咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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長らくお待たせしました、ようやく更新でございます(´ω`)

ゆゆゆ6周年には間に合いませんでした……目の疲れや頭痛さえ無ければ(ギリィッ。しかし6周年、時間の流れとは早いものですね。

fgo、中の人が好きなので卑弥呼欲しかったですが爆死……と思いきや一ちゃんがかなり好みなキャラでしたので個人的なそうでもなく。ダウナー系キャラ好きなんです。

天華百剣も1000万ダウンロード。今なら無料10連や好きな恒常キャラが1人交換出来るアイテムも貰えますよ。私は毛利ちゃんでした。たいぎぃ。

ファイナルギア始めました。シュミリ来なかった……テイクレもドカバトも爆死。ラスクラはレム来たのでガッツポーズして壁に中指ぶつけました。超絶いてぇ。そしてロスワ! 椛! 犬走 椛! 来て下さいなんでもしますから!(暴走

さて、今回から再び原作沿いに戻ります。どうぞお楽しみ下さい。ところで皆様……アンケートはお好きですか?←


花結いのきらめき ― 22 ―

 レクリエーションでの模擬戦を優勝した杏の命令である全員参加のシーン再現から数日経ったとある日。現在の神世紀の勇者達以外が集められた特別教室の中。皆が思い思いに休み時間を過ごしている時、雪花と歌野が机を挟んで対面に座り、間に興味深そうに対局の様子を見守る神奈を置いて将棋を指していた。

 

 「私はここに駒を動かすとしましょう。いざ華麗に進軍」

 

 「ん~、強烈な手を直ぐに指してくる。歌野、本当に将棋はやったことないの?」

 

 「ええ、結構面白いわね。盤面の動きがうっすら見えてくるというか、分かるというか……つまり、戦いと同じよね。あれもほら、敵の弱そうな所とか、攻めてきそうな気配とか分かるじゃない?」

 

 「や、普通はそこはわからないよ」

 

 「園子君は分かるってさ」

 

 「くぁ~この閃きタイプ共め。いいなぁ眩い才能。ちくしょう、絶対負けない」

 

 「あはは……雪花ちゃん頑張って」

 

 「うん、神奈の応援で勇気100倍。才能が戦いの全てじゃないってことを教えてあげるよ!」

 

 「かかってきなさい! その王将を畑の肥料にしてあげるわ!」

 

 将棋を始めてやるという歌野だったが戦況は彼女に寄っているらしい。押され気味な雪花が問い掛けるとあっさりと言ってのけ、天才肌な彼女に苦笑いと嫉妬の言葉を溢す。だがそれも神奈の応援を受けるまで。彼女の応援を受けた雪花と相対する歌野が見えない火花を散らした時、不意に彼女の端末に水都から連絡が入った。

 

 曰く、新しい神託が来たので勇者は全員部室へと集合して欲しいとのこと。雪花が神奈に視線を送ると彼女はコクリと頷き、神託があったことを言外に告げる。仕方ないと将棋の駒と盤を片付け、3人は並んで部室へと向かうのだった。

 

 「そうだ、神奈さんも今度私と将棋でバトルしましょ。楽しかったし、色んな人としてみたいわ」

 

 「うん、いいよ」

 

 「歌野ならいい勝負できるかもね。私はもうやりたくないけど」

 

 「あら、そんなに強いの?」

 

 「10枚落ちで園子に勝ってるよ。一緒に見てた風曰く、一手一手が“神の一手(ゴッドハンド)”だったってさ」

 

 「なにそれすごい」

 

 (あの時は頭の中に“私達(みんな)”の声が響いて煩かったなぁ……私だけでも充分だったから良いけど、今度は“私達”の代わりに指してあげないと)

 

 

 

 時間が少し経ち、場所は勇者部の部室。そこには既に勇者と巫女の皆が集まっており、各々が軽く談笑をしていた。

 

 「実は私は少々困っているのです。1つは冷蔵庫のエクレアが消えたこと」

 

 「こういうのも何だが、それは若葉が食べたのではないのか?」

 

 「私がひなたのおやつを勝手に食べたらどうなるか……思い返すのも恐ろしい」

 

 「若葉ちゃんではないですね。結構厳しく躾ましたので」

 

 「ほらな!」

 

 「いやいや、今のはツッコミ所のような……えっへんしてどうする」

 

