咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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大変お待たせしました、ようやく更新です(´ω`)

ランスロットもオベロンも爆死し、周年石も消えました。コヤンスカヤが当たった事が唯一の救いです……福袋で伊吹童子が来てくれたのでそれも良かったことかな?

dffooではアルテマ剣3段階まで解放。BT持ちも増えてよきよき。ザックス強いですが私はティーダ推しです(鋼の意志

ゆゆゆいでは初春だけ来てくれました。コラボキャラがバトルキャラになるとはこの海のリハクの(ry)。コラボイベ復刻したらまた増えそうですね。

さて、本編ゆゆゆいも1つの山場です。それでは、どうぞ。


花結いのきらめき ー 37 ー

 「く……うっ、ああっ……!」

 

 「須美ちゃん!?」

 

 「お、おい須美? どうした須美!?」

 

 「……赤嶺さん。須美ちゃんはどうなったんですかねぇ?」

 

 「精霊との対話が始まったんだよ。彼女の意識は今、ここじゃなくて精神世界に居る。戻ってくるには、問い掛けに答えるか論戦に打ち勝つしかない」

 

 須美の姿をした精霊に指を指された後、須美は苦しげな声を漏らした後に目から光を無くして微動だにしなくなる。驚いた楓はこのままでは絨毯から落ちるかも知れないと思い、彼女を抱き抱えた後に地上に降り、地面の上に座らせる。それでも動かない彼女に、銀(小)は慌てて声を掛けるがやはり反応は無い。

 

 

 それを見た新士ははっきりと顔に怒りの感情を浮かべ、赤嶺を睨み付けて問う。そんな彼の怒りを涼しげに流し、彼女は先程も説明した事を改めて説明した。須美の状態を見て、勇者達は彼女の言葉が事実であると本当の意味で理解する。“自分自身との戦い”。須美の意識が精神世界とやらにある以上、自分達にはどうすることも出来ない。手助けも何も。須美自身の勝利を信じて待つ以外は。

 

 「こんのーっ!! 須美を解放しろ!!」

 

 「だから私を倒したところで対話は終わらないよ。自分の事は自分で決着を着けないと」

 

 「……消えた、か。本当に今回は自分達と直接戦うんじゃなく、精神世界で精霊と論戦させるつもりなんだねぇ」

 

 「これ以上赤嶺 友奈を攻撃しようとしても無駄ね。ずっとこの罠を作っていたんだろうし」

 

 (……精神世界で、自分自身との戦い。それも()()()()()()()()()()()()()()……もし、それで須美ちゃんが……いや、彼女だけじゃなく、論戦をした子達の心が傷付くような事があれば……)

 

 銀(小)も怒りの声を上げるが、赤嶺はさらりと言った後に部室に来た時と同じようにその場から消える。現れてから1度としてバーテックスの召喚はおろか自分から勇者達に攻撃してこなかった事から今回の戦いはあくまでも精神世界での精霊との対話、論戦しかするつもりはないのだと悟る勇者達。新士がその共通する心の声を口に出し、歌野も赤嶺が今日まで暫く姿を見せなかった理由を理解して首を横に振った。

 

 誰もが心配そうに須美を見る中で、楓は手甲が無ければ爪が肉を突き破っているであろう力で拳を握り締めていた。彼にとって、勇者の子達の心が傷付きかねない今回の事は地雷と言ってもいい。まだ遠足後の戦いを経験する前の時間軸から召喚されたとは言え、須美達小学生組を含めた神世紀の勇者達は皆その心に大きな傷を負ってきた。そして楓は、それを目の当たりにしてきたのだ。

 

 そんな彼女達の心に、また傷を負わせるつもりなのか。或いは、その傷を思い出させ、深くするつもりなのか。彼女達が精霊に打ち勝つと信じては居る。だが、それとこれとは別。もし彼女達が傷付き、涙を流すような事があれば、楓は自分を抑える自信が無かったし、抑えるつもりもなかった。

