前回の投稿が6月の終わり際……だと? 約3ヶ月も投稿せず申し訳ありません。私自身まさかここまで間が空くとは思っていませんでした。
ゆゆゆいのサ終が決まってしまいましたね……悲しい。非常に悲しい。天華百剣の時もそうでしたが、やはり自分が良く遊んでいるアプリが終わってしまうのは悲しいものですね。以前に貰った感想で本作を見てゆゆゆいを始めたと言って下さった方が居たことを覚えています。
ゆゆゆいは終わりを迎えてしまいますが、本作はまだまだ終わりません。その時まで、どうかお付き合いくださいませ。
「これから友奈と友奈の戦いを始めます! レフリーは私、友奈です!」
「改めて相当カオスな状況だわ……高嶋も開き直ってるわね」
「あれだけ私が戦うと宣言したのに結城に任せてしまうとは恥ずかしい」
「あの流れじゃ仕方ないでしょ。別に格好悪いとは思わないわよ」
「千景……」
「さぁ、応援しましょう。結城さんを、そしてレフリーの高嶋さんも」
仲間達から離れた場所で互いに向き合うは2人の友奈。そしてその2人の近くで審判を任され、向き合う友奈を見つめるのもまた友奈。各々違うところはあれど名前も顔も声も同じ。これで血の繋がりは無いのだから不思議というか同じ顔が集まってて混沌としているというか。そんな状況に送り出したとはいえ流石に苦笑いが込み上げてくる夏凛。
若葉は一騎討ちに出る条件に自分が入っていないのを知らなかったとは言え代表として出る気満々で居たし発言もしていた分、妙な気恥ずかしさに少し落ち着きがない。そんな彼女のフォローをしたのは千景で、気を取り直した若葉は彼女と、そして仲間と共に応援するべく友奈達の方へと視線を向ける。
「この戦いに勝って土地を取り戻せば、更なる援軍が呼び込める筈です」
「友奈ちゃん……友奈ちゃん!」
「美森ちゃん……大丈夫、友奈なら」
「あ……楓、君……うん」
「……いいなぁわっしー」
「まあまあ、後で園子も握って貰えばいいじゃん」
「うん。その時はミノさんも一緒にね~」
「いやあたしは別に……その……ぉぅ……」
杏が一騎討ちを征した場合の予想を口にする。亜耶から“防人”という存在を聞いており、造反神の力が増していると分かっている以上、神樹側も新たな増援を呼ぶのも当然と言える。その為には土地を奪還し、神樹の力を更に取り戻す事が必要不可欠。元々奪還していかなければならないが、この一騎討ちによる勝利は確実に大きな意味と結果をもたらす事だろう。
それだけ重要な1戦に、そして1人で対人に特化した敵と戦わなければいけない大切で大事な存在を心配する美森。そんな彼女の、或いは自身の不安を和らげる為にか、楓は右手で美森の左手を握って笑いかける。その手の温もりと笑みに少しは落ち着いたのか、彼女も少しだけ笑みを浮かべた。そんな2人を羨ましげに見ていた園子(中)は銀(中)に言われて自分達も後で手を繋ごうと言い、真っ赤になった銀(中)は小さく頷いた。
そんな仲間達を他所に、高嶋は右手をピッと真っ直ぐ上げる。自然と空気が引き締まったように感じられ、仲間達も言葉を発さなくなり、静かになる。それはさながら嵐の前の静けさを彷彿とさせ……やがて、その“時”が来る。
「それでは2人共、見合って見合って~……ファイッ!!」
「はぁぁぁぁ……っ!」
「ふぅぅぅぅ……っ!」
「勇者ぁ……パーンチ!!」
「勇者パンチ……!!」
高嶋が腕を振り下ろし、開戦を告げると同時に2人は各々気合の入った呼吸を1つし、友奈は右腕を引いて跳び上がり、赤嶺は同じように右腕を引いて待ち構える。そして片や大きく、片や静かに技を叫びながら突き出された腕がぶつかり合い、硬い物がぶつかったかのような重い音と衝撃が周囲に響き渡る。
たった1度のぶつかり合い。だがそれは戦いの外に居る勇者達に2人の力量と技の威力が互角であると悟らせるには充分だった。衝撃の強さを物語るかの如く弾かれたように大きく距離が開く2人だが直ぐに友奈が距離を詰め、今度は低く跳んで体も回転させる。
