スパロボ30が楽しくて仕方ありません。ドライストレーガーのデザイン良し、乗組員良し、武装良し、新要素良し。男主人公も主人公機もカッコいいですね。
大満開の章ののわゆ展開に色々びっくりしてる私です。あのままマンガや小説の展開になるとまた色々言われそうですね。アニメ自体は楽しんで見てますが……二次で千景を幸福にしなきゃ(使命感
あ、千景の新URは当たりませんでした。FGOの卑弥呼もダメでした。まおりゅうのヴェルドラも……どうにもガチャ運ががが。
さて、今回は後書きにアンケートがありますので、出来れば気楽に投票して下さると嬉しいです。それでは本編、どうぞ。
今日も今日とて愛媛完全解放の為の決戦に向けて放課後の時間を使って砂浜で鍛練をする勇者達。ここ数日何度か敵がやってきているがそれも難なく下し、結果的に鍛練、実戦を繰り返して着実に力を付けていっている。
「こうして糸を繋ぎ合わせるとですね……大きな盾になります。それから雲外鏡の鏡と組み合わせると……」
「おおっ、ワイヤー入りの窓ガラスみたいに! 器用だな! で、盾ということはタマにガードする時のコツを聞きに来た訳だ」
「宜しくお願いします、球子さん」
「任せタマえよ樹。なんだろうなぁ、お前にお願いされると嬉しいぞ」
特に成長しているのは、先日からワイヤーを使った戦い方で新しい戦法を生み出しつつある樹だろう。友奈の拳や蹴りによる格闘戦に始まり、少しずつ仲間達に専門の技術を教えてもらい、見て研究して物にしていっていた。今も球子に盾による防御技術を教わっている。
樹の前にはネット状になったワイヤーを組み込むようにして現れた緑色の光の壁、精霊雲外鏡による鏡を組み合わせたワイヤー入り窓ガラスのような盾。2つを組み合わせた事により飛躍的に防御力が増しており、友奈のパンチや銀(中)による全力の攻撃を防ぎきる頑強さを有している。尚、楓のだいだらぼっちによる巨腕の攻撃には流石に耐えられなかったものの10数秒耐えている。
「ワイヤーを束ねればウィップのように使えるか……うーん、樹さん賢い! 私の鞭で良ければ、幾らでも学び取ってね」
「はい、ありがとうございます歌野さん」
ワイヤーのまま使うのではなく、束ねて1つの太い糸……ではなく鞭として使うことを覚えた樹は球子に続いて歌野にも教えを乞いに行く。これが本物の鞭なら教えて貰ったところでそこまでのモノにはならないだろうが、樹の手にあるのは元々彼女の意思1つで自在に動く糸。ならば束ねた鞭となっても意思1つで自在に動かせるのは道理。
結果、歌野の教えを得た樹は彼女の動きを学んだ事で自在に鞭を振るえるようになった。破壊力こそ本物には及ばないが、いざというときの凪ぎ払い位は出来るだろう。
「気の練り方は、そう簡単には修得出来ない。まずは呼吸から始めよう。割りと長い道のりになると思うが」
「大丈夫です。棗さん、教えてください」
武器や動きではなく、棗が時折口にする“気”を学ぼうと彼女の元に足を運んだ樹。正直なところその“気”とやらについては全く理解出来ていないが強くなる為なら、とチャレンジ精神から教わりに来たのだ。そうしてやってきた樹を邪険にすること無く、棗はそう念押しした上で自分なりに教えていく。
当然と言うべきか、彼女の言う通り一朝一夕で出来るようなものではなく棗と共にゆっくりと呼吸をするだけとなったのはご愛敬。しかし全く得るものが無かった訳ではないようなそうでないような、教わる前よりも心なしか素早く息を整えられるようになった……気がする。
「投げ槍のコツ?」
「はい。前にお兄ちゃんが光で槍を作って投げてたので、同じような事が私にも……」
「そうか、ワイヤーを束ねて有線式の槍を作れるんだもんね。便利ー。いいですとも、教えられるだけ教えましょうとも」
「感謝です、雪花さん」
以前見た兄の行動を思い出し、槍を直接振るうのではなく投げるのなら最適な人間は……ということで樹が次に習いに来たのは雪花。樹のやりたいことを察した雪花は改めて彼女の武器って便利だなと感心し、前例があるとは言えそれを思い付いた彼女自身にも感心する。
