咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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お待たせしました、ようやっと更新です(´ω`)

花結いの章を書いてからもう30話目と言うべきか、それともまだ30話目と言うべきか悩みますね。

剣盾は本編もDLCもクリアしたので厳選なう。オンライン購入したら対戦に潜ろうと思います。天華百剣はゆゆゆコラボギリギリにサブアカで3人揃えられました。やったぜ。本アカは死にましたがね←

ファンリビもイッセーと恵来てくれましたし、デジモンコラボと聞いてた復活したメダロットもオメガナイツ来てくれましたし、ガチャ運上がってきてますかね。ウマ娘は爆死んしてますが。

グラブルもボーボボコラボで再開。相変わらず人類には早すぎる展開で何よりです。ああ、窓に! 窓に古戦場が!

あ、今回は後書きにアンケートがあります。


花結いのきらめき ― 30 ―

 それは、香川奪還おめでとうパーティーより2日経った日のこと。いつものように部室へと集まっていたメンバーの中で、巫女達が同時にハッと顔を上げた。

 

 「……! 神託が来ました。愛媛奪還の第1戦です」

 

 「よし来た! タマテンション、MAXだぞ!」

 

 「私も!」

 

 「タマちゃんとアンちゃんの故郷だもんね。私達も全力で手伝うよ!」

 

 故郷奪還となり普段以上のやる気を見せる球子と杏。それを見た仲間達も友奈を筆頭にお役目であること以上に2人為にも愛媛を必ず取り返すという意識を強くする。そうしたやり取りの後、極彩色の光と共に樹海へと移動した勇者達は早速新しい機能であるカガミブネを使い、愛媛の樹海へとやってきた。

 

 新しい戦場、となるのだが香川であれ愛媛であれ樹海は樹海。変わったところと言えば、既に目に見える距離に居る敵、バーテックスの中に見慣れないバーテックスの姿が見えているところだろう。

 

 「愛媛って言っても場所は樹海だから、あんまり変わった気がしないね」

 

 「敵軍に関して言えば、以前よりも新型が増えているように見えます」

 

 「お、あいつはなんだ? 今まで見たことの無い奴が居るぞ」

 

 「とりま殴ってみたら分かるっすよ!」

 

 「待った銀ちゃん。毎度毎度突っ込もうとしないの」

 

 「んじゃ新士も一緒に行くぞー!」

 

 「いやまずは様子見を……ああもう」

 

 「あ、こら銀! 新士君まで!」

 

 「最近の銀ちゃんは新士君を避けようとせず連れていくようになったわね」

 

 「あんまり嬉しくない成長だねぇ」

 

 新たに現れたバーテックス。さながらそれは見た目のシルエットだけで言えば虫眼鏡のような姿をしていた。と言っても、レンズ部分や持ち手部分は何とも言いづらい、控え目に言っても気持ち悪い生物的な赤いナニカがそう見えているだけなのだが。

 

 球子の疑問に答えつつ、いつものような突撃思考でその新型バーテックスをへと突っ込む銀(小)。それにいつものように止めに入る新士だったが、構わず行ってしまった彼女に仕方なく並走する。止めるどころか一緒に行ってしまった2人に怒る須美、止めることが困難になっている銀(小)の姿に苦笑いを隠せない美森と楓。そうこうしている内に2人は新型へと接近し……。

 

 「とりゃああああっ!!」

 

 「はぁっ!!」

 

 斧と爪による一閃。それが新型に当たる直前、その新型が一瞬発光したかと思った次の瞬間、さながら爆弾のように爆発した。それは敵の大きさに反して規模が大きく、2人の姿が爆炎によって見えなくなる程。その爆発を見た心配そうな表情を浮かべ、須美はサッと顔を青くする。

 

 「ば、爆発した!! 新士君! 銀ーっ!?」

 

 「……ああ、危なかったぁ……」

 

 「もう少し近付いてたら直撃してたかもねぇ……」

 

 「も、もうっ……びっくりさせないで2人共……」

 

