咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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お待たせしました、ようやく更新です(´ω`)

白夜極光なかなか面白いですね。バイスも可愛いですし。天華百剣はサ終とのことで……悲しい、本当に悲しい。最後まで遊びますがね。

ガチャは相変わらず爆死しまくりです。でもfgoではなんとか妖精トリスタン引けました。ラスクラもラスボス引けましたし……たかしー? 無理でした_(:3 」∠ )_

最近またポケモン熱が高まってます。剣盾の厳選楽しい。ライズもやってますがやっとオオナズチ出たところです。過去作で秘薬盗まれた恨み忘れんぞ……。

さて、今回楓の身に起きたことが発覚。どうなったのか……それでは、どうぞ。


花結いのきらめき ー 34 ー

 「さぁ、変身してバーテックスの所に向かうわよ!」

 

 樹海に着いて直ぐの風の掛け声に返事を返し、皆が同時に端末へと指を伸ばす。当然、楓も例に漏れず指を伸ばし、変身する為に勇者アプリをタップした。瞬間、いつものように光と花びらが画面から吹き出し、各々が変身を開始する。

 

 (……ぐっ、う……っ!?)

 

 変身途中、楓は不意に体に痛みを感じた。まるで強い力で全身を締め付けられているかのような、無理矢理に小さく丸めようとしているかのような窮屈で息も出来なくなる程の。思わず自分の体を抱き締め、声も出せず両膝を着いて体を丸めてしまう程の。それでも変身は止まらず、その姿を勇者服姿に変えていく……のだが、その服装も何かおかしい。

 

本来の楓の勇者服は勇者達の中では珍しい長ズボンタイプであり、その上から膝から爪先まで具足で覆われている。しかし男性であるハズの彼の下半身には四方に広がる布の下にズボンではなく膝より少し上程の長さ白いスカートがあり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が艶かしく見えていた。

 

 「よし、変身完了……楓!? どうしたの!?」

 

 「お、お兄ちゃん!?」

 

 「えっ? か、楓くん!?」

 

 「楓君大丈夫!?」

 

 変身を終えたのは全員同時だが楓の異変に真っ先に気付いたのは姉妹であった。彼女達の声を聞くと友奈、美森と次々に気付き、彼に近付く。変身したことで長く白くなった髪を樹海に垂らしながら体を丸める姿はどう考えても尋常ではなく、風と樹が側で呼び掛けるも返事を出来る状態ではないようで呻き声しか聞こえてこないのが不安が煽る。

 

 「お、おい……楓はどうしたんだ? 刻み込まれた造反神の力って奴は、変身すれば塗り潰せるんじゃなかったの?」

 

 「ええ、神奈さんはそう言っていたわ。彼女が嘘をついたとは思えないから……造反神の力が神樹様の予想以上だったってことかしら」

 

 「もしくは……変身することで発動する、トラップのようなモノが仕掛けられていたのかもしれません」

 

 「そんな!? 楓さんは大丈夫なんですか!?」

 

 「落ち着いて銀ちゃん、杏さんに言ってもわからないよ。それに、どうやらもう大丈夫そうだよ」

 

 普段は楓と軽口を言い合う球子も流石に不安を隠せないようで千景に声を掛けていた。彼女は樹海に来る前の部室での会話を思い返し、確かに神奈がそう言っていたと言いつつ自身の予想を口にする。その会話はつい先程の事であったので勇者達も皆覚えており、内心で確かにそう言っていたと頷く。

 

 杏もまた、現状から考えられる予想を口にする。神樹の神託を受けた(となっている)神奈の言葉を疑うことはない。ならば疑うべきは刻み込まれた造反神の力の方となるのは当然の事で、そのせいでこうなっているとなれば銀(小)の焦りも仕方がない。そんな慌てる彼女の肩に手を置いて落ち着かせ、新士はそう言って楓の方に顔を向ける。彼女が釣られてそちらへと向くと、楓が深く息を吐いて両手を地に着けて立ち上がろうとしている所だった。

 

 「楓……? 大丈夫なの?」

 

 「……ふぅ。うん、もう大丈夫だよ……?」

 