「勇者ぁ……キーック!!」
「勇者キック……!!」
友奈の右足による跳び回し蹴りに対し、赤嶺はその場から動かずに右足による上段回し蹴りで対抗。腕同士のぶつかり合いの時よりも更に大きな音と衝撃が周囲に響き渡り、あまりの風圧に1番近くで見ていた高嶋が思わず後退る。
「分かっていたけれど、赤嶺ちゃんも強いねぇ……」
「ああ、結城の攻撃とぶつかり合っているのに全く力負けしていない」
「友奈ちゃん……頑張って……!」
再度距離が離れ、その都度接近して拳と蹴りをぶつけ合う2人を見ながら楓、若葉が呟く。直接戦った回数こそ少ないが、その少ない中でも赤嶺の実力が勇者達に決して劣らず、むしろ高い事は理解していた。だがこうして戦うところを外側から眺める事でよりその強さを感じ取れる。
友奈の攻撃力は仲間達の中でも高い。武器ではなく拳や蹴りの1つで中、小型を消し飛ばし、大型ならば凹ませ、或いは抉る。そんな一撃を赤嶺は悉く相殺しているのだ。いや、勢いを付けて放つ友奈に対して大きな動きをせずに繰り出す攻撃で相殺している分、彼女の方が僅かでも威力が上なのかも知れない。それは彼女が力を増している造反神の勇者であるが故にか、或いは彼女自身の強さなのか。
美森が祈るように応援する間にもぶつかり合いは続く。お互いに相手の攻撃を避ける事はせず、拳には拳を、蹴りには蹴りを繰り出し、気持ちを乗せて激しくぶつけ合い、相殺する。
「勇者パーンチ! っくぅ!」
「勇者パンチ! どうしたのかな、少し威力が下がってるよ?」
「まだまだ! やああああっ!!」
「そうこなくっちゃね」
何度目かの拳のぶつかり合いの際、明確に友奈が押し負けた。大きな後退ではないが、両者の表情にも違いが出ている。押し負けた友奈には僅かながら焦りが見え初め、赤嶺にはまだ笑みを浮かべる余裕がある。だが、それで諦める友奈ではない。また何度も赤嶺にぶつかりに行き、赤嶺もそうではなくてはと同じくぶつかる。
しかし、最初と比べるとやはり差が開いてきていた。何度友奈が攻めても赤嶺は苦もなくパンチやキックをぶつけ、その度に押し返される。それが数度続いた後、遂に友奈は上手く着地も出来ない程に弾き飛ばされた。
「勇者パンチ!」
「勇者パンチっ! う、わあぁぁぁぁっ!」
「吹き飛んだね。相殺し切れてないよ……私の勝ちかな」
「勇者部五箇条ォ!!」
「なるべく~?」
「っ……諦めない!」
攻撃の威力が下がっているどころか相殺すら最早出来ておらず、吹き飛んで倒れた友奈の姿を見て赤嶺は勝ちを半ば確信する。これが一騎討ちである以上友奈は味方からの援護を受けられないし、マンガやゲームのような即座に体力を回復するような都合の良いアイテムや能力も無い。体力も力も減る一方で、こうしてハッキリと赤嶺が上回った以上彼女に勝ちの目は無いに等しい。
だが、友奈は夏凛と園子(中)の声に元気よく返してしっかりとした足取りで立ち上がる。その目に諦めの色は無く、強く折れない意思を感じさせる。それは勝利を確信していた赤嶺から、余裕の笑みを消し去る程に。
「……立ったか」
「ごめんね赤嶺ちゃん。私1人の力を見てみたいって言ってた気がするけど……」
そう言葉を区切り、視線を横に向ける友奈。赤嶺がその視線を追えば、その先に居るのは大きな声で、身振り手振りで友奈の応援をしている仲間達の姿。誰1人として不安な顔をしておらず、彼女が勝つと信じて疑っていない。
その声援を、応援を一身に受けている友奈は赤嶺に向けて苦笑いをする。一騎討ちをしている自分がこうして、あれ程気持ちの篭った応援を受けている自分が、とても1人で戦っているとは言えないと。だからこそ。
「皆の想いを、声を、この拳に乗せて……!! はぁぁぁぁっ……!」
「す、凄い力……それになんだか、白く光ってるような……?」
「……ふふ。こっちも限界を超えていくよ」
