fgoにて人生初の5桁の課金の末に村正来てくれました。おじいちゃん本気で欲しかったから嬉しい……財布には大ダメージでしたが。
ファンリビてよしのん引けなくて悲しい……七罪も来ましたし、是非とも欲しいところ。
去年最後の投稿となった東郷さん√は楽しんで頂けたようで何よりです。感想では大体の人が面倒臭い女という部分に共感してて笑いました。東郷さんは重くて面倒臭くてなんぼだと思ってます(失礼
某百合廚バーテックス主人公二次を見てバーテックス化楓で勇者部曇らせたいとか思い始めました。敵側主人公も大好きなんです。
それでは、今年最初のお話、どうぞ。
3ヶ所で同時に戦いが始まってからおよそ10数分。現れた高速で動く大型バーテックス……見た目を例えるならアメンボに近いだろうか。後に“ロンド”と呼ばれるようになるバーテックスと大量の中、小型バーテックスと相対した若葉達8人。普段よりも半分以上少ない人数での戦いであったが、問題なく勝利した。
須美、杏による援護射撃。園子(小)と球子が要所要所でサポートと防御を担い、新士と銀(小)、夏凜と若葉の素早さと力、手数による突破力。戦力としてはバランスが良かった8人の前では、高速で動こうが体が大きかろうが問題はなかった。
「敵の全滅を確認しました。我が方の勝利です」
「あはは、なんだか須美ってゲームのオペレーターみたい。これ褒め言葉ね」
「え、そうかしら?」
「知的な感じがバッチリと似合ってるよわっしー」
「うん、ゲームの勝利画面で流れても違和感ないねぇ」
「も、もう、新士君まで……」
最後の敵が光と消えてから少しの間を起き、全滅を確認した須美が弓を下ろしながらそう言うと同時に全員も武器を下ろす。その後直ぐ自然と集まる小学生組の中で、銀(小)が須美の言い方を何かのゲームで聞いた事があるのか少し笑い、意識していなかったのか首を傾げる彼女に園子(小)と新士も同意し、須美も少し恥ずかしそうに頬を染めた。
「ふぅ……いつもより少ない人数だが皆、奮戦してくれたな。礼を言うぞ」
「まぁバランスは良いチームだからね。何より私が居る訳だし」
「流石タマーズだ。因みにあんずは、タマーズの終身名誉監督だ」
「知らなかった……」
そんな微笑ましいやり取りを見てほっこりとしつつ、戦闘の疲労を抜くように息を吐いたのは若葉。雑魚は遠距離組が抑え、高速で動くロンドは素早い夏凜と新士が翻弄し、園子(小)と球子が敵の攻撃を防ぎつつ味方の攻撃をサポートし、若葉と銀(小)が主に仕留める。夏凜が言うようにバランスが良いこのチームの奮戦があったからこそ、全員が無傷で終わることが出来たのだろう。
全員で成し得た勝利を胸を張って誇る球子。いつ組んだのかわからない謎のチームの引退した監督にいつの間にかされていた杏がそのことに驚いていると、ふと園子(小)が呟いた。
「今頃、他のチームもどったんばったん大乱闘しているのかな?」
「視界内に入れば助けに行けますけど……見当たらない。ちょっと遠い所に居るみたいです」
「こんな時、大きい自分が居れば文字通りに飛んで行けるのにねぇ」
「なー、楓さんの武器って色々便利だよな」
「仲間を信じよう。問題ないハズだ」
「その通りだな、球子」
「えへん」
(はぁ……若葉さんに同意されて胸を張ってるタマっち先輩も可愛いなぁ……)
一方、風と樹、歌野の3人の戦場。他の場所と比べ人数が少ないここではまだ戦闘は終わっていなかった。
「女子力大旋風!! うりゃああああああああいっ!!」
「わぁ、まるでヘリのプロペラね。敵が細切れに……」
「いっぱいお仕置き! えい、えい、えーい!!」
「ワォ、糸でばっさばっさとお豆腐みたいに……」
「さっすが我が自慢の妹! ってまた敵が湧いてきたか……」
両手でしっかりと握り締めた大剣を体ごと回転させて振り回しながらバーテックスに突っ込んでいく風。風を狙い襲いくるバーテックスは触れた瞬間からもれなく細かな肉片へと変えられた後に光と消えていく。