それはそれとしてしっかりと投げ槍について教え教わる2人。実際にはワイヤーを束ねた槍を操作しているので“投げ”と言って良いかは少々疑問だが、どこに向かって投げれば有効か、どういう意図で投げるかを教わる樹。そうして次々に教わり、自分なりに物にしていっている彼女の姿を巫女達が見守っていた。
「樹ちゃんが色々な人から色々な事を教えて貰ってる……」
「この合同訓練で1番伸びているかもしれませんねぇ」
「うん、それに直ぐに実戦で使えるくらいに使いこなしてる。勇者の中で1番伸び代があるのはあの子かもね」
「はい。決戦が直ぐ近くまで迫っている今、頼もしいですね」
様々な人に教えて貰いに文字通り東奔西走する樹の姿を微笑ましく見守る3人。1人に教わる毎に戦略の幅が広がっていく彼女を頼もしく思い、その将来性に期待が高まる。3人と同じような事を思っているのだろう、鍛練の合間に似たような表情で樹の姿を眺める勇者達は姿もあった。そうして幾ばくかの時間が経った後……全員の端末からアラームが鳴り響く。
「また敵襲だと言うの? 最近は随分な頻度で仕掛けてくるのね」
「決戦を前にイライラさせようとしているのかもです~」
「……では平常心で敵を切り払うまでね」
「皆のお陰で大分戦い方の幅が広がった気がする……ようし!」
「ふふ、やる気満々だねぇ樹。じゃあ、その広がった戦い方の幅を見せて貰おうかねぇ」
「任せてお兄ちゃん。教えてもらったこと、実践してみせる!」
そしていつものように極彩色の光に呑み込まれ、樹海へと飛ばされる勇者達。この後に起きた戦闘について、特に言うことはない。今更赤嶺や特殊な力を持った初見のバーテックスも居ない襲撃など勇者達には何の驚異にもなりはしないのだ。が、決戦前にこう何度も仕掛けられては千景のように辟易してしまうのも仕方ないと言うもの。
が、辟易しようが平常心で居ようが結果は変わらない。これまでと同じように勇者達が殲滅し、今回の襲撃も樹の、皆の鍛練の実践の糧となるだけの事であった。
そうして更に数日程経ち、日課となりつつあった砂浜での鍛練……の前に全員で1度放課後に部室へと集まっていた頃に聞き慣れたアラームが鳴り響いた。皆が各々端末を取り出した姿を見て、巫女達が真剣な表情を浮かべる。
「皆さん。今日は決戦の日となるでしょう。ご武運を」
「当然、残った超大型もより成長して強くなって襲い掛かってくると思う。気を付けてね」
「征って参ります」
ひなたと神奈から激励を受け、須美が返事をしたところで樹海へと飛ばされ、そのまま美森の力でカガミブネを使い愛媛へと飛び、その奥地まで楓の光の絨毯に乗って向かう勇者達。因みに樹も光の絨毯、ないしワイヤーを操って空を飛べないか試してみたが失敗に終わっている。
そして向かった先には……勇者達の予想通り、赤嶺の姿があった。それを認識した勇者達は彼女から少し離れた位置に降り立ち、ゆっくりと見据える。全員が地上に足を着けた事を見て、彼女が口を開く。
「皆ー、こーんにーちわー。愛媛の命運を賭けて戦いに来たよ」
「ハロー、赤嶺 友奈。間違い無く来ると思っていたわ」
「くっ、超大型バーテックスの前に、まずはお前が相手という事か!」
「……あれ? 怪我治ってたの? あんなに超大型の攻撃を防いだり跳ね返したりして? ……まあ、それはともかくおめでとう。困ったなぁ、作戦にギリギリ間に合ったかと思えば、1個足りなくなっちゃった」
「……? 何をぶつぶつと言っている。また精神攻撃でも企んでいるのか」
どこかの教育テレビに出てくるお姉さんのように挨拶を投げ掛け、さらりと戦いに来たと告げた赤嶺。近くにバーテックスの姿は無く、今現在は彼女単身であるのが見て取れた。挨拶は歌野が返し、球子は旋刃盤を構えて戦闘の構えを見せる。そうして構えた彼女を見て、赤嶺は首を傾げた。
球子の快復におめでとうと口にはするものの、その表情は少々困ったように眉を下げている。その後になにやら呟いていたが、それは勇者達の耳にははっきりとは聞き取れず若葉が彼女がまた何か悪い事を企んでいるのではと疑い……正解だとでも言うように、赤嶺はにんまりと笑った。
