グラブルでリミナル姉さん当たって嬉しい。ファンリビでも遂に四糸乃が来てくれて狂喜しました。可愛過ぎる……。
最近また酷い頭痛が再発して中々執筆速度が上がりませんでした。1万文字ちょい書くのにどんだけ掛かってんだと……それでも待ってくれている方、読んでくれている方、感想を下さる方には本当に感謝。お陰様でエタることなく続いています。
今回もまた赤嶺ちゃん登場回。それでは、どうぞ。
(4人目? 4人目って言った? そこに居る
謎の友奈達に似た容姿の少女は“4人目”という言葉に混乱していた。折角ミステリアスな雰囲気と共に出たというのにそんな空気はすっかり壊れ、お互いに謎の少女の登場と予め聞かされていた情報との差異に頭上に疑問符を撒き散らし、命令を受けていたとされるバーテックスでさえ動きを止めている。が、一旦そんな疑問に蓋をして最初に動き出したのは雪花であった。
「ま、また“友奈”が増えたって感じ? 確かに反応とかそっくりだけど、でもなんか……」
「……まぁいっか。ふふ……」
「あー……ああいう笑みはねぇ……ヤバい笑みなんだよねぇ。敵だからこそ笑ってるパターン、あるよ。頑張って繕ってる感もちょっとあるけど」
雪花の声が聞こえたのか、同じように疑問に蓋をした少女が妖しく笑う。それは少なくとも友好的に見えるものではなく、彼女の居る場所や先のバーテックスに命令しているという発言からも味方であるとは考えにくかった。が、やはり感じた疑問は大きかったのか少し表情は固かった。
とは言え、彼女が動き出したからには止まっていたバーテックスも動き出す。勇者達も自然と対応せざるを得なくなり、少女にばかり意識を向けていられなくなる。
「それじゃ、後は任せたよ」
「ウェイト! あなた結局誰なのよ!?」
「うわ、バーテックスの大群がまた来た!」
「まずはこのバーテックスを倒すことが先ね。その後であの友奈モドキを探す!」
(モドキ、ねぇ……友奈と高嶋ちゃんという例がある以上、あの子の名前も“友奈”という可能性は充分にあるけれど……いや、あの子について考えるのは後か)
近くのバーテックスに手を振り、歌野の叫びに答えること無く後方へと跳んでいく少女。何人かが咄嗟に追い掛けようとするが、その行く手を阻むようにして新たなバーテックスの大群が現れる。さながら少女の言葉に従ったかのように。
謎は一切解けていないが、今は考察よりも目の前の敵が優先だと戦いを続ける勇者達。やはりその動きはどこか組織的、効率的でこれまでのバーテックスの戦い方とはまるで違う。敵を倒せばその隙を突くように攻撃が迫り、カバーしようと近くの者が動く前にその者自体に攻撃を加える。相変わらず絨毯の上の遠距離組は集中的に狙われ、空を飛べるアドバンテージを活かしきれない。
が、それでそのまま押しきられるようであればとっくの昔に勇者達はどこかで敗北している。次第に相手の新たな動きにも慣れ始め、ある者は技術で、ある者は強引に、ある者はより広範囲に、ある者はより素早く、各々の持ち味を活かして敵を殲滅していく。楓など自身の遠距離攻撃を止めて完全に絨毯の操作に集中し、時に前面に展開したバリアで敵を空中で轢いて吹き飛ばして強引に距離を取っている。そうして、その戦いを割と近くで見ていた少女がバーテックスが粗方倒された頃にポツリと呟いた。
「すごいね。やっぱり簡単には無理かぁ」
「意外と近くに居たわね……さっきのバーテックスの群れ、あんたの指示に従っているように見えた……あんた、いったい何なのよ」
「あ、自己紹介、だね。私の名前は……
「やっぱり名前は“友奈”か……でもあかみね? 確か、大赦の上の方の家名に同じ読みの名前があったねぇ……」
