないけどねぇ。というかどこで覚えたのそんな言葉」

 

 (銀ちゃん、それ私と一緒にやってたゲームのキャラのセリフよね……)

 

 そんなやり取りの後、勇者達は杏の作戦通りに動き出す。1撃の威力が高い勇者達は本体へと進み、その巨体に攻撃を加えていく。参加しているのは神世紀組からは友奈、美森、風。小学生組からは銀。西暦組からは若葉、高嶋、千景、歌野、棗がその高い攻撃力で倒しにかかる。

 

 だが、その高い攻撃力を持ってしても、今回の防衛用と言えるバーテックスは簡単に沈まない。そして攻撃を加えれば加える程、星屑はどんどん吐き出される。

 

 だからこその本体には攻撃していない遠距離、広範囲、手数が売りの面々。楓、樹がワイヤーで一気に輪切りや串刺しにして処理し、夏凜が2刀を振るうか短刀を投げつけて爆発させて殲滅。

 

 須美の正確無比な矢が敵を射抜き、園子(小)と新士はお互いの背中を守るようにして切り裂いていく。球子が盾を投げ付けて敵を両断している間の無防備な時間は杏が大量のボウガンの矢で敵を撃破しつつ守り、雪花は槍をガンガン投げ付けて串刺しにする。

 

 「この纏っているオーラのせいか、今までのバーテックスに比べてタフだな!」

 

 「それに見た目通りの固さね。前に戦った乙女座の御霊を思い出すわ!」

 

 「ちょっと、どんだけ出てくるのよ!? 今はまだ大丈夫だけど、これが続くようなら……」

 

 戦況を見れば、勇者達の方が押しているのは確かだ。既に敵は吐き出される星屑を除けばスケルツォのみ。その星屑達も処理に専念する勇者達の奮闘で数を一定数以上増やすことはない。

 

 しかし、押しきれない。若葉が言ったように纏うオーラのせいだろうか、傷は付けられても倒すには至れない。確実に傷は増えている。手応えは感じている。だが、倒すには時間が掛かることは明白だった。そして時間が掛かれば掛かる程、攻撃を加えれば加える程星屑の数は増える。

 

 風の顔が歪み、夏凜から焦りの声が出る。まるで無限に出てくるのではないかと思う程、吐き出される星屑は止まらない。それでも、攻撃し続けるしかないのだ。

 

 「乙女座の御霊……そうだ! 楓くん! 乙女座の御霊だよ!」

 

 「うん? ……成る程、あの時と同じようにするって訳だね」

 

 「そうね、友奈ちゃんと楓君の同時攻撃なら、あの頑強な体のバーテックスも一撃で倒せるかもしれない」

 

 「えっ? 楓さんにそれ程の攻撃力が?」

 

 「この絨毯を動かせるのが楓君だけだから最近は前に出てないけれど、私達の中でも攻撃力は高いわ」

 

 「それなら……お願いします。今は制空権よりも高い攻撃力が必要ですから」

 

 「了解だよ。それじゃあ下ろすからねぇ」

 

 不意に、友奈が何かを思い付いたような声を上げる。それは勇者部が初めて勇者として戦った時の乙女座との戦闘でのこと。固すぎる御霊を破壊する為に行った、初めての楓との同時攻撃。直ぐに彼女が言いたい事を理解した楓と美森は頷き、不敵な笑みを浮かべる。

 

 疑問を口にしたのは杏。彼女にとって楓とは攻撃力よりも範囲や汎用性に優れた武器を扱う、中~遠距離で戦う勇者だ。それが勇者の中でも随一の火力を持つ友奈と同レベルと言われれば驚きもするだろう。そしてその攻撃力こそ、現状で最も重要な要素。疑うこともなく前に出ることを願い、楓は自信を持って頷き、絨毯を下ろし……そして久しぶりに、その背中から光の翼を生やした。

 

 「友奈! 準備はいいね?」

 

 「うん! あっ、高嶋ちゃんも一緒にやろうよ!」

 

