咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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大変長らくお待たせ致しました。楽しみに待っていて下さった皆様、本当に申し訳ありません。ようやく更新でございます(´ω`)

連日の雨と配達仕事の為に着ていたカッパのせいで体から中々熱が抜けず、どうにもグロッキーな状態が続いて今に至ります。更に見直しの最中に致命的なミスを見つけ、4000字程書き直す羽目に……もう大丈夫、の筈です(不安

fgoではホームズ狙うも勿論爆死。次のイベントの限定は引けるかな……ドカバトも無事死亡。ブルー悟空&ベジータ欲しいなぁ……当たらないかなぁ……他のゲームも色々爆死。どうにも最近運が悪い。

最近のストレス発散はもっぱらゼノバース2。片手かめはめ波カッコいいですよね。

さて、今回はなぜベストを尽くしたのかパート2です←


後書きには久しぶりにアンケートもありますが、気楽にかつテキトーに投票してみて下さい。


花結いのきらめき ― 16 ―

 「今日皆に集まってもらったのは、新しい神託があったから、その報告を」

 

 「水都さんが言った通り、神樹様から神託がありました。次に私達が取り戻す土地が、丸亀城とその周辺に決まったんです」

 

 「おおーっと、聞き覚えがある場所が来たな。燃えてきたぞぉ! メラメラメラ!」

 

 「球子さん! 燃えるのはあたしの専売特許です!」

 

 いつもの部室にて巫女達に集まるように言われた勇者達。そこで言われたのは新たな神託と、それにより決まった次の奪還する土地の話。“丸亀城”という単語を聞いた西暦勇者、特に四国組はどの勇者よりも顔に真剣さが宿る。球子などやる気のアピールなのか燃えている擬音を口にし、銀(小)はそれに少しだけ物申す。銀(中)も何か言いたげにしていたが、先に言われたので口を閉ざした。

 

 「丸亀城を奪われているなら取り返さないと、いい気分しないよね」

 

 「……ええ。あそこを奪われているのは腹が立つわ」

 

 「そうだな、千景。その通りだ」

 

 「私達の色々な思い出があるもんね」

 

 「……うん」

 

 杏の言葉に苛立ちを隠せないのか言葉にも怒気が乗る千景に若葉も同意する。何故なら、彼女達にとって丸亀城とは高嶋が言うとおり思い出が、思い入れがある場所だからだ。その思い出を振り返っているのか、千景が小さく頷く。

 

 丸亀城。四国香川にあるその城は、西暦において人類守護の要の砦として勇者達の拠点となっていた。拠点というだけありそこで生活や訓練も行い、勇者である彼女達の為の特別教室も存在し、喜怒哀楽に溢れた大切な場所でもある。その話は他の勇者達も聞かされており、前回の土地奪還以上にやる気が漲ってきていた。

 

 「四国組の皆の為にも、しっかり奪還しないとねぇ」

 

 「うん! 皆の大切な場所だもんね。結城 友奈、張り切らせて頂きます!」

 

 「私達も力になるぞ」

 

 「こっちの町とも近いし、あたしも一層火の玉になるってもんですよ!」

 

 「火のタマ……かっこよさそうな響きだ」

 

 「実際になってみるかい? 銀ちゃんが出す炎を体に着けるとかして」

 

 「それじゃ火のタマじゃなくて火だるまになるだろ!?」

 

 「気合い入れすぎて怪我とか燃えたりしないでよ? これからも戦いは続くんだからね」

 

 楓、友奈がやる気を口にし、棗が続く。丸亀城がある場所は小学生組の家がある大橋にも近い為、自然と彼女達でやる気も上がる。燃え上がる銀(小)の言に何かが刺激されたのか球子がそう言うと、くつくつと笑いながら楓が弄りに行く。弄られた球子は思わずツッコミを入れ、そんなやり取りを楽しげに見ていた雪花がやる気を漲らせる面々を見ながらそう呟いた。

 

 「こうなりゃあ善は急げってことで、いきなりカチコミますか!」

 

 「だからダメよ銀」

 

 「銀ちゃんもそろそろ学んでくれてもいいんじゃないかねぇ」

 