 「あれ、樹ちゃん何か言った?」

 

 「え? い、いえ……でも今、確かに……」

 

 心配する風にそう返し、立ち上がる楓。そう、確かに返したのは彼だった。しかしその声に高嶋は疑問を覚え、思わず樹に問う。が、当然何も言ってない彼女は首を横に振る。だが疑問を覚えたのは高嶋だけではなく樹も、周りも、言った楓本人ですらそうであった。今聞こえた、口から出た声は男の楓の声ではなく、まるで……樹のような、もう少しだけ低くした……それでも女性だと分かるような声だったと。そして彼が立ち上がった時、全員が驚愕と共に声を上げた。

 

 

 

 【ええええええええっ!?】

 

 

 

 先程言った一部変わった勇者服に身を包んだ楓。その勇者服が体にフィットしているからか分かる、男ではあり得ないはっきりと膨らんでいる胸。よく見てみれば顔立ちも風似から新士のような樹似へと少し幼く、女性らしくなっている。風が側に立っている事から分かるが、彼女と同程度あった身長も幾分低くなっているようだ。

 

 はっきり言おう。“彼”は“彼女”になっていた。

 

 「楓くんが……女の子になっちゃった」

 

 「え゛っ? ……え……? え……?」

 

 「あ、珍しく楓がフリーズした……いやなんでよ!? なんで性別変わってんの!?」

 

 「そうだよお兄ちゃん!! その銀さんか園子さんくらいありそうな胸は何!? どうしたらそんなにむぐむぐっ」

 

 「樹、今はそういう事言う場面じゃないから黙ってなさい。風も、造反神以外に考えられないでしょ……」

 

 「造反神の力が原因だとしても理解は出来んがな……楓を女にする理由が分からない」

 

 (おーっと、これは……ひょっとするとひょっとして、来て欲しくないパターン来ちゃった? そりゃあ神話だと人間を小さな無機物に変えちゃうくらいだし、性別変えるくらい出来ても不思議じゃないけどさぁ……)

 

 大混乱である。友奈が簡潔に事実を延べ、それを聞いて流石の楓も平和な時間や場所ならともかく、いきなり激痛が走るわ急に女になるわで冷静では居られず混乱の極みに陥り、釣られるように風と樹も驚きの声を上げる。樹の場合は驚く方向が少し違うが素早く夏凛に手で口を封じられ、彼女が姉妹を落ち着けようとしている隣で若葉も腕を組んで首を振る。周りも似たようなものだが……園子(小)はどこからか取り出したメモ帳に高速で書き記し、美森は端末のカメラで楓を撮っているが……雪花は1人口元をヒクつかせて冷や汗を掻いていた。

 

 彼女と、そして神奈が考えていた来て欲しくないパターン……それが、楓が恐らく造反神によって性転換させられた事で現実味を帯びたのだ。証拠が無いので確信を持って造反神がその神であるとは言えないが、あまり良い予感はしないことは確か。こりゃ気を引き締めにゃならんね、と雪花は1人気合を入れ直した。

 

 「……うん……うん……よし、うん。何とか呑み込んだ」

 

 「待って、アタシまだ呑み込めない。これからあんたをどう扱えばいいの? 弟? 妹?」

 

 「出来れば弟として扱っておくれ、心は男のままなんだから……いや、それはいい。良くはないけど、いい。もう樹海に来てるんだ、早く終わらせて帰ろう。赤嶺ちゃんだって来てる筈だし」

 

 「あ、そうだよね。もしかしたら赤嶺ちゃんが楓くんが女の子になった理由を知ってるかもしれないし」

 

 「十中八九知っていると思うわ。彼女は造反神側の勇者で、その力を楓君に刻み付けた張本人だもの」

 

 「そう、ですね。直接的な原因ではないかもしれませんが、楓さんを元に戻す方法を知っていてもおかしくありません」

 

 「ていうか知ってなきゃ困るでしょ。下手したらかーくんずっとこのまま、なんてことも……」

 

 「それは勘弁願いたいねぇ……」

 

