咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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お待たせしました、ようやく更新です(´ω`)

色んなゲームのガチャで目当て引けず意気消沈の私です。ドカバトではゴクベジゴッドブルーもゴクベジ4も引けず、代わりに以前出なかったフリーザ様が2凸に、身勝手も2凸に。カウンターサイドも覚醒ミナ引けてません。悲しい。

マスターデュエル始まりましたね。遊戯王からは離れて久しいのですがアプリなので復帰。Switchで霊使い、スマホで絵札の三剣士で楽しんでます。

アルセウス購入。これまでのポケモンとはまるで違うので戸惑い半分楽しい半分。図鑑完成どころかストーリー終了すら遠いですが←

それでは本編、どうぞ。


花結いのきらめき ー 46 ー

 「という訳で、亜耶さんという心強い存在のお陰で守備は鉄壁になりました」

 

 「おぉー、ありがとう亜耶ちゃん! 握手握手!」

 

 「ゴールドタワーでどんな任務をやっていたんだ?」

 

 「防人(さきもり)と呼ばれる皆さんが、危険な場所の地質調査等をしていまして。私は巫女として、その補佐役なんですよ」

 

 「サキモリ? 勇者じゃないの?」

 

 「私は近しいものだと思っています」

 

 「国土さんが補佐役という事は、自分達と同じ時代にその人達が居るという事か……でも、聞き覚えは無いねぇ」

 

 浄化の儀を終えて部室へと戻ってきた勇者と巫女達。愛媛の守りは亜耶という新たな仲間のお陰でより鉄壁となったと言うひなたの言葉に感動した友奈は亜耶の両手を握って上下に振り、握られている彼女も勇者達の力になれた事に嬉しそうにしている。笑い合う2人に周りがほっこりとしていると、球子がふとそんな事を聞いてみた。

 

 そして亜耶から語られたのは勇者でも巫女でもない“防人”という存在。歌野の勇者とは違うのかという疑問には、確かに違うが近しいものではあるとのこと。その話を聞いた楓は真剣な表情で考え込み、ポツリと呟く。亜耶が楓達と同じ時代の人間である以上、当然その防人も同じ時代の人間であるハズ。だが、楓達勇者部はその存在は知らないし、名前さえ聞いたことがなかった。

 

 彼女の言葉は続き、防人の内の何人かは間もなく援軍として勇者達の元に駆け付けると思うらしい。亜耶だけでも充分心強い味方だったのだが、ここにきて更なる戦力、それも言い方からして複数やってくるというのだから尚更心強い。まだ見ぬ仲間達に、勇者達は心を踊らせた。そこで話も一段落し、早々に終えたとは言え浄化の儀をこなし車に乗ってはいるが愛媛と香川を往復した疲れもあり、今日のところは解散となった。

 

 

 

 

 

 

 少しばかり時間が過ぎたとある日。いつものように全員が部室へと集まっていた頃、亜耶が来て初めてとなる襲撃を知らせるアラームが鳴り響いた。勇者達は顔を見合せ、同時に頷き合う。

 

 「皆さんに、神樹様の御加護がありますように」

 

 「ふふ、ありがとねぇ。行ってくるよ、国土さん」

 

 「……この瞬間だけは、何度お見送りしても慣れません」

 

 「凄く分かるよ。でも大丈夫、皆無事に戻ってくるから」

 

 戦場に向かう勇者達の無事を祈る亜耶に楓が代表して礼を言い、極彩色の光と共にその姿を消す。こうして見送るのは初めてのハズだが、亜耶は何度も経験しているように不安げな声で呟く。いや、実際に経験しているのだろう。勇者達ではなく、防人達を戦地に見送る事を。それを察したのか、水都が彼女の両肩に手を置いて安心させるように囁いた。

 

