咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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お待たせしました(´ω`)

各話PV見たらDEifが10000越えてて笑いました。皆さん好きですねぇ。

もうすぐUAが10万に届きそうです……これは越えたら記念番外編を書くしかねぇ。という訳で銀ちゃん以来のアンケしたいと思います。内容は後書きにて。

また誤字脱字、文の修正まで頂きました。ありがとうございます! いつになれば無くなるのやら……。

突然ですが……正直なところ、結果としてハーレムではあるがそこまで強く意識していなかったりします。皆様にはどう見えてますかね。ハーレムタグ、いりますかね。

今回もほのぼの。話は進んだような進んでないような。


結城 友奈は勇者である ー 14 ー

 退院した私達は、学校に部活にまだ退院してない楓くんと東郷さんのお見舞いにと平和な日常を過ごしていた。今日も学校に行って、放課後には部室に行って……でも、そこには風先輩と樹ちゃんしか居ない。

 

 「……やっぱり、3人だと調子出ませんね」

 

 《かりんさん、ずっと来てないですね》

 

 「まだ自分だけ満開出来なかったの気にしてんのかしらねぇ……」

 

 「SNSにも返信無くて……夏凜ちゃん、授業終わったら直ぐに帰っちゃいますし。1回全力で追い掛けてみたんですけど逃げられましたし」

 

 「あんたは何やってんのよ……」

 

 まだ入院中の楓くんと東郷さんは仕方ないけど、夏凜ちゃんも最後に一緒にお見舞いに行った日から3日くらい部室に来てない。お見舞いも、その日から私達と会わないようにしてるみたい。

 

 で、何となく捕まえたくなって全力で追い掛けてみたんだけど……まさか階段降りる時に階段使うんじゃなくて壁を走って降りたのはびっくりしちゃったなぁ……あそこまで本気で逃げられるのも結構ショックなんだけど。

 

 ……なんとなく、なんて嘘。本当は退院してからまたあの音と口が見えて、少し寝不足気味だったから変なテンションになっちゃってたんだ。最近になって東郷さんにも前にあげたことがある白い花菖蒲の押し花を持ってると楓くんのことを思い出してぐっすり眠れることに気付いたから、今は寝不足なんてことはないんだけど。

 

 「……私、夏凜ちゃん探してきますね」

 

 「は? いやまあ特に依頼もないから別にいいけど……」

 

 《かりんさんの居る場所、分かるんですか?》

 

 「とりあえず、夏凜ちゃんの住んでる所の住所は知ってるから、その近くを走ってみる」

 

 

 

 

 

 

 で、走ってみたら思ったより早く夏凜ちゃんを見つけることが出来た。家から近くの海の砂浜の上で動きやすそうな格好をして2本の棒……木刀かな? それを持って……演武って奴かな。それをやってるみたい。

 

 「夏凜ちゃーん!」

 

 「……? 友奈!?」

 

 「やっと見つけたよ夏凜ちゃーん! って、おうっ!?」

 

 「ちょ、大丈夫!? 全く、何やってんのよ……」

 

 見つけたことが嬉しくなって、走りながら近付く。その途中で砂浜に足を取られて思いっきり転けてしまった。うぅ、結構痛い……ちょっと口の中に砂入ったし……味はしないけどジャリジャリするよ……。

 

 転けた私に夏凜ちゃんは木刀を捨てて慌てて近付いてきて、体を起こすのを手伝ってくれて、砂まで払ってくれた。夏凜ちゃん優しいなぁ……なんて嬉しくてつい笑うと、夏凜ちゃんはハッとして立ち上がって少し離れた。

 

 「……何しに来たのよ?」

 

 「部活へのお誘い! 最近、夏凜ちゃん部室に来てくれないし、私から逃げるから」

 

 「いや、部活はともかくいきなり全力疾走で追い掛けられたら普通逃げるから」

 

 「ごめんなさい……それでね、このままだとサボりの罰として腕立て500回、スクワット3000回、腹筋10000回、それから楓くんのお叱りを受けるんだけど」

 

 「桁おかしくない? 後、なんでそのラインナップに楓さんのお叱りが入るのよ」

 

 「でも、今なら部活に来ると全部チャラになります。さあ、部活に来たくなったよね? もし来ないって言ったら楓くんに電話するようにって風先輩から言われてます」

 

 「脅迫じゃないの」

 

