最近のガチャ運死にすぎてアプリのモチベ(特にまおりゅう)が下がってる私です。でもドカバトでゼノ悟空とベジータ当たりましたし、dffooではティーダのFRも当たりましたのでちょっとメンタル回復。ゆゆゆいはUR若葉当たりませんでした。クソが←
スパロボ30はようやく終盤です。寄り道してたらホント長引きますね。DLのサクラ大戦組、特に大神さんはいつも通りで安心しました。戦闘中に何やってんだコイツら。
それから、何度も同じ方から本作の誤字脱字の修正報告を受けています。念のためお名前は出しませんが、いつも本当にありがとうございます。
さて、今回はいつもより少し文字数多めです。そして……それでは、どうぞ。
「杏達は小型のバーテックスを!」
「樹や歌野ちゃんは美森ちゃん達の護衛と手伝いを頼むよ」
「任せて!」
「須美ちゃん達には近付けさせないわ!」
「残りの皆は超大型の相手をするわよ!」
「よーし、行っくぞー新士!」
「了解だよ銀ちゃん」
若葉、楓が指示を出し、代表するように美森と歌野が返事を返し、風が叫ぶと同時に小学生組の2人が即座にグランディオーソに向かい、皆も行動を開始する。今回、楓は水晶にくっついたトリモチのような改造精霊によって光を封じられているので普段のように光の絨毯はおろか武器や翼の生成すら出来ない。その為、射撃組は1人減り、地上からの援護を余儀無くされている。
機動力が格段に下がる事となった射撃組の3人を守るのは樹と歌野、園子(中)、雪花の攻撃範囲が広い者と球子、園子(小)のように盾を使える者。彼女達が数が多い中、小型のバーテックスの相手をし、残りの近接組の道を開く。その開いた道を突き進み、近接組はグランディオーソ……超大型へと攻撃を開始する。
「高嶋ちゃん!」
「うん、結城ちゃん!」
「今回は自分もやるよ」
「ならトリプルだね!」
「行くよー! 久しぶりの3人で!」
「「「せーのっ!!」」」
先んじて攻撃を仕掛けたのは、友奈と高嶋に加えて楓の3人。同時に並んで翔び上がった3人は同時に右拳を引き、その巨躯に向かって同時に突き出す。前に1度やった事があるトリプル勇者パンチ。それは確かに、その巨躯へと突き刺さった。
瞬間、先の超大型の振り下ろしの時と同様に樹海に響き渡る轟音と僅かに、だが確かに後方へと傾く超大型の巨躯。そして小さいながらもその巨躯に刻まれたクレーターが超大型にダメージを与えた事を物語っていた。それはつまり、以前倒したアニマートよりも巨大になってはいるが決して傷つけられない程の防御力を有していないということ。そして、傷つけられるのならば倒すのは不可能ではないということだ。
「楓達に続くわよ!」
「了解でっす! おりゃおりゃおりゃー!!」
「どんどん行くわよ! 完成型勇者の連撃を受けてみよ!!」
「我々も続く! はああああっ!!」
「前よりも大きいなら、その分前よりも切り刻むだけよ」
「樹が頑張った分、私達も頑張らなければ……はぁっ!!」
3人に続くのだと叫ぶ風と共に超大型に攻撃を仕掛ける勇者達。風の大剣が下部に叩き込まれ、銀達が巨躯を駆け上がりながら双斧と斧剣で切り刻む。夏凛も跳び掛かりながら双剣を連続で振り、斬撃を浴びせていく。この時彼女の脳裏にかつての決戦、レオ・スタークラスターに攻撃をした際に刀が折れた苦い記憶が過ったがそれが再現される事はなく傷を付けていっている。その事に誰にも見られる事なく安堵の息を吐いた。
正面から攻め立てる神世紀組に対し、若葉と千景は左右に別れて側面を切り裂きながら後方へと抜けていく。若葉は地面と平行に巨躯に刀を突き立ててそのまま巨躯を足場に走り抜け、千景は回転しながら何度も切り裂き、棗はヌンチャクを振り回して下部を何度も殴打。巨躯に対して傷は小さいが、勇者達の攻撃は確かにダメージを与えていっている。
「杏達には指一本触れさせないぞ!」
