ゆゆゆいでは弥勒さん当たらなくて泣きました。今月出るであろう新URは当てたいところです。
天華百剣では久々に大勝利。振袖テツ可愛いですね。ドカバトも新身勝手来てくれたのでキラキラベジータも是非きて欲しい。
ファンリビは結局よしのんも七罪も引けずじまいで心が死にそうです。恒常だからいつかは欲しい……。
さて、今回は私が書きたかった番外編です←
それは、自分が小学生の時の最後の戦いでのこと。須美ちゃんが散華によって記憶を失ってしまった後も、自分達3人は満開を使って戦い続けた。しっかりと体が出来上がっていない、まるで
「“満開”!!」
「ぐっ、まだまだぁぁぁぁっ!!」
「銀ちゃん、満開ゲージが溜まるまで自分達に任せて!」
満開して、解除されて、ゲージを貯める為に攻撃して、精霊バリアで受け止めて、また満開して。散華を恐れている暇なんて無い。今を越えなければ、四国は滅ぶ。自分達にとって大事な人達が死ぬ。大赦で働く本当の両親も、平和に過ごしているであろう姉さんと樹も……今、樹海で気を失っている須美ちゃんも、共に戦うのこちゃんと銀ちゃんも。
解除され、再び満開。これで片手の指の数を越えただろうか。そうしてまた1体、2体、3体と撃破して、また満開した2人が前線に出て、それに入れ替わるように自分の満開が解けた。
(くっ、またゲージを溜めないと……あれ?)
そう思った瞬間、体から力が抜けた。いや、力がというか……
「っ、カエっち!? ミノさん! カエっちが!!」
「え!? 楓、どうし……っ、邪魔をすんなああああ!!」
そんな自分の体を、異変に気付いた2人が追おうとする。だが、それは複数のバーテックスに攻められた事で邪魔される。そして自分の体はそのまま落下し続け……海に入る前に、魚のようなバーテックスの上に落ちて、その中に呑み込まれた。その際、自分の端末が海に落ちたのも見えた。
自分が見たのはそこまで。気付けば、自分は真っ白な……白い魂だけのような姿で、神樹様の前に居た。そして隣には、あの少女の姿をした神樹様。そして彼女は泣きそうな顔で……。
― どうしよう……貴方から1番供物となってはいけないモノが捧げられちゃった…… ―
「1番供物となってはいけないモノ……っ!? 今のこの姿と何か関係があるのかい!?」
― うん……下手をすれば、2度と目覚めないかもしれない。それに、貴方の肉体まで天の神に奪われてしまった……本当に、本当にまずいことになっちゃった…… ―
「……何を……自分は何を、散華してしまったんだ……?」
― 肉体と魂を繋ぐ“精神の糸”……今の“私達”では……どうやっても貴方に返すことが出来ないよ…… ―
自分を返せと泣き叫ぶのこちゃんの声と、邪魔をするなと泣き叫ぶ銀ちゃんの声が聞こえる中で……彼女は涙を流しながらそう言った。それは自分が見ていることしか出来ないもどかしい時間の始まりであり……自分の体が、自分の大切な人達を傷付ける場面を何度も見せつけられる悪夢の始まりでもあった。
天の神は今、歓喜に震えていた。何故なら自身の眷属が、魂の入っていない脱け殻とは言え、欲していた高次元の魂が入っていた肉体を手にすることが出来たからだ。肝心の魂は地の神の元にあるが、10数年その魂の器であった肉体は天の神にとっても価値があるものだった。