 水都も、勿論ひなた、神奈も亜耶の気持ちは理解出来る。実際に命懸けの戦いに赴くのは勇者達で、自分達は比較的安全な場所で信じて待つことしか出来ない。姿が見えないからこそ、どうしても不安になる。だが、それでも信じる。勇者達の勝利を、誰1人欠けることなく帰ってくる事を。今日もまた、無事に勝利して笑顔で帰ってきてくれるのだと。

 

 「やってきたぞ徳島!! 確かに樹海も徳島って感じだな」

 

 「いやいや、いつもと変わらんでしょう」

 

 「どこからか、渦潮の香りも漂ってきた」

 

 「流石にそれは気のせいでは……」

 

 「棗さんだから、存外有り得るかもねぇ……」

 

 「早速敵が来たわ」

 

 「よーし皆、交戦準備!」

 

 「うん! お姉ちゃん!」

 

 そうした巫女達の心配と信頼を背に、遂に徳島にやってきた勇者達。球子の勢い任せの発言に夏凛がツッコミを入れ、嘘か真か棗がすんすんと鼻を鳴らしながら呟く。どこを見ても渦潮どころか海、というか水辺すら無いのでそれは無いだろうと雪花が苦笑いするが、楓は散々海が……と言ってきた棗なら有り得るのではと真剣な表情でそう溢していた。

 

 そんな会話をしていると、敵地に居るので当然わらわらと敵がやってくる。いち早く発見した美森が皆に伝え、風が意気揚々と大剣を握り締めて叫び、樹が元気良く返事をする。すると風がその顔を見つめて感慨深そうに頷き、そんな反応をされた樹は困惑していた。

 

 「ど、どうしたの? お姉ちゃん」

 

 「最近、樹が凛々しく見える時があるわ。我が妹ながら、色んな一面があるのね」

 

 「感動するのは良いけれど、敵が来てるよ姉さん」

 

 「おっと、いけないいけない。さぁ皆、やるわよ!」

 

 【おう(はい)っ!!】

 

 こうして始まった徳島での最初の戦い。いつものように地上、上空と別れる動きも随分とスムーズになった。楓もすっかり万全となったし強化も出来るようになった。初戦とあって勇者達の士気も高い。この勢いのまま初戦を軽く勝利……とは残念ながらいかなかった。と言ってもそこまで厳しい戦いだった、という訳ではないが。

 

 簡潔に言えば、敵が明らかに愛媛の時よりも強くなっていた。勿論、決戦の際に出てきた超大型のような強大な力を持ったバーテックスが現れた訳ではない。ただ、数に物を言わせる中、小型の性能が上がっていた。それは速度だったり、威力だったり。

 

 星屑の体当たりが、威力を増していた。爆発するバーテックスの範囲が広くなっていた。トゲを伸ばしてくるバーテックスの伸びる速度が速くなっていた。一撃で倒せたバーテックスに2撃を要した。これまで必中だった攻撃が避けられ掠める程度に終わった。そういった劇的ではないが明らかなパワーアップが成されていたのだ。

 

 ……だからと言って、勇者達が敗北するかと言えばそんな事はない。バーテックスのパワーアップに動揺したのは確かだし、ヒヤリとしたのも確かだ。が、パワーアップしているのは勇者達とて同じ事。直ぐに自力で、もしくは仲間によって平静を取り戻し、今までと同じように対応していく。“これまで”で通じない、足りないと言うのならこれまで“以上”をもって対処するのみ。“これまで”ならそれを続けるのは難しかったかもしれないが、“今の成長した勇者”ならば何の問題もない。

 

 これまでよりも“少し”力を込める。それだけで威力を増した体当たりを防げた。爆発の範囲から余裕を持って逃れた。攻撃の速度に対応出来た。一撃で倒せた。攻撃を外さなくなった。劇的なパワーアップをした訳ではない。それが出来るだけの実力は既についていただけの事。とは言え手こずったのも確かで、普段よりも戦闘はやや長引いた。

 

 「はぁ……はぁ……敵、中々やりますね」

 