 「姉さんが自分や樹のおやつを勝手に食べた時も同じように厳しく躾した方がいいかもねぇ……今度美森ちゃんにアドバイスしてもらおうか」

 

 「東郷式は、4時間正座は勘弁して下さい……!」

 

 (ああ、やっぱり東郷さんも須美みたいに怒らせたら恐いんだなぁ……)

 

 ひなたニコニコとしながら言い始めると棗が腕を組みながらそう言うも直ぐに若葉が否定する。よく見ればうっすらとだが表情が青くなっており、ひなたの“躾”との言葉もあって何があったんだと周りの目が2人に行く。胸を張りながら声は元気よく、しかし顔色は悪い若葉が言うと風のツッコミが入った。

 

 するとふと思い出したように楓がポツリと呟く。それが聞こえた風は直ぐ様彼へと向き直り、ピシッと誰かから教わったのだろう体を90度曲げて頭を下げた。その姿と懇願にも似た震える声に銀(小)は遠い目をしていたが、それは誰も気付かなかった。

 

 「~♪」

 

 「タマちゃん、口にチョコの残りが付いてるよん」

 

 「何ぃっ!? ……ってなんだ、付いてないじゃないか……ハッ!?」

 

 「こういう時はなんて言えばいいんだろうねぇ……」

 

 「今の土居さんにはこう言うべきね。だけど、マヌケは見付かったようね……とね」

 

 「あらあら……球子さんは後で東郷さんに手伝ってもらって吊るしますね。で、本題です」

 

 雪花に指摘されて慌てて口元を拭ってその手を確認する球子だが、チョコが付いてない事に安堵し……自身の行動の愚かさに気付き、油の切れたブリキの人形のようにギギギ……とゆっくりひなたへと顔を向ける。そこには、困った笑みを浮かべたひなたの姿。しかし球子にはその背景は炎が燃え上がり、般若の面があるように見えた。

 

 そのあまりにお約束な行動と言動に楓は苦笑いし、千景は呆れたように首を振りながら彼に向かって呟き、2人は横目で目を合わせてくすくすと笑った。そして球子に死刑宣告をした後にひなたと巫女の2人が今回の本題を口にする。

 

 今回の神託は2つ。1つはもうすぐ戦闘が始まること。もう1つは今回の戦闘は短いスパンで連続して発生するとのこと。普段なら1戦終えると数日、短くとも1日は間が空くのだが、今回はそれが無い。その為、勇者達の負担が大きくなるのだと言う。

 

 「なに、それぐらいなら問題ないさ。この人数に加え、伊達に修羅場は潜っていないぞ」

 

 「なんなら二手に分かれて戦ってもいいのよ? ねぇ千景」

 

 「RPGでも時々見るあれね。パーティを分割するから、満遍なく鍛えていないと苦労するという……」

 

 「現在は勇者の数が強味の1つですから、パーティ分割は最後の手段という事にしたいですけどね」

 

 「でもいざそうなった時の為に組分けはした方がいいかもねぇ。今なら戦えるのは……18人か。9人ずつ分けられるねぇ」

 

 「ま、どんな敵が来ようと肥料にするだけね。頑強な土の船に乗ったつもりで任せてちょうだい」

 

 「いや、沈むっちゅーに……」

 

 「ここは戦艦に例えましょう」

 

 「という事で、何があろうと熱く、そして柔軟に対応してみせるぞ、ひなた」

 

 「本当に頼もしい味方が増えましたね。宜しくお願いします」

 

 連戦すると聞かされても勇者達に焦りはない。ここまでの戦いを終え、厄介な相手と戦ったことも1度や2度ではない。それでも、このメンバーで誰1人欠ける事なく今日まで戦い抜いてきた。その自負、そして仲間への信頼がある以上、恐れる事は何もないのだ。

 

 その姿に、巫女達は大きな安心感を得る。今は戦えない2人もまた、皆が負けるとは微塵も思っていない。ただ、自分達が共に戦えない事が少しだけもどかしい。そして予定されるの戦闘までしばらくの時間がある為、一同は一旦下校するのだった。

 

 

 

 再び学校へと戻るまでの時間を各々が自由に過ごしている頃。1度寄宿舎へと戻ってきていた千景、銀(小)、神奈の3人は千景の部屋に集まってゲームで時間を潰していた。

 