 「ごめんね、須美ちゃん」

 

 「悪かったよ須美。ま、この銀様が須美達残して戦闘不能になる訳にいかんしね。なぁに、側に新士も居るし大丈夫だって」

 

 「頼りにしてくれるのは嬉しいけれど、もう少し用心して行動するようにして欲しいねぇ」

 

 須美が叫んだ後、直ぐに2人は爆炎から吹き飛ばされるように仲間達の所へと戻ってきて何とか足から着地する。直ぐ近くで爆発を食らったように見えたが、攻撃が当たる前に爆発したこともあって敵との間に少し距離があり、爆風によって吹き飛ばされたものの爆風そのものの直撃は避けられたのだ。仮に直撃したとしても精霊バリアが守ってくれただろうが。

 

 一先ず無事を喜ぶ仲間達の外で、美森だけは浮かない顔をしていた。銀(小)の言葉が、過去に自分が体験した遠足の後の戦いを思い出させたからだ。彼の側に誰も居なかったから、あんなことになった。だが今度は、今は違う。これだけ沢山の仲間が居る。ならば彼も、誰も1人にはなったりしない。1人には、させない。そう誓う彼女と、2人の無事を喜んでいた仲間達は爆発した新型を見据える。

 

 「どうやら近付いたら爆発するタイプの敵みたいね……」

 

 「でしたら、奴らへの攻撃は私達飛び道具組が担当します」

 

 「はい!」

 

 「了解!」

 

 「任せてねぇ」

 

 「ま、程々に頑張るさね」

 

 「オッケー。じゃあ他のメンバーは、5人が開けてくれた道を通って他の敵を倒す役目ね。ガードと回避は楓に任せましょ」

 

 「わかりました!」

 

 「任せて!」

 

 件の新型バーテックス。後に“アジタート”と呼称されるようになる小型バーテックスは千景が言った通り、勇者が近付いたら爆発する爆弾のようなバーテックスである。爆発の範囲は中々広く、威力も楽観視出来るモノではない。その仕様上、接近戦タイプの勇者は近付けば2人の二の舞になる。遠距離攻撃を主にする勇者が担当するのは当然の事だった。

 

 故に、今回は普段の上空組の4人に加えて雪花が絨毯に乗り込むことになる。いつものように回避と防御は楓に任せ、地上組は遠距離組の攻撃でアジタートが排除された隙間に潜り込んで他の敵を殲滅していく形を取る。改めて各々武器や拳を構え、眼前に見える数多のバーテックスを見据え……風が声を張り上げる。

 

 「それじゃ……愛媛奪還第一戦、始めましょうか。勇者部、ゴー!!」

 

 【応っ!!】

 

 一斉に飛び出す勇者達。アジタートは真っ先に上空組が撃ち落として爆発させ、居なくなった場所に入り込んだ勇者の誰かが他のバーテックスを破壊する。アジタートはその場に浮遊するだけでなく接近もしてくるようだが、その速度は決して速くはない。爆発範囲に入る前に地上組には距離を取られ、上空組が容赦なく撃ち抜く。

 

 更に言えば、その爆発自体は敵にもダメージはないが衝撃や爆風等の影響はあるらしい。倒すことはなくとも落下したり吹き飛ばされたりして無防備になるバーテックスもおり、勇者達はその隙を容赦なく突く。アジタートの爆発に別のアジタートが巻き込まれても誘爆したりはしないが、やはりそれらの影響で無防備になるので遠距離組からすれば良い的。その為、バーテックスを殲滅する速度は普段よりも早いくらいである。

 

 

 

 (……)

 

 

 

 「……な~んか視線を感じる……」

 

 「どうした? 園子」

 

 「う~ん、なんだかね、見られてる気がするんだ。遠くから、誰かに……」

 

 「のこちゃんもかい? 自分もなんだかそんな気がしてねぇ……楓さんと若葉さんも言ってたし、同じ人かも知れないねぇ」

 

