咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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前回の投稿からおよそ3週間、大変長らくお待たせして申し訳ありません。それでも待っていてくれた方、本作を読んで下さっている皆様、本当にありがとうございます(´ω`)

銀ちゃんの誕生日に間に合わなかった……そして難産でした。寝不足か精神的なものか毎日のように激しい頭痛がしてましたが、最近ようやく収まってきました(治ったとは言ってない)。今年は後何回投稿出来るのか。

ロックマンDAIVが始まり、ラスクラでリゼロコラボが終わり、アプリで爆死多数。ゆゆゆいでは先月遂にハイツさんが切り札化したので狙いましたが来たのはタマっちでした。これでURは5人、内赤が4人です。しかもタマっち以外近接。この片寄りは何なのか。

今日からfgoもイベント始まりましたね。ゴッホちゃん可愛い。ホント可愛い。欲しい。ネモ君も欲しい。量産機みたいな名前がツボです。1番好きなのはジェガンですが←

さて、今回もアンケートあり。今回は普通に本作への皆様の感想みたいなものなので、是非とも気楽に投票して下さい。私が喜びます。


花結いのきらめき ― 23 ―

 予め聞いていた神託通りにその日の内に2度目の襲撃を受け、連戦することになった勇者達。最初の戦闘と留守番組が用意してくれていた麺料理に舌鼓を打ったことで心も体も暖まっていた勇者達は楓の光の絨毯で目的地まで移動した後、いつも通りの立ち位置で直ぐ様戦闘を開始する。

 

 敵は初戦とそう変わらない構成だった。中、小型が多く大型の敵も初戦と同様のカノンと呼ばれる、以前遭遇したものよりも一回り小さいバーテックスが1体だけ。連戦とは言え、しっかり休憩を取った勇者達の敵ではなかった。

 

 空で光が迸ればその直線上のバーテックスが消し飛び、射線の直ぐ近くの中、小型は体勢を崩したかのように動きが鈍り、逃さず撃ち抜かれる。地上では前衛が大暴れし、その隙を中衛が埋める。そうやって上空と地上の中、小型のバーテックスを粗方倒した後は残ったそれらを撃破しつつカノンへ攻撃を開始。そうし始めて少し経った頃、ようやくカノンの動きが鈍り出した。

 

 「よーし大分弱らせたな。今回は敵からオーラみたいなのも出てないだろ」

 

 「後少しでフィニッシュだねぇ。じゃあトドメをお刺し申すか……ん?」

 

 「大変……向こうから新手が出てきたわ!」

 

 敵の様子を見た球子の言葉に、勇者達は確かにと内心で頷く。これまでの戦いで、追い詰めたバーテックスがオーラのようなモノを纏う事が多々あり、そのバーテックスは厄介な能力やタフな身体を持っていた。しかし今回はそういったモノは確認出来ない。

 

 ならばと雪花が槍を構え、いざトドメの一撃を放とうとした時、上空の美森が全員に聞こえる声量で呟く。見れば現在の戦場から少し離れた場所に数十体のバーテックス。中でも目立つのはやはり大型の1体……なのだが。

 

 「ぬっ、ここに来てもう1匹か。そういうサプライズは求めてないのにぃ」

 

 「……あれ? 新しく出てきたのって、数時間前に倒したバーテックスじゃない?」

 

 「同じ種類の別個体とも考えられるけど、どうなんだろう……2体、か。面倒な」

 

 「仮に別個体だとすれば、同じ姿のバーテックスが3体現れた事になるねぇ……大型だと初めての事じゃないかい?」

 

 新しくやってきたバーテックス達にげんなりとする風。彼女と同じようにそちらへと視線を向けていた友奈はふと気付いたように呟き、千景が考察しつつ疲れたように首を振る。そう、新たに現れた大型バーテックスは、つい数時間に、そして今も戦っているカノンと同種であった。更には他と比べると小さい事も同じである。

 

 同じように考察しつつ呟くのは楓。これまで同種のバーテックスが出てくる場面等幾らでも見てきた。中、小型等は完全に同じ見た目なのがうようよといるし、大型もカラーリングだけ変わっている、なんてこともあった。しかし、同種の大型が3体連続して出てくる事は初である。

 