右手の拳を強く握り締め、目を閉じて息を吐きながらゆっくりと後ろへと引いていく友奈。仲間達の自身の勝利を思う気持ちを、その声援を、その期待と想いに応えたい自身の心を全てその拳に乗せてぶつける為に。
その時、友奈以外の者達は見た。彼女の右手に、どこからともなく現れた様々な色の光が集まっていったのを。その瞬間友奈の周囲に風が吹き、彼女自身の髪を揺らす。近くに居る高嶋と赤嶺は勿論、応援している仲間達にもそれが友奈の勇者の力が溢れているのだと感じ取れた。更には彼女の右手を覆うように薄く白く光っているようにも見える。それはまるで、誰かの白い光が彼女の手を覆っているかのようで……それを面白そうに見ていた赤嶺もまた、同じように、そしてこれまで以上の力で腕を引く。
そして、その時は来た。
「勇者パンチ!」
「勇者ぁぁぁぁっ!! パァァァァンチ!!」
「っ、ああああぁぁぁぁっ!!」
これまでのぶつかり合いの中でも一際大きな衝撃と音。最早爆音に等しいその音と共に広がった衝撃は2人の最も近くに居た高嶋を本人が声を上げる暇も無く数メートル吹き飛ばした。そして、吹き飛んだのがもう1人……ぶつかり合った、赤嶺。
直接ぶつかり合ったせいだろう、高嶋と違って大きく後方へと吹き飛んだ彼女は樹海の根の上を二転三転と転がり、別の根に激しくぶつかってようやく止まった。根を転がった為に煙が巻き上がり、彼女の姿はその中に隠れてしまって見えない。が、誰もが確信した……友奈の勝利を。
「っ……一騎討ちは、完敗だね……凄いよ」
「あ、アタッカ君が赤嶺さんをそのまま拐って行っちゃった」
「見て下さい。樹海が解けていきます。土地が戻ってきたんですよ」
「意外とあっさり敗けを認めたね……」
「そうだねぇ。それにちゃんと土地も渡してくれたみたいだし、やっぱり悪い子って訳では無いんだろうねぇ」
煙は直ぐに消え、中から現れた赤嶺は勇者服が汚れ、右手の手甲のような部分には大きく罅が入っており、その罅が友奈の放った一撃の強さを物語っている。彼女はうっすらと笑いながら潔く敗北宣言をし、横からホイッスルのような形をした小型バーテックス、アタッカに拐われるようにその場から去っていった。
歌野がその様を説明するように呟いた直後、杏が言ったように樹海化が解けていくのが見えた。友奈が一騎討ちに勝利した事で土地が戻ってきたのだろう。つまり、赤嶺が言っていた“勝った方が土地を得る”というのは嘘偽りではなかったという事だ。雪花は彼女が潔く敗北を認めた事に少々不信感があったようだが、楓の呟きに頷いてそれ以上彼女に対して何か言うことはなかった。
「凄かったよ結城ちゃん! まるで楓くんが強化してくれたパンチみたいにずがーんって!」
「皆のお陰だよ高嶋ちゃん! 皆から貰った応援とか、気持ちとかを込めるって思ったらすっごく力が湧いてきたんだ。そして、ハッキリ分かったよ」
─ 赤嶺ちゃんとも分かり合えるって。絶対、一緒に戦える時が来る ─
「……うん! そうだね、結城ちゃん!」
興奮した様子で走って友奈に近付いた高嶋はその勢いのまま彼女を、そして最後の一撃を褒める。その声が聞こえていた仲間達は流石に実際に彼の強化を受けた一撃程とはいかないまでもそれに迫る威力を誇っていたと内心同意していた。友奈自身もそれを感じていたのだろう、皆のお陰だと口にしながら開いた右の手のひらを見る。
今はすっかり光も消え、そこにあるのは普段通りの手。だが友奈はその手に自分のものではない温もりが、彼の強化を受けた時のような、手を繋いだ時のような安心感が
僅かに残っているように感じられた。その温かさを逃さないようにグッと握り締め、高嶋の目を見ながら強く断言する。
今は敵対している赤嶺、彼女とも必ず。そしていつか、絶対に共に。友奈の言葉に高嶋は嬉しそうに笑って頷く。いつか、神奈も含めた4人の“友奈”が仲良く並ぶ事が出来る事を信じて。
尚、この後友奈は集まった仲間達に思い思いに褒められ撫でられともみくちゃにされた上に風の案で樹海化が完全に解けて部室に戻るまで胴上げされる事になる。
