咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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お待たせしました。ようやく更新です(´ω`)

様々なアプリで爆死する中、ドカバトだけは私を見捨てず極身勝手、キラベジ、ゴルフリ&17号と来てくれました。普通以上に嬉しい。

BBDW始まりましたね。タイトル画面に居るなんだかんだ主人公さんはいつ出てくれるのか。ゆゆゆいは本日のメンテ明けにまた新たな切り札枠の登場。是非とも来て欲しい。

前回のVKifは好評なような、とりあえず反応あって嬉しい限りです。番外編は本編とは違う展開を色々やれるので書いてて楽しい。次は何を書こうか←

それでは久しぶりの本編をどうぞ。今回はちょっとしたアンケートもあります。


花結いのきらめき ー 27 ー

 「はぁ……やっぱり園子先生の小説は最高です……」

 

 (いつもは“園子さん”なのに彼女の小説を読んでる時だけ“先生”呼びになるのはなんでだろう……)

 

 今日、私は杏ちゃんと一緒に園ちゃんが書いた小説を読んでいた。小説、つまりは本なのだから紙の束かと思っていたんだけど、ねっとにあがってる? らしく勇者の皆が持ってる端末から見られるとか。

 

 人間って凄いね、こんな板みたいなので本が読めるし、(ページ)だって捲るのに指1本を横に動かすだけで済むなんて。それに杏ちゃんが教えてくれた園子ちゃんの作品もとても面白い。1人で寝る時は寝る前にちょっとだけ……と思ってついつい読み更けっちゃうこともある。

 

 他にも沢山作品があったので色々読んでみたけど、やっぱり園ちゃんのモノに落ち着く。そういえば色々見てる時に物凄く日本と海軍と戦艦について詳しく、まるで洗脳するかのように書いてる小説らしきモノも見つけた。2年以上休載してたけどあれはいったい……。

 

 「ああ、何回読んでもこの4人で仲良くお料理して食べさせ合いをしているシーンは最高です……後からお相手も増えますし、日常も恋愛も……続きを待つ間に何度読み返したか……」

 

 「本当に小説が好きなんだね、杏ちゃん」

 

 「はい! 特に恋愛小説が大好きで……」

 

 こうして本の話を振ると杏ちゃんは中々止まらないけれど、話を聞くのは楽しい。あの本は良かった、この本はタマっち先輩に進めたけど読んでくれなかった、この登場人物は誰々に似ていた、あの本は感動して泣いてしまった等々。

 

 こういうのも、風さんが言っていた“女子会”とやらに当てはまるんだろうか。なんて思いつつ、話が一段落したところでさっきまで読んでいたのをまた読み始め……ふと気になった。

 

 (うーん、この“お婆ちゃんみたいな女の子”ってやっぱり楓くんがもでる? なのかな)

 

 今読んでいるのは、お婆ちゃんみたいな雰囲気や喋り方の女の子を主人公に3人の女の子の友達が居て、その4人の日常と女の子同士の恋愛模様を描いたモノ。その喋り方とかが彼によく似ていて、そう思うと他の女の子もどこか東郷さんにミノちゃん……結城ちゃんがそう言っているので私や高嶋ちゃんもそう呼ぶことにしている……に園ちゃんにも似ている気がする。

 

 後で園ちゃんに直接聞いてみようと思いつつ、杏ちゃんと2人で黙して読み更ける。たまに隣から妙に熱っぽい吐息が聞こえたり、私が思わずクスッと笑ったりする以外には静かな時間。それは今日の夕飯を作る当番である歌野ちゃんと水都ちゃんが私達を含めた皆を呼びに来るまで続いた。

 

 (それにしても……男の子が女の子に、か)

 

 実際に楓くんが女の子になったらどんな風になるのかな……なんて、ちょっと気になった。ところで杏ちゃん、なんか凄いはあはあ言ってるけど風邪? 違う? 今読んでる小説に球子ちゃんに似た人が出てきたから興奮した? 勇者の子達って時々分からなくなるなぁ……分からなくていい? “私達”が言うなら気にしないでおくね。

 

 

 

 

 

 

 とある日の放課後、巫女達に呼ばれて勇者達は勇者部の部室へと集まっていた。各々出してあるパイプ椅子に座ったりその側に立ったりしている姿を確認して全員が集まっていると頷き、若葉が代表して口を開いた。