姉の活躍を追うように、樹もいつものようにワイヤーを伸ばして時に串刺しに、時に巻き付けて収縮させて切断、張り巡らせて引っ掛かった敵を細切れにしたりと次々に撃破していく。そんな2人の活躍を実況する歌野もまた手を休めることなく鞭を振るい、姉妹に負けず劣らずバーテックスを輪切りにしていっているのだが。
妹の活躍に気を良くする風だったが、敵の更なる増援を見て内心で舌を打つ。只でさえ人数が少ないと言うのに敵は普段通りの物量を展開してくる。オマケにこちら側には遠距離攻撃出来るメンバーが居ない。お互いをサポートし合うにも限度がある。事実、戦いの中で片手の指で足りる程度とは言え何度か攻撃を避け損ねて精霊バリアが発生してしまっている。
「樹、こうなったらアレやってみるわよ」
「本気!? お兄ちゃんから呆れた眼で見られてたけどいいの? お姉ちゃん」
「ええ、よくってよ。さぁ樹カモン!」
「よーし、えい! ええええいっ!!」
「ん? 樹さんの糸が風さんの足を縛りーの? そ、そのまま振り回しーの!?」
付近のバーテックスを粗方細切れにした姉妹が近くに集まり、風が樹に向き直る。次の言葉に驚きと少しの呆れを含めつつ聞き返す妹に、姉はさぁ来いと大剣を構えた。次の瞬間、歌野は信じられないモノを目にする。
普段バーテックスを容易く切り裂く樹のワイヤーが風の両足に幾重にも巻き付く。それだけでハラハラとする光景だが、更にそのまま風を振り回し始めたのだ。さながらそれは西部劇に出る投げ縄を振り回すかのように。回っているのは大剣を掲げた風だが。
「見さらせ! これぞ女子力大旋風の超強化版! 犬吠埼いいいい!」
(……やっぱり言わなきゃダメなのかな……)
「犬吠埼ぃっ!!」
「だ、大車りーん!!」
そうしてこの連携のモノか必殺技の名前なのかわからない言葉を叫ぶ風を回しながら突撃していく、技名を渋々叫ばされる樹。だが見た目や名前の割に勇者2人分の連携ということもあってか、その威力は中々に凄まじい。
何しろ風に当たれば大剣によって、風の足を縛るワイヤーに当たればそれによって切り裂かれるのだ。オマケに攻撃範囲が広い。そして攻撃に使われている部分全てがダメージになり得る。風が目を回しそうな攻撃ではあるが、そこは勇者の力が三半規管にでも作用しているのだろう、特にそう言った症状は見受けられない。
「四国1スイングじゃないのね……うっ、急に頭が……それはともかくワンダフル! あっという間に敵が減っていく……流石姉妹の連携力ね!」
「解説しながら敵を沢山倒してるあんたも充分凄いわよ歌野! さぁ、どんどんかかってこーい!!」
以前のレクリエーションで風にぶん回された事を思い出したらしく、一瞬頭が痛んだのか手で軽く抑える歌野。その痛みも直ぐに収まり、改めて姉妹の合体攻撃を見て興奮気味だ。無論、そうしつつも攻撃の手は休めていないので振るわれる鞭が敵を多数屠っている。
だが、まだまだ敵は居る。どれだけ倒しても、やはり元の戦力差と人手不足なのは否めない。それでも3人は、お互いをサポートしつつ立ち向かう。いずれ、仲間達が来てくれると信じて。
場所は代わり、楓達海岸に居た組。こちらもまたロンドと多数のバーテックスに襲われていたが、勇者達の中でもトップクラスの攻撃力を持つ友奈、高嶋、棗と広い攻撃範囲を持つ千景、遠距離攻撃が出来る美森と雪花、幅広い行動が出来る楓が居る。若葉達と同じか、少し早い時間で戦闘は終わっていた。
「ふぅ、全部やっつけたかな? なんだか敵の気配が残っているような……?」
「友奈ちゃん、またあっちから敵が!」
「よーし! 楓くん、高嶋ちゃん、行こう!」
「うん! 敵が集団でも、ずらっと並んでいれば……」
「飛んで火に入るなんとやら、ってねぇ」
「いくぞぉ! 勇者……ラッシュー!!」
「空の敵は自分が行くよ。生憎と、友奈達みたいに必殺技は無いけどねぇ!」
「奥の大きいのは私! 炎の……勇者キーック!! からの! のぼり……勇者パーンチ!!」