だが、同時に不愉快でもあった。存在しない右腕を除けば一見綺麗な状態だが、天の神には分かる。部分的に、その肉体が地の神へと捧げられていることが。魂どころか肉体まで欠けている。それでは折角の価値も下がるというもの。
しかし、肉体だけでも手に入ったのは僥倖なのも確か。後はこれまでと同じように攻めながら今度こそ魂も手に入れればいい。そこまで考え、アバターである大きな丸い鏡の姿をした天の神は神の空間にてその肉体を眺める。そしてふと思った……この肉体を、どうにか有効活用出来ないだろうかと。
もうこの肉体は自分のモノだ。己が望んだ通りに、好きなように出来る。決して邪魔はされない。だが、この肉体を手に入れてしまったからこそ、余計に欲しくなる。その魂も、その意思も、己だけの
地の神の結界から出た、僅かな時間の中で見た彼の存在。僅かに届いたあの声。自分の意思で動いていた体。それを己に向けられたら、今感じている歓喜を上回ることは間違いない。だから望む。だから欲する。名前すら知らないこの存在を、真の意味で己の手に出来るのならと。
鏡から光の糸が出て楓の肉体へと伸びる。まずはこの肉体から、己のモノにする。望む通りにする。肉体にある記憶……所謂、“体が覚えている”こと……を読み取り、知ることが出来る事を知り、足りないモノを補い……準備をする。望む未来の為に。だが、伸ばした糸は“私”でもある為に四国から出られない夜刀神以外の精霊達が作るバリアに弾かれた。
人間が生きていられない地獄のような世界。まるでマグマのような体をしたバーテックス。それらに包まれながらも楓の肉体が無事なのはこの精霊バリアがあったからだ。だが、致命的な攻撃から勇者を守るバリアとて天の神そのものからの力の前では無意味。あっさりと、ガラスが砕けるような音とも共に、不愉快な地の神の精霊達ごとバリアは砕け散り、光の糸は肉体へと届いた。
天の神のアバターである巨大な鏡と脱け殻の楓の肉体だけがある、真っ白な神の世界。そこで誰にも邪魔されず、天の神は望むままに過ごし……そしてその時間は、その欲望は2年の後に勇者に、神樹に牙を剥いた。
2年後、物語は数多ある世界の殆どと同じように進む。風は両親の死と弟の行方不明を伝えられ、妹と少しの間ギクシャクとしながらも勇者部を作り、妹は兄が養子に出る前と同じく引っ込み思案になりつつも勇者部に入り、友奈も、勇者時代の記憶を失った東郷もまた勇者へと入った。
楽しく、和気藹々と過ごした日々。そんな平和な日常は突如として非日常へと姿を変える。勇者部が作られた本当の理由。平和を脅かし、四国を滅ぼさんとするバーテックスの襲来。この時点でその情報を知るのは4人の中では風のみ。妹、そして突然の樹海に慌てる友奈と東郷とも合流した風。この状況を説明しているとふと友奈が端末の画面を見て首を傾げた。
「あの……この“乙女座”ってなんですか? それに、この名前……」
「名前?」
友奈の言葉に疑問を抱き、風は画面を覗き込む。そこには彼女の言った通り、バーテックスを表す“乙女座”の文字。そして、それに重なるように出ている名前。それを見て思わずハッとなる風は居てもたってもいられなくなり、妹と部員2人にそれ以上説明することなく、後ろから名前を呼ばれても振り向くこともなく、気が逸るままに変身をしてバーテックスへと向かう。
(なんで……どうしてそこに居るの!?)