 

 「ひなた、全員集合したぞ。相変わらず凄い密度だが」

 

 「人数が多いから、わたしは今日はご先祖様の膝の上に失礼します~」

 

 「楓か新士じゃないのは珍しいな。だが、私にも本当に懐いてくれている……のは嬉しいし乗るのはいいが、寝るなよ」

 

 「すぴ~……」

 

 「言ったそばから寝るな!」

 

 「既視感あるよな、あの光景」

 

 「ええ、小学生の時に何度も見た光景ね」

 

 本来なら8人で行っていた勇者部の部室には今や総勢23名、手狭に感じるのも致し方無いというモノだ。そんな状況の下、園子(小)は珍しく新士達ではなく若葉の膝の上へ。珍しくとは言っても比較的という話であり、割と先祖である若葉とは一緒に居ることが多いのだが。

 

 懐かれている事を嬉しく思いつつもどんな状態でも寝てしまう子孫を危惧して注意するも刻既に遅し。膝の上に座った頃には既に寝入っている。落ちないように肩に手を起きつつツッコむ姿に、銀(中)と美森の小学生の時の記憶が刺激される。よく楓もあのように膝を貸していたなぁと……尤も、彼の場合は寝てもそのままにしていたが。

 

 「え!? 蕎麦派に鞍替えした!?」

 

 「言ってない!!」

 

 「若葉ちゃん!? なんて恐ろしい……」

 

 「濡れ衣だ!!」

 

 「リトルわっしーはわっしーの膝の上に。プチミノさんはミノさんの上に座ってね~。アマっちは勿論わたしの」

 

 「生憎と、既にちび楓はアタシの膝の上に確保しているわ!!」

 

 「姉さん、苦しい苦しい」

 

 「そんな~! 酷いよフーミン先輩~!」

 

 「むむ、未来のあたしながら背中の感触は中々……」

 

 「あたしまで恥ずかしいからやめい」

 

 そんなそれぞれのコントのようなやり取りを周りが微笑ましそうに見ていると、ある程度と収まったところで巫女達が本題の話を始める。

 

 前回は神託を得るよりも早く奇襲されてしまったが、今回はしっかりと神託を得ていた3人。その内容はこれまでの比ではない程の重要なモノであると真剣な表情で告げた後、改めてその内容を語り始めた。

 

 神託によれば、瀬戸大橋の手前にかなり大規模なバーテックスの巣があるという。大規模と呼ぶだけはあるらしく、この巣のバーテックスを撃破出来れば香川のほぼ全域を解放することか可能であるらしい。

 

 「香川一気に全部!? わぁ、それは凄いよ!」

 

 「今までだってせいぜい香川の半分を解放しているかどうかという話なのに、それが一気に全部……」

 

 「今度の敵はそれぐらいの力を持っているという事ですね」

 

 「それにわざわざバーテックスの“巣”と言っているくらいだし、敵の数もこれまで以上に居ると考えるべきだろうねぇ」

 

 「そうだとしても香川全域を解放なんて良いことばかりじゃない。全エリアのうどんが食べられるわ」

 

 「それはすっごい大事だな。谷山米穀店のうどんを早く食べたいぞ」

 

 「うどん関係無しに頑張りなさいよ……まあ食べたいけどさ」

 

 バーテックスと幾度となく戦ってきたが思うように進んで居なかった香川の解放。それが一気にほぼ全域と聞いて勇者達も喜色満面となる。だが浮かれているだけでなく、しっかりと警戒もする。これまでも大規模と呼べる戦いはあれど解放出来たエリアはそれ程広くない。それが全域を解放出来る程の“巣”ともなれば、どれ程の敵の数と力を持つのか予想すら困難だろう。

 

 とは言え、やはりこの場の殆どの人間の出身地かつ現拠点を解放出来るとなれば自然とやる気は満ちるというモノ。利用出来る店や行ける場所も増えるのだ、今からあれこれ想像もしてしまうだろう。その殆どがうどんに関する事なのはご愛敬。更に、嬉しい話はこれだけではない。

 

 「香川を解放出来ると神樹、様の力が一気に高まるんだ。そうすると新しい力が手に入れられるんだよ」

 

