咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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お待たせしました、ようやく更新です(´ω`)

念願のSwitchと剣盾を買いました。シールドです。相変わらずグレイシアが可愛すぎてどうにかなりそうです←

現在ゆゆゆコラボ中の天華百剣、友奈狙うも盛大に爆死中。真面目に今のデータ捨ててリセマラしようか悩んでます。BBDWは冥来てくれました。

ゆゆゆでは東郷さん来てくれず。ドカバトもブロリー来てくれず。ファンリビもイッセー来てくれず。ウマ娘もssrサポート来てくれず。ガチャ運が……ガチャ運が死んでる……。

さて、今回はいつもより少しだけ短いです。と言っても9000文字は超えてますがね。それでは、どうぞ。


花結いのきらめき ― 29 ―

 「ふーっ、帰って来たぁ。今回もまた無茶したわねぇ。そして勝っちゃうし」

 

 「勇者っていうのは、無茶をして最後に勝つものよ。んん~疲れた疲れた」

 

 「棗さん。敵大部隊の足止め助かったぞ」

 

 「皆のお陰で役目を果たせた……ん、神奈達も来たか」

 

 「皆さーん、お疲れ様でした。これで香川全部と愛媛の一部まで取り戻せました」

 

 「全部、と言っても入れない部分もあるけどね。大赦関係とか、小学生の皆の家がある部分とかは基本的に入れないんだ。色々とややこしくなっちゃうからね」

 

 「超大型を倒したんだよね、凄いよ~」

 

 「本当になー。今日はお祝いだな」

 

 「……? 須美ちゃん達、どうしたの?」

 

 レクイエムFを倒し、樹海から戻ってきた勇者達。そこは瀬戸大橋が見える場所にある、橋から少し離れた場所の社の前であった。疲れた体を解すように屈伸をしたり背伸びをしたりしつつお互いに無事であることを喜んでいると、そこに留守番組の5人も現れ、勇者達を労い、褒める。

 

 しかし、そんな明るい空気の中で小学生組は静かであった。様子がおかしいことに気付いた水都が問い掛けると、4人は唖然としながらゆっくりと振り向き……崩壊した大橋を指差した。

 

 「大橋が……見えて、いるんですけど……は、破壊されているんです。なぜ……!?」

 

 「この世界の大橋だけが特別なの? それとも現実の大橋も…… 」

 

 (薄々そんな気はしてたけど、やっぱり破壊されているか……自分が大怪我をしたと思われる時か? それともまた別の……もしかしたら、今は変身出来ないのこちゃん先輩と銀ちゃん先輩もそれが関係している……?)

 

 中学生組は勿論、予め話を聞いていた西暦組のメンバーは大橋が崩壊していることとその理由を聞いている。小学生組に伝えていなかったのは、4人の時系列が正にその大橋で戦っている時だったからだ。いつかは伝えるつもりではあったが、運悪くというべきか今回のようにいきなり知ってしまうことになった。

 

 困惑と焦りの表情を浮かべる4人。どう説明したものかと頭を悩ませる勇者達だったが、真っ先に口を開いたのは園子(中)であった。

 

 「現実の大橋も破壊されてるよ。でもね、世界は無事だったんだ」

 

 「……うん、そうだねぇ。確かに大橋は守りきれなかったけれど、本当に守るべきモノは守れた。それは確かだよ」

 

 「ああ。だからそう不安そうな顔するなって。あたしらは、ちゃんとやり遂げた。なあ? 須美」

 

 「ええ。あの日々は私の誇り。心配するのも当然の光景だけど、大丈夫だから」

 

 「……そっか。それならうん、いいか」

 

 「自分がそう言っているなら、セーフ」

 

 園子(中)と共に、中学生となったかつての4人が過去の自分達……小学生の4人へと安心させるように語る。事実として、大橋は破壊されてしまっている。当時の自分達もまた、その光景を間近で見て唖然としたし、絶望だって感じた。戦意だって折れそうになった。

 