「いいや、今度は肉体的な攻撃だよ。それ! いけ! 新たな改造精霊!」
「きゃっ! な、なに!?」
「ちっ、追尾形式か……!? 斬っても纏わり付く!?」
「な、なんだかべたーってくっついている!?」
「くっ、結構速い……!? なんで光が!?」
「楓君の光が消えた……って落ちる!?」
彼女が勇者達を指差しながら言った言葉に反応してか、どこからともなく現れた無数の光の球達。それは勇者達へと高速で飛んでいき、勇者達はどんな効果があるかわからない以上それに触れないように動く。回避したり、飛び回ったり、或いは武器で弾いたり切り裂いたり、防いだり。
が、どれも効果はなかった。武器で弾こうとすればまるでお餅のような感触と共に受け止められ、切り裂こうとすれば半ばで止まる。殴ればズブズブと沈み、逃げようとすればそれを越える速度で追い付かれ……やがて、それらを行った全員がその白い光の球……改造精霊によって両腕が使えなくなるように拘束された。飛んでいた上空組も全員捕まり、どういう訳か楓の光が消えて落下してしまう。
因みに、落下した楓、美森、須美、杏の4人だが……咄嗟に下に移動した風、友奈、新士、球子がそれぞれ下敷きになる形で地面にぶつかる前に受け止めている。
「勇者捕獲用のトリモチだよ。皆を捕獲出来たみたいだね。因みに、楓くんを捕まえてる子は光の生成を封じる特別仕様~。造反神の力作だよ」
「あたた、大丈夫? 楓……む、何やら柔らかな感触が……」
「助かったよ姉さん……あと、動かないでくれると嬉しいんっ、だけど」
「東郷さん、大丈夫?」
「ええ、大丈夫よ友奈ちゃん」
「須美ちゃん、無事かい?」
「え、ええ、新士君……か、顔がち、近っ……!」
「タマっち先輩ありがとう……た、タマっち先輩!?」
「むぐぐ! むぐーっ!」
勇者達に纏わり付いている改造精霊についての説明をしている近くで助けられた者と助けた者がそんな会話を繰り広げていた。状況を説明するのなら、ヘッドスライディングで潜り込んでいた風が背中の柔らかな感触を体を揺らして確かめ、滑り込むように潜り込んだ友奈は両膝の間に横抱きをするように美森を受け止めて互いに笑い合っている。
新士は仰向けの状態でクッションとなり、須美を受け止めた。その際お互いに顔が向き合う事になり、両手が使えないので咄嗟に離れることも出来ず顔が近いことに気付いた須美が赤面。園子(小)はそれを羨ましげに見ていた。彼と同じような体勢で潜り込んだ球子は杏との身長差のせいか丁度彼女の胸に顔が埋まり、窒息しそうになっている。
「……にしても、まさか光を直接封じられるなんてねぇ」
「こんなモノ直ぐ引き千切ってやる!!」
「だろうね。それも奇襲用の精霊だ、2度目の捕獲はまず不可能……でも、今ほんのちょっとでも皆の動きを止められれば、それで充分なんだよ」
「あ、まずい! あれが来る!」
「行くよ」
光が出せればこんなトリモチくらいどうとでも出来そうなのだが、べったりと腕と水晶を覆い隠すように纏わり付いているそれは赤嶺が言うように光の生成を封じる能力があるのだろう、いつものように出す事が出来ない。他の皆も腕を動かせない以上武器は使えない。
だが、トリモチと言うだけあって物理的な強度はそれ程でもない。銀(小)がやろうとしているように、少しすれば勇者の力であれば強引に引き千切る事は充分に可能だろう。勿論、赤嶺もそれは理解している。だが、例え僅かな時間であっても動きを止める……無防備な状態に出来るのであれば、彼女の力からすれば充分過ぎる。
「勇者……!」
「させない!!」
「っ!? 楓くんのとは違う緑色の光の壁……防がれた?」
「樹! 樹だけ……攻撃を受けていない!?」
「それに赤嶺ちゃんの攻撃を受け止めた……」
「皆に手出しは、させない!」
身動き出来ない勇者達に右腕を引き絞りながら迫る赤嶺。このままであれば間違いなく誰かが、最悪全滅する可能性すらあり得た。それだけの速度と力を彼女は確かに有しているのだから。そう、このままであれば。
