暑くなってきたせいか、思いっきり体調を崩してしまいました。コロナの検査にも行ってきましたが陰性とのことで一安心。皆様も少しでも違和感や不安があれば直ぐお医者様へ。
投稿までの間ガチャ結果は可もなく不可もなく。セイウンスカイ欲しかった……ゆゆゆいも4周年絢爛ssr誰も来なかった←
体調崩してたこともありライズも集会所6から進まず。ファンリビで琴里も当たらず。でも四糸乃が必殺技3になったのでよし。
今回は予告通り番外編です。それではどうぞ。
夢を見た。
『ねぇ、先月にアタシの誕生日を皆が祝ってくれたみたいに、今月も誕生日を祝ってあげようと思うんだけど……』
『いいですね! 今月は6月だから、夏凛ちゃんが誕生日ですよ!』
『若葉ちゃんもそうですね。6月20日なので』
『そっか……でも、ごめん。その2人は悪いけれど、アタシはあの子を……楓を主に祝ってあげたいの。あの子も6月生まれだから』
『風先輩……』
『……アマっち、6月生まれだったんだ。そう言えば教えてくれなかったな~……』
『知ってたら、あたし達が祝ったのにな……』
時間の関係か、小学生組の4人と……何故か、中学生の楓の姿がない部室でそんな話をしている夢を見た。
『……確か、元の世界だと新士君は』
『そう。だからあの子には祝ってあげられなかった分の……3年分のお祝いをしてあげたいのよ』
夢の中の私の言葉に疑問を持つ。どうして3年分なのか。確かに私は楓の誕生日を祝ってあげられなかった期間があるけど、それは養子に行った後の6年生の間……1年だけだ。なのに3年分となれば、中学1、2年も祝ってあげられなかった事になる。でも、雪花の悲しげな表情といい期間と言い、それじゃまるで……。
『私も……お兄ちゃんが
6年生の時に楓が……死んだみたいじゃない。
「おはよう、姉さん」
朝起きていつものように朝食を作って居ると、後ろからいつものように楓の声がした。振り返ってその姿を見ると、何故だかいつも以上に愛おしく感じて……思わず作っていた朝食そっちのけで楓に飛び付くように抱き付いた。
「おっとと……姉さん? どうしたんだい? 急に」
「……何でもないわ。ちょっとこうしたかっただけ」
夢を見た気がするけど、内容は覚えていなかった。ただ、起きた時に涙を流していたから、何か悲しい夢を見たんだろう。そのせいか、楓を抱き締めていると……抱き返されているととても安心する。弟が今此処に居ることが、どうしようもなく安心するんだ。
「……ん、もう大丈夫。さて、樹を起こして朝御飯食べましょ。今日は部員でやりたいことあるしね」
「おや、何かするのかい?」
「今は内緒。部室に全員集まってからねぇ」
そう言って笑い、楓には樹を起こしに行ってもらい、朝食作りに戻る。今はもう、起きた時の物悲しさは無い。あるのは、今日はどうやって楓達を祝ってやろうかというワクワク感。
そう、今日は6月1日。楓と夏凛の誕生日がある月の始まりなのだ。あ、目玉焼きちょっと焦げちゃった……。
そんな出来事があった朝から数時間、場所は部室。神世紀組は勿論小学生組、平成組全ての部員が集まった……否、楓達と夏凛、若葉は居ないがそれ以外の者が集まった辺りで、友奈がわくわくとしながら風に問い掛ける。
「風先輩風先輩! 今日は何をするんですか?」
「先月、アタシの誕生日を皆が祝ってくれたでしょ? だから、今月は6月生まれの部員をお祝いしようと思ってねぇ」
そう言われて部員達の脳裏に浮かぶのは、風の言った先月……5月生まれの彼女を祝った誕生日の事。愛媛奪還前……ふとした疑問からこの不思議空間の時間は季節の移り変わりはあれど主観的な時間……つまり、本来流れるハズの時間は止まっていると発覚。神樹が四季や朝晩を演出しているだけで、時間そのものは動いていないのだと言う。その為、勇者達は歳を取らないし成長もしないのだ。