 「うーん、と言ってもあたしは何にも感じないし、あたし達とバーテックス以外に誰も居ないぞ。気のせいじゃないか?」

 

 「う~ん、そうなのかなぁ~?」

 

 「……確かに見える範囲には自分達以外に人影はないけどねぇ」

 

 そうして戦っていると、園子(小)が不意にそんな事を言い出した。すると新士も同じように視線を感じていると言い出し、2人はキョロキョロと辺りを見回す。愛媛にやってきてから視線を感じたとは楓と若葉は予め仲間に話してあってので、同じ存在の可能性もある。しかし当然と言うべきか確認出来る人間は今も戦っている仲間達くらいで、他はバーテックスくらいしかいない。

 

 話を聞いた銀も同じように辺りを見回すが結果は同じ。彼女自身、自分が視線を感じていないこともあり、2人を疑う訳ではないが気のせいではないのかという結論に至る。そもそもこれだけバーテックスが居るのだから、その視線なのかも知れない。奴らに目があるのかどうかはともかく。2人も件の存在の姿が見えないこともあり、一先ずは気のせいということで頷いた。

 

 「はぁ……はぁ……結構倒したハズなのに、全然敵が減らないぞ!?」

 

 「減った分、増えているように見えるわね……」

 

 「この感覚……倒しても倒しても増える……畑の害インセクトを思い出すわ……私の野菜を傷付けるなああああああああっ!!」

 

 「お、落ち着いてください歌野さん! あれは害虫じゃなくてバーテックスです!」

 

 「似たようなもんだけどね。でも、増えているってのは確かかも」

 

 「空から見ても増えているように見えるわね。敵の中に親玉が居て、それが子を増やしているのかも知れない」

 

 「うん、確かに。となるとその親玉を倒すのが先決なんだけどねぇ……」

 

 「ああ。親玉は何処に居るんだ……?」

 

 戦い始めてからおよそ数十分、ほぼ休むことなくバーテックスを倒し続けているが、一向に減った気がしない勇者達。倒しても倒しても涌いてくるその姿に野菜に涌く害虫を重ねた歌野が怒り心頭といった様子で鞭を振り回して周囲のバーテックスを殲滅していく。その姿に樹が落ち着かせようとするが、残念ながら聞く様子はなかった。

 

 しかし敵が減った気がしない、或いは増えている気がするというのはこれまでにもあったこと。その時と同じように敵を生み出す大型が存在するとして、その大型……親玉を倒すべく探す勇者達が、付近にはそういった存在は見受けられない。敵を倒しながら探していると、ふと園子(小)が思い付いたように呟いた。

 

 「爆発するバーテックスがいーっぱい集まってる所に居るんじゃないかな~?」

 

 「なるほど……園子ちゃんの言うとおりだと思います。親さえ居ればいくらでも爆発型を増やせるなら、爆発型を親の周りに配置して守ろうとするハズ……」

 

 「敵の集団がより厚く居る場所が怪しいということね」

 

 「多少のダメージは仕方ないな。爆発型の群れを突破し、中心に居る親玉を倒す!」

 

 「なら自分の絨毯で突っ込もうか。絨毯の周りを更にバリアみたいに光で覆えば、ダメージは最小限に出来ると思うよ」

 

 「だが、それではこちらから攻撃出来ないんじゃないか?」

 

 「ああ、“攻撃”するだけなら問題無いよ」

 

 「どういうことよかーくん。まさか内側からなら攻撃出来るとかそんな都合の良い機能が?」

 

 「うーん、それなら便利なんだけど生憎とそれは無いねぇ。まあ簡単な話だよ」

 

 「簡単な話?」

 

 「あっ、そっか~。アマっち先輩の武器は……」

 

 「そういうこと……飛ばすよ!!」

 

 話を聞き、全員がバーテックスの層が分厚い場所……特に爆発型が多く密集している場所を探す。程なくして、それは見つかった。敵が多いとしか感じていなかったが、条件を絞った上で探せば明らかに怪しい、他と比べて爆発型だけがやたらと密集している場所が。