 だが、それでも立ち上がり、共に戦い、世界を守ったのは確かだ。決して万々歳に終わった訳ではない。しかしそれを乗り越えて4人で、勇者部でこうして並んで笑い合える現在(いま)がある。それもまた、確かなこと。未来の自分達が優しい表情でそう言うものだから、それならいいかと小学生組は取り敢えず納得したように頷いた。

 

 「香川の奪還に成功した……ということは、これで神樹様が新しい力を得る……の、だったわね。どんなチカラかしら?」

 

 「あ、そうだ。そういう話だったわね」

 

 「携帯に通知が来るとのことでしたが……」

 

 (私が直接言うわけにもいかないからね……)

 

 千景が思い出したように呟くと夏凜を始めに他の者達もそういえば……と思い出したようにハッとし、ひなたの言葉を受けて全員が自然と端末を取り出して画面を見やる。今のところそれらしい通知は来ていない……と思った瞬間、その通知が来た。内容は簡潔なモノで、“勇者アプリに新しい機能が追加されました”というメッセージのみ。

 

 「私にも来てるかな~……ああっ、メンテナンス中だった……ミノさんは?」

 

 「あたしもだ。ああもう、なんであたしらだけなんだよー……」

 

 「いやいや~、ミノさん。これは遂に来るかもしれないよ~? 今までうんともすんとも言わなかったけど、今回はこうして通知自体は来てるんだし」

 

 「あっ、そういえばそうだな。よしっ、今のうちにいつでも行けるように準備しとかないとな、園子!」

 

 「うん!」

 

 しかし、今回まで変身出来なかった園子(中)と銀(中)には通知は来ていても“メンテナンス中”との文字のみ。まだ参戦出来ないのかと気落ちする銀(中)だったが、彼女の言葉を聞いてやる気を取り戻す。参戦する日は近いかもしれないという予感の元、2人は顔を見合せながらその日に備えて体を動かせるように準備することを決めた。

 

 「んお? 確かにボタンが増えてるな。ボタンがあれば押したくなるのが人情。よーし、タマ1番乗り! どんなモノかわからないけど、最初の経験者になってやる!」

 

 「あっ、ちょ、ちょっとタマっち先輩!」

 

 「はい、ストップだよ球子ちゃん。ちゃんと説明書があるみたいだから、それ読んでから……」

 

 「止めるなあんず、楓! タマがやらねば誰がやる! スイッチオン!」

 

 「あっこら……え?」

 

 「た、タマっち先輩が……消えた!?」

 

 球子が言うとおり、勇者アプリの隣に新たに何かのアプリが追加されていた。更に勇者アプリの説明テキストの下にそのアプリの説明らしきテキストも追加されている……のだが、そのテキストには目もくれず新しいアプリに指を伸ばす球子。杏の言葉の後に素早く楓がその手をがっしりと掴み、止めた。

 

 が、それでも止まらないのが彼女。無駄にキリッとしたキメ顔で2人を見た後、片手の親指を伸ばしてそのアプリをタップした。流石に楓も2度も止めることは叶わず、その行動を許してしまい……瞬間、球子の姿が忽然と消えた。

 

 

 

 

 

 

 「お? おお? おおおおっ!? あんず? 皆? っていうかどこだここは?」

 

 その球子本人は今、どことも知れない場所へと来ていた。彼女からしてみれば一瞬の内に視界が変わり、仲間が居なくなったので混乱するのも仕方ない。だがそこは細かいことは気にしないタイプの球子。混乱も直ぐに収まり、周囲を見渡す余裕も出てくる。

 

 「……いや、待て待て待て。タマここ知ってる気がするぞ、見たことある!」

 

 すっかり慣れ親しんだ神世紀の香川とは少し違う街並みと自然。彼女自身の周囲に沢山生っている蜜柑。恐らくは蜜柑畑に居るのだろう。少なくとも、この場所は来たことがないのは確か……なのだが、彼女はどうにもこの場所に既視感を覚えた。そして直ぐにその既視感の正体に至る。球子が今居る場所、それは。

 

 

 

 「ていうかタマの故郷、愛媛じゃないか!! タマは瞬間移動してしまったのか!?」

 