 

 

 

 

 

 

 そして精神世界。須美と須美の姿をした精霊しか居ない真っ白な世界の中で、彼女は精霊に問い掛けられる。

 

 

 

 ― 鷲尾 須美にとって、乃木 園子とは何か。目の上のたんこぶではないのか ―

 

 

 

 「目の上のたんこぶ? 意味不明なことを。そのっちは友達よ」

 

 そう即答した須美。彼女にとって園子は勿論、銀と新士も大事な友達であり、戦友である。目の上のたんこぶ……邪魔者であるとか、鬱陶しい者であるとか、そんなことは断じて有り得ない。

 

 須美の答えを聞いた精霊は、もしもその意見が偽りであった場合、須美の魂に寄生すると言った。この言葉の意味の正確なところは須美には分からない。だが、決して良い意味ではないことは想像に難くなかった。

 

 「私は今、貴女の精神世界に居る。だから貴女が体験した記憶を映画のように眺める事が出来るのよ。見える見える、貴女の記憶が……」

 

 須美には分からないが、精霊の目には見えている。目の前に居る須美の、この不思議空間に来るまでに彼女が過ごしてきた過去が。養子になる前、お役目の為に養子に出た後。まだ他の3人と関わりが薄かった頃、本格的にお役目が始まり出した頃……それら全ての記憶が。

 

 「お役目が本格的に始まって、4人の中から隊長を決める時があったでしょう? 隊長がそのっちに決まって、それが家柄や血ではなく実力で……そして、貴女が憎からず思っている“彼”にも自分より向いていると言われて」

 

 

 

 ― 貴女は、天才とも言えて……彼からの信頼も厚いそのっちに、嫉妬と劣等感を抱いているでしょう? ―

 

 

 

「……何を言うの。そのっちは凄いし、新士君の言ったことも納得出来るものだった。それだけの話よ」

 

 精霊の言葉を須美は否定する。確かに、隊長になるなら自分が……そう思わなかった訳ではないし、園子の名が挙げられた時には驚いたりもした。その後に新士が言ったことで、まあ精神的なダメージを受けたりもした。

 

 だが、それだけだ。確かに園子が隊長になったのはその実力や頭脳によるモノで新士が頼るのも理解出来る。だからと言って彼女が邪魔である筈がない。それに彼女が隊長であることに、その理由に納得しているのだから。

 

 「……貴女はお役目を果たす時、いつも守られているだけだと、自分の力が足りずに足を引っ張っているのではないかと言う恐怖がある」

 

 「っ!?」

 

 「その恐怖を与えているのは、ある意味出来の良いそのっちと銀の2人と……守ってくれる彼に他ならない。貴女は妬んでいる。そのっちの天性の才能を、彼から頼られる彼女自身を」

 

 

 

 ― その負の感情を向ける相手を……友達と呼べるのかしら? ―

 

 

 

 精霊の言葉を聞いた須美の脳裏に浮かぶのは、彼から頼られる園子の姿。そして、その信頼に応える彼女の姿。

 

 現実世界で3度、須美は3人と共にお役目を果たした。彼によって守られた最初の戦い。2戦目、3戦目では彼が頼った園子の作戦、そして発想や機転によって勝つことが出来た。自分でも出来た……そう言うことは、須美には出来ない。そういう意味では確かに彼女の能力は園子に劣るだろう。

 

 「……痛いところを突いたつもり? 記憶を眺めることは出来ても、心情は全然読めてないのね」

 

 「……何?」

 

 

 

 故に、須美は精霊にハッキリと告げる。

 

 

 

 「私は確かに、2人を眩しく思う時がある。彼に頼られるそのっちを羨ましく思う時がある。新士君に守られて……守られているだけでは嫌だと、そう思う時がある。だけどね」

 

 

 

 そんなモノは()()()()にはならないのだと。

 

 

 