「星屑達に指ってあるの?」
「指どころか手足も無いわね」
「あ、あはは……それは言葉の綾というものでは……」
「でも、タマ坊と同じ気持ちで頑張るんよ~。わっしー達はわたし達で守るよ~!」
「はい、園子先輩! 全部防ぐよ~!」
そんな気の抜けた会話をしつつもやることはしっかりやる6人。遠距離組の3人を守るべく死角を無くすように六角形を描くようにそれぞれ位置し、迫る中、小型の攻撃を防ぎ、或いは迎撃する。何度も何度も現れるこれらのバーテックスの相手などすっかり慣れたモノだと言わんばかりにあっさりと対処し、その数を削っていく。
防ぎ、弾いたバーテックスを飛んできた旋刃盤が切り裂く。投げられた槍が的確に複数の敵を貫き、持ち主の手元に戻る。鞭が縦横無尽に動き、敵を一閃。覚えた緑の光の盾を出しつつ、ワイヤーを使っていつものように多くの敵を殲滅。それでも尚近付かれれば傘状になった槍が防ぎ、振り回すと同時に切り裂かれる。そしてそれとは別の槍を振るわれ、それだけでまた数多のバーテックスが爆散、光と消えていく。
「皆さんの援護を!」
「了解! 援護射撃を行います!」
「そのっち達が守ってくれているもの、安心して撃つことに集中出来るわ」
その鉄壁と呼べる護衛達に守られている事の安心感の中で、射撃組は仲間達の援護に集中する。超大型を相手取る仲間達に迫るバーテックスを撃ち落とし、時には超大型そのものへと攻撃を当てる。その着弾場所に近接組が追撃する事でより大きなダメージを与えてるのだ。
ここまでの流れを見れば、勇者達の優勢。中、小型は勇者達の攻撃に数発と保たず、超大型は巨腕を振り下ろしたり薙ぎ払ったりするものの勇者達を捉えることは出来ずに居る。何せ近接組はその巨躯に張り付いていると言っていい程の超接近戦を仕掛けており、それ以外は巨腕の届かない距離で戦闘をしている。当たる筈もない……の、だが。
「流石にやるね、皆。だけど……更に成長した超大型バーテックスのグランディオーソさんが、それで終わる訳がないんだよ」
「っ、何かしてくる。皆離れろ!」
戦闘を遠巻きに見ていた赤嶺が勇者達の奮闘に称賛の言葉を呟く。が、ニヤリと意味深に笑いながらそう言うと同時に、グランディオーソが左腕を勇者達の頭上にまで持ち上げた。それは一見すれば最初の時と同じ振り下ろしの動作にも見えたが、若葉はそれとは違うと判断し、巨躯に張り付く勇者達に離れるように言うと同時に自身も一旦離れる。
瞬間、左腕が赤く色付き初め……勇者達がその腕の下から逃げ切ると同時に、その下にある樹海の根が影の形にベゴォッ! と音を立てて陥没した。不可思議なその光景に驚きと動揺を隠せない勇者達だったが、左腕が勇者に向かって動いているの確認すると再び若葉が声をあげる。
「離れろ! あの腕の下に、影の中に絶対入るな!!」
「あーもう、何よあれ!?」
「樹海が一気に凹んじゃいましたね……」
「あの影の中に居たら私達もぺちゃんこになっちゃうのかな?」
「精霊バリアがあるから大丈夫だと思いたいけどねぇ……」
「あれは……ゲームでは良くある重力操作かしら」
「わ、凄い。もう答え分かっちゃったんだ。正かーい! グランディオーソさんは重力を操れるんだよ。重くしたり……軽くしたりね」
慌てて迫る腕の影から逃げる勇者達。追いかけてくる影の下に入った木の根はその度に凹み、地を平らにしていく。もし現実であれば樹海の被害に応じて現実世界にもかなりの被害が出ていただろうが、そこは神樹の中の世界なので気にしなくても良いだろう。心情的には宜しくないが。
大剣を担いで影から逃げる風の叫びに、冷や汗を掻きつつ追従する銀(中)が背後の潰れた樹海を見てそう呟く。同じように逃げる高嶋が自分達が紙のようにペラペラになる様を想像しながら顔を青くしてそう溢し、楓は精霊バリアがあるから……とは言うものの流石に試す気にはならなかった。もし大丈夫じゃなければ、グロテスクな未来予想図しか描けなかったからだ。