 「んんんっ! ぴっかーんと閃いた! ご先祖様!」

 

 「ああ、2体には距離がある。合流する前に今戦っている奴を倒してしまおう」

 

 「全くもって同意見。大丈夫、ちょっと強引に行ってもいける」

 

 「……そういう“流れ”が見えるんだろうねぇ、指揮官タイプの才能ってのは。神奈も案外指揮官として動くと凄かったりするのかにゃあ」

 

 「風さんと球子は遠くの敵が仕掛けてきたら防御頼む! 楓達も引き続き上空の敵と援護を!」

 

 「よーし行くぞー! 全力全開! 勇者パーンチ!!」

 

 「せいやぁー! 出力最大! 勇者パーンチ!!」

 

 「高嶋さんに続くわ!」

 

 「刻んで殲滅! 乱舞を食らえ! そらぁぁぁぁああああっ!!」

 

 「燃えろ、あたしの斧! いっくぞ! うりゃりゃりゃりゃりゃ!!」

 

 「自分も突っ込むよ! この爪で引っ掻いたら痛いだけじゃ済まないけどねぇ!!」

 

 子孫と先祖の2人がそうして言葉少な目に意志疎通をし、簡単に作戦を告げると歌野が断言するように同意する。敵が現れた次の瞬間には作戦を考え付いた3人を見て雪花は少し羨ましげに呟きつつ、そんな留守番しているもう1人の指揮官タイプを頭に浮かべた。

 

 もしもの為の防御を防御力に定評がある2人に任せ、他の前衛組は目の前のカノンに攻撃を集中させる。友奈と高嶋の2人の拳が、それに続く千景の大鎌が、夏凜の双剣と銀の双斧と新士の双爪が、同時に多方向から攻め立てる。その体躯に次々と傷が付けられていき、目に見えてカノンの動きが更に鈍る。

 

 「銀君の斧の威力はいつ見ても凄まじいし、新士君のスピードは相変わらず速い。負けてられない諏訪の農業王! はっー!!」

 

 「大きくぐらついた……けど、反撃狙ってるね? させない!!」

 

 「同じく見切った! 反撃しようとしている部分を砕ーくっ!! 樹先輩、続いて下さいな~!」

 

 「うんっ! えーい!!」

 

 「そろそろフィニッシュ!? 行っちゃって! 後ろは良い女に任せて!」

 

 「向こうの敵が何かしてきてもタマが守るかんな! 防御とか気にせずやっとけ!!」

 

 「上空の敵も気にしなくていいよ。自分達が全部落とすからねぇ!」

 

 「よし! 棗さん、一緒に頼む」

 

 「あぁ、脆い部分を……砕く!」

 

 小学生の2人の猛攻に触発されたように歌野が鞭で強烈な一撃を与えた直後、カノンの体中から冷気のようなモノが吹き出し、反撃の動きを見せる。が、それを黙って見ている勇者達ではない。直ぐに気付いた雪花が吹き出している部分に向かって槍を投げつけ、園子(小)と樹も続いて槍で、ワイヤーで切り裂き、穿ち、砕くことで噴射を止めて封殺する。

 

 ボロボロのカノンの姿にあと一息だと風と球子、楓が声を出して後押しする。その言葉に押されつつ、若葉と棗は同時に敵に向かって気合いを入れた声と共に突っ込んで両断、粉砕。数秒の間を置いて光となって消滅したのを確認し、若葉は再び声を上げる。

 

 「敵バーテックス、討ち取った!!」

 

 「果敢な攻めだねぇ。これで残りは後1体」

 

 「そちらは楓達が向かってくれている。私達も向かうぞ」

 

 「ああ。行くぞ雪花、棗さん!」

 

 そう棗が呟いた後に、もう1体のカノンが現れた場所に幾つもの光が迸る。それを見た前衛組は直ぐに転身、そこに向かって走る。遅れないように若葉達も続き、程無くして2体目のカノンもまた勇者達の攻撃に耐えきれずに光となって空へ昇るのだった。

 

 

 

 

 

 

 「さーて、またまた連戦だ……ってわーっ、小さい敵がわらわらと出てきたね」

 

