スランプなのか全く執筆が進まず今日まで来てしまいましたがエタらせてたまるものか……今後も本作を宜しくお願いいたします。
久しぶりの本編ゆゆゆいの続きです。アプリゆゆゆいはここしばらく新規URが当たりません。悲しい。柚リリ登場は嬉しいですが、本作に登場予定はありません←
「え、亜耶が赤嶺に拐われそうになったの!? 巫女を狙うなんて、友奈の名が泣くわね全く」
「亜耶ちゃん可愛いからねぇ。それにしても油断も隙もない……新士君が一緒に居てくれて良かったよ」
「赤嶺先輩、全然怖いイメージが無かったんです。だからお話合いで解決出来るならって」
「確かに赤嶺は敵だけど、どこか憎めないところもあるわね」
「だとしても自分が止める間もなく即答したのは本当にびっくりしましたねぇ……」
徳島から部室へと戻ってきた勇者達は、亜耶と新士から商店街で遭遇した赤嶺との間にあった出来事の報告を受けていた。話を聞いて真っ先に驚きと心配、呆れが混ざった声が出たのは夏凛。部室に居る2人の“友奈”と同じ顔でありながらこうも違うかと不満を溢している。
そんな彼女の言葉には苦笑いしつつ、雪花は亜耶の顔を見ながら呟く。その言葉にぶんぶんと同意するように何度も首を縦に振る杏を見なかった事にした彼女は次いで新士へと視線を向け、もし彼が居なかったら夏凛が言うように拐われていたかもしれないと思った。案外、彼が居なかったとしても同じように呆れてそのまま何もせずに帰ったかもしれないが。
「すみません。お力になれればと思ったのですが、ご心配をおかけしてしまいました」
「亜耶は既に十分過ぎる程に力になってくれている。亜耶からは風に近しいものを感じる。そう、母なる海のようなおおらかさを」
「ええっ? 私、相当ちみっちゃいですけど……」
「身長の問題ではないんだ。私は亜耶は亜耶のままでいて欲しい」
「姉さんみたいなのは1人居れば充分ですしねぇ」
「か~え~で~? それはどういう意味かしら~?」
仲間達からの心配の声を聞き、申し訳なさそうに謝る亜耶。彼女としては争う事無く対話で平和的に事が済めばそれに越したことはないという思いから来る行動だったが、尊敬する勇者達に、そうでなくとも仲良くなった仲間達に心配を掛けさせるのは本意ではないのだ。
シュンとする彼女に、棗は励ますようにそう告げる。事実彼女の助力で香川、愛媛の守りは万全と言っても過言ではないのだ。決して力になれていないという訳ではない。また、その優しい心や愛らしい容姿も仲間達の癒しとなっている。棗の口から“海のよう”と最大級の賛辞が出る程に。
亜耶はそれを単純な体の大きさの話と捉えたようで困惑気味に首を傾げているが、棗からそう言われればまだ完全に理解した訳ではないのだろうが首を縦に振った。尚近くではからかわれてと口元をヒクつかせながら頬を引っ張ろうとする風とそれをくつくつと笑いながら避ける楓の攻防が起きている。
「風と楓は本当に仲が良いな。それはともかく、亜耶を拐おうとするなど……赤嶺 友奈、今回は特に怒ったぞ私は」
「今度会ったらビシッと言ってやって下さいね、お姉様」
「母なる海のようなおおらかさ、か。なんとなく、今回は古波蔵さんの言っている事が分かるわ」
「亜耶ちゃん、なんていうか、抱き締めてくれそうな雰囲気がするんだよね~」
「高嶋さんも……割とそんな感じだと思うけど」
「あら、抱きしめてくれそうな雰囲気と言うなら楓君だって負けてないわ」
「張り、合わなくて、いいんだよ、美森ちゃん」