そうして逃げている間、その攻撃を見ていた千景は記憶にあるゲームに似たような挙動……効果と言うべきか、それを口にすると赤嶺がパチン、と両手を合わせて音を鳴らして正解と言って答えを教える。重力操作。つまりはグランディオーソは文字通りに重力を操る能力を持ち、平らになった樹海は重くなった重力により押し潰されたという事だ。そして……
「なんだ? 今度は青く……っ!?」
「お、わ、わわわ!? なんだぁ!?」
「体が軽く……いや、浮いてる!?」
「ちょ、何よこれぇ!?」
「っ、そういうことね……重く出来るのなら軽く出来るのも……いえ、これは軽くするなんてモノじゃ……」
「そう、軽くするんじゃなくて《重力の向きを変える》。何せ重力
持ち上げられた右腕。それは左腕よりも素早く動き、近接組の勇者達をその影の中に捉える。そして左腕とは違い青く色付き……動きが止まった直後、何とか逃れた友奈達と夏凛、新士、若葉、棗を除いた5人……銀達と楓、風、千景の体が突如として軽くなり、その場から浮き上がる。さながら水中に居るような、宇宙に放り出されたようになりつつ何とか手足を動かしてバランスを取ろうとするが、上手くいかない。
何がどうなったのか真っ先に気付いたのは先程と同じく千景。左腕が重力を操り重くしたのなら、右腕は逆に軽くした……否、重力の向きを下から上へと変えた。つまり、今浮いている5人は無重力によって浮いているのではなく、上に向かってゆっくりと
「っ、まずい、腕が来る!」
「いいっ!? ちょ、逃げ……無理! 防ぐ……体が上手く動かせない!?」
「あんなのが直撃したら……っ」
「させない!!」
「樹!? ナイスよ樹、助かったワ!」
ある程度の距離を浮かせた5人目掛け、そのまま振り下ろされる青から元の色に戻った右腕。今の状況では、光を使えない楓は勿論他の4人にも成す術がなかった。逃げる為の踏み締める足場がない。飛行手段も無い。防ごうにも今度は上から下へ落下中で体が上手く動かせないし、そもそも大きさ的に無理がある。無防備の状態で巨腕に叩き潰されることになれば、精霊バリアが耐えられるかも分からない。
そんな絶望的な状況から救ったのは樹。彼女が出したワイヤーが5人の体に絡み付き、自分達の元へと引き寄せたのだ。重力の操作が無くなったので問題なく届いたが、仮に過重力ではなく浮き上がらせる程度ならワイヤーを伸ばしても問題はなかっただろうが。正に九死に一生を得た5人は樹に感謝し、今度は腕の影に入らないように気を付けつつ再び接近していく。
そうして近付く勇者達を右腕の薙ぎ払いが襲うが、高く飛び上がることで避ける勇者達。その際に夏凛と銀(中)と若葉はすれ違い様に迎え撃つ形で斬撃を浴びせた。同時に3ヶ所切り裂かれたパイプのような右腕が通り過ぎた直後、着地した3人の顔が歪む。カウンター自体は成功したが、その際に凄まじい衝撃が両腕に襲いかかっていたのだ。
「っ、流石にあの大きさにカウンターは厳しいか」
「った~……素直に近付いて体を攻撃した方がいいな」
「そうね。でもさっきみたいに浮かされたら面倒だし……」
「あんず! どうだ、なんかわかったか!?」
「うん、タマっち先輩。これまでの行動から見て、左手が赤くなったら重くなって、右腕が青くなったら浮かされる。同時に使ってはいないから、どちらかしか使えないのかも……」
「後は、あの腕の下にしか効果が無さそうってところかな~。多分、腕の下の影の範囲でしか重力の操作は出来ないんだね。だからあの腕そのものをどうにかすれば……」
「壊すか、動かなくすればいいんですね~」
「あの大きさだから、動かなくするのはあまり現実的ではないわね。壊す方向でいきましょう」
「だそうよ!! 腕のブレイクを狙いましょう!!」