 それから少しの間、勇者達は小休止を取ることが出来た。しかしおよそ5分かそこらの時間が経った時、再び敵が姿を現す。相変わらず中、小型が園子(小)が言ったようにわらわらと現れ、その多さに何人かがうげぇ……と嫌な表情を浮かべる。

 

 「小さい敵にうろうろされたら邪魔だ。ペアになって撃破していくぞ!」

 

 「若葉さんストップ! 自分と杏ちゃんで数を減らします!」

 

 「っと、そ、そうか。わかった!」

 

 (あの乃木さんが止まった……)

 

 「杏ちゃん、頼んだよ」

 

 「任せて下さい。小さい敵がどれだけ居ても、強化されたこの攻撃なら……っ!」

 

 再び果敢に先陣を切ろうとした若葉だったが上空から楓に言われ、勢いを削がれつつ動きを止める。その事実に誰に知られることもなく千景が驚愕していると楓は攻撃の為に出していた光の弓を消し、以前したように杏のボウガンを強化する。

 

 楓の光により、その姿を大きく神々しく輝く光のボウガンへと姿を変えた武器を構え、杏はその光の暖かさに安心感を覚えつつバーテックスの群れに向けて引き金を引く。瞬間、放たれるのは比喩表現ではなく光の矢の雨。丸亀城奪還戦の時にも牙を向いた豪雨に等しいそれはバーテックスの群れの大半を消し飛ばし、大幅に敵の戦力を削る。

 

 だが、今回の敵も数だけは非常に多い。大多数を消し飛ばした筈なのにまだわらわらと現れており、未だに“大量”の枠から外れない。とは言え多くの敵を消し飛ばしたのも確かであり、勇者達の士気は高まっている。

 

 「……やはり、強化は1度引き金を引くと効果が消失しますね」

 

 「だねぇ。これで使えるのは後1回……いや、出来れば早めに限界と反動を知りたいから、今回で3回目を使って確認しておきたいところだ」

 

 「気持ちは分かるけど、あんまり無理しないでね? 楓君」

 

 「今後しないように、今確認しておくのさ。勿論、使わないで終わるならそれに越したことはないけどねぇ」

 

 「そうですね。楓先輩の強化は強力ですが、使いどころが限られますし……」

 

 光の矢の放出が終わり、ボウガンの光が消えて元の姿へと戻っていく様を見ながら杏が呟く。強化は1度の攻撃にしか作用しない。杏の場合は連射力が売りの武器だからか1度引き金を引き、引き続けた状態で放たれる攻撃全てに作用しているが。

 

 杏の呟きに答えつつ、楓は自身の考えを述べる。1回なら特に問題はなく、2回目を使うと変身解除後に疲労感が出る。限界であろう3回目を使ったらどうなるのか想像も付かないが、なるべく早く反動……代償を知っておきたかった。心構えが出来ていた方が緊急時の対応もしやすいからだ。

 

 「楓と杏がかなり数を減らしてくれたな。だが、やはりまだ数が多い……私も前に出るぞ!!」

 

 「張り切りすぎて周りが見えなくならないように気を付けて。あまり熱くならないで」

 

 「む、そうだな……また同じ事を繰り返すところだった。ありがとう、千景」

 

 「別に、お礼を言われる程じゃないわ。それと……前に出るのは私“達”よ。次に1人で前に出ようとしたら、その前に私がこの鎌の刃側でどついてあげるわ」

 

 「そ、それは怖いな……肝に命じておくとする」

 

 「ええ、是非そうして頂戴。貴女のこと、ちゃんと見ているからね」

 

 2人が多くのバーテックスを倒した姿に触発されたのか意気揚々と前に出ようとする若葉だったが、千景にそう言われて昂りすぎた気を抑える。以前のようになる訳にはいかないのだ、と。

 

 同じ事を繰り返す、とは西暦での出来事のこと。当初、若葉はバーテックスへの憎しみ、復讐心に囚われていた時期があったのだ。故に殲滅する為に前に出続け、その結果仲間の1人が倒れてしまった事がある。その戦う理由を、その結果を怒られ……紆余曲折あり、今のように仲間の為、人々の為に戦う若葉が居る。その際にも千景が今と同じようなことを言ったのを思いだし、若葉は冷や汗を流しながら笑みを浮かべた。

 