 

 その場所の奥に親玉が居る可能性が高い以上、向かわない選択肢は無い。だが向かう先は近付けば爆発する敵が密集しているのだ、とても無傷で進めるような道ではないだろう。ならばと楓が提案したのは、光の絨毯の周りを更に光のバリアで覆い、そのまま奥まで突撃するということ。大型バーテックスの攻撃さえ耐えきる光のバリアならば爆発型の直撃でも幾度かは耐えられるだろう。

 

 しかし、バリアで覆うとなれば若葉が言うように内側に居る勇者達からも攻撃出来ない。雪花が言うような勇者達の攻撃だけ通すという都合が良い能力も無い。しかし楓は“攻撃は問題無い”と言う。どういうことだ? と誰もが首を傾げる中でいち早くその理由に気付いたのはやはりと言うべきか園子(小)。そんな彼女に笑みを返した後、彼は全員が乗ったのを確認してから真剣な表情をし……奥に向かって飛んだ。

 

  絨毯から数メートル離した状態で球状にバリアを張りながら進む。すると当然バーテックスが殺到し、爆発型もバリアが近付いた時点で自爆する。他のバーテックスの攻撃と爆発型によってバリアにダメージが入るが、厚く作っているのと楓自身の持つ勇者の力の強さもあってかなりの硬度を誇る為か直ぐに壊れるということはなかった。

 

 更に言えば、爆発型以外のバーテックスはバリアに触れると数秒の間を置いて光と消えていく。その光景を見て何人かが不思議そうに首を傾げたが、先の園子(小)の台詞を思い出した杏がハッとして口を開く。

 

 「そうだ、楓さんの武器は()()()()()……周りのバリアだって光で作られたものなら、それ自体がバーテックスを倒す武器なんですね」

 

 「その通り。なんなら絨毯で体当たりしても倒せるだろうねぇ。姉さんや球子ちゃんを光で包んでハンマー投げ宜しく投げ込んでも当てれば倒せるかもねぇ。試しにやるかい?」

 

 「「やらんわ!!」」

 

 杏の説明で納得したのか成る程と勇者達が頷いていると、楓が笑いながらそう言うと2人は少し怒りながら声を上げる。そんな2人に冗談だよ、と言いながら絨毯を進ませる楓。相変わらずバリアにダメージは入っているが、未だに壊れる様子は無い。そして最後まで壊れることなく、ヒビすら入らないまま密集しているバーテックスを突き抜けた。

 

 「抜けた! さっすが我が自慢の弟!」

 

 「褒めてくれるのは嬉しいけれど、バリアを解くから周りを警戒して。まだ周りに敵は居るし、親玉も居るハズなんだから」

 

 「……見つけたわ! 親玉はあいつよ!」

 

 「どこどこ? あ、ホントだ! 爆発する奴が生まれてきてる!」

 

 「ふふん。完成型勇者の索敵能力、見たか」

 

 「流石だな、夏凜。良し、奴の首級を取る!」

 

 「って言ってる側からどんどん爆発型が増えていってるよ!?」

 

 「うわあ……気持ち悪い、この増え方……あっという間に親玉が覆い尽くされて見えなくなりました」

 

 褒めながら後ろから抱き付く風にそう言った後、楓は周囲のバリアを解除。そうすると敵が迫ってくるが、直ぐに遠距離組が矢に弾に槍に光にと撃ち、或いは投げて爆発型を迎撃。他は絨毯から降りた近接、範囲攻撃組が倒していく。そうしながらも親玉はどこかと探していると、真っ先に夏凜が発見し、その声の後に全員がそちらへと目を向ける。

 

 それは、一見すれば船のようにも見えた。仮にそれを船体と呼ぶなら、その船体の左右に3対、計6本の棒のようなものが生え、その先に豆電球のように先の爆発型を逆さまに吊るしたようなモノが見えた。後に“カルマート”と呼称されるそれは勇者達に気付かれた事を悟ったのかその吊るしていたモノを落とし……落とされたモノはやはりと言うべきかその姿を爆発型へと変え、それを幾度となく繰り返す。