 「再びのダブル親友ブロック!?」

 

 「今回は園子も居るんだぜ~」

 

 (まるで昔のあたしを見てるみたいだなぁ……って昔のあたしだった)

 

 「取り返す気持ちが強いのは頼もしいけど、攻めるタイミングは神樹様が教えてくれるから」

 

 気分が乗ってきたのだろう、銀(小)がそう言うと直ぐ様須美と新士が強い口調と苦笑いで止めに入り、止められた彼女は勢いが削がれる。園子(小)も止める側だと示す為だろう、銀(小)の前で通せんぼするように右手を広げている。尚、左手は新士の右手と繋がれている。

 

 水都が小学生組のやり取りを見た後、苦笑しながらそう伝える。しかし、その言い分に雪花が待ったを掛けた。曰く、今回は攻め込むパターンなのだから下準備くらいは出来るのではないかとのこと。

 

 「例えば……敵地の視察をするとかですか?」

 

 「さっすが杏、話が早い」

 

 「斥候(せっこう)か……ふむ、やる価値は高いかと」

 

 「神樹様が攻め込む時期を指定してくるということは、それ以外の時期は危険ということです」

 

 「つまり、斥候……偵察するということ自体が危険な行いってことだね。意見を否定するみたいで悪いけれど……」

 

 「全然! 私達を心配して言ってくれてるんだし。ありがとうヒナちゃん、神奈ちゃん」

 

 (とは言っても、“私”は今回の神託には関わってないからホントかどうかはわからないんだけどね……)

 

 敵情視察。この世界では奪還していない奪われたままの土地に足を踏み入れようとした場合、勇者であるならその時点で樹海に入り込み、巫女なら結界があるかのように弾かれる。つまり、勇者であるなら奪われている土地に入り、その場所を状況を見ることは可能なのだ。

 

 勿論、敵が攻め込んで来た場合での樹海化でもその土地に向かうことは可能である。樹海化は四国全土に及ぶからだ。杏の言葉にその通りと雪花が頷き、美森も同意する。他の勇者達も同意するが、待ったを掛けたのは巫女達。

 

 神託……つまりは神樹、“私達”が届けるメッセージ。次に奪い返す土地と時間帯まで伝えられている以上、それこそが絶好の機会であると。逆に言えば、それ以外ならその限りではない。ならばその日以外で敵情視察の為に人を送る行為は危険なのだと言う。成る程、と巫女達の言い分にも勇者達は納得する。

 

 ……因みに、この神託に“私”こと神奈は関与していない。だが同じように“私達”の声を聞いている。なんなら会話も出来る。だからこそ巫女としての役目を果たせる訳なのだが。尚、話す内容は神託や世間話、ちょっとした助言等である。

 

 「これからもこうすべきと思った意見はどんどん出してネ。目標が決まった所で、今日は解散じゃあ!」

 

 「丸亀城……待っていてくれ。必ず奪還する!」

 

 

 

 という会話があったのが初めて土地の奪還に成功した日の数日後であり、今日はその更に数日後。再び部室へと集まっている勇者達を見回した後、美森が口を開く。

 

 「この間話に出た、攻め込む敵地に向けて斥候を出す案は良いと思うの。再び議題として出してみるわ」

 

 神託で指定された時間帯以外の敵地への潜入は非常に危険であるという巫女達の言葉を受け、その時に案は却下されている。だが、敵情視察という案自体は決して悪くはない。故に、危険であるなら相応に用心してならどうかと美森は言う。

 

 つまり、徹底した戦闘行為を禁止した上での偵察。敵に見つかれば必ず逃げる。絶対に戦闘はしない。そうして充分に用心するのならどうだろうかと。彼女の言葉を受け、情報が有れば有利に戦うことが出来ると意見を言った上で真っ先に園子(小)が賛成。他にも何人かが頷き、賛成の意を示す。

 

 「東郷さんの言う通り、情報は大切です。普通なら私も偵察に賛成……なんですけど、今回のケースだと敵地の危なさが尋常ではないようなので……幾ら用心したところで難しいかと」

 

 「はい。繰り返しますが、神樹様が指定したタイミング以外で敵地に行くのは薦められません」

 