それはさておき、1日遅れで風の誕生日に気付いた部員達は直ぐにケーキを買い、1日遅れのバースデーパーティーを決行。その頃には香川も殆ど解放して安全地域も多かったので敵に襲われることもなく、無事に楽しくも騒がしいパーティーとなった事はまだ部員達の記憶に残っている。
「今月誕生日の方、どなたか居るんですか?」
「夏凛ちゃんが6月だよ」
「若葉ちゃんもですね。6月20日ですから」
「後は楓とちび楓もね。6月8日だし」
【えっ!?】
風が言った瞬間、驚きの声が上がる。その発生源に部員達が目を向けると、そこに居たのは園子達、銀達、そして須美の5人であった。
「アマっちの誕生日……知らなかったんよ~」
「そう言えば聞いた事無かったなー。6月8日ってあたし達の時間じゃもう過ぎてるゾ」
「話題に出たこともなければ気にしたことも……そう言えばそのっち達の誕生日も知らないわ。こ、これは友達としてどうなのかしら……」
「あたし達の方でもとっくに過ぎてるな……ん? 須美は驚かないんだな」
「だって私は中学生になってからちゃんと楓君をお祝いしたもの」
「え~!? わっしーだけズルい~!」
意外と言うべきか、彼女達は楓達の誕生日を知らなかったのだ。元々楓は自身の事をあまり話す方ではないし、小学生組は学業に訓練に戦いにと忙しかったし、中学生の2人は散華の影響で大赦に奉られていた頃、お祝い等出来るハズもない。その間安芸に日常風景を教えてもらってはいたが彼女とて本来は2人のお世話役、毎日毎日確認出来る訳がない。唯一美森だけは中1の頃から同じ勇者部として祝っている。なので親友と過去の自分達から嫉妬の視線を甘んじて受けていた。
「で、でもそれなら4人の誕生日を一緒に祝っちゃう~?」
「い、祝っちゃお~♪」
「ふふ、皆さんにお祝いされてはにかむ若葉ちゃんが目に浮かびます♪」
「いいんじゃないの? 一緒にやれば盛り上がりそうだし」
「ああ、良いと思う」
「楽しみだね。今回はどんな誕生日になるのかな?」
「神奈ちゃんの時もお祝いしないとね!」
「楓達は老人会からの依頼でそっち行ってるし、夏凛と若葉は剣道部の相談に乗ってる頃だからしばらく来ないわ」
「皆へのプレゼントかぁ……やっぱり好きな物がいいよね」
気を取り直して……と珍しく少し慌てた様子で言う園子達。そんな彼女を微笑ましそうに見ながら、ひなたははにかむ若葉を想像して顔を蕩けさせる。勿論雪花、棗をはじめとして皆乗り気であり、神奈もまた前回のような楽しい誕生日を想像してか笑いながら首を傾げ、高嶋の言葉に曖昧な笑みを浮かべる。神である彼女に明確な誕生日は存在しないのだからそれも仕方ない。敢えて言うなら、今の姿で初めて姿を楓の前に現した遠足の翌日……7月11日になるだろうか。
そんな会話をしている隣で風が今この場に件の4人が居ない理由を告げ、友奈が誕生日に渡すプレゼントを考える……が、これが意外に纏まらない。何せ好きな物を……となっても、夏凛と言えばにぼしかサプリ。それは同じ時間軸の者達以外にとっても最早共通の認識。が、幾ら好きとは言えそれらをプレゼントととして渡すのは微妙だろうと球子と共に数人が首を振る。そして、問題なのは夏凛だけではない。
「……プレゼントって意外と難しいのかも。私達だって若葉さんが好きなものってあまり想像が……」
「……そう言えば、楓の好きなものってなんだろうな。あんまりあれが欲しいこれが欲しいって聞いた事ないゾ……」
「ひなたさん、風さん、何かありますか?」
「若葉ちゃんは毎年何を渡しても喜んでくれますからね」
「楓だって同じよ。何なら“祝ってもらえるだけで充分だからプレゼントはいい”なんて言って両親を困らせてたわ」
「あはは……でも楓くんがプレゼントを要求するのって全然想像つかないかも」