 どうにか現状を受け入れた楓に対してまだ完全には受け入れきれない風。そんな姉に苦笑いを返す元弟の現妹。しかしいつまでも混乱していられないと樹海を見渡す。既に赤嶺が言っていたゴングは鳴り、直ぐにでも愛媛へと向かってバーテックスを殲滅せねばならないのだ。本人も来ているだろうと言えば友奈がハッとして手を叩く。美森が言うように赤嶺は楓に造反神の力を刻み込んだ張本人であり、敵側の勇者。杏の予想通り、元に戻す為の何らかの方法を知っている可能性はある。

 

 勿論知らない可能性もなきにしもあらずだが、それは出来るだけ考えない方で行く。雪花の言葉に嫌そうな顔をして楓は自分の二の腕辺りを擦り、嫌悪感を示す。結果として両手で胸を持ち上げるような形になり、球子と銀(小)の目が獲物を狙う目付きになり、樹の目が死んだ。

 

 話が一段落したところで美森のカガミブネを使って愛媛へと飛び、そこから楓の光の絨毯に乗ってマップを頼りに進む。内心で問題なく力が使えた事に安心する楓であった。少しして目的の場所へと辿り着き、勇者達は各々武器を手に構え、バーテックスを見やる。

 

 「さぁさぁ! 讃州中学勇者部が来たわよ赤嶺 友奈ぁ!! いざ勝負!!」

 

 「……? 赤嶺さんが居ませんね。何か作戦があるのでしょうか?」

 

 「遠くからバーテックスが沢山出てきた……これが第1陣ということ?」

 

 「消耗させてから本命が来る気か。確か、数の差はバーテックスで埋めると言っていたな」

 

 「数ならとっくに埋まってますけどねぇ……勇者1人辺り、バーテックス何体の計算なんですかねぇ」

 

 「それならまだまだ増える事になるな。タマの強さには全然足りないぞ」

 

 夏凛が意気揚々と敵の反応がある方に右手の刀を向け、居るであろう赤嶺の向かって言い放つ。しかし何の反応もなく、当の本人の姿も見えない事に杏が疑問を口にし、そらから直ぐにバーテックスがわらわらと姿を現した。その数はどんどん増え、真っ直ぐに勇者達へと向かってきている。

 

 美森の呟きに若葉が先日の赤嶺の言葉を思い返しながら頷く。それに対して新士が苦笑いしながら冗談半分に言えば、球子が素でそれに続き、千景から呆れたような目で見られていたが気付かなかった。

 

 「……どのみち敵は倒す必要があるわ。行きましょう」

 

 「三ノ輪 銀と雨野 新士がお供します、千景さん。トリオ名は銀影士隊というのはどうでしょうか!」

 

 「あれ、自然と巻き込まれてる? 異論はないけどねぇ」

 

 「……悪くないわね。三ノ輪と千景、新士で三千世界の戦士というのも……」

 

 (千景が楽しそうで何よりだ……)

 

 「な、何を微笑ましい顔で見ているの。号令よ、号令を掛けて」

 

 改めて迫り来るバーテックス達へと向き直る千景。その隣に銀(小)が並び立ち、ついいつものように彼女の隣に立つ新士。そのせいか妙なトリオに組み込まれてしまい、苦笑いしながら首に傾げた。

 

 銀(小)の言ったトリオ名を殊の外気に入ったのか、満更でもない様子の千景。更にはノリノリで3人の名前を組み合わせて自身も考える始末。楽しげな様子の彼女を、若葉はどの目線からか微笑ましそうに笑って見ていた。その顔が気に入らなかったのか、それとも単に恥ずかしかったのか急かす彼女に、若葉は分かった分かったと頷いてから鞘から抜いた刀をバーテックスへと向けた。

 

 「さぁ行くぞ勇者達よ! 私と銀影士隊に続け!!」

 

 「了解! とっつげきー!!」

 

 「また1人で突っ走る……全く、後で注意しないと」

 

 「珍しく引っ張るわね……さぁ、刈り取るわよ」

 

 顔は真剣に、しかし言葉には少しのユーモアを混ぜて号令を掛ける若葉。それと共にいつものように突っ込む銀(小)と1人にしないように共に行く新士に加え、今回は千景も共に出向く。ほんの少し遅れて若葉が、続けて夏凛や風、棗も突っ込み、小型を蹴散らしていく。