 ムスッとして顔を背ける夏凜ちゃんに、私は胸を張ってそう答える。ただ、その後にちょっと反撃を受けたのでごめんなさいする。よく考えると、確かに全力疾走で追い掛けるのはダメだよね……あの後先生からも注意されたし。

 

 サボりの罰は風先輩の案です。なんでこの流れで楓くんが入ってるのかは、夏凜ちゃんが楓くんに甘いからだとか。それに、前に怒られたこともあるからね、夏凜ちゃん。だけど、そこまで言っても夏凜ちゃんはハァ……と溜め息を吐いて首を横に振った。

 

 「行かない。元々私、部員じゃないし……それに、もう行く理由がないもの」

 

 「理由?」

 

 そう聞くと、夏凜ちゃんは理由を話してくれた。勇者として戦う為に讃州中学に転校してきた夏凜ちゃん。勇者部に居たのは、私達と連携を取りやすくする為なんだって。

 

 「だいたい、勇者部はバーテックスを殲滅する為の部でしょ。なのにそのバーテックスが居なくなった以上……もう、勇者部なんてなんの意味もないじゃない」

 

 「違うよ」

 

 夏凜ちゃんの言葉を、直ぐに否定する。すると夏凜ちゃんはまたハッとして、俯きがちだった顔を上げて私と目を合わせてくれた。それが何だか嬉しくて、また笑顔になる。

 

 最初はそうだったかもしれない。残念だけど、それは楓くんだって言ってたことだし……仕方ない。でも、楓くんは言ってくれたんだ。勇者部の活動は楽しかった。皆で何かをするのは……楽しかった。それも、本当なんだって。

 

 「勇者部はね? 誰かが出来ない。もしくは、誰かが困ってる。そういう誰かの為になることを“勇んで”、進んでやる者達のクラブ。夏凜ちゃんも一緒に、皆で楽しんで、誰かが喜んでくれることやる部なんだよ。夏凜ちゃんだって、楽しかったよね? 児童館のこと、忘れちゃった?」

 

 「あ……それは……忘れる訳、ないじゃない」

 

 「良かった。最初はバーテックスを倒す為だったかもしれない。でも、今の勇者部は……そういう部なんだよ。バーテックスが居なくなっても、勇者部は勇者部。戦う為とか、関係ない」

 

 「でも……私は、戦う為に来たから……もう戦いは、終わったから。だからもう、私には価値が無くて……あの部に、居場所も無いって思って……」

 

 そんな風に、夏凜ちゃんは悩んでたんだね。価値がないなんて……居場所が無いなんて、そんなことあるハズがないのに。私にとって、私達にとって、夏凜ちゃんはもう勇者部に無くてはならない存在なのに。

 

 「夏凜ちゃん。勇者部5ヶ条1つ……悩んだら相談、だよ」

 

 だから、それを伝えてあげなきゃ。楓くんも言ってたもん。言わなかったことを、言えば良かったと後悔した子が居たんだって。だったら、後悔しないように……居場所は、ここにあるんだって。

 

 「戦いが終わったら居場所が無くなるなんて、そんなことないんだよ。夏凜ちゃんが居ないと部室は寂しいし、私は夏凜ちゃんと一緒に居るの楽しいし」

 

 私は、私達は、夏凜ちゃんが大好きなんだよって。

 

 「それに私、夏凜ちゃんのこと大好きだから。私だけじゃなくて……皆も夏凜ちゃんのこと、大好きだから」

 

 「……バカ」

 

 真っ赤になった夏凜ちゃんは、とっても可愛かった。

 

 この後、私と夏凜ちゃんは駅前の有名なお店のシュークリームを買ってから部室に戻って、夏凜ちゃんが戻ってきたことを風先輩と樹ちゃんと一緒に喜んだ。後は……楓くんと東郷さんが帰ってきてくれたら、元通りかな。

 

 

 

 

 

 

 『バーテックスは殲滅され、任務は終了しました。今後の私の処遇なのですが、讃州中学に残ることを許可してもらえないでしょうか』

 

 友奈に説得されて……もとい、どうしてもと言われて勇者部の部室へと戻ったその日の夜、仮の自宅でその内容のメールを大赦へと送信する。友奈が言ったように戦いに関係なく私がここにいていいなら……そう、期待して。

 

 砂浜で友奈に言ったことは、私の本心でもあった。勇者として戦う為に続けてきた訓練、援軍とは言え戦う為にやってきた勇者部。その戦いが終わったら……終わってしまったから、それまでの日々が無駄になってしまいそうな恐怖があった。