痺れる腕をプラプラと振りつつ、また赤くなった左腕を見て直ぐにその場から離れつつそんな会話をするカウンターをした3人。その後色が戻った左腕を下ろした超大型は右腕を浮かべ、勇者達を影の範囲に入れつつ青く染め始める。次は浮かされる訳にはいかないと左腕の時よりも素早く、着地の事を考えずに全力でその場から離れる勇者達。
一見すれば樹海そのものに変化はないので左腕の過重力より危険は無さそうに見えるが、良くみれば細かな葉や破片等が浮き上がっているのが見える。重力操作。その凶悪さを身を持って知った超大型の近くの勇者達は忌々しげに青い右腕を見上げた。
そして、離れた位置に居る8人はその様子を観察し、超大型を攻略するべく頭を働かせていた。球子の問いかけに杏、園子(中)、園子(小)、美森とこれまでに得た情報から重力操作の効果範囲や攻略する為の作戦を考え、それを全員に簡潔に歌野が伝えて勇者達は反撃に出る。
「腕の破壊は分かったが……」
「腕も体も大きすぎるのよこいつ!」
「攻撃手段そのものは他のバーテックスと比べるとシンプルなんだけどねぇ……」
両腕による薙ぎ払いと振り下ろし。グランディオーソのこれまでの攻撃方法は、重力操作を除けばこの2つ。本体の動きは鈍重であるし、攻撃を当てる事そのものは容易だ。実際、勇者達は何度も攻撃は当てている。確実にダメージは与えている。だが、その巨躯に対して付けられた傷はあまりに小さく、少しずつ修復もされて傷が消えているところも出てきている。
これまで出会ったバーテックスの中でも最大の巨体。その比べるのもバカらしい体格差はただそれだけで厄介極まりない。連続攻撃で畳み掛けようとしても捕まれば終わりの重力操作と巨腕による攻撃がそれを許さない。腕を動かなくさせるのは勿論、破壊を狙うのも正直に言って難しい。
(自分の光さえ封じられていなければ……いや、そもそもこうして女にさえなっていなければ……)
楓は悔しさと怒りに拳を握り締めながらそう思う。もし、改造精霊によって光を封じられていなければもっと多くの手札があった。もし、女になって強化を封じられていなければ一撃で腕なり体なりを破壊出来たかもしれない。そう思えば思う程、その身を怒りが焦がしそうになる。
(ああ、本当に……造反神は余計な事しかしないねぇ……!)
というか、自分に対してもそうだが造反神に対しての怒りの方が大きい。目の前に居たらそれはもう怒りに任せて怒鳴り散らしながらぶん殴りそうに成る程に。思い出すのも腹立たしいあの男と同列に並べる程に。普段温厚な楓でも、それだけの怒りを覚えていた。
「……姉さん」
「なに楓? 何かあいつの腕を壊すいい方法でも思い付いた?」
「いや、むしろ壊してほしいのは自分の腕の水晶にくっついてる精霊なんだけどねぇ」
「あ、まだくっついてるのね……ってそりゃそうか、光出してなかったもんねぇ」
超大型の振り下ろしを避けた先で偶然近くに居た風に話し掛け、彼女の問いにそう返してから両腕をプラプラとさせる楓。そこにはトリモチのような状態でべったりとまんべんなく水晶にひっついたままの改造精霊。そういえばと頷いた後に風は試しに手で引き剥がそうとしてみるが、やはり剥がれない。感触や見た目としては餅のようなモノで一見簡単に剥がれそうなモノなのだが。
(光を出そうとはしてるんだけどねぇ……何かにつっかえているというか、押し込められているような感じだ。まあ十中八九この精霊のせいなんだろうけど)
何度もいつもの要領で光を出そうとしている楓。だが、操作出来ている感じはあるのにそれが実際にいつものように現れる事はない。戦っている最中にも行っているのだが、それが形にならない。どうしたものか……と悩む楓が超大型の方へと顔を向けるのと同時に、隣に居る風が困惑気味に彼に呟いた。
「……ねぇ、楓」
「なんだい? 姉さん」