勝ちをほぼ確信していた彼女が拳を突き出すその瞬間、彼女と勇者達を隔てる緑色の壁が現れ、突き出された彼女の拳を防いだ。強い意志が込められた言葉と共に壁と共に立ちはだかったのは、樹。風の疑問の通り、どういう訳か彼女だけには精霊が仕掛けてこなかったのである。
唯一動くことが出来た彼女が出した緑色の壁はワイヤーを格子状に編み、それを挟むように2枚展開することで作られている。それは友奈と同等以上の破壊力を誇る赤嶺の拳を完全に受け止め、防ぎきっていた。その強度に彼女は予想外とでも言いたげな顔をし、少しばかり距離を取る。
「犬吠埼 樹ちゃん……か。攻撃を防がれたのは予想外だけど、私と正面から戦う気なのかな?」
「皆に手出しをすると言うのなら……私は!」
「なんで樹だけ攻撃を受けてないんだ?」
「簡単な話だよ。この勇者用トラップ精霊、御覧の様に極めて強力だけど作るのに時間が掛かってね。何とか人数分用意したと思ったら、土居 球子が退院してるんだもん。1つ足りなくなったよ」
― だから、1番戦闘力が低そうな君はターゲットから外したんだ ―
赤嶺の問い掛けに毅然とした態度で相対する樹。彼女1人が動ける事に銀(中)の口から疑問が溢れると、赤嶺がそれに答える。奇襲とは言え勇者達をしっかりと捉え、今も引き千切ろうとする勇者の腕力にもう少し保つ事が分かる程の拘束力。極めて強力との言葉に嘘は無いのだろう。
つまり、球子を除いた人数分しか用意出来なかったというのも本当。そして彼女の予想よりも早く球子が退院しており、それを彼女は把握していなかった為に後1体を用意することも出来なかった。なので彼女は彼女の視点で最も勇者としての戦闘力が低く見える樹を残したのだ。何故なら……。
「こうして直接、制圧すれば良いわけだから! 勇者パーンチ! もう1回!!」
「そんな、樹さんの壁が3回で」
「いや、3回“も”保たせた。それにあれで終わりじゃないよ」
「今度は直接!」
「ええい! 球子さんの教えを!」
「っ、壁の次はネットにして防いだ?」
「よし! ナイスガードだ!」
「勇者部期待の新人を甘く見過ぎね」
戦闘力が低いのなら、小細工無しで倒せば良いだけの事。そう言って迫る赤嶺は目の前の壁に再度拳を叩き付け、壁にヒビが入る。そこに更にもう1度と都合3度叩き付けたところで、緑色の壁は粉々に砕け散った。その事実に銀(小)が驚愕の表情を浮かべるが、新士は逆に保った方だと首を横に振る。決して防御力がある訳ではない樹の能力で友奈と同等以上の破壊力のパンチを、砕けたとは言え3度も防いだのだ、充分に称賛に値する。
勿論、壊して終わりではない。赤嶺はそのまま次は樹を直接狙う……のだが、今度は壁を出すのではなく、出したワイヤーをネット状に展開して受け止める。真っ向から耐えるのではなく、衝撃を逃がす方向で防いだのだ。そして、赤嶺が壁を壊して終わらなかった様に樹もまた防いで終わる訳ではない。
「ええええい!!」
「くっ、糸が変幻自在に……! こんなに強かったっけ!?」
「私の拳、歌野ちゃんの鞭、せっちゃんの槍……凄い、凄いよ樹ちゃん!」
「まだまだ……お兄ちゃんみたいには、いかないけれど!」
「今度は今までのを同時に……!」
「いいわよ樹! そのままやっちゃいなさい!!」
「姉さん煩いよ……でも、流石自分達の自慢の妹だねぇ。んんっ、姉さん、だから動かな……いやこれ、動いてるのは姉さんじゃないな……」
ネット状だったワイヤーが動き、赤嶺を絡め取ろうと動く。それを察知し素早く跳び退いた彼女だったがワイヤーは途中から拳の形へと変化し、追撃。跳んだ事で回避出来ない赤嶺は両手を交差させて防ぐが、想像よりも威力があったのか顔をしかめる。そしてそのまま吹き飛ばされるが難なく着地する……が、まだ樹の追撃は終わらない。
拳に続き束ねられて鞭となったワイヤーを普段の様子からは想像出来ない程に荒々しく、攻撃的に振るう樹。先の拳の事もあり、食らう訳にはいかないと流石に赤嶺も回避に専念しつつ、それでも距離を詰めていく。そしてある程度詰めたところで、今度は鞭から槍となったワイヤーが凄まじい速度で一直線に飛んできた。