 

 そうして生まれた大量の爆発型は樹が思わずドン引きするような速度で親玉のカルマートを覆い点くしてその姿を隠し、更に数を増やしていく。爆発型が大量に蠢く姿は控え目に言っても不気味、気持ち悪いモノで、樹だけでなく他の勇者達もげんなりとしていた。

 

 「爆発型が生み出されるペースが速すぎる……厄介だね」

 

 「ならば、それ以上に速く倒す。それだけだ」

 

 「良いこと言うわね棗。こっちはあらゆる時代から、これだけの勇者が集まってんのよ! 手数で負けるハズがない! 私達の力、見せてあげるわ!」

 

 「最初に来た時はあんなこと言って楓を怒らせていた夏凜が“私達”と……! ふっ……良きかな、後輩の成長を見るのも。先輩冥利に尽きるわ」

 

 「うっさい! 戦闘中に気合いが削がれるようなこと言うなぁ!!」

 

 「ていうか夏凜が楓を怒らせたってのが凄い気になるんだが。タマでも早々無いぞ」

 

 只でさえ近付けば爆発するという厄介な特性をしているというのにそれが凄まじい速度で量産されている。対処する方法等、広範囲の攻撃で一網打尽にするか棗の言うとおり生み出される以上の速度で撃破するしかない。その上で親玉も倒さねばならない。

 

 無茶な、或いは脳筋と言われそうな方法だが、夏凜が言うとおりこの場には時代を越えて集った勇者が18人も居る。威力も、手数も、範囲だって申し分ない。決して不可能な事ではないだろう。気合の籠った声を上げる彼女の姿に、風はわざとらしく涙ぐんで全員に聞こえるように呟き、聞こえた勇者部以外の者が“えっ”と呟いて楓と夏凜の2人を交互に見た。

 

 夏凜が勇者部にやってきた時の話はしてあるが、それは簡潔にした説明でしかないので詳細は省いてある。なので、彼女がやってきた当初の“用済み”発言やそれに対して楓が怒った事など知らない。当時の事を思い出して恥ずかしさとトラウマから赤くなったり青くなったりしながら風に怒鳴る夏凜。そんな彼女の後ろから球子の声がしたが聞こえないフリをした。

 

 「それはともかくとして、力任せに突っ込むだけじゃ被害が大きくなるかもしれないわ。1人で突出し過ぎないこと。けど、纏まり過ぎないように。爆発で一網打尽にされちゃうからね」

 

 「そうだな。ならば少人数で別れ、互いのフォローをしながら戦う形で行こう」

 

 「後は状況次第で、臨機応変で~!」

 

 「愛媛に居たのが運の尽きだな、バーテックス! タマの旋刃盤のサビにしてやる!」

 

 そんな球子の言葉を最後にカルマートを倒すべく行動を開始する勇者達。その身を覆う爆発型を遠距離組に任せ、邪魔な他のバーテックスを殲滅。時折遠距離組だけでなく夏凜が短刀を投げ付けて爆発させ、風もこれまであまり使っていなかった短剣を投げ付けて倒す。爆発型は厄介だが、耐久性があまりないのでそういった小さな投擲武器でも充分倒すことは可能ではあった。

 

 しかし、それでも親玉の姿が現れることはなかった。単純に爆発型が生まれる速度に対して攻撃速度と密度が足りていないのだ。それに親玉の方だけに弾幕を集中させる訳にはいかず、こちらへと迫りくる爆発型の対処もある。それらを同時に行いつつ、更に親玉まで攻撃を通し、尚且つ倒さねばならない。大型なだけあって生半可な攻撃では1、2回直撃させたところで倒すには至らないだろう。

 

 「楓君。強化した攻撃で一気に決めてしまいましょう。このままじゃじり貧だわ」

 