 「え? 何を? というか楓くんに翼が生えてる!? 絨毯で浮くんじゃなくて飛んでる!? なんで!?」

 

 「懐かしいリアクションだねぇ。やることは単純だよ」

 

 「え? あ……」

 

 そして一気に前線に飛び、友奈の側に浮く。それを見て笑顔を浮かべながら返事をする友奈はどうせならと高嶋を呼び……呼ばれて跳んできた彼女が飛んでいる楓の姿を見て驚愕のち絶叫。そういえば友奈もこんなリアクションだったなーと楓が笑いながら降り立つと彼は翼?消し、両手の水晶から2人の右手に光を伸ばし……包み込む。

 

 「暖かい……」

 

 「えへへ、久しぶりだなー、この暖かさ……落ち着くな~」

 

 「それは良かった。それじゃあ、行くよ。3人同時だから、今回はトリプルだねぇ」

 

 「え? トリプル?」

 

 「うん! 皆で一緒に勇者パンチ!」

 

 「あ、成る程! うん、分かったよ結城ちゃん! 楓くん!」

 

 「それじゃあ行くよ」

 

 「「「せーのっ!!」」」

 

 高嶋が右手を包む真っ白な光の暖かさに穏やかな表情を浮かべている隣で、友奈も目を閉じて懐かさを感じつつ嬉しそうに口元が緩む。その様子を見て楓も朗らかに笑った後、未だに仲間達が戦う姿を見ながら2人に声を掛け、意味が伝わらなかった高嶋が首を傾げる。

 

 が、直ぐに友奈が右手をぐっと握りながら簡潔に説明することで理解して笑顔を見せ、同じように右手をぐっと握る。そして楓が自分の左手を2人と同じように光で包み込みながら1歩敵へと歩を進めると2人は自然と彼の両隣に立ち……友奈が左側、高嶋が右側……3人は同時にそう言って、敵に向かって跳んだ。

 

 「これが、私達の!」

 

 「トリプル!!」

 

 「勇者!!」

 

 

 

 「「「パァァァァンチッ!!」」」

 

 

 

 引き絞られ、後に放たれる3人の真っ白な光を纏った拳。本体を攻撃していた仲間達はその威力を感じ取ったのか、既に離れていた。そして3人はさながら白い流星の如く高速で、真っ直ぐに敵に向かい……程なくして、轟音と共にその拳が敵に、先程美森が狙撃した場所へと叩き込まれた。

 

 その後、弾かれたように後ろへと着地する3人。その手を光は霧散し、本人達と見ていた全員がどうだ? と敵に視線を向ける。だが、敵は健在。今のでもダメか……と僅かに落胆仕掛けた時、ふと杏が疑問に思った。

 

 「……星屑が出てきません。ということは……!」

 

 思わず笑顔が浮かぶ杏。そしてその予想が正しいと言うように、スケルツォの体の殴られた部分からヒビが入り、加速度的に全身に回り……そして、これまでのバーテックス達と同じように光となって天へと昇っていった。

 

 静寂、後に歓声。楓達が嬉しそうに3人でハイタッチをし、楓と友奈の後ろから風が抱き付き、それに続いて仲間達が集まってくる。わいわいと喜びの声が樹海に響き……それは樹海化が消えるまで続くのだった。




今回の相違点

・トリプル勇者パンチ

・……上以外に何を書けと!?



という訳で、原作6話の戦闘パートでした。実は西暦組が来てからは翼を出してなかった楓です。やりたかったトリプル勇者パンチも出来たので私としては満足。

前回の嫁子供襲来番外編は好評なようで何よりです。幸福な家庭ややり取りは書いてる私も楽しくなります。暗い話は書いてると精神が悪堕ちしてます←

さて、100話を越えた本作ですが花結いの章完結はまだまだ先。更新速度が目に見えて遅くなってしまっていますぐ、今後ともお付き合い下さいませ。

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)

……前書きに比べて後書きが短いとは言ってはいけない←
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