 「そうね。造反神が追い込まれてパワーアップしたという話、今理解出来たわ。国盗り物のゲームなんかでは、全国の半分も支配すれば後は消化試合なのに」

 

 「こっちだって強くなっている。大丈夫さ」

 

 「いよーし。この調子で戦って、徳島での戦いの足掛かりを作るわよ!」

 

 「調子に乗ってその足掛かりにつまづかなきゃいいけどねぇ……姉さんとか転けそうだし」

 

 「失礼ね! 最近の楓は姉への敬いが足りないわよ!? もっとアタシに優しくしなさいよ!」

 

 「ふふっ、ごめんって姉さん。苦しい苦しい」

 

 「家じゃいっつも優しくされてるのに……」

 

 「イッつん、その話詳しく」

 

 肩で息をしながら今回の戦闘の感想を呟く須美に、千景はゲームでよくある展開の話を交えつつ同意する。巫女達が言っていた造反神の力が増しているという話は、彼女達を疑うわけではないが土地の半分を奪還したという事もあって半信半疑だったのが本音だ。だが、今回の戦いでそれは事実であると突き付けられ、今後の戦いも決して楽な道ではない事が分かった。

 

 だが、若葉が言うように勇者達も確実に強くなっている。それもまた、今回の戦闘で分かった事だ。厳しくなる戦いにも仲間達が居れば問題無いだろうし、まだ見ぬ仲間達もやってくるという。不安はあるが、それ以上に戦意が漲るというもの。その戦意にやる気を乗せて声に出す風に、楓が冗談っぽくくつくつと笑いながらポツリと聞こえるように呟いた。

 

 当然聞こえている風は弟に絡みに行き、ヘッドロックをかます。怒っているように見えるが口元は緩んでいるし楓も苦しいと言いつつも本当に苦しそうな様子はない。ただの姉弟のじゃれあいだと分かっている仲間達は仲睦まじい姿にほっこりとしている。同じようにほっこりしている樹がポロリと溢せば、直ぐに園子ズが話を聞きに行った。なんなら数人は聞き耳を立てている。

 

 そうしたほのぼのとした時間は樹海化が解けるまで……解けた後は巫女達も一緒に穏やかな時間を夕方になるまで過ごすのだった。

 

 

 

 

 

 

 別の日。勇者達は制服に身を包んで行けるようになったばかりの徳島へと樹海ではなく現実世界……というには語弊があるが……でやってきていた。普段香川で暮らす勇者達からすれば未踏の地と言ってもいい場所へと足を踏み入れた為か、いつもよりも少しばかり勇者達のテンションは高い。

 

 「今、私達は徳島県に来ていまーす!」

 

 「ふふ、高嶋さん、誰に言っているの?」

 

 「エンジョーイ、徳ー島ラーイフ! とっくしっまとっくしっま~♪」

 

 「とっくしっまとっくしっま~♪」

 

 「ふふ、元気だねぇ。老人ホームの人達から貰った飴ちゃんいるかい?」

 

 「ありがとうございます、楓先輩! あたしイチゴ味もーらい♪」

 

 「園子ちゃんのテンションに乗れるくらい馴染んだよなぁ亜耶ちゃん」

 

 「とても良いことだわ。楓君から飴を貰っても恐縮しなくなったし、このまま砕けた態度で居てくれると良いのだけど。銀、あっちに行ってみましょう」

 

 「皆、思うがままに徳島を楽しんでいるな」

 

 自分達の状況を紹介する高嶋に千景が笑いながら返し、どこかで見たことがあるテンションが爆上がりしている園子(小)のノリにすっかり馴染んだ亜耶が続き、その姿を微笑ましく見ていた楓がポケットの中から貰い物だという飴玉を複数取り出してちびっこ達(中1組と球子、何故か神奈も含む)に配り、貰った9人は喜んで口に放り込んでコロコロと笑顔で転がしている。精神年齢の違いか新士は子供扱いに少し照れが見えた。

