咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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ギリギリ2週間以内……という訳でお待たせしました。ようやく更新です(´ω`)

ようやく梅雨が明けてきましたね。雨と湿気と熱でうんざりでしたが、ようやくマシになります。早く夏終われ←

fgoでは大奥復刻ですが、個人的にこのイベントは面倒なのであまり……出てくる桜ーズは皆好きなんですがね。ガチャは案の定です。フランしか来ませんでした。

変わりにドカバトではLRのベジット、悟飯&悟天二枚抜き。DQタクトでもりゅうおうが、テイクレでも水着カノンノにユーリ、ロイドとウハウハです。イアハート可愛いよイアハート。天華百剣の水着鳴狐とゆゆゆいのぐんちゃん来ませんでしたがね……どうにも西暦組URとは縁がないです。

アンケートは全部が1番多く、次点でイチャコラが。恋愛経験皆無な私の話でも楽しんで頂けているのなら幸いです。

前回の変身シーンはまあそれなりに評価された様子。流石に期間が空きすぎたのか感想が目に見えて減っているのは悲しいことですが、それでも変わらず感想を下さり、それでなくとも読んでくださっている皆様に大きな感謝を。今後も本作を宜しくお願いします。


花結いのきらめき ― 17 ―

 「冗談でしょ……楓の強化付きの東郷の攻撃よ?」

 

 「固いにも程があるでしょうが……っ!」

 

 楓の強化を受けた美森の強力な銃撃……というか最早砲撃と言える一撃。威力だけを見れば満開時の彼女自身の砲撃と同等だと言える程のそれを食らってもさほどダメージを受けた様子のない大型バーテックス、スケルツォの姿の見て思わずと言った様子で風と夏凜の口からそんな言葉が溢れる。

 

 無傷……ではない。だが、攻撃に反してあまりにもダメージが少なすぎた。傷の大きさを見れば、先に一撃入れた銀(小)のモノと大差ない。だが、2回の攻撃の威力の差は歴然。なのにこの結果とあり、勇者達の心に影を落とす。特に美森の満開の攻撃を見たことがある勇者部は動揺を隠せなかった。

 

 「動揺するのは分かるけど、まだ敵は居るよ! そこの太い枝の後ろとかね……せーい!」

 

 「っ、ホントに居た!? よく気付いたわね雪花」

 

 「隠れて期を伺う、私もどっちかって言うとそういうタイプだからね」

 

 「頭が良いんだね、せっちゃん!」

 

 「そうやって褒めてくれると嬉しいねぇ。ありがとうのハグ!」

 

 「あははっ」

 

 「……ま、確かに動揺してばかりは居られないか」

 

 周りが動揺している中でスケルツォだけでなく周囲に気を配っていた雪花が樹海にある木の太い枝の後ろに粗方吹き飛んだと思われていた小型バーテックスに気付き、槍を投げ付けて撃破。そして戻ってきた槍を手に取り、驚いている風に得意気に言って笑った。

 

 その言葉を聞いて高嶋が純粋に褒めると、彼女も嬉しそうに笑って両手を広げて近付くと高嶋と抱き締め合う。こんな時に何やってんだと風はジト目を向けるが、雪花の言葉にも一理あると軽く頭を振って気分を変える。その様子を見て動揺していた者達も気を取り直し、スケルツォを見やる。

 

 「ほう。世の中は常に発見に満ち溢れているよね。人生とは美しい旅だよ!」

 

 「園子、お前急にどうした」

 

 「雪花さんと高嶋さんに感銘を受けたみたいだねぇ」

 

 「それはともかく、残りはあの動かない奴ね。あれ程の攻撃を受けて尚も攻撃してくる気配が見えないけど……」

 

 「ならこちらから仕掛け続けるのみよ。はああああっ!!」

 

 抱き合う2人を見て何やら詩的に、声に力を込めて語る園子(小)に若干引き気味な銀(小)と普段通りに朗らかに笑う新士。そんな3人をおいて、歌野がスケルツォを睨みながら思案に耽る。

 

 銀の一閃、そして楓と美森による強化されたレーザー。それらを受けて尚、特にこれといった動きを見せない敵。どこか不気味にすら映る相手に怯むことなく、今度は千景が大鎌を手に突撃する。