一騎討ちの翌日。勝利したことで徳島の土地の多くを奪還出来た喜びをそのままに部室に集まった勇者と巫女達。中でも特にテンションが高い高嶋が体を左右に小刻みに揺らしながら口を開く。
「結城ちゃんの頑張りで、来るよ来るよ亜耶ちゃんの友達が……新しい仲間が来るよーっ!」
「確かに目出度いことだけれど、高嶋ちゃんはちょっと落ち着こうねぇ」
「徳島の土地をいっぱい取り返して、神樹様にまた力が戻って。良かったね亜耶ちゃん」
「うん、杏ちゃん! 芽吹先輩、雀先輩、しずく先輩、シズク先輩、弥勒先輩……会えるのが楽しみ♪」
「んん……? 何だか気になる名前が2つ程……芽吹に弥勒……?」
(はて、今同じ名前が2回出たような……それに“しずく”という名前、どこかで……)
新たな仲間が増えることが嬉しいのだろう興奮を抑え切れていない高嶋を苦笑いしながら落ち着かせようとする楓。杏はこれも神樹に力が戻ったからだと良い、仲間が増える事に1番喜んでいるであろう亜耶に笑いかける。彼女はそれに満面の笑みを返し、手を合わせながら防人の仲間のものであろう名前を続けて呟く。
当然と言うべきか、今この場に居る他の勇者、巫女達に聞き覚えはない。が、その中で首を傾げたのは夏凛と楓と新士。3人は各々亜耶が呟いた名前に聞き覚えがあったようだ。夏凛はもしや……と脳裏に人物像を描き始めていたが楓達は完全に思い出すには少し時間が掛かりそうだった。
「わくわくする瞬間だよね、東郷さん!」
「ええ。でも体調は大丈夫なの? 友奈ちゃん。赤嶺さんと凄い戦いをしていたから」
「時々ズキッと痛いけどね、大丈夫大丈夫。さぁ、ようこそ勇者部へ!」
「わくわくわくわく……………………わく?」
「あらら? 新戦力が来ないわね。ちび楓みたいにどこかに引っ掛かってるとか?」
「自分がそうだったとはいえ、どこに……というか何に引っ掛かるんだい?」
「あはは、えーと……どこだろうね」
高嶋に負けず劣らずテンション高めの友奈。新しい仲間が増える瞬間を楽しみにしている彼女に同意しつつ、美森は友奈の体を心配する。赤嶺との一騎討ちは離れて見ている仲間達の元へもその衝撃が届く程激しいモノであり、それ程の攻撃を全てぶつけ合う形で相殺していたのだ、心配も当然だろう。
その懸念は当たっていたようで、友奈は苦笑いしつつ手や足を擦る。だが大丈夫だと笑い、もうすぐ来るであろう新たな仲間に向けて歓迎の言葉を述べる。それを聞いた亜耶はいよいよ自身のよく知る仲間達がやってきてくれるのだと気分を高揚させていた……が、どういう訳か仲間が来る前兆の発光もなく、雪花に棗のようにいつの間にか居るということも無い。
いつまでも仲間達が来ない事に首を傾げる亜耶。以前にも似た現象を見た事がある風は新士のように出遅れているのかと冗談半分に呟き、本人である新士は“引っ掛かる”という表現に疑問を覚えて考え始める。そんな彼を見て神奈は誤魔化すように視線を泳がせていた。そんな時、聞き慣れたアラームが部室の中に鳴り響く。それに真っ先に反応したのは銀(小)と園子(中)。
「あ、樹海化警報! これは新士じゃなくて球子さん達のパターンじゃないですかね?」
「樹海に召喚されて敵と遭遇してるんだね~? 早く助けに行かないとだね」
「なら樹海に行き次第、前みたいに自分の光の絨毯に乗って行こうか。全速力で飛ばすから、皆落ちないようにねぇ」
「落ちそうになったら私の鞭でレスキューしてあげるからノープロブレムよ!」
「私もワイヤーで助けますね!」
「歌野の鞭はともかく、樹のワイヤーはちょっと怖いわね……」
「なぜ!?」
そんなこんなでカガミブネで徳島の樹海へと移動し、楓の光の絨毯に全員が乗り込んでから反応がある場所へと向かうこと少し。それを最初に見つけたのは千景と若葉の2人だった。
「人影発見よ。2人程居るようね……? 1人は赤嶺 友奈じゃないの」