「それ、
「それ?」
ふと、風が楓の左手の水晶を指差しながらそう言ってきた。不思議に思いつつそちらへと目をやった彼が見たのは、つい先程まで水晶にぴったりと張り付いていた精霊が少しだけ丸みを帯びて膨らんでいる……例えるなら、角餅を焼いて膨らませたような、或いは風船を膨らませたような。少なくとも水晶の形ではなくなっていてる。
右手の水晶を見てみれば、やはりこちらも同じように少し膨らんでいる。もしやと思い再び光を出すように操作をしてみるとまた僅かに膨らむ精霊。
「これは……そうか、封じていると言っても自分の武器である光そのものを無くした訳じゃなかったのか。今の状態は蓋を閉めているだけみたいなものか」
「う、うーん? どゆこと?」
「……そうだねぇ……姉さんに分かりやすく言えば、この精霊は蛇口の出し口に付けられた風船で、光がそこから出る水。風船がある限り水は外気には触れられないけれど、水をそのまま出し続けると?」
「そりゃパーンと……成る程ねぇ。つまり、楓がそのまま光を出そうとし続ければ」
「精霊が破裂……もしくは光を抑えきれなくなって剥がれるハズ」
「そうはさせないよ。グランディオーソさん!」
精霊が光そのものを封じるのではなく、あくまでも光を外へと出すことを封じるものであると察する楓。その言葉だけでは理解出来なかったのか首を傾げる風に苦笑いしつつ説明をすると、今度は理解したように頷く。一瞬精霊がビクッと反応したような気がするが、誰も気付かなかった。
2人の会話が聞こえていたのだろう、赤嶺が超大型の名前を呼ぶと他の勇者達に向かって腕を振り回していた超大型はその巨躯を楓の方へと向け、彼を狙ってその巨腕を振るい始めた。当然、喰らう訳にはいかないと同時にその場から飛び退く2人。各々左右別に跳ぶことで、その一撃を回避する。
右腕による振り下ろしを避けられた超大型だが赤嶺の命令通りに楓を狙い、再びその巨腕を薙ぎ払う。振るわれた左腕は着地したばかりの楓に向かっていくが、彼の後方から飛んできた3本の槍……内2本は良く見れば緑色のワイヤーが巻き付いている……と幾つもの矢と光弾が突き刺さり、動きが鈍くなったところを楓は余裕を持って跳び越えることで再び回避し、着地した後に攻撃が飛んできた方へと振り返る。
「助かったよ皆」
「現状出てきていた星屑達は全て倒しました!」
「私達も超大型攻略に参加します。我ら、総攻撃を実施す!!」
「カエっちはその精霊をどうにかすることに集中して。また攻撃されても、わたし達が守るんよ~!」
「雪花さんも今回はいつも以上に頑張りますよっと!」
「意外と早く片付けられた……! それなら、おかわりだよ!」
気付けば、超大型と共に現れていた中、小型バーテックスは姿を消していた。近接組が超大型と対峙している間にも後方に居た援護組が相手し続け、遂には殲滅したのだ。そして楓に迫る巨腕に集中攻撃し、避けるだけの時間を稼いだということである。楓は8人に礼を言いつつ、光を出すべく操作する。
そうして前線へと合流した8人。ここから更に総攻撃を……とした時、星屑達が想定より早く全滅した事に驚きつつも赤嶺がそう言うと直ぐにまた新たな中、小型バーテックスがどこからともなく現れ、勇者達は相手を余儀なくされる。赤嶺とて造反神側の勇者としてこの大一番を負けるつもりはないのだ。
「この、いい加減に倒れなさいっ!!」
「せええええああああっ!!」
「こいつ、本当にタフだな!」
もう何度攻撃し、ダメージを与えた事だろうか。今もまた夏凛と若葉が超大型の左右から刃を付き入れ、そのまま前から後ろへと横に真っ二つにする気で切り抜ける。実際、付き入れた刃以上の長さの切り傷を付けたが真っ二つになる気配も、ましてや倒れる気配もまだ無い。追撃としえ銀達が跳び上がり、正面から斧、斧剣の4本による叩き付けるような斬撃を浴びせ、少し仰け反らせたがそれだけだ。