 

 「っ、やっぱり硬い……一撃でダメなら、何度でも!!」

 

 「凄まじい連撃だ。楓達の攻撃にも耐えた敵を何度も……凄い気合いだな。やるな、千景」

 

 「それでもやっぱりダメージは少なめかしら……次はアタシよ! 必殺剣! ばああああく熱!! 女子力落とし!!」

 

 「女子力落としてどうするんだい?」

 

 「いや、多分必殺技の名前みたいなものだから本当に落とす訳じゃないと思うぞ」

 

 ガキリ、そんな硬い音が鳴り、勢いよく斬りつけた大鎌を伝って千景の手に痛みが走る。が、そんなことは関係ないとばかりに連続して振るう。2撃、4撃、8撃……それでも、やはり最初の銀(小)が着けた傷程のダメージしか与えられない。

 

 その気合い、気迫に若葉が称賛の声を溢し、風が千景と入れ替わるようにして大剣を思いっきり振り下ろす。やはりガキイイイインッ!! という音が鳴り、ほんの数センチ程刃が入った程度で止まり、あまりダメージを与えたようには見えない。あんまりな必殺技名に新士が首を傾げながら問い、珍しく若葉がツッコンだ。

 

 「~っ、ホンットに硬いわねこいつ!?」

 

 「とりあえず、姉さんそのまま!! はぁっ!!」

 

 「え? ってどわぁ!?」

 

 大剣を敵に叩き付けた姿勢のままじ~んと手に痺れるような痛みを感じていた風の耳にそんな声が聞こえ、首だけ振り替えると頭上に新士の姿が見えた。彼は若葉のツッコミの後直ぐに風の大剣目掛けて飛び上がっていたのだ。

 

 そして気合いの籠った声と共に体を縦に回転させたことによる遠心力を加えた右足による落下と勇者の身体能力をフルに使ったかかと落としを大剣に決める新士。普通の相手ならば更に大剣の刃が入り込み、なんなら両断も出来ただろう。だがこの敵にはそれもあまり効果が無く、反動で逆に大剣が抜けてしまう。因みにこの時、風は大剣を握りっぱなしだったのでかかと落としの分の衝撃も味わっている。

 

 「いっ……たいしびっくりしたじゃないの! って前にもこんなことあった気がするわ!」

 

 「やっぱりこれでもダメか……なら別の手段を……」

 

 「無視か!? これも前にあった気がするわ!!」

 

 「ごめんよ姉さん。でも訳分かんないこと言ってないで離れるよ」

 

 「……まあ許してあげるし分かったわよ。全く、やっぱり楓は小さい頃から変わんないのねぇ……」

 

 着地し、痛そうに手を振った後に隣に着地した新士に怒鳴る風。が、無視して別のことを考える新士に涙目になり、このやり取りに既視感を感じつつ、ため息を吐きながら言われた通り共にスケルツォから離れる。それでも変わらず敵は動かなかった。

 

 「風さんの一撃も、その後の新士君の追撃も効果はイマイチですね……歌野さん、敵に鞭の嵐を浴びせてくれませんか?」

 

 「オーケー、行くわよ! そおおおおりゃああああっ!!」

 

 「では次に棗さん、強めの一撃をお願いします!」

 

 「分かった。せいっ!! ……くっ、あまり効いてないか……さっきの東郷達の一撃があまり効かなかったのだから、期待はしていなかったが……」

 

 上空から一連の行動を確認していた杏が指示を出し、その通りに動き出す歌野と棗。連続して振るわれる鞭が何度もスケルツォの体を打ち付け、これまで付けられた傷と同じ大きさのモノを量産していく。その傷がかなりの量になった頃、歌野が下がった瞬間に間髪入れずに棗がその手のヌンチャクを思いっきり振るった。

 

 だが、結果は案の定と言ったところ。小型なら弾け飛び、中型も一撃で屠り、大型であろうと大ダメージを与えてきた攻撃は、似たような傷を1つ増やしただけに終わった。その結果は予想出来ていたことだと彼女は言うが、それなりにショックを受けているのだろう、少ししょんぼりとしているように見えた。

 

 「これは、勇者としてプライドが傷付くな。っていうかこいつ堅すぎないか? あんず」

 

