咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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お待たせしました(´ω`)

リクエストの楓君と誰かの親密になったifルート番外編。タイトル通り、今回は銀とのif話になります。

沢山感想を頂けるとモチベが爆上がりしますね。ただ、なんで皆病み求めるん……?(震

今回、それなりに筆が乗りました。やれるやん、私←

優しい世界です。


番外編 咲き誇る花と幸福に ー 銀if ー

 きっと、その時はその感情を良く理解していなかっただけで……最初から惹かれてはいたんだ。ただ、そうだと感じるにはあたしは子供で、友達だとか、親友だとかと思い込んでたくらいに鈍感で、勇者として戦う時に比べると遥かにその手のことに臆病で。

 

 (……はぁ)

 

 内心で溜め息を吐く。学校の帰り道、あたしの目の前で園子が楓と手を繋いで歩いている。3体のバーテックスが攻めてきて楓が右腕を失くして、病院から退院して学校に通うようになってからも、いつもみたいに4人で帰ってた。その時にはいつも、園子が楓の左側を確保する。そんで、右側には須美が立つんだ。あたしはいつも、園子の隣か、須美の隣。

 

 別に、不満だって言う訳じゃなかった。少なくとも、この時のあたしは。ちょっとモヤモヤとして、何だか胸の奥が痛いと感じるくらいで。それに、2人が楓を好きだってのは知ってたから。

 

 後は……罪悪感もあったんだと思う。あたしがもっと早く着いていれば、もっと速く動けていれば、楓の腕は無事だったのにって。あの時、あたしが残っていれば良かったんじゃないかって。

 

 ー 銀!! ー

 

 あの時の楓の、あたしを呼ぶ声が頭に響く。言うことを聞かない子供を叱るような……それでも、その子供のことをちゃんと思ってくれてるって分かる、そんな怒鳴り声。思えば、楓に呼び捨てにされたのはアレが初めてだった。多分、3人の中ではあたしだけが呼び捨てにされたんだと思う。そう思うと……ちょっとだけ、ゆーえつかん? ってのが湧く。

 

 「銀ちゃん? 銀ちゃーん?」

 

 「えっ? な、なに?」

 

 「なにって……もう別れ道だよ」

 

 「あ……うん」

 

 いつの間にか、あたしの家と2人の家に続く別れ道まで来ていたらしい。2人にまたねと手を振りつつ、楓と一緒にいつもの道を歩く。楓が高嶋家に養子に出てから、この道を通るようになったらしい。本当なら車で送り迎えされる予定だったけど、それを楓本人がリハビリ兼トレーニング代わりだと言って歩いているんだとか。

 

 あたしは楓の左隣を歩く。ちらっと楓の横顔を見てみる。その左目には眼帯が付けられていて、イマイチ表情がわからない。口元は笑ってるから……まあ、普段と変わらないんだろうけど。

 

 「……」

 

 ふと、楓の左手に目が行く。さっきまで園子が繋いでいた、残った左手。2人と違って、あたしはそこまで楓と触れ合ったことはない。頭を撫でられたことも、抱き締められたことも。あたしは頭で考えるよりも先に動くタイプだからなぁ……バーテックスと戦う時に肩を掴まれて止められる時くらいじゃないか?

 

 園子は良く言ってる。楓に撫でられるのが好きだって、触れ合ってると安心して、幸せな気持ちになるんだって。須美は……恥ずかしそうにしながらも、同じように言ってた。悪夢を見た日にはわざわざ跳んできて、抱き締められたって。そんな物語みたいなこと、本当にあるんだなって思った。

 

 なぁ、もしここで手を繋いだら……あたしはどんな気持ちになる? 園子みたいに安心したり、幸せな気持ちになったりする? それとも、須美みたいに恥ずかしくなって、動けなくなる? そんな風に思って、試しにと手を伸ばして……。

 

 「着いたよ、銀ちゃん」

 

 思わず、手を引いた。見れば、楓の言うとおりにあたしの家の前に着いていた。別れ道からそこそこあるのに、どんだけ悩んでたんだあたしは……。

 