姉弟のやり取りを見て小さく微笑んでいた棗だが、話を戻しつつ普段余り怒らない彼女も流石に非戦闘員である亜耶を狙ったのは許しがたい事だったようで静かな、しかし確かに怒りの熱を感じられる。その熱を更に高めるように、雪花がそう言った。
棗の先の言葉を思い返し、千景は普段は良くわからない海云々の言葉の中でも今回は理解出来ると頷く。同意するように高嶋も続け、亜耶を見ながら手を合わせながら包容力があると言いたいのか笑顔でそう言う彼女に千景は高嶋も同じ様な人間だと言い、いつの間にか隣に居た美森が会話に参加し、聞こえていた楓は風と両手を掴み合って力比べをしつつ苦笑いしていた。
「ともかく、今後は、単っ、独っ、行動は止めた方が、いいかもしれないわね。特にっ、巫女、はっ! さあ楓、往生しなさい!」
「あはは、やっぱり変身していない時に姉さん相手に力比べは無理が……苦しい苦しい」
「あ、あはは……はい。土地の半分が取られて、敵側の動きに何か変化があったのかもしれません」
「みーちゃんには私がつくわ。鉄壁のディフェンスで守り抜く!」
「うたのん」
「明日から農作業も一緒にやろ! 離れる訳にはいかないから」
「あわわ……」
話ながらも力比べをしていた2人の勝負は姉としてのプライドか素の腕力か風に軍配が上がり、いつものようにヘッドロックを極められる楓。無論、じゃれ合いの範疇でありがっちりと首が決まっている訳ではないのでそこまで苦しくはないし、2人の表情も楽しげであるが。
2人のいつものやり取りを苦笑いしてみていたひなたは直ぐに表情をキリッと引き締め、赤嶺の行動に対する考察を口にする。ならばと声高らかに歌野は水都を守るのだと告げ、彼女も嬉しそうに頬を緩める。その後の言葉には少々戸惑い気味だったが、普段から農作業の時にも共に居るので特に問題は無いだろう。尚、巫女達の守りについては体力的な問題や個人個人の予定や事情等の事もある為、交代制で行われる事となった。
翌日の勇者部部室。そこに居るのはいつも通りの面子だが、その中でグループが出来ているのが幾つか。楓、友奈、美森、園子(中)、銀(中)、神奈の6人のようにグループが出来ているのには理由がある。それは先日の巫女を守るという話に関する事であった。
「赤嶺ゆーゆがアーヤを拐おうとした事例が発生。それはアマっち達とアーヤ本人のお陰で食い止められたけれど、これが巫女狙いだったのならまた同じ事が起きるかも……ということで」
「巫女の資質がある美森ちゃんと神奈ちゃんには、自分とのこちゃん、銀、友奈の4人が交代で守りに着くことになったよ」
「何だか私、場違いな気がするよ……」
「そんなこと無いって神奈。須美と一緒に纏めて守ってやるからな!」
「私は勇者になれるから、大丈夫よ。亜耶ちゃん達を守ってあげて」
「いえいえ姫、私達は離れませんぞ」
「守らせて、わっしー」
「君も神奈ちゃんも自分達が守るよ。安心してね」
「……うん。皆には、いつも守ってもらってばっかりで」
美森を守る為に着いたのはこの4人。美森は巫女であると同時に勇者でもあることから神奈はともかく自分には護衛は要らないと言うが、4人から守らせて、守ると言われて申し訳なさ半分、嬉しさ半分で頷き、目を閉じて過去にも同じように守られていた事を思い出す。
後衛である美森を背に戦う事が多かった4人。時に敵の攻撃から、時に理不尽な現実から、時に恐怖から。体も、心も守ってくれていた。盾となることで、その手を握ったり抱き締めたりしてくれる事で。何度安心感を覚え、幸福を感じ、救われてきた事かと。