 「どんな攻撃でもダメージが一定なんだよね。防御特化型……にしては与えた傷の大きさが()()過ぎる……とにかく、今回は手数で攻めるべきですね」

 

 「それくらいしか無いだろうねぇ。にしても、本当に硬いだけなのかねぇ……まるであの傷以上のダメージを無かったことにされているかのような……」

 

 「ゲームで言うダメージカット……いえ、この場合はダメージ制限かしら?」

 

 「どう違うんですか? 千景さん」

 

 「ダメージカットは一定以下の威力の攻撃をカット……無効化するの。ダメージ制限の場合、与えるダメージに制限……つまり、“ここまでしか与えられない”ということね」

 

 「なるほど……要するに、あの敵は()()()()()()()()()()()()()()()()ということか。厄介な……それにしても、指示を出す姿が板についてきたな杏。それに千景もよく意見を言うようになった……いつも以上に輝いているぞ、お前達。よし、皆! 杏の指示通りに!」

 

 これまでどんなバーテックスであってもあそこまで微動だにされないという経験が早々無かったからか、勇者達の心の内を代弁するように球子が呟き、杏へと質問を投げる。分析しながら返答する彼女は考えを纏め、全員へと自身の考えを言うと楓が納得し、また疑問を呟く。

 

 その疑問に答えたのは千景。首を傾げながら銀(小)が問うと、彼女は顎に手を当てながら答える。ゲームの敵の中には一定以下の威力の攻撃を無効化するモノや与えられるダメージに制限がかかっているモノも居る。つまり、本来なら1000は与えられた筈の攻撃に制限が掛かり、500までしか与えられない、という事だ。

 

 千景の言いたい事を理解し、若葉は納得しつつ顔を苦々しげなモノに変える。彼女の言葉が正しければ、今回の敵は前回の敵と違って破壊力のある攻撃はあまり意味がないのだから。むしろ先程攻撃した者達のように手を痛めてしまう可能性の方が高い。全員がそう理解した所で若葉が声を上げ、全員が動き出す。

 

 「手数なら私の剣舞に任せておきなさい。完成型勇者、三好 夏凜のね!」

 

 「私も出来るかも……犬吠埼 樹、行きます!」

 

 「そうね、樹の武器は応用力高いから」

 

 「流石にお兄ちゃんには負けますけど……」

 

 「ってことは……樹が最前線ってこと?」

 

 「心配するのは分かるけど、樹を信じて送り出してやりなよ姉さん。大丈夫、自分もフォローするから」

 

 「そうですよ風先輩! 私達もフォローしますから。ね! 高嶋ちゃん!」

 

 「そうだね、結城ちゃん! 大丈夫ですよ風さん。私達も夏凜ちゃんも新士くんも居ますから!」

 

 夏凜が双刀を構え、樹も攻める姿勢を見せる。実際、彼女のワイヤーという武器は応用力が高い。楓の光には負けるが、あれは応用力というより万能なので微妙に違うのだが。

 

 あまり打たれ強い方ではない妹が最前線に出ることになると気付き、風が心配の表情を浮かべる。だが、直ぐに新士と友奈、高嶋が自分達がフォローすると告げ、任せろと言葉で、目で訴える。それに安心したのか、風は笑って頷く。

 

 「分かったわ。樹、ちび楓もファイトよ」

 

 「うん、お姉ちゃん」

 

 「任せて、姉さん」

 

 「こうして人は大人になっていくのね……今夜はお祝いにうどんだわ」

 

 「今夜も何も昨日も一昨日もその前もその更に前ももっと前もうどんだったよお姉ちゃん……味は全部違ったけど」

 

 そんな会話の後、勇者達は攻め込む。手数で攻めるタイプの勇者や直接ではなくある程度距離を保って攻撃するタイプの勇者……神世紀組からは樹と夏凜が、小学生組からは新士と園子が。西暦組からは引き続き千景、そして球子、歌野、雪花。無論、一撃の威力が高い者達も攻撃を適度に加えていく。

 

 だが、敵はスケルツォだけではない。未だに爆撃してくる小型は出てきているし、最初より数は減ったとは言え星屑を初めとした中、小型もまだまだ居る。上空の遠距離組が空の敵を殲滅して爆撃を防ぎ、地上の火力組が地上付近のバーテックスをスケルツォに集中している者達の邪魔にならないように倒す。