杏がポツリと呟くと、銀(中)も悩み初め、釣られるように周りの者達も悩み初める。楓も若葉も夏凛も物欲が強い方ではなく、自発的に買い物に行くことも少ない。せいぜい日用品や本程度、夏凛は一人暮らしなのでにぼしやサプリを除けば日々の食材や弁当くらいだろう。これまでの勇者の生を見てきた神樹こと神奈でさえ、彼彼女があれが欲しいこれが欲しいと言っている姿など想像も出来ないし見たこともない……気がする。
「それなら、サプライズ要素を入れるのはどう?」
「ええ。どうせなら凄く喜ぶものにしたいです。うーん、これは悩みます」
「サプライズはアリなんだ……」
「ぐんちゃんは何か良いアイデアある?」
「乃木さんが喜ぶもの、ね……思い付きそうもないわ」
「園子は何か思い付かないか?」
「うーん、カエっちもアマっちも何でも喜んでくれそうだけど~……」
「夏凛もなんだかんだ喜ぶでしょうし、これは時間掛かりそうね……」
悩む、その一言に尽きる。歌野が言ったようにサプライズの誕生日パーティー、贈り物をするのは良いだろう。折角の1年に1度の特別な日……当日にする訳ではないとは言え……なのだ、喜んで貰う方が断然良い。問題なのは、やはりプレゼントの内容。特に何を渡せば喜ぶのか……否、余程酷い物でない限り何を渡しても喜んでくれそうなのが問題なのだろう、想像も出来ない2人。それは何を食べたいかと聞いたら何でもいいと返ってきたような感覚に似ていた。
そうしてあれこれ話し合ってはみたものの、やはりこれと言った良案は浮かばなかった。1人でさえ難しいのにそれが4人も居るのだ、早々出る訳もない。もういっそのこと当人達に聞いた方が早いのでは……とサプライズも何もない意見が銀(小)の口から出た為、これ以上悩んで時間を食い潰すよりは……ということで依頼から戻ってくる当人達に聞くことになったその少し後に剣道部に行っていた2人が先に戻ってきた。
「剣道部からの相談、聞いてきたわ。で、大会に向けて時々稽古に付き合うことになりそうよ」
「居合道と剣道は別のものだが、皆と共に心身を鍛えるというのは楽しみだ」
「夏凛ちゃん! 若葉ちゃん! 欲しいもの教えて!!」
「ゆ、友奈!? なんなのいきなり!?」
「ほ、欲しいもの? どういうことだ?」
「実はですね……」
「ただいま。思ったより早く済みました」
「……どういう状況だい? これは」
「あっ、楓くんと新士くんもお帰り! 欲しいもの教えて!!」
「はい?」
「結城さん、少しお待ちを……」
帰ってきてすぐに剣道部の相談内容の報告とその稽古に付き合う事を楽しみにしている旨を伝える夏凛と若葉に友奈が素早く近付き、ストレートにかつ元気に問い掛ける。突然の事とその質問に目を丸くして困惑する2人に、ひなたがこれまでの経緯を説明しようとすると丁度楓達も帰ってきて状況を良く理解出来ず首を傾げ、そこに再び友奈が突撃するという2人の焼き増しのような状況が出来上がった。
一旦友奈を落ち着け、今度こそ4人に先程の話し合いの事を説明するひなた。それを聞いた夏凛は腕を組んで考え込み、若葉と楓達は少し困った表情を浮かべた。
「私達の……誕生日プレゼントね」
「その……なんというか、ありがとう」
「そう言えば今月だったねぇ。すっかり忘れていたよ」
「それで、何か欲しいものとかやって欲しいことってありませんか?」
「欲しいものか……うーむ」
「私、特にないわ。困ってることもないし……でも楓さんのは知りたいわね。去年のリベンジしたいし」
「私もだ。風さん達には良くしてもらっているからな」
「自分も流石にパッと思い付かないねぇ」
「以下同文。夏凛さんと同じく特に困ってることもないしねぇ」
「若葉の言うことは嬉しいけど、他は予想通りというか……困っちゃうのよねぇ」
樹が率先して聞いてはみるものの、案の定と言うべきか返ってきた言葉は“特にない”。若葉に至ってはむしろ良くして貰っているのだからこれ以上望むものはないというもの。楓達も同様で、特に思い付くことはない。半ば解りきっていた、というか予想通りの返答ではあるが、祝ってあげたい側としてはそれはそれで困る。かといって無理に何か挙げてもらうのもそれは違うだろう。