 

 でも……勇者だからじゃなくて、ただの部活として、讃州中学の生徒として勇者部に居られるなら。戦いが終わっても友奈と、楓さんと……風と、樹と、東郷と……また、部活が一緒に出来るなら。そう思って、チラッとテレビが置いてある低い棚を見る。そこにあるのは……児童館の時に貰った、不恰好な……あの子が折った折り鶴。

 

 「……まあ、悪くはないわね」

 

 脳裏に浮かぶ、勇者部の5人。そんなに長くないけど、部活をした日々。どいつもこいつも笑ってて、大赦嫌いの風でさえ、病院で私にあんなに馴れ馴れしくして。本当に、本当に……バカみたいにお人好しで、人の心に入り込んできて。

 

 

 

 『私、夏凜ちゃんのこと大好きだから』

 

 

 

 恥ずかしげもなくそんなこと言って……全く、調子が狂うっての。そんなことを思いながら、ベッドに潜り込んでその日は眠った。

 

 

 

 数日後、楓さんと東郷が退院することになった。ただ、楓さんだけは数日置きに通院するように言われているらしい……なぜ楓さんだけ? そう思いつつ、私達は病院の屋上に行って全員で街を見下ろしていた。

 

 「これで勇者部メンバー、全員復帰だね」

 

 「そうだねぇ……自分と美森ちゃんが居なくても大丈夫だったかい? 特に姉さん」

 

 「なんでアタシだけ!?」

 

 友奈がニコニコしながら言うと、楓さんも朗らかに笑いながら続ける。風がそれに反応して、と……よく見る光景に、本当に全員揃ったんだと実感する。

 

 「……この街を、私達が守ったんだよね」

 

 「そうだねぇ……皆で守ったんだ。皆、良く頑張ったねぇ」

 

 「楓くんだって」

 

 街を見下ろしながら、友奈が誇らしげに呟くと楓さんも感慨深いとでも言うようにそう言った。守った。頑張った。それだけの言葉なのに、なんでこんなにも心に染みるのか……なんでこんなにも、褒められたのが嬉しいのか。

 

 称賛はされない。普通の人達は私達の戦いのことなんて何も知らないんだから。でも、ここに居る勇者部のメンバーが居なければこの世界は無くなって、この世界の人達は死んでた。それは間違いのない事実で……だから、楓さんが言葉にして褒めてくれたのが、私が認められたみたいで……嬉しい。

 

 「私、初めての戦いの時、怖くて逃げ出したかった。でも、逃げないで……一緒に戦えて、良かった。私は、立派な勇者になれたかな」

 

 「勿論! 東郷さんはカッコいい勇者だった!」

 

 「美森ちゃんだけじゃないけどねぇ。皆、立派だったよ。怖くても、泣きそうになっても……それでも最後まで戦ったんだからねぇ。君達は、凄いよ」

 

 『お兄ちゃんも、カッコよかったよ!』

 

 「ありがとねぇ、樹」

 

 「あんた達、戦い終わっても勇者部は終わらないのよ? 夏休み近いし、勇者部で色々やりたいわねぇ。夏凜、なんか案出しなさい」

 

 「いきなり振っといて無茶言わないでくれる!? ……海、とか……?」

 

 風にいきなり話を振られ、思わず言い返す。少し考えて出てきたのは、やはり夏と言えば海、なんてありきたりな答えなんだけど。というか、今まで勇者になる為の訓練ばかりで遊びだとかどこか遠くへのお出掛けだとか殆どしたことないし。

 

 東郷からは夏祭りだとか、風からは花火だの打ち上げ花火百連発だの案が出た……いや、百連発とか無理でしょ。ただ……まあ、このメンバーなら。騒がしくて、面倒臭くて……きっと、楽しいとは思う。そんなことを思うくらい、私は毒されてる。

 

 不意に、私の端末にメールの着信が来た。内容を確認すると……簡単に言えば、私はこのまま讃州中学に……勇者部に残ることを許可された。

 

 「全部やろう、皆で!」

 

 友奈の言葉に、メールと合わせて思わず頬が緩む。そのことを風にからかわれ、私はまた少し不機嫌になり、友奈と楓さんに宥められることになるのだった。ただ、少し気になったのは……。

 

 (東郷、楓さんを見る目が……)