「そうだよ。大赦ではそこそこ有名な家だよね。そこの赤嶺さん家の友奈だよ。君ももしかしたら、同じ名字だったかもしれないね?」
「え、あの人はもしかしたら赤嶺さん家じゃなくて雨野とか犬吠埼だったってことなのか?」
「いや、違うと思うよ銀ちゃん。この場合、自分が養子となる場所が今の“雨野”じゃなくて“赤嶺”だった可能性があったってことじゃないかねぇ」
それは素直な称賛から来る言葉だった。実際最初は押され気味……とまではいかずとも対応に困っている様子だったのだ。それが少し経てば困るどころか粗方殲滅しているのだから、勇者達の対応力と成長速度は凄まじいモノがある。そんな声が遠くに行ったと思っていたら思いの外近くに居たのだから少し驚く夏凜。だが直ぐに右手の刀の切っ先を彼女に向けて問い掛けると、彼女の方から自己紹介をし……その名前に、小学生組と夏凜、そして楓が驚きの表情を浮かべた。
赤嶺家。乃木、上里、高嶋、土居、伊予島、鷲尾、三ノ輪、白鳥、そして雨野……は楓達の時代には無いのだが、それらが大赦の中で高い地位にいる名家の名前であり、彼女の名字にある赤嶺もその1つに名を連ねている。まさか目の前の友奈に似た少女名前だけでなく名字にも驚かされる事になるとは思ってもいなかったことだろう。
特に楓の驚きは大きかった。確かに彼女の言うとおり、過去の己……新士の養子先が赤嶺になった可能性はある。しかしその可能性がハッキリと分かったのは遠足が終わった後の戦い、その後の病院の中での話である。そんな、勇者の中では自分と中学生の園子と銀、そして美森くらいしか知らない情報を彼女が知っている。驚くなという方が無理だった。
「……友奈だけど、友奈ちゃんじゃない」
「似ているけど、高嶋さんとも神奈さんとも別人だわ……」
「……こ、こんにちは。結城 友奈です」
「うん。ある意味、私の後輩だね~。よろしく……結城ちゃん」
「コーハイ?」
「私はさ……神世紀序盤の時代から召喚されたから」
「こんにちは、高嶋……友奈です」
「高嶋さん。貴女は先輩。貴女が居なければ私は……
新たな“友奈”の存在に恐らく最も動揺が大きいのが美森と千景の2人。周囲の者達が“コイツらは……”と苦笑いだったりジト目だったりを向けている隣で、友奈と高嶋の2人が赤嶺に自己紹介をしていた。その返しに、彼女は意味深に言葉を紡ぐ。
“後輩”と“先輩”。そして高嶋が居なければ自分達は存在しなかったという台詞に、高嶋は意味が良く分からず首を傾げる。つまり、彼女は園子達と若葉のように、自分の子孫なのか? と問い掛けるも、それは手を軽く振って否定された。
自分は高嶋 友奈の子孫ではない。だが、同じ“友奈”であり、逆手を打って生まれたからその名前になるのだと言う。
「ちょっとちょっと、分かるように説明しなさいよ」
「うーん、説明はあまり得意じゃないんだよね……擬音が入りそうで。どーんときてばーんとか」
「ああ、最初に出てきた時もばーん、とか言ってたねぇ」
「くっ、別人だと言われているのにこの共通点……」
「私がコーハイなら、神奈ちゃんもコーハイになるのかな? 神谷 友奈って名前なんだけど……」
「私より後に生まれたなら、結城ちゃんと同じコーハイになるかな」
「う~ん、色んな時代の人が入り雑じって、なんだかややこしい~」
「人数も多いしねぇ……あの人が神世紀序盤から来たのなら、若葉さん達とも別の時代から来てる訳だし」
「園子と新士もややこしくしてる材料の1つ……2つ……いや、あたしと須美も合わせて4つだけどな……」
