咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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大変お待たせしました、ようやく更新です(´ω`)

まさかののわゆアニメ化でびっくりしてる私です。酒呑童子ちょっと代償大きすぎないですかね……酒呑童子であれなら若葉の二重切り札とかどれ程なのか。

転スラ新アプリのまおりゅう、別の新アプリのラグナドール始めてます。銀と中の人が同じのシズさん、園子と中の人が同じののっぺらぼうをゲット出来て嬉しい限り。他のアプリのガチャ? fgoでジャック・ド・モレー当たりましたが他は死にました←

スパロボ30もDL版買いました。やはりスパロボは面白いですね。グリッドマンとナイマジ目当てでしたが、現状とても楽しめています。杉田さんvcの男主と早見沙織さんvcの艦長とか最高ですマジで。

今回も原作と色々変わっています。それでは、どうぞ


花結いのきらめき ー 41 ー

 成長の超大型バーテックス……さながら幾つもの触手、或いは虫のような足が無作為にミミズのように長い体から生えているかのような見た目のバーテックス、“アニマート”2体へと攻撃を仕掛けた勇者達。近接、射撃問わずその攻撃は確かに2体の巨体に直撃し、見て分かる程に傷を付けた。その事実に、かつてレオ・スタークラスターと戦った勇者部は内心で安堵していた。

 

 その巨体故にか、一斉に攻撃しても倒す事は出来なかったし、傷を付けるだけに終わっている。何なら少しずつだが既に治ってきてもいる。だが、それはつまり攻撃が通らない訳ではないという事だ。レオ・スタークラスターの場合は満開の攻撃以外では歯が立たなかったが、アニマート達はそこまでの防御力は無い。ならば満開等の切り札無しでも倒す事は決して不可能ではないということになる。

 

 「手応えあり……! これは行けるかも。相手は成長中で動いてこない」

 

 「よーし、セカンドアタック! 呼吸を合わせて、いっせーのっ!」

 

 確かな手応えを感じた美森がこれならば……と口にする。それは他の勇者達も同じ気持ちであり、歌野がその勢いを殺さぬように2度目の一斉攻撃の合図を出し、それに誰も遅れること無く再び同時に攻撃を繰り出す。このまま同じ事を繰り返せば特に被害も無く勝てる……のだろうが、元の世界とは違う偽物とは言え頂点(バーテックス)の名が付けられた存在がそう簡単に行く筈もない。

 

 同じ箇所を狙った攻撃は、アニマート達の触手のような部分が動いて防いだ。身動きしなかった存在が行った防御行為は勇者達の警戒心を高める。そして、攻撃を防いだのはアニマート達だけでなく……その2体の前に現れた人影が一部を弾いていた。その正体は、言うまでもない。

 

 「ちょっと待ってよ。今攻めてくるなんて酷いなー。完成するまで待ってくれないと」

 

 「やはりお前も来たか、赤嶺 友奈。邪魔をするな」

 

 「今どうしてもやるって言うなら……それはそれで。皆、集合! おっきな君も動いちゃって!」

 

 「超大型が動き出したか……赤嶺が指示を出しているのか?」

 

 「でしょうね、それにいつもの星屑まで……っ! 超大型が何かしてきそうですよ!」

 

 現れた赤嶺 友奈がそんな事を(のたま)うが、勇者達としては超大型が成長中であり、放っておけば愛媛が危ないとなれば攻めない理由等無い。若葉が彼女の言葉を一蹴するが、勇者達が今攻めてくるなら対応するまでだと赤嶺もいつものごとく大量の中、小型のバーテックスを呼び出し、超大型も動き出してその巨体を勇者達に向けた。

 

 棗の疑問に同意する新士が、1体のアニマートの体から生える触手のようなモノの先端から岩のような塊を撃ち出そうとしているのに真っ先に気付いた。それを聞き、行動を見た勇者達は各々の判断で回避を試みる……前に行動した小さなオレンジ色の影が1つ。それは旋刃盤を前に構え防御の姿勢を取る球子であった。