「4人とも本当に何もないの~? 私ならやってもらいたいこといっぱいあるんだけどな~」
「そう言われても困ってしまうんだが……はっ!」
「なんか思い付いたのか? こーゆー時は遠慮しなくていいんだからな」
「強いて言えば……手合わせをしてくれる相手が欲しいな」
園子(中)がそう聞くと困り顔で首を傾げていた若葉が何か思い付いたようにはっと口に出して顔を上げた。これはもしやと球子が聞くが、出てきた言葉に一同は呆れ顔か苦笑い。彼女らしいと言えばらしいのだが、それでも真っ先に出てきたのが手合わせの相手なのは年頃の女子としては如何なものか。
「ええっと……プレゼントはトレーニングの相手をすること……?」
「さっき剣道場の空気を感じたからか、身体を動かしたい気分なんだ」
「良く考えたら名案ね、それ。私も思いっきりトレーニングしたいわ」
「夏凛……あんたもか。か、楓達は違うわよね?」
「思いっきり身体を動かすのは良いかもねぇ。ここしばらくは樹海の戦いも絨毯で飛んでばかりだし、身体が鈍ってないか少し心配だったし」
「自分も元居た時間軸と比べると少し鍛練の量が落ちましたし、そういう意味では久々にガッツリやっておきたいですねぇ」
「そうだ、楓は小学生の時から朝早くからトレーニングやってる系男子だった……!」
「まるで見てきたように言うのね銀。あの子5時半とかに起きてるんだけど……」
「かーくん起きるの早いね……お爺ちゃんかな?」
という訳でやってきたのは多少暴れても問題ない大赦が用意してある道場のような内装の訓練施設。お留守番組以外の勇者達は変身しており、本日の主役の4人は気合い充分。何せ怪我をしないように気を付けるとは言え今回はレプリカではない本来の武器を使うのだ、レクリエーションの時とはまた本気度が違う。
「では、まずは私の相手を頼もうか」
「当然、若葉側の相手には私も参加させて貰うわ! 初代勇者とは手合わせしてみたかったし、手は抜かないわよ?」
「無論、遠慮せず本気で来てくれ!」
「では自分も。思いっきりやらせてもらいますねぇ、風雲児様?」
「新士、からかわないでくれ」
「自分は不参加だよ。いざというときの流れ弾だったり吹っ飛ばされた人だったりからのこちゃん達を守らないといけないからねぇ」
「カエっちが守ってくれるなら安心だね~♪」
他の勇者達と相対するように威風堂々と立っていた4人がそんな会話をした後、楓だけが離れて戦わない組の近くに立つ。今回の誕生日手合わせ、なんと誕生日組が1人対他の勇者という所謂乱取り形式で行うという。無論道場の広さや高さは樹海と比べる迄もないので樹海と同じように戦うことはできないだろうが、人数差や武器、個人の戦闘力を考えれば無謀と言わざるを得ないが……まあ本人達がやる気なので良いだろう。
「誕生日のプレゼントがこれでいいのかしら……新士君まで……」
「4人とも楽しそうだし、いいんじゃん? 新士と楓さんは正直予想外だったけど。ていうか須美はアッチ側だと思ったけどなー」
「わっしー、訓練の時いつも真面目だからね~」
「訓練を真面目にやるのは当たり前よ。とは言え、いくら私でも……誕生日のプレゼントに訓練は……」
そんなやる気満々な4人を見て、本当に誕生日のプレゼントがこんな事で良いのかと悩む他の勇者達。何か贈り物をとあれこれ考えていたというのに当の本人達が欲しいのは物ではなく手合わせ。しかも一見すれば多勢に無勢。どうにも誕生日らしくないというのが正直なところだろう。まさか誕生日にトレーニングすることになるとは……と樹と杏は肩を落とし、雪花と千景は