攻撃した4人に迫る中、小型。それを一部は返り討ちにし、一部は援護組が落とす。その後着地した4人の耳に、先程も聞いた樹海を押し潰す音が届く。横を見てみれば左腕の影が迫って来ており、楓を狙っているその途中に自分達が居る事に気付いた。
「っ、楓ばっか狙ってるんじゃない! くっ、やっぱりダメか……って危ない!?」
「銀さん!?」
「銀! 無事かい!?」
「だ、大丈夫! ギリギリ避けられた!」
(攻撃の頻度が上がってる気がする…とこれ以上時間は掛けられそうにないな……)
楓を狙う超大型に向かって叫び、斧剣の1つを向かってくる左腕目掛けて投げ付ける銀(中)。炎を纏い回転しながら向かう斧剣は、しかし下から投げつけた為に左腕に届く前に過重力に捕まって地面に落下し、そのまま埋まるように突き刺さる。やはりダメかと落胆する彼女の目の前には左腕の影が迫っており、全力でその場から跳び退く。既に退いていた銀(小)と追われている楓からの心配の声にそう返し、それを見ていた全員が安堵の息を吐いた。
しかし、楓を含めた数人は危機感を覚えていた。勇者達の中でも高い戦闘力を持つ銀(中)が攻撃直後とはいえギリギリ避けられた左腕は、明らかに先程よりもその速度が上がっている。また、振り下ろしと薙ぎ払いも当初よりも速く、感じられる威圧感は強くなっているように思えた。
つまり、この超大型は
(まだ……まだなのか……まだ……邪魔をするのかっ!)
水晶に張り付く精霊を見る楓の中にある苛立ちが大きくなる。既にバスケットボール、それよりも更に2周りは大きくなっているソレはまだ剥がれる様子が無い。かなりの量の光を操作、放出しようとしているというのに、まだ。今こそ使えなくなった“強化”が必要な場面だろう。だと言うのに、精霊が、造反神がまだ邪魔をする。
いつ仲間が被弾してもおかしくない。過重力に捕まり押し潰されるかもしれない。薙ぎ払われた腕に、振り下ろされた腕に直撃するかもしれない。戦い始めてからかなり時間が経っているのだ、いつ体力が、気力が切れてもおかしくない。大一番の激闘なのだ、どう転んでも不思議ではない。そうならない為に、この大一番を物にする為には……この精霊が邪魔だ、造反神による封印が邪魔だ。
「ふぅ……っ、おおおおおおおおああああああああっ!!!!」
「か、楓!?」
「この音……楓君、まさか!?」
立ち止まって苛立ちを、怒りを声に乗せて叫びを上げる楓。その叫びに風がまず先に驚き、他の者も、赤嶺でさえついそちらへと目を向けてしまう。その視線の先には仁王立ちして水晶を正面に向けるようにして両肘を曲げる彼の姿。そして急激に膨れ上がる張り付いた精霊。内部が発光しているようにも見え、限界は近いのだと悟る事が出来る。
が、その途中で美森はキィンッという音が響いたのを聞いた。それは満開ゲージが消える時の音であり、彼女は彼が普段使う以上の光を、それこそ強化に使うレベルのモノを精霊を引き剥がす為に引き出しているという事だ。しかしゲージを使いきる程に消費すれば……もし、それすら精霊が耐えてしまえば……嫌な記憶を思い出し、嫌な想像をしてしまった彼女の表情が青くなる。
「っ、それ以上はさせないよ! やっちゃえ! グランディオーソさん!!」
「させな……こいつ、両腕を同時に!?」
「くそっ、これじゃ近付けない!」
2回、音が鳴った。これ以上は本当に引き剥がされると焦った赤嶺はグランディオーソの名を呼び、心なしかそれ自身も焦っているかのように両腕を持ち上げて楓へと動かす。それを見ても……それとも見ていないのか、楓はその場から動かずに光を操作し続け、精霊を引き剥がそうとしていた。