 「自分もそうした方がいいと思ってはいたよ。問題は誰を強化するかだけど……」

 

 1度に多くの敵を攻撃する為、普段の狙撃銃ではなく2丁の散弾銃と4つの自立小型機動兵器で攻撃している美森と同じくその2丁の散弾銃の形をした光を両手に光の散弾をしこたまぶちこんでいる楓はそう言って目線だけを周りに動かす。

 

 今現在近くに居るのは遠距離組の4人。美森、須美ならばその身を覆う爆発型を貫通して親玉まで届くかもしれない。杏なら一気に爆発型を殲滅し、親玉までの道を開けるかもしれない。雪花はどうなるかわからないが、武器的に美森達と近い結果を期待できる。地上組も対象に入るが、強化したとしても接近戦は危険過ぎる。

 

 「……ん? いや、一気に殲滅するならあの子の方が適任か」

 

 「あの子? ……なーる、確かに」

 

 「この敵はこのまま正面から火力を集中させるより、全身を1度に攻撃して一気に爆発型の総数を減らす方がいいかもしれません。そうすれば、全方位からの攻撃が通るようになるハズです」

 

 「楓さん。私達のことは大丈夫ですから」

 

 「ええ。行って、楓君」

 

 「わかった。樹! 2人でやるよ!」

 

 「え!? う、うん!」

 

 さて、どうしたものか……と悩みながらふと楓の目に入ったのは、いつも通りにワイヤーを伸ばして多数のバーテックスを同時にスライスしたり串刺しにしたりしている樹の姿。槍を投げた後に彼の視線を追う雪花もその姿を見つけ、成る程と頷く。射程距離はともかく、こと攻撃範囲という点ならば樹は全勇者の中でも随一と言っていい。

 

 他の3人も納得し、樹にも声をかけた後に楓は地面すれすれまで急降下し、4人が降りた後に彼女のところまで進む。辿り着いた後は絨毯を消して隣に立ち、左手からはワイヤーを、右手からは2人の手……正確にはワイヤーを出しているそれぞれの右手の花飾りと左手の水晶に向けて光を伸ばして包み込む。今回の対象は“腕についている物”のようだ。

 

 (暖かい……これがお兄ちゃんの光。お兄ちゃんに膝枕されてる時に感じる温もりとおんなじ……うん、今なら何でも出来る気がする!)

 

 「樹、行くよ」

 

 「うん! やあっ!」

 

 自然と兄妹は光を纏っていない左手と右手を繋ぎ、ワイヤーを伸ばす為にもう片方の手を開いて前に突き出す。それぞれの花と水晶から伸びる緑と白が交ざった光のワイヤー……その数、1人8本。それらがぐねぐねと、或いはカクカクと伸び動き、時にその道中に入り込んだバーテックスを串刺しにしながら親玉へと向かう。

 

 やがて親玉の周囲に辿り着いた計16本のワイヤーは円を作るように動き、さながら親玉を囲う檻のような網目がある光の球体を作り出す。それはこれ以上爆発型バーテックスを親玉周辺から勇者達に向かわせない、見た目通りの“檻”の役割を果たし……。

 

 

 

 「「お仕置き(だよ)!!」」

 

 

 

 グッと兄妹が握り拳を作るのと同時に一気に収縮し、中の存在を縛り、切り裂く“攻撃”でもある。檻の中心に向かって収縮したワイヤーは親玉とその周辺の爆発型を同時に切り刻み、全ての爆発型が同時に、かつ盛大に爆発した。大量の爆発型が同時にした爆発の威力は凄まじく、流石の強化されたワイヤーも消し飛び、勇者達を爆風が襲い、親玉は爆煙の中に消える。

 

 やがて爆風と爆煙が収まり、親玉が居た方へと視線を向ける勇者達。しかしてそこに親玉の姿はあった。だがその体躯には余すところなく切り傷が刻まれ、爆発型を生み出していた6本の棒のようなものは全てへし折れ、黒煙を吹き出して徐々に落下し始めている。更にへし折れた棒からも再び爆発型が生まれようとしていた……が。