 「バストが自由自在になるマシンか」

 

 「え!? 本当ですか!?」

 

 「え? いや、そうじゃなくてカガ……えーと、どんな力まではまだ分からなくて……その、ごめんなさい」

 

 「全然平気だよ神奈ちゃん! 楽しみが増えるよね」

 

 

 

 「自由! 自在に!! なるんですか!!!!」

 

 

 

 「落ち着きなさい樹。それで、戦いの時はいつなの?  ひなた」

 

 神奈がそう言うと球子が冗談半分に呟き、それを聞き取った樹が喰い気味に問う。体の一部が小さい事が気になるお年頃なのだ。神奈は彼女の気迫に圧されつつも何とか否定とどんな力が手に入るのかはわからない事を謝罪するが、それを気にする者はこの場には居なかった。高嶋などわからないからこそ楽しみとまで言うくらいだ。

 

 だが樹は気になるようで巫女達に迫りながら凄まじい程の気迫を持って問い続ける。流石に落ち着けと夏凜が襟首を引っ張りながら後退させながら、その巣へと向かう日は何時なのかと聞く。すると聞かれたひなたが答えた。

 

 ズバリ、決戦の日は次の満月の前後。丁度、ではなくあくまでも前後であり、そしてその日は近く、心身の準備期間はあまり長くない。とは言えやる気を漲らせている以上、精神的な準備は必要ないかも知れないが。

 

 「瀬戸大橋の戦いか……このお役目も、必ず成し遂げなくては」

 

 そんな須美のやる気に満ちた呟きが、全員の耳には届いていた。

 

 

 

 

 

 

 そんな日から数日、皆は各々好きなように過ごしていた。決戦が近いと知っていつも以上に鍛練する者もいれば、普段通りに過ごす者も居る。小学生組は後者であり、寄宿舎の園子(小)の部屋に集まっていた。

 

 「決戦を前に何をするべきなのか……私は普通に日常を過ごすのもありだと思うの。いえ、正確には思うようになった、ね。3人のお陰で思考が柔らかくなったわ」

 

 「確かに、お役目が始まる前と比べると柔らかくなったねぇ」

 

 「変わらない奴も居るけどなー。お役目始まる前も後もお前にべったりな園子とか」

 

 「今はおんなじ寄宿舎に住んでるから元の世界よりも皆と一緒で嬉しいんよ~♪」

 

 須美の言葉を切欠に、4人はこの世界にやってくる前の事を思い返す。この世界に来てからそれなりに時間が経っているので今では笑える思い出となっている部分もある。そうして思い返すと、須美は毎回こっそり内心で思う。もっと早く3人とこうして集まって笑い合えていたならと。

 

 相も変わらず新士にべったりとしている園子(小)。すっかり見慣れた光景をいつものように面白そうに見ている銀(小)。腕に抱き付かれつつ動じた様子もなく空いた手で彼女の頭を撫でる新士。いつも通りのやり取り。普段通りの光景。それにちょっとだけ嫉妬心を抱くようになったのは、果たして良いのか悪いのか。

 

 「で、集まったのはいいけれど何をするんだい?」

 

 「今日はお料理教室だよ!」

 

 「うん? 料理ならのこちゃんも大分出来るようになったじゃないか」

 

 「ああ、料理教室っつっても何か教えるんじゃなくて、今回は園子が新士に料理を振る舞うんだ。あたしと須美はその手伝い」

 

 「自分に?」

 

 「ええ。何でも、園子さんと楓さんを見てて思い付いたらしいの」

 

 実は呼ばれるがままに来ていた新士が聞いてみれば、返ってきたのはそんな言葉。それだけではまだ疑問符を浮かべていた新士だが、続く2人の言葉に成る程と頷く。

 

 寄宿舎に住む人数は多い為、普段から数人で1グループとして当番制で代わる代わる料理を作っている。ちなみにグループメンバーはランダムであり、これは普段から料理を通して交流を深める意味を含めている。

 

 勿論小学生組も当番に含まれており、元から家事をしていた須美と銀(小)はともかく、家事をほぼしない園子(小)と新士は先の2人、或いは共にグループとなった誰かから料理を教わりながら作っていた。お陰で料理の腕はかなり上達したし、新士に至っては楓よりも出来ると断言出来る。