 

 仲良く飴を転がす亜耶の姿を見て、最初にこの世界にやってきた時に開幕土下座を敢行した人間と同一人物であるとは思えない程の馴染んでいる事に安堵する銀(中)。美森もそれに同意し、このままありのままの彼女で居てくれればと願う。それはそれとして自分達も楽しもうと、彼女も銀(中)を連れて徳島の観光へと洒落混む。そんな仲間達の姿を見ていた若葉がふと、浮かない顔をするひなたに気付いた。

 

 「……どうした、ひなた。浮かない顔をしているが」

 

 「徳島に食い込む事は出来たんですけどね。思ったより解放地域が少なくて……すみません。愛媛全部を取れば一気に展開が楽になる、みたいな事を言ってしまって」

 

 「全然問題無し。いやーまだまだ解決する事が多くて嫌になっちゃうね。あはは!」

 

 「その割に上機嫌だな。でも本当に気にすることはないぞ、ひなた」

 

 「ああ、前進はしているんだ。棗さんがよく言っている事だが、勝ちを積み上げていけばいいさ」

 

 「自分の言葉を覚えてくれている、というのは嬉しいものだな、若葉」

 

 「そんなに感謝されると、こちらも照れるのだが……」

 

 ひなたが浮かない顔をしていた理由は、自身の思惑……予測が想定よりも外れている事だった。確かにこうして徳島にやってくる事は出来たが、想定よりも遥かに歩ける範囲が狭い。少し歩けばもう未解放の場所になってしまうくらいだ。おまけに仲間達に期待させるような事を言っておいて実際は楽になるどころか更に危険度が増している。こうまで想定より悪い方へと進めば表情が暗くなるのも仕方ないかもしれない。

 

 しかしそれを気にするような、ましてやひなたを責めるような者は居ない。雪花など元気付けるためかそれとも本心か笑顔で言って笑い声まで上げている。何故だか上機嫌な彼女を不思議に思いつつ棗も同意し、若葉がかつて聞いたという彼女の言葉を交えつつ続く。快勝でも、辛勝でも、勝ちは勝ち。それを積み上げていけば、いずれは造反神にも手が届く。そう言う彼女に、棗は小さく笑いつつ感謝し、真っ直ぐ感謝された若葉は照れていた。

 

 「当面の目的は、粘り強く戦って解放地域を増やして、更なる援軍を呼び込めばいいのね」

 

 「うん、コツコツとって感じだね」

 

 「大いに結構。前も言ったと思うけど、私はコツコツ堅実派なんだ」

 

 「せっちゃんせっちゃん、あれ見て?」

 

 「美味しそうなラーメン屋を友奈が見つけてねぇ、行ってみるかい?」

 

 「いーねいーね。よーし、入っちゃいましょー! そこで飴を口で転がしてるタマちゃんもどうかね? らあめん」

 

 「当然(ほぉれん)行くぞー(いふほぉ)! んぐっ……飲み込んじゃった。うどんは大好きだが、他の麺類を食べない訳じゃないからな!」

 

 話を聞いていた歌野が徳島の戦いの当面の目的を再確認するように言い、水都が同意する。結局のところ、徳島に来てもやることは何も変わらないのだ。これまで通り敵と戦い、奪われた土地を奪還していく。少しずつ、時間を掛けて、しかし確実に歩みを止めずに進む。近道等無いのだから。コツコツとやるしかないとしても問題無いと、雪花は笑った。

 

 そんな彼女の袖口をくいくいと引くのは友奈。なんだなんだとそちらへ顔を向けた雪花が見たのは、微笑ましげに笑う楓と2人が指差した先にある如何にも老舗らしい風貌のラーメン屋が1件。ラーメン好きであり、2人にも促されたとあっては行かない選択肢は彼女には無かった。近くで飴を転がしていた球子も誘い、共にラーメン屋へと入っていく。その際、飴を口に入れたまま喋った球子が誤ってその飴玉を飲み込んでしまったが特に問題は無い。