 「さぁ千景さん! 今度はノックダウンファイターズでいざ勝負!」

 

 「次は私と勝負してね。今回こそ一撃でも当てて見せるから!」

 

 「ええ、良いわよ。私は1ラウンド足りとも遊ばない。神奈さんにも、手加減は一切しないわ」

 

 また学校に向かうので制服から着替えないまま、先程までやっていたソフトを入れ換えて格闘ゲームを始める千景と銀(小)と観戦の神奈。それぞれキャラクターを選び、コントローラーを握って対戦を始める。

 

 宣言通りに遊ぶ様子もなく操作する千景に、以前よりも遥かに成長したと自他共に認める銀(小)が食らい付く。が、やはりゲーム歴的にも単純な腕でも上を行く千景にあっという間に追い詰められる。

 

 「せい、せい、せいやっ、あ、ああああぁぁぁぁ~、その3択はエグいっ! あ~、負けた~惜しい!」

 

 「す、凄いよ銀ちゃん! 千景ちゃんの体力を8割も!」

 

 「ええ、本当に危なかった。大した反射神経だわ。また上達したわね、銀ちゃん……どうやら開けてしまったようね。格闘ゲームの対戦という羅刹の門を……」

 

 「格闘ゲームにそんな地獄に続きそうな門があるの!?」

 

 「いえ、ただの比喩よ……」

 

 千景のキャラの残り体力を2割にまで追い詰めるものの攻撃を読み間違えた銀(小)はそのままコンボを叩き込まれ、結果的に1ラウンドも取れないままに敗北する。しかしながらここまで体力を削れたのは初めてであり、千景もふう、と息を吐いて額を拭う仕草をし、神奈は快挙とも言える結果を見て感動したように誉める。

 

 悔しがりながらも楽しげに笑う銀(小)の姿を見て、千景は小さく笑いながら褒めつつボソッと呟く。それを聞いた神奈は思いっきり信じてしまい、驚愕の表情で千景を見る。これには彼女も銀(小)も苦笑いし、直ぐにそう返すと神奈はホッと胸を撫で下ろした。

 

 「褒められたけど、やっぱりまだ差を感じますね。千景さん本当にゲーム強いなぁ」

 

 「本当だよね。千景ちゃん、今度は私と!」

 

 「ええ、勿論良いわ……っと、招集が……」

 

 「あっ、もうそんな時間か~……」

 

 「あちゃー、残念ですね神奈さん。でも大丈夫です! あたし達がさっくりスピード解決してきますから!」

 

 「そうね、素早く終わらせて、また一緒にゲームをしましょう」

 

 「……うん! 約束だよ?」

 

 上達していると言われて嬉しそうにする銀(小)だったが、成長したからこそ千景の強さがより分かると言うもの。恐らく勇者達の中ではこの2人が最も彼女と共にゲームをしているということもあり、共感してうんうんと頷き合う。そうした後に神奈は銀(小)からコントローラーを受け取りいざ対戦……という所でタイムアップを告げるように招集のメールが来た。

 

 出鼻を挫かれ残念がる神奈に銀(小)と千景は元気を出させる為に片や明るく、片や軽く微笑んで約束をする。笑顔を見せる神奈と小さく微笑む千景は指切りをし、3人はゲームを片付けてから学校へと向かうのだった。

 

 

 

 すっかり冬が終わり、春の暖かさが眠気を誘う頃。夕暮れは少しずつ遅く訪れるようになり、夕陽の茜色の光が部室の窓から入り込んで中を染め上げている。本日2度目となる部室へと全員が集合した瞬間、聞き慣れたアラームが鳴り響いた。

 

 「おお!? 全員集まったら直ぐ警報が!?」

 

 「来て早々だねぇ。準備はいいかい?」

 

 「勿論よ新士君。変身開始!」

 

 「あっ、小学生組の皆の変身だ。見なくちゃ」

 

 「杏、自分の準備をするんだ。行くぞ」

 

 「うぅ、圧倒的正論……分かりました」

 

 「行ってらっしゃい、若葉ちゃん、皆さん」

 

 「こっちは変身出来ないのはもどかしいな……気をつけてなー」

 

 「仕方ないよミノさん。わたし達お留守番組はお留守番組で出来る事をしよ~」

 

 「皆、行ってらっしゃい」

 