 

 

 四国にある都道府県の1つ、愛媛県。球子の、そして杏の故郷であるそこに、球子は香川から一瞬にして飛んで来ていた。

 

 

 

 「アプリの新しい機能のボタンを押したら球子が消えた……」

 

 「美森ちゃん、須美ちゃん」

 

 「荒縄ならここにあるわ、楓君」

 

 「お灸の準備は出来ています、楓さん」

 

 「なんで持っているんですか!? タマっち先輩、早く戻ってこないと大変な事に……」

 

 「まあまあ、待ってください。今アプリの説明書を読みますから」

 

 「こういうのにもトリセツ用意してくれるって、大赦の人達も変なとこで律儀よね」

 

 「勇者システムを作った人の中には元ゲーム開発者が居ると、私は踏んでいるわ」

 

 球子の姿が消えた事に唖然としている者達が居る中で、朗らかに笑いながら、しかし目が笑っていない状態で2人を名前を呟く楓。すると呼ばれた2人は勇者服のどこに仕込んでいたのか、どこからともなくそれぞれ荒縄とお灸を取り出す。戻ってくると辿るであろう球子の惨状を想像して蒼白になる杏とやる気満々な3人を宥めつつ、ひなたはアプリの説明書を読み始める。

 

 同じく水都も、神奈も説明書を読み始め、それを見て自分もと読み始める者も居れば雪花と千景のように雑談をする者も居る。杏と小学生組、勇者部は球子へのお仕置きを考える3人を宥めている。そうしていると巫女達が説明書を読み終え、ひなたが代表してその内容を語り始める。

 

 新しく追加された機能、名称を“カガミブネ”。その効果は球子が大橋から愛媛まで一瞬で移動したことから分かるように、特定の場所同士を行き来する瞬間移動、いわゆるテレポートが出来るというものだ。

 

 「えっと……“出発地点”と“到着地点”が解放されていて、出発地点に“巫女”が居れば瞬間移動出来るようです」

 

 「テレポート! ハイテク! ハイカラ! ジェネレーション・ショーック!!」

 

 「うたのんがショックを受けすぎて英語しか喋られない体に……」

 

 「それはいけない。後で調整しておくわね。前々からちょっと気になっていたの」

 

 「うん、いつかはやると思ってたけど程々にな、須美」

 

 水都が続けて説明すると、テレポートというある種の人類の夢のような機能に興奮したのかハイテンションになる歌野。その口からは彼女曰く、ショックを受けすぎた為に英語しか出ておらず、今も“アンビリーバボー! ファンタスティック! レボリューション!”等と叫んでいる。

 

 そんな彼女を見て笑顔で呟いたのは美森。日本大好き英語大嫌いな彼女からしてみれば、時折英単語を口にする歌野の言動には前々から思うところがあったのだろう。むしろこれまで何らかの行動や注意が入らなかったのが不思議なくらいである。やる気を見せる親友の姿に、銀(中)は諦めたように首を振った。その直後、ひなたの端末に連絡が入る。相手は勿論球子であった。

 

 『もしもし、こちらタマ。なんか分かんないけど、タマは愛媛に居る!』

 

 「実は、カガミブネという機能でかくかくしかじか……」

 

 『な、なんだってーっ!? テレポート!? タマはどうすればいいんだ!? こっちには巫女が居ないから、カガなんとかを使えないぞっ!? あっ、そうだ、楓! 楓の空飛ぶ絨毯で迎えに……』

 

 「勝手に突っ走るくらいだからそのまま走って帰ってくればいいんじゃないかねぇ」

 

 『なんでそんなに辛辣なんだ!? 勝手にボタン押したのは謝るから迎えに来てくれよ!!』

 

 「うーん、どうしようかねぇ」

 

 「楓の奴、生き生きとしてるわね」

 

 「お姉ちゃんを弄る時とおんなじ顔してるね。あとお姉ちゃん、さっきお兄ちゃんが言ってた私のプリン食べたのホント?」

 

 「……ごめん」

 