 

 そして入ったラーメン屋。老舗のような見た目に違わず味は素晴らしかった様子で皆笑顔で食べ進めている。楓の所にだけ丼が5つ程積み上がっている事には最早驚きはない様子。尚少しすればまた1つ積み上がり、新たな一杯が彼の前に運ばれている。それを笑顔で食べるのだからまだまだ彼の胃には余裕があるらしい。

 

 「うまっ、うまっ……完食だ! タマごもタマねぎもタマらんなァー! ていうかまだ食うのか楓!?」

 

 「ご馳走さまーっ。美味しかったねー、徳島ラーメン。ご飯と一緒だとよりでりしゃす! 楓くん、最近は風先輩より沢山食べるもんね」

 

 「たまらない味ですにゃあ。近くに居た東郷や銀も来れたら良かったのに。かーくんは本当に良く食べるねー」

 

 「徳島ラーメン、美味しいって聞いてたから食べてみたかったんだよねぇ……結局、今日まで食べる機会無かったから。実際に美味しいし、後2回はおかわりしようかねぇ」

 

 「更に追加するのか!? いや、もう楓の大食いはいいや。東郷達は他の店に入ったから仕方ない。ところで雪花、タマ気になってた事がある」

 

 球子、友奈、雪花は殆ど同じタイミングで完食している中でまだまだ食べる気で居る楓。3人から驚きや慣れ、感嘆と三者三様の感情と言葉を受け、一旦食べる手を止めて空になった器を見下ろしながらしみじみと呟く。彼の脳裏に何が浮かんでいるのか、何を思いながら食べているのかはこの場では本人以外分からない。だが、少なくとも大切な思い出である事は理解出来た。

 

 それはそれとしてまだまだイケると笑顔でおかわりをする楓に球子がツッコむがもう気にするだけ無駄かと首を振り、先程の雪花の呟きにはそう返す。考えて見れば先代勇者の中学生組が彼から離れているのは珍しいかもしれないが、別に彼女達とて意中の相手とは言え四六時中共に居る訳ではないし別行動するのも不思議ではない。若干2名程どこからともなく彼の元に現れる事はあるが。

 

 「ん? この眼鏡? 凄いでしょ。ラーメン食べてもあまり曇らな~い」

 

 「凄いけどもそうじゃなくてな、お前と東郷の関係だよ。なんか東郷、お前の事を名前で呼んでないか? 普通と違うような……」

 

 「……君のような察しの良い子は好きだよ。お気付きの通り、私と東郷は特別な関係なんだ」

 

 「はうあっ!?」

 

 「お、震え始めた」

 

 「トクベツ!? というかこれ、もしかしてこの場で聞いたらアカン奴か!?」

 

 球子の気になること、と言われてもしやと本人の言う通りあまり曇っている様子が無い眼鏡をくいっと軽く持ち上げる。湯気が立ち上るラーメンを前に曇らない眼鏡とは確かに凄いがと言いつつ、彼女が気になっていたのは雪花と美森のお互いの呼び方……美森からの呼ばれ方であった。

 

 基本的に、美森は“さん”や“ちゃん”といった敬称を付ける。例外と言えばそれこそ銀(中)と園子(中)くらいだろう。ここに居る楓と友奈でさえ“(くん)”、“ちゃん”付けである。だと言うのに、雪花には“雪花”と呼び捨てにしている。これが球子が不思議に思った点であった。

 

 その疑問に対し、そう言えばーと上を向きながら思い返している友奈を横目に無駄にニヤリと意味深な笑みを浮かべた雪花は口元に人差し指を当てながら妖しげに言った。それを聞いた球子はまるで体に電流が走ったかのように震え始め、もしや自分は踏み込んではイケない領域に踏み込んでしまったのではと狼狽え始める。そんな彼女の反応を見た雪花は楽しげに笑った後に口を開く。