 

 そして中衛に位置する歌野に雪花、樹に園子(小)が突っ込んだメンバーの周囲から攻めてくるバーテックスを攻撃範囲や射程に優れた武器で落とす。背後を突こうと回り込もうものならワイヤーで切り刻まれ、鞭で一掃され、反撃してこようとも園子(小)の槍が傘状になることで防ぎ、その後ろから投げ槍が飛んできて数体纏めて貫かれる。

 

 地上では無理なら上空から、となっても無駄である。如何なる理由か女になってしまっている楓だが光を扱うことになんら問題は無いようで、光の絨毯で縦横無尽に空を飛び回りながらその手の須美の物と似た光の弓で撃ち落としていく。かつては苦手だった射撃も今では手馴れたモノだ。

 

 絨毯の上に居るのは楓だけではない。須美が放つ矢が当たったバーテックスは貫通し、勢いを無くして刺さって止まっても少し間を置いて爆発と共に消し飛び、杏の圧倒的な連射力を誇るボウガンに狙われればもれなく穴だらけとなる。最も火力と射程がある美森に至っては近付けば2丁散弾銃で広範囲にばら蒔かれる弾丸、離れれば狙撃銃による一撃必殺、狙っている最中は無防備かと思えば独立飛行する小型兵器によるレーザー。乗ってるのは4人の上に光の絨毯だがやってることは戦艦である。

 

 「よーし、敵撃破! これぞ業火の女子力! ってまた来るの? 粘着質は嫌われるわよ」

 

 「なんだかおかしいな。倒しても倒しても赤嶺 友奈が出てこない」

 

 「これさー、消耗以外の……何か企んでるよね。山がそう語りかけている」

 

 「山が語りかけてくるなんてあまり考えられないが……凄いんだな」

 

 「海といつも会話してる棗さんのネタだったのに……」

 

 そうやって数えるのも億劫なバーテックスを倒し続け、ようやく途切れたと思ったところに直ぐにまた追加のバーテックスが出てきたことに苛立ちを隠せない風。しかし若葉は苛立ちよりも疑問を強く感じていた。

 

 今回の戦い、勇者達は赤嶺との直接対決をするつもりで挑んでいた。しかし以前は突然現れたと言うのに、今回は倒せど倒せど一向に現れる気配はない。雪花が言うように何かを企んでいる事は明白だろう。その際に普段から“海もそう言っている”と口にする棗の真似をしてみるも本人から素で言われ、軽く凹む雪花であった。

 

 「消耗以外の作戦、ねぇ……自分達をこの場所に釘付けにするとかかねぇ?」

 

 「消耗以外……釘付け……あぁっ!? ま、まさか!?」

 

 ぽつりと考えられる可能性を呟く楓。先程の雪花の呟きと今の彼の呟きを聞いた杏は頭を回転させ、赤嶺の狙いを考察し……少しして、青ざめながら声を上げた。その声に勇者達は驚き、どうしたのかと問い掛け……杏の想像を聞き、しまったと誰もが思った。そしてその頃には新たなバーテックス達がやってきており、勇者達は交戦せざるを得なくなるのだった。

 

 

 

 

 

 

 少し時間を遡り、場所は部室。お留守番組の5人はいつものように戦いに赴いた仲間達を心配しつつ、大人しくその帰りを待っていた……のだが、ふと園子(中)が不安げな顔をして呟いた。

 

 「皆は大丈夫かな~。何だか悪い予感がビンビンするんだよ。このビンビン度はなかなかだよ~」

 

 「園子が言うとシャレにならないな……ていうかビンビン度ってなに?」

 

 「大丈夫です。西暦の風雲児たる若葉ちゃんがついていますし。今頃ちぎっては投げて……」

 

 「若葉ちゃんの武器は刀だから、ちぎったり投げたりはしないんじゃないかな?」

 

 「そのまんまの意味じゃないよ神奈さん……わわっ、何々! 何が起きたの!?」

 