 「あ……ありがとな、楓」

 

 「どういたしまして。それじゃ、また明日ねぇ」

 

 「う、うん……また、明日……」

 

 手を振って去っていく楓の背中を見送りつつ、あたしも手を振る。最近のあたしは毎回毎回こんな感じで、園子みたいにしようと思っても中々上手くいかない。そもそも、なんでこんなに恥ずかしいのかも……よく、分かってないんだから。

 

 ああ、言葉に出来ないモヤモヤがする。それは全然消えてくれなくて、むしろどんどん大きくなってる。それを晴らそうと一番小さなマイブラザのお世話をしても、多少晴れるだけで解決にはならないんだけど。

 

 (なーんか……あたしらしくないな)

 

 自分でもそう思うくらい、この時のあたしは迷走していたんだと思う。

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、まずは楓と手を繋いでみようと思った。これくらい楽勝……ということはない。あり得ない。基本的に楓の側にはあたし達が居て、その中でも園子が左側を陣取っている。もう絶対左側は渡さないという硬い意思を感じる。そして園子は、決してどんくさい訳でも運動が出来ない訳でもない。むしろその逆で運動も勉強も出来る。

 

 そんな園子から楓の左側を奪い、かつ手を繋ぐ……なんて難しいんだ。泣き出した弟を直ぐに泣き止ませることと同じくらい難しいゾ。

 

 とまあそんな目的と達成の難易度の高さに戦慄しているあたしと親友達3人の4人でイネスに来た。相変わらず園子は楓の左側、須美は右側に居る。くっ、流石はマイフレンズ……隙が見当たらない。

 

 「あっ、ジェラートのお店に新しい味が出てるねぇ」

 

 「マジで!? よし、行こう!!」

 

 「おっ、と……落ち着いて銀ちゃん。コケるコケる」

 

 「あっ! ま、待って~!」

 

 「銀! そんなに走ったら危ないわよ!」

 

 新作ジェラートと聞かされてはこのイネスマニアが黙っていられない。ということで、あたしは無意識の内に楓の左手を掴み、そのまま引っ張って走り出した。ジェラートは美味しかったケド、須美に滅茶苦茶怒られた。

 

 食べ終えたあたし達はのんびりとイネスの中を歩いていた。その間、あたしはさっきまで楓の手を繋いでた右手を見ていた。

 

 改めて思い返して見ると、男子と遊ぶことはあっても手を繋ぐ、みたいに触れ合うことなんて殆ど無かった。弟達は例外って奴だ。だからだろうか……今更になってこう……恥ずかしくなった。

 

 (あたしの手とは、全然違ったな……)

 

 武器を持つせいでタコが出来た、普通の女の子とは遠い手。そんな手でも分かった……楓の、小さくも硬い、男の子なんだって分かる手。いつもあたし達を守ってくれていた……あの日、謝りながらあたしの頭を撫でた……男らしい、小さくも大きい手。

 

 (……あっ……な、なんだ、急に)

 

 急に、ほっぺたが熱くなった。なんだか体も熱い気がする。イヤ……って訳じゃない。

 

 右手を自分の頭に置いて、撫でてみる。違う。あの時の楓の手は、もっと優しくて、もっと温かくて……こっちが泣きそうなくらいの笑顔で。

 

 「……あれ?」

 

 そんな風に考え込んでいたからか、足が止まっていたあたしの周りには誰も居なかった。やっべ、置いてかれた……と思ったのも束の間、前から小走りにこっちに向かってくる楓の姿が見えた。

 

 「良かった、近くに居て……いきなり居なくなってるから心配したじゃないか」

 

 「あ……えと、ごめん。いやー考え事しててさー。園子と須美は?」

 

 「あっちで待ってもらってるよ。直ぐ近くに居るとは思ってたからねぇ」

 

 楓が心配してくれた……それだけのことなのに、それを驚く程に嬉しいと思ってるあたしが居た。ただ、考えてたことがことなので楓には言えないので誤魔化す。姿が見えない2人がどこかと聞けば、待たせているという。それはつまり、楓が2人よりもあたしを優先してくれたってことで……。