 

 「あはは、ごめんね、冗談冗談。実にシンプルな理由なのよ」

 

 「あっ、確かお城の話で花が咲いたんだよね。東郷さん、そういうの大好きだから」

 

 「雪花ちゃんと沢山お城の話をして楽しかったって自分達に嬉しそうに話してくれたよ。美森ちゃんには悪いけれど、自分達はそこまでお城や歴史の話が出来ないからねぇ」

 

 「お、結城っちとかーくんは流石に把握しておりますな。いかにもその通り。城トークで夜中まで話し込んでてねー、深夜テンションでアダ名的に決まったと言うか」

 

 「な、なんだそういう理由だったのか。タマげる所だったぞ」

 

 「私も今、お城の勉強中なんだ」

 

 「皆、色々な人と仲良くなっていくな。タマは導き手として嬉しいぞまったく」

 

 「季節ごとだったり何かのお祝いだったり勇者部の活動だったり、皆で色々やってるからねぇ。仲良くなるのは良いことだよ」

 

 3人が説明した通り、美森が雪花を呼び捨てにする理由は至ってシンプルな事だった。要は趣味と話が合う者同士である事が発覚し、お互いに語り合って仲が深まったという訳だ。美森としては神世紀では深く語り合える同士と呼べる存在には会えなかった為、心行くまで話せたのはさぞ嬉しかった事だろう。思わず親友達に嬉しそうに話して回るくらいには。

 

 しかしながら、そんな嬉しそうな顔をされては少しはモヤモヤとしてしまうもの。自分も、となった……かどうかは定かではないが、友奈は影響されてか城の勉強をしていると言う。楓も言葉にはしていないが、家では暇潰しも兼ねて美森から昔貰った歴史の本等を読み進めていたりする。尚、2人は結構楽しんでいるようだ。

 

 話を聞いた球子は雪花と美森だけでなく、ラーメン屋に入る前とこれまでの、そして出会った当初の仲間達の様子を思い返しながら腕を組んでうんうんと頷きながらそう言う。それを聞いた楓も、友奈も同意して頷き、楽しい思い出を頭に浮かべながら笑った。それは勿論、雪花も同じで。

 

 「今度は誰と話し込んでみよっかな。全く、ここは楽しくて仕方ないね♪」

 

 そう言って笑顔を浮かべる彼女を、楓はラーメンのスープを飲み干しながら横目で見ていた。

 

 「ふう……すみません、お代わりください」

 

 「「「まだ食べるの!?」」」

 

 

 

 

 

 

 場所は代わり、ラーメン屋から少し離れた道に須美、園子(小)の2人の姿があった。園子(小)の視線は下を向いており、その先には蟻の行列がある。須美はそんな彼女が心配なのか、近くを共に歩いていた。

 

 「蟻さーん。HEYHEY、園子だよ~」

 

 「あれ? そのっち、亜耶さんは? 新士君も居ない……一緒じゃなかったっけ?」

 

 「およ? およよ? 居ないね~。ごめん、蟻さんとの対話に夢中だったよ~。アマっちはさっき、ちょっと離れるって言ってたよ~」

 

 「新士君が? 私が聞き逃してしまってたのね……というか亜耶さんは見逃したのに新士君のは聞き逃さないのがそのっちらしいと思う。それと、別に謝ることじゃないわ。しっかりしている2人の事だから、端末に伝言とか無い?」

 

 「あー、本当だよ名探偵わっしー。端末にメッセージが入ってたよ」

 

 蟻に話し掛けている園子(小)を見ていた須美だったが、ふと気付くと共に居た筈の新士と亜耶の姿が無いことに気付く。それを聞いた園子(小)も顔を上げてキョロキョロと辺りを見回すが、近くに2人の姿は無い。それでも亜耶については須美と同様だが新士の言葉を聞き逃さないのは流石と言うべきか。