説明が長いのか、それとも聞き覚えのない単語が出て来て小難しいのか夏凜が改めて説明を求めるも赤嶺はそう言ってまた拒否するように手を振る。確かに“友奈”ならばありそう……と彼女達を知る勇者達が納得していると友奈が神奈について聞き、赤嶺は先程と違って曖昧気味に答えた。何せ彼女自身、2人と違ってその神奈の事を知らないのだから無理もない。
勇者部がある神世紀300年、その2年前、西暦と3つの時代から勇者が集まっている現状に加えて新たな時代が出た事で混乱気味の園子(小)と同意するように隣で頷く新士の2人に、良く考えてみれば同じ顔どころか子孫、及び同一人物が自分含め4人も居るので銀(小)はどこか疲れた様子で首を横に振った。
「……ズバリで聞くけどさ、赤嶺さん家の友奈さん。貴女、“敵”か“味方”かどっちよ」
「ちょ、雪花?」
「私さ、なんとなく分かっちゃうんだよね……攻撃を仕掛けてこようとする意思みたいなものが」
「アタシはわからないけど……」
「姉さんは基本的に鈍いからねぇ」
「どういう意味よ!?」
「あはは、風さん達は分からなくていいよ。で、敵なの? 味方なの?」
雪花のあまりにストレートな問い掛けに風が嗜めるように名を呼ぶが、彼女の言葉に首を振り、楓がからかうように呟く。それをしっかりと聞いた彼女が憤慨し、そんな姉弟のやり取りに苦笑いする雪花。しかし直ぐにその目は真剣なモノを宿し、改めて問う。この場に突然現れた彼女はどうなのかと。その返答は短く……そしてハッキリとしたモノだった。
― ……敵だね。私は造反神の勇者だから ―
それを聞いた勇者達の動揺は決して小さくないし、また新たな疑問も浮かぶ。造反神も自分達が神樹によって召喚されたように勇者を召喚出来るのか。仮に本当にそうならば、目の前の彼女以外にも造反神側の勇者が居るのか。だが、少なくとも目の前に1人居る。自分達と同じ“勇者”が。
「さて……自己紹介は終わり。戦闘再開で」
「えっ? わぁ!? またバーテックスが沢山!」
「とにかくこのバーテックス達を倒してあいつを……」
それだけを告げ、再び姿を消す赤嶺。次の瞬間にはまたどこからともなく大量のバーテックスが現れ、勇者達に迫り来る。直ぐに勇者達は戦闘態勢を整え、風が言うようにバーテックスを倒して赤嶺を追い掛けようとする。
「で……君だけはちょっと付き合ってもらおっかな」
「っ!? ぐっ!」
「「えっ?」」
「っ、楓君!?」
が、次の瞬間には姿を消したと思っていた赤嶺が上空のバーテックスの上から現れ、絨毯の上の楓に奇襲を掛けてきた。彼が彼女の予想外の動きに反応出来たのは直感か、それとも経験か。上空からの右ストレートを両手を✕字に重ねて防ぎ、だがそのまま絨毯に着地した赤嶺が拳を振り抜くと左の水晶の上から押し込まれるように更に後方へと吹き飛ばされる。
須美と杏が反応したのは2人の姿が絨毯の上から後方の樹海の奥へと消えた後。美森は反応こそ出来ていたが楓に当たることを危惧して2丁の散弾銃を構えるだけに終わり、地上組は距離と時間的に手出しする暇が無く、2人の姿が消えていくのを見ていることしか出来なかった。それ程の短い時間での出来事。当然直ぐにそちらへと向かおうとするが、大量のバーテックスが行く手を阻むように動き、勇者達をその場に釘付けにする。
「あいつ……っ!!」
「風さん、バーテックスを倒さないと追うことも出来ん……今は」
「分かってるわ……邪魔するなら1匹残らず……潰してやる!!」
「にしてもなんでかーくんだけ……いや、考えるのは後々。さっさと倒すよ」
「楓くん……直ぐに行くからね」
「彼女、本当に敵なのね……なんなのいったい……」