 

 そうして邪魔が入らない中で、スケルツォに攻撃していく8人。二刀流と幾つもの短刀を投げ付ける夏凜、複数のワイヤーで斬りつける樹、双爪で斬り続ける新士、槍で突いたり飛ばした穂先で攻撃する園子(小)、大鎌を振るう千景、何度も旋刃盤を飛ばす球子、鞭で乱打を繰り出す歌野、槍を投げ続ける雪花。そのどれもが確実に傷を増やしていく。

 

 「はぁっ!! くっ、やはり硬い。生太刀が折れるかと思ったぞ」

 

 「その割に刃零れ1つしてないように見えますけどねぇ。随分と頑丈なんですねぇ、その刀。切れ味も鋭いですし」

 

 「ふっ!! ああ、この刀は私の勇者の力の源みたいなモノだからな。この刀があるからこそ私達は生き残り、勇者としてその力を振るえるんだ」

 

 星屑を斬り伏せ、ついでとばかりにスケルツォの体を切り裂こうとする若葉。案の定対して刃が入ることもなく、硬い感触で少しばかり手を痺れさせながら忌々しげにその巨体を見上げながら呟く。

 

 その呟きに反応したのは敵を切りつけた後に偶々彼女の近くに着地した新士。そして若葉の語りは全員の耳に届く。歌野達四国外の勇者の武器は分からないが、四国の西暦勇者達は皆その手の武器をどこかで導かれるように入手し、当時襲い掛かってきた星屑を迎撃して生き残り、勇者として戦い続けているのだ。

 

 神世紀の勇者達との大きな違いと言えばその武器だろう。神世紀組は勇者に変身することで初めて武器を手にする。しかし西暦組は変身せずとも武器を持ち、持った状態で変身するのだ。勇者システム等無く、変身もしなかった当時から戦えた事を考えれば、神世紀組はその武器こそが力の大元なのだと分かるだろう。

 

 故にその武器は既存の武器、同じジャンルの武器と比べてと明らかに高性能どころではない性能、力を誇る。若葉の持つ刀“生太刀”や高嶋の手甲の“天ノ逆手”等、神話の時代の武具である事もその理由だろう。神話の時代の、“神の力を宿す武器”。それこそが西暦勇者の最大の特徴なのだ。

 

 「はぁ……はぁ……はぁ……ふぅっ。だいぶダメージを与えたんじゃないかな」

 

 「うん、目に見えて敵の傷が増えてるし、深くなってる。絶えず攻撃した甲斐があったねぇ」

 

 「お疲れ樹ちゃん、新士くん。帰ったらいっぱいマッサージするよ。とうりゃー! って」

 

 「あはは、ありがとうございます」

 

 「おや、友奈さんはマッサージ出来るんですねぇ。それじゃあ帰ったらお願いしてみましょうかねぇ」

 

 それからしばらく攻撃し続け、一旦体力の回復をする為か少し敵から距離を離す勇者達。上空組も近くまで降りてきて一息ついている。スケルツォの巨体を見れば、傷がない箇所を探すのが難しい程に傷だらけとなっていた。堅牢な巨体をしていれど本体はまるで反撃も移動もしないのだ、勇者達にとってはサンドバッグに等しい。それでも未だに倒すことが出来ていない。今回のスケルツォが前回と違ってどれ程防御に重きを置いているか分かるだろう。

 

 肩で息をする樹と汗を掻いてこそいるがまだまだ体力に余裕がありそうな新士に友奈が近づき、労いの言葉をかける。見たところ、樹程体力を消耗している者は居なかった。自分だけ……と軽くショックを受けつつ、樹は彼女の言葉を有り難く受け取り、新士も感心しながら朗らかに笑って頷いた。

 

 「今も軽くやろうか。立ったままでも出来るよ。せいやーっ!」

 

 「へ? ふ、ぁっ? ひぁっやあぁぁぁっ! い、今は大丈夫ですぅ!」

 

 「樹、なんて声を出しているんだい……」

 

 「ふぇ? ゆ、友奈さんのマッサージが凄く気持ち良くてつい声が……」

 

 「次は新士くんだね。ていやーっ!」

 