かと思えば、再び敵が現れる。それは最初に比べて少数ではあったが、ロンドではないが大型まで加わった1団体。それが隊列を組むように2列になってやってきたのだ。そこに突撃したのは、いつもの友奈と高嶋の2人と、すっかりお馴染みとなった絨毯ではなく翼を出して飛行する楓の3人。
まずは高嶋が切れ目の無い拳の壁を思わせる連続パンチをしながら突っ込み、正面から敵を殴り飛ばしていく。空から迫る敵は楓が迎え撃ち、右手の水晶から出した光の剣を伸ばして切り払い、翼で直接両断。最後の大型は友奈が炎を伴った跳び蹴りを浴びせて貫き、着地して直ぐに反転してからの跳び上がりながらアッパー。体に風穴を空け、下から上へと真っ二つされた大型はその体を光へと変えた。
「切れ目の無い連撃、嵐のような攻撃……流石高嶋さん」
「楓は鳥のように空を自由に飛んで光を自在に扱う……凄いな」
「あの巨体をああもあっさりと……流石友奈ちゃん」
「3人共ナーイス。敵さん完全に居なくなったよ」
「殲、滅。諸行無常……なんてね」
「夏凜ちゃんと義輝の真似かい? 中々似てるねぇ」
「ふいー、動きが速くて大変だったね。ぐんちゃん平気?」
「ええ、大丈夫。高嶋さんも無事で良かった」
最後に敵を殲滅した3人を見ていた4人がそれぞれ褒めた後に再び集まる7人。友奈が夏凜達の物真似をしていると隣に降りた楓がくすくすと笑い、高嶋は戦いが一旦終わった事に安心から息を深く吐き、千景の無事を確認し、彼女もまた高嶋の無事を確認して小さく笑った。
ここでの戦いが一段落した所で、7人の意識は他の場所で戦っているであろう仲間達の方へと移る。神奈、そして美森に降りた神託である程度他の勇者の居場所や人数は把握出来ている。若葉達はここと同じく人数が居るので問題はないだろうが、風達は人数が少ないことも。
「若葉さん達は平気だと思うけど……」
「風先輩の所が人数少なそうなんだっけ。速く手助けに行こうよ!」
「そうね、そのっちも今は戦えないし……」
「……直ぐ駆け付ける事には同意するが、なに、大丈夫だ」
「……? どういう意味です?」
「あの姉妹は強いし、歌野も居る」
「まあそりゃ。でも戦いは数ですよ数。楽できる事に越した事はないもん。ってことで、早く助けに行きましょ。かーくんが居るからひとっ飛びでしょ」
「勿論だとも。という訳で、皆乗って。全速力で飛ぶよ」
雪花の言葉に頷き、最早手慣れた光の絨毯を作り出して全員に乗るように促すと素早く全員が乗り込み、言った通り全速力で飛ばす楓。無論、風圧と落下しないように対策として風避けと足を光で固定している。
目的地へと向かう途中、棗が嬉しそうに雪花を見ながら笑った。不思議に思った雪花がどうしたのかと聞くと、棗はこの世界に来るまで独りで戦いっていた彼女から“助けに行く”という言葉が聞けて嬉しいのだと言う。
「そう言われると、元は冷たい人間だったみたいに思われるからやめてくださいよ」
「それは……すまない。そんなつもりではなかったんだが……」
「分かってますって。でもまあ、そうですね。歌野達の危機だと思うとかなり焦る自分が居て。焦りは禁物だけど焦っちゃう……弱くなっちゃったかな」
「違う、強くなったんだ。その気持ちを大事にしつつ、戦いに影響しないようコントロールするんだ。お前なら出来るさ」
「了解。強くなったんなら問題なし! さぁかーくん、早く助けに行こう!」
「任せて雪花ちゃん。これでも速度には自信があるからねぇ」
棗とのやり取りの最中、周りから嬉しそうに微笑まれながら見られている事には気付かない雪花。彼女がそれに気付き、照れたように笑いながらそっぽ向くのは、楓が光の絨毯の後ろに噴射口のような物を作り出し、そこから光のレーザーを出して加速させるのと同時だった。尚、やってる事は多いが絨毯と風避けと固定と噴射口(全部纏めて絨毯扱い)で1種類、レーザー(武器)で2種類である。
「はぁっ……はぁっ……ひとまず片付いたかしら……」
「はぁ……ふぅ……ど、どうなんだろうね。もう無我夢中で……」