今にも噴火しそうな火山のようにな怒りを見せる風を宥める若葉。分かってるとは言いつつもその振るわれる大剣は何時もより荒々しい。それも仕方ないと思いつつ、雪花は冷静に楓だけが攻撃された理由を考え……1度止めて直ぐに敵の殲滅へと移る。友奈も不安げに呟きつつ拳を握り締め、千景が二転三転する状況と赤嶺の行動に頭を悩ませて首を横に振る。
「きゃあっ!?」
「ひゃっ!? じゅ、絨毯が!」
「くっ、楓君が居なくなったから……?」
「あっ、あんず達が落ちたぞ! 楓の絨毯が消えてる!」
「絨毯を操作していた楓がいなくなったからだろう。東郷達を守りながら戦うぞ」
「オーケー! 任せなさい!」
楓と赤嶺の姿が無くなってから10数秒程経った時、突如として残っていた光の絨毯が跡形も無く消え去り、乗っていた3人が落下してきた。その理由を美森、棗は彼が居なくなったからだと予想するがこれは当たっている。イメージで形作り、動かせるということは当然、そなイメージが出来ない……想像が止まれば形を保てない。つまりは楓が絨毯を想像出来る状況ではなくなった事を意味する。
その事に気付いたのか……いや、例え気付いてなくともやることは変わらない。1秒でも早くバーテックスを殲滅し、2人の元へと向かう。その為に勇者達は素早く敵を倒すために各々の武器を、拳を振るうのだった。
一方、赤嶺に吹き飛ばされた楓は仲間の姿が見えなくなったところでようやく着地する事が出来た。予想以上に吹き飛ばされた事に驚きつつ飛んできた方向に顔を向けると、丁度赤嶺が彼の前に降り立つところであった。
「……皆から自分だけを引き離してどういうつもりだい?」
「そう怖い顔しないで欲しいなぁ。私は今回は自分で戦うつもりはないんだ。ただ、君にだけはちょっと用事があってね。私が……じゃなくてカミサマが、だけど」
「カミサマ……造反神が、自分に?」
「犬吠埼 楓くん……君に、私達の仲間になってほしいんだ」
きょとん、と言うべきか、それともぽかん、と言うべきか。あまりに予想外の言葉に楓は思わず頭が真っ白になり、そんな表情を浮かべていた。これが絨毯が消えた理由なのだが、それはさておき。
「……何の冗談だい?」
「あはは。まあ、そうなるよね。だけど冗談じゃないんだ。カミサマは君を私と同じ“造反神側の勇者”にしたいと思ってる。私はそれを伝えただけ」
「仮にそれが本当だとして、なぜ自分を?」
「それは私にはわからないなぁ。だけど、君を仲間に引き入れようとしてるのは本当。皆から引き離したのも一対一で勧誘する為……どうかな?」
表情を引き締め、いきなり何を言い出すんだとばかりに聞き返す楓に赤嶺もその反応も当然だと小さく笑う。彼女自身、これまで敵対してきた彼を勧誘したところで本当に仲間になるなんて微塵も思ってはいない。しかし彼女はあくまでもカミサマ……造反神からの言葉を届けただけでそんな自分の考えは関係ない。
何より、どんな理由があってわざわざ彼を勧誘するのか……造反神の意図がわからないのだから。無論、予想は出来る。楓も理由を予想するが、確証には至らない。だがまあ、答えは決まっている。考えるまでもない。
「断るよ。君も何か理由があって造反神の味方をしているんだろうけれど、自分には皆から離れてまでそっちの味方をする理由が無いからねぇ」
「残念、断られちゃった。でも、断られたからって諦める訳にもいかないんだぁ……だってカミサマからは、無理やりにでも連れてくるように言われてるしね」
きっぱりと、楓は勧誘を断る。そもそもこの世界に呼ばれたのはその造反神を鎮める為であり、赤嶺の仲間になるという事は同じ目的を持つ仲間達を裏切る事に他ならない。これまで共に戦い、日常を過ごした彼女達を彼が裏切る訳がない。