 

 「こんなものは、タマの盾が受け止めええええる!! うぎぎぎ、ぎぎぎぎっ!!」

 

 「タマっち先輩!?」

 

 「なんて無茶な……でも流石は球子ちゃん、防いで……いや」

 

 「超大型の攻撃を受け止めるなん……て、え!?」

 

 「どおおおおりゃああああっ!!」

 

 彼女の小さな身体の何倍、何十倍もの大きさがある巨岩のようなそれを、信じられない事に真っ向から吹き飛ばされる事もなく受け止めて見せた球子。杏からは心配の叫びが上がり、仲間達は信じがたい光景にぽかんとしていた。楓もまさか真っ向から受け止めるとは思っておらず、しかし防いだ彼女を称賛する。それは敵である赤嶺も同じであった。

 

 が、そこで終わらない。更に信じがたい光景として、球子は受け止めた巨岩を受け止めた旋刃盤を振り払うように動かし……そして、気合の籠った叫びと共にアニマートへと跳ね返した。投げ返した、と言ってもいいだろう。その巨岩は流石に命中することはなく触手によって弾かれたが、弾かれた巨岩に数十体の中、小型が巻き込まれていた。

 

 「……や、やたらと気合い入ってるのが居るね」

 

 「タマが言い出した事だ、これくらいはやらないとな! さぁ、皆行けええええ!!」

 

 「タマばかりに良い格好はさせないわよ。よーし、突撃!!」

 

 「おおー!」

 

 「あんな凄いことされたら、あたしらも気合が入るってもんだ!!」

 

 「こっちも突撃ー!!」

 

 球子が見せた防御……最早反撃と言ってもいいそれに赤嶺でさえ驚きから数秒言葉が出なくなるが直ぐに気を取り直し、仲間達は彼女に続くぞと戦意を漲らせる。特に風と銀ズのやる気が凄まじい勢いで上がり、率先してバーテックスへと突っ込んでいく。無論、仲間達もそれに続き……赤嶺もどこか楽しそうに、バーテックスに命令を下す。

 

 そうなれば後はいつものような戦いだ。襲い掛かるバーテックス。それを迎撃し、倒していく勇者達。いつものように上空組の4人が遠距離攻撃で仲間を援護し、空の敵を担当する。地上組が各々突撃する者、サポートする者と連携を駆使し、お互いに助け合いながら殲滅していく。

 

 ……が、そこまで簡単に終わるような戦いではなかった。超大型は成長中故にかそれほど攻撃頻度は多くはなかった。しかし、球子が防いだように巨岩を飛ばしてくる。それが1発2発ならまだしも身体にある複数の触手から繰り出してくるのだ。それに超大型は2体居る為、飛んでくる数は単純に倍。自身の何倍もの大きさのそれを受け止め、跳ね返すなんて芸当はそう何度も出来るハズもない。

 

 「ああもう、大きい上に邪魔だなコレ!」

 

 「姉さん、その大剣で打ち返せない?」

 

 「出来るか!!」

 

 「大丈夫大丈夫、姉さんの女子力なら出来るって、多分」

 

 (煽るなぁ新士。でも幾ら風さんでも流石に……)

 

 「そ、そうね。アタシの女子力なら、こんな攻撃くらい! 行くわよ! 女子力ホォォォォムラァァァァンッ!!」

 

 「「やるんですか!? しかも本当に打ち返した!?」」

 

 (確かに煽ったけどまさか本当に出来るとは……)

 

 「やるな風。タマも負けてられないぞ!」

 

 また、大きい為に回避するのも一苦労だ。加えて厄介な事に、この巨岩は消えずに樹海に残るので障害物の役割も果たしている。なのでたまに飛び越える、或いは迂回する必要が出てくるので地上組からすれば銀(小)が言うように邪魔の一言。その樹海にめり込んだ巨岩を指差しながら冗談半分で新士が風を煽ってみたところ、飛んできた巨岩に対して大剣を野球のバット宜しくフルスイングする。