 逆に、その意見に反対する者も居る。神託を受けた巫女達と参謀役でもある杏、他数名。敵情視察するべきということは当然、こちら側には敵地の情報等何もない。それに加え、神託を聞く限り偵察に向かう場所の危険度も高い。更に、ひなたからこんな話も出てきた。

 

 当時、バーテックスが攻めてきた頃。まだ勇者と呼ばれる存在もおらず、多くの人が為す術無く食い殺されていった時のこと。まだ小学生だったひなたと若葉は神樹からの神託に導かれ、他の者達と共に本土から四国まで生きて帰って来ることが出来たのだと。

 

 「もし神樹様の言うことを聞いていなければ……死んでいたでしょう」

 

 「……成る程。私も、神託に助けられたことがあるから分かるわ。議題は取り下げる」

 

 (助けられたのは自分の方だけどねぇ)

 

 ひなたの話を聞き、美森も頷いて議題を取り下げる。彼女もまた、神託によって助けられた経験があるから理解出来たのだ。無論、彼女が言う“助けられたこと”とは小学生時代の遠足の時の戦いの事である。もしも神託が無ければ……当時の銀を途中で新士の元へ急がせる事もなく、彼はそのまま死んでいただろう。それを理解しているから、美森はなるべく顔に出さないようにしつつも暗くなる顔を伏せ、楓は苦笑いだけを浮かべた。

 

 「ん、ちょっと待ってくれ。今の話を聞いてそれでも尚、自分ならば斥候に行けると思うが」

 

 「戦闘の危険度を下げる為の偵察なのに、その偵察班が危なければ本末転倒。行かなくていいワ」

 

 「助っ人としてこの地に来た以上、こういう所で頑張りたいのだが……」

 

 「せめて、どう危ないか分かれば対策を立てられるんだけどねぇ。樹の占いでも無理でしょ?」

 

 「そこまで具体的には分からないねぇ……」

 

 (風さんも樹もやっぱり楓の姉と妹だよなー。語尾が伸びるとことか)

 

 (わたしも伸びるよ~?)

 

 (そういう話じゃないわよ……)

 

 だが、それでもと声を上げたのは棗。彼女も他の勇者と同様にこの世界でのお役目を果たす為の助っ人として召喚された勇者である。その役割を果たしたいと、真面目な彼女がそう思うのは当然のことと言ってもいい。風は棗の気持ちも分からないでもないしその心遣いは嬉しいが、部長としても仲間としても認められないと言って首を横に振った。

 

 戦いの危険度を下げるには偵察が必須。だがその偵察に行けば向かった人が危険になる。当たると評判の樹の占いも流石にそこまで具体的なことは分からない。姉妹の会話を聞いていた銀(中)と園子(中)、夏凜はひそひそとそんな会話をしていた。

 

 「どう危険なのか、どれくらい敵が居るのか。神樹様も具体的に語ってくださればなぁ」

 

 「お話出来たらいいよね~。こちらから神樹様に質問出来ないんですか~?」

 

 「どうなんだい? 神奈ちゃん。危険な理由とか敵の数とか分かりそうかい?」

 

 「あ、あはは……私には分からない、かな」

 

 神託を受け、それでもはっきりと露呈する情報不足。どうせなら……と不満げにする銀(小)とぽやぽやとした表情のまま巫女達に問い掛ける園子(小)。それを聞いてくすくすと笑いながら聞く楓に、神奈は少しの冷や汗と苦笑いを浮かべながらそう答えた。

 

 だが、仲間達の制止の声や危険性の高さ等を受けても、それでもと棗は言う。確かに危険だろう。それでも、こういう場面だからこそ自分は役に立ちたいのだと。

 

 「信じて、偵察を任せて欲しい」

 

 「じゃあ自分も着いていこうかねぇ。棗さん1人だと危険でも、自分と2人なら問題ないだろう?」

 

 「うん、楓となら安心だ。いざとなれば空に逃げられるし、深入りすることもないだろう」

 

 「棗の腕も、勿論楓の腕も信じてるけど……今はダメよ。体を張る時が来たら頼るから」

 

 「……了解した」

 