赤嶺もそれは理解している。樹海で見た戦いや連携、合間の会話からも彼らと彼女らの絆の強さは言うまでもない。それこそ何かしら“理由”を用意しなければ誰1人として勧誘を受けたりしないだろう。
だが、ただ勧誘するだけが目的ではない……というより、それは手段の1つ。造反神からは無理やり、力ずくでも連れてくるようにと言われているのだ。ならば断られたところでやり方が口答から腕っぷしに変わるだけの事。そう言うや否や彼女はスッと構えを取り、反射的に楓も構える。
お互いの間にピリピリとした緊張感のある空気が流れ、無言で睨み合う。赤嶺はうっすら笑みを浮かべ、楓は表情を消す。
(彼女がどんな攻撃をしてくるかはわからないけど、恐らくは友奈達と同じ徒手空拳。右手の武器だか手甲だかが気になるが接近戦が主体なのは間違いないだろうねぇ……)
そんな風に楓が目の前の彼女の戦い方の考察をしながら赤嶺と睨み合い、少しばかりの時間が経つ。すると赤嶺はクスッとまた小さく笑い、構えを解いて肩を竦めた。
「……やーめた。別に今回は戦いに来た訳じゃないしね」
「……」
「そう睨まないで欲しいなぁ。私は本当に今回は自分で戦う気はないんだよ? それに、いつの間にか向こうも終わったみたいだし」
「えっ?」
「楓! 無事ね!?」
「あっとと……大丈夫、怪我なんてしてないよ」
「追い付いたぞ赤嶺!」
戦いに来た訳ではないと言われても直ぐに信じられる訳がなく、楓は構えを解かない。なんなら2つの水晶から光で過去に使っていたような爪を作り出していつでも攻撃出来るようにしている。そんな彼に苦笑いを溢し、再度戦うつもりは無いという彼女。そしてその視線の先には、この場に跳んでやってくる勇者達の姿が映っていた。
驚く彼の近くに真っ先にやってきたのは風。彼女はそのまま楓の肩を掴み、全身を軽く叩きながら怪我が無いかを確認する。そんな姉にされるがままになる弟の周囲に続々と仲間がやってきて、若葉が刀の切っ先を向けながらそう言った。向けられた赤嶺はまたうっすらと笑い……どこか嬉しそうに口を開く。
「わぁ、すごいね。こんなに早く倒せるなんて」
「……赤嶺、友奈。聞きたいことがある。愛媛に来てからずっと視線を感じていた……あれはお前なのか?」
「あ、乃木 若葉だ。英雄の乃木様だ」
「答えろ」
「そうだよ、あなた達が香川を奪還したって聞いてね、私が行かなくちゃって思ったから。カミサマからのおつかいもあったしね」
「その“おつかい”が自分って訳だ」
「おつかいだかなんだか知らないけど、なんで楓なのよ!」
「それは私に聞かれてもわからないかな。カミサマに直接聞いて貰わないと」
それが出来たら苦労はしない、というのが赤嶺の言に対する全員の心境である。香川を奪還したとはいえ造反神の影も形もない。つまりは親玉の姿すら知らないのだから。しかし、先程の行動と今の話で勇者達は確信した。どういう訳か、楓が造反神に狙われているのだと。
彼を守る為だろう、友奈と美森が楓と赤嶺の間で入るように前に出る。風など大剣は構えて思いっきり睨み付けている程。過去の彼でもあるからか新士の周りにも同じ小学生組が守るように立ち、本人は苦笑いを浮かべている。
「で……実際貴女は何なの? ゲームで言うネガ……もしくはダークサイドキャラということ?」
「まあそういう感じかな? 私は造反神側の勇者。だから造反神が造ったバーテックスを操れる」
「造反神が暴れまわれば、神樹様がバラバラになって……四国が滅びるかも知れないんですよ!?」