変身したことで上がった身体能力をフルに使い、どんどん距離を詰めていく風。10数秒もすれば離れていた距離を半分以上無くし、改めてバーテックスという存在の巨大さを実感する。だが彼女の視線はバーテックスよりも乙女座の頭部らしき部分の横……まるでマントのようにはためくそこに、頭部に
乙女座に比べれば遥かに小さいその体躯は乙女座に良く似たフードの着いたマントで体を覆っており、更にフードを深く被っていて顔がよく見えない。だが、下半身は勇者服に似た意匠のズボン、腰から前後左右に伸びている布、爪先から膝まで覆う脚甲を着けていて……その全てが黒く染まっていた。
「ねぇ……あんたなの……?」
その姿をはっきりと視認した時点で、風の足は止まっていた。俯きながら出た疑問の声は震え、聴く者には泣いているようにも思えるだろう。その声が届いているのかいないのか、彼の存在からの返事は無く、依然として乙女座は進んでいる。
「あんたなんでしょ……!?」
先程よりも声は大きく、だが返事はやはり無く。泣くのを耐えるように下唇を噛みながら顔を上げる風は下から見上げる状態となって、見た。はためくフードの奥にある、右半分だけ見える見覚えのありすぎる顔を。記憶にある朗らかな笑顔とは正反対の無表情を。そして遂に溢れた涙を拭うことなく、風は叫んだ。
「返事をしなさいよ! 楓ぇっ!!」
「……アぁ、なんダ。姉さンじゃなイか」
「っ!? 楓……やっぱり楓なのね!?」
声が聞こえた。ずっと聞きたかった、また聞けると信じて……ほんの少し、諦めていた声が。風の顔が歓喜に染まる。涙を拭って顔を上げて、声の主の方へと向いて。
「お姉ちゃん危ない!!」
何かが体に巻き付いた後にぐんっと勢いよく後ろに引き寄せられ、一瞬息が詰まり……次の瞬間、先程まで居た場所に何かが振り下ろされて樹海を傷付けた。それは鞭のように伸びた桃色の布のようなものであり……着地に失敗して背中を打ち付けた風がその先を目で追うと、それは乙女座のマントに続いていて、楓が変わらず無表情で見下ろしていた。
「あ……楓……?」
「お姉ちゃん、大丈夫!?」
「い、樹? あんたいつ変身を……ていうかどうやってアタシを……いえ、それより今アタシ……!?」
信じられないものを見たように目を見開く風の側に慌てた樹がしゃがみこみ、妹の変身した姿を見て驚く。そして遅れて気付いた。己は妹に助けられたのだと。そして……弟と共に居るバーテックスに攻撃されたのだと。
「楓……なんで……なんでよ! なんでバーテックスと一緒に居るのよ!?」
「えっ、お兄ちゃん!? やっぱり画面の名前はお兄ちゃんで……」
「樹……久シぶりダねェ。姉さンは見テ分かラナいかイ?」
「分からないから、聞いてんでしょうが!!」
再び泣きそうになりながら叫ぶ姉の言葉に、樹も乙女座と共に居る存在へと顔を向け、名を呼ばれたことで驚愕する。その顔は、その声は、明らかに兄のモノであったからだ。だが……そこに、共に暮らしていた時の温かさは無い。表情にも、声にも。
淡々とした質問に風は叫び返す。いや、本当は薄々と分かっている。ただ、理解したくなかった。行方不明だった弟。やっと会えた、声が聞けた弟なのだ。
「自分は、姉サん達の敵ニなッたんダヨ」
理解したくなかった。信じたくなかった。だが現実は厳しく、辛く、悲しいモノで……その言葉を切欠として、乙女座から爆弾がミサイルのように放たれた。
起き上がりながら樹と共に後方へと跳んで避ける風。だが爆弾は着弾前に方向を変えて姉妹を追いかけてきた。その爆弾を、風を助ける際に直感的に把握したのかワイヤーを出した樹が撃墜していく。時折伸びてくるマントは風が出した大剣を振るうことで切り裂いて防ぐ。
初の戦闘。それも家族が敵対した状態で、巨大な化け物相手に。混乱しながらも何とか攻撃を防ぎ、凌ぐ姉妹だったが、そんな状態でいつまでも耐えられる程敵は甘くなかった。
楓が、今まで体を支えるように乙女座に当てていた右手を姉妹へと向ける。そして次の瞬間……その手が、高速で樹に向かって
「えっ……きゃああああっ!?」
「樹!? うぐっ!」
突然の兄からの予想外の攻撃に対処出来ず、樹はそれを受けてしまう。精霊バリアこそ発動したが空中で受けてしまった為かそのまま吹き飛ばされた。思わずそちらへと意識を向けた風だったが自分にも同じように手が伸びてきていた事に気付き、咄嗟に大剣を盾にする。