 「もーっ!」

 

 球子に先程もした説明をすると端末越しに彼女の驚愕の声が響く。ひなたが思わず耳から端末を遠ざけるも余程大きな声で驚いているのだろう、声が周囲の者にもはっきりと聞こえる。周りがその元気そうな声に安堵半分呆れ半分に黙して聞いていると、このままではカガミブネが使えない事に気付いた球子が再度焦りの声をあげる。

 

 直ぐに楓の存在に気付き、助けを求めるが彼はにっこりと笑いながらさらりと助けに行く気はないと遠回しに言った。彼女の焦り様を楽しげに流す姿に、周りは彼が今はもう怒りが落ち着いているのだと理解する。元々彼は怒りが長続きする方ではないのだ。本気で怒るともっと泣きそうになるくらい怖くなることを銀(中)は知っている。

 

 「楓さんが行かないのであれば、私達の誰かが迎えに行けば……」

 

 「待てひなた。マップを見る限り、球子が居る場所は未解放地域の直ぐ側……お前達が行くのは危険だ」

 

 「楓君が言った通り、土居さんが自力で戻ってくれば良いんじゃないかしら。自分の足で、走って」

 

 『千景まで言うのか!? ここから自力で戻るのは大変だぞ……』

 

 「勇者の身体能力なら1時間も掛からないわ。登山より楽だと思うけど」

 

 『同世代の2人が冷たい……くっそー、タマ超特急で走って帰る!!』

 

 「ふふ、冗談だよ。心配しなくても迎えに行ってあげるから、そこで今度こそ動かないようにねぇ。動いたら……引き擦るよ」

 

 『……はい』

 

 姉妹の微笑ましいやり取りを背景にひなたがそう口にするも直ぐに若葉から却下される。それもそのはず、球子が居るのは愛媛であり、先の戦いで少し解放されたとは言えまだまだ大半が未解放の場所だ。そんな危険なところに戦闘力を持たない巫女達を行かせる訳にはいかない。

 

 自業自得だ、と千景も楓と同じように自力で帰る提案をする。まだ戦闘から戻ってきてから変身を解いておらず、勇者の身体能力をもってすれば隣接した県から戻ること自体はのは多少時間は掛かるが容易だろう。2人から自分で帰ってこいと言われて拗ねる球子に、楓はくすくすと笑いながらちゃんと迎えに行く事を告げる。ただ、その後に低いトーンで呟かれた言葉に本気度を感じたのだろう、端末の向こうから震えた返事が聞こえた。

 

 「楓、私も行こう。2人だけでは何かあった時に手が足りないかも知れないからな」

 

 「私も迎えに行きます。流石にもう勝手に動いたりしないと思いますが……心配ですし」

 

 「そうね……仕方ないから私も行くわ」

 

 「はいはーい! 私も行くよ!」

 

 「うん、4人も居れば充分かな。姉さん達は先に戻っててねぇ」

 

 「了解。楓に若葉達が行ってくれるんだから安心ね」

 

 

 

 

 

 

 若葉を筆頭に球子と共にやってきた西暦勇者4人を乗せ、風達に手を振って光の絨毯で空を飛ぶ楓。樹海ではないので人目の事も考え、普段よりも少し高めに飛行しつつ隣でマップを見る若葉の指示通りに進むことしばらく、愛媛へと入った頃に杏が球子を発見。やってきた楓達に向けて手を振る彼女の元に降り、無事再会出来た事を表現の差はあれど喜ぶ。

 

 「タマっち先輩! 無事で良かった……」

 

 「あんずー! 楓達もなんだよー、お前達結局タマのこと大好きなんだな!」

 

 「……ふん」

 

 「……ん?」

 

 「どうした? 楓……ん? 今、視線を感じたが……」

 

 「若葉さんもですか? 自分も誰かに見られていたような気がしましてねぇ……」

 

 「……視線を感じたのが2人か……気のせい、ではないかも知れないな」

 