槍を体を傾ける事で避けた赤嶺だが、直ぐに先程飛んできた槍が樹の手元に戻り、彼女が投げる事でまた飛んできた槍を避ける。投げ方から見てそこまで速度と威力が出るとは思えないが、勇者の身体能力の彼女自身のワイヤーの操作技術によりその2つを両立させている。しかも槍の形をしていようとも元はワイヤーで尚且つ手首の鳴子百合と繋がっているのだから直ぐに手元に戻ってくる。
強い。赤嶺は心からそう思った。ワイヤーだけでも充分厄介なのに、破壊力まである。何かしらの形にワイヤーを動かす速度と精度も速く的確で、正しく変幻自在。更には1つ1つ作って使っていたそれらを同時に扱い、赤嶺を攻め立てる。同時に扱う為に束ねるワイヤーの数は少なくなり大きさも小さい。かなり集中しなければ操作も狂いそうになる。それでも樹は、それをやってのけ……同時に、毎回こんな事をやっている自分の兄は凄いのだと内心で思った。
「だけど、もう……見切っちゃったよ! 覚悟して!」
「いや、樹はやらせないぞ! これだけ時間を稼いでくれたら充分だ!」
「お姉様!? くっ……もう復活してきたか」
「なかなかの奇襲だったけど、あんたはアタシ達の自慢の妹を侮った。詰めを誤ったわね、赤嶺 友奈」
「凄いわ樹! あんた……成長したわね!」
しかし、教わった拳や武器の扱いと違って同時に操作するのは見様見真似の付け焼き刃。それに1人で対峙する精神的なプレッシャーもあったのだろう。最初の頃よりも操作は荒くなり、精細さに掛けてきている。更に束ねるワイヤーの数が少なくなった事で強度も下がったのだろう、赤嶺が拳に蹴りにと迎撃すると形を保てなくなっていた。
更には赤嶺自身が樹の攻撃に慣れてきて迎撃に回避にとワイヤーを掻い潜り、遂には樹の前にまでやってきた。先程のような防御も間に合わない距離、やがてその拳は樹自身に振るわれ……当たる直前、赤嶺が身を引き、その一瞬後に2人の間にヌンチャクが振り下ろされた。それは拘束を引き千切り自由となった棗の物だった。
想定より復活が早かったか、それともそれだけの時間を樹1人に稼がれた事が悔しかったのか驚きの表情と声を上げつつ、振り下ろされたヌンチャクが自身にも向かってきたので大きく後方へと跳んで勇者達から距離を取る赤嶺。その間にも他の勇者達も復活し、風と夏凛の様に樹を褒めつつ赤嶺と相対する。
「はぁ……はぁ……わ、僅かの足止めが精一杯でしたけど……よ、よかったぁ」
「ふふ、流石自分達の自慢の妹だねぇ」
「どうだ! 樹さんは強いだろ! 何せあたしと園子と新士を同時に相手しても勝ったんだからな!」
「樹先輩は強いんだぞ~!」
「あったねぇそんな事も……うっ、恥ずかしい事を思い出してしまった……」
「1番弱いと思った彼女さえこれか……全員が全員成長しているっていうことだね。それなら……」
「っ! この地鳴りは……遂に来たか」
「超大型バーテックス、見えました! 真っ直ぐこちらにきます」
「よし! 樹のガッツに負けるな皆! 天下分け目の戦いだ、行こう!」
【応っ!!】
荒くなった息を棗に教わった呼吸で整えつつ、時間稼ぎが成功して皆が復活してきた事に安堵する樹。楓に朗らかな笑みと共に頭を撫でられて褒めれると嬉しそうに顔を綻ばせ、そんなやり取りをする兄妹……現状パッと見姉妹……を見て予想外に強くなっていた事に驚きつつ、赤嶺は右手を空に向かって掲げる。すると樹海が地震が起きたように揺れ、彼女の遥か後方から土煙と共に勇者達に向かってくる巨大な影と、その周囲に幾つもの大小様々な影。
巨大な影……それは、以前逃げて生き残った超大型のアニマート……それが更に成長を遂げた超大型。例えるなら、それは白と灰で彩られた巨大なパイプオルガン。そのパイプの部分が爪の様に変化した巨腕の様に動き、鍵盤部分を胴体として浮遊している様にも見える。明らかにアニマートの時よりも大きくなっており、さながらビルがそのまま迫ってきているかのよう。
只でさえ規格外に大きかったアニマートが更に巨大化した姿……“グランディオーソ”。だが、樹のガッツに触発された事とこの1戦が愛媛を完全解放する為のモノであると理解している勇者達に怯えはない。後輩が、先輩があれだけ頑張ったのだ。ならば次は自分達が頑張るのだと。そう思う勇者達だが、楓にだけ問題が残っていた。