 

 するとどうか。ザリザリと音を立てて後退するものの轟音を鳴らしてアニマートに向かって巨岩を打ち返した。冗談半分に煽ってみた新士も聞いていた銀達もまさか本当に打ち返せるとは、そもそもまさか実行するとは思わなかったのか驚愕の表情を浮かべている。因みに打ち返された巨岩は見事にアニマートに打ち出した時以上の速度と威力を伴ってその巨体に直撃していた。

 

 「む、無茶苦茶するね!?」

 

 「生憎と、風が無茶苦茶なのはこの世界に来る前からよ!!」

 

 「姉さんも球子ちゃんもやるもんだねぇ」

 

 「タマっち先輩、凄い……」

 

 「お二人とも凄い力ですね」

 

 「本当ね。それに今ので超大型が目に見えてダメージを負っているわ……これならいけるかも知れない!」

 

 「それはマズイなぁ。仕方ない、か」

 

 その一連の動きを見ていた赤嶺も流石に大声でそう言わざるを得ない。その声には夏凛が星屑を切り裂きながら返し、上空組も巨岩を相手に返した2人に称賛の声を漏らす。無論、バーテックスを撃破しながら。そうしつつ美森は巨岩を受けたアニマートに視線を送ると、そこには巨岩以外にも勇者の攻撃をその身に受け、あちこち凹んだり切り裂かれていたりと満身創痍。それに加えて件の巨岩を受けてもう1体のアニマートと比べて半分くらいの大きさに潰れている。

 

 そして被害が少ない方のアニマートも決して無傷と言うわけではなく、その巨体にはしっかりと数多の傷が付けられている。これならば、ここで終わらせられるかも知れない……そう告げる美森だが、それで終わらせるような赤嶺ではなかった。半死半生と言っていいアニマートを勇者達にぶつけ、比較的損傷の少ない方を可能な限り素早く後退させる。残った中小型、大型も盾にするように動かし、後退するアニマートへの攻撃、接近を防がせる。そして。

 

 「見たか、このタマ達のパワーを! ナンバーワン!!」

 

 「くっ、こんな危険地帯に来るなんて……完全に読みが外れたよ。堅守するかと思った」

 

 ぶつけたアニマートが倒される頃には粗方のバーテックスが殲滅され、残ったアニマートは奥へ奥へと後退していくところであった。勝ち誇る球子に対し、赤嶺は予想外の勇者達の攻勢、そして切り札である超大型の1体を失った事に悔しげな表情を浮かべて自身も撤退していく。

 

 上手く事を運べた勇者達だが、赤嶺とアニマートを追うことはしなかった。勝利こそしているが、彼女が言ったようにここが危険地帯……愛媛の中でも最も敵陣営の戦力が集中している場所でもあるし、今の戦闘で大きく疲労している。そんな状態で追撃を仕掛けるのは今回の戦いを決断したような勇気ではなく無謀と言うものだ。

 

 それに、完全に目標を達成出来なかったとは言っても相手の切り札の1つを倒せたのだ、充分に大戦果を挙げている。少ないともこれで相手が2体の超大型を別々に動かして二面作戦、なんて戦法は取れなくなった。次の戦いで勇者達が全員で事に当たれるのは大きい。

 

 「皆、お疲れ様!」

 

 「本当に疲れたわ……アタシの剣が折れるかと思ったわよ」

 

 「大活躍だったねぇ、姉さんも皆さんも」

 

 「……あぁ。流石タマの仲間達だ。これで……いいん……だ……」

 

 「……タマっち先輩? タマ先ぱぁぁぁぁいっ!?」

 

 「な、球子!?」

 