 抱き合う杏と球子をニコニコと嬉しそうに見る高嶋。抱き合いつつなんだかんだ来てくれた仲間達に嬉しそうに彼女が言うと、図星なのか顔を赤くしてそっぽ向く千景。そんな彼女を見て、高嶋はまたニコニコと嬉しそうに笑った。

 

 そんな風に和気藹々としている4人を見ていた楓だが、ふと視線を感じてそちらへと顔を向ける。それを不思議に思った若葉もまた同じように視線を感じ、お互いに視線を感じたことは気のせいではなく、実際に誰かに見られていた可能性が高いと真剣な表情で頷く。

 

 問題は、誰が見ていたかということだ。一般人に見られた……という可能性はあるにはある。だが未解放地域にその一般人が居るとは考えにくい。ならば敵が? となると何のアクションも起こしてこないのは疑問だ。偵察のバーテックスということも考えられるが、今は樹海化しておらず、結局視線を感じた以外に何かしらの出来事が起こってないので何とも言えない。

 

 「……まあ、何も起きないみたいですし、球子ちゃんを連れて帰りましょうか」

 

 「ああ、そうだな。ひなた達も待っていることだしな……ところで楓、なぜ私にだけは敬語が抜けないんだ? 棗相手ならともかく」

 

 「うーん、特に意識してませんでしたねぇ……やはり、初代勇者にして風雲児様だからじゃないですかねぇ」

 

 「からかうな。どうにもお前を同年代と思えなくてな……こう、むず痒いんだ。頼むから敬語は無しにしてくれ」

 

 「わかった、君がそう言うならこれからそうするよ、若葉ちゃん」

 

 「……何故だ? ひなたが2人に増えたような気がする……別の意味でむず痒いな……」

 

 そんなやり取りをした後、楓達は再び光の絨毯に乗って風達が待つ中学校へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 (……あれがお姉様と同じ“白い勇者”……ていうか私が見た瞬間にこっち見たんだけど、どれだけ視線に敏感なの……)

 

 

 

 

 

 

 「タマ、帰還!」

 

 「良かった、これで勇者全員揃ったわね」

 

 「皆にお土産だぞ! 愛媛の蜜柑だ!」

 

 「これは……この上品な甘味とコク! 砂漠に涌き出る水源のように細胞を潤す果汁! 間違いなく、愛媛蜜柑!!」

 

 「うわー、これ美味しいっす!」

 

 「いつの間に、というかどこで手に入れたのやら……うん、美味しいねぇ」

 

 「えへん、タマげたかぼうず、楓。愛媛の蜜柑は世界一だぞ」

 

 「ポンジュースは命の水らしいけどホントかい?」

 

 「その通りだ!」

 

 讃州中学の勇者部部室に再び全員で集まる勇者達。球子の無事な姿を見た全員が安心した後、球子はどこからか取り出した蜜柑が大量に入ったビニール袋から蜜柑を取り出して全員に手渡していく。

 

 蜜柑を食べるや否や故郷の味に感動して普段よりも語気が強い杏。他の者達もその甘酸っぱい果汁たっぷりの蜜柑の味に頬を緩め、パクパクと食べている。誰もが手を止めない姿を見て、風は自分も手を止めないままに今後の話をしようと告げる。

 

 改めて言うが、今回の戦いを勝利したことにより香川県のほぼ全域が解放された。これは四国の4分の1を解放出来た事を意味し、数字以上に大きな成果を得られている。そして香川を解放したのなら、次に解放するべきは。

 

 「神樹様から神託があったのですが、香川の次は愛媛を奪還せよ、と」

 

 「だからタマ坊が愛媛に飛ばされたんだね~」

 

 「神樹様もせっかちさんだね~」

 

 (この場合、“私”がせっかちなのか“私達”がせっかちなのか……)

 

 「前もって、“次は愛媛だー”って言っててほしいよね~」

 

 「だよね~。びっくりしちゃうよ~」

 

 (びっくりさせない為にもどうにか事前に連絡を……いやその為に神託を……うぅ、思い付かない……)

 

 「園子ズのステレオ音声にまだ慣れないわ……神奈はなんでうんうん唸ってるのよ」

 