 2人のやり取りを微笑ましげに周りが見ているのを知らず、若葉が千景と楓達の攻撃前に言っていたペアを作りつつ、他の勇者達も各々ペアを作って攻撃を開始する。尚、上空の遠距離組はペアを作らず地上組の援護である。

 

 「……地上の皆さんの団結を見ていると、体の奥が熱くなる時がある。これは一体何なのでしょう……」

 

 「須美ちゃんにもきっと分かる時が来るよ。そのまま、その熱を育てようね」

 

 「杏ちゃん、君は何を言っているんだ」

 

 「さてさて、折角かーくん達が貴重な強化を使ってやってくれたんだし、残ったバーテックスを叩きましょうか、結城っち」

 

 「だね、せっちゃん。勇者パワーを10倍だぁっ!」

 

 「おっ、それじゃ私は20倍!」

 

 「あたし100倍!」

 

 「タマは1000倍ー!」

 

 「こやつら元気だのぅ」

 

 「精神年齢小学生だらけねぇ。さぁボク達、あのバーテックスを倒すわよ!」

 

 上空でそんなやり取りがあったことなど知らず、雪花はペアとなった友奈に声を掛け、彼女もやる気を漲らせながら答える。それに対抗するかのように高嶋が、銀(小)が、球子がやる気を漲らせた。そんな4人の後ろ姿を見ながら雪花は呆れ混じりに笑い、風もやれやれと首を振った後に大剣を構え、同時に突っ込んでいった。

 

 先程楓と杏が掃討したバーテックスに加え、ガンガンその数を減らしていくバーテックス達。2回目の戦い、その2戦目となるこの戦いもそう遠くない内に決着が着くだろう。

 

 (同じ形をしたモノが続けて現れただけなのか……一体どういうことなのかしら。疑問は解けないわ)

 

 ただ、美森を含めた数人の内心で、3度現れたカノンの姿に疑問と不安が渦巻いていた。

 

 

 

 

 

 

 それから少し経ち、粗方の雑魚敵を倒し、大型バーテックスであるカノンへと攻撃を開始していた勇者達。同じ行動、同じ戦闘力という事もあり、対応にも慣れてきている勇者達には最早敵ではないと言っても過言ではなかった。

 

 「よーし、手応えは充分。どうかな?」

 

 「ああ、敵が弱まっている。今こそ勝機だ!」

 

 「いざバーテックスへのトドメよ! この鎌で刈り取る……!」

 

 勇者達の猛攻を受け、再生が追い付かずに身体中にヒビを作るカノン。もう間も無く先に倒した同型と同じ末路を辿る事は想像に容易い。さあ後一息……というところで、須美が何かに気付いたように声を上げた。

 

 「っ!? ま、また新しい敵が出てきました! 位置は、遠いですが……」

 

 「何ですって!? 次から次へと……ちょっと異常ね……」

 

 「マジか……んぎぎ、終わりかと思ったのに」

 

 「あの敵の姿、さっき倒した奴に今戦ってる奴と同じ姿だよねぇ」

 

 「楓君の言うとおり、同一個体のようね。今回はそういう特殊な敵という事なのかしら」

 

 須美の視線の先に、また数10体の中、小型のバーテックスと共に大型のバーテックス……カノンが現れた。その見た目はこれまでと同様に本来のカノンよりも幾らか小さくなっており、この連戦中に出てきたモノと同じ姿であった。

 

 倒しても倒しても出てくる同型の大型バーテックス。同じ大型ばかり現れる事に風が顔をしかめながら呟き、もう少しで戦いが終わると思った矢先に再び現れたことで球子が疲れたように呟く。否、実際に肉体的にも精神的にも疲れてきていたのだ。休憩を挟んだとは言え連戦中なのだからそれも仕方ないだろう。

 

 ポツリと呟いた楓の言葉に肯定を示すのは美森。そしてようやく、今回の敵の特性がどういったモノなのか理解し始める。何度も現れる同じ姿の大型種。他の勇者達も段々と理解してきていた。

 

 「一筋縄じゃいかなくなってきた敵か。造反神も必死ね」

 

 「私は何となぁくだけど、造反神がどんな神か想像ついてきたな……予想が当たってるとしたら、逸話通りの暴れん坊さんだわ」

 