 

 「あのね、園子先輩はアマっち先輩によく焼きそばを作ってるでしょ? アマっち先輩はそれをいつも美味しそうに、ぜーんぶ食べちゃうでしょ? あれ、いいなーって思ってたんだ~」

 

 「ああ、確かに。樹海から帰ってきたら殆ど毎回用意されてるねぇ」

 

 「だからね、わたしもアマっちに焼きそばを作ってあげたいな~って思ったんだ~。作り方とかはミノさんとわっしーに何度か教わってたんよ~」

 

 「と言っても所詮は焼きそばだから、教える事なんて殆ど無かったけどな。具材切って麺と一緒にソース絡めながら焼くだけだし」

 

 「いきなり麺を強火でこんがり焼こうとしたのは焦ったわ……」

 

 「お疲れ様、2人共。で、その焼きそばを今日食べさせて貰えるってことか。楽しみだねぇ」

 

 「園子先輩みたいには作れないかも知れないけど、一生懸命真心込めて作るんよ~♪」

 

 そんなこんなで食堂にあるキッチン……ではなく部屋に備え付けられている方のキッチンを使って作り始める3人。勿論メインとなるのは園子(小)で他の2人はお手伝いだ。途中で焼きそばの良い匂いに釣られたのか千景と神奈が様子を見にやってきたが、3人は一緒に食べようと快く迎え入れる。

 

 楽しみだねぇと本当に楽しみな様子でニコニコしている新士と共に2人が待つこと10数分。テーブルの上に並べられた小盛の焼きそば5つと大盛の焼きそば1つ。因みにお代わり用にまだキッチンの方に大量の焼きそばが山になっている。

 

 「出来たんよ~♪ 焼きそば。略して、園子スペシャルだよ~!」

 

 「元の名前より長くなってるのに何をどう略したんだろう……?」

 

 「神奈さん、そこはつっこまないであげてください……」

 

 「いやー、あたしらの手伝い殆ど要らなかったな。免許皆伝だな、園子」

 

 「やった~免許皆伝~♪」

 

 「美味しそうね。でも最初に食べるべきは貴方よ、新士君」

 

 「そうさせて貰いますねぇ。それじゃあ……頂きます」

 

 園子(小)の台詞に小声でツッコミながら本気で悩む神奈に須美が苦笑いし、銀(小)は誉めながら頭を撫で、撫でられた彼女が無邪気に喜ぶ。そんな微笑ましい光景を見て優しげに笑いながら自身は1度箸を置いて新士に先に食べるように促す千景。本来は彼の為に作られたのだからそれも当然だろう。無論彼もそれを理解しているので遠慮なく目の前の湯気が立ち上る美味しそうな焼きそばへと箸を伸ばして口へと運び、その様子を彼女はドキドキとしながら見ていた。

 

 具材はキャベツに玉ねぎ、人参、ピーマン、豚肉。味付けは濃い目。麺はソースが絡みつつも程よく乾いている。好みが別れるかもしれないが、新士は乾いている方が好きだった。本当なら彼は一口食べた後に感想を言うつもりであったのだが、気付けば山だった焼きそばが半分消えている。その事に遅れてから気付いたところでようやく箸を止めたのだが、周りからは生暖かい目で見られていて恥ずかしそうに彼は頬を掻いた。

 

 「うん、とても美味しいよのこちゃん。見ての通り、全然手が止まらなかったくらいにねぇ」

 

 「……良かった~……っ……うえ~んわっじぃぃぃぃ! ミノざぁぁぁぁんっ!」

 

 「おーよしよし。だから言っただろー、心配ないってさ」

 

 「そのっち、何度も練習していたものね。新士君の好みの味とかも観察していたみたいよ。美味しいって言ってもらいたいからって」

 

 「成る程、通りで自分好みの味だと思ったよ」

 

 「本当に“新士君の為の焼きそば”なのね」

 

 「きっと、世界で1番彼が美味しく感じるんだろうね」

 