 「私が2人に抱いているのは敬意。彼に守られているだけだと思うのは、私自身の力不足。それを人のせいになんてしないわ」

 

 断言する。須美が抱く感情は決して負のモノなんかではない。友達として、仲間として、それ以上の存在として敬意を抱いているのだと。守られているだけだと思うのは自分の問題であり、決して3人のせいではないのだと。

 

 「下衆の勘繰りで私達の仲は引き裂けない。消えなさい、妖怪!」

 

 「……自分が至らない部分を既に自分のせいと受け入れていたか……」

 

 その言葉と共に、精神世界と現実世界の須美の姿をした精霊の姿が消えていく。そうして須美自身も、現実世界へとその意識が戻って行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 「おお……須美の姿をした精霊が消えていった!」

 

 「勝ったんだね、流石わっしーだよ!」

 

 「須美ちゃんがそう簡単に負けるとは思っていなかったけど、これで一安心だねぇ」

 

 「……あ……銀、そのっち、新士君。ここは……戻ってきたのね」

 

 「うん。わっしーの幻は消えていったよ」

 

 「お帰り須美ちゃん……お疲れ様」

 

 「ただいま、新士君。ふふ、相手も馬鹿な質問をしたものだわ」

 

 3人の仲間に囲まれて嬉しそうにした後、先程まで赤嶺が居た場所に向けて不敵な笑みを浮かべる須美。事実として、彼女は殆ど迷うことも言い淀む事もなく精霊に打ち勝った。大したことは無かったとそう言える程、それこそ完勝と言ってもいい。

 

 「……ねぇ、新士君」

 

 「うん? なんだい?」

 

 「私は、守られてるだけにはなりたくない。私も守れるように……頑張るから」

 

 「……うん、一緒に頑張ろうね」

 

 「ええ!」

 

 「……ふふ」

 

 「楓君? どうしたの?」

 

 「いや……懐かしくてねぇ」

 

 「……ふふ、そうね」

 

 守られているだけでは嫌だから。頑張ってもらうだけでは、嫌だから。だから自分も守ることが出来るように頑張るのだと、新士に告げる須美とそれを受けた新士が朗らかな笑みを浮かべて頷くやり取りを見た楓が楽しげに、思わずといった様子で笑った。それを見た美森が不思議そうに問い掛け、返ってきた言葉に彼女も同じように笑う。

 

 2人からすれば過去の、目の前の4人にとっては未来の出来事。夏祭りの日、空に咲き誇る綺麗な花火の下での誓い。大人が大嫌いになっても、酷いと思っても、それでも親友の為に、親友ともっと一緒に過ごしたいと思ったから頑張れた。その大事で、大切な親友と、好きな人達を守りたいと、一緒に頑張りたいと……頑張るのだと誓った、大切な思い出。

 

 散華によって記憶を失っても尚、その誓いは美森の口から出る程にその想いは、誓いは魂に刻まれている。その日を経験していないにも関わらず、須美は美森(みらい)と同じ事を口にした。それがまた彼女達が同一人物であることを知らしめ、嬉しくなって笑みが零れたのだ。

 

 「お~、自分と決着を着けてきたね。小学生なのに凄いなー、もっと迷うかと思ったよ」

 

 そんな称賛の言葉と共に、さっきまで消えていた赤嶺が姿を現す。その赤嶺に、須美はこんな方法では自分達が揺らぐことはないと告げる。その自信満々な顔と声に、他の勇者達も同じような表情で彼女を睨み付けるように見る。だが、赤嶺の表情に焦りは浮かばない。それどころか、例え須美がそうだったとしても他の人間ならばどうか? と投げ掛けてきた。

 

 「随分と手の込んだ攻撃を仕掛けてくるものね……」

 

 「あ、言い忘れてたんだけど……精霊に取り憑かれるとこの世界の中では再起不能だけど、元の世界に戻れば精霊の影響は消えるから元通り。紳士的な攻撃でしょ? 血を見ずに無力化だもんね」