「いきなり赤嶺に襲われるのはまずい……が、そういう戦闘の雰囲気でもないような?」
2人がそう疑問を口にした後、他の勇者達も勇者の力で強化された視力でハッキリとその姿を捉える。1人は先日も戦った赤嶺。そしてその隣に見知らぬ浅緑色の、勇者服とは違って顔以外の露出が無い戦闘服らしきモノに身を包んだ少女が居た。
「あれが私の戦っている相手だよレンち……じゃなかった。蓮華じゃなくて子孫の
「まぁ! 彼女達……男性もおりますね。人間の格好をしているけれど、バーテックスなのですね? 赤嶺さん」
「うん。そしてこちらのバーテックスは味方なんだ。という訳で助けてくれないかな」
「確かに空も飛んでいますし……わかりましたわ! 赤嶺家と弥勒家は盟友! そこの皆さん! いざ、わたくしとデュエルですわ!!」
そして赤嶺と夕海子と呼ばれたお嬢様口調の少女はそんな会話をしていたのだが、勇者達には聞こえていない。故に、恐らくやってきた新しい仲間なのであろう彼女がライフルのような武器を自分達に向けてどこからともなく現れたバーテックス達と共に迫ってきた事に驚愕していた。
「っ、襲いかかってくる? もしかして騙されているのでは……私達は味方で、そちらが敵です!」
「ちょっと、弥勒さんじゃないの?」
「知っているのかい? 夏凛ちゃん」
「え、ええ……ほら、私よ! 三好 夏凛よ!」
「お黙りなさい、わたくしの目は欺けませんわ。問答無用で参りますわ! デュエル!!」
「……聞いてくれそうにないねぇ」
「あの人はもう、仕方ないわね……こちらも対応しましょう。そうでもしないと止まらないわ」
須美と夕海子と知り合いらしい夏凛の言葉を聞いても既に敵と見なしている為か制止する事無く、更には発砲してくる。その攻撃を楓は難なく回避してみせ、止まる様子も言葉を聞く様子も見えない彼女の姿にため息を吐きそうな声で呟く。その呟きと話を聞かない知り合いに頭を抱える夏凛。そんな彼女も仕方ないとそう提案し、バーテックスも迫っているので仲間達も頷き、いつも通りに地上組と上空組に別れて迎撃を開始するのだった。
……だが、バーテックスと共に亜耶の仲間が居るといっても1人。対して勇者は20人越えで攻撃方法も多種多様。それに加え、夕海子の射撃技術はとてもではないがバーテックスや勇者達の攻撃の合間を縫って勇者達に当てられる程のモノではなかった。人間同士の一対一ならばまた違ったのだろうが。
無論、勇者達も彼女を傷付ける訳にはいかないのでバーテックスへの攻撃は慎重にならざるを得ない。とは言え早いところ誤解を解く、ないしは騙されていることを悟らせないといつまでも攻撃してきそうな雰囲気なので早急に殲滅する必要がある。
「弥勒さん! 少しくらい話を……!」
「バーテックスの言葉など聞く必要もありませんわ!」
「ああもう、全っ然聞いてくれない! 仕方ないわね……楓さん達、やっちゃって!」
「っ、逃がしませんわ! あら? 何だか空が明るく……っていやーっ!?」
唯一夕海子と知り合いらしい夏凛が接近戦で彼女を抑えつつ説得を試みるが、やはり彼女はまるで聞いてくれない。これ以上の説得は無駄だろうと判断した夏凛は夕海子のライフル……銃剣らしいそれに両刀を当てて大きく弾き飛ばして上空の楓達に声を掛けつつ強引に距離を取る。夕海子はそれを逃走だと見て追おうとするが、不意に樹海の空が明るくなった気がしたのを疑問に思い、つい足を止めて見上げた。
そこにあったのは、明るくなった原因であろう白や青といった様々な光……の矢に弾丸。当然放ったのは上空組の楓、美森、須美、杏である。雨の如く降ってきたそれらはバーテックスを的確に貫きつつ夕海子の周辺にも落ちてきた。当然、銃剣の大きさ程度で防げるモノではないしそんな量でもない。彼女に当たらない様にしていたのか直撃こそしなかったものの、彼女はその衝撃に煽られて悲鳴と共に宙を舞い、ろくに受け身も取れずべしゃっと樹海の上に落ちた。