 何度も練習したし好みの味も覚えたとは言え、やはり実際に感想を聞くまで不安だったのだろう。だからこそ美味しいと、本当に美味しそうに食べた後に言って貰えた事が嬉しくて、嬉しすぎて感極まり泣き出してしまう園子(小)。頑張った彼女を優しく抱き留めてポンポンと背中を叩く銀(小)と頭を撫でる須美に言われ、自身の好みにぴったりな味付けの理由を知る新士は納得したと頷いた。

 

 そんな4人の姿を見て顔を見合せながら笑う千景と神奈。少し蚊帳の外ではあるが、それも仕方ないと少しだけ心の中で苦笑い。その後は園子(小)が泣き止んだのを見計らい、全員で焼きそばに舌鼓を打つ。無論、感想は美味しいの一言。新士以外からもそう言われ、彼女はまた嬉しそうに笑った。そして真っ先に新士が、他の4人もお代わりをとその場から立ち上がった瞬間、その楽しい空気を壊す無粋な音が部屋に響いた。

 

 「……やれやれ、まだ全部食べてないのにねぇ。冷めたらどうしてくれようか」

 

 「おお、新士がいつもよりヤる気になっている……食べ物の恨みって恐ろしいよな」

 

 「時間は止まるから、冷める心配は無いと思うよ。皆、頑張ってね」

 

 「はい! 早く帰ってきて、焼きそばパーティーの続きだよ~!」

 

 「そうね。皆で戦えば、きっと直ぐに敵を倒して戻ってこられるわ」

 

 「では行きましょう。お役目を果たして、また皆でそのっちの焼きそばを食べる為に!」

 

 それぞれやる気……1人は珍しく殺る気……を漲らせながら、香川を解放する為の決戦へと身を投じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 樹海にて集まった勇者達はいつものように楓の光の絨毯へと乗り込み、目的地であるバーテックスの巣へと向かう。周囲の警戒をしつつそれなりの速度で飛んだ先で目にしたのは、これまで以上の敵の姿であった。

 

 「ここが噂のバーテックスのハウスね」

 

 「う~ん、“バーテックスの巣”とは聞いてたけど……」

 

 「気持ち悪いくらいに敵だらけ、だねぇ」

 

 「見渡す限り一面の星屑だ……」

 

 「語感的にはロマンチックなんだけど、見た目は割と地獄絵図ね」

 

 「こんな光景でもちょっと平気になってきた自分が居るよ、お姉ちゃん」

 

 「流石我が妹よ。女子力が高まっておるわ」

 

 「少なくとも胆力は付いてきてるだろうねぇ」

 

 歌野が腕を組ながら呟く横で何とも言えない表情を浮かべる小学生組。確かに、予め巫女達からは“バーテックスの巣”だと聞いていたが、実際に見てみればその言葉は正しい。これまでの戦いでも大量のバーテックス達と戦ってきたが、目の前の光景はそれらの比ではない。

 

 文字通り、目の前を埋め尽くす程のバーテックス達。それはさながら大きな白い雲が地上に降りてきたかのよう。見える白い部分全てが星屑なのだろうが。名前と状況説明だけなら綺麗にも思えるが、現実は見た目も気持ち悪い人類の敵の大量発生である。そんな敵の見た目や数にすら動じなくなってきた己に、樹は遠い目をしていた。

 

 「“巣”……成る程、巣窟か。星屑君以外に小型バーテックス君もおるね」

 

 「虫とか嫌いなのでこれは気持ち悪いような……! いけない、お役目なのにそんな事を……」

 

 「キモいモノはキモいって言っていいんだよ。やる事さえやってればね」

 

 「おぞましい。何匹居ようと絶やすわ」

 

 「千景さん、大型が控えている可能性があります」

 

 「確かにこれだけの規模だ、奥に大型やそれ以上の敵が待ち受けていても不思議じゃないねぇ」

 

 「了解よ。それを踏まえて戦うわ」

 

 「よーし! 地元補正があたしにはある! やってやる!」

 

 「銀、実際はそういうのは無いから気を付けるのよ」

 

 雪花が言うように、敵は星屑だけに留まらない。今までに現れた中、小型もうじゃうじゃと大量に居る。今は見えていないだけで、杏と楓が予想したように大型が居てもなんら不思議ではないだろう。何せ今回は香川の解放を賭けた決戦なのだから。

 