 

 「やってることは充分外道だと思うけどねぇ……人の心に土足で踏み込んで来る訳だからねぇ」

 

 「酷い言われよう……まあでも、既に他の勇者達……この攻撃が通じそうな皆さんには精神攻撃を仕掛けたよ」

 

 「なっ、いつのまに!?」

 

 「準備に時間を掛かったんだよね。そのお陰で愛媛の半分以上が取られちゃった。今まで調子が良かった分の反動だと思って、自分の幻影と論戦してね」

 

 「つまり、あたしの偽物も出現するってことか!」

 

 「あたしの偽物の可能性もあるぞ」

 

 「面白い! もう1人の私! さぁどっからでもカモン! 連れ帰って農作業を手伝ってもらうわ!」

 

 「……もう1人のカエっち達、連れて帰れないかな」

 

 「いいわね園子、それ採用」

 

 「しなくていいから」

 

 赤嶺の言い分に、楓は心底不愉快そうな表情を隠さない。ここまで彼が不快げにするのが珍しいのか西暦組や小学生組が驚いている。赤嶺も内心かなり驚いていたが努めて表情には出さないようにし、そう言ってのける。既に攻撃を受けていると聞いて銀(小)が驚きの声を上げ、彼女は頑張れとでも言うように首を振った。

 

 そしてその論戦、及びもう1人の自分の姿を象るという精霊を恐れるどころかむしろウェルカムだと楽しみにしていそうな反応をするのは勇者部の中でも特にメンタルが強そうな元気娘達。更には本人そっくりになる精霊を欲しがる園子(中)と頷く園子(小)と姉。そんな緩んだ空気に楓の不愉快そうだった顔も緩み、自然と苦笑いを浮かべた。

 

 「あはは、君達には仕掛けてないよ。ホント精神攻撃とか無駄そうだしね……もっと効きそうな人が居るじゃない?  ほら」

 

 

 

 「ハハ……ハ、さあ、語りましょう」

 

 「ククク……どーん、だ!」

 

 「アハハ、言葉を尽くしましょう」

 

 「フフフ、どぉ――――ん!」

 

 

 

 赤嶺の目線を勇者達が追うと、そこに居たのは千景と若葉、杏、高嶋の4人。そして4人の前には須美の時と同じように彼女達と同じ姿をした精霊がいつの間にか存在しており、既に指を指して彼女達を精神世界へと送り込んでいる所だった。例え止められなかったとしても、止めるどころか気付くことすら出来なかった事実に残された勇者達は悔しそうに顔を歪ませる。

 

 「主に西暦組が狙われたか……くっ、もう全員精神世界に入ってる」

 

 「お、お姉ちゃん! 夏凛さんが!」

 

 

 

 「……完成型勇者がどれ程のものか、お手並みを拝見させてもらうわよ」

 

 

 

 樹の声が響き、風だけでなく他の勇者も夏凛の方へと視線を向ける。そこには4人同様に彼女の姿をした精霊が存在し、同じように精神世界へと送られている所だった。これで5人、須美も合わせれば6人が精神世界へと送り込まれた事になり、つまりは赤嶺、或いは精霊や造反神にとって“精神攻撃が効きそう”だと判断されたということだ。更に、勇者達にとって驚く事が起きる。

 

 「夏凛も狙われたか……! くっ、見ていることしか出来ないって言うの?」

 

 「何か、援護出来る方法があるかも……考えましょう!」

 

 「あれ? 私は攻撃されなかったか。我ながら意外だったり……」

 

 「っ、楓君! 後ろ!」

 

 「えっ? っ!? しま……」

 

 

 

 「ハハハ……()()()()()

 

 

 