 そうして友奈が元気に声をあげ、風は大剣を消して両手をぷらぷらとさせて疲労感をアピール。新士は姉と仲間達を褒め、球子がそれに同意し……突然、意識を失ってその場に崩れ落ちた。それを見た杏は即座に絨毯から飛び降りて走って近付き、若葉達も心配して慌てて近寄る。戦勝ムードは彼方へと消え去り……仲間達に不安を残して、樹海から元の世界に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 戦いが終わった日の翌日。あの後、倒れた球子は直ぐに元の世界で楓や園子(中)、銀(中)も入院していた大赦が運営する病院へと運ばれて入院していた。そして彼女の病室に見舞いに来た人影が幾つか。同じ時代から来た仲間達と夏凛である。他のメンバーはまだ来ていないようだ。

 

 「だいぶ具合は良さそうね? 全く、びっくりしたわよ」

 

 「あぁ……まさか倒れるなんてなぁ。格好悪い所を見せてしまった」

 

 「ううん。タマっち先輩、凄く格好良かったよ」

 

 「そ、そうか?」

 

 「あんな凄い攻撃を受け止めるなんて凄いよ!」

 

 入院してはいるが、球子はベッドの上で元気にしていた。倒れたのも何度もアニマートの攻撃を受け止め、跳ね返して味方への被害を抑え続けていた事による疲労故の事。別に大怪我した訳でもないので1日寝ていれば良くなるのも当然と言えば当然。だが倒れたのは事実なのでこうして心配してお見舞いに来るのもまた当然のことだろう。

 

 千景の素っ気なくも心配を滲ませる言葉を受け、少し悔しげに首を振る球子。だがその彼女の手を握って顔を近付けながら杏が目を合わせながら褒め、千景の隣に居る高嶋も同じように褒める。2人に褒められた球子は悔しげな表情を恥ずかしげなモノに変え、ポリポリと頬を掻く。

 

 「球子さんの犠牲は出したくないという考え、素敵は素敵なんですが……自分自身もしっかり無事でないとダメですよ。忘れないで下さいね」

 

 「うん……心配かけたな。さしあたり、タマは直ぐに皆と合流出来るから、しっかり決戦の頭数には入れておいてくれ」

 

 「勿論だ。球子は大事な戦力だからな」

 

 「よーし、機先はしっかりと制したわ。次もばっちりと勝って完全勝利よ!!」

 

 「それは良いけど、夏凛ちゃんもう少し声抑えて。周りに一般の人が居ない個室とは言え、ここは病院だからねぇ」

 

 「あ、楓さん……ごめんなさい」

 

 「前から思っていましたが、夏凛さんは楓さんには弱いですね」

 

 「まあこっちにも色々あるから……」

 

 「よっ! 楓、その袋はなんだ?」

 

 「やぁ球子ちゃん、元気そうで何よりだよ。これはお見舞いのお菓子と、美森ちゃんが作ってくれたぼた餅」

 

 ひなたから苦笑混じりにそう言われ、素直に頷く球子。自分でも今回の戦い方は無茶したと感じているのらしい。しかしその奮闘は称賛されるべきだろう。その結果として誰一人脱落する事なく戦いが終わったのだから。それに無茶した本人も直ぐに退院出来る程度なので結果としては最良に近い。若葉が言うように彼女も欠けてはいけない大事な戦力なのだから。

 

 さぁ次の戦いも勝つぞとやる気を漲らせる夏凛に、病室に入りながら苦笑いで注意する楓。直ぐに振り返り即頭を下げる姿に杏が頭に疑問符を浮かべながら聞くが、夏凛からはそんな曖昧な言葉しか帰ってこなかった。そんなやり取りを気にすること無く、球子の視線が楓が持つビニール袋へと向く。元気そうな彼女に朗らかな笑み向けつつ、手に持つ袋を見せつけるように上げながらそう説明し、ベッドのテーブルの上に取り出して並べた。

 