「わ、わたくしとしたことが……悔しい、ですわ。でも屈しませんわよ。もう1度デュエルを……」
「ちょっとちょっと、いい加減話を聞いてよ……あのねってうわまずい。お仲間も召喚されてきた!」
「っ!? ここは……まさか、樹海!? 何故樹海の中に居るの私達は。壁の外を探索中だったハズよ」
「ど、どうなってるのどうなってるのメブ!? 私達3人しか居ないよ? 他の皆はどこ!?」
「
「弥勒さん!? 人間と戦っている!? 何が起きているかわからないけれど、とにかく行くわよ!」
「ん、了解」
「ええっ!? まさか戦闘するの!? 私聞いてないよメブー!」
「とにかく状況を見極めないと」
対したダメージは無かったが宙を舞ったせいだろう、よろよろと銃剣を杖に立ち上がる夕海子。まだ戦う意思を見せる彼女にそろそろ話を聞いて貰えないかと雪花が話し掛けるが、そんな暇もなく樹海に新しく少し離れた場所に3人の人影が現れた。その3人は今しがた戦った夕海子と同じ衣装を身に付けており、彼女の仲間であることが伺い知れる。
無表情の白髪の少女にそれぞれ楠と呼ばれた少女、加賀城と呼ばれた少女の2人はこの状況に片や驚きつつも冷静に、片や慌てている。だがその視線が夕海子に、そして勇者達に向けられ、仲間を助ける為か銃剣を手に勇者達に向かってくる。
「まずい、また戦闘になってしまうぞ」
「一旦落ち着いて貰おう」
「そうですねぇ。というかあの白髪の女の子……見覚えがあるんだよねぇ」
「あ、新士もそう思う? あたしもそうなんだけどさ。というかあの顔って隣のクラスの……」
「うん、山伏さんだよねぇ、多分。自分が知ってる彼女よりも背が高いから、恐らく未来……姉さん達と同じ時代の山伏さんかな?」
(っ!? お爺ちゃんに……三ノ輪……!?)
「しずく!? 急に立ち止まってどうしたの?」
「お爺ちゃんと三ノ輪が居る……2人ずつ居る……!?」
「は? お爺ちゃんって……知り合いがあそこに……いえ、私も見覚えのある顔があるわね」
「芽吹さん、雀さん、しずくさん、ようやく来たんですわね。さあわたくしと共に目の前のバーテックス達を倒しますわよ!」
「え? バーテックスって……どう見ても人間、勇者様達だよ!? ってなんか勇者様いっぱい居るけど!?」
武器を手に向かってくる3人を見てまた仲間となる者達との戦いを予期した棗。流石に何度も戦うのは嫌なので再び話をしようと何とか落ち着いて貰おうとする若葉に同意する新士だったが、ふと向かって来る内の1人のしずくと呼ばれた少女を見て銀(小)と共に既視感を訴える。どうやら小学生組の同級生に似た容姿の少女が居たらしい。
その既視感が正しいと言う様に、しずくもまた2人の姿を見て驚愕に目を見開いて勇者達とそう離れていない距離で立ち止まった。突然止まった彼女に気付いて芽吹が、次いで雀も立ち止まって振り返り、どうしたのか聞けばその理由を呟き、同時に楓と銀(中)も視界に入ったのかまた驚いていた。
“お爺ちゃん”の呼び方にピンと来なかった芽吹は首を傾げながら誰が彼女の言うお爺ちゃんなのかと探すと、途中で夏凛に目が止まる。そこで仲間の姿に気付いた夕海子が元気よく声を上げ、そう呼び掛けつつ銃剣を勇者達に突き付けた。それに対して雀はそう叫んだ後に今更気付いたらしく20人程居る勇者達の姿にびっくりしている。
「騙されてはいけませんわよ雀さん。弥勒家の盟友である赤嶺さんからの確かな情報ですわ! 相手は人間の格好をしたバーテックスで敵、そしてこちら側のバーテックスは味方ですのよ。全滅しましたが……さあ、共にデュエルと致しますわよ!」
「バーテックスが味方で勇者様達が人間のバーテックスって訳が分からないよ!?」
「お爺ちゃんと三ノ輪達が敵……? そんなことは有り得ない……というかバーテックスに見えない」
「そうね。弥勒さんには悪いけれど、私も人間としか思えないわ。とてもバーテックスには見えない、見知った顔が居るもの」