 各々目の前の光景に気持ち悪さやらおぞましさやらを感じつつ、香川解放の為だとそれぞれ武器を構えてやる気を見せる。フォーメーションはいつも通り。遠距離武器の3人を楓が絨毯に乗せて飛行しつつ制空権を握り、地上部隊を援護。近接組は持ち前の火力と突破力で最前線で敵を蹴散らし、中距離組は要所要所でサポート。

 

 勇者達が戦闘態勢を取った事を川切りに、バーテックス達が雪崩の如く襲い掛かってくる。だが大量の敵などもはや慣れたもの。慌てる事なく迎撃していく勇者達。殴り飛ばされ、切り裂かれ、串刺しにされ、風穴を空けられ、撃ち抜かれ、振り回され、容赦なく殲滅し、されていく。

 

 「こんのぉ! 殲滅殲滅!! っはぁ、はぁ……ったく、こいつら何体居るのよ。キリがないわ! 斬っても斬っても湧いてくる!」

 

 「おや? 三好夏凜が、完成型が泣き言を言うなんて世にも奇妙な光景ねぇ」

 

 「事実を分析してるのよ!」

 

 「棗を見なさい。無心で戦ってるわよ」

 

 が、減らない。殴り飛ばそうが切り裂こうが串刺しにしようが風穴を空けようが撃ち抜こうが振り回そうがまるで減った気がしない。敵は間違いなく倒している。何度も光へと消える光景を見た。それでも尚、最初に見た時から減っている気がしない。

 

 かれこれ数分、勇者達は動きっぱなしだ。何せ敵は幾らでも向かって来ているのだから休む暇もない。特に動き回っている近接組は疲労も貯まってきているだろう。それでも夏凜と風のようなやり取りをする余裕がある辺り、体力そのものはまだまだ問題無い様だが。

 

 言い返しながら風の視線を追う夏凜の目に映ったのは、無駄口を叩くことなく、いっそ機械的とも言える効率重視かつ無駄のない動きでバーテックスを屠り続ける棗の姿。彼女曰く、肉体を海と同化させるイメージをすることで体が勝手に動くのだと言う。こういった大量の敵と戦い続けるような場面では有効らしい。

 

 「凄いね、沖縄の武術?」

 

 「我流だ。海が語りかけてくるから、その声に従うまで」

 

 「あー分かる! 私も棒倒しを練習していたら砂が語りかけてきたもん!」

 

 「あの異様な強さの理由はそれなの!? って、話題を戻すけど……流石にこれ、ちょっとおかしくないかしら」

 

 「せいやー! 勇者チョーップ!! ……ふぅ。そうだね夏凜ちゃん。倒しても倒しても目に見える光景が全く変わってない気がするよ」

 

 「……ふむぅ」

 

 「まだまだ体は動くけど、本当に減っているかどうかは怪しくなってくるよね」

 

 「まあかなりの数を倒しているし、このまま倒し続けていればいつかは終わる……といいねぇ」

 

 「不安になる言い方はやめてよ小さいお兄ちゃん……」

 

 弛いやり取りをしている辺り、まだ精神的には余裕があるらしい。だが、どれだけ倒しても減らない。減っているのかもしれないが、それを実感出来ない。後どれだけ倒せばいいのかまるでわからない。さながら終わりのないマラソンをしているかのよう。

 

 地上組がそうであるように、上空の遠距離組も同じ心境であった。むしろ地上組よりは見える範囲が広く、敵の動きも良く見えているハズなのだが、最初に見た光景から敵の数が減っている気がしない。流石にこれは異常であると誰もが思っていた。

 

 「しかぁし新士! 勇者は頭脳も使わないといけないって訳で。ほら、前に倒した奴で敵を吐き出す大型が居たじゃないか? そういう生産ユニットを潰さないと、戦いが終わらないんじゃないか?」

 

 「……成る程、ゲームで言う“無限湧き”と同じってことか。確かに敵を吐き出す大型があの時の奴だけってこともないだろうしねぇ」

 

 「生産ユニットに無限湧きという例えは分かりやすいわね」

 

 「このまま戦ってても、こっちばっかり疲れちゃうかも~」

 

 「それは嫌ね。ようし、キツくても突破しつつ進んでみるとしましょうか! 異議がある人居る!?」

 