 風が棒立ちになる夏凛達を見て悔しがり、友奈が何とか精神世界に送られた皆をどうにか援護する方法を考えるよう呼び掛け、雪花はメンタルが強い自信が無かったのか自分の姿をした精霊が現れなかった事を不思議がる。その後直ぐに美森の慌てた声が響き、咄嗟に後ろを振り向いた楓は何らんかの対応をする間もなく、皆と同じように自分の……元の男の時の楓の姿をした精霊によって精神世界へと送り込まれてしまった。

 

 「そんな、楓まで……! ちび楓は無事ね!?」

 

 「大丈夫、自分は無事だよ姉さん」

 

 「……いやでも、楓なら大丈夫でしょ。精霊との論戦なんて楽勝ですって風さん。なぁ? 園子……園子? どうした?」

 

 「あ、うん。カエっちなら大丈夫だと思うんだけど……違和感があるんだ。何かは、わからないんだけど……」

 

 「ぐむ~っ、チーム丸亀はタマ以外の皆が狙われてしまうとは」

 

 「そこら辺はある意味的確な攻撃と言えよう」

 

 「精神的にも大人なタマはそういうの平気だからな……皆は心が危ない年頃だから。こういう手はズルいぞー! 赤嶺 友奈!! 正々堂々の競い合いをしろー!!」

 

 「そうだ! 球子さんの言う通りだー!!」

 

 (タマっちが精神的に大人なら、かーくんも候補から外れると思うんだけどな……あれかな、女の子になってるから精神的に弱ってると見なされた? それとも他に何か理由が……)

 

 「精神の競い合いだよ。私なりに全力でぶつかってると思って欲しいな。それじゃ、私はレクイエムさんに乗って一旦退避するよ。攻撃目標にされかねないから」

 

 楓まで精神世界へと送り込まれた事に焦り、新士は無事かと確認する風。彼の無事な姿を見て安堵の息を吐く彼女に銀(中)は安心させるように、本心からもそう言って笑って見せた。そして同意を求めて園子(中)へと顔を向けるが、彼女は予想と違って難しい顔をしていた。園子(中)は楓の姿をした精霊の発言に違和感を感じていたのだが、直ぐには答えは出なかった。

 

 そんな神世紀組の隣で、自分以外の西暦の四国組が精神世界に送られた事に憤りを見せる球子。メンタルが強そう、というか実際に強いだろうしぶっちゃけ論戦してもまともなやり取りは出来なかったと思われる彼女を飛ばさなかった事を雪花は敵ながら英断だったと褒め、その真意を知らず褒め言葉と受け取った彼女はそのまま銀(小)と共に赤嶺に抗議の声を上げた。

 

 そして雪花もまた、園子(中)と同様に楓が精霊の対象となった事に違和感を抱いていた。無論直ぐに答えは出なかったが、どうしてもその違和感が拭えず……そうして考えている間に赤嶺は近くに召喚した大型バーテックス“レクイエム”に飛び乗り、また勇者達から大きく距離を取った。

 

 「くっ……矢の射程外……大型のバーテックスもあそこまで自由に動かせる……か」

 

 「とりあえず今、精神世界に居る皆をどうにか援護出来ないかな。須美の時は驚いてる間に須美が片を付けて戻ってきたけど……」

 

 「ふむ……のこちゃん。何か思い付くかい?」

 

 「「うーんとね~……」」

 

 「おーい、呼ばれたのは多分お前じゃなくて園子ちゃんの方だぞー」

 

 「応援するっていうのはどうだろう?」

 

 「あっ、ゆーゆ、それ良いかも~」

 

 「シンプルで良いと思います。アマっち先輩、ご先祖様、ファイトー!」

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、若葉の精神世界では精霊との対話、論戦が行われていた。

 

 「……乃木 若葉よ。皆が泣いている。お前なら声が聞こえるだろう」

 

 「皆? 皆とはなんだ?」

 

 「バーテックスに殺されていったお前の友達……そして民だ。“私達の仇を取ってくれ”と」

 

 「私は生きている人々を守る為に戦うと決めたんだ」

 