 

 「アタシの自慢の弟と妹が作った勝機! 逃すわけないでしょうがああああっ!!」

 

 「その通りだ! 切り捨てる!!」

 

 「愛媛を返してもらうぞ! おおおおりゃああああっ!!」

 

 「私も! 撃ちます!!」

 

 丸裸になった親玉の隙を逃す勇者達ではない。2人ならばやってくれると信じていた勇者達の中で先んじて動いた風、若葉、球子、杏の4人に続き、他の勇者達も各々の必殺の意思を込めた一撃を叩き込む。守りを剥がされ、倒されなくとも切り刻まれていたカルマートに耐える術も迎撃する術もなかった。

 

 やがて勇者達の攻撃に耐えきれず、その身を他の倒されたバーテックス達と同様に光へと変えるカルマート。その様を確認した後、勇者達の顔に笑顔が浮かんだ。

 

 「親玉を倒したぞ! ふはは、タマげたか。造反神の手先め!」

 

 「これで爆発型バーテックスの増産も止まりました……」

 

 「やったやった!」

 

 「勇者部大勝利! ブイ!」

 

 「今のがこの地域を支配しているバーテックスだったら、ここも解放されるハズですよね……?」

 

 「……待て、樹。油断するな。まだ不穏な気配が去っていない……気がする」

 

 「そうね、確かに樹海化も解けないし……」

 

 「だけど、敵の姿も無し……か。お約束で言えば、まだ敵がどこかに隠れているか、それとも増援が来るのか……だねぇ」

 

 カルマートを倒し、他のバーテックスの姿も見えないことから今回の戦闘は終わったと認識し、無邪気に喜ぶ勇者達。だが一部の者は未だに樹海化が解けていない事を奇妙に思い、油断なく構えている。楓は再び絨毯を出していつでも動けるようにし、棗と歌野との会話を聞いた他の勇者達もまだ戦闘があるかも知れないと身構える。

 

 全員が準備を終え、遠距離組も再び絨毯に乗る。だがまだ何の動きもない為、千景が“巫女なら何かわかるのでは?”と呟いたところで若葉の端末から着信音が鳴り響いた。相手は当然と言うべきかひなたであり、名前を確認することなく若葉は電話に出る。

 

 「む、ひなたから電話だ」

 

 「何このタイミング……あなた見張られているんじゃない?」

 

 「ははは、まさか。流石に樹海化中()見張ってないだろう」

 

 「それ以外の時は見張られているの……?」

 

 『もしもし、若葉ちゃん!? まだ張り詰め若葉で居てください! 戦いは終わっていません!』

 

 コントのような2人のやり取りの後直ぐに聞こえてきたひなたの声は切羽詰まっているものであった。その声に驚きつつも続きを促してみれば、もうすぐこの場に真の親玉バーテックスが現れるという。

 

 直ぐに全員が周囲に視線を向け、ひなたが言った“真の親玉バーテックス”を探す。しかし、やはり敵の姿は無い。隠れられるようなところも無い。警戒しつつも不思議に思い内心首を傾げていると、突如として足下が揺れ始めた。

 

 「うわわ、地震!?」

 

 「いや、ただの地震じゃない……これは……来るぞ!」

 

 グラグラと地震が起きたかのように樹海が揺れ、地上に居る全員が少し慌てつつも転ばないようにバランスを取っていると不意に一瞬だけ樹海が目を開けられない程の強い光に包まれる。その光に全員が目が眩み、再び開いた時……そこには巨大なバーテックスの姿があった。

 

 「うっわー……随分強そうなのが出てきたねー……」

 

 「今までどこに隠れてたんだよ、こんなデッカいバーテックス!」

 

 「隠れてた、というかさっきの光に乗じていきなり現れたみたいだけどねぇ」

 

 「どっちでも構わん! コイツが正真正銘ここの大ボスだな! さあ、タマ達の愛媛を返してもらうぞー!!」

 