 悪い予感がする。その彼女の言葉にこれまでの経験から気のせいでは済まないことを知っている銀(中)は呆れたように言いながら警戒し、ひなたは安心させる為かそれとも本気でそう思っているのか若葉の勇姿を想像する。そんな彼女の言葉に神奈は不思議そうに首を傾げ、天然な発言をする彼女に水都は苦笑い。

 

 瞬間、どこかから轟音が響き、小さいながらはっきりと分かる程度に部室が揺れた。思わず慌てた肥を出す水都の肩を神奈が支え、驚いたようにひなたが顔を上げる。

 

 「これは敵襲!? 激戦という神託が出ていましたが、まさかこちらが襲われるとは……」

 

 「ふふふ、作戦成功ーっ。本命はこーっち。今頃あっちは2つの意味で慌てていると思うよ」

 

 「貴女は、赤嶺ちゃん……私達を直接狙いに来たんだね」

 

 「ゆ、友奈という名の人がこんな作戦を使ってくるなんて……」

 

 「予め言っておいたと思うんだ。戦いのゴングが鳴った以上は……戦闘が始まった以上は……もう何でもアリで攻撃するって。さぁ、皆出てきて出てきて。固めの数マシマシで」

 

 「ら、ラーメンを注文するかのようにバーテックスを呼んでいる……人がそんな事を出来るなんて」

 

 (ラーメンってあんな注文の仕方するんだ……)

 

 ひなたが予想外だと言うように呟いた後、部室の扉がバタンッ! と大きな音を立てて倒れる。その音に驚きながら5人がそちらへと目をやると、そこには赤嶺の姿。得意気に笑いながら入ってくる彼女の言葉から、5人は“作戦”と“本命”の内容の大方を悟った。と言っても、この状況と神奈の言葉こそが答えであり、水都が酷く驚いているのは戦えない者を直接狙うという他の“友奈”達では考えられない作戦を彼女が取ったからだろう。

 

 だが、作戦自体は有用なのは確か。先程も言った通り、今この場に戦える者は赤嶺以外には居ない。そしてここで5人をリタイアさせれば勇者達にとって様々な点で大打撃を受ける。それを理解しているのだろう、赤嶺は容赦も躊躇もなくバーテックスを多数呼び出す。その呼び出し方に水都が若干の呆れを交えつつ戦慄し、神奈は真面目な顔をしつつ内心で別の意味で驚いていた。

 

 「出来るんだよ。そう、この世界ならね」

 

 そう言って赤嶺は、また得意気に笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 「成る程、敵の目的が本拠地への奇襲である可能性……これは急いで戻らないとですね!」

 

 「でも、敵が意図的に東郷先輩ばかりを狙ってきて……カガミブネを使わせないつもりです」

 

 「まあ、自分達が近寄らせないけどねぇ……とは言え、こうも狙われると流石に迂闊に地上に降りられないねぇ」

 

 「東郷さん達に近付いちゃ駄目! 勇者、パーンチ!」

 

 場所は戻って樹海で戦う勇者達。赤嶺の作戦である留守番組が居る本拠地、部室への奇襲を予想したものの大量のバーテックスが部室へと戻ること……現状この場で美森だけが使えるカガミブネを封じる為にか美森に、絨毯へと群がってくる。絨毯に乗る4人と地上組の攻撃で撃退は出来ているが、余りの多さと攻撃の集中具合に地上に降りてカガミブネを使うことが出来ないでいた。

 

 「確かに危機的状況だけれど……私達だって無策で居る訳ではないわ。拠点を空に出来ている理由の1つは、こちらには切り札があるから」

 

 「とは言え、万が一の可能性もあるからねぇ……杏ちゃん、やるよ」

 

 「はい。私達の強化した攻撃で一気に広範囲の敵を殲滅。その後の隙をついて東郷さんのカガミブネで戻りましょう」

 

 「それじゃあ行くよ!」

 

 部室への奇襲、襲撃そのものは考えなかった訳ではない。元の世界と違ってこの世界では樹海化しても留守番組、巫女達は動けるし同じく樹海へと部室ごと来てしまっているからだ。可能性としては充分にあり得た。それでもこうして部室を無防備に出来るのは切り札……今は変身出来ないとは言え、残った2人の勇者が居るから。