 「うたのんも行ってらっしゃい」

 

 警報を聞き、直ぐに変身を開始しようとする小学生組に視線が行く杏を若葉が止め、続くように変身を開始する。他の者達も同じように変身し、お留守番組の5人に見送られながら最早見慣れた極彩色の光に呑まれ、樹海化した世界へと移動した。

 

 樹海に移動した勇者達はマップを確認した後、いつものように敵の反応がある位置へと楓の空飛ぶ光の絨毯が乗り込んで向かう。程なくして目的地へと辿り着き、お馴染みとなったポジション……遠距離武器組はそのまま絨毯の上で待機し、他の者達は降りて地上で待ち構える。

 

 「やぁやぁ我こそは三好 夏凜! さぁ敵よ出てきなさい! 殲滅してやるわ!!」

 

 「夏凜は今日も覇気充分だな……見ろ、早速お出ましだ」

 

 「あら、今回のは前のよりも慎ましやかなサイズ……さて、どんな仕掛けがあるのやら」

 

 「基本的に、バーテックスはデカイ奴ほど強い。どうやら今回の敵は比較的楽?」

 

 「そういうこと言うとフラグにしか聞こえないよお姉ちゃん……」

 

 「今回厄介な事になったら姉さんのせいだねぇ」

 

 「そこまで!? アタシそこまでのこと言った!?」

 

 夏凜が二刀を手に戦意を高めつつ敵の反応がある方へと言い放ち、そんな彼女の姿に棗は感心し……そう言った直後に勇者達の目がバーテックスの姿を捉える。相も変わらずわらわらと数多く出てくる敵を見て各々武器を構える中、歌野は中、小型が多数居るが大型の姿が“カノン”という個体の1体だけであり、これまで見てきた中では最も小さいサイズである事に疑問を覚える。

 

 風が言ったように、これまでのバーテックスの強さを見る限り大きければ大きい程より強くなり、能力もまた厄介なモノを持っている事が多い。この世界に来てからはまだ1度も見ていないが、神世紀組が戦ってきた星座の名を冠するバーテックス等その例だろう。この世界で相対した大型バーテックス達も充分な強さ、厄介さを誇っていた。

 

 「神奈さん達によると、今回は戦いが続くようです。長期戦も視野に入れて戦うといいかと」

 

 「それなら任せろ、経験済みだ。なぁ?」

 

 「うん! 私達の時代の丸亀城での戦いだね」

 

 「さぁ、きっちり倒していきましょう。無理せず、でも確実に!」

 

 「両方やってこそ勇者ってことね。辛いねぇ、そこそこに頑張ろ!」

 

 「皆となら出来るよ、せっちゃん。よしっ、行くぞーっ!!」

 

 犬吠埼3姉弟がじゃれ合っていると須美が樹海に来る前の巫女達の言葉を思い返しながら呟き、球子が自信あり気に呟き、高嶋が肯定する。言葉にはしていないが、他の西暦の四国組も頷いていた。

 

 先の戦いで解放した丸亀城。若葉達5人はかつてそこで長時間バーテックスと戦い抜いた経験があった。今でこそ戦える勇者の数は20人近く居るが、元の世界では5人。前線に出るメンバーと控えのメンバーとの交代を繰り返し、疲労を重ねつつも仲間への信頼と連携を武器に長時間の戦闘を乗り越えた。その経験、信頼関係、そしてこの世界で築き上げたそれらがあるのだ、何も恐れる事はないだろう。

 

 それは何も5人だけではない。これまで各地を1人で戦い抜いてきた歌野、雪花、棗。長期戦の経験があまりに多くなくとも信頼関係や連携では負けない神世紀組も、その表情に恐れはない。それにこの世界では何度か同戦闘内で1陣、2陣と連続して敵が来ることもあったのだ。帰還して直ぐにまた戦闘という事例こそまだ無いものの、連戦の経験が全く無いという事もないのだから。

 

 かくして始まる、連戦を前提とする最初の戦闘。大型は1体だけとは言え他の数は相変わらず多いが相手するのもすっかり慣れたモノ。空中では遠距離武器の攻撃が飛び交い、地上では前衛が最前線で大暴れし、その隙を埋める為に中距離組がテクニカルに動く。これまでも、そしてこれからも続くであろう戦闘風景である。