「うん、勿論知ってて味方しているよ。私の時代ならではの事情があってね。今の説明だと難しいかな……えーと、私の時代の人なら造反神に協力する理由が分かると思う」
「……生憎と、自分達の中に君と同じ時代の人間は居ないねぇ」
「そう。だからあなた達に理由を話したところでピンと来ないと思うよ」
「要するに、殆ど問答無用って訳? 困ったわね、バーテックスとなら戦えるけど……」
「人間相手は不馴れかな? 逆に私は対人戦の方が慣れてるんだよね~、時代柄……」
千景に改めてどんな存在なのかと問われ、思いの外あっさりと答える赤嶺。同じ四国の人間なのに造反神になぜ協力しているのかと叫ぶように聞く杏にもあっさりと頷き、その理由を答える……が、それは勇者達にとって要領を得ないモノだった。
楓が言うように、今の勇者と巫女達に彼女と同じ時代からやってきた者は居ない。その為、言ったところで理由が分からないと言われるのは分かる。最も、考えたところで残された地である四国を滅ぼしかねない造反神に与する理由など浮かばなかったが。
結局理由は分からないままだが、それでも敵である以上は戦う事になるだろう……楓が居ることで冷静になった風がボソッと呟くと、赤嶺はまた笑いながらそう言った。勇者達の相手は基本的に……というか全てバーテックスであり、対人戦など鍛練くらい。そもそも基本的に良い子達なので人に暴力を振るうという事が無いし、選択肢にもまず入らない。なので、同じ勇者であり人である赤嶺と戦う事に躊躇いがある者が多かった。
「まぁあれだよ。彼にも言ったけど姿を出したのは宣戦布告と名乗りが目的だから、戦力整うまで今は引くよ。最後のお土産は置いてくけどね。今度はアタッカくーん、多めに来てねー」
「わわ! メニー、バーテックスぅ……アタッカ君あんまり得意じゃないのに」
「それじゃまたね。先輩に後輩、楓くん。そして……あはっ、お姉様」
「お、おね!? 先輩と後輩が私と結城ちゃんで、楓くんはそのままだから……お姉様って誰に言ったんだろ?」
「タマ、という線が濃厚だな……滲み出る包容力に惹かれてしまったのか?」
「……球子ちゃんは寝てるみたいだから誰か起こしてあげてくれるかい?」
「寝言って言いたいのか楓ぇ!?」
「なんだか、私の方を向いていたような……?」
赤嶺の掛け声と共に再度現れる大量のバーテックス達。その中には歌野が苦手と言う、ホイッスルのような形をしたバーテックス、アタッカの姿がこれまでよりも多めに存在していた。また出てきた、という不満を顔にする勇者達に手を振り、高嶋と友奈と楓、そして棗と順番に目を向け、嬉しそうに言いながら赤嶺はまた姿を消した。
彼女の口から出た“お姉様”は誰だと誰もが不思議に思う中、キメ顔をしながら胸を張る球子に少し思案していた楓が遅れて呟くと何人かから吹き出したような音と共に球子が憤慨して両手を振り回しながら彼に迫るも額を押さえられて届かない。そんなギャグマンガのような展開に目を向けず、棗は不思議そうに首を傾げていた。
「話している場合じゃないぞ。今はあのバーテックス共を掃討する」
「頭がパンクしそうだけど、とにかくここは敵を倒せばいいんでしょ? よーし、それなら、来い!」
「そうよね、狼狽えるより、やることをやらないと。それでこそ完成型ってもんだわ!」
「楓君、大丈夫? あの子に何か……」
「いや、本当に何もされていないよ。少し、話をしただけさ……内容は、樹海から戻ってから話すよ」
そうして会話を終えた後、勇者達は再度戦い始める。先程と違い楓が居るので遠距離組は彼の作る絨毯に乗り、以前のような厄介な大型も居ないので問題無く制空権を握る。それによる援護とここまでの戦いで温まった体と闘志が勇者達の今日1番の力を引き出し、素早く敵の殲滅に掛かる。