 

 だが、楓の言うように万が一の可能性はある。故に勇者達は一刻も早く部室へと戻るため、いつものように楓の強化による攻撃で一気に殲滅を図る。そして楓が杏へと光を伸ばした……のだが。

 

 「……ん?」

 

 「あれ?」

 

 「んんっ……楓君? 杏ちゃん? どうしたの? 早く攻撃を……」

 

 「……いつもの暖かさや力が漲る感じがしないんです。まるで、1枚の壁があるような……」

 

 「自分もそんな感じがするよ。普段通りに強化出来ている感じがしない……杏ちゃん、試しに射ってみてくれるかい?」

 

 「わかりました。やぁっ!」

 

 不思議そうに首を傾げる2人。その仕草に口を抑えて体を曲げた美森だったが素早く体勢を元に戻し、問い掛けてみるが帰ってきたのはそんな言葉で、試しにと促されて杏がボウガンを放つ。これが普段なら、光によって強化されて少し変形したボウガンから矢が大量に放出され、数多のバーテックスを1度に屠れた。

 

 しかし、現実は違う。ボウガンは光に包まれてこそいるが変形はしていないし、矢に至っては光を纏ってすらおらずいつも通りのモノが先程と変わらない速度と威力と見た目で放たれた。それを見た楓が直ぐに左手の水晶に目をやると、本来なら2つ分消えている筈の満開ゲージが満タンのままそこにある。そこまで確認して、楓は苦虫を噛んだような顔をした。

 

 「……やられた。自分に力を刻み込んだ理由の本命はこっちか」

 

 「ど、どういうことですか?」

 

 「つまり、造反神が赤嶺ちゃんに楓君に力を刻ませた理由は、楓君を女の子にする為じゃなくて……」

 

 「楓さんの強化を封じることが本命ということだよ、須美ちゃん」

 

 (あ、良かったそっちが本命か。いや良くはないけどさ……)

 

 上空組から聞こえる会話を聞きながら、雪花は槍を投げながら1人安堵の息を吐いていた。

 

 

 

 

 

 

 「さぁて、一気に……嵐のように攻めるよーっ」

 

 「っ……」

 

 「そうは、させないよ~!」

 

 「赤嶺 友奈、お前の好きにはさせないぞ!」

 

 「貴女達に何が出来るの?」

 

 場所は再び部室へと戻り、赤嶺が拳を握り締めて攻撃の姿勢を取る。思わずビクッと震える水都だったが、直ぐに神奈に抱き寄せられて後ろへと隠され、ひなたはその隣に立ち、そして巫女3人を守る為に園子(中)と銀(中)がそれぞれスマホを手に前に出る。そんな2人を見て、赤嶺は不敵に笑った。

 

 実際、これまで2人の勇者アプリはロックされており、変身することが出来なかった。だからこそ今樹海で戦っている勇者達のように戦いに向かうことが出来ずお留守番組として部室へと残っていたし、それを歯痒く思うこともあった……そう、()()()()は。

 

 「出来るんだよなー、これが!」

 

 「じゃーん! たった今、勇者への変身が可能になったんだ」

 

 「ええー……それはびっくりだね」

 

 「緊急時の切り札……ここに発動という訳ですね」

 

 (“私達”、この短時間で頑張ってくれてありがとう!)

 

 自慢するようにスマホの画面を見せ付ける2人。そこには使えなかったハズの勇者アプリのロックが解除されており、タップ1つでいつでも変身出来る状態だった。“いざという時の切り札”……元の世界で繰り返した満開により、勇者達の中でも高い戦闘力を得た2人。これまでロックが解除される気配が無く、本当に戦えるようになるのか半信半疑になることもあった。だが、この危機的状況でそれは払拭された。

 

 ……実のところ、解除するのは神奈達としては解除するのはこんなギリギリになる予定ではなかった。なんなら他の勇者達と共に戦いに向かう時にでも……と神奈は考えていた。それだけ赤嶺の存在と行動が“私達”には予想外であったと言える。だからこそ彼女が来た瞬間から会話の最中を利用して最速でロック解除したのだが。神奈の脳裏に数多の神々がやりきった表情で親指を立てる姿が浮かんでいた。