 

 (……楓は、そういう奴だもんな)

 

 それは決して、あたしだけを特別視してる訳じゃないんだってことは……知ってる。楓は、言ってみればあたし達の誰よりも大人なんだ。怒るときはちゃんと怒って、褒める時はしっかりと褒めて、寂しい時は抱き締めてくれて……まるで、大人が子供にするような。

 

 「ほら、行くよ」

 

 「……うん」

 

 楓が朗らかに笑って左手を差し出してきて、あたしはそれを掴んで、そのまま歩く。何度も見た光景。いつも楓が園子にしてるような……そこに、あたしが嵌まっているだけの、それ以外変わらない光景。

 

 楓の背中を見る。ひらひらと揺れる何も通ってない右袖が目について……泣きそうになる。楓は怒らなかった。あたしにも、園子にも、須美にも……誰にも責めたりしなかった。それどころか、こんな自分でも一緒に戦ってくれるか? なんて聞いてきた。

 

 こんなになっても戦ってくれる。こんなになってもあたし達の前を歩いていく。それか……あたし達の成長を見守るように、離れた場所に居るんだ。あたしは……あたし達は……その背中だけを見ていたいんじゃない。あたし達の後ろで見守っているだけで居てほしいんじゃない。

 

 だから、引っ張られているだけになっているのは止めた。少し強引に踏み出して、楓の隣を歩いた。あたし達は、一緒に頑張って行くんだ。同じ勇者として、仲間として、親友として。この時は……まだ、そんな風に思っていた。

 

 因みにこの後、やっぱり須美には怒られ、その間に園子は楓の左側を陣取っていた。

 

 

 

 

 

 

 きっと、自覚したのは2回目の合宿の時。楓にコイバナを振って、あっさりとかわされた……その時、あたしは思った。

 

 (楓……あたしはどうなんだろ)

 

 楓はあたしにとって園子と須美と同じ親友だ。そういう意味でなら、間違いなく好きだって言える……そのハズなのに、今はそうやって口にするのは、恥ずかしかった。園子みたいに、臆面もなく好きだって楓に言えなかった。言えなくなっていた。

 

 須美から怪談を聞かされ、怖くていつもより眠るのに時間が掛かっていた頃。上の方で園子と須美が楓の布団に潜り込んで一緒に寝ようとしているのが見えた。なんなら声だって聞こえた。

 

 (……また、2人は……)

 

 疎外感。2人はあたしが止まっているのに、そうやって楓に隣に近付いていく。それが……羨ましい。

 

 (? なんであたし、羨ましいなんて……)

 

 自分で思ったことが不思議だった。あたしだって楓の近くに居たハズで、別に羨ましがるようなことなんて……。

 

 

 

 頭の中に、園子と手を繋いで歩いている楓の後ろ姿が映った。

 

 

 

 (……羨ましい……なんて)

 

 

 

 先頭を歩いていて振り返った時、笑い合ってる須美と楓の姿が映った。

 

 

 

 (……あたしだって……園子みたいに……須美みたいに……)

 

 どうしたいんだろうか。あたしは、楓とどうしたいんだ? 園子みたいに手を繋げば満足か? 須美みたいに隣り合って笑い合っていれば満足か? あんなに幸せそうに、嬉しそうにしてる2人と同じようにすれば……その光景にあたしが嵌まれば、それで満足するのかな。このモヤモヤは……取れるのかな。わかんない。わかんないなぁ。

 

 (……ごちゃごちゃ考えてても、しょうがない!)