 「まずいわね、敵が合流しようと動き始めてる。対応しないと」

 

 「なら、目の前の弱った方を叩こうか。3人とも、やるよ!」

 

 「わかったわ、楓君」

 

 「「はいっ!」」

 

 この世界に召喚された頃と比べ、明らかに厄介な能力や耐性を持つ敵が増えている事に風は苦い顔をする。その隣で、雪花は造反神がどういった神であるのか予想がつき始めていた。とは言え、あくまでも予想であるからか詳しい事は内心に留めて置くようだが。

 

 夏凜が新たに現れたカノン達が今戦っているカノン達に合流するべく動き始めたのを察知して直ぐに楓達遠距離組が弱ったカノンへと攻撃を開始する。楓の光の弓から放たれた光の矢が、美森の狙撃銃から放たれた弾丸が、須美の弓から力を溜めて放った矢が、杏のボウガンから放たれる数多の矢が少なくなった雑魚諸ともカノンへと突き刺さり、その体躯に多数の風穴を開ける。数秒の間を置いて、カノンはその身を光へと変えた。

 

 「楓達、ナイス撃破! 相変わらず遠距離組もやるわね」

 

 「……そして、もう1体か。さてさて、普通にぶつかっていいものか」

 

 「あと一息なんだ、やってやりましょう! 勇者は根性!」

 

 「そしたらまた片一方が復活したりね? 完全にパターン入ってると思うな」

 

 「片方倒すだけじゃダメってことですかねぇ……セオリーで言えば、2体を同時に倒すのがまあ良くある話ですが」

 

 「成る程……同ターン内で同時に倒すとか、ゲームでは良くある話ね」

 

 「それなら、これだけの人数が居るんだから何とかなるわね」

 

 「ひとまず、疲れ切る前に作戦を立てましょう。力押しだけでは勝てそうにないです」

 

 (案外、強化した攻撃で一掃すればどうにか……いや、流石に1ヶ所に纏める必要があるからどちらにせよ策は必要か)

 

 弟が活躍したのが嬉しいのか声に喜色が混じる風。だが新たに現れた方はまだ無傷であり、着実にこちらへと迫ってきている。倒しては現れ、倒しては現れを繰り返すにどうしたものかと歌野が悩む素振りを見せると銀(小)が元気に叫ぶ。とは言え、元気だけでどうにかなるような敵ではないのも確か。雪花が言うようにパターンに入ってしまっている。

 

 不意に、新士がそうポツリと呟くと千景が同意する。今回の敵がそういったギミックを持っているかどうかはさておき、RPG等ではそう珍しくもない話である。歌野もこの勇者達の人数なら出来なくはないとやる気を出すものの、杏がそう提案する。楓としては案外力押しでもどうになるのではないかと思うが、今や彼女は勇者達の頭脳。全面的に信用と信頼していることもあり、口に出すことはなかった。

 

 「新士や銀達は大丈夫か? 今回はまだ戦いが続いていくぞ」

 

 「ウィ御先祖様。鍛えていますので」

 

 「問題なく。まだまだ行けますよ若葉さん」

 

 「私も殆ど自分で動いている訳ではないので、問題ありません」

 

 「同じく! 三ノ輪 銀、まだまだ行けまっす!」

 

 「そうか。強いな……頼りにしている」

 

 「小学生が頑張ってるんだから、流石に弱音は吐けないね、樹ちゃん」

 

 「はい、頑張りましょう雪花さん!」

 

 最年少達の体力を心配する若葉だが、返って来たのは疲れをあまり感じさせない元気かつ頼もしい言葉。小学生組のその姿にほっこりとしつつ、彼女はそう言って微笑む。雪花もあまり体力がある方ではない樹にクスッと小さな笑いを含みつつ言えば、彼女も負けていられないとむんっと両手に力を込めた。

 

 少し空気が緩んだところで、勇者達は1度バーテックスから距離をとって作戦会議をする事に。遠距離組も1度地上近くまで降りてきて話し合いを始める。無論、敵への警戒は怠らない。何かあれば直ぐに知らせられるように意識を向けつつ、この戦いを制する為に作戦を立てる。

 