 「それがお前の主張か? 嘘だな。“何事にも報いを”が乃木の標語の筈だろう?」

 

 若葉の姿を象った精霊は言う。元の時代でバーテックスにより殺された人々が、若葉に自分達の仇を取って欲しいと嘆いていると。自分達を殺したバーテックスに自分達の代わりに復讐して欲しいとあの世で叫んでいると。

 

 だが、若葉は首を横に振る。確かに、かつて若葉はバーテックス達に人々の命を奪った報いを受けさせる為に、目の前で殺された友人や人々の為に……そうやって過去に囚われて自分の復讐の為にその刀を振っていた時期があった。だが仲間達に諭され、自分1人で戦っている訳ではないと気付かされ……そして決めたのだ。“今生きる人々の為に戦う”と。しかし、精霊は嗤いながら言うのだ。

 

 

 

 ― 綺麗事を言っても、結局お前の戦う理由は復讐心だ ―

 

 

 

 違う、と若葉は即座に否定するが、精霊もまた即座に返す。ならば死んだ人間の事は忘れるのか。お前は薄情なのだな、と。しかし、若葉は強く迷いの無い口調で言葉を返す。

 

 「忘れはしない。1度だって忘れた事はない。その上で、私は未来の為に戦う。丸め込もうとしても無駄だ」

 

 

 

 ― 自分との決着は、既に着けた ―

 

 

 

 そう、既に着けた。自分1人では決して辿り着けなかった答えを、若葉は得ている。ひなたが若葉なら必ず答えを見つけると信じてくれた。杏が若葉を連れ出して今を生きている人達の暮らしを見せてくれた。球子が悩む若葉を気にかけてくれた。千景が側で若葉の事を見ていると言ってくれた。高嶋が笑って若葉と共に戦ってくれると言ってくれた。

 

 復讐心だけで戦う若葉はもう居ない。ここに居るのはそれを乗り越え、信じられる仲間達と共に未来の為に、生きる人々の為に戦う事を()()()()()()()()()四国最初の勇者の1人。精霊の言葉に惑わせられる事など、有り得ない。その揺るぎ無い本心を精霊に言葉で叩き付けた後、若葉と精霊が居る精神世界が光に包まれていった。

 

 

 

 

 

 

 「あっ、風雲児様の精霊が消えたって事は」

 

 「……どうやら自分に打ち勝てたようだ。精神攻撃を掛けた時期が悪かったな……少し前ならともかく、今の私に対しては揺さぶりは効かない!」

 

 「ご先祖様、無事で良かった~」

 

 「流石、のこちゃんのご先祖様……風雲児様ですねぇ」

 

 「対話している時にお前の存在を感じたぞ園子、ありがとう。あと新士、からかわないでくれ……それはともかく皆、対話している仲間の応援をしよう! 効果はあると思う」

 

 「よーし。こら夏凛、聞こえてる? 完成型勇者なんでしょ! はね除けてみなさい! 楓もアタシの弟でしょ! さっさと打ち勝ちなさいよ!」

 

 最初に戻ってきたのは若葉だった。若葉の姿をした精霊が消えるのと同時に彼女の意識が戻り、直ぐ近くに居た小学生組が彼女が精霊に無事に打ち勝った事を率先して喜ぶ。勝ち誇る若葉は園子(小)に礼を言い、新士のいつものからかうような言葉に苦笑いと共に楽しげに返しつつ、仲間達に向かって告げる。仲間達の応援は、必ず精神世界の皆にも届くのだと。

 

 ならば即実践だと風は夏凛に、楓に向かって叫ぶ。いつも完成型勇者だと自信満々の彼女なら、自分の自慢の弟である彼なら、そんな精霊との対話など簡単に勝てるだろうと。

 

 

 

 

 

 