 

 元々あんまり考えるのは得意じゃないんだ。だから、まず動く。色々考えてたから結構時間は経ってて、3人共寝てるっぽい。なるべく静かに布団から出て、なるべく足音を出さないように動いて楓の下に回り込む。

 

 よしっと意気込み、楓の足元の布団に頭から潜り込む。後から考えるとあたしはなんつーことしてんだとツッコミたくなるが、この時のあたしはあんまり考えずに行動してた。

 

 「……ぷはっ」

 

 もぞもぞと楓と布団の間を進むこと十数秒、ようやく布団から顔を出せた。あー空気が美味しい……なんてバカなことを考えてたら、楓と目が合った。

 

 「……」

 

 「……」

 

 「……お、起きっ!?」

 

 「そりゃあ体の上でもぞもぞ動かれたらねぇ……」

 

 ですよねーと思わず同意して苦笑い。なんだったら冷や汗もかいてたかもしれない。そしてこの状況……に、逃げられない。まさに前門の楓、後門の布団。起き上がろうものなら須美と園子まで起きてしまいそうだ。

 

 あっ、ヤバい、楓の顔が近い。眼帯着けてるけど、やっぱり顔は女の子みたいだよなーなんて現実逃避気味に考える。前に女装させられてた時に着てたボーイッシュな奴とかチャイナ服とか男とは思えない程似合ってたし……ってそうじゃない落ち着けあたし。今はこの状況を何とかしなければってこの状況に文字通り首を突っ込んだのはあたしの方で。

 

 「まあ……もしかしたら銀ちゃんも来るかもとは思ってたよ」

 

 「えっ?」

 

 「さっきの須美ちゃんの怪談で怖がってたし、銀ちゃんの隣に須美ちゃんが居ないからねぇ……まさか自分の上に乗っかるとは思わなかったけど」

 

 そう言ってくすくすと笑う楓。嫌がることも、怒ることも、ましてや退かそうともせずに、ただ今の状況を受け入れてる。なんだか恥ずかしがって慌ててたあたしがおかしいみたいじゃないか。

 

 でも、本人が良いなら……いいよね?

 

 「……うん。怖かったから、さ……その……このままでもいい、よな」

 

 「勿論、良いとも。安心出来るまで、ずっとね」

 

 「じゃあさ……園子みたいに頭、撫でてよ」

 

 「……ああ、いいよ」

 

 楓の胸に耳を当てるように頭を置いて、そのまま目を閉じる。ゆっくりとした心臓の鼓動が聞こえてきて、ゆっくりと頭を撫でられて……凄い、安心する。あたしがもっとちっさい頃、お父さんとお母さんにされてたような……そんな安心感。

 

 なのに、あたしの心臓はどんどん高鳴ってきて、顔も、どんどん熱くなって。安心してるのに、楓の体にくっついてるこの状況が物凄く恥ずかしくなって、そのくせ離れたいとはちっとも思わなくて。

 

 (……この温かさ……好きだなぁ)

 

 楓の体温も、頭を撫でる手の温かさも、あたしを優しく見守ってくれてるその目も、こうしてあたしの行動を受け入れてくれてる優しさも……うん。

 

 きっと、あたしは……この時に自覚したんだ。勇者仲間ってだけじゃなくて。親友ってだけじゃなくて。

 

 (……まだ、恥ずかしくって言えないけどさ)

 

 いつか、言えたらなって……そう思った。

 

 

 

 翌日の朝、やっぱり須美に怒られた。

 

 

 

 

 

 

 瀬戸大橋跡地の合戦……あの時の戦いは、大赦ではそう呼ばれてるらしい。満開の影響でロクに動けなくなったあたしと園子は病室のような、神社の中みたいなよくわからない部屋に押し込まれ、サポートというか管理みたいなことをされてた。

 

 正直なところ、この時のことはあんまり思い出したくない。家族には会えないし、楓にも会えない。須美は記憶失くしてるみたいだったし、元々アウトドア派のあたしにとって動けないってのは苦痛でしかなかった。園子が居なかったら、ストレスで死んでたかもしれない。園子曰く、あたしらは死ねないらしいけど。

 

 (やっと、自覚したのになぁ……)

 

 やっと自分の気持ちに気付けたのに、その気持ちを向ける相手にはずっと会えない。なんでも結界の外の真実とかの記憶を散華してしまったらしいって話だけど……。

 

 「ねぇ、ミノさん」

 

 「んー?」

 

 「暇だね~」

 

 「そうだなー」

 

 こうして園子とする会話が唯一と言っていい娯楽。園子は両手両足使えないし、あたしは片腕使えるけど、それで出来ることは高が知れてるし。

 