 ここで鋭い意見を出したのは、意外と言うべきか銀(小)。その意見に新士も敵を爪で切り裂きつつ賛同する。実際大型バーテックスも同じ種類のモノが複数同時に現れたりしているのだ、以前倒した特殊な能力を持つ大型がまだ居てもなんら不思議ではないだろう。その話が聞こえた者達も納得し、風の現状を打破する為の提案に異議を申す者は居ない。

 

 「異議なーし。今は嫌な流れだと思うんだ~」

 

 「流れは園子ちゃん程分からないけど、元気に動ける内に色々試してみるのは賛成だわ」

 

 「進軍にこそ、活路がある気がする。奥からなーんか熱量を感じるのよね。GOGO!!」

 

 「よし、タマ探検隊は更に中へと進んでいくぞ。移動用バスは楓の絨毯だ!」

 

 「無免許だけどねぇ」

 

 会話が聞こえていた楓は直ぐに降下し、それを見た地上組も飛び込むように乗り込んでいく。全員が乗った事を確認した後に絨毯は空を飛び、奥へ奥へと向かった。

 

 勿論、その間にもバーテックスは攻めてくる。だが現状、足場は決して広くはないものの戦力は密集している。近付かれる前に遠距離組が撃ち落とし、撃ち漏らした敵は中距離組が担当。それでも尚近付いてこよう者なら、遠慮なく近距離組が各々は攻撃手段にて迎撃。そうしてノンストップで進んでいくに連れて、勇者達は敵の種類に中型も混じり始めている事に気付いた。

 

 「バーテックスに中型のサイズが混じり始めたな。奥に行く程、デカくなってくる」

 

 「このまま進んでいけば、指導者が居そうね。それを倒せば周囲もおさまる……といいのだけど」

 

 若葉と美森がそんな会話をしていると、これまでの攻撃が嘘のように段々と敵の攻撃の勢いが修まっていった。やがてそれは全く行われることはなくなり、不気味な程に敵の動きも無くなる。誰もが不振に、不思議に、或いは嫌な予感を感じつつも、楓は絨毯を止めることなくバーテックス犇めく樹海を飛び続ける。

 

 「なんだか相手が襲ってこなくなったな。タマ達にビビったか。まあ気持ちは分かる」

 

 「私が完成型という事にようやく気付いて怯えてるのよ。“星屑”だけに、手も足も出ないってね」

 

 「お陰でサクサク進めるわ」

 

 「これ動かしてるの自分なんだけどねぇ……それに、楽観視し過ぎだよ姉さん」

 

 「かーくんに同意。どーもこういう風に都合がいいと疑ってかかってしまう年頃なのよ。例えばこれが奥に誘い込む罠で退路が断たれてたりとか」

 

 分かりやすいくらいに楽観的な解釈をして気楽にしている3人。他にも何人か同じような者が居るが口には出していない。正確には、言う前に楓にぴしゃりと言われて風が肩を落としたのを見たからだ。

 

 そもそも、倒しても減ってないと錯覚する程の、感情があるかも分からない人類の敵が何もせずにこちらを通しているのが可笑しい。雪花の言うように何かしらの罠であると考えた方が自然だろう。そうして彼女の言葉を確認するようにそろーりと誰もが後ろを向いて……絶句。そこにあったのは、今まで通ってきた道をわらわらと蠢きながら埋め尽くしている大量のバーテックスの姿であった。

 

 「ねぇちょっと、本当に退路断たれてない!? これマズイ奴じゃない!?」

 

 「退路がバーテックスで埋め尽くされて……いつの間にこんな……っ!」

 

 「任せて。完成型のオーラで、モーゼのようにあの壁を割いてみせるわ。ほら、退きなさい! ちょっと、退きなさいよ。何無視してんのよ。完成型がオーラだしてんのよ、ビビりなさいよ!」

 

 「モーゼまだ!?」

 

 「遅いぞモーゼ! ……モーゼが何かは後でタマに教えるようにな」

 

 慌てる雪花と杏に、やたら自信満々な夏凜が絨毯の最後尾に移動してバーテックスの壁に手を翳しながら、本人曰くオーラを出して威圧する。が、当然と言うべきか何も起こらない。全く反応しない。相変わらず攻撃もしてこないが、何のリアクションも起こさない。