仲間達が彼を守るべく動く。だが、驚く事に持ち上げられた両の腕は片や赤く、片や青く染まっていた。それに伴い、樹海が轟音を上げて陥没し、または小石等が浮き上がる。つまり、出来ないと思っていた過重力と反重力の両方が同時に発動している。最初から出来たのか、それとも出来る程に成長したのか定かではないが、それにより勇者達は足を強制的に止めざるを得なかった。
「がっ!? ぐ、うううう……っっ!」
「楓くん!? このっ」
「待って友奈! 今近付いたらあんたまで!」
「夏凛ちゃん、でも!」
「やめろ赤嶺!」
「大丈夫、死ぬ訳じゃないよ。この世界から元の世界に戻るだけだから……もしかしたら、造反神がまたなんかするかもしれないけど」
やがて、その腕の影が遂に楓を捉える。左腕の下に、その影の上に入った楓の体は過重力により足場の樹海と共に押し潰され……その一瞬前に現れた夜刀神が張った精霊バリアのお陰か、四つん這いになって耐えていた。だが、それは過重力に耐えられているだけで、その身は自身の何十倍、何百倍もの重さに押し潰されそうになっている。
苦しそうな声をあげる彼を見て目の前に過重力があると分かっていても助けに向かおうとする友奈を夏凛が止める。足を止められた彼女は泣きそうな顔で振り返り、何かを言おうとし、若葉が赤嶺に向けて叫ぶ。だが、彼女は優しくそう言い止める様子はない。その際何かを呟いたが、勇者達の耳には届かなかった。
そして、都合3度目のキィンッという音がなり……左腕の色が元に戻るのと同時にそれが振り下ろされ、衝撃と共に土煙を巻き上げて勇者達の視界を奪った。誰もがその場所に視線を釘付けにされた。勇者達は最悪をイメージし、赤嶺は自分達にとっての最高をイメージした。それだけの衝撃だった。逃げる場所も、タイミングも無かった。庇うことも、防ぐことも不可能だった。誰かが泣きそうになり、誰かが叫びそうになり……。
「“だいだらぼっち”!!!!」
そんな悲壮感溢れる樹海に
瞬間、樹海に響き渡る轟音。殴られた部分を大きく凹ませ、その部分から全身にヒビを入れたグランディオーソは大きく後退し、そのまま背部から樹海に倒れた。光の巨腕は消え、そして煙が晴れる。そこに居たのは、凹んだ樹海の上に真っ直ぐに立つ、傍らに勇者達も知る精霊“だいだらぼっち”を浮かせた1人の
「心配させてごめんねぇ、皆」
少女の姿ではなく、元の男の姿で彼がそこに居た。その手の水晶にトリモチの姿をした精霊の姿は無い。周りに敵が居ることも忘れ、風と樹に園子達、友奈が思わず抱き付きに行き、全員を受け止める楓。お互いに笑顔を浮かべ、その様子を微笑ましげに見ていたが、超大型が起き上がる姿と音を聞いて顔を引き締め、そちらへと目をやる。
楓が無事であり、男へと戻れたのは喜ばしい事だが、まだ肝心の超大型は倒せていない。大きなダメージは与えられたようだが、先程は奇襲のようなモノ。次は当てられないかもしれない……だが、と楓は左手の水晶の満開ゲージに目をやる。5つあるゲージは光を2つ残して消えており……それはつまり丁度1回分、今まで使えなかった“強化”が使えるという事だ。そして強化が使えるならば……と、楓は目的の人物の肩に手を置いた。
「? お兄ちゃん?」
「樹。自分と樹で、あいつを倒すよ」
「えっ? 私達で……あっ」
その人物とは、樹。兄の言葉に不思議そうに首を傾げた彼女だが、彼の水晶から伸びた光が自身の武器でもある右手の鳴子百合を包み、そこから安心する温かさを感じ取る。
(これが、友奈さんや東郷先輩も言ってたお兄ちゃんの光……温かい。家で膝枕して貰ってる時にも感じる、安心するお兄ちゃんの温もりとおんなじ……)
「やるよ、樹。球子ちゃん達の故郷の奪還の邪魔をするあいつを……」
「……うん。皆を苦しめた、お兄ちゃんを潰そうとしたあいつを」
「「
「ぐ、グランディオーソさん!?」
楓の両手の水晶から、樹の右手の鳴子百合から伸びる白と緑が混じった光のワイヤー。それは凄まじい勢いで超大型へと伸び、両腕を使えないようにその上から全身を余すことなく雁字搦めにしていく。それでも反撃に出ようとしているのだろう、ギチギチと音を立てて僅かに動く超大型。