 そうしてその場に居る皆で彼が持ってきたお菓子やぼた餅に舌鼓を打ち、次の決戦の話や他愛の無い話をしながら穏やかに時間は過ぎていくのだった。

 

 「ところで楓。今日はなんというか、随分と可愛らしい格好をしているのだな」

 

 「ああ、これは……姉さんの趣味だよ。自分の私服は使えないし、お見舞いに行くなら他の人の目にも触れるからって……だからってスカートを履かせる事はないだろうに……」

 

 (今の楓さんは樹ちゃん似の女の子の姿をしてますから、スカート姿が良く似合いますね……ハッ、“姉さんの趣味”という事はこの格好はつまり風さんの“自分色に染め上げたい”という意思表示なのでは? 今まで園子先生達との恋愛模様を想像していましたが、これはつまり姉弟の禁断の関係という新しいパターンが!!)

 

 (あんずがまた暴走している気配がするけど、今は流石に相手するのは辞めておこう。タマは今病人だからな)

 

 

 

 

 

 

 数日後、球子は無事に退院した。元々戦闘で無茶した事による疲労が原因なのだから本人としては翌日、なんならその日にでも退院して良かったのだが念には念をという事で時間を掛けた。そのお陰か、それとも杏の看病のお陰かすっかり元気になった彼女の全快を喜びながら、夕方の砂浜にて次の決戦に向けて訓練を行う勇者達。

 

 「なっはっはっは! タマは完全復活なのだ。これもあんずの看病のお陰だな」

 

 「ナイス女子力よタマ。全快おめでとう」

 

 「さぁフルメンバーでレッツらトレーニング! 打倒、超大型バーテックス!」

 

 「うん、やろう歌野ちゃん。あの敵を倒せば愛媛解放だもんね」

 

 「愛媛の次は徳島ともう決まっています。勢い的には高知にも攻め込みたいですね」

 

 「よーし、銀さん張り切っちゃうぞ! 鍛練鍛練! とっく島とっく島!」

 

 「私だって銀に負けて居られないわ。鍛練鍛練!」

 

 「徳島徳島~♪ 皆でワイワイ鍛練するのは結構楽しいねぇ」

 

 「ふふ、そうだねぇ。元の世界だと4人だけだから、こんなに大勢だと何だか楽しいねぇ」

 

 鍛練だトレーニングだとしている間にそんな会話がされる。ひなたが言うには次の解放を目指す土地は徳島だと言う。可能であれば、同時に解放を目指して動くことも視野に入れているようだ。それを聞いてやる気を漲らせる勇者降臨。中でも小学生組ははしゃいでいるようにも見える。

 

 この場で1番楽しそうに鍛練をしているのは間違いなくこの4人だろう。鼻歌のように鍛練鍛練、徳島徳島と呟きながら武器を振るったり矢を射ったり拳を突き出したり。他の者達もそうして動いている中で、息を乱す者が1人。樹である。

 

 「うぅぅ……はぁ……はぁ……はぁ……小学生の皆も息を切らしてない……本当凄いなぁ」

 

 「大丈夫? 樹ちゃん」

 

 「あんまり無理したらダメだよ樹」

 

 「うん、大丈夫だよお兄ちゃん。友奈さんもありがとうございます……はぁ……はぁ……」

 

 「徳島ラーメンか。楽しみですなー。徳島城もね」

 

 「ふふ、雪花ちゃんお城好きだもんね」

 

 「気が早いぞ……渦潮……渦潮……」

 

 (徳島ラーメンか……そういえば、神樹館の同級生の子が好物だったねぇ。あの子は元気だろうか? 大橋の最後の戦い以来顔も見てないからねぇ……)

 

 給水用のスポーツドリンクやタオルの持ち運びをする巫女達はともかく、変身した状態で唯一息を切らしている樹は他の仲間達が息一つ乱していない事実に改めて驚く。友奈と楓から心配されると一旦動きを止め、息を落ち着けようと何度か呼吸を繰り返しつつまた周囲に気を配る。