 

 私が海と言った時、視界の隅で楓さんを痛ましげに見る東郷の姿が映ったことだった。

 

 

 

 

 

 

 退院からしばらく経ち、夏休みに入った頃。勇者部一同はバーテックスを全て倒したご褒美とのことで、大赦が用意した合宿先にて海水浴を楽しんでいた。

 

 貸し切りにしているのか、合宿先の旅館の近くのビーチには勇者部と車椅子に乗る楓、東郷の介助の為の人間を除いて他の一般人は居ない。その為、6人はのびのびと照り付ける太陽の下で砂遊びに海にと年相応にはしゃいでいる。

 

 「こんなに至れり尽くせりでいいのかな?」

 

 「病院で寝ていた分くらいは楽しんでも良いと思うわ」

 

 砂浜、海に対応している車椅子に乗る美森とそれを押す友奈。ビキニにフリルが付いた水着に身を包んだ2人は、目一杯太陽を浴びて砂浜の上を行く。友奈も美森も笑い、存分に楽しんでいるのが見てとれる。

 

そんな2人を、犬吠埼3姉弟と夏凜はビーチパラソルを差して出来た日陰の中で車椅子から降りてパラソルに凭れる楓を中心にして見ていた。風と夏凜もビキニであり、樹はワンピース型。楓はトランクスタイプで上に長袖のパーカーを羽織っている。

 

 「ふふふ、後輩達が楽しげにはしゃいでおるわ」

 

 《私も楽しいよ》

 

 「楽しんでるねぇ……元気なのは良いことだ」

 

 「楓さん、水分補給はしないと……スポーツドリンクです。風、水泳で勝負しましょ。完成型勇者の実力を見せてあげるわ」

 

 「ほう? この瀬戸の人魚と呼ばれたアタシに戦いを挑むなんてねぇ……」

 

 《聞いたことないよお姉ちゃん》

 

 「ありがとねぇ夏凜ちゃん。で、姉さんのはよく聞こえなかったんだけど……瀬戸の人面魚って言ったかねぇ?」

 

 「人魚よ! に ん ぎょ!!」

 

 夏凜からスポーツドリンクを受け取って一口飲み、風を樹と共にくすくすと笑いながら弄る楓。そんな彼から離れて風と夏凜は競争の為に海へと近付き、樹も少し泳ぎたくなったのか同じように海に近付く。その際、熱くなった砂浜のせいで足からジュッと嫌な音が鳴り、熱さにピョコピョコと跳ねながら海の浅瀬へと座り込み、ホッと安堵の息を吐く。

 

 そんな樹の姿にほっこりしつつ、競争を始める風と夏凜。友奈と美森も2人の競争を横目に海に入り、のんびりと波に揺られている。流れてきた海藻を手に取ったり、いつの間にか潜っていた樹が2人の近くで上がると頭に海藻が乗っていてそれを見て笑ったり。各々楽しむ5人を、楓は朗らかに笑いながら1人パラソルの下で見ていた。

 

 (平和だねぇ……それに、皆楽しんでる。良い笑顔だ)

 

 年相応に楽しむ5人。皆が皆ついこの間まで命懸けで戦い、散華に苦しみ、心身共に傷付いていた。だが、今彼の片目に映るのはそんなこととは程遠い笑顔。それが見られたことが、こうして平和な時間を彼女達が謳歌できることが、嬉しかった。

 

 だが、楓自身は海に入るつもりはなかった。パーカーを着ているのだって、見ていて面白くはないだろうと失った右腕を隠す為。冷たいとも熱いとも感じない体は海に入ったところで水に触れているという感触しかないので気持ち悪さしかない。楓とてそれが分かっているのだから入ろうとは思わない。

 

 かと言って砂遊びやビーチバレーのようなスポーツだって満足に出来ない。そもそも楓はどちらかと言えばインドア派である。後は彼自身の気質もあり、こうして彼女達の元気な姿を見ているだけで楽しめているということもある。だが、彼自身が良くても彼女達がそう思うかは話が別。

 

 「なーに1人でのんびりしてんのよ」

 

 「おや、もう競争はいいのかい?」

 

 「全力で泳いだから休憩をね。まさか不意打ちしてスタートダッシュまでしたのに負けるとは思わなかったわ」

 

 「負けたんだ……お疲れ様。はい、スポーツドリンク。自分ので悪いけどねぇ」

 