ハッキリ言って、それは消化試合に等しかった。1度はその人間的な戦い方に惑わされたが経験してしまえば対処も出来る。得た経験は勇者達を更に成長させ、更に殲滅する速度を早め、連携を無駄無く行えるようになる。
最後には紫色の3つの玉を縦に数珠繋ぎにしたモノの上に触手を垂らしたクラゲのような……相変わらず説明に困る姿をした大型バーテックス“ドルチェ”に怒りを発散させる目的も含めて楓が強化した大剣を風が振り下ろし、真っ二つにしたのを最後にその戦いは終わり……少しの間を置いて勇者達は極彩色の光と共に元の世界へと戻るのだった。
「そうですか……赤嶺 友奈、さん……謎の存在ですね。こちらが想定しなかった事態です」
(造反側の勇者……試練の1つなんだろうけれど、まさか勇者の召喚を行うなんて)
戻ってきた勇者達が部室にてお留守番組に今回の戦いの出来事を語ると全員が難しいになる。それは神樹である神奈とて例外ではない。彼女にとっても“造反神側の勇者”というのは予想外だったようだ。
「占いで大変な事が起きる、みたいな結果が出て気になっていたのですが、こんな事になるなんて……」
「じゃあこれからは造反神側の勇者と戦う事になるんだよね。勇者対勇者……」
「バーテックスを倒すのはいいけど、対人はなぁ……どうにも……」
「っ、何!? いきなり吹き荒ぶ風!?」
「なんで急に……いや、まさか!」
樹は前日の夜にした占いの結果を思い返し、今回の戦いが苦しいものであり、敵の勇者の存在に苦い表情を浮かべる。同じように水都もまた同じように顔を歪め、銀(小)の呟きに部室の空気が暗くなる。
バーテックスという人類の敵、化け物相手ならば何の躊躇も要らない。が、相手が自分達と同じ人間となれば話は別。そもそも喧嘩さえ滅多にせず、例えしたとしてもせいぜい口喧嘩程度で暴力等ほぼ振るわないのがこの場に居る面々だ。例え敵であったとしても同じ人ならばその力を振るうことを躊躇うのは仕方の無いことだろう。
だが、敵として出てきた以上いずれは彼女本人とぶつかることは必死。その際にちゃんと戦うことが出来るのか……そう悩む者が多い状況で、不意に部室の中に風が吹き荒れた。それはさながら小さな台風のようで、生身では目を開ける事さえ困難な程のそれに千景が驚き、新士が何かに気付いたようにその発生した場所に顔を向ける。そして、その風が止んだ時。
「皆ー、もしかして私の噂をしてたのかな? どうも、赤嶺 友奈です……あ、本当に4人目が居る」
樹海で別れた筈の……敵である造反神側の勇者の赤嶺 友奈が、勇者服姿で堂々と部室に姿を現した。
原作との相違点
・お怒り風姉さん
・勧誘される楓
・勧誘する赤嶺
・弄られる球子
・4人目が本当に居てびっくりな赤嶺
・そろそろこの原作との相違点は要らないんじゃなかろうか←
という訳で、原作12話の終わり~13話の始まりというお話でした。ESifではここで記憶の無い楓が赤嶺と共に現れましたが本編では勿論そんなことは無く。初接触の神奈と赤嶺はお互いにびっくりでしょうね。
さて、この後の展開としては皆様も予想しているかも知れませんが楓君があれやこれやそれやどれやなことになるかもしれません← ESifのようになるかもしれませんし、女体楓が本編に登場するかもしれませんし、記憶関連で友奈&東郷の逆鱗とトラウマに触れるかもしれませんし、赤嶺がヤンデレ坂を転がり堕ちるかもしれません。さあどうなることやら。
それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)