 「ミノさんさ~」

 

 「んー?」

 

 「カエっちのこと好きでしょ~」

 

 「そうだなー……うぇいっ!?」

 

 不意打ちだった。思わず肯定して、びっくりして変な声が出た。それが面白かったのか、園子はくすくすと笑ってる。というか、バレてるとは思ってなかった。あたしは園子みたいに表に出してなかったし、須美みたいに隣に立ってたこともなかったし。

 

 「私はね、カエっちのこと大好きなんよ~」

 

 「ああ、うん、見てりゃ分かる」

 

 「わっしーもね、言ってないけど……きっと、好きだったと思うんよ」

 

 「……だろうなぁ」

 

 園子が楓を好きなのは、多分クラスメートの奴らだって知ってた。ずっとべったりだったし、行動すれば側に楓、言葉にすればカエっちがカエっちは。あれで気付かない奴とか居ないと思う。須美の奴は、確かに言葉にこそ出してなかったけど……行動には、出てたから。少なくとも、見ていれば分かるくらいには。

 

 ……きっと、その気持ちも忘れてしまったんだろうけど。

 

 「で、あたしは?」

 

 「ミノさんはね、自分では気付いてないかもしれないけど……ずーっとカエっちのこと、目で追ってたんだよ」

 

 「マジで!?」

 

 「うん。私が手を繋いでると羨ましそうに手を見てるし、わっしーが隣に居ると羨ましそうにわっしーを見てるし。そうでなくても何かとカエっちのこと見てたし」

 

 「わー……うわー……っ」

 

 恥ずかしい。恥ずかしくって仕方ない。片腕で枕を抱えて顔を隠す。自分にそんな癖……というかそんな行動を無意識に取ってたのが物凄く恥ずかしい。しかもそれを園子からニヤニヤしながら言われたのが余計に恥ずかしい。

 

 「もしかして楓にも……」

 

 「流石にそれはわかんないな~。でも……カエっちなら気付いててもおかしくないよね~」

 

 「……だよなぁ……」

 

 「ねぇ、ミノさん」

 

 「今度はなんだ……」

 

 

 

 「カエっちのお嫁さん、なりたい?」

 

 

 

 「……」

 

 言葉が出ない。想像したことは……自覚したあの日から何度かある。お嫁さんは……あたしの夢で。楓のお嫁さんになって、本当の意味での家族になって、子供だって作って、幸せな家庭を作れたら……と思う。

 

 だけど、その楓には会えなくて。あたしの体だって、こんなんになって。あたしの夢も、園子の夢も叶えるのは絶望的で……叶った姿を楓に見せることだって、出来ないかもしれなくて。

 

 「……ぐすっ……ひっく……」

 

 「……泣かないで、ミノさん」

 

 「……なりたい。あたしだって、勇者じゃなかったら普通の女の子で……恋だってするし……夢だって叶えたい……」

 

 「うん……そうだよね。大丈夫だよ、きっと……」

 

 「大丈夫って……?」

 

 「いつだって、カエっちは大丈夫って言ってくれたもん。約束だって、守ってくれてた。だからきっと……大丈夫」

 

 何にも根拠なんて無かった。体が治る保証なんて、どこにもなかった。それでも、園子は本気でそう思ってるみたいだった。

 

 そんな姿が、あたしには眩しかった。あたしはそこまで大丈夫だって言い切れない。不安ばっかり大きくなって、それが園子とあたしの想いの大きさの違いを見せ付けられてるみたいで、なんか悔しくなって。

 

 「……あたしだって……楓なら……あいつの“大丈夫”なら…そうだって信じられるからな……っ」

 

 「うんうん。きっと大丈夫。体も治って、世界だって救えて……夢だって、叶えられるよ~」

 

 「うん……う゛んっ……!」

 

 あたしも、楓を信じるんだって……頷いた。

 

 

 

 

 

 

 「どうしたんだい?」

 

 「……子供の時のこと、思い出してた」

 