 「あんがと」

 

 競争を終えて戻ってきたのは風。ニッと笑いながら楓の前までやってきた風は楓の言葉にそう返し、少し悔しそうにしながら右隣に座る。そんな彼女に楓は苦笑いを浮かべ、手元にあった自分のスポーツドリンクを手渡し、風も恥ずかしげもなくコクコクと飲む。姉弟であるからか、間接キス等と騒ぐこともなかった。

 

 ぷはーっと一息付く風の横顔を見て、楓の顔が少し歪む。己と同じ箇所……左目の散華。そこには楓とは違い、黒い眼帯が付けられている。素かわざとか少々痛々しい発言をしては場を和ませたり白けさせたりして眼帯を気にしていないように振る舞う風。楓としては、そんな姿こそが痛々しく見えた。

 

 「ん? なに? お姉ちゃんの水着姿に見とれちゃったかしら?」

 

 彼女の横顔を見ていた楓に気付き、風は冗談なのか本気なのか笑いながら左手を腰に、右手を後頭部に当ててポーズを取る。そんな彼女を見てふむ……と頷いた後、楓はじっくりと視線を上下に動かす。

 

 「そうだねぇ……うん。見とれるくらい姉さんは綺麗だよ」

 

 「……えーと……あーと……あんがと」

 

 楓から見て、家族の贔屓目抜きにして風は美少女である。太陽の下に出れば光を浴びて輝く黄色の髪に美森にこそ及ばないものの年齢の割に充分に大きな胸、括れた腰に肉付きの良い足。家庭的でもあり、魅力的な少女であることは疑いようがない。まあ、楓は精神年齢と家族であることからそう言った対象に見ることはないが。

 

 朗らかな笑顔と共に伝えられたストレートな褒め言葉。それを受けた風は、相手が弟であると理解しつつも照れに照れ、あちこちに視線を動かした後にポーズを取っていることが恥ずかしくなって三角座りをして膝に顔の下半分を埋めて隠しつつ礼を言った。頬の赤みまでは隠すことが出来ず、楓にくすくすと笑われたが。

 

 「……楓は、遊びに行かないの?」

 

 「そうだねぇ……自分はこうして、皆が楽しんでる姿を見ているだけで楽しいからねぇ。後、海にはあんまり入りたくないし」

 

 「……あんたと遊びたいと思ってるわよ、皆。アタシもね……という訳で、楓。じっとしてなさいよ?」

 

 「は? おおっと……」

 

 話を変えたかったのか風がそう言うと、楓は本当に楽しそうに海で遊ぶ4人を見ていた。実際、彼は本当に楽しんでいるのだろう……そこに、己の姿が無くても。風から見ても、楓はまるでそこに自分等必要ないと言っているようにすら見えたし、そう聞こえた。少なくとも、彼女にはそう捉えることが出来てしまった。

 

 だから、そんなことはないと……弟を1人にはしないと、風は立ち上がって片腕がないとは言え体重が男子中学生の平均近くある楓を横抱きして美森と同じ車椅子に乗せ、海へと近付いていく。

 

 「あ、楓くーん! 見て見て! 綺麗なワカメ!」

 

 「ワカメのどこが綺麗なの……? ちょっと風、あんまりスピード出さないでよ。楓さんが落ちたらどうすんの」

 

 「楓君、海から出たら一緒に砂でお城を作らない?」

 

 《私もいいですか?》

 

 「勿論よ、樹ちゃん」

 

 風に押されて海の近くに来た楓を見た友奈が拾ったワカメらしき海藻を掲げて見せつけ、そんな彼女の言に首を傾げた後に2人に近づく夏凜。温感のことを知っているからか海よりも砂遊びに誘う美森と、自分も一緒にやりたいと訴える樹。勿論、美森は断らなかった。そんな後輩達と妹を見て、風は弟の頭を撫でて笑いかける。ほら、言ったでしょう? とでも言うように。

 

 そんな5人を見た楓の脳裏に過ったのは、新樹館に通っていた頃に行った遠足の時。確かにその日は悪夢のような出来事が起きてしまったが、前半だけをみれば楽しい1日だったのだ。

 

 遠足の最中、美森(すみ)、園子、銀が笑顔で抱き合う幸せな風景を外から見ていた自分。そうしていると園子と銀が手を引いて3人の輪の中に連れ込み、遠くじゃなく近くに居ればいいと言ってくれたこと。美森(すみ)に近くに、側に居てほしいと願われたこと。