 「ま、そこまで言われれば仕方ないよねぇ。それに考えてみると、自分の光だと目立ちそうだし」

 

 「ん、言われてみれば……だがバーテックスに“目”はあるんだろうか?」

 

 (……楓君には、あまり少人数で樹海に行くようなことはしてほしくないのだけど……)

 

 1人でダメなら2人。そう言った楓と棗の会話を聞き、それなら……と何人かが頷きかける。彼1人居るだけで出来ることが遥かに増え、機動力も確保出来る。また、性格的にも1人で突っ込んだりもしないだろう。

 

 しかし、風はやはりダメだと首を振った。2人なら偵察の1つや2つこなせしてみせるだろうと信頼出来る。だが、それとこれとは別の話。どれだけ信頼も信用も出来ようと、危険性が高過ぎるのであれば行かせる理由にはならない。再三偵察はダメだと言われ、ようやく棗も、そして楓も苦笑いと共に折れた。その事に安堵したのは、先代勇者である中学生組の3人。

 

 遠足の日の戦いは、彼女達の心に傷を負わせている。そしてそれは今後も癒える事はないかもしれない……それ程までに大きく、深い。故に、楓が1人、ないし少人数で樹海に行くことが怖くて仕方ないのだ。もしも彼が1人で行く、或いは孤立することにでもなれば取り乱してしまうだろう。尤も、これだけ多くの仲間が居るのだからあまりその心配はないだろうが。

 

 「というか、棗さんはいつも役に立ってますよ。居てくれるだけで安心感が違います!」

 

 「ありがとう、樹」

 

 「実際棗さんに助けられたこともいっぱいありますしねぇ」

 

 「なー。あのオーバーヘッドキックとかかっこよかったしな!」

 

 「バーテックスがまるでサッカーボールだったんよ~♪」

 

 「上空から見ても見事な蹴りでした。あれほどの動きは中々出来るものではないですよ棗さん」

 

 「む……そこまで言われると、その、照れるな」

 

 樹、そして小学生組に誉められ、或いはキラキラとした尊敬の眼差しを向けられ、棗の無表情な顔に赤身が指す。感情が出にくくあまり喋らないクールな女性という印象の彼女だが、その実会話には普通に参加するし喜怒哀楽も起伏は大きくこそないが分かりやすい方なのだ。

 

 これまでの交流で彼女の人となりを知った勇者達は5人のやり取りを微笑ましく見守り……そんな和やかな空気をぶち壊すように、聞き慣れたアラームが部室中に響き渡る。

 

 「っ、警報が来た! 出陣だ! 丸亀城奪還戦だね!」

 

 「……偵察の必要も無くなったな。何にせよ、出来ることを精一杯やるまでだ」

 

 「皆さん、ご武運をお祈りします。そして、宜しくお願いします」

 

 「うん! 取り戻して来るよ、ヒナちゃん」

 

 「それじゃ、行ってくるねぇ。お留守番宜しくね」

 

 「あたしも皆と戦いたいんだけどなぁ……ま、こればっかりは仕方ないか。皆、頑張ってな!」

 

 「良い子でお留守番してるよ~」

 

 高嶋、棗を筆頭にやる気を漲らせる勇者達。お役目の為、そして西暦の四国組の為だと普段よりも1段上の戦意を燃え上がらせ、極彩色の光と共に留守番組に手を振られながら樹海へと移動するのだった。

 

 

 

 

 

 

 「それじゃあ、早速変身といこうかねぇ」

 

 「ええ、敵は待ってはくれないもの」

 

 「よーし、やるぞー!」

 

 「おー! へーんしーん!」

 

 そんな会話の後に、顔を見合わせて笑い合いながら端末の画面に映る勇者アプリをタップする小学生組。画面から溢れた花弁と共に、4人の変身が始まる。

 

 オレンジのガーベラの花弁がその姿を隠し、再び現れたのは淡く光る己の裸体を抱き締めるようにして目を閉じている新士。彼に先と同じガーベラの花弁が集まり、オレンジ色の竜巻がその身を再び隠す。竜巻が弾け飛び、彼が両手を上に伸ばすとその裸体に花弁が集まり、黒いインナーが上半身を覆う。そして腰回りにも同じように集まり、同じインナーが下半身を覆った。