 

 徳島と聞いてテンションが上がっているのが小学生組の他にも2人。うどんよりもそばよりもラーメンと日本の城が好きな雪花は解放したら味わい、見られるであろうそれらに想いを馳せ、それを知る神奈は微笑ましそうにクスクスと笑い、海が好きな棗も雪花に注意しつつも自身も行けば見られるかもしれない渦潮を脳裏に思い描く。

 

 そんな会話を聞きながら、ふと楓は1人の少女を思い浮かべる。片目が隠れるくらいの前髪と白髪が特徴の、たまに勉強を教えていた少女。勇者であることもあってあまり長く接する事はなかったが、彼の記憶に刻まれるには充分な時間を過ごした。大橋での決戦以来……いや、重症を負い入院してから会うことは無かったかもしれない、徳島ラーメンが好物な少女の事を。

 

 (棗さん達は当然のようにピンピンしてるし。西暦組はやっぱり鍛えられてる)

 

 「行くよ高嶋ちゃーん! せいせーい! とあーっ!」

 

 (同じ時期に勇者になった友奈さんも武道をやっているから基礎体力が違う……前々から分かってた事だけど……私、頑張らないと)

 

 楓の事はさておき、樹に視線の先にあるのは相変わらず自分と違って息を乱さない仲間達。西暦組は勿論の事、同じ時期に勇者になった友奈もそう。大赦で勇者となる為にある程度訓練していた(のが理由かは分からないが何故か体力はある)風や血の滲むような鍛練をしていた夏凛とも違う。先代勇者であった楓や美森、園子(中)と銀(中)とも違う。完全な一般人であり勇者としては同期の友奈。その仲間達と比べ、自身にはあまりに体力が無さすぎる事を改めて樹は痛感する。だからこそこうして鍛練を頑張っている訳だが……。

 

 「でも頑張った所で……皆が凄すぎるような」

 

 「おほん。自分の可能性を下に見たらダメなんよイッつん」

 

 「わっ!? 園子さん……」

 

 「基礎体力は大事だから、それを付けながらもイッつんは特技をキュッキュと磨けばいいんだよ」

 

 「と、特技ですか?」

 

 仲間達は皆が凄い人達で、その凄い人達に頑張った所で追い付けるのか。そもそも頑張って、その凄い人達の力になれるだろうか。そんなネガティブな考えが浮かぶ彼女の後ろからひょっこりと現れた園子(中)に驚きつつ、面と向かって言われた言葉に首を傾げる。特技、と言われても自分自身の事は早々思い当たる事はない。不思議そうに首を傾げる彼女に、園子(中)はピンと右手の人差し指を立てながら答える。

 

 「日常のイッつんに占いや歌があるように、樹海のイッつんにも独自の持ち味があるんよ。それは少しわたしに似ている……でもカエっちの方が近いかな。考え方次第で色々な事が出来る」

 

 「私が、お兄ちゃんと園子さんに……えぇっと……あ、もしかして“武器”ですか?」

 

 「うんうん。カエっちの“光”ほどとはいかないと思うけど、ワイヤーの戦法って無限大だと思うんだ。そこを磨けばオンリーワン~」

 

 「おんりーわん……」

 

 園子(中)の話を聞き、暗かった表情から一転明るくなる樹。目の前の凄い先輩と自慢の兄に近い、似ているのだと言われれば嬉しい。しかもそんな先輩が自身の武器を、独自の持ち味とやらを磨けばオンリーワン……唯一の存在になれると言う。もしかしたら本当に……嬉しく思った樹は右手を持ち上げ、手首のワイヤーを出す鳴子百合の花の形をした自身の武器を見た。

 

 「でも、戦法と言っても……さしあたり、何をすればいいか……」

 

 「イッつんの周りには動きの参考に出来る人がいっぱい居るじゃない。1番参考になるのはカエっちかな~。だけど、皆とも一緒に鍛練していると見えてくるものがあったりするかも……かも~」