しかし、今回の主役はあくまでも4人。その4人が望むなら叶えてあげようと友奈がやる気を出し、棗も同意。彼女の言葉にそれもそうだと他の者達もやる気を出し始める……が、少し不満があるのが戦えないお留守番組である。
「ウキウキの若葉ちゃんはとっても可愛いですけど……これじゃ私がプレゼント出来ません……今日ほど自分が勇者でないことを悔しく思ったことはありません」
「私達もプレゼント出来ないね……何かしてあげたいなぁ」
「で、でもその分若葉さんの写真撮り放題ですよ……ひなたさん!」
「確かにそうですけど……やっぱり残念です」
「カエっち達とにぼっしーの分はわたしが撮るんだぜ~」
「そこは神奈に撮らせるところじゃないのか……」
現状手合わせ以外の要望は無いため、お留守番組がプレゼントと称して何か出来ることはない。何かしてあげたかった……としょんもりするひなたに杏がなんとか慰めようとするがやはり気は晴れない模様。因みに片手にはしっかりカメラを持っており、園子(中)も既に何枚かパシャパシャと撮っている。
何かしてあげたい。しかし見つからない……とあれこれ考えている神奈だったが、ふと思い付いたように顔を上げる。その目はそろそろ準備が終わるだろう勇者達に向けられ……直ぐ側に居た銀(中)の耳元でこしょこしょと囁いた。
「あのね、ミノちゃん……多分……って……」
「……あっ、ホントだ。じゃああたし達で……」
「うん! ごめん、ちょっと私達外に出てくるね」
「えっ、2人で? 何しに行くの~?」
「なーいしょ。園子達は写真撮っててよ。あたし達しばらく戻らないからさ、後で見せてくれよな」
そう言って神奈と銀(中)の2人がこそこそとしながら施設から抜け出した頃、丁度勇者達の準備が終わったようで若葉が愛刀を手に掛け、夏凛と新士が皆の方へと立つ。皆もまたそれぞれ武器を構えたり開いた片手にもう片方の拳をパシッと打ち付けたりして気合い充分な模様。
「皆、そろそろ準備は大丈夫だろうか?」
「私はいつでもオッケーよ、若葉」
「こっちもよ。怪我しないように、それだけは気を付けて」
「勿論だ、怪我をしては元も子もないからな……それでは皆、宜しく頼む!」
「じゃあ行くよー、若葉ちゃん!」
友奈がそう言った瞬間、誕生日プレゼントという名の鍛練は始まった。真っ先に飛び出したのは友奈と高嶋、風と夏凛、銀(小)と棗、園子(小)と新士の4組。同時に攻めるのではなく、連続して正面2方向から1組ずつ若葉に攻撃を仕掛けた。それに対して若葉は待ち構えるのではなく全身し抜刀。刀と鞘で友奈達の拳を受け流し、2人の間を抜けたら迫る風の大剣を往なして夏凛の双刀の盾にした。
「「わわっ、受け流されちゃった!?」」
「アタシの剣を盾にしたぁっ!?」
「ちょっと風、邪魔しないでよ!」
「若葉に言いなさいよ!」
自分の武器を盾代わりに使われ、攻撃を防がれた事に驚く2人を無視して大剣を跳び越えて間を抜ける若葉。その着地を容赦なく狩りに行くのは銀(小)と棗、そして園子(小)と新士の4人。銀(小)と新士は上から、園子(小)と棗は左右から各々の武器をほぼ同時に振るう。逃げ場は無く、若葉を確実に捉えたと思われた。
「なんの!!」
「うっそぉ!? あいたっ」
「ぐっ! 今のを避けられますか……」
「むっ……流石若葉だ」
「ご先祖様すご~い!」
しかし若葉は跳び越えた後ろの大剣を足場にしてタイミングと着地点をずらすことでこれを回避。見当違いのところに武器を振るうことになった4人の内、上の2人の背中を刀の峰と鞘で叩いて落とし、身体を回転させて刀を振るって左右の2人を遠ざける。
「そこよ若葉!」
「刈らせてもらうわ、乃木さん」
「たまには投げずに使いますかっとね!」
「そうは行かんぞ!」