神奈もまた、自身が神である事や5人の絆の強さから己が中に入っているのは場違いではと思いつつも守られる事を嬉しく思う。それに、神樹の時と人の身で守られるのとではやはり感じ方が違うのだろう。今の方がより強く守られていると感じられ、嬉しさもまた大きく、胸の奥を満たしていくように思えた。
「わっしーはそういう性質なんよ。ほら、あれ見て」
「安心しろ須美。三ノ輪 銀が近くに居るから」
「園子も居るんだぜー」
「勿論、自分もね。頼りになる先輩も居るから、大船に乗ったつもりで居てくれていいよ須美ちゃん」
「頼りになる先輩……ん、んん。そうね、私達で連携しましょう、銀ちゃん、園子ちゃん、新士君」
「わ、私は巫女としての力は持っていなくて」
「なんて油断してる所に来るかもしれないからさ。ま、諦めてあたし達に守られることだな」
「ね、リトルわっしーも既に親衛隊が出来てるよ」
園子(中)が指差した先に居たのは、美森と神奈同様に須美を守る為に側に居ると言う銀(小)、園子(小)、新士、千景の5人1組。現状美森と違い、須美は巫女としての適性こそあるがカガミブネを行使出来るような力は無いらしく、なので赤嶺に狙われるような事はないハズというのが本人の言。
が、銀(小)はそうして油断している所に……と言って彼女の言葉を遮り、両肩を掴んで笑いながらそう言った。他の3人も頷いて同意を示し、須美は赤くなりながら“もう……”と仕方なさそうに、だがやはり守るという言葉と行動は嬉しいのだろう、笑っていた。それを見ていた園子(中)も、ほらねと美森に言ってくすりと笑った。
5人の様子と園子(中)の笑みに同じく笑みを返し、神奈共々守られる事を受け入れて改めて自分達からもお願いしますと告げる美森。そんなやり取りをしている場所とは別のところでも、同じように巫女とそれを守る者達のグループが出来上がっている。
「亜耶、安心していいぞ。もしまた赤嶺が来ても私が居る。任せろ」
「私も近くで守るからね。頼りないかもしれないけど、危機察知だけは自身あるから」
「心強い限りです」
「ひなた、という訳で私がずっと居るぞ」
「うふふ、いつも変わらない気がします」
「確かにな」
「私もフォローするよ! 若葉ちゃん、ヒナちゃん」
「ありがとうございます、友奈さん」
今この場に全員居るわけではない為少なく見えるが、勿論他にも守りにつく者は居る。今日この日は亜耶には棗と杏が、ひなたには若葉と高嶋が付いていた。亜耶は頼りになると手を合わせて言葉にしている。ワンセットと言っても過言ではない若葉とひなたはいつもと変わらないと自然体でおり、高嶋もやる気を漲らせていた。こうして暫く、巫女達の周りには特定の勇者達が居るようになり、共に過ごしていくのだった……が、普段通りとそう変わらないとは言ってはいけない。
そうして過ごしていたとある日の事。徳島の敵戦力を削るべく樹海へとやってきた勇者達。いざ戦いへ……となる時、若葉が何かに気付いたように声を上げる。
「よし、今日も敵戦力を削っていくぞ……ん? この気配は……」
「こんにちはー。元気そうだね皆」
「出たな、この誘拐未遂犯!」
「私は怒っているぞ赤嶺 友奈」
「国土 亜耶ちゃんのこと? 信じてくれなくて良いけど、別に害意は無かったよ」
現れたのはやはりと言うべきか赤嶺 友奈。出るや否や雪花と棗から怒り混じりの言葉を受け、首を傾げつつそう言い、四国の半分を取ったからと言ってあまり楽勝ムードになられても困るから、びっくりさせようと思ったと彼女はそう続ける。
「仮に新士君が居なくても、人質にはしないで直ぐ返すつもりだったけど。あの子が余りに純粋で狂言する気もなくなった。まあその様子を見るに、私が国土 亜耶ちゃんに接触する姿を見ただけで充分びっくりはしたみたいだね」