 「いや、自分は……ん、くぁ……っん。な、なるほど、これは確かにぃ……ふ、ぅんっ」

 

 「美森ちゃんに須美ちゃん……いきなり鼻血を吹き出した君達に自分達はどういう反応をすればいいのかねぇ……慣れたけど」

 

 「慣れたんですね……(私も危なかったとは言えませんね……)」

 

 「ご、ごめんらひゃい、はえでふん……」

 

 「ふ、ふみまひぇん……」

 

 そう言うや否や樹の後ろに回って肩やら首やら腕やらをマッサージしだす友奈。そのあまりの気持ちよさから意図せず矯声のような声が出てしまう。年上の妹のそんな声を聞くことになってしまった新士は珍しく微妙な顔をして呆れを隠せない。しかし別に彼女も出したくて出したくて訳ではなく、友奈の手腕が凄まじいモノだから故のことなのだが。

 

 そんな会話をしていると友奈が既に彼の背後へと回り込んでおり、拒否する間も無く妹と同じ運命を辿る。彼女程大きくはないが気持ち良さげな表情と声をしてしまった事が恥ずかしいのだろう、流石の彼も顔を赤くしていた。周囲の者達も皆顔を赤くしたり苦笑いしたりとしている。

 

 が、上空では大惨事の一言。美森と須美の2人がだくだくと鼻血を出しており、楓は苦笑い。彼女達の奇行というか反応に慣れている為、普通ならドン引きするところだろうがその程度で済んでいた。実のところ杏も怪しかったのだが、何とか平静を装っていた。

 

 「やいバーテックス! 愛する弟と妹のあんな声を聞いた上に攻撃までしてもらったんだから大いに感謝しなさいよ!! で、様子はどうよ? 棗」

 

 「何をバカな事を言ってるんだ姉さん……」

 

 「ああ、確実に効いている。あれだけの傷だ、そろそろ倒せるだろう。丸亀城奪還まであと少しだ」

 

 「……ふう、やっと血が止まった。前回の戦いでは、敵に攻撃する度に星屑が吐き出されていた……なら今回もきっと」

 

 「こっちもやっと止まりました……はい、きっと堅牢なだけでなく、何らかの動きや行動に変化があると思います」

 

 右手の大剣をスケルツォに向けながら高らかに言い放った後に棗に問う風。棗が言うとおり、そろそろ倒せてもおかしくはない、そう思わせる程に敵は傷だらけであった。例え与えられるダメージに制限があり、大したダメージを与えられずとも塵も積もればなんとやら。反撃も何もないのだ、このまま行けば問題無く倒せるだろう。

 

 だが、誰1人として問題無く終わるとは考えていない。そもそも、今回の敵はその固さを考えてもあまりに動きが無さすぎた。不信、疑問、疑惑。そう言った感情を持つのは仕方ないだろう。手で鼻血を拭った美森と須美がそれぞれの考えを口にした時、遂に敵に動きがあった。

 

 「前と同じオーラ……ダメージが一定量を越えたから? ともかく、“オーラを纏ったバーテックスが現れる”というパターンに入ったみたいね」

 

 「手負いの獣は危ないものよ。あれが獣かどうかはおいといて、気をつけていきましょ」

 

 「ようし、一息ついたら仕掛けるわよ!」

 

 「これだけ勇者が多いと周囲に注意してくれる人が多いから、あたしも安心して突っ込めるなぁ」

 

 「気持ちは分かるけど、あんまり突っ込みすぎないようにねぇ」

 

 「銀ちゃん、楓君が言うようにあんまり突っ込みすぎちゃダメよ」

 

 現れたのは爆撃してきた小型バーテックス達。それが前回と同様のオーラを纏いながら出てきたのだ。見た目こそ同じだが、オーラを纏っているせいか感じられる力は強い。とは言え、言ってしまえばその程度。加えて編隊を組むように次々と出てきているが、そこから動くことはなかった。

 

 怯むこと無く、平常心のまま小休止する勇者達。樹程息が乱れている訳ではないが、堅すぎる敵に攻撃し続けた為に武器を持つ手が痛んだりしている。敵が準備を整えている内に、勇者達も息を整える。そして相変わらず突撃思考な銀に絨毯の上から楓と美森がそう言った時だった。