「遠くの方にまだ敵が見えてる、直ぐに来るわ……まあ、一息くらいはつけるか。脱力タイム」
「だってさ樹。ちょっと力抜こ」
「ふぅーっ……」
そして楓達、若葉達が向かう先である風達。時間と労力は掛かったようで風は大剣を杖に、樹は両手を膝に置いて肩で息をして疲労を隠せていない。歌野がまだ余裕がありそうなのは、伊達に諏訪を1人で守り抜いてきていないという事だろう。
だが、彼女が言うように敵は遠く、しかし視認が出来る距離に既に見えている。それも1体2体ではなく、普段通りに大量に。激戦を終えたばかりで強張っていた体から力を抜き、少しでも体力を回復させる。そうしている姉妹を見た後、軽く周囲を見回した歌野が少しだけ笑みを溢した。
「ここのところ皆でワイワイと戦ってたから、3人だとスカスカした感じね」
「あっはは、歌野は余裕ねぇ……本当に頼もしいわ。樹、平気?」
「うん、体は平気なんだけど……1体も撃ち漏らせないからプレッシャーが凄い。皆と居る時なら撃ち漏らしはフォローしあえたけど……4人とか1人で戦ってた人達、強いなぁって改めて思うよ」
「……本当ねぇ」
体力だけでなく、精神的にも余裕がある歌野の姿に頼もしさを覚える風。樹もまた、姉と同じく頼もしさを覚えていた。実際の所、彼女が感じているプレッシャーは凄まじい。何しろ撃ち漏らしてしまって自分達が抜かれてしまえば、その結果神樹へと辿り着かれてしまえば、それは明確に敗北と世界の崩壊を招きかねない。たった1体の星屑であったとしても、だ。
全員が……せめて遠距離組の誰か1人でも居てくれたなら、まだマシだっただろう。更に樹達勇者部であれば6人、頼れる先輩に兄と姉が居たから安心感もあった。そう考えると、自分達の勇者システムよりも性能が低く、人数も少ない状態で戦っていた勇者達……小学生組や目の前の歌野のように孤軍奮闘していた雪花と棗の強さ、凄さも再確認出来た。
「……ちょっと、不謹慎なことを言うとね。今、キツイ状況だけどある意味良かったと思ってる」
「ほう、その心は?」
「ここが大変な分、他の人達の危険が減るってことだから。自分の所は自分が頑張ればいいだけだから。他がキツくて助けにいけない時は辛いけどさ」
「そういう考え方ね。成る程、分かるわ……うっ、嫌なことも思いだした……」
「素敵だと思います。頑張ろうって気持ちがより強くなりました!」
ふと、歌野が微笑みと共に呟く。どういう事かと風に聞かれた彼女は、即答に近い早さで答えた。確かに、この場に居るのは3人だけなのはキツイ。しかしこの場に3人という事は、逆に言えば他の場所には多くの仲間達が居るということ。水都から聞かされた神託でもそう聞かされている以上、仲間が多い分ここよりは遥かに安全だろう。
自分よりも、他の人の事を思う。その考えは勇者らしいと言えた。その考えに、姉妹と共感を覚える。自分の事よりも仲間の、家族の事を。そういう考えには覚えがあるからだ。その際感激している樹の隣で、風がその思考の末に仲間に攻撃してしまったことも思い出して軽く自己嫌悪してしまっているのはご愛敬。
「ただね、この考えで行くと……戦えるハズなのに、まだ神樹様に温存されてる園子さんと銀さんとか凄く辛いハズだよね」
「そうね……巫女の神奈とひなた、水都だって……自分達が戦えない分、辛いと思うわ。園子はまあ、楓と一緒に居られない方が嫌かもしれないけどねぇ」
「ふふ、園子さんはそうかも……私達が大怪我なんかして帰った日には気持ちが沈むと思うんだ。何も出来ない己が歯痒いって。だから、何が言いたいかと言うと……勝つだけじゃなくて、大怪我もやめようねってこと」
「……はい、歌野さん」
「そうね……他の子達の為にも、怪我なんか出来ないわ」
戦う力があるのに、戦えない。命懸けで戦っている人が居るのに、自分達だけは安全な場所に居る。その立場に居る者達は、やはり歯痒く思う。可能なら自分達も共に……そうは思っても、出来ることは無事を祈ることだけ。心優しいからこそ、それが余計に辛い。その辛さを少しでも和らげる為にも、出来るだけ素早く、尚且つ出来る限り無傷で戦いを終わらせて帰りたいのが勇者達の本音なのだろう。