「そりゃあね。戦闘外の不意打ちはしないとか言ってた奴が何の心変わりかと思うじゃない」
「実際に接触した身としては本気で戦闘を覚悟をしましたしねぇ。国土先輩に毒気が抜かれた、というのも同意しますが」
「今日はそれを言いに来たのかしら?」
「ううん、別件。こちらも徳島での迎撃準備が整ったからね、改めてご挨拶をと思って」
「今度はどんな作戦で来ると言うの?」
「シンプルだね、数にモノを言わせるだけ。造反神様、不利になったことで力が増したから。という訳で、今度は攻めても攻めても中々土地が取れないと思うよ?」
亜耶の前に現れたあの時、例え新士という邪魔者が居なかったとしても何もするつもりはなかった。と言われても敵陣営である彼女の言葉をそのまま鵜呑みにする者は居ない。以前ゴングが鳴る前に動かないと言っていたこともあり、夏凛としてはあの言葉も嘘だったのではないかと疑ったものだ。
その場に居た新士もまた、戦闘になる事を覚悟した。結局はそうならなかったし赤嶺もそのつもりはなかったと言っても、やはり緊張はしたのだ。その緊張も亜耶の存在でどこかへ飛んでいったのはまだ記憶に新しい様子。
それらの弁明でもしに来たのかと歌野が問うが、当然それだけの為に姿を現したわけではない。これまで徳島では大きな動きはなかった赤嶺と造反神だったが、彼女の言う“迎撃準備”が整ったと言う。そして巫女達の懸念通り、不利になった造反神の力もやはり増しているらしい。そしてそれを事実として突きつけるように、樹海に数多のバーテックスが現れた。
「っ、凄い数の敵が……」
「普段通りと言えば普段通りだけどねぇ……その普段よりも質も量も増えたってことか」
「そういうこと。ね? ハッタリじゃないでしょ? それじゃ、頑張ってねー」
これまでも100や200ではきかない数を相手取ってきた勇者達であったが、それは増援も込みでの話。端末のマップを見れば当然のようにバーテックスが見えている場所は真っ赤に染まり、数なんて数えられたモノじゃない。徳島に入ってから敵の性能が上がっていることもあり、愛媛より前の戦いとは段違いに厳しい戦いとなるのは想像に容易いだろう。
そして、赤嶺の迎撃準備とはこの質が上がったバーテックスをこれまで通り数にモノを言わせて勇者達にぶつけることらしい。どれだけ大量のバーテックスを造反神が用意したのか勇者達は想像も出来ず、そんな勇者達に手を振って彼女はこれまでのようにその場から吹き荒ぶ風と共に消えた。
「ぬぎぎ……言いたいことだけ言って消えるとは、あんにゃろう」
「なんであろうとやる事は1つだ。敵を迎撃する! どんな手を使ってこようとも私達は負けん。そしてお前に敗けを認めさせてみせるぞ、赤嶺 友奈!」
あっさりと消えた赤嶺に憤慨する球子。そして若葉の気合の籠った宣言を引き金に、勇者達はいつも通り地上と空中に別れ、迫り来るバーテックスの迎撃へと向かう。相手の準備が整おうと、数が増えようと結局やることは最初から変わらない。バーテックスを倒し、土地を奪還していき、最後には造反神を鎮める為に勇者達はこの世界で日々戦うのだ。
という事があったのももう数日前の事。今日も今日とて勇者達がやってきた樹海の上空からは弾に矢に光にと遠距離攻撃が閃き、或いは地上へと降り注ぐ。地上では拳が剣が刀がヌンチャクが槍が斧が爪が、もしくは鞭がワイヤーがバーテックスに振るわれ、或いは貫き、或いは切り裂き、或いは殴打する。中、小型であれば一撃ないし数発も当たれば光と消える。大型も攻撃を集中させれば、容易く突破出来た。