 

 「行っきますよー千景さん! 神奈さんが待ってますから!」

 

 「ええ、銀ちゃん。さっさと終わらせて、3人で続きをしましょう」

 

 「私も歌野に将棋でリベンジしないとね。そぉら!!」

 

 「いつでも受けて立つわ秋原さん。せいや!」

 

 炎を纏う双斧と大鎌が振り回され、眼前のバーテックスを焼き斬り、輪切りにしていく。戦場での会話としてはやや不謹慎だろうが、そんな事はいつものこと。むしろ緩いくらいの方が勇者達には合うのだろう。同じような理由で雪花も槍を投げつけ、歌野は鞭が空気ごとバーテックスを裂いた。

 

 他の者達も各々好きに会話を挟みつつ、しかしバーテックスを倒す手は止まらない。今更中、小型では勇者達を止められない。敵はその数をどんどん減らし、やがて唯一の大型であるカノンも上空から放たれた須美と楓の光の矢が貫き、2つの大穴を開けた後に光と消えた。それを見た美森は端末を確認し、敵の反応が無くなっている事を伝える。

 

 「全部ビシッとやっつけたね。ねーアマっち、おかわりは来ないのかな~?」

 

 「まあ見える範囲にも端末にも反応無いから大丈夫じゃないかねぇ」

 

 「そうね、今回はもう帰還だと思う。だけど、神託では連続で戦闘があるって事だったけど……」

 

 「速やかに撤収するぞ。だが、部室に戻っても解散ではない。次に備えて待機とする」

 

 「若葉殿、お腹が減ると思うのでおりますが?」

 

 「安心しろ結城、ひなたなら何か気を利かせておいてくれているハズだ。私はひなたには詳しいんだ」

 

 「やったね! じゃあすぐに帰ろうよ。あはは、実は既にお腹空いちゃって……」

 

 「ああ、私もだ」

 

 降りてきた遠距離組と合流し、全員集まったところで園子(小)が新士の隣を陣取りながら聞くと彼は軽く周囲を見回してから端末のマップも確認し、敵の姿も反応も無いことを確認にしてからそう返す。須美もそれを肯定しつつ事前に言われた神託の内容を思い返しながら言うと、それに続いて若葉が全員にそう口にする。

 

 部室で待機する、そう言われて疑問を口にしたのは友奈。樹海化する前、放課後という事もあって夕方であった。今しがた戦闘という名の運動をしたこともあり、空腹を訴えている者も数名程出ている。言い出した友奈本人もお腹を押さえながら空腹であると告げれば、若葉はそう言って安心させつつ自身も同意する。だが、次の台詞が問題であった。

 

 「だがバーテックスを齧ると、それこそひなたに怒られるからな」

 

 「いや、齧りませんよ。というかバーテックスって食べられるんですかねぇ? 倒したら消えますし、まあそもそも食べる人なんて居ないでしょうが……」

 

 「ああ、止めておけ。不味くて食えたモノじゃないからな」

 

 (なんで味の感想を……? まさか若葉さん……いや、流石に無いだろう。バーテックスを本当に齧った、なんて……ねぇ?)

 

 かつて若葉は星屑と呼ばれるバーテックスを齧った事がある。それは人間を食い殺してきた星屑に対する報いを受けさせる為の、目には目を歯には歯をという目的によるモノなのだが。実際にその瞬間を目にした事のある若葉以外の西暦四国組は当時を思い出して苦笑いし、それ以外の者達は冗談として受け取って笑っている。

 

 楓もまたそう受け取り、苦笑い気味に疑問を口にするが……返ってきた言葉に冷や汗が流れる。嫌な想像が脳裏に浮かぶが、結局彼はそれも冗談に違いないと内心首を振った。或いは、気付かなかった事にした方が良いと察したのかもしれない。

 

 「お腹空いたんなら、夏凜齧って飢えを凌いでちょうだい」

 

 「私は食えないっつーに」

 

 「はむっ」

 

 「ひぃやぁ!? ゆゆゆ友奈、あんた何して」

 

 「あむっ」

 

 「若葉も友奈と同じことすんな!!」

 

 「ん? 中々に味があるぞ」

 

 「夏凜ちゃんって美味しいね!」

 

 「嬉しくないわよ!!」

 