 

 彼女らしいと苦笑いしつつ、須美は2人から何かしらのメッセージが端末に来ていないかと確認を促す。見てみれば予想通りにメッセージが来ていた。内容はここに来るまでの道中に良さそうな掃除道具を見つけたとのことで、それを見に行っているらしい。新士はその付き添いで、いざというときの為の護衛も兼ねるとのこと。

 

 「お掃除好きだもんね~。うーん、折角アマっちと亜耶さんと4人で歩いていたのに、わたしがいきなり脱線したんだよね、これって」

 

 「珍しいわね、そのっちがそういう事を気にするなんて。いいのよそのっち。私はそんなそのっちが大好きなんだから」

 

 「わっしー……」

 

 

 

 そうして園子(小)が反省し、それを珍しく思うがそんなマイペースな彼女が好きだと言う須美と2人で良い雰囲気になっている頃の件の掃除道具を商店街に見に来ていた亜耶と付き添いの新士。2人の前には店頭に並んでいる様々な掃除道具があり、それを見て亜耶は目をキラキラと輝かせていた。

 

 「~♪ 色々な掃除道具があって目移りしますねー」

 

 「こうして見ると色々ありますねぇ。国土先輩、気に入った物はありましたか?」

 

 「どれも良さそうで、それに沢山あるので悩みます……」

 

 

 

 「うわ、うわー、可愛い新人さんだ。それに君が他の小学生の子達から離れているなんて珍しいね」

 

 

 

 「っ! 貴女は、まさか……」

 

 「国土先輩、自分の後ろに……こんにちは、赤嶺さん」

 

 楽しげな2人だったが、ふと背後から聞こえた声に一気に空気が一転して緊張感が増した。直ぐに振り返った2人の前に居たのは、勇者服に身を包んだ赤嶺 友奈。その姿を確認した瞬間に新士は亜耶を下がらせ、守るように前に出る。直ぐに変身出来るようにポケットから端末を取り出して後ろ手に隠しており、その姿を見た赤嶺は小さく笑った。

 

 「ふふ、こんにちは、新士くん。そっちの子も私の事を聞いてるみたいだね。そう、赤嶺 友奈だよ」

 

 「国土 亜耶です。宜しくお願いします」

 

 「亜耶ちゃん。それに新士くん。ちょっと向こうでお話しない? 話で解決出来る事もあるかも知れないから」

 

 「いきなりですねぇ。自分達以外誰も居ない時に狙ったように現れておいて何を……」

 

 「素晴らしい提案ですね。分かりました、行きましょう新士君」

 

 「……いや、国土先輩。流石にそれは……」

 

 「……うん、新士くんの言う通り、もうちょっと警戒してくれないかな」

 

 驚きつつも挨拶はする新士に挨拶を返し、亜耶に向けて名乗ると彼女も名乗り返す。その後2人を少しばかり見詰めた後、人気の無い商店街の店の間の通路を指差しながらそう提案をする赤嶺。当然と言うべきか。警戒している新士は乗るつもりはない。もしかしたらそのまま戦いに発展するかも知れないし、そうなれば亜耶を守りながら1人で戦う羽目になる。それだけは避けたかった。

 

 が、そんな彼の心情を知ってか知らずか、亜耶はあっさりと話に乗った。なんなら新士が後ろに下げていなかったらそのまま率先して指差された方へと歩き出しかねないくらいの迷いの無さだった。思わず新士と赤嶺の時間が一瞬止まり、張り詰めていた空気が和らぐ程。同時に苦笑いを浮かべた2人に、亜耶はきょとんとしていた。

 

 「メッセージによるとこのお店に……ああっ、赤嶺さんが居るよ!?」

 

 「2人を……いえ、もしかして亜耶さんを狙ってきたと言うの!?」

 