歌野の言葉に、神妙な面持ちで頷く姉妹。予想以上に重く受け止めた2人にきょとんとする歌野だったが然もありなん。姉妹の脳裏に浮かぶのは、車椅子で帰って来た家族の姿。散華によって体の機能を失い、それを伝えられたその時の衝撃を、彼女達は忘れられない。もうあんな思いはしたくないし、させたくはない。そう思うからこそ、歌野の言葉を強く心に刻み込んだ。
「……お! 敵が動き出したか。じゃあまた防衛といきますか!」
「私、頑張ります! むんっ!」
「気合い入れて、いきまっしょい!」
「「おーっ!!」」
休憩は終わりとばかりに数えるのも億劫な数の敵が3人に向けて殺到してくる。彼女達はそれを見て怖じ気づくこともなく、気合いを入れて迎え撃つ。1匹足りとも残すつもりはない。心配させたくないから怪我をするつもりもない。先程刻んだ言葉と意思を胸に、勇者達は威風堂々と立つ。
風は大剣を両手で持ち、いつでも飛び掛かれるように肩に置くようにして構える。樹は右手を引き、直ぐにでもワイヤーを出せるようにする。歌野も鞭を握り締め、振るう準備は万端。そうして数秒の後、3人とバーテックスはぶつかり合うのだった。
それから数分経ち、バーテックスを粗方殲滅し終えた3人。とは言えまだ幾らか残っているし、戦いが始まってから1秒足りとも休めなかったので疲労と酷い。特に樹は息を整えることすら出来ておらず風も大剣を振るう速度が落ちてきており、歌野ですら息を荒くしている。
「え……ええーい! はぁっ……はぁっ……」
「樹! っのぉっ!!」
「お、お姉ちゃんありがとう……」
「もう一息よ。ラストスパート、頑張りましょう!」
敵の1体をいつも通りスライスした樹だったが、背後から襲い来る星屑に反応が遅れる。だがそれを黙って見ている風ではなく、直ぐに間に入ってカバー。家の妹になにさらすんじゃと大剣にて横に両断。何とか間に合ったが、妹の礼に疲労からか返事を返すのも難しかった。そんな姉妹と残敵を見て、歌野が鼓舞するように叫ぶ。その後、直ぐのことだった。
「見つけた!!」
そんな声の後に真っ白な光の絨毯が3人の上空を高速で飛び、バーテックスを轢いていき、更に轢いた後にUターンして彼女達の上空に戻ってきた後、絨毯から複数の人影が飛び降りて残りのバーテックスを倒していったのは。
「っ、今の!?」
「うん、お兄ちゃん達だよお姉ちゃん!」
「これは嬉しいサプライズ! 正直助かったわ」
「風先輩! 樹ちゃん! 歌野ちゃんも! 無事で良かったよ~」
「姉さん、樹、歌野ちゃん……大分疲れてるみたいだけど、無事で良かった。怪我は……無いようだねぇ。3人だけで良く頑張ったねぇ」
「ナイスタイミングよ楓、友奈……本当に。やっぱりアタシがヒロイン体質だから、こういう時には王子様が来るのねぇ」
「ヒロイン体質は樹の方じゃないかな」
「どういう意味よ!?」
「あはは、お姉ちゃんってば……疲れてたのにもう元気になってる」
(茶化してるけれど、最初に風先輩の呼び名が上がるのよね、楓君は)
降りてきたのは楓達であった。周辺にバーテックスの姿が無くなった事を確認した後、7人は疲れきった3人の姿を見て安堵の表情を見せる。特に楓はホッと大きく息を吐いており、それを見ていた美森、歌野は小さく笑っていた。
いつも通りの姉弟のやり取りが始まった事で全員が笑い出す。だが、やはり今の今まで苦しい戦いを強いられていた3人には濃い疲労が見られた。それを心配そうに見ていた7人は本当に間に合って良かったと改めて思い……空気が再び変わった事を感じて、その方向へと振り向く。
そこにあったのは、既にその姿を見ている大型バーテックス、ロンドの姿。それも1体だけではなく3体。7人は疲れている3人を守るように前に出て各々武器を構える。そして誰かが1歩踏み出すと同時に、その声は聞こえてきた。