 

 「……そうだねぇ。少しは、遊ぼうかねぇ」

 

 それを思い出したから、そう言えた。思い出したから、近くに居ようと思った。彼女達はそう望んでいるのだから。彼女達は……そう望んでいたのだから。

 

 そこからは6人で目一杯遊んだ。落ちてた木の枝を使って棒倒しをして友奈が異常な強さを発揮したり、持ってきていたスイカでスイカ割りをして樹が見事に割ったり。風と夏凜の突発的な鬼ごっこが始まったり、美森と楓と樹で協力して砂で完成度の高い高松城を作り上げたり。

 

 そんなこんなで日も暮れだした頃、パラソルの近くに集まった6人。美森は右の人差し指を立てながら話し始める。

 

 「さて、ビーチでの締めに……実はさっき、介助さんに手伝ってもらってこの付近に日の丸印の宝を隠したの。探し当てた人には景品をあげるわ」

 

 「流石東郷、さらっとネタを仕掛けておくとは」

 

 「面白い、受けてたーつ!」

 

 「夏凜ちゃん燃えてるねー。よし、私も負けない!」

 

 「2人ともせっかちだねぇ。まだノーヒントなのに」

 

 いつの間に、と感心する風に対し、早速探し始める夏凜と友奈。美森からヒントも聞かずに走り出した2人を見て、楓は思わず苦笑いする。

 

 《負けません!》

 

 「樹ちゃんには期待しているわ。磨けば磨くだけ立派な大和撫子になれる素養を持っているし……磨かなくちゃね。いずれは私の思想や技術の全てを伝えようかと思っているもの」

 

 「いや、人の妹に個人の思想を植え付けようとするのはやめてほしいんだけど」

 

 スケッチブックにやる気を示すように力強くそう書く樹。そんな彼女に少し怪しさや重さすら感じる期待を寄せる美森に、思わず風はそうツッコむ。流石に可愛い妹に護国思想を植え付けられるのは勘弁してほしいのだろう。

 

 尚、宝探しを制したのは意外と言うべきか楓であった。景品は彼女も愛読しているという歴史の本であり、読書好きな楓は喜んだものの他の4人は微妙そうだったり苦笑いだったりしたそうな。

 

 「ねぇ、楓君」

 

 「うん? なんだい? 美森ちゃん」

 

 「その……私の水着は、どうかな……って」

 

 宝探しを終えて旅館に戻る為に使っていたパラソルや椅子等を片付けている最中、運ぶ以外に手伝うことがない美森は同じ状態の楓にそんなことを聞いてみた。美森とて思春期の女子、形はどうあれ好意を抱いている異性にどう思われているかは気になるところなのだろう。

 

 ちらちらと己の膝と楓の顔の間で何度も視線を往復させ、両手の人差し指を合わせて弄ぶ美森。そんな彼女を見て、楓はくすくすと笑い……ただ一言。

 

 「うん……良く似合ってる。可愛いよ、美森ちゃん」

 

 それを聞いた彼女がどう思ったのか……それは、夕日のせいか赤くなった頬と笑顔で誰もが理解出来た。




原作との相違点

・全力疾走して追いかけた友奈

・転けた友奈に優しくする夏凜

・大赦に散華の症状について聞いてない風

・一緒に高松城を作った樹

・水着姿を褒められる美森

・その他色々あったよね



という訳で、友奈と夏凜の勇者部云々と合宿前半のお話でした。次回も合宿の話になるのじゃよ……まだほのぼの。まだ。

今回もあんまり山無し谷無し。友奈はトラウマ対策として花菖蒲の押し花(自作)を得ました。どう考えても2日程度フォローしただけで克服出来るようなトラウマじゃないですしね。

お爺ちゃんな楓は彼女達の水着姿が見ても慌てない騒がない笑って褒めることが出来ます。お爺ちゃん流石です。

次回は合宿旅館編。部屋割りだとか温泉だとか夜の語りだとか、書き応えがありそうです。

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)

UA10万突破記念番外編。内容は

  • DEifの続きで行こう(鬱orほのぼの)
  • 勇者部活動報告校内ラジオ(ほのぼの)
  • 犬吠埼家禁断ルート(鬱or暗め)
  • 誰かとの親密ルート(ほのぼの)
  • 私に良い考えがある(活動報告リクエスト)
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