 お腹が空いた云々の話をしていると風が冗談めかして言うと直ぐに本人からツッコミが入る。が、次の瞬間には彼女の右耳に友奈が甘噛みし、右耳を押さえながら飛び退いて顔を真っ赤にしながら慌てる。しかし飛び退いた先には若葉が居り、同じように左耳にやんわり噛みついた。これまた直ぐに飛び退いて両手で両耳を押さえながら真っ赤なまま怒る夏凜。2人が味の感想を言うとやはり怒鳴り声が返ってきた。

 

 「えっ、夏凜さん齧れるんですか?」

 

 「“友奈と同じリアクション”と聞いたからには、私も齧っておいた方がいいかな?」

 

 「そう言えば、夏凜は煮干しが好きだったな。煮干しの味がするのかも知れない」

 

 「煮干しか、タマは魚好きだぞ。よし、夏凜を味見だ」

 

 「ひっ!?」

 

 「ああ、好きそうなあだ名だよねぇ。今度キャットフードでも開けてあげようか?」

 

 「だぁれがネコだこらぁ!」

 

 「アマっち、わたしはいつでもアマっちに食べられる準備は出来てるんよ!」

 

 「その台詞で充分お腹いっぱいだよ……」

 

 「あらら、大変。このままじゃ皆のお腹が膨れても夏凜さんが居なくなってしまう」

 

 「あはは、そんな事になる前にちゃちゃっと帰りましょうか」

 

 銀(小)が不思議そうに言ったのを皮切りにノリか天然かその場の空気が混沌としてくる。視線が集中した事で夏凜が怯えて風を盾にした時、ここぞとばかりに楓が球子を弄りに行く。そのまま2人が追いかけっこを始め、流れに乗って園子(小)は新士の手を両手で包み込みながら目を見てそう言うと、彼は頭が痛そうに空いている手で押さえながら溜め息を吐いた。

 

 戦闘時の空気はすっかり消え去り、緩くも混沌とした空気に包まれる。会話に入らず外野として楽しんでいた歌野がくすくすと笑い、雪花が流れを終わらせるようにそう呟く。皆がそれに同意した後、そう間を置かずに部室へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 「帰還しましたー……ってなんだか良い匂いが」

 

 「お帰りなさーい。兵糧を用意してあるんよ。その兵糧とは、な、な、なんと! うどんだよ~!」

 

 「素敵よ。流石ねそのっち」

 

 「連戦の可能性があるからね。良かったら食べてね」

 

 「わんぱく若葉ちゃんには大盛りを用意しましたよ」

 

 「カエっちには焼きそばも作ったんよ~♪」

 

 「雪花にはラーメン作ったぞ。棗さんにも沖縄そば、調べてから作りましたんで。味見はしたんだけど、本場のとは違うかも……」

 

 「うどんは私もひなたちゃんに教えてもらいながら作ったんだよ」

 

 部室へと帰還するや否や、勇者達の鼻を良い匂いが擽った。見れば部室の中に簡易テーブルが幾つか広げてあり、その上に大きな鍋が4つ程。更に別のテーブルの上にはうどんやラーメン、そば、沖縄そばに使う麺の束がどっさり。焼きそばもこんもりと置かれており、出来立てなのか鍋と焼きそばからは湯気が上がっている。麺の近くにはトッピング用の具材も多数あり、まさに麺バイキング。

 

 無論、本人達が言った通り用意したのはこの5人だ。しかしどうやって調理を……何人かがそう思った時、ふと窓の外を見ると下に大きな車……所謂キッチンカーと窓から覗き込む勇者達に頭を下げる大赦の人間の姿。後に5人に聞いた所、予めキッチンカーと器具、材料を用意してもらい、帰還する皆に直ぐに振る舞えるように招集前に作っていたらしい。尚、沖縄そばの情報提供は赤嶺家らしい。

 

 「やはり予想した通りだ。ひなた、ありがとう」

 

 「のこちゃんもありがとねぇ。焼きそば、美味しく頂くよ」

 

 「郷に入りては郷に従え……か。蕎麦帝国の建国宣言はまだまだ先ね」

 

 「うたのん、ちゃんとお蕎麦を用意しておいたよ」

 

 「みーちゃん最高!!」

 

 「おお……本当にラーメンがある。銀様、あざっす!」

 

 「まさか沖縄そばが食べられるとは……感謝する、三ノ輪」

 