 「今はそっとしておいてあげなよ姉さん」

 

 園子ズの“神樹様はせっかち”との評価を受けて地味にショックを受けている神奈。勇者達をびっくりさせることも本意ではないのでそうならない為に何か方法は無いかとうんうん唸りながら考えるが、残念ながら今回及びこれまでと同様に神託を授ける以外に何も思い付かない。そうやって悩む彼女の姿に誰もが内心首を傾げるも、話はそのまま続く。

 

 「勇者の身体能力があれば、愛媛まで走って数10分もあれば行けますが……」

 

 「緊急事態の時間的な問題や、体力消耗を考えれば……楓君の絨毯だって、今回の戦力を分散させる必要があった時のように自由に使えない場合もあるのだし」

 

 「その時間的な問題を解決する為の機能が、今回追加されたカガミブネという訳だ」

 

 「ああ、そういう事ですか。須美ちゃんは巫女の適正を持っていると聞かされているし、当然未来の姿の須美ちゃん先輩も……」

 

 「こっちにもステレオ居たわ。流石に楓とちび楓は声変わりしてるから聞き分けられるけど」

 

 須美が言うように、勇者の身体能力をもってすれば香川から愛媛まで行くだけなら容易である。しかし、それでも長距離であることには変わりはなく、毎回移動するだけで時間も体力も削られてしまう。今までのように楓の光の絨毯でならそれらも軽減出来るが、これまでに数回ほど戦力が分散していることを考えれば頼りきりになるのも不味い。

 

 だが、カガミブネがあればそれを解決出来る。問題は行きは良くても帰りの際にも巫女が居なければカガミブネで帰ってこられない点だが、これも問題無い。新士が言った通り須美、そして同一人物である美森はひなた達と同じ巫女の適正を持っているのだ。カガミブネを使う条件は満たしている。

 

 「東郷さん達も巫女の素養が? カガミブネは巫女も使えるみたいだから、速く走れなくても問題なく愛媛に行けるので私が行こうかと……」

 

 「ということは、また私とみーちゃんがトゥギャザー出来るって訳ね!」

 

 「いや、だから東郷か須美ちゃんが居るからわざわざ巫女の誰かを連れていく必要はないんだっての。そもそも戦闘地域に巫女を連れていくのは賛成出来ないわ」

 

 「夏凜の言うとおりだ。だが、東郷達が巫女の素養があるのは驚いた」

 

 「とにかく、これでカガミブネを使うことは問題無いねぇ」

 

 「はい。なので、次の奪還場所である愛媛……戦略の基本として地の利、戦いの場の情報が欲しいです」

 

 美森達に巫女の素養があると聞いて驚く水都。彼女としては自身が共に戦場に赴き、帰りの際の力になるつもりであった。それは西暦に諏訪で歌野と共に居た経験から来る考えだろう。しかし、この世界ではわざわざ戦闘力を持たない巫女を戦場に連れていく必要はない。そう諭され、彼女と共にまたどこでも共に居られると喜んだ歌野がしょんぼりと肩を落とした。

 

 「愛媛の事ならタマに任せタマえ! まず蜜柑が美味しい! そして都会だ! 四国1の都会だぞ! 人口も1番多いぞ! あと蜜柑が美味しい!」

 

 (その情報、戦いの役に立つのかにゃあ……?)

 

 「ねえ球子ちゃん。その情報、戦いの役に立つの?」

 

 (凄く不思議そうな顔でズバッと言ったよこの子!?)