 

 両足を曲げて思いっきり伸ばすと両足に花弁が集まり、膝から爪先までを覆うオレンジ色の具足に変わる。新士が口元に小さな笑みを浮かべ、両手を首の後ろに回して外側に広げるように動かしながら軽く頭を振り、インナーに入り込んでいた肩ほどの黄色い髪を外に出す。

 

 そして両手の握った拳を体の前でぶつけ合うと両手と体がオレンジ色の光だと包まれ、目を開けて勝ち気に笑うと同時に彼の武器である具足と同色の手甲とオレンジ色を基調とした前後左右に布がはためいている中華風の服がインナーの上に現れる。最後はそれぞれの手甲から4本の爪を伸ばしながらその場でくるりと回転し、“はぁっ!!”という気合いの籠った声と共に体の右側を前にして少しかがみ、右腕を左に曲げ、同じように右に曲げた左手の爪を右手の爪の上に重ねたポーズで変身を終えた。同時に、他の者達も変身を終える。

 

 「っし、変身完了!」

 

 「準備も完了、ってねぇ」

 

 「はぁ……はぁ……小学生組の変身は何回見ても可愛いなぁ……なんだろう、このドキドキ」

 

 「須美は本当に小学生なのかとか新士は本当に男なのかとツッコまずには居られないが……まあいい。それより敵だ」

 

 「ちゃんと男ですよ球子さん」

 

 「はい皆、早く絨毯に乗って。早速敵の反応がある場所まで飛ぶよ」

 

 この変身シーン、小学生組は変身中は目を閉じていたり花弁やら光やらがあるのでお互いには見えていないが他の者には見えているらしい。小学生が行うには些か色っぽいというか扇情的とも言えるそれを毎回見る度に杏は頬を赤らめながらうっとりとし、球子は特に小学生離れしたスタイルの須美と変身中は肝心な部分が見えていない為か変身の仕方と樹似の顔のせいで未だに新士の事を女ではないかと疑問に思うようだ。

 

 苦笑いしながら球子に抗議する新士だったが、特に気にしていない様子で楓の用意した光の絨毯に飛び乗る。全員が乗った所で飛び上がり、端末に映る敵の場所まで飛ぶこと少し。辿り着いた場所でいつものように前衛組を下ろし、後衛組を乗せたままその場で滞空する。

 

 「……やはり敵に動きがない。1つの所でじっとしているわ」

 

 「また“攻撃したら増える”って奴かしらね」

 

 「可能性はあるねぇ。前と同じバーテックスの姿が見えるし、今回もあいつが防衛の要と見ていいんじゃないかねぇ」

 

 「とくれば、1発の破壊力が重要ですね。先輩方、三ノ輪 銀、三ノ輪 銀におまかせあれ! いっくぞおおおおっ!!」

 

 「あ、こら! 銀!」

 

 「自分も行くよ、任せて須美ちゃん」

 

 「我々も行くぞ!!」

 

 数多存在する星屑をはじめとした中、小型のバーテックス。そしてその奥に鎮座するように強い存在感を放ちながら存在する大型バーテックス。それは前回の攻勢の時にも姿を見せたスケルツォであった。また、バーテックス達は前回同様その土地から動く素振りを見せない。

 

 前回と同じならば、スケルツォに攻撃を加える度に星屑が増える。ならば今回もと考えるのは不思議な事ではないだろう。真っ先に銀(小)が飛び出し、須美が声を上げた後直ぐに新士がそれを追い掛ける。若葉の声と共に他の勇者達も動きだし、近付いてきた勇者達に反応してバーテックス達も迎撃の為に動き始める。

 

 何度も繰り返してきた行動。上空の光の絨毯から降り注ぐ光の矢、ボウガンの矢、銃撃、矢。地上からも短刀や槍が時たま飛び、近接武器が振るわれる事による銀閃や緑のワイヤーが宙に軌跡を残す。その度に体を穿たれ、切り裂かれ、たまに爆散するバーテックス。

 

 やがて中、小型を粗方殲滅し、遂に銀(小)がスケルツォへと辿り着く。両手に持つ斧から炎が吹き出し、その炎に包まれた斧を強く握り締めながら走る勢いそのままに飛び上がる。そして気合いの籠った声と共に、敵目掛けてそれを振るった。