 「いや、銀様て……棗さんもいいっていいって。でも味の感想は聞かせて下さいね。こっちでも色々調べてみるけど、やっぱり本場の人の話を聞きたいし」

 

 「分かった。では沖縄そばとソーキそばの違いや成り立ちから説明しよう」

 

 「えっ、そこから?」

 

 そんな会話があり、各々器を手に麺とスープ、具材を好きに入れて好みのうどんやらそばやらラーメンやらを作って舌鼓を打つ。楽しげな会話とずるずると麺を啜る音が部室に響き、味と共に束の間の休息を味わう勇者達。疲れた体と精神に心の籠ったそれらはじんわりと染み渡り、自然と笑顔が浮かぶ。

 

 とは言え、休憩中とは言え完全に気を抜いている訳ではない。次の襲撃がいつ来るかわからない以上、気を抜き過ぎるのは危険だからだ。適度に気を抜き、適度に戦闘時の空気を保つ。会話の内容とて只の談笑もあれば次の戦闘に対してのモノもあった。そんなこんなで時間は過ぎていき、来た時は茜色だった空がすっかり暗くなってしまった頃。

 

 「モグモグ……だからね、アタシ達勇者は武器の特性なんかで個性はあれど……あれよ。もう少しこう、雷を操るとか時間を止めるとか、そういう特殊能力があると味わい深いって話よ」

 

 「特殊能力か……悪くない響きだ。モグモグ……うん、三ノ輪の作った沖縄そばは美味い」

 

 「そうね、各自に何かしらの能力があれば個性として面白いと思うけど……沖縄そば、後で少しだけ食べてみようかしら……モグモグ」

 

 「ねぇ、もしも何か1つ自由に能力を使えるとしたら、どんなものが欲しい?」

 

 「世界を書き換える力とか……現在では問題だって解決できるはずよ」

 

 「ふむぅ、それはちょっと何でもありすぎてNGで。あ、うどんおかわりしよっと」

 

 (雷ではないけど炎なら友奈が出せるし、時間はある意味で神奈ちゃんが止めたり出来るんだけどねぇ……)

 

 風、棗、千景の3人は食事をしながらそんな会話をしていた。そう広いとは言えない部室の中ではさほど声を張っていなくとも会話が聞こえる為、楓は焼きそばを手にしながら耳に届いた姉達の会話に内心苦笑い気味に呟く。因みにこの時点で焼きそば、うどん、沖縄そば、ラーメン、蕎麦の全てを楓は口にしている。

 

 その後も水を操る能力や重力を操る能力なんかの話を始めに特殊部隊談義を楽しげにしている3人を見ている友奈もまた、直ぐ近くの夏凜に話しかける。

 

 「なんだか3年生組が面白そうな話をしているね。さすが年上さんチーム!」

 

 「話題は小学生が好きそうなものに思えるけど……むっ、この気配は」

 

 「……やっぱり、もう出撃だ。さっきの戦いから1時間位しか経ってないのに」

 

 「一息はつけましたけど、中々へヴィですね」

 

 「あ~、食後にいきなり激しく動くと体に悪いかも」

 

 「確かにねぇ。それにまだ食べたり無いし、戻ってきた時にはスープや焼きそばも冷めちゃってるだろうしねぇ」

 

 「お姉ちゃんは3回お代わりするんだもん……ってお兄ちゃんは1時間近くずっと食べる手は止めなかったのにまだ食べたり無いの!? 私が見てた限りだと麺類全部食べてまだ焼きそばお代わりしてたのに!?」

 

 「イッつん、カエっちは焼きそば更にもう1回お代わりしてくれたんよ~。沢山作ってて良かった~♪」

 

 「更に上を行ってた!?」

 

 「未来の自分は随分と大食いだねぇ」

 

 「風さんと同じ回数お代わりしてるお前が言うなよ」

 

 夏凜が何かに気付いた様子を見せると同時に楓も美森、園子(中)、銀(中)もピクリと何かに反応した直後、次の襲撃を告げるアラームが鳴り響く。普段のインターバルと比べると驚く程早く次の戦いが始まる事に水都から不安げな声が漏れ、実際に戦う事になる杏も予想以上の早さに溜め息が溢れる。

 