だが伸びた腕は大剣に当たる直前に曲がり、ロープのように巻き付いた。更にそれを巻き取るかのように腕が縮み、その勢いを利用して楓が接近し、大剣に飛び蹴りを浴びせる。その衝撃に歯を喰いしばって耐える風。着地した後も踏ん張ってなんとか倒れずに済んだが、その際に楓のフードが後ろへと外れ……。
「な……によ……その顔……それに、その腕は……! その足はっ!!」
「バーテックス!! あんたらは、人の弟をどうしたのよ!!」
蠢く
視覚的な気持ちの悪さと大事な弟の体にそんなモノが着いている嫌悪感。怒りを超え、最早憎悪とも言うべき感情をいつの間にか攻撃を止めていた乙女座に、まだ見ぬ化け物達に向ける風。だがそれは敵対している楓にとっては隙以外の何物でもなく。
「余所見をしたラ駄目じゃナイか、姉サん」
「あっ……ぐっ、ああああっ!?」
「お姉ちゃ」
「やレ」
「っ!?」
大剣に巻き付けていた腕を解いた後に大剣から離した右足を軸足にして左足による後ろ回し蹴り。言葉にすればそれだけの攻撃が、勇者の身体能力と……恐らくは覆っているナニカの影響で恐ろしい程の威力を持っていた。咄嗟に大剣で防いだ風を、遥か彼方に吹き飛ばす程に。吹き飛んでいる最中に水切りの如く地に当たる度に何度も発光している為、それだけの数精霊バリアが発動しているのだろう。
蹴り飛ばされた姉を心配する妹が言いきる前に、短い命令を下す兄。受け取った乙女座は幾つもの爆弾を放ち、樹の姿は叫びと共に爆炎の中へと消えていき……それを相変わらずの無表情で一瞥した後、乙女座を伴って歩き出す。目指す先は無論、神樹だ。
「風、先輩……樹ちゃん……」
その戦闘を……否、戦闘とすら呼べないそれを、友奈と東郷は見ていることしか出来なかった。何しろ樹海にしてもバーテックスにしても勇者にしても説明は中途半端で、心構えすら無く、突然非日常に突っ込まれたのだ、どうしようもない。むしろ泣き叫んでその場から逃げ出さなかった時点で充分称賛に値する。
だが、それだけだ。逃げ出さなかっただけで事態が好転する訳がない。変身して立ち向かう事が出来たならまだ可能性はあっただろうが、その変身の方法すら教えてもらっていないのだ。友奈がどうしよう、どうすれば……そう悩んでいる隣で、東郷もまた考えていた。
(……なんで……重なるの)
脳裏に浮かぶ、見たこともないハズの……だが、何故か大切なモノである気がする真っ白な男の子と泣きたくなる程綺麗な白い花。今もまた浮かぶその男の子が、その花が、どういう訳かあの化け物と共に居る少年の姿と重なるのだ。
(なんで……こんな気持ちになるの)
端末を握り締める手に力が籠る。俯く視線の先にある画面に映る“犬吠埼 楓”の名前に涙腺が刺激される。知らないハズの少年。先輩と後輩と同じ名字の知らない名前。なのに、懐かしいと思う。同時に、彼女は怒りも覚えていた。
その気持ちを、その心を何に例えたらいいだろうか。まるで、綺麗な花を目の前で手折られたような。美しい絵画に汚水をぶちまけられたような。気持ちの籠った手紙を破り捨てられたかのような。思い出の写真が納められたアルバムを燃やされたような……大切な人を、殺されたかのような。
ただ1つ、確かな事は。
「……赦さない」
「えっ? 東郷……さん……?」
恐怖よりも、悲しみよりも、辛さよりも……大きな怒りが彼女の胸の中で燃え上がったという事だ。
「絶対に……赦さないっ!!」
まるで知っているかのように勇者アプリに指が伸びた。画面から溢れ出す光と花弁は彼女の姿を覆い、制服姿から勇者へと変身する。親友が変身した姿を見てポカンとしている友奈に目を向けることもなく、手元に出現した狙撃銃を構えて照準機を覗く。対象は無論……化け物。
東郷は躊躇い無く、手慣れたように引き金を引く。勇者の力が込められた弾丸は真っ直ぐに目標に向かって飛び、頭部らしき部分へと着弾、貫通して一部を抉り取った。再度引き金を引き、今度は体を。更に引き金を引き、マントを。そうやって何度も放っては体を抉り取る。吐き出される爆弾すら、即座に撃ち抜いて爆発させる。
「東郷さん……凄い……!」
普段なら決して聞き逃さないそんな友奈の称賛や尊敬の眼差しも、怒りに燃える彼女には届いていなかった。ただ、出所の分からない怒りに任せて何度も何度も引き金を引き続けた。
(お前達が、あの男の子の側に居るなんて赦さない。あの男の子の綺麗な白を汚すなんて絶対に赦せない! あの男の子は、あの人は……お前達が近くに居ていい人なんかじゃない!!)