 

 風と球子が囃し立て、こっそりと苦笑いしている新士から教わるのを背後から感じつつ、夏凜はやはり無理みたいだとガックリと項垂れた。何人かは内心でそれはそうだろうと思ってはいたが、何も言わないであげた。楓はここで1度絨毯を止め、攻撃されない間に一度作戦会議をすることに。

 

 「どうする? かーくんにUターンしてもらう? 今ならまだ壁は薄いだろうし、強引に突破出来ると思うけど」

 

 「前に進みましょう! 奥からビリビリくる威圧感……親玉が居る」

 

 「ちょーちょっちょっ……マジですか、行くんですか」

 

 「ドキドキするけど……私達がやらなきゃ。だって」

 

 「勇者、だもんね」

 

 「ここが香川の最終戦。ラストダンジョンは攻略するまで下界には戻れないということ」

 

 「コンテニューはないよ?」

 

 「正直、怖いわ……でも……高嶋さんや、皆が居るから」

 

 「ああ、皆が居るから怖いもんも怖くない。やってやる!」

 

 退路が断たれている事に不安を感じているのもあるのだろうが、状況を見て慎重になる雪花。しかし歌野を始め、友奈と高嶋、千景も前に進むべきだと告げる。

 

 恐怖はある。当たり前だ、どれだけ勇者として戦い、経験を積んだとしても彼女達は中学生なのだ。だが、その恐怖を持っていても戦える理由が、仲間達の存在。この世界にやってきて、或いはやってくる前から共に戦ってきた、人類の敵を相手に“勇んで戦う者”達。球子の言葉に頷く皆の顔を見て、雪花は小さく笑った。

 

 「……ふふふ。勇者揃いの中に放り込まれた慎重派のワタクシ、色々考えておりますが……いいよ、上等よ。行ってやりましょう!」

 

 「せっちゃんも勇者だよ! 怖いのは当然なんだから」

 

 「それでも征くって言ったんだから、あんたも勇者!」

 

 「慎重なのは悪いことじゃないしねぇ。雪花ちゃんのような慎重派の勇者が居てくれた方が心強いよ。姉さんみたいなのばっかりでも困るしねぇ」

 

 「どういう意味よ!?」

 

 「あはは、まあ“こんな所に居られるか! 私は帰るぞ!”って1人逃げても結末は読めてるし。ていうか今空だからこんな囲まれた状況で1人飛び降りる勇気はないし」

 

 「進んでこその突破口だね。行こう!」

 

 (この精神力……間違いなく若葉さんの子孫です)

 

 再び士気を高めた勇者達はお互いに視線を合わせながら頷き合い、最後に楓を見て頷く。Uターンは必要ない。今こうして止まっている必要もない。園子(小)が言ったように突破口は、目標は、前に進んだ先にある。彼もまた頷き、絨毯を操作して再び真っ直ぐに飛ぶ。前に、前に、前にと。

 

 そうしてしばらく進んだ先で、勇者達は見た。数えるのも馬鹿らしい程の数多の中、小型のバーテックス。これまでにも見た数体の大型バーテックス。そして……明らかに今までのどのバーテックスとも違う、最奥に見える超巨大なバーテックスの姿を。




原作との相違点

・銀(小)は銀(中)の膝の上に

・お料理教室ではなく焼きそばパーティー

・他細々としたものばかり。大きなモノがあれば私に教えて下さい←



という訳で、原作10話の前半というお話でした。最初に楓女体化フラグが立ってますが多分本編中はしないです←

本作では寄宿舎組は当番制で料理をしている設定ですのでお料理教室するまでもなく小園子は原作よりも料理が出来ます。なので中学生の自分と楓のやり取りや好きな相手に料理を振る舞う姿に憧れて……という理由から今回の流れに。新士の為の焼きそば作りの研究、試行錯誤を2人に手伝ってもらったという形です。

移動は相変わらず楓の光の絨毯任せ。高低差がある樹海を直接移動しない分、勇者達の疲労は抑えられているでしょう。超大型バーテックスは私の中ではレオくらいの大きさのイメージ。大型はタウラスくらいですかね。

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)

地味にやってなかったバレンタインやクリスマス等のイベント番外編を……

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