「楓君、光の絨毯を……楓君? その水晶に着いているトリモチは……」
「ごめんねぇ、美森ちゃん。どういう訳かこれだけがどうしても取れなかったんだ。幸い拘束は外れたけど、相変わらず光は出せない。空中戦は、出来そうにないねぇ」
「そんな……じゃあ楓さんはどうやって戦うんですか?」
「それは勿論、友奈達と同じく……拳しかないよねぇ!!」
腕ごと身動きを封じていた精霊は皆と同じく振りほどいたものの、水晶にはまだべったりと白いソレが着いていた。それは何故か拘束していた部分と違って引き剥がす事が出来ず、楓はまるで着ぐるみの上から更に枷を付けられたような気分に陥り……表情には出さないものの、内心かなりイラついていた。
彼は普段、怒ることはあまり無い。それに怒る事はあってもそれは怒るというより叱ると言った方が正しい。今生において本気でぶちギレた事など小学生の頃の風が樹に意地悪し過ぎた事や養子時代での3体を相手にした時や調子に乗ってアスレチックから落ちた銀に、決戦後の友華に対してくらいと両手の指で足りる。この世界にやってきてからもそれほど怒った事は無い。
しかし、だ。造反神によって女の子にされ、力の一部は封じられた。それによる日常におけるストレス。封じられていなければもっと楽に倒せただろうという申し訳無さ。以前の精神攻撃。先程も散々言っている自慢の妹の樹を低く、軽く見られ、加えてさっき気付いた拘束していた精霊の自身の身体……主に胸辺り……を弄ぶような動き。重なり続けるストレスは間違いなく彼の怒りのボルテージ上げ続けていた。
「おおっ、楓さんのパンチで星屑が吹っ飛んだ!?」
「っ、樹ちゃんも樹ちゃんだったけど、楓くんも楓くんだね。先輩達でも無いのにパンチでバーテックスを倒すなんて……」
「そ、そうでした。楓さんは友奈さん達と格闘戦が出来るくらいの近接戦闘能力があるんでした」
「そもそも楓君の本領は接近戦よ?」
「えっ、そうなんですか?」
「そりゃあ自分の未来の姿なんだから、本来は接近戦だろうねぇ」
「アマっちがそうだもんね~」
手近な星屑に跳んで近付いて怒り混じりの拳一閃。その一撃を食らった星屑は殴られた部分を大きく凹ませ、吹き飛んでから光へと変わる。拳で倒した姿はまるで友奈達の様だと小学生と赤嶺が驚きの声を上げるが、美森が言ったように楓の本領は接近戦である。
そんな楓に負けていられないと、他の勇者達も戦闘を始める。友奈と高嶋の2人は楓と共に殴る蹴るでバーテックスを打ち倒し、若葉と夏凛と風の3人は突っ込んで切り捨てる。同じように銀ズと新士も突撃して切り裂き、棗もヌンチャクを振るいどんどん撃破していく。絨毯が使えない為美森と須美、杏は地上から上空はバーテックスを中心に狙撃。園子ズと球子はバーテックスへと攻撃しつつも射撃組の護衛をし、雪花も槍投げで射撃組に迫る敵を優先的に倒す。
そして赤嶺相手に奮闘した樹はワイヤー本来の、いつもの使い方で歌野と共に一気に殲滅を図る。伸ばしたワイヤーは彼女の視認できる全てのバーテックスに絡み付き、柄ごと右手を振り返らせながら引き寄せ、一気に収縮させて切断。連続して起こる爆発と発光を突き抜けてくる敵は漏れなく歌野の鋭くも荒々しい鞭の一閃にて一気に撃破される。
「っ! 皆、離れろ!!」
そうして戦闘を優位に進めていると、勇者達の足下が大きな影で黒く染まる。日常の癖か、太陽が雲に隠れたのか確認するように上を見上げれば、そこにあったのは今にも振り下ろさんとされるグランディオーソの巨腕。若葉が大声でそう言い終わるかどうかという頃には全員が巨腕の下から退避しており、その数秒の間を置いてそれは振り下ろされた。
瞬間、樹海に響き渡る轟音と地震の如き大きな揺れ。そしてその破壊力を物語るような衝撃は土煙と暴風を伴い、その巨躯と比べれば遥かに小さい勇者達を木の葉のように吹き飛ばした。が、幾度も戦闘を重ねた勇者達は直ぐに体勢を立て直し、無事に樹海の上に着地する。
「皆! 無事!?」
「……ええ! ちゃんと全員居るわ!」