……が、動かない。本当に僅かな身動ぎだけしか出来ず、体も両腕もそれ以上動くことはない。それどころか動かそうとする度にギチギチと音を立て、只でさえヒビ割れていた体のヒビが更に大きく広がる。仮に、樹だけの力だったならろくに拘束出来なかっただろう。しかし、楓の強化が彼女の足りないパワーを補っている。しかも雁字搦めにしているワイヤーは2人分。それは以前よりも成長し、今も成長している筈の超大型をもってしても微動だに出来ない程の拘束力を生んでいた。
慌てる赤嶺を他所に兄は左手を、妹は右手をグランディオーソに向かって伸ばし、開く。それを見た周りの勇者達は敵の行く末を確信した。ワイヤーに絡め取られた敵の結末など、もう幾度となく見ているのだ。そしてそれは……数秒の間を置き、現実となる。
「「お仕置き(だよ)ッ!!」」
「グランディオーソさあああんっ!?」
2人が伸ばした手を同時に握り締める。瞬間、その手に連動するようにグランディオーソの全身に巻き付いていたワイヤーが一気に収縮し、その巨躯を余すところなく、まるで紙でも切るかのように引き裂いた。ズ……と全身がズレた超大型の姿に赤嶺が悲痛な叫びをあげるが、次の瞬間には周囲のバーテックスをも巻き込んで盛大に爆発し、光と消え失せた。
重力を操り、勇者達を苦しめた超大型バーテックス、グランディオーソ。その撃破を勇者達は喜び、赤嶺は唖然としてその巨躯があった筈の、今はただ光の残滓が残る空間を見詰めているのだった。
精霊紹介コーナー(相違点よりもいらない気がする←)
・だいだらぼっち
頭が富士山のようになっている土気色の体が丸い、腹の部分に“巨”と書かれている見た目の本作オリジナル精霊。イメージとしてはシャドウバースのクレイゴーレムを他の精霊サイズまで小さくして、顔に牛鬼みたいな目を着ければほぼ完成。
精霊としての能力は、光で巨腕を作る際の光のコントロールと作成後の操作、破壊力の向上。単純な破壊力は満開にも匹敵するのだが、楓本人とのスケールの違いから目測が定まりにくく扱いが難しい。また、巨腕を作る際にしっかりと密度を高める必要があるので操作に集中するべく足を止める必要がある。射程もそれほど長くないので楓本人としては扱いにくいとの評価。彼はこの弱点を飛行して勢いを着けた後に巨腕を作って殴りに行くという方法で克服したが、その場合操作が足を止めた場合に比べて雑になるので威力が落ちる。精霊としての性格は気は優しくて力持ち。外に出ている時はよく木霊が頭の上で楽しげに跳ねている。牛鬼に齧られても微動だにしないが、楓の評価にはショックを受けたりと割りと繊細。
という訳で、愛媛ラストバトルの超大型撃破、楓女体化及び強化封印解除というお話でした。久しぶりの強化相手は樹でした。
グランディオーソの能力の重力操作はゆゆゆいでの必殺技が“アンチグラビティ”と“グラビティプリズン”でしたのでそのまま重力を操るという事に。赤くなったり青くなったりするのはとある能力者バトル漫画のキャラがモチーフです。
ようやく楓の女体化と強化封じが解除されました。水晶に張り付いていた精霊はどうなったんでしょうね……私にも分からん。強化相手が樹なのは当然、この話の主役が彼女だからです。彼女のワイヤーに大型バーテックスにも引けを取らないパワーが備われば最強だと思うんです←
さて、皆様アンケートへの投票ありがとうございました。結果はハーレム√となりましたね。色々こじつけて何とか納得の結果となるよう頑張ります。尚、今年は本作はそれを含めて後2回程の更新となる予定です。
それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)