「バーテックス! これ以上好きにはさせん!! 歌野、無事か!?」
「若葉! ふふふ、平気よ平気! サンクス、ヒーロー」
「流石だな。様子を見る限り、千景達の方が先に助けに来たというところか」
「ええ、楓君の力を借りてね。っ、もう1体がこっちに来るわ!」
声の主は若葉。彼女もまた楓達と同様に他のメンバーを助けに動いており、ここに辿り着いた。その際ロンドの1体を一刀の元に切り捨てており、ロンドはその身を光へと変えていた。無論、ここに来たのは若葉だけではない。
「安心しな! タマが守る!」
「邪魔よ、デカいの!!」
「吹っ飛べ!」
「豪快……流石です夏凜さん、棗さん。球子さんもありがとうございます」
「樹……ああ、こんなに疲れきっちゃって……歌野もいつもより疲れてるわね。よくも樹と歌野を苦しめたわね! 覚悟しなさい!!」
「あのぉ! アタシも苦しんだんですけどぉ!?」
「照れてるから言ってないだけですよ」
盾を携え、疲れている3人を守るように降り立つ球子。近付いてきていたロンドには背後から夏凜が二刀で切り裂き、動きを止めた瞬間に飛び込んでいた棗がヌンチャクを振るって鈍く大きな音を立てて吹き飛ばしていた。
2人の攻撃には感嘆、自分達を守るように立ってくれた球子には感謝をした樹に夏凜が近付き、歌野と少しだけ風を視界に納めた後、その疲れ具合に苛立ってロンド達に右手の刀を向けて吼える。自分の名前がなかったことに突っ込む風は美森が苦笑いと共に抑えていた。尚、彼女の言葉が聞こえたのか夏凜の耳がほんのり赤くなっているのを、樹はバッチリと見ていた。
「あっ! 敵が……合体しようとしています!」
「……でも、あいつらみたいな威圧感は感じないねぇ」
「大きくなったからって負ける気はしないわね。ヘイヘイ、掛かってきたらどうかしら?」
「全員揃ってるから秋原さんが強気だわ……」
「3方向から奇襲……中々考えたがこれで決着だ。バーテックス……花により散れ!!」
美森が気付き、声を上げると全員がロンド達へと視線を向ける。そこには残った2体のロンドがゆっくりと一体化……合体している姿であった。その様子を見て楓を含めた神世紀中学生組の脳裏に、総力戦の時の獅子座……レオ・スタークラスターの姿が浮かぶ。だが、このロンドの合体にはその際に感じたような威圧感も絶望感も無い。
雪花の強気な声がする直ぐ近くで、千景がボソッ呟く。それは幸いにも誰にも聞こえなかったか、それとも敢えて触れなかったのか。そうして棗の気合いの籠った叫びの後、合体したことで足のような部位を倍に増やし、大きさも2倍以上となったロンドとの最後の戦いが始まった。
……とは言え、例え合体しようが全員集まった勇者達の敵ではない。増えた足は残らず斬り飛ばされ、全身は殴られたり蹴られたりとあちこち凹み、投げた槍やら弓やら銃やらで穿たれた部分は穴だらけ。楓の強化すら使う必要もなく、別段力を入れて描写するような展開になることもなく。奇襲から始まった戦いは、最後にはあっさりと終わるのだった。
戦いが終わった後、皆は歌野ちゃん達が居たという畑の前に集まっていた。戦いの邪魔にならないように避難していた私達お留守番組も集まり、皆に掠り傷はあれど大きな怪我が無いことに安心し、お疲れ様と労う。
遠巻きではあるけれど、実際に皆の戦う姿を見たのは初めてだった。いや、“私達”の中から見ていたことならあるんだけど、この姿になってからは初めて。改めて思う。勇者達は、あの子達は強い。そんな勇者達を矢面に立たせている事が、心を得た今では申し訳なくも感じ……胸の奥がじんわりと温かくなるような、誇らしくなるような気持ちになる。
さて、今日は疲れただろうしもう帰ろうか……と私が言う前に、歌野ちゃんから驚きの言葉が聞こえてきた。
「さて、と」
「帰って寝る?」
「いんや、耕す」
「はい? 今からここを?」
「目の前に畑があるんだもん! 私はやるわよ!!」
「ふわぁ……本当にぶれないね、うたのん」
(えっ、まだ動けるの?)