「樹も最初の頃みたいに着地失敗してないみたいだねぇ」
「も、もうあんなことにはならないもん!」
「一撃で樹海が……」
「分かってはいるのだけど、改めて“大きい”というのはそれだけで厄介なものね。ただの腕の振り下ろしであれだけの破壊力……」
「当たったらスッゴく痛そうだね~」
「いや、痛いで済まないだろあれは……」
風が全員の無事を問い、直ぐに確認し、数えた夏凛が問題無いと答える。距離は離れてしまっているが、若葉が西暦四国組を、歌野が他の西暦組と小学生組の確認をしているようだ。今この場に居るのは勇者部の8人。とは言えお互いに視認できる場所を固まっているので直ぐに合流出来るだろう。
雑魚の殆どを倒したが、それは前哨戦……本命の前の準備運動のようなモノだ。愛媛奪還の為の、文字通り最後の固く大きな壁である目の前のグランディオーソこそが大本命。皆がそれぞれ改めてやる気を、戦意を高める。楓だけはちらりと水晶に付いたままの改造精霊を苛立たしげに見るが、両手に力を込めて皆と同じように正面の敵を見据える。時折、水晶から小さな……本当に小さな軋むような音を立てながら。
「さぁて……ここからが本当の勝負だよ、勇者の皆。バーテックスの皆、やっちゃってー!」
「ここが正念場だぞ!! 超大型バーテックス……ここで必ず討ち取る!!」
赤嶺と若葉の声が響き渡る。それを合図に動き出す超大型と再度涌き出す疑似バーテックス達。そしてそれらに向かい、跳び上がる勇者達。そして……楓本人にすら聞こえない程の小さな、枷にヒビが入るような、服が破れたような音を体の奥から響かせながら、愛媛を賭けた最後のぶつかり合いが始まるのだった。
精霊紹介コーナー(楓の全部で精霊何体だったかな←)
・
ゆゆゆいにも存在している精霊。なので詳しいビジュアルはそちらでご確認下さい。
精霊としての能力は楓の飛行能力の補助。光の翼を出していたり、絨毯を出していたりといった事は実は関係ない。“光を使って飛行している”場合にその操作の補助をしている。これにより楓は自在に空を飛び回り、高い機動力と速度を誇る。空中戦は間違いなく(他に飛べる勇者も居ないので)最強。名前の割に大人しく、鳥の見た目をしている為か青坊主を見るとその上に乗って暖めて孵そうとする。木霊の双葉を啄んだりもしている。楓の精霊の中では牛鬼に齧られる回数が1番多い。
という訳で、愛媛奪還ラストバトルの話でした。本作の樹は原作よりも強化されています。というか楓の影響で単純な勇者としての性能や強さは原作以上となっています。
そろそろ楓も女体化解除のカウントダウン開始です。何なら結構時間経ってます。原作でも赤嶺ちゃんから弱そうとか言われてる樹ちゃん。小学生より弱そうに見られてるのは彼女の普段の雰囲気やその見た目でしょうかね。でも雑魚相手のキルスコアは確実に勇者達の中でもトップですよね。何の情報も訓練も運動もせずに勇者の力を使ってみせたある種の天才やぞこの子。赤嶺ちゃんの目が節穴説、あると思います←
それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)
今年最後に投稿する番外編。その内容は……
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親密√第5段
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まだ書いてないリクエストから発掘
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何でもアリの夢空間第3段(内容は未定
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そろそろ姉妹達に明るい番外編を
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神達との再会
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ご都合展開満載ハーレム√