 「そうそう、今のが平常な反応。国土 亜耶ちゃん、最低限3人くらいの警戒心が無いと危ないよ」

 

 「でも、会ってみて分かるのですが、赤嶺先輩は全然悪い人では無いと思うのですが」

 

 (……まあ国土先輩の言うことも分からなくも無いけれど、仮にも敵対してる人の事をここまで信じて行動出来るのは凄いねぇ)

 

 「それは亜耶ちゃんが悪い人を見たことが無いからだよ……って何を言ってるんだろ。調子狂っちゃうな」

 

 直後、亜耶からのメッセージを受け取って商店街に居る新士と亜耶を探しに来ていた須美と園子(小)の2人が後方から歩いてきていた。2人は3人を視界に収めると慌てて3人の元へと走り寄り、亜耶を守るように新士の両隣に立つ。こうして自身を前に警戒している3人こそ正しい反応だと頷いた赤嶺はこれくらいは……と彼女に注意を促す。

 

 しかし、帰ってきたのは真っ直ぐで綺麗な眼差しと言葉であった。彼女が造反神側の勇者として召喚され、仲間達と敵対していることは勿論聞いている。だが、直接会ってみて亜耶は彼女を“悪人”だとは思えなかった。彼女が何を感じたのか、その純真な心が何を映したのかは彼女自身にしか分からない。が、新士は内心同意していた。最も、それは赤嶺が悪人ではないという部分の話で、警戒心を抱かないという事ではないのだが。

 

 脅かそうとしたのか、それとも皮肉を言おうとしたのか。だが結局言いたい言葉が上手く口に出来なかったのか、はたまた一向に警戒する様子の無い亜耶に呆れたのか、それとも別の何かを感じていたのか。結局赤嶺は何をすることも無く、これまでのようにその場から一瞬にして姿を消したのだった。

 

 「消えた!? 何だったのいったい……」

 

 「あの、お話は……」

 

 「居なくなっちゃったからお話出来ないね~」

 

 「残念です……もっとお話してみたかったのに」

 

 「まあ、居なくなったものは仕方ないですねぇ。今のことは後で姉さん達に伝えるとして、気を取り直してまた皆で歩き回ってみようか」

 

 急に現れ、そしてまた急に消えた赤嶺の事は気になるが、居なくなったものは仕方ない。新士は残念そうな亜耶と合流した2人にそう言うと3人は頷いて同意し、亜耶の目的である掃除道具を見繕った後、商店街で売っている鯛焼きや立ち食いうどんなんかにも舌鼓を打ち、帰る時間になるまで楽しい時間を満喫したのだった。




精霊紹介コーナー(後数回で終わり)

槍毛長(やりけちょう)

見た目は赤い色の鳥だが右手の翼に槌を、背中から槍の柄らしき体長と同じ長さの棒が突き出ている。

精霊としての能力は名前の通り槍に関するモノで、光で槍を形作った際の耐久性か攻撃力が上がる。また、“毛”という繋がりかワイヤーを作った際にもその耐久性、鋭さが上がる。その為、楓のワイヤーは樹よりも頑丈で鋭い。が、技術やワイヤーそのものの応用力は樹が上回っている。本作オリジナル精霊で名前だけの登場。

精霊自身の性格は温厚。そして飛べない。他の精霊と違って何故か浮くことすら出来ないので現れるといつも足下でポツンと1匹勇者達を見上げる羽目になる。ただそうしていると楓が抱き抱えてくれるのでそうされるとご満悦になる。しかしその後直ぐに夜刀神に噛まれる。



という訳で、原作21話の半分ほどまでのお話でした。防人達の登場はもう少しお待ち下さい。

今回はほのぼの、ほんのり爺孫成分配合です。もっと爺孫染みた絡みをさせたいところですが、自然に行うのは中々に難しいですね。私の一番の懸念は、オリ主が自然と入り込めているかという点ですので……もうすぐ140話に到達しそうなのに今更ですが←

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)
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