 

 「わたし達に任せて。さあミノさん、ずがーんと行くよ~!」

 

 「おう! ようやくあたし達も参戦だ、一緒に行くぞ!」

 

 そう言って同時にアプリをタップする2人。瞬間画面から光と花弁が溢れだし、部室を埋め尽くす。そしてそれらが消えた後、そこに立っていたのはそれぞれ勇者服に身を包み、槍と双斧剣を携えた2人の姿。この世界で初めて見る2人の勇者服姿に、巫女3人と赤嶺は思わず見入っていた。

 

 「これが、園子さんと銀さんの勇者服っ……神々しい……睡蓮? と……牡丹?」

 

 「たかだか2人、バーテックスで押し流しちゃうよ。それいけー、やれゆけー!!」

 

 「部室は皆の拠点なんだよ。その周囲を荒らそうなんて……」

 

 「そんな奴らはあたし達が許さない! お前ら纏めて……」

 

 

 

 「「ここから、出ていけええええっ!!」」

 

 

 

 窓を開けて外へと出た園子(中)の伸縮自在の槍と扉の方に向けて振り上げられた斧剣から吹き上がる炎。それらは赤嶺の号令で窓から扉から部室へと侵入しようとするバーテックス達を一薙ぎで一掃してみせた。炎が向かってきた赤嶺は斧剣が振り上げられた時点で危機感を覚えていたのか既に部室から出ており、被害は避けた。その表情は驚きに満ちており、まさか一薙ぎで大量のバーテックスが全滅したことが予想外だったようだ。

 

 「っ!? うわぁ、あっという間に……全滅した」

 

 「これ程とは……圧巻です。切り札と呼ぶに相応しい」

 

 「成る程……1人辺りの戦力を見誤ったね。それ以外は上手く行ったと思ったのに」

 

 「皆、無事!? みーちゃん!?」

 

 「うたのん……!」

 

 「ひなた……良かった」

 

 「しかも戻って来ちゃったか……楓くんを封じればもう少し掛かると思ってたけどこれも予想外。仕方ない……最大戦力プラス、私自身で相手だよ」

 

 ここで、前線に居た勇者達がどうにか仕掛けられていたバーテックス達を殲滅し終えたらしく部室へと慌てた様子で戻ってきた。カガミブネと楓の絨毯を駆使して戻ってきたのだろう、予想通りに赤嶺の姿があることに驚きつつ地上組が上から飛び降りてきて部室と彼女の間に着地し、歌野は中に入るや否や水都に抱き付き、若葉もひなたの無事な姿を見てほっと安堵の息を吐く。

 

 赤嶺にとって予想外な事が続いたものの、彼女もどこかでこの状況になるとは思っていたのか納得したように頷き、背後に大量の中小型バーテックスに加え大型バーテックスも数体出現させる。双方睨み合う……と言いたいところだが、勇者達の方はそこまで空気が重くなかった。

 

 「お、おおぉぉーっ! 中学生園子とあたしの変身……強そうだなぁ」

 

 「そうだねぇ。それにやっぱり須美ちゃん先輩みたいに意匠も違う……よく似合ってるねぇ」

 

 「ありがとうアマっち。プチミノさんも、これからは一緒に戦うよ」

 

 「強そう、じゃなくて強いぞあたし達は。未来のあたしの力、よーっく見とけよな」

 

 「ところカエっちはどこ? 近くに居るのは分かるけど……上かな~?」

 

 「園子先輩~。アマっち先輩が女の子になっちゃったんだよ~。すっごく可愛かったんよ~♪」

 

 「えっ、楓が女の子に……? それってどういう……」

 

 「女の子になったカエっち!? 何それすっごく見たい! 女の子になったカエっちはどこ!? 上!?」

 

 「おおう、ここまでテンションが高い園子は久しぶりだな……というか近くに居るのは分かるけど……? お前のその楓に対する超感覚はホントなんなんだ」

 

 初めて見る事になる未来の自分達の勇者服姿に目を輝かせる銀(小)と同意しながら誉める新士。褒められたこととこれからは共に戦える事が嬉しいのだろう園子(中)も笑みを返し、銀(中)も確固たる自信と自負を持って返す。