 

 「分かってるよパパにママ」

 

 「ママって、もう……」

 

 「楓くんと東郷さんの子供役は私……だから銀ちゃんは私の妹だね!」

 

 「ふふ、そうだねぇ。友奈、妹の面倒をしっかりと見てあげてねぇ」

 

 「あなた、2人をあんまり甘やかしちゃダメよ? 最近は2人共成績が落ちてきているんだから」

 

 「まあまあ。勉強も大事だけど、元気なのが1番だろう?」

 

 (ノリで言ったけど、楓さん達の夫婦漫才が板につきすぎてないかな? 須美と新士が将来こんな言い合いをすんのかー……うーん、ちょっともやもやする)

 

 ノリで銀(小)が言った事を皮切りに始まる夫婦漫才のような寸劇。友奈も加わり、いつかの続きだと言わんばかりに自然と繰り広げられるやり取りに勇者部はまたか……と思い、他の者達はその自然さに驚き半分、仲の良さと息の合い具合に微笑ましさ半分と言ったところ。

 

 「あはは、何だか面白いことやってる。じゃあ私も……千景ー、帰ったぞー」

 

 「えっ!? ち、ちかっ……お、お帰りなさい」

 

 「いやいや、今日も会社が大変だったよ。上司の楓さんにフォローしてもらっちゃってね」

 

 ((自分(楓君)と同じ会社の設定なんだ……))

 

 「お、お疲れ様……えーと……」

 

 「そういう時は“お風呂が沸いてます”とかでいいんじゃないか?」

 

 「ああ、そういうフレーズみたいなの聞いたことあるねぇ。ご飯にする? お風呂にする? それとも……って奴」

 

 「そうか……それが普通なのね」

 

 (そのフレーズ、神世紀にもあるんだ……)

 

 そのやり取りを見て自分もやりたくなったのか高嶋が楓と同じように夫役として千景に話し掛け、千景はいきなりの事に驚きつつ、かつ満更でもない様子で妻役として返す。高嶋の中の設定では自身と楓は同じ会社の上司と部下らしい。

 

 慣れていないのか言葉が続かず詰まる千景に若葉が助け船を出し、楓が聞き覚えのあるフレーズを口にすると千景は成る程と頷く。彼の後ろでは杏が神世紀にも西暦時代に聞いたことのあるフレーズがまだあると知り、ふむふむと頷いていた。

 

 「……! 友奈、さっき私にしたみたいに千景をぎゅっとしなさい」

 

 「OK! ぎゅーっ!」

 

 「あっ……た、高嶋さん……!」

 

 「ふしゅー……イイモノ、見せて貰ったぜ。アマっち、わたしもぎゅーっと!」

 

 「はいはい、ぎゅーっとね」

 

 「わーい♪ はふぅ……世界には素晴らしいモノが溢れているんだね~。園子、がんばる」

 

 「あんずに負けず劣らず、園子も暴走というか爆走するよな」

 

 千景達を見ていた雪花は何かを思い付いたようにニヤリと笑った後にすすす……と高嶋の後ろに近付き、耳元でボソボソと囁く。すると彼女はそれに従い、満面の笑みでぎゅっと抱き付く。無論、夫婦のようなやり取りだけで赤くなるほどの千景だ、そんな事をされれば嬉しさと恥ずかしさでぐるぐると目を回し始めた。その手は抱き締め返すべきかどうか悩むようにわたわたと動いている。

 

 仲睦まじいゆりゆりとした姿に満足げに目を輝かせて息を吐く園子(小)。当然と言うべきか、その後は触発されたように新士に向かって両手を広げ、彼は慣れたように恥ずかしげもなく抱き締めた。再び満足げに息を吐き、その温もりを満喫する園子(小)。そんな彼女を、球子は杏の暴走を思い出してか少しげんなりとした表情で見ていた。

 

 「ふふっ……よし、リラックスした所でぶつかりましょうか。行きましょう、皆」

 

 「やいデカブツ! お前が居座ってるのはタマ達の家なんだ、返してもらうかんな!」

 

 「ほら、あんた達もいつまでも抱き着いてないで行くわよ! 若葉達の大事な場所、取り返してあげなきゃね!」

 

 「分かったよ姉さん。のこちゃん、銀ちゃんも行くよ」

 

 「は~い♪」

 

 「銀様にまっかせなさい! このもやもや、ぶつけてやる!」

 

 (ああっ、折角の小学生カップルのくんずほぐれずが! カメラなんて無いからもっとこの目に焼き付けておきたかったのに……いえ、これから先もまだまだチャンスはあります。その為にも戦わなければ! この先の展開が見られない!)