ダメージがある程度回復したのか、戦う姿勢を取らない3人に向けて赤嶺から伝えられた情報を告げ、共に戦おうと銃剣を再度勇者達に向けて戦意を滾らせる。が、いきなりそんな説明をされたところで理解出来るかと言われればそうではない。雀が至極当然のツッコミを入れ、しずくは静かにしかしハッキリと有り得ないと首を振る。
芽吹も仲間の言葉を信じたい気持ちはあるのだろうし、本来ならば半信半疑でも勇者達と1戦交えたかもしれない。が、仲間の1人は元々の性格的にあまり戦闘に積極的ではないし、もう1人は夕海子の言葉ではなく自身の判断から既に……と言っても見知った相手だけだが人間と断言している。グダグダのまま戦う事になるのは望ましくないし、何よりもとても勇者達がバーテックスには見えない。それに彼女自身もまた、見知った顔がある。
「楠
「三好 夏凛!」
「え……まさか、本物の三好さんですの!? にぼしとサプリが大好きな!?」
「だからさっきからそう言ってるでしょ。突撃思考は相変わらずね、弥勒 夕海子」
「……お爺ちゃん。それに三ノ輪」
「うん、やっぱり隣のクラスの山伏 しずくさんだよねぇ」
「だよな。でもあたしが知ってる姿より大きいから、やっぱり中学生になった山伏さんか」
「あれあれ? 雀ちゃん!?」
「っ!? ゆ、勇者部の皆様!?」
「おや、知り合いかい? 友奈」
「うん! 楓くんがまだ帰ってきてない時に勇者部に依頼に来てくれたんだ」
「今度は勇者様が空から降りてきたぁ! あ、他にも乗ってる!? ていうか何に乗ってるの!?」
「いいツッコミの奴が来たな。にしても知り合いが多いな? タマも混ぜタマえよ」
お互いに確認するように名前を呼び合う夏凛と芽吹。その2人を見てようやく、ようやく目の前の勇者達がバーテックスではなく本物の人間であると認識したように名前を呼ぶ夕海子。夏凛の反応を見るに、これが彼女の通常運転らしい。
次いで名前を呼び合ったのはしずくと新士、銀(小)。近くには園子(小)と須美も居るのだが、2人とはあまり面識が無い様子。チラチラと視線を上に向けたり銀(中)へと向けたりしているのは同じ顔が2人居る事に驚いているからなのだろう。
そして友奈もまた、知り合いらしい雀の名を呼び、呼ばれた本人も地上に居る勇者部メンバーを見て何度目かの驚きを見せる。因みに楓は現実世界で彼女に会った事は無く、光の絨毯を下ろしながら友奈に問えばそう返ってきた。一瞬寂しげな表情を浮かべたのは、その時の楓が居ない日々を思い出してしまったからだろう。
その降りてきた上空組を見てもう数えるのも面倒なくらいの驚きとツッコミを入れる雀。元気な奴だと笑う球子と他の面識が一切無い勇者達も彼女達と交流するべきか近寄る。そういったところで、困惑した顔で夕海子は後ろへと振り返り……離れた場所に居る赤嶺に問い掛ける。
「赤嶺さん!? これはいったいどういうことですの!?」
そんな彼女の言葉と他の者達からの視線を一身に受けつつ、赤嶺は悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。
多分名前が出た楓の精霊は全部書いたので久々の原作との相違点←
・友奈が何か凄いパンチで赤嶺に勝つ
・夕海子、デュエルするもあしらわれるように惨敗
・他の防人との勝負は発生せず
・新士(楓)と銀が2人ずついて興奮してるしずく
という訳で、一騎討ち決着と防人組登場というお話でした。実のところ、本作における防人達の設定はあまり固まっていなかったりします。ただ何度か存在を示唆していたしずくに関してだけは原作通り銀、そして楓に対して他の勇者よりも信を置いている、雀と楓は出会っていない時系列であるとしています。
防人組は、ゆゆゆい原作沿いに本作の設定を多少加えて若干のアレンジをすると思います。どうかご了承下さい。
それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)