 

 ふと楓の姿が見えない事に疑問を覚えたらしくキョロキョロと辺りを見回して本人を探す園子(中)。その直感が存在を捉えたのか絨毯がある空を見上げ、その時に園子(小)からさらりと新情報を伝えられて困惑する銀(中)。神様だバーテックスだ勇者だと割とファンタジー溢れる世界とは言え、流石に性転換は想像がつかなかったのか銀(中)は困惑した様子で首を傾げた。

 

 そんな彼女に対し、園子(中)は目をさながら切れ込みが入った椎茸のようにして光らせ、彼女へと目を合わせた後に変身した事で高くなった身体能力を最大限生かし、己の直感のまま彼が居るであろう上空の絨毯へと素早く跳躍。仲間達が静止する間もなく辿り着いたその先で、彼女は自身の目ではっきりと見た。

 

 「ん? やあ、のこちゃん。勇者服姿を見るのも久しぶりだねぇ……ああ、あんまり見ないでくれると助かるんだけど……聞こえてないっぽいねぇ」

 

 普段見る彼の姿とは違う、自分よりも少し小さな樹に似た少女。真っ白な長い髪や白い勇者服に武器である両腕の水晶と小学生の頃から変わらない手甲と具足。違うのは全身を覆うタイプの黒いインナーがレオタードのようになっており、太ももから具足がある膝辺りまでの素肌が見えていることとズボンからミニスカートのようになっていること。声も樹の声を少し低くしたような、明らかに少女だと分かること。胸も自分と同じか少しだけ小さいくらいにあるということ。

 

 「か……可愛い!! カエっち可愛い!!」

 

 「待って落ち着こうのこちゃんぐむっ……」

 

 「そ、園子さん!?」

 

 「ああ、やっぱりこうなったのね……そのっちだから仕方ないのだけれど」

 

 「新士君が女の子になっていたらそのっちがこうなっていたでしょうから、予想は出来ていましたね」

 

 そこまで認識して、もう辛抱たまらんとそれはもう満面の笑みで楓に抱き付く園子(中)。彼女より低くなった身長のせいで肩辺りに口が当たり喋られなくなる彼と抱き付いている彼女を見て慌てる杏を他所に、予想は出来たと腕を組んで頷く美森と須美。そんな状況で、園子は大きな声で叫ぶように言った。

 

 

 

 「フーミン先輩! カエっちをお嫁に下さい!!」

 

 「楓は嫁に出さないわよ!!」

 

 「その返しは違うと思うよお姉ちゃん……」

 

 

 

 (実は若葉様じゃなくてひなたさんの子孫じゃないのかなあの子……)

 

 (楓くん、女の子になっちゃってるんだ……まさか彼の神は本当に……ち、違うよね?)

 

 そんな気の抜ける会話を聞きながら、どうにも戦闘を始められる空気じゃないのか攻めるに攻められない赤嶺と雪花と違って楓の強化が封じられた事を知らない為に嫌な予想を更に深めた神奈であった。




原作との相違点

・番外編以来のTS楓参戦

・ツッコミ役の銀(中)

・楓、強化を封じられる

・園子(中)はいつも通り←

・原作との相違点……もう何を書けばいいのか……



というわけで、VS赤嶺(始まらない)の続きでした。予想していた方も居るでしょうが、楓の身に起きたのはTS、性転換でした。しかも強化封じのおまけ付きです。勇者服もインナーがレオタードのようになって更にスカートにもなるとは彼の精神ダメージは如何に。

樹海化後の部室ですが、個人的には映画のセットのように部室そのものが樹海の上にポツンとあるイメージです。部室ごと世界を移動しているような、ディケイドの写真店みたいな感じだと思っています。流石に校舎ごとは無いでしょうしね。謂わばプレハブ小屋の状態の部室周辺にバーテックスが現れ、中から外から瞬殺したのが切り札2名です。ぅゎっょぃ。

話は変わりますが、最近別のわすゆ軸のゆゆゆ短編を投稿しました。よろしければそちらも是非読んでみて下さい。

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)
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