 

 「うりゃああああっ!! っ!? か……ったい!! 手が痛い痛い痛い!!」

 

 「っ!? ダメージが入っていない……だと?」

 

 「銀ちゃん! 痛がってる所悪いけれど、直ぐにバーテックスから離れるんだ!」

 

 「援護します! 銀、新士君は早く離れて!」

 

 「何をするつもりか分からないけれど、2人はやらせない!」

 

 前回と同じなら、それは倒せなくともそれなりにダメージが入っただろう。だが今回はそうならなかった。思いっきり振り下ろされた斧はガキイイイインッ!! と何とも堅そうな音を出し、その衝撃が銀(小)の小さな手に襲いかかり、かなりの痛みを味わうこととなる。勇者達の中でも攻撃力がある彼女の攻撃に特にダメージが入った様子がない事に棗が驚き、痛がる彼女の腕を引いて新士が共に後方へと飛ぶ。

 

 その際、スケルツォの今まで動かなかった巨体が少し動いた。何かされる前に2人を……と直ぐに美森と須美の連続した矢と銃撃が嵐の如く降り注ぎ、行動を封じる。2人だけの攻撃でありながらその密度は凄まじく、勇者達が驚嘆の息を吐いた。

 

 「はぁー、すっご。嵐みたいな援護射撃だわ」

 

 「助かったよ新士、須美、東郷さん。にしても手が痛い……」

 

 「余程固かったんだねぇ……よしよし、痛かったねぇ」

 

 「分かるよー、ジーンとするよねぇ。痛いの痛いのとんでいけー」

 

 「ちょ、あはは、新士も友奈さんもくすぐったいですって」

 

 思わず言葉にした雪花の近くまで戻ってきた2人。助けられた銀(小)は3人にお礼を言いつつ、1度斧を手離して両手を擦り合わせて痛みに耐える。それを見た新士は苦笑いしながら彼女の手を取って撫で撫でと労るように撫で、友奈も似た経験したことがあるので同意しつつ彼とは反対の手を撫でる。撫でられた本人はそのくすぐったさにもじもじとしつつ、少し恥ずかしそうに笑い……その様子を、樹と園子(小)が羨ましげに見ていた。

 

 そうしていると、スケルツォの背後から何かが出てくる。すわ敵かと誰もが警戒する中、それは姿を現した。大きさは星屑と同程度か少し小さい位の大きさ。恐らくは今まで出てきたどのバーテックスよりも小さいそれは星屑よりも高く空を飛んでいた。

 

 「小型……でもこれまでのものよりも高く飛ぶ敵……」

 

 「全部撃ち落とすには数が多いか……」

 

 「何か仕掛けてくるから、出方を見た方がいいよ」

 

 大量の、少なくとも最初に倒した中、小型よりは多いであろう小さなバーテックス達。今こうして出てきた以上、必ず何かを仕出かす。そう予想した雪花の言葉により、一同は何をするのかを見極める為に警戒だけに留める。そして勇者達の上空、楓達が居る場所よりも更に高くまで飛んだ時、その小さな体から何かを落とした。

 

 「ん? 何か落ちてきたわね……ってもしかして、爆弾? 爆撃!?」

 

 「まずいぞ! 皆、散れ!」

 

 「本当に爆弾だとしたら不味いねぇ。3人共、可能な限り落とすよ!」

 

 「「「はいっ!!」」」

 

 爆弾。そう風が言った瞬間、直ぐに若葉の指示が飛び、全員が落ちてくる物の着弾地点から遠ざかる。楓も絨毯を操作して落下物から離れつつ、3人と共に落下物を破壊するべく攻撃を開始。直後、楓達の攻撃が当たった落下物が次々と爆発。風の予想通り、それは爆弾であった。その範囲は小型ながらかなり広くて威力も高いであろう事が分かる。

 

 攻撃による破壊とその爆発による誘爆でかなりの数を破壊したが、それでも全てとは到底言えない。更に言えば、運悪く誘爆しなかった物が爆風に煽られてその飛距離を伸ばし、より広範囲にバラけてしまった。そしてそれらが樹海へと着弾し、連続して爆発を引き起こす。