回転が止まったところで彼女の腕に向かって歌野の鞭が伸び、咄嗟に鞘を盾にするが巻き付かれて動きを封じられる。それを好機と見た千景が大鎌を手に跳び上がり、槍を手に近付いて振るって来た。が、直ぐに鞘を手放した若葉は大鎌が振り下ろされる前に高速の峰打ちによる一閃を腹部へと放ち、吹き飛ばした後直ぐに雪花にも一閃。しかしこれは防がれたが距離を離すことに成功。
「容赦無しかよ……でもタマ達だってな!」
「そこです!」
「射ちます!」
「おしおき……じゃなくて捕まえます!」
(樹の“おしおき”を聞くと怖いな……)
「ちょ、ちょっとこっち来ないで若葉!? 樹ちゃんストップ! ストーップ!」
「ご、ごめんなさい!」
今度は攻撃後の隙を狙って遠距離組が攻撃を開始。しかしこれも対応してみせるのが若葉。球子の旋刃盤は刃のない裏側を蹴り上げて弾き、そのまま宙返りをして杏と須美の矢を回避。その直ぐ後に樹のワイヤーが四方八方から伸びてくるが歌野の方へと走ることでフレンドリーファイアを狙い、その狙い通りに当たりそうになったので慌てて回避する彼女の隙を突いて鞘を回収。同時に樹に心理的に無闇にワイヤーを使えないようにさせた。
「さぁ、まだまだ行くぞ!」
とまあこんな感じで短くも濃密な時間は過ぎていき、ようやく一息をつく勇者達。鍛練中、所々でシャッター音がしていたのが気にならないくらい集中出来たので若葉的にも満足出来た鍛練のようだ。
が、この後にはまだ夏凛と新士、そして楓も控えている。このまま連続して鍛練するぞと夏凛が構えるものの、普段これ程動かない樹やインドア派の杏は既に体力的に厳しいものがある。それを見た球子の案で暫しの休憩をすることになり、夏凛も万全の相手とトレーニング出来なければ意味がないと了承、勇者達は各々水分補給をして休息を取る。
「やってみて分かった事だが、1体多数というのは実戦でもあり得る事だし、良い訓練だ……うむ。何より相手が強者揃いというのが良い」
「ふふん、腕が鳴るわね」
「とは言え、結構体力使うから後1、2回くらいかねぇ。次は自分も参加するよ。じゃないと機会を逃しそうだ」
「じゃあ楓さんの代わりに自分がのこちゃん先輩達を流れ弾から守りましょうか。楓さん程万全の守りとはいきませんが」
「そんなことないよ~。アマっちも頼もしいよ~」
そんなこんなで少し長めに休憩を挟んだ勇者達。その間にひなたは撮りまくっていた若葉中心の写真を他の者達に見せたり歌野が水都に甘えたり棗や夏凛、楓が若葉の動きを思い返して自分達なら……と話し合ってたりしていた。そしてそろそろ体力も回復しただろうと夏凛が確認したところ、返事が返ってきたので全員が定位置に立つ。先程はお留守番組の近くに居た楓が新士が居た場所へ、逆に新士が楓の居た場所へと移動し、準備完了。因みに楓は体を動かす事が目的なので遠距離攻撃はせずに新士と同じ爪だけを使うつもりだ。
「手加減無しでガンガン掛かってきなさい。この三好 夏凛が相手になるわ!!」
そして始まる誕生日プレゼントという名の鍛練2回戦。若葉が抜刀による一撃や鞘を使った防御や受け流しをしていたのに対して、夏凛は持ち前の速度で避けて2刀の手数で圧倒する。流石に爆発物でもある短刀は使わないが、それでも縦横無尽に動き回り、相手側は中々攻撃を当てられない。速度、という点では夏凛と新士がツートップと言ってもいい。
また、周りが見えない程の煙の中でも気配でバーテックスの居場所を感知した事もあるくらいに彼女は気配に聡い。若葉同様に不意や隙をついた一撃や視覚外からの攻撃にも対応してみせる。それは先の若葉の戦いを思い出させるかのようで、彼女は一対多であるにも関わらず最初の激突を見事捌ききって見せた。
「流石は夏凛。やるな」
「ああ。普段は頼もしい分、若葉と同じで戦うと手強い」
「若葉の時もそうだけどアタシの攻撃全っ然当たらないんですけど!?」
「姉さん大振りだからねぇ……」
「ふふん、完成型勇者はこんなものじゃないわ。まだまだ上げるわよ!!」