 現在、新たな敵が現れたものの敵を倒した時点から動きはなかった。その事に疑問を覚えた球子が首を傾げるが、杏の見解は“もう1体の復活を待っているのではないか”と言うもの。そこで美森がこれまでの情報を纏める。幾ら倒そうとも復活しては攻めてくる同型の大型バーテックス、そして連続して戦う事を告げる神託。そうすると、1つの解が浮かんだ。

 

 「つまり、今回のバーテックスは()()()()()のバーテックスということですね?」

 

 「そう思うよ。片方が倒されそうになるタイミングでもう片方が復活してきてるし」

 

 「どちらか片方を倒しても、片方が居れば蘇ってくる……そういう系統の敵なのではないかと」

 

 「なら今までの出来事も分かるってもんよねぇ」

 

 「仲良しの敵ってことなのかな?」

 

 「で、どうやって倒すんだ? さっき言ってたみたいに2体同時にやっつけるのか?」

 

 「完全に同時には難しくても、ほぼ時間差無しで倒せば……」

 

 「1匹を倒したら、もう1匹も即座に撃破だね~」

 

 「今さっき倒した敵は、やっぱり甦るってことか……」

 

 「でも倒し方がわかったんだから、これが最後の復活だと思えば、ね?」

 

 2体で1体のバーテックス……それこそが今回の敵の正体であり、何度も現れるカノンのからくり。例え1匹のカノンを倒そうとも、もう1匹のカノンが現れる。それを倒そうとも、また現れる。このまま戦っていても延々とそれが続き、いずれは体力が尽きて敗北……なんて事になりかねない。だが、そうと分かればどうすればいいかも分かるというもの。

 

 杏と雪花、美森が考えを告げ、風が納得し、友奈がどこかズレた考えを呟く。すると球子が先程の会話……新士と千景の会話を思い返しながら言うと全員が頷く。片方が居ると復活するのだから、それなら両方同時に倒してしまえばいい。実にシンプルで分かりやすい答えであり、攻略法だった。

 

 「倒すには調整が必要……か。まさしくボス戦ね」

 

 「かといって敵を両方並べてゆっくり戦うのも、なんだか危険だと思うのよ。仲良しなら、あいつら力を合わせそうでね。そんな空気が漂ってる」

 

 「本来なら“それ根拠の無い勘でしょ?”って言うけど、歌野が言うなら信じるわ」

 

 「実際に2体はくっつこうとしていたから、何か隠し持っているかも~」

 

 「やれやれ、勇者は根性だけじゃなく頭も使わなくちゃいけないってことか」

 

 「ふふ、銀ちゃんはあんまり得意じゃ無さそうだねぇ」

 

 「まあ確かにあんまり得意じゃ無いけどさ……でもま、いいさ。こっちもレベルアップしないとな!」

 

 千景が少々面倒そうに動かないカノンを睨み付けていると歌野が同じように敵を見つつ呟く。それ自体は“空気”という根拠もないものだが、これまでに彼女の天才的な部分を見てきた雪花はそう言って信じ、これまでの動きから考えた園子(小)も同意する。

 

 基本的に突撃思考な己と違って色々考えてるなぁと頭を使うのがさほど得意ではない銀(小)はそう言って首を振り、それを知る新士がくすくすと笑う。笑われたのが恥ずかしかったのだろう少し赤くなった彼女はそれを紛らわせるように両手に力と気合いを入れた。

 

 「敵が進化するならこっちも、ね」

 

 「ふー。大変だけど、なんとか終わりが見えてきたね」

 

 「ああ。からくりが分かれば、力を振り絞って決戦あるのみだ」

 

 「ここが踏ん張り所だ! 皆で力を合わせて乗り切るぞ!」

 

 「それなんですが若葉さん、それから皆も。ちょっと自分に力を貸してくれないかい?」

 

 「楓? どったの急に」

 

 どんどん強く、或いは厄介になっていく敵にならばこちらもと対抗心を見せる風。溜まってきている疲労からか深く息を吐く高嶋。静かに闘志を燃やす棗。そして皆を鼓舞する若葉と続いた時、楓が小さく右手を上げる。何かあるのかと姉が問うと、彼はいつもの朗らかな笑みを浮かべた。

 

 

 

 「こんな時に不謹慎だと思うけど……ちょっとした実験に付き合ってもらいたくてねぇ」

 