 

 (またあんずが暴走している気がする……)

 

 そうして再開される戦闘。相変わらずスケルツォ本体は動かない。だが粗方倒していた敵は増えており、オーラが伴う小型バーテックスも出てきている。だからと言ってやることは変わらない。敵を倒す。そして風が言うように若葉達の大事な場所を、丸亀城とその周辺の土地を奪還する。その為に、戦うのみ。

 

 「行くよー! 炎の……勇者キーック!!」

 

 「結城ちゃんなにそれ!? カッコいい! よーし私も……1000回は流石に今は無理だから10回! 勇者パーンチ!!」

 

 「あたしの専売特許が!? これは火の玉ガールとしては負けていられないですね!! うおりゃああああっ!!」

 

 友奈は高く飛び上がり、いつかのように炎を伴う飛び蹴りで地上まで突き進み、その方向に居る敵と周囲の敵を一気に撃破する。その姿に目を輝かせた高嶋も1発1発の威力が高い連続勇者パンチを繰り出して目の前の敵を屠る。同じように炎を出した彼女を見た銀は負けん気が刺激され、対抗するように両手の炎を吹き出す斧を振り回して殲滅していく。

 

 「杏達、歌野達の邪魔はさせん! はあっ!!」

 

 「樹達に近付くな。バーテックス……花により散れ!!」

 

 「タマ達の家から出ていけ! りゃああああっ!!」

 

 本体を攻撃することなく、近付く敵を切り裂いていく若葉。棗も本体を攻撃する勇者達を守る為にヌンチャクを振り回して獅子奮迅の動きを見せ、球子が投げる旋刃盤が射線上の敵を両断していく。

 

 「そろそろ数が減ってきたわね。もう一息よ!」

 

 「上空の敵もかなり数を減らしました。後は本体をどうにかすれば!」

 

 「ええ、土地の奪還は間近。一気に決めましょう!」

 

 大剣を振り回していた風が戦況を確認し、増えた敵が殆ど殲滅されている事に気付く。同時に、それ以上数が増えていない事にも。いよいよもって敵の戦力も、この戦いにおいては底を尽きかけているらしい。矢を放って小型バーテックスを射抜いていた須美もそれに気付き、美森も目の前の敵を撃ち落として中の爆弾の爆発を確認しながら声を出す。

 

 「行くわよ樹! 滅多切りよ!!」

 

 「は、はい! ええーい!」

 

 「のこちゃん、合わせて!」

 

 「うん! アマっちとのコンビネーションだよ!!」

 

 夏凜がスケルツォの巨体に向かって飛び上がり、二刀を振るって切り刻む。その上から樹のワイヤーが鞭のように振るわれ、重ねるように切り裂く。別方向からは新士と園子(小)が走り寄り、息を合わせて交互にダメージを与えてく。

 

 「私達もフルアタックよ! やああああっ!!」

 

 「い、今は集中しないと……ふっ!!」

 

 「顔は赤いままだけどしっかりやる千景は流石だにゃあ。私もしっかりやらないと、ねっ!!」

 

 夏凜と同じように飛び上がり、落下する間に怒涛の乱打を浴びせる歌野。未だに顔は赤いままだが直ぐにキリッと表情を改め、大鎌を振るって巨体を傷付ける千景。そんな彼女を微笑ましく思いつつも自身のやることはしっかりやると素早く槍を投げ続ける雪花。

 

 「私も……楓さん。私を強化してくれませんか?」

 

 「杏ちゃん? それは構わないけれど、一撃を強くしても」

 

 「いいえ、東郷さんや友奈さん達の場合は確かに一撃の強化でした。ですが私のボウガンはボウガンとは思えない程の連射が持ち味です。恐らく、強化してもそれは変わりません」

 

 「成る程……今の状況にうってつけな訳だねぇ。なら、やるよ」

 