そこから数分みっちりと動き続けた後、2度目の小休止に入る勇者達。2回戦目ということもあり、その疲労は1回戦を終えた後よりも大きく濃いようだ。
「流石にこの人数を1人で相手するのはキツイわね!」
「そうだろうねぇ。それに皆もそろそろキツイだろうし……」
「となると……次はやはりこれしかないか?」
「いいんじゃないですかねぇ? 自分達としては充分満足してますし」
「はっ! 若葉ちゃんが楓さん達と意味深なアイコンタクトを……」
大きく肩で息をする夏凛に対して、1度しか戦ってない分余裕がある様子の楓は他にも彼女と似た状態……或いはもっと酷い……の皆を見てふむ、と1つ頷く。それを聞いた若葉はぽつりと呟きながらひなた曰く意味深なアイコンタクトを3人へと送り、3人は楽しげな表情を浮かべて頷いた。
それを見て分からないのは仲間達。戦慄しているひなたの事は放っておき、話を進めた方が良いと球子は慣れた様子で先を促し、美森も同意したところで友奈が代表して問い掛けた。
「新士くん、何がいいの? どういうこと?」
【今度は自分(私)達4人が相手だ(よ/だよ)!】
「まだやるつもりなの……あんた達」
【もちろん!】
「ええ……もう勘弁して欲しいなぁ。というかかーくん達意外と体育会系なのかな……」
「アマっち達凄いな~。私、頑張ったら眠くなっちゃったよ……すぴ~……」
「起きてそのっち、まだ寝ちゃダメよ」
「誕生日のお祝いだし、もうちょっと4人に付き合ってあげよう!」
「うんうん! お祝いだしね!」
何人かから勘弁してくれ……という空気や言葉が出るが、友奈ズの“お祝いだから”との言葉でこれが最後だぞとやる気を出す。最後故に遺恨無しの全力で来て欲しいと4人は告げ、先程まで相手が1人であったこともあり、怪我しない程度の加減はしていた者達も全力を出すことを約束する。というより、4人が相手だと全力で対応しなければこの人数差でも危ないのではという危機感も少しあった。
何せ4人の内2人が勇者の中でも随一のスピードアタッカー。内1人は純粋に高水準の戦闘力、内1人は接近戦縛りとは言え割と何でもありなオールラウンダー。1人相手でも割と厄介なのが4人。しかも休憩を挟んだとは言え体力は全快時とは比べるまでもない。
【さぁ、いざ尋常に!!】
後に勇者達は語る。出来れば来年の誕生日の時は別のプレゼントでありますように……と、最後まで元気に立っていた4人を見ながら。
たっぷりとプレゼントの鍛練を堪能した4人はまだ少し疲労感を残す皆と共に部室へと戻ってきていた。4人はとても満足げな表情をしており、プレゼントそのものは成功したようである。
「うむ、今日はいい鍛練に出来て良かったな。ありがとう、皆」
「私も結構楽しかったわ。その……あ、ありがと……」
「自分も久々に満足の行く鍛練が出来ました。ありがとうございます」
「うん、自分も思いっきり動けたよ。皆、ありがとねぇ」
満面の笑みを浮かべる若葉と新士、楓と照れたように俯きながらぼそぼそと感謝を告げる夏凛。4人の言葉に誕生日を企画した仲間達も疲れたものの満足してくれて良かったとこちらも満足げ。4人のお祝いは大成功に終わり、めでたしめでたし……となるハズだったのだが。
「でも、誕生日なら鍛練よりケーキを買ってきた方がやっぱり良い気がしますね」
「全然誕生日らしくないもんね」
「おおぅ、ここに来て勇者部妹系部員から圧倒的正論が……ん? そういえば銀と神奈はどこいったの?」
「言われてみれば、鍛練の時にどこかに行ってからまだ帰ってきていません……」
「部室に戻る、とは銀に連絡してあるよ。こっちに直接戻ってくるとは返ってきたけど……」
中1の2人が少し残念そうに呟くと風を含めた数人が確かに……と頷く。誕生日なのだから主役に喜んでもらうのが1番とは言え、やはり誕生日にはケーキというイメージが強い。しかし誕生日プレゼントの鍛練に集中した為、何より突発的に今日祝った為にケーキの用意など出来ていなかった。