 

 

 楓の言う実験とは勿論、無理をして3回目の強化を使用した場合にどうなるか確認することだ。その為には後2回強化を使い、その上で敵を倒す必要がある。そこで、1回目の強化を雑魚を散らす事に使い、最後の1回をトドメに使うことになった。また、2回使った後の少しの疲労感から考え、念のため3回目は地上で使うことを約束する。今回は2回目に美森の狙撃銃を強化し、最後に地上組の誰かを強化することになった。

 

 「それじゃあ美森ちゃん、頼んだよ」

 

 「ええ、任せて楓君。見よ、これが我らの護国の砲撃!!」

 

 「我々も続くぞ!」

 

 「あいよー。合流させず体力調整なんて、中々骨だけどね。やってやりますか!」

 

 新たに2体目のカノンが多数の雑魚と共に現れた事を確認し、早速光の絨毯の上で美森の肩に手を置いて狙撃銃を強化する楓。美森は銃身を纏う光から感じる暖かさと安心感に自然と緩む頬を引き締め、砲撃と呼ぶに相応しい光線が2体のカノンの間を突き進む。絶大な威力を誇るそれは直撃コース内と付近のバーテックスを消し飛ばし、更には2体の巨体の表面を焦がした。

 

 それを確認した勇者達は若葉を先頭にして2体へと接近し、攻撃を開始する。未だに残る雑魚も蹴散らし、何が起こるかわからないので合流を防ぎつつ順調に攻撃を当ててダメージを負わせていく。予定通りに3度目の強化をした攻撃を当てた所で、敵が倒せなかったり片方が残ったりしてしまえばまた振り出しに戻ってしまうのだから。

 

 慎重に、敵の行動や2体の距離感を見極めつつ戦況を進めていく。友奈と高嶋の拳がその巨体に突き刺さった。若葉の刀と千景の大鎌、夏凜の双刀、銀(小)の双斧、新士の双爪が鋭く切り裂く。歌野の鞭、棗のヌンチャクが激しく打ち付ける。園子(小)と雪花の槍が貫き、時折来る反撃の体当たりや冷気は風と球子によって防がれ、或いはそれまでの戦いと同じく攻撃の前に潰される。そして上空から数多の矢と弾丸が降り注ぎ、体を穿たれた2体から濛々(もうもう)と煙が上がり……それを見た樹がワイヤーを檻のように伸ばして動きを封じる。

 

 「よし、お膳立ては済んだな。楓! いつでもいいぞ!」

 

 「分かりました、若葉さん。姉さん、一緒にやるよ!」

 

 「まっかせなさい!」

 

 「それじゃあ、行くよ」

 

 準備は整ったと判断した若葉が声を上げ、それを聞いた楓は予定通り絨毯を消して他の3人と共に地上に降り立つ。そしてカノン達の前に出た彼が強化の対象に選んだのは風。弟に呼ばれた姉は直ぐに近寄り、隣に立って大剣を構えた。そして楓もまた、風の大剣を象った光の大剣を作り出し、同じように構える。

 

 (制約その1、光で形作れるのは水晶1つにつき1種類)

 

 改めて頭の中で自身が扱う武器“勇者の光”についての制約を思い返す楓。現在は2つ水晶があるので2種類まで作れる。その内の1種類として、今握っている光の大剣を作った。

 

 (制約その2、強化する場合は光で包み込む必要があり、包めるのは一部分。これも水晶1つにつき1か所で、対象に出来る人数は自分ともう1人だけ。そして、自分はその1人と同時に同じ部分だけを強化可能)

 

 かつては友奈と高嶋を同時に強化したこともある。水晶1つで友奈と自身の拳を、もう1つで高嶋の拳をという風に。美森と杏の時は銃とボウガンが対象であり、同時に絨毯も作っていてそのどちらも作っていなかったから楓自身は強化出来なかった。しかし今回は地上に居て、水晶の1つが空いているので大剣を作れた。故に、風と同時に強化出来ている。

 

 (制約その3、強化する対象が自分の近くに居ること……全ての条件はクリアされた。なんて、ね)

 