 あたしの目の前に、楓が居る。大人になって、あたしとおんなじくらいだった背も頭一つ分追い越されて、女の子みたいだった顔もすっかり大人の男になって……黒い、タキシードを着て。あたしは……真っ白な、ウェディングドレスを着て。

 

 あれから十数年。あたし達は今、小さな教会に居る。こうして向かい合ってる今も信じられない。あたしと楓が、こんな風になるなんて。

 

 奇跡が起きた……そうとしか言いようがない。天の神の問題も片付いて、捧げた供物も戻って……楓の体だって、神樹様が治してくれた。五体満足の楓を見たときは、全員が泣いて、喜んで、神樹様に感謝した。

 

 勇者のお役目から解放されたあたし達は、普通に高校に行って、大学にも行って……そこで、園子が楓に告白して。だけど、楓は断った。

 

 

 

 ー あのね、ミノさん。カエっちに告白したんだけど……フラれちゃった ー

 

 ー うん……好きな人が居るって……“お嫁さんになりたいって言った女の子の夢を、自分が叶えてあげたい”んだって ー

 

 ー 悔しいな、悲しいな。でも……でもね、ミノさん。私はカエっちのこと、大好きだけど……同じくらい、ミノさんのことも……皆も大好きなんだ~ ー

 

 

 

 泣き笑いで、園子はあたしにそう言った。告白したって聞いた時は背筋が凍った。けれど……フラれたって聞いて、それに安心した自分を殴りたくなって。フッた理由を聞かされて、まさかって思って。あたしは、園子を抱き締めてあやしてた。

 

 その後に、園子が告白したって場所に行ったら……まだそこに、楓は居て。

 

 

 

 ー ああ、銀ちゃん……うん、断ったよ。泣かせちゃったけれど……こればっかりは、ね ー

 

 ー うん……居るよ、好きな人。初めは、のこちゃん達に抱くものと同じ感情だったんだけどねぇ……高校生の時くらいからかな ー

 

 ー 家族が大好きで、困ってる人を放って置けなくて、活発で、女の子らしいことも好きで、夢を叶える為に家事の腕だって磨いて、イネスが大好きで、怖がりなところもあって……そうだね、良いところも悪いところも、沢山知った。いつの間にか、目で追ってた。そんな君だから……好きになった ー

 

 ー 三ノ輪 銀さん。自分は、貴女が好きです。貴女の夢を……自分に叶えさせてくれませんか? ー

 

 

 

 あたしの家族と楓の家族……それから、勇者部の皆だけの小さな結婚式。それで良かった。それが、良かった。

 

 指輪を交換する。誓いの言葉も、済ませた。そして、ゆっくりと口づけて……顔を離して、お互いに笑って、夫婦揃ってこう言うんだ。

 

 

 

 ー ああ……最高の形で……夢が叶った ー

 

 

 

 ふと天井を見上げると、桜色の着物の女の子を見た気がした。その後、教会の中なのに綺麗な桜の花弁が舞った。まるで、神樹様まであたし達を祝福してくれてるみたいで……また、夫婦揃って笑い合った。




捕捉

・この番外編と本編の銀がリンクしてるかはまだ謎←

・本編が似た未来になるかも不明

・実はあの後結局チャイナ服とチアリーダーの服は着せられていた←



本編は須美、DEif2では園子中心でしたので今回は銀ifでした。恋愛経験皆無なのでちょっと自信ないですが、ご満足頂けていたら幸いです。

親密ルートなのでご都合たっぷり。やりたかったのはぶっちゃけ最後の“夢が叶った”って部分だけ←

正直なところ、楓君は誰にもチャンスが無いようでその実誰にでもチャンスがあるという。前世と今生をそれはそれと分けて見れるので。ただ、今の彼女達では恋愛するには幼すぎるというだけです。

女の子が生まれたら神奈とか付けるかもしれない。因みに、最後は銀が投げたブーケに「女子りょおおおおく!」と叫ぶ風が飛び付いたり、やっぱり諦めきれない園子が取ってその場で再告白というパターンもありました。やらなかったけど←

これにて番外編は1度終わり、ゆゆゆ本編に入ります。次の番外編は未定です。でもまたやると思います。つかやる。

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)
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