記憶が戻った訳ではない。ただ、脳裏に、瞼の裏に浮かぶ真っ白な男の子と泣きそうにくらいに綺麗な白い花。それらを連想してしまうあの黒い少年の側に化け物が居るのが赦せなかった。少年の“黒”が、真っ白な男の子を汚す汚泥にしか感じられなかった。
「……君、邪魔ダねェ」
「っ! ……ぁ」
乙女座を撃ち続ける東郷に、楓が何の感情も宿さない瞳を向けながら走って向かってきた。その速度は到底普通の人間が出せるモノではない。呟くような声が耳に届いたのか咄嗟に銃口を彼に向け……。
― ■■ちゃん ―
誰かの朗らかな笑顔が、優しく誰かの名を呼ぶ声が浮かんで、東郷は体が拒否したかのように引き金を引くことが出来なかった。何故だか、涙が溢れた。それは致命的な隙を晒すことになり、楓の右手が鋭利な針のようになって彼女の胸元に向かって真っ直ぐ突き進み……。
「東郷さん!!」
当たる直前、友奈の左拳が弾いた。弾く瞬間に左手が光り、それが収まるとそこには桜色の手甲。
「……君モ、邪魔をするんダねぇ」
「東郷さんは、やらせない!!」
弾かれた勢いを殺さず、楓は左向きに体を回転させて再び右手を、今度は剣のようにして振るう。それに対して友奈は右足による上段回し蹴りで迎撃、その足は左手と同じ光った後に脚甲が装着されていた。
「東郷さんは……皆は、私が守る!!」
再び弾かれたことで1歩後退する楓だが、再び右手を、今度は左手を添えて振り下ろす。ただそれだけの事だが、先程よりも明らかに威力が上がっていた。だが友奈は回し蹴りの回転の勢いのままその場で回転。今度は左足の後ろ回し蹴りで弾いた。これには楓も無表情を崩し、驚愕から目を見開く。勿論、彼女の左足には右足と同じ脚甲。
「勇者……パアアアアンチッ!!」
「ぐッ!」
「楓! 友奈! 東郷!」
「お兄! ……ちゃん?」
「あ……うぁ……」
「え……な……んで……?」
がら空きになった胴体に向けた、回し蹴りをしたことで上げていた左足を思いっきり地面に踏み込んでからの渾身の右ストレート。右手を引き絞る頃には全身に桜色の光りが灯り、突き出すと同時にその姿を勇者服へと変え……その拳は、盾に変化させた右腕に防がれたものの彼を大きく吹き飛ばした。
吹き飛ばされた楓は樹海の地に何とか体制を整えて着地するが、それでも中々体が止まらずに土煙を巻き上げてその体が隠れる。その頃には蹴り飛ばされていた風と精霊バリアで無事だった樹が2人の元に集まり、楓の方へと視線を向け……煙が晴れた時に見えたその姿に、誰もが絶句した。
「……成ル程……君は中々に厄介ダ」
ぼろぼろと、まるで風化した土くれのように崩れていく右腕。先程まで自在に変化して猛威を振るっていたハズのそれが、跡形もなく消え去った。血は出ていないが、本来あるべきハズのモノがないその痛々しいとも言える姿は、つい先程まで平和に生きていた少女達の心に深く刻まれた。
楓としてもまさか腕が崩れる程のダメージを負うとは思ってもみなかっただろう。見た目に反して凄まじい破壊力を見せた友奈に無表情ながら警戒を向け……勇者達にゆっくりと視線を向ける。
何故弟の、兄のこんな姿を見なければならないのかと今にも泣きそうな姉妹。右腕が無い少年の姿に自分でも分からない程の絶望感を感じている東郷。そして、自分の攻撃で片腕を失った現実に打ちのめされている友奈。そんな4人をざっと見た後、彼は背を向けた。