 そして最後、強化する対象が楓自身の直ぐ近くに居ること。強化する為の光の射程が短い為か、それとも楓の魂の近くに居ることが条件なのか詳しい事は不明。だがとにかく近くに居る必要があるという事は分かっており、そしてそれを含め強化の為に必要なプロセスは全てクリアしている。

 

 (おお、これが楓の光。何気にこうして直接触るのって絨毯に乗る時位なんだけど……温かい、それに安心する。まるで家で楓にくっついて時みたいな……)

 

 風の大剣が真っ白な光に包まれ、その光に触れている風の頬が思わず緩む。家で樹も含めた家族の団欒を思い浮かべられるような、心と体が暖まるような幸福感。そしてはっきりと解る力の上昇。それは今ならどんな敵でも両断出来ると確信が持てるほど。

 

 風と楓は自然と両手で握った大剣を上段に構える。するとどうか、まるで風が大剣を巨大化させるが如く、光が刃の形状のまま神々しく輝きながらより巨大に、より長大にその姿を膨らませていく。目を焼くような膨大な輝度でありながら、どういうわけか眩しいとは感じずずっと見ていられ、思わず勇者達の視線がその輝く巨大な刀身に釘付けになる。

 

 「楓、行くわよ!」

 

 「いつでもいいよ!」

 

 

 

 

 

 

 「これが、アタシと楓の!! 超必殺女子力斬りいいいいいいいいいいいいいいいいっっ!!!!」

 

 「いや、自分男だから女子力関係な……」

 

 

 

 

 

 

 全くの同時に2体のカノンに向かって振り下ろされた光の大剣。それは樹海化した空間諸とも切り裂くのではないか見紛う程の勢いでありつつ、光である為か音もなく敵に届き……世界を白く染める白光と共に、その姿を消し飛ばした。後に残るのは戦闘など無かったかのような静寂と、敵を倒した証である空へと昇る虹色の光が2つ。

 

 「う……おおおおっ!! 楓さんと風さんすげぇ!!」

 

 「……敵が復活する様子は無し。レーダーにも反応、ありません!」

 

 「やー、相変わらず派手だねぇかーくんの強化攻撃。お姉さんお兄さんと活躍を見た感想はどうよ樹ちゃん?」

 

 「2人共カッコいいです! ……あれ?」

 

 「どうしたの~? 樹先輩~?」

 

 「……楓君の様子が変だわ」

 

 見た目からしてド派手な光の大剣による一刀両断に興奮を隠せない銀(小)。彼女だけでなく友奈と高嶋、球子達も同じように興奮しており、ハイテンションな彼女達の後ろでは須美が美森と杏と共にレーダーを確認、敵の殲滅が完了したことを告げる。

 

 雪花が今は何もない大剣が通った軌跡を見ながらにやにやとしつつ樹に聞くと、両手をぱちんっと合わせながら大好きな2人の活躍に満面の笑みを見せる。が、2人に視線を向けていた彼女が不意に首を傾げた。不思議に思った園子(小)が問い掛ける横で千景が呟いた時、それは全員の耳に届いた。

 

 

 

 「楓! 大丈夫!? ちょっと、楓!?」

 

 

 思わず全員が視線を向けたその先で、地面に膝を着きながら必死な表情で叫ぶ風と……変身が解除され、制服姿で倒れ伏した楓の姿があった。




原作との相違点

・基本的に戦闘内容全般(上空での戦い)

・新強化対象風

・不穏な終わり方

・他多数。この相違点は必要なのだろうか……



という訳で、原作8話の戦闘終了です。レクリエーションの時に比べれば戦闘描写は控え目ですね。次にがっつり書くとすれば……何時になるやら。

前回のアンケートにご協力、誠にありがとうございました。楓が倒れてしまいましたが、はたしてどうなるのかーわかんないなー(棒

さて、もう11月ですのでそろそろ年末の予定をば。本作は来年も続きます。ただ明らかに投稿ペースは落ちてますので完結には暫し掛かります。年末は去年同様に何かしらの番外編を投稿して終わるつもりです。リクエストから発掘するか、それとも親密√か……流石に後味悪い感じには終わりませんので愉悦部の方は座って下さい。

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)

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  • 結城 友奈の章
  • 勇者(咲き誇る花達に幸福を)の章
  • 花結いの章
  • 番外編(その他枠)
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