 

 「きゃーっ!?」

 

 「樹! 足を止めないで動くのよ!」

 

 「敵も色んな手で仕掛けてくるのね。とんだアトラクションだわ」

 

 「爆撃とはやってくれる……でも制空権なら、私達が!」

 

 「ああ、須美ちゃんの言うとおりだねぇ。制空権……空は、自分達の領域だよ」

 

 「はい。見たところ、爆弾以外に攻撃方法は無いようです。爆弾も落とすだけなら、楓さんの絨毯ならまず当たらないでしょう」

 

 「だけど地上の皆が危険になるわ。急いで撃ち落としましょう」

 

 幸いにも爆発に巻き込まれる者は居なかった。だがその威力は高く、とてもではないが受けて良いものではない。それに爆発のせいで行動範囲が狭まり、行動自体が妨害されてしまう。そして敵は上空、地上組の攻撃は殆ど届かないか、距離があって避けられる可能性もある。

 

 だが、空には光の絨毯に乗った楓、美森、須美、杏の4人が居る。4人はこれまで上空の敵を相手取り、制空権を取り続けてきた自負があった。故に……これまでよりも言葉に力が入り、上空の小さなバーテックス達と爆弾を破壊する攻撃が苛烈さを増した。

 

 「流石は楓達だ。空の敵は任せた」

 

 「とは言え、幾つか射ち漏らしもあるわね……あれも対処しないと。シューティングゲームも得意なのだけど、肝心の射撃武器が無いわね……」

 

 「わ……私がやります! ええーい!!」

 

 「的がちょっと小さいけど、投げたら当たるかな。そーれっ!」

 

 「わたしも、頑張るよ~!」

 

 その姿に安心感を得た棗がグッと拳を握りながら呟く。だが、やはりその数は多い。更にバーテックス達から落ちてくる爆弾が小さい事もあり、百発百中とはいかず幾らか射ち漏らしてしまう。

 

 しかし、地上組もただ黙って見ているだけではない。細かな操作が可能であり、それなりに攻撃範囲も射程もある樹のワイヤーが空中に閃き、爆弾を切って捨てる。彼女だけでなく雪花の槍投げも加わり、更に園子(小)が槍の穂先を操作して貫いていく。

 

 「埒が明かない、って奴だねぇ……ここは一気に決めてみるかい?」

 

 「そうですね。でもどうやって……」

 

 「前の友奈と高嶋さんの時と同じだよ、須美ちゃん。美森ちゃん、君を強化する。絨毯もあるから自分は攻撃出来ないけれど……」

 

 「分かったわ楓君。任せて」

 

 敵の数と敵が落とす爆弾の数。それらを一気に片付ける為に楓が取った行動は以前と同じように誰かを強化すること。前回は友奈と高嶋と自身を光によって強化し、三位一体の一撃で敵を突破した。だが、今回必要なのは攻撃範囲と射程距離。故に、後衛組の中で最も適しているであろう美森に白羽の矢が立った。

 

 楓の前に移動し、狙撃銃を構える美森。彼は彼女の両肩に手を置き、右手は水晶から出る光が彼女が持つ狙撃銃を包み込む。その間に絨毯も操作してバーテックス達よりも更に上を取る。

 

 (温かい……これが楓君の光。いつも私達を助けてくれた……私を救ってくれた、真っ白で綺麗な……優しい光)

 

 狙撃銃のスコープに目をやり、引き金に指をかけつつ、狙撃銃を覆う白い光の温かさに頬を緩める美森。まるで楓自身と手を繋いでいるかのような温かさに心地好さを覚え、心が落ち着いてくる。

 

 そして両肩の手の重みと感触が、また彼女の心を満たす。彼の右手が触れている事が、彼の右手に触れている事が、彼女に取っては未だに泣きそうな程に嬉しい事で……それでも、その嬉しさと心地好さにいつまでも浸っている訳にはいかないと、スコープの中の敵を見る。

 

 「空のバーテックスだけとは言わないわ……あの大型も、きっと落としてみせる」

 