「トァー! 徳島返せー!!」
「いっぱい、いーっぱいお仕置き! えいえいえいえいえーい!!」
「ふっ、はっ!! 結構倒したハズなんだけど……」
「おおっ、高速処理に高速両断……! 妹と弟(小学生)が更に腕を上げているのは喜ばしいけど、キリがないわね」
「最近は倒しても倒しても敵がわいてきて徳島の土地を中々取り返せないなぁ。あんずー! 策はないのかー!?」
「焦っても仕方ないよー。堅実に、堅実に……」
旋刃盤を投げ付けて暴れる球子、伸ばしたワイヤーで細切れにする樹、両手の手甲の爪で切り刻む新士。弟妹の活躍に感動する風だが、自身もバーテックスを両断しながら減った気がしない敵の数にうんざりしたように呟く。
球子が続いて言ったように、勇者達は赤嶺から迎撃準備が整ったと言われて以来、土地を取り返すべく敵を倒しても倒しても数が減った気がせず、中々奥へと進むことが出来ないで居た。こんな時はと彼女がいつも通り光の絨毯で上空に居る杏に問い掛けても、数が数だけに早々策など出ない様子。何せ楓の強化による攻撃で一掃しても直ぐにまた数が出てくるのはこれまでの戦いで分かっているのだから。
「ぬーっ、やっぱりないか……良いだろう。小銀! かけ声だ! 勇者はー!?」
「根性ーっ!!」
「あたしも、根っ性ーっ!!」
「銀達は今日も元気だねぇ。ここまで声が聞こえるよ」
「ふふ、本当ね……っ、あれは」
「今日も燃え滾ってるね。こんにちは、お姉様。皆もご機嫌よう」
球子も分かってはいたのだろう、仕方ないと首を横に振る。しかし策が無かろうとやることは変わらないしやる気も変わらない。彼女のかけ声に続いて斧と斧剣を振るう銀ズの元気な返事が樹海に響き、思わずといった様子で上空に居る楓と美森がクスリと笑い……美森の視線が地上に行った時、驚きと共にそんな呟きが聞こえた。その先には赤嶺の姿があり、手を振りながら挨拶をしていた。
「遂にボスのお出ましという訳ね、赤嶺 友奈」
「残念ながらそうじゃないんだな」
「じゃあ引っ込んでいなさい」
「まあまあ、会話イベントだと思って聞いてよ」
「会話イベントか。それなら仕方ないわね」
「千景さん、ゲームじゃないんですから……」
赤嶺と千景の簡潔な言葉の応酬がまさかの納得で終わり、思わず新士がツッコミを入れるが無情にもそのまま赤嶺が会話を続ける。
会話イベントだと言う赤嶺の言葉は、勇者達が中々徳島を奪還出来ない事をもどかしく思っているだろうという確信している声色の問い掛けから始まった。当然、勇者達側から反論の声が上がる。そうしてもどかしく思わせる事で根負けさせるのを狙っているのだろうと。
しかし、彼女はそれを否定。先程のかけ声でも根性と叫んでいたように、根負けを狙うのは効果が薄いと考えていると言う。また、勇者達の土地の奪還を阻止出来ていると同時に造反神側も奪えていない為、こうして膠着状態となっている事は望ましくないらしい。
「そこで私がある提案を持ってきたという訳。このテイタイジョーキョーを打破する提案をね」
「提案? なんだか危険な香りがしてきたなー」
「まあ、この状況での敵側からの提案なんてろくでもないことだろうしねぇ」
「酷い言われようだなぁ。ちゃーんとどちらにもメリットがある提案なんだよ?」
停滞状況を打破する提案。その言葉に、勇者達は各々程度の差はあれど顔をしかめる。園子(小)と新士が言うように、敵側である赤嶺の提案がどのようなものであれ危険を伴う事はほぼ間違いないだろう。とは言え、思うように土地の奪還が進まない現状に苛立ちを覚えていたのも確かなので勇者達は一先ず話を聞くことにする。