 どうやってこの場に現れたのかという疑問はあるが、この現れた大型バーテックス、レクイエムが球子の言うとおり今回の大ボスで間違いない。以前の香川解放戦の時に現れたレクイエムFに比べれば小さいとは言えそれでも勇者達の何10倍も大きいし、何度か戦ったこともあるのでその強さは勇者達も理解している。

 

 しかし、何度も戦っているということは当然、何度も倒しているということだ。先程倒したカルマートのような厄介な相手の初見ならともかく、既にある程度能力や戦い方が判明している相手に……勇者達が遅れを取ることはない。例え激戦の後で多少疲労していようとも、これで終わりという確信と自身の、仲間の故郷を一部でも取り返す為に、この敵を倒すのだと勇者達はレクイエムに挑む。

 

 拳が、刀が、大剣が、双斧が、双剣が、大鎌が、鞭が、ヌンチャクが、ワイヤーが、槍が、矢が、弾丸が、光が連続してレクイエムへと殺到する。無論相手も反撃してくるが、大量の爆発型の爆発を防ぎきった楓の光のバリアや防御力のある風に球子、園子(小)の槍が防ぎ、仲間を守る。

 

 最終的に、レクイエムは楓の強化を使うことすらなく勇者達によって撃破され、愛媛の一部を取り返すことが出来た。その事に喜ぶものの、あくまでも今回は愛媛の戦いの初戦であり、まだまだ解放すべき地域は無数にある。香川よりも広い愛媛は、当然解放する地域も多くなる。それでもこれだけの仲間が居れば、愛媛も香川と同じように解放出来る。そう確信し、勇者達は今回の勝利の喜びを分かち合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 そんな勇者達を、気付かれないように遠くから見ている存在があった。以前に楓と若葉に気付かれ、今回も園子(小)に気付かれたことから学んだのかこれまでよりも遠く、その手に双眼鏡を手にしたその存在はにんまりと笑みを浮かべる。

 

 「はぁん、全部見ーちゃった。成る程ねー、香川を奪還したのはマグレじゃないね……男の子達も、唯一の男性勇者は伊達じゃない、か。白い男の子の方はカミサマから聞いてた以上、かな……」

 

 双眼鏡を下ろし、これまでずっと見ていた戦いを思い返しながら、その存在は立ち上がりながら感じた事を呟く。もし、その場に勇者達の誰かが居て、その声を……その顔を見たのなら、きっと驚くだろう。何せその存在は……。

 

 

 

 「……私が相手しよ。あははっ、胸が高鳴るなぁ♪」

 

 

 

 声も、そして顔も……“友奈”にそっくりなのだから。




原作との相違点

・銀突撃に新士も巻き込まれる

・親玉(仮)までの道先案内人は、この楓(絨毯+バリア)が引き受けた!

・犬吠埼兄妹強化コンプリート

・レクイエム「戦闘がほぼカットされた件」

・双眼鏡装備の誰かさん

・その他ァッ!←



という訳で、勝った! 原作11話完! というお話でした。カルマートの戦闘に文字数掛けすぎたのでレクイエムはほぼカットです←

相変わらずバーテックスはビジュアルの説明が難しいです。ゆゆゆいユーザーは皆大嫌い爆発型。遠距離連れていかなかった時に出てきた場合の絶望感よ……カルマート出てくる辺りの難易度全制覇は難しかった思い出。

さて、いよいよ出番が近くなって参りました謎の友奈そっくりさん(すっとぼけ)。勿論番外編とは別人ですので病んだりしません。多分楓とは好意も友情も紡げないのでは……でもなんだかんだ接触しそうなのが。

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)

季節、及び記念日番外編。その舞台は……

  • 本編“咲き誇る花達に幸福を”の時間軸
  • 各√の時間軸(絡みはお相手固定)
  • ゆゆゆい軸(過去イベントから抜粋)
  • DEif軸(同上)
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