「自分は今回ハ引かセテ貰ウねぇ。後は頼んダヨ」
「待っ、楓!!」
乙女座にそう声をかけ、姉の制止の声を無視して跳び去っていく楓。その姿が結界の外へと消える頃には再び攻撃し始めた乙女座の対応をせざるを得なくなり、追うに追えなくなった勇者達は苦い気持ちになりながらも戦う。その戦いは本来よりも戦える人数が多いこともあってかそう時間も掛からずに終わりを告げ、元の世界へと戻り……樹海では行えなかった勇者や敵への説明をすることになる。
そしてこの後も数度に渡り、彼女達は戦うことになるのだ。四国を滅ぼす敵を連れて現れる弟であり、兄であり、かつての仲間であり、先代勇者であり……世界の命運を賭けて、本気で滅ぼしに、殺しにやってくる……同じ人間であり、勇者である彼と。
「楓!!」
「お兄ちゃん!!」
「楓くん!!」
「楓君……っ!!」
「楓さん!!」
その度に声を上げる少女達。例え見た目が変わろうと、例え記憶を失おうと、例え敵の手に墜ちようと、例え何の繋がりが無かろうと、戻ってきて欲しいと、その心を言葉に変えて。
嗚呼、それでも。
「邪魔ダよ……勇者」
その魂無き抜け殻には……何一つ届きはしない。
「ただいま」
結界を抜け、地獄のような灼熱の世界の中に、その神々の住まう世界はある。バーテックスを足にしてその世界に戻ってきた楓は、出迎えてくれた1人の少女を抱き締め、少女もまた抱き締め返した。
勇者達に見せた無表情が嘘のように、言葉も流暢で蕩けるような笑顔を見せる楓。少女もまた笑顔を浮かべ、帰って来た彼の包容と体温を堪能する。その姿はまるで恋人のようであった。
やがて体を離し、互いに見詰め合う。言葉は無い。ただ、時間を忘れてお互いの目を、顔を見詰めていた。言ってしまえばそれだけのこと。だが、異質なのはその世界に楓と少女の2人しか居ないこと。そして……少女の姿が、彼にとって見慣れた、だが見慣れない姿をしていたこと。
体つきは須美のモノ。髪型は銀のモノ。そして顔は、園子のモノ。髪は黒く、黒い着物を着て、外の世界のような赤黒く毒々しい色の瞳。まるで、先代勇者の少女達の部分部分を切り取って繋げたようなその姿を、彼は愛おしいモノを見る目で見ていた。
― お帰りなさい、楓くん ―
少女の姿をした天の神は、同じように愛おしいモノを見る目で楓を見ていた。
「やってくれたねぇ……」
― うん……まさか貴方の体をあんな風に使うなんて…… ―
神樹の本体である巨木の根元に、魂の状態の楓と“私”は居た。2年前に散華のせいで魂のままそこにやってきてから、楓は“私”と共に四国を、次期勇者達を、大赦に奉られている先代勇者を見守っていた。勿論、乙女座との戦いも。故に、2人は難しい表情を浮かべていた。
彼の体か天の神の元にあることは分かっていた。その体がどうなったのかは分からなかったが、まさかバーテックスに体を侵食されていた挙げ句勇者達と敵対するとは流石に予想は出来なかった。何せ魂が入っていない人形のような状態のハズだったのだから。
「あの体がまたやってきた時に自分を戻せたりは……しないだろうねぇ」
― うん……ごめんなさい。魂と肉体を繋ぐ精神の糸が捧げられた以上、どうすることも…… ―
「いや、謝らなくてもいいんだよ。仕方ないことだからねぇ」