 本来なら狙撃銃1つで落としきれる数ではない。だが、彼女にはやれる自信があった。1人では不可能だろう。だが、今の彼女が持つ狙撃銃にはもう1人の、百人力の力が宿っているのだ。ならば100にも満たない敵等何するものぞ。

 

 瞬間、狙撃銃の銃口の前に巨大な青いアサガオが描かれた丸い紋章が現れ、その後ろに同じ大きさの白い花菖蒲が描かれた紋章が現れる。そして美森は、その引き金を引いた。

 

 

 

 「これが私の……私達の護国の一撃!!」

 

 

 

 狙撃銃の銃口から放たれる、小さな青白い弾丸。それは白い花菖蒲の紋章にぶつかり、紋章と同じ大きさになってまたアサガオの紋章にぶつかり、更に巨大化。弾丸だったモノは獅子座のレーザーすら越える程の極光となり、その青白い光は真っ直ぐに大型の敵に向かって飛び、範囲内に居る小さなバーテックス達を消滅させ、範囲外の敵も余波だけで文字通りに消し飛ばした。

 

 バーテックス達を粗方吹き飛ばしたその青白い光は止まることなく突き進み……大型の敵に着弾。それは光が途切れるまで当たり続け、光が途切れた一瞬の間を置いて着弾点を中心に敵を覆い隠す程の大きな爆発を引き起こした。

 

 「ナイスよ楓! 東郷!」

 

 「楓くんも東郷さんもすごーい!」

 

 「凄まじいな……あれが楓の強化の力か」

 

 「すっげええええ! あたしも強化してもらったらあんなこと出来るかな!?」

 

 「いや、武器的に無理なんじゃないかねぇ……」

 

 地上ではそんな歓声が上がり、上空に居る須美と杏も同じように興奮を覚えていた。それほどに美森が強化してもらった上で放ったレーザーは強大であり、鮮烈であった。事実一撃で殆どのバーテックスを爆弾諸とも倒したのだからその興奮も頷けるだろう。

 

 だが、地上組とは違って直ぐ側に居る須美と杏は気付いた。強化が無くなったのであろう光が消えた美森と光を消した楓が、射った姿勢のまま動かず……その表情も難しそうなモノである事に。

 

 「……楓さん? 東郷……さん?」

 

 「まさか……でも、あの攻撃を……?」

 

 「手応えはあったし、間違いなく命中したわ。だけど……」

 

 「うん……()()()()()()()()()ねぇ」

 

 やがて、煙が晴れる。そこにはあれだけの強力なレーザーを浴びて尚健在なスケルツォの姿があり……2人の言葉を示すかのように、殆どダメージを受けていない、ほぼ無傷の状態でそこに居た。




原作との相違点

・面子の増加(今更

・楓、偵察に立候補(却下

・まさかの新士の変身シーン(誰得杏得

・空の戦いは後衛組に任せろー!(バリバリ

・美森との合体攻撃(勇者部2人目

・今までも散々あっただろう! 今更グダグダ抜かすな!(自己否定



という訳で、原作7話序盤~中盤程までのお話でした。以前に楓の変身シーンを書きましたが今回は新士の変身シーン。小学生組の変身シーンを見たことがない人は是非ともニコニコなりようつべなりで確認してみて下さい。よりイメージしやすいと思いますし、色々捗ると思います←

今回登場した合体攻撃は楓&東郷さんです。イメージとしてはスローネアイン&ドライのGNメガランチャーですかね。武装はアインじゃなくてデュナメスですけど。

案の定というべきか、前回後書き通り長らくお待たせして本当に申し訳ありません。それでも待ち望んでくれていた方々、本当にありがとうございます。あなた方のお陰で、私は本作を書くモチベーションを保っていられます。今後もお待たせするかもしれませんが、どうかゆゆゆい編完結までお付き合い下さい。

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)

シリアス、ほのぼの、イチャコラ。本作の話の雰囲気で好きなのは……?

  • シリアス系(主に本編、○○if
  • ほのぼの系(主に“平穏に”や本編繋ぎ回
  • イチャコラ系(主に親密√
  • エグい系(主に番外編で救いが無い話
  • 全部だ(キリッ
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