ケーキを用意出来ていない事を残念に思うと同時に、施設から姿を消して今まで1度も銀(中)と神奈が戻って来ていないことに今更気付く。ひなたが心配そうに呟くも、楓がちゃんと連絡しており、その返事も貰っているとNARUKOの画面を見せながら伝える。時間を見るに施設から出る前に連絡しており、数分とせずに返事も返ってきていた。これならもうすぐ戻ってくるかも知れない……と皆が思った瞬間、図ったかのように部室の扉が開いた。
「ただいまー! ケーキ買ってきたぞ!」
「ケーキって思ったよりも沢山種類があるんだね、びっくりしちゃった。とりあえず、ほおるけえき? を4種類選んできたよ」
「でかしたわ銀と神奈!!」
笑顔を浮かべて入ってきたのは件の2人。その手には神奈が言ったようにホールケーキが入っているのであろう箱が1つずつ、計4つ握られていた。
2人は……というか神奈は施設で前回の風の誕生日の時と違ってケーキの話題が1度もなかった事を思い出し、もしかしたらケーキを用意していないのではないかと思い至っていた。それを銀(中)に相談し、ならサプライズとしてこっそりケーキを買いに行こう! となったのだ。ケーキ屋が少しばかり遠く“誕生日おめでとう!”と書かれたプレートの用意等でそれなりに時間が掛かってしまったが、こうして間に合ったので結果オーライだろう。
因みに、神奈がケーキの種類の豊富さに驚いているのは前回の誕生日では飾り付けをしていたのでケーキ屋に赴いたのは今回が初めてだったからだ。おやつとして食べたことはあるがほぼショートケーキやチョコ、チーズ等のポピュラーな3種類のみ。後に一緒に行った銀(中)は目を輝かせてショーケースの中のケーキを見る神奈を玩具屋で目を輝かせる子供のようだったと語る。
「誕生日と言えば、ケーキもそうだけど歌もそうだよね! だから歌もプレゼントしよう!」
「え、歌? ど、どうしよう。私歌ってあんまり……」
「大丈夫だよ神奈ちゃん、心を込めて歌えば。ほら、風さんの時みたいに! 皆で一緒に! せーのっ」
そんな友奈トリオの会話の後、高嶋の合図と共に主役4人を除いた全員が歌い始める。数人ほど歌うことを恥ずかしそうにしていたが、自身が羞恥心より祝う気持ちの方が強かったのかちゃんと歌っていた。その気持ちが伝わるのだろう、4人は照れ臭そうに頬を赤くしつつ嬉しそうに笑っていた。
happy birthday to you。お誕生日おめでとう。この世界に産まれてくれた、数多の咲き誇る花達に……幸福を。
原作との相違点
・風の誕生日は祝い済み。面子は本編と同様
・プレゼント鍛練は3回戦のまま。但し最後は4人
・ケーキは買ってきた。種類はショート、チョコ、チーズ、モンブラン
・その他色々だよ!
という訳で番外編&初のゆゆゆいイベントは6月の誕生日でした。本作主人公の楓が6月生まれ設定なので丁度良いかなと思いこのイベントに。6月生まれなのは本編ゆゆゆ編で出てきてます。夏凛のリベンジ発言もここから。因みに私も6月生まれだったり(無関係
少しばかり戦闘シーンを挟み挟み。本当は夏凛と4人戦も若葉くらい書くつもりでしたが流石に長引くのでカットです。見直してみるとなんだ若葉強くないかと思ったけど風雲児だしこんなもんでしょ←
もし楓と新士がゆゆゆいでユニットとなった場合、新士は防御と速度、攻撃速度が最大クラスの近接の動く壁に。楓は前列2マスで近接、中列2マスで範囲、後列2マスで遠距離になる特殊ユニットになります。URはきっとそれぞれの時間軸の仲間達と笑い合う一枚絵になりますね。あ、UR雀当たりました(唐突
次回は、というかしばらくは久々に本編予定。早く亜耶ちゃん出して爺孫するんだ……。
それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)