 そして夏凛の精神世界。彼女は己が精神世界に来ている事を理解した後、自分の姿をした精霊を見てどんな対話や論戦であろうと打ち勝ってみせると意気込んでいた。そんな彼女に、精霊は鼻で嗤いながら切り込んできた。

 

 

 

 ― 自分を完成型だと言い張っているが、実は未完成もいい所だと気付いているか? ―

 

 

 

 「……この問い掛け、つまりは自分が完成型勇者と認め続ければ勝ちってことかしら? なら楽勝ね」

 

 「必殺技の名前は“勇者部の太刀”。勇者部を大事にしているのが伝わってくるセンスね。勇者部はようやく手に入れた大事なモノ……皆の為なら命だって張れる」

 

 「……そうよ!! くぅぅ……精神世界での対話だから断言出来るけど、ちょっと恥ずかしいわねこれ……」

 

 「皆は大切な友達……」

 

 「そ、そうよっ……」

 

 精霊の問い掛けに、夏凛は相手が自身が普段から言う“完成型勇者”であることを否定し続けてくるのだと思い、ならば逆に認め続ければ打ち勝てるのだと考えた。が、そんな考えを否定するように精霊は言葉を紡ぐ。

 

 友奈と高嶋が“勇者パンチ”と叫ぶように、時折勇者達は各々必殺の、或いは渾身の攻撃の際に技名を叫ぶ時がある。夏凛の場合、ニ刀で切りつける際に“勇者部の太刀”と叫ぶ。そう名付けたのは精霊が言う通り、彼女にとって勇者部そのものが大切で、大事な存在だからだ。改めてそれを突き付けられ、恥ずかしさはあるものの周りに仲間が居ないので素直に叫ぶように認める。しかし、認めた後に精霊はこう突き付けてきた。

 

 

 

 ― でも、皆が自分の事を本当にそう思っているか不安に思っている時があるでしょう? ―

 

 

 

 「……は?」

 

 「だって……私は人付き合いが苦手だもんね。合流が遅くて、皆との積み重ねが浅い。それに合流時に失言をして怒られもしたしね」

 

 「ぐっ……」

 

 「ここまで満たされているのに、どこか不安を感じている精神が弱い“未完成勇者”……それが三好 夏凛」

 

 「そ……そんな事無いわよ……」

 

 精霊の言葉は的確に夏凛の心を、精神を揺らす。確かに人付き合いは下手だという自覚はある。最初に勇者部に来た時とて部員達とどう接したら良いか分からず、刺々しい態度を取っていた。それ以前の勇者になる前の時も友人らしい友人も居なかった。

 

 それに合流時に失言をしたせいで楓に怒られた事も、未だに夏凛の心に暗雲を残す。当時でさえ“やってしまった”と後悔したのだ、勇者部が大切な存在になった今だからこそ余計にあの時に失言が、仲間達への態度が情けなく、そして苦い記憶として残り続けている。

 

 精神が弱い“未完成勇者”。それを否定する言葉も先程とは違って弱々しい。真っ直ぐ精霊を見ていた筈の視線も不安げに揺れ、楽勝だと言っていた時の自信満々な姿が見る影もない。そんな時、精神世界に2人以外の声が響き渡った。

 

 『こらー! 楓に夏凛聞こえてるかー!? ファイトよ、ファイトー!!』

 

 『楓くーん!! 夏凛ちゃーん!!』

 

 『お兄ちゃん!! 夏凛さん! 2人なら絶対大丈夫です!!』

 

 『心を強くもって!! あなた達なら絶対大丈夫よ!!』

 

 『カエっちー、にぼっしー! 早く起きないと色々しちゃうよー!』

 

 『2人共早く勝って戻ってこーい!! じゃないと園子に色々されるぞー!!』

 

 「……ふ、ふふふ……自分との対話だってのに声が聞こえてくるなんてどんだけ大声……ていうか楓さんも捕まってるっぽいわねあの言い方。あと園子は何するつもりよ……こら、アンタ聞きなさい!」