 

 「うぐぅ……っ!?」

 

 愛媛なら任せろとの言葉通り意気揚々と語り始める球子。しかし、その内容は愛媛の魅力や蜜柑の美味しさに関することばかりでとても“戦いの場の情報”とは言えない。恐らくはその場のほぼ全員が雪花と同じ事を考えただろうが言葉にはしなかった。が、純粋な疑問として口にした無自覚の猛者が1人。神奈である。そのあまりに純粋な眼差しに、球子は答えられずに胸を押さえて蹲るのだった。

 

 

 

 

 

 

 (4つある内の1つの解放……正直、“私達”の予想よりも早い。凄いなぁ、勇者の皆)

 

 あの後、寄宿舎に皆で集まって遅くまで“香川奪還おめでとうパーティー”をしていた私達。風さんやひなたちゃん、東郷さん達、ミノちゃん達、園ちゃん達といった料理上手が腕によりを掛けて作ってくれたご馳走は皆で美味しく頂いた。私もちょっとだけ手伝って肉ぶっかけうどんのお肉の味付けを結城ちゃんと高嶋ちゃんと一緒にしてた。

 

 お蕎麦やラーメンなんかの皆の好物もちゃんと作って、楓くん達の前に大きなお皿に乗った焼きそばがでーんと置かれたのにはその見た目もあって皆で笑ったりして、でもしっかり全部平らげた彼らの健啖ぶりに相変わらずと思いつつも驚いたりして……楽しかったなぁ。

 

 そして今、お腹いっぱいになって寄宿舎住まいの皆で一緒にお風呂に入った後の小休止に自分の部屋に居る私。この後はまた皆集まって千景ちゃんの部屋でゲーム大会の予定なんだよね。今からとても楽しみです。

 

 (次からは愛媛……戦いはどんどん激しくなる。だけど皆はきっと……どんな戦いも、どんな試練も乗り越えてくれる)

 

 こうして人間の姿で皆と関わっていると分かる。資質だけじゃなく、戦闘力だけじゃない、皆の……人間の強さ。“私達”がこうしてしっかりとした意識を持つ前から守ってきた人間の心や繋がりの強さ。勿論、いい人ばかりじゃないのも理解しているけれど……少なくとも、勇者の皆には“それ”がある。

 

 見てきた。感じてきた。だから信じられる。きっと、“あの神”の……造反神のもたらす戦いを、試練を超えて……人間の強さを信じさせてくれるハズ。

 

 (そうなるのが待ち遠しいような……ううん、これ以上はダメだよね。だって私と皆はそもそも……)

 

 「神奈ちゃーん! そろそろぐんちゃんの部屋に行こうよ!」

 

 「……はーい! 今いくよ高嶋ちゃん!」

 

 そこまで考えて、扉越しに高嶋ちゃんの声が聞こえたので座っていたベッドから降りて廊下に向かう。今から楽しいゲーム大会なのだ、楽しむ為にはさっきまでの考えは合わない。今は忘れてしまおう。目指すはゲームの中での1位。私だって上手くなってるんだから、1回くらいはなれるハズ。

 

 そして結局私は1度として1位になることが出来ずにどんよりとして皆から慰められることになるのを、この時の私はまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 この日から数日後、再び神託が下される。戦いの場は言うまでもない。愛媛を故郷に持つ為に戦意が普段よりも高い球子と杏と共に、勇者達はカガミブネを使い、愛媛の樹海へと赴く。こうしてこの不思議な世界での戦いの舞台は、愛媛へと移されるのだった。




原作との相違点

・現実に戻る前の樹海で合流した時のやり取りは無し

・大橋前の留守番組合流時に銀(中)も居るよ!

・球子、お仕置きされそうになる(実際にされたかは定かではない)

・誰かの視線。いったい何嶺なんだ……

・香川奪還おめでとうパーティー

・寄宿舎組皆でお風呂。描写? ねぇよんなもん←

・その他はその目で確かめろ!



という訳で、原作10話の最後~11話の途中までというお話でした。友奈のこれまでのあらすじの台詞がマジで小並感で可愛すぎる。

特に進展という進展はなかった今回。楓が視線に敏感なのは仕様です。次回からは愛媛編へと進みます。愛媛編と言えばあの子が初登場しますよね。そして遂にお留守番が真の実力を……え、また戦闘時のキャラ増えるの(絶望

最近また頭痛がするようになりましたが私は元気です。次回は普通に本編書きますが、近い内に何かしら季節イベ番外編を書きたいと思います。ゆゆゆいから引っ張ってくるか、現実世界での勇者部の話になるかは未定。

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)
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