 

 「な、成る程です……ありがとうございます。ようし、皆さんの素敵な所を学んでいこう!」

 

 「色んな人に話しかけるんよ。可能性を見せてね~」

 

 「おおう、何やら妹が燃えているじゃないの。樹、ファイト。お姉ちゃんは……お姉ちゃんは見守っている」

 

 「見守るのはいいけど鍛練は続けようね、姉さん」

 

 園子(中)に助言を貰い、その様子を見ていた姉に見守られながら宣言通りに皆の鍛練風景を観察し、研究し、本人と会話をして学び、自分に出来る動きや戦法を増やす事になった樹。まずは先程話していた友奈の元に行き、その動きを見る。改めて見る友奈の勇者パンチは力強く、その拳はこの世界で数多のバーテックスを粉砕している。何なら彼女だけでなく、高嶋……思えば、楓も同じ事をしているが。

 

 もし、それが自分にも出来たならと樹は思う。そして思い付いたのだ。楓が光で剣やワイヤー、弓を形造るように、自分もワイヤーを使って同じようにそれらを形造る事は出来ないだろうかと。

 

 「こうして、こう……えい!」

 

 「わぁ、ワイヤーが集まって拳の形みたいに……凄い! そんな事が出来たんだね樹ちゃん。まるで楓くんみたい!」

 

 「えへへ、試しにやってみたら出来ちゃいました。今までの戦い方でも敵に通じてはいたんですが、更なるステップアップがしたくて」

 

 「樹ちゃんいっぱい考えてるんだね。偉いなぁ」

 

 「皆の動きを戦い方の参考にしようと思いまして。まずは友奈さんの所へ」

 

 「まず私? い、いやぁ光栄でありますな……なんで最初に私を?」

 

 「そう言われてみれば、なんででしょう? ……多分、友奈さんとお兄ちゃんの2人が、一緒にバーテックスを倒したのが強く印象に残ってるからでしょうか?」

 

 そうして試しに、とワイヤーを操作してみた結果、1回目で拳の形を作り出して虚空を殴るように動かす事に成功した。友奈の動きをしっかりとイメージ出来ているからだろうか、緩やかな動きではなく素早く突き出されたそれは見る者に当たれば確かなダメージがあることを想像させるには充分であった。

 

 友奈からまるで兄のようだと褒められれば嬉しくない訳がなく、照れたようにはにかむ樹。その後にそんな疑問を口にされ、自分自身も疑問に思う。普段の彼女からすれば兄か姉のどちらかから真っ先に向かいそうなものだが、足は自然と友奈へと向いていたのだ。それが何故なのかと改めて考えてみると、そんな考えが出てきた。

 

 樹が初めて対峙したのはヴァルゴ……乙女座。その乙女座に捕えられた楓を救う為の、巨体を穿った友奈の勇者パンチ。そして硬い御霊を破壊した、彼女と兄の2人によるダブル勇者パンチ。それが強く印象に残るのは当然とも言えるだろう。

 

 「だから、こういう時友奈さんならって自然と足が向いたのかもしれません」

 

 「な、成る程ぉ……深いねぇ。あ、これって……若葉ちゃんが前に言ってた“後輩は常に先輩のする事を見ている”っていう事なのかな……よーし! 近くで見ていってね樹ちゃん! 参考になると嬉しいんだけど」

 

 「はい! 友奈さん。沢山勉強させてもらいます!」

 

 「……お、あれは中々面白い光景じゃあーりませんか。ほら東郷、見てみ」

 

 「友奈ちゃんの動きに合わせて樹ちゃんの糸の形状が変化していく……器用だわ」

 

 「可愛い外見に反して樹ちゃんの武器はエグいからなー。いや、エグさで言えばかーくんもどっこいか。まあ頼もしい後輩に育ちそう」

 

 「元々樹ちゃんの素質は凄いのよ雪花。私も後で磨かなくちゃ」

 