 2人に同調するかのように一瞬部屋の空気が暗くなるが、いつもの犬吠埼3姉弟の漫才染みたやり取りに全員が笑い出す。そこにほけほけと笑う新士と銀(小)のツッコミも入り、余計に笑いが込み上げてきた所で、若葉が口を開いた。

 

 「敵を多く倒せる、そう前向きに考えよう。さぁ行くぞ勇者達よ! 私に続け!」

 

 「おぉ、流石ご先祖様、タフだよ~」

 

 

 

 

 

 

 そして再びやってきた樹海。勇者達は先の戦いと同じように敵の反応がある場所へと向かい、その道中に談笑をする。休憩出来たのは1時間程で会話も挟んで食べていた事もあり、成長期としてはまだまだ食べたり無いと言う者も何人か居た。実際の所、連戦にならなければまだまだ食べていたかっただろうし、まだまだ休憩もしたかった事だろう。

 

 「ん~、元気の源を補給したから体力満タン。さぁ行くぞ!」

 

 「あたしは食べ過ぎないで良かった。止めてくれてナイス須美。新士みたいにおかわりしたかったけど」

 

 「自分ももう少しおかわりしたかったねぇ」

 

 「アマっちにミノさんや、おかわりしたければさくっと戦闘を終わらせれば良いんだぜ~」

 

 「ん! 園子の言う通りだわ! ぱぱっと倒して、またうどんを食べましょう」

 

 「そうだねぇ。折角作ってくれたんだから、冷めたり残したりしたら勿体ないからねぇ」

 

 「風さんもかーくんもまだ食うんかーい」

 

 「まだ食べられるのは凄いな、素直に尊敬する。海でも余裕に生きていけるだろう」

 

 とは言え、1時間程とは言え好物を食べて体力も気力も充分に回復出来ている。やる気を漲らせる高嶋、食べ盛りの小学生組の前衛2人、まだまだ食べる気の大食い姉弟とツッコミを入れる雪花。棗はその2人に本当に尊敬の目を向けていた。

 

 「須美ちゃん、準備はオッケイかな?」

 

 「はい、友奈さん。いざ参りましょう」

 

 「東郷さんの声で友奈さんって本当斬新!」

 

 「他にも色々試そうか? 友奈君、友奈っち、友奈様、友奈殿。楓さん、楓っち、楓様、楓殿」

 

 「なんで自分まで? いつも通りでいいよ、美森ちゃん」

 

 「あははっ、楓君のも私のもどれも素敵だけど、やっぱり私もいつも通りに友奈ちゃんがいいかな!」

 

 「うん、分かったわ。行こう、楓君、友奈ちゃん」

 

 3人のやり取りに笑う周囲の声に3人も釣られて笑いながら、光の絨毯は勇者達を乗せて樹海の空を飛ぶ。後少しもすれば敵と遭遇し、本日2度目となる戦いが始まる。その後少しの時間を楽しみながら、勇者達は戦場へと向かうのだった。




原作との相違点(久しぶり

神の一手(ゴッドハンド)神奈

・千景と銀の絡みに神奈参加

・ハイツさんの台詞が微妙に違う

・若葉のバーテックス食いに疑問を持つ楓

・捕食者友奈&若葉と非常食夏凜

・花嫁修業中料理人銀(中)

・その他多いんじゃないかな……(曖昧



という訳で、原作花結いの章8話前半でした。久しぶりに原作沿いに書いた気がします。原作沿いを書くのはキャラの台詞や展開等を書く時は比較的楽な方なんですが、楓と新士、神奈を違和感無く入れられるかどうかで悩みます。

原作では麺はうどんとそばだけでしたが、本作では銀(中)のお陰でラーメンと沖縄そば、園子(中)と楓の絡みがあるので焼きそばも追加。更に原作だと2時間のインターバルがありますが1時間に半減。ゆゆゆいで難しいのは時系列の把握なんですよね……。

前回の杏ご褒美回は好評なようで何よりです。ダイジェストにした部分も見たいと嬉しいお言葉がありましたが、書くかどうかは未定。今もリクエスト貯まってる状態ですしね。また番外編としてリクエストを消化しないと……。

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)

楓の強引に使う強化3回目。そのデメリットは……

  • 優しい。すやすや楓
  • 優しめ。お留守番楓
  • 愉悦。トラウマ刺激楓
  • その他。私に良い考えがある
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