そう、仕方ないことだと楓も理解している。というのも、この2年で“私”に説明されていたからだ。魂と肉体を繋ぐ精神の糸。2年前の大橋の戦いでそれを散華してしまい、繋がりが断たれた事で肉体から魂が離れてしまった。魂は神樹の、そして肉体は天の神のところに。
高次元の魂を入れる器である肉体と繋ぐ為の糸を生み出すのは現状の神樹では不可能であり、元々供物を返すことが絶望的だった楓は再び肉体を得ること自体が絶望感であった。今出来る事は“私”と共に勇者達を、四国を見守り、高次元の魂の影響で無意識の内に神樹の力を強くし、寿命を伸ばすことだけ。
― 色々と模索はしているんだけど……ごめんなさい、何一つ浮かばないんだ。貴方はあんなに頑張ってくれたのに……“私”は何一つ、返せないんだ…… ―
「探してくれているだけでも嬉しいよ。だから泣かないで。それに、きっと大丈夫。今の自分にも出来ることが、きっと見つかる。一緒に探してくれるんだろう?」
― ……うん ―
泣きそうな顔で頷いた彼女に、楓はいつものように朗らかな笑みを返した。彼は大木に背を預けて根の上に座り、“私”もその隣に座る。そして彼女が目の前に手を翳すと宙に大きな鏡が浮かび上がり、勇者達の日常が浮かび上がる。
2年。彼が出来た事は、こうして“私”と共に見守ること。そして、それは今後も変わらない。魂だけの彼に“出来ること”が見つかるその日まで。穏やかに、少しだけ寂しさと無力感を感じつつ……ただ、神樹と共に。
その横顔を、ジッと見詰める“私”に気付かずに。
(ごめんね)
誰にも触れさせない。
(精神の糸を、貴方の魂を肉体に戻す方法はこの世界には無いんだ)
誰にも見せない。
(そもそも……探しても居ないんだ)
誰にも会わせない。
(だって貴方はここに居るから)
此処から出さない。
(魂だけでも良いから)
此処から決して逃がさない。
(勇者の子達じゃなくて……“私”と)
ずーっと……此処に一緒に居ようね。
2人以外の他の存在が居ることを赦さない、まるで結界の外のような赤黒く毒々しい感情を心に持ちながら、綺麗な赤い瞳はいつまでも彼を見ていた。
今回の捕捉
・話の流れは原作とBEifを混ぜたようなモノ。ほぼ原作通りに進みつつもBEif程殺伐とはしていない。
・天の神(須美銀園子キメラのすがた)。声は園子だったりする
・東郷さんが初戦から変身
・精霊バリアが無ければ5、6回は死んでる風先輩
・実は病んでた神奈
・VKif(バーテックス楓イフ)
バーテックス化楓の愉悦な話かと思った? 残念! いつかの病み神奈も居るよ! というお話でした。こういった話は見るのは好きでしたが書くのも好きになりました。書いててとても楽しかったです←
実はいつかの番外編に出た病み神奈と同じ世界線だったりします。合法的に魂の楓を囲えるので“私”もにっこり。しかし相変わらず名前は内心ですら呼べない模様。
後から星座バーテックスの力を使えるように調整されたり、本編最後に出てきた超究極体楓になって満開勇者とガチバトルしたり、魂の楓の力を借りてスピリットオブ勇者パンチする友奈とか出る話。続きません←
それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしております。今年も宜しくお願いいたしますv(*^^*)