 「はいっ! ……!? これは、ボウガンが変化してる……? 東郷さんの時は光に包まれただけだったのに……」

 

 そして上空では杏が美森と同じように楓の前に移動し、楓は絨毯を敵よりも上空へと動かしてから彼女の両肩に手を置く。水晶から光の糸が伸び、それは杏の持つボウガンを包み込んだ。本来ならこれで終わる所だが、今回はボウガンに変化が起きる。

 

 白い光がボウガンの銃身を伸ばし、本体も光によって一回り大きく、神々しく輝く。なぜ美森の狙撃銃の時とは違ってボウガンがこのような変化をしたのか疑問に思う杏と楓だったが、その2つの武器には違いがある。それは、勇者に合わせて出来た武器か、神話の武器かという違いだ。

 

 楓の魂は神の力を強くする。そして楓の光による強化とは、実際の所勇者達の神樹の力……つまりは神の力を強化している。神の力を勇者服や武器という形で纏う神世紀組とは違って、西暦組の持つ武器は神の力そのものと言ってもいい。つまり、西暦組と神世紀組では武器が持つ神の力に差があり、西暦組の方が強化幅が大きいということ。謂わばこの武器の変化は、一時的ながら楓の強化によって一段上の力を得た事による“進化”と言っていいのかもしれない。

 

 (それに、安心する暖かさを感じます。友奈さん達が感じていたのは、この暖かさなんですね。誰かに手を繋いで貰っているかのような……優しく手を引かれているような……この肩に置かれている手と同じ、ホッとするような暖かさ……)

 

 「……ともかく、強くなったことだけは確かだねぇ」

 

 「そうですね。持っているだけその強さが分かります……皆さん! 私達の射線上から離れて下さい!」

 

 ボウガンの光から伝わる暖かさに、思わず杏の頬が緩む。だが直ぐに真剣な表情になると狙いを定め、引き金に手をかけながら仲間に声をかける。仲間達も杏の武器の変化に気付くと少し驚いた表情をしつつも直ぐに従い、その射線上から離れる。そして全員が離れた事を確認した杏は、躊躇うことなくその引き金を引いた。

 

 

 

 「これで……終わらせます!!」

 

 

 

 瞬間、比喩表現ではなくボウガンから光の矢の雨が放たれた。それは残っていた中、小型の敵とオーラを伴う敵を呑み込み、スケルツォの巨体すら覆い隠すほどの密度で樹海へと降り注いだ。さながらそれは矢のスコール。もしくは雨ではなく滝と表現してもいいだろう。

 

 時間にして十数秒程樹海に降り続けた光の矢は、勇者の力故に決して樹海の木を傷付けることはなくバーテックスのみを打ち続けた。そしてその雨が止んだ時、そこには中、小型とオーラを纏ったバーテックスの姿はなく……スケルツォもまた、虹色の光となって天へと消えていく所だった。

 

 光が霧散し、元の状態に戻ったボウガンを下ろし、杏は一息を付く。そしてその数秒後、樹海に勇者達の勝鬨の声が響き渡るのであった。




原作との相違点

・夫婦漫才再び。家族が増えたよ!

・新士がゴッドハンド友奈の餌食に。女の子のような少年の嬌声に需要はありますか?

・強化攻撃第3段。多分4ゲージ、全体攻撃、時ペア攻撃速度100%上昇、移動速度50%低下とかその辺

・他の相違点? 探せば幾らでもあると思います←



という訳で、原作7話の戦闘決着というお話でした。敵が硬い云々は原作通りなんですよね。ぐんちゃんのダメカや制限の説明は分かりやすかったでしょうか?

強化攻撃西暦組2人目は杏。ボウガンの変化、進化はモンハンの軽弩が重弩(ヘビィバレル付き。但し取り回しは軽弩と同じ)になったようなモノです。私は軽弩(通常LV2速射好き)と操蟲棍使いでした。杏の滝のような矢の雨はFGOの弓アタランテ、もしくはオルトリンデ(ワルキューレ)の宝具辺りを想像して下さい。

次回は原作7話の最後を書きつつ、8話に入るか……もしくは何か別の話を挟む予定です。所属から何かゆゆゆいに差し込むか、HとEXで見られる日常を書くか悩み所ですな。

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)

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