雪花ちゃんが寝る? って聞いた時は私も皆疲れてるもんね……と思ったんだけど、歌野ちゃんから出たのはそんな言葉。彼女は風さん達と共に少人数で長く戦っていたハズだけど、まだまだ体力は有り余っているみたいだ。諏訪の勇者って凄い……改めてそう思ったら“私達”の中の諏訪から来た神が凄い得意気に……なんだっけ……そうだ、どやがお? っていうのをしているのが浮かんだ。“私”に引っ張られているのか、“私達”も結構自意識が出てきている気がする。
その流れのまま、何故だか皆で畑を耕すのを手伝うことに。最初にツッコミを入れていた雪花ちゃんも仕方ないなぁって笑っていた水都ちゃんも。誰よりも疲れていたハズの風さんと樹ちゃんも、小学生の皆も、西暦の皆も、他の勇者部の皆も。勿論、私も。
(……楽しいなぁ)
神として豊穣の加護を土地に送り、四国だけでも問題無く人間が暮らしていけるようにするのとは全然違う、人の体で土を弄るという行為。体力を使うし、手は当然土まみれ。だけど……なんでかな。皆と一緒にやっているからだろうか。それだけの行為が、皆の笑顔を見ながらやるのが、とても楽しい。
いつも以上にキラキラした笑顔を浮かべている歌野ちゃんと、それを優しげに見ている水都ちゃん。何故か凄く疲れてる杏ちゃんを補助してる球子ちゃん。誇らしげに歌野ちゃんを見ている若葉さんと隣に寄り添うひなたちゃん。元気に耕す高嶋ちゃんと疲れが見える千景ちゃん。
意外と言ったら失礼かもしれないけど、手際良く耕してる雪花ちゃんと樹ちゃんと風さんの様子を見ながら手伝ってる棗さん。顔とか服に土を着けて笑ってる銀ちゃんと恥ずかしそうにしてる須美ちゃん、ハンカチで土を拭って貰ってる園子ちゃんと拭ってる新士君。
疲れてるけどそれでも楽しそうな樹ちゃんとガンガン耕して注意されてしょんぼりしてる風さん。歌野ちゃんに習いながら土を弄る結城ちゃんに、皆を様子を撮っている東郷さん。小学生組の世話を焼くミノちゃんとわざと顔に土を着けてちらちら見てる園ちゃん。そんな彼女に朗らかに笑いながらハンカチで拭って上げてる楓君と……そんは彼の隣で、彼の横顔を見ながら土を弄る私。
(うん……楽しいな)
皆とこうして土を弄ることが。皆と一緒にこうして何かをすることが。人として生きることが。彼の横に居られることが。
こんなにも……楽しい。そんな楽しい1日の最後は、寄宿舎に住む皆で大浴場に入って終わり。敢えて不満を言うのなら……何故か球子ちゃんに胸をもがれそうになったことくらい。勿論、千景ちゃんと銀ちゃんと一緒にゲームもして……銀ちゃんと私で千景ちゃんを挟んで眠った。
原作との相違点
・友奈と高嶋の増援撃破の際に楓も参加
・スイング系がトラウマの歌野
・原作よりも早く風達の救援は到着
・諏訪神「家の勇者と巫女が幸せそうで善き良き」
・他にも色々あるけれど書ききれない←
という訳で、原作9話の終わりまでというお話でした。最後まで見て頂き、誠にありがとうございます。
原作とは違い、飛行タイプの楓が居るのでロンド達が出るまでに救援に到着しました。主人公が便利すぎる。因みに犬吠埼大車輪、樹の代わりに楓でも出来ますが最後には縦回転になります←
番外編でバーテックス化楓は真面目に考えてます。ただそうすると姉妹、小学生組が曇ります。喜びそうなのが感想に何人か居ますがね。次辺りの番外編で書きましょうかね……。
ゆゆゆい風自己紹介を書くか悩みましたがこちらは先送り。対象は楓と新士と神奈です。こちらも番外編でいつか書くことがあれば。
それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしております。今年も宜しくお願いいたしますv(*^^*)