 

 それは、勇者部の仲間達の声であった。1番大きい声の風。大声で名前を呼ぶ友奈。普段は出さないような大声で2人なら絶対に勝てると叫ぶ樹。精霊に負けるような弱い心ではないだろうと叫ぶ美森。何をするつもりなのか心配になる園子(中)。それを心配したのか6人の中で1番焦った声をしている銀(中)。

 

 自分でも言った、大切な友達達の自分を応援(?)する声に、先程の不安が払拭されていくのを感じて思わず笑ってしまう夏凛。そしてその中に楓の声が無かったことと自分と同じように名前を呼ばれている事から彼も同じように精神世界に囚われていると悟り、園子(中)の声に別の不安を覚える。が、それらには蓋をしてキッと精霊を睨み付け……胸を張り、叫んだ。

 

 

 

 「私は勇者部に居る限り“完成型勇者”よ! それは胸を張って言えるわ! 消えなさい!!」

 

 「……まさか精神世界(ここ)まで声が届くとはね」

 

 

 

 声に僅かな驚きの色を宿して精霊がそう呟き、精神世界に光が満ちたのと同時に現実の樹海に居た夏凛の姿をした精霊が消え去る。それを見た樹が真っ先に嬉しそうな声を上げる。

 

 「あっ、夏凛さんの分身が消えていきます!」

 

 「復・活!!」

 

 「あ~ら、早かったわね。おかえり」

 

 「……ただいま。あと、ありがと」

 

 「ん? 何か言った?」

 

 「うっさい!」

 

 精霊に打ち勝った勝利の雄叫びとでも言うように声高らかに復活を叫ぶ夏凛。声を届けるべく叫んでからそう時間も経っていない内に戻ってきた彼女に、勝つと信じていた風が軽い調子で言い、夏凛も同じように返す。その内心は声を届けてくれた仲間達への感謝に溢れているが、やはり現実では素直になるのは難しいのだろう、つい強めの口調になってしまう。が、それが照れ隠しであると分かっているのだろう、仲間達はくすくすと笑うのだった。

 

 しかし、若葉、夏凛と続けて打ち勝っては居るがまだ高嶋に杏、千景、そして楓の4人は戻ってきていない。それでも勝つと信じて待つ勇者達を見ながら、遠く離れた場所で赤嶺は呟く。

 

 「どんどん対話に勝っていってるなぁ。やるねぇ……でも」

 

 

 

 ― 残りの人達は……どうだろうか? ―

 

 

 

 西暦組は内なる心の声には苦労したって、よく話を聞いたからね。そう赤嶺が呟いた声は誰の耳にも届かない。精神世界に居る4人にも、現実世界に居る勇者達にも。そしてその精神世界……楓の精神世界で、楓は自分の元の男の姿をした精霊を前に唖然とした表情をしていた。その震えた口が開き、精霊に問い掛ける。

 

 「……今、なんて言ったんだい?」

 

 「ん? 聞こえなかったかな? それじゃあもう一度……」

 

 

 

 ― 自分は犬吠埼 楓に問い掛けないし、論戦も仕掛けるつもりはないよ ―

 

 

 

 「ここへ連れてくる前に言っただろう?」

 

 “捕まえた”ってね。そう言って精霊は、目に光の無い男の楓の顔に朗らかな笑みを浮かべた。




原作との相違点

・夏凛の応援に園子(中)と銀(中)追加

・論戦を仕掛けない精霊が居る

・相違点ってなんだっけ……?



という訳で、ゆゆゆいの山場の1つの精霊との論戦回です。この場面は以前DEifでもやってましたので須美の辺りはコピペになってしまいました。勿論、DEifの時とも違ってますので見比べても面白いかもしれません。

最近は暑い日、雨の日が続いたせいか精神的にも肉体的にもしんどい日が続きますね。皆様もお気をつけ下さい。今年は雨多いなぁ……。

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)
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