赤嶺の提案とは、互いの陣営から代表者1名ずつ出して戦う“一騎討ち”だった。造反神側が勝てば、徳島の全てを再び奪い勇者達の徳島奪還は振り出しに戻る。勇者達が勝てば、残っている徳島の土地の多くを渡すのだと言う。
「どうかな? この行き詰まった感じを一気に解決出来ると思うんだけど」
「大切な国土を、賭け事のように使うことは……」
「あはは、真面目だね。でもここは神樹様の中の世界だし、気にしなくていいんじゃないかな」
「こっちが勝ったとして、そちらが素直に土地を返してくれる保証がゼロなんですけど」
「まあ確かにね。じゃあどうする?」
日本大好きな須美は徳島の土地が景品のようになる事を渋るが、安心させるように彼女は笑って言った。だが、雪花の疑いに対して赤嶺はこう問い掛けた。逃げる? と。当然と言うべきか、挑発するように言われた言葉に勇者達の中から怒りを露にする者も居る。
球子などその筆頭で今にも自身が代表として飛び出そうとしていたが、上空から慌てて飛び降りてきた杏が止めに入る。同じように風も大剣を振り被ろうとしていたが、新士と樹が腕に腰にと飛び付いて何とか止めていた。上空に居た楓達も杏を追うようにして地上に降り立ち、美森が真剣な表情で口を開いた。
「勝負は、我が国の英雄の古今東西とかでもいいの?」
「そんなのこっちが普通に負ける奴だって。普通に一騎討ち。戦うってことでよろしく」
「じゃあ赤嶺ちゃん。タイム良いー?」
「良いよ? よく話し合ってねー」
「結構ノリが軽いねぇ……それじゃあ作戦タイムと行こうか」
この場においてまず間違いなく自分や須美が出れば勝利するであろう勝負方法を提案したがやはりというか即却下された美森。流石に通るとは思っていなかったのだろう特に反論することもなく引き下がるが、ちょっとは本気だったのだか少しだけしょんぼりとしていた。
やることは単純な戦いであるとされ、友奈が赤嶺から許可を貰ったので作戦タイムだと円陣を組むように集まる勇者達。内容は勿論、この場に居る20人の中から誰が出るか。以前に赤嶺本人から自身は対人に特化していると伝えられている以上、誰が出ても危険極まる事は確かだ。そう告げる美森に、納得しつつも若葉は敢えて一騎討ちを挑むべきだと告げた。
「若葉さん、その心は?」
「赤嶺 友奈は物理的に捕えても逃げる。決着を着けるには徹底的に負かして、心を摘まなければな」
「その為には挑戦を受ける必要がある、か。心理攻撃を打ち破った時のように」
「戦おう! あいつは私が倒す。運命を切り開くぞ」
「し、痺れるわねぇ……素直に格好いいわ。じゃあもう任せちゃうわよ?」
「よく任せてくれた。ありがとう風さん。よーし、赤嶺 友奈。私が相手になろう!」
理由を問う楓に若葉はハッキリとした口調で答える。事実赤嶺は数人掛かりで押さえ込んでもワイヤーで縛り上げても吹き荒ぶ風と共に姿を消している。物理的に捕まえられないのなら、精神的にも負かして屈伏させようという事なのだろう。
棗を初めとして皆も彼女の言い分に納得した様に頷き、風もハッキリとした態度の若葉を賞賛しつつ任せた。皆も同様に彼女に視線を送り、若葉はやる気を漲らせながら赤嶺の方に1歩進んだ。
「あ! ごめんごめん、条件を言ってなかったね。私が戦う相手は結城 友奈か東郷 美森、犬吠埼 楓で!」
「何? 私との戦いから逃げると言うのか?」
「逃げるって言うか……貴女じゃ今回の趣旨とは外れるんだよ」
「なんで私か楓君か友奈ちゃんなの?」