 樹の理由を聞き、分かったのか分かっていないのか納得したように頷く友奈。その際脳裏に浮かんだのは日常の中でふと若葉が溢した言葉だ。そうとなれば先輩として後輩に情けない姿は見せられないし、後輩の助けになるのなら全力でやろうと更なるやる気を見せる友奈。そのやる気に釣られ、樹もまた声を出して気合を漲らせる。

 

 そんな様子を面白そうに見ているのは雪花と、彼女に言われて視線を向けた美森。その先にはやる気を漲らせていた2人の鍛練風景だ。友奈が拳を突き出せば樹のワイヤーが拳を形作り、なぞるように突き出される。友奈が回し蹴りを繰り出せば、樹のワイヤーが今度は足のような形を作り、蹴りを繰り出す。回し蹴りというよりはまるで鎌でも振るっているかのようだったが。

 

 それらを僅かな時間でやるのだ、威力は未知数だが実戦で使うには充分かもしれない。雪花が感心したように頷き、改めて樹のワイヤー、そして同じようなことをしている楓の光の強さ、というかエグさを実感する。斬って良し縛って良し刺して良しに加え、殴って良し蹴って良しが加わったのだからその感想も仕方ない。美森も雪花の言葉を聞いて誇らしげにしている。

 

 「ところであの武器、糸? ワイヤー?」

 

 「好きな方で呼べば良いと思う。私は断然“糸”ね」

 

 「……っと、皆、警報だよ。鍛練は中止だねぇ。友奈と樹も一旦中断だよ」

 

 「はーい! という訳で樹ちゃんごめんね、出撃しなきゃ」

 

 「考えようによってはついています。今習った事を実践できますし」

 

 「はっ! そう言われてみればそうだね。私も訓練の成果を発揮するぞー!」

 

 そんな話を2人がしていた時、全員の端末から聞き慣れたアラームが鳴り響く。敵がやってきた合図だが、今回のは神託が無かったので決戦ではない。そうだと理解しつつ、楓は鍛練をしていた全員に呼び掛け、友奈と樹にも中断するように声を掛ける。2人は素直に中断し、訓練の成果を試す事が出来ると燃えていた。

 

 この後、勇者達は樹海へと赴いて襲来してきたバーテックスと戦うのだが、そこに赤嶺の姿も超大型の姿もなく、これまでに現れたような特殊な大型等も居なかった。そんな相手に負ける筈も苦戦することもなく、勇者達は勝利を納める。強いて言うのなら……樹の新しい戦法は、充分にバーテックスに通じる物に仕上がっていたという。




精霊紹介コーナー(まさかの2回目)

与一(よいち)

夜刀神と同じく本作オリジナルの精霊。輝義や義経と似たような姿の人型の精霊。名前の元は平安時代の弓の名手、那須 与一より。

精霊としての能力は楓の射撃能力の向上。光を射撃武装へと変化させている時、彼の目には“どう飛べば当たるか”が“軌跡”として映り、その軌跡をなぞるように光を操作する事で百発百中を実現する。また、その際の光のコントロールもある程度与一が担っている。楓本人の射撃精度はそれほど高く無いが、与一が出現中は美森達にも匹敵する。たまに勝手に現れては輝義や義経、鈴鹿御前とチャンバラしたりして遊んでいる。



という訳で、原作17の終わりから18話の入り、樹ちゃん改造計画というお話でした。原作と違うのは球子が超大型の攻撃を跳ね返したこと、樹ちゃんが試行錯誤無しに“やったら出来ちゃった”と一発でワイヤーによる拳の作成&攻撃を成功させている事です。自慢の妹だからね、仕方ないね。

そろそろ年の終わりも迫ってきました。本作では年末は大体幸福な感じの番外編で終わってきましたが、今年もそうするつもりです。またアンケートするかもしれません。その時は是非とも投票をば。

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)
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