が、赤嶺と戦えるのは楓、友奈、美森の3人のいずれかで若葉は一騎討ちには出られないと出鼻を挫かれる。後から“条件違う”と言われて流石に憤りを隠せない若葉だが、そんな彼女の言葉に対して赤嶺は今度は“趣旨”から外れると言う。どうやら今回の一騎討ちには土地の奪い合いとは別に目的があるらしい。
名前を呼ばれたからだろう、美森が問う。3人の中での共通点は勇者である事を除けば同じ時代の勇者部、同い年くらいしかない。皆もなぜその3人なのかと疑問に思っていると、赤嶺は勇者達に必要なのは“団結”だがそれでも“個人の力”というのはどうしても必要になると言った。
「貴方達には“可能性”を見せて貰わないと。その為に、私は来た」
「……? 一体どういう事? 楓君、そのっち、今の赤嶺の発言はどう見てる?」
「カエっちかゆーゆ、わっしーのお手並み拝見って言ってるんだと思うよ」
「それとも、例え1人になっても戦えるだけの気概があるのかどうかの確認……にしては自分達3人である理由が分からないねぇ」
「そうですねぇ。これと言って理由になりそうな共通点も見当たらないですし……」
「先輩達である理由は分からないけど、この停滞状況自体が一騎討ちの土台として予め用意されてたんじゃないかな~」
「楓君か友奈ちゃん、もしくは私が一騎討ちするしかない状況を作る為に戦線を膠着させたと言うの?」
赤嶺の言う“可能性”にピンと来ている者は勇者達の中には居なかった。が、頭脳担当の園子ズと楓達、言葉にはしていないが杏も色々と考えていた。流石に少ない情報では何故3人なのかは分からないものの、この状況が仕組まれていた事である可能性が高いという。そして、尚も考察は続く。
「やっぱり巫女狙いじゃないの? 東郷を一騎討ちに引きずり出して倒そうって腹じゃ……」
「結城さんが指名に入っているのは、結城さんを倒した場合でも東郷さんを無力化出来るから?」
「でも赤嶺ゆーゆのさっきまでの事を考えると、その説はちょっと弱いような気がするよ。それにカエっちも指名に入ってる理由が無いし……」
(案外自分はこの一騎討ち自体にはそこまで関係無くて、造反神が赤嶺ちゃんに言わせただけかも……なんて、流石に無いかねぇ)
雪花の意見は巫女である美森が本命であるというもの。事実美森が倒されてしまえば戦闘要員かつカガミブネを扱える希少な人間が居なくなり、行動にかなりの制限が掛かってしまう。造反神側としても倒しておきたい最たる存在だろう。千景も続いて考えを述べるが、それは園子(中)が首を横に振る。
勇者達が一様に考え込んでいる中、楓はこれまでの経験……性転換や心理戦の時など……からもしや、とも考えるが流石にそれはないだろうと内心首を振った。出来ればそうであって欲しくないという願望でもあったが。
「あの……私、行ってこようと思うんだけど。組み合ってみる事で、赤嶺ちゃんの考えてる事が分かるかも知れない」
「でも相手は対人に強いのよ? 危険だわ。それなら私が」
「いや、対人に強いなら自分が行った方がいいだろうねぇ。それに自分なら距離も選ばないし、手数も手段もある」
「ありがとう楓くん、東郷さん。でも相手も“友奈”だから、こっちも“友奈”で丁度良い気がするんだ」
「そっか、友奈さん同士の謎を解明するチャンスでもあるわけね」
「うん! 結城 友奈、行ってきます!」
続く話し合いの中、友奈が自分が行くと手を上げる。ぶつかる事で赤嶺の事が理解出来るかも知れないと昔の青春漫画のような物言いだが、言葉でははぐらかされたり遠回しな言い方だったりするので案外良案なのかも知れないと勇者達は納得しているようだ。何人かは思い当たる事があるのだろう、深く頷いていた。
しかし、彼女に待ったをかけたのが2人。名前を上げられた美森と楓である。大事な人達が危険な目に遭うくらいならと美森は言うが、それならと楓も自薦する。実際、多彩な行動が出来る彼が1番赤嶺と相性が良いと言える。しかし、と友奈は首を振り、相手が“友奈”であるのだから自分が出るべきと譲らない。結局、歌野の呟きもあって勇者達は彼女を代表とする事に決め、友奈は赤嶺の前に出る。
「お、話が纏まったのかな? 一騎討ち、やる流れみたいね。嬉しいな。どうせだから高嶋先輩、レフリーとして勝負の判定、お願いしていい?」
「分かったよ。責任持ってレフリーするね」
「皆ー! 私、やってみるよ!」
赤嶺からレフリーを任され、快く引き受けた高嶋。3人の“友奈”は勇者達から少し離れた場所へと移動し、その際友奈は元気よく仲間達に向けて手を振っていた。これから真剣勝負をするというのに緊張した様子の無い彼女に仲間達は心配したり呆れていたりエールを送ったりしている。共通しているのは、誰も彼女の勝利を疑っていない事だ。
夏凛からは、ぶっ倒してこいと。若葉からは、頼んだぞと。千景からは、もしかしたら赤嶺とさえ仲良くなれるかも知れないと。球子からは、タマが応援するのだから絶対勝てると。杏から、相手は正攻法で来るだろうと助言を。須美からは、大変な重圧だろうけれど友奈ならはね除けられると。
園子(小)からは、頑張れと応援が。銀(小)からは、大声での声援が。歌野からは、自分が作った野菜を食べているのだから大丈夫だと。雪花からは、気づいた事があればアドバイスすると。棗からは、海が見守っていると。樹からは、友奈だから出来ると。風からは、拳に女子力を乗せろと。
「皆ありがとう! 楓くん、東郷さん、見ててね!」
「いつも見てる」
「勝つと信じてるよ、友奈」
「うん!」
仲間達の声援、親友の真剣な眼差し、大切な人の朗らかな笑みと信頼を受け、笑顔を返した友奈は改めて正面の少し離れた場所に立つ赤嶺に向き直る。そして深い深い深呼吸を1つし、小さく笑みを浮かべた彼女は真っ直ぐに目の前の“友奈”を見詰めた。
「お待たせ、赤嶺ちゃん」
その言葉を受けた赤嶺は、そうこなくてはと同じく小さく笑みを浮かべた。
精霊紹介コーナー(久しぶり)
見た目は赤く小さな提灯を持っている、大きな葉っぱを頭に乗せた子狸。尻尾の先にはこれまた小さな火が浮いている。
精霊としての能力は現在は不明。何なら本作の中では登場はおろか能力を使うことすらないかもしれない。天狐のように火を伴う能力の可能性が高い、か?
精霊自身の性格は世話好き。悪戯好きの火車や鎌鼬の相手をすることが多く、見た目が狸の繋がりか刑部狸とも仲が良い。火があるからか牛鬼にはあまり狙われない。
という訳で、原作22話の友奈同士による一騎討ち、その導入部のお話でした。これが終われば遂にあの子達が……?
当初は友奈ではなく楓を出すつもりでしたが、ここはやっぱり友奈じゃないとな……と思い直し原作通りに。巫女達の主語役も人数が増えました。特に東郷さん&神奈には楓(適性最強)、友奈(原作適性最強)、園子(中)(原作中最強説)、銀(中)(本作中の園子(中)と同レベル)と鉄壁を誇ります。なんだこれ硬ぇ←
こんなペースで今年中に完結出来るのか、リクエストは消化し切れるのかと不安ですが、頑張って参ります。
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