咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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お待たせしました(´ω`)

この話からわすゆ原作スタートです。前回よりもかなり文字数が多くなってます……戦闘描写が入るとどうにも増えてしまいます。


鷲尾 須美は勇者である ー 2 ー

 雨野家に養子に出されて早数ヶ月。この数ヶ月で犬吠埼の家に居た時とは劇的に生活が変わってしまっている。

 

 まず、お役目をこなす為のトレーニング。朝5時からランニングを初めとした基礎トレーニングや広い庭に作られた立体的なアスレチックを利用した体幹トレーニング、それらがそれなりのレベルに達したと判断された後に大人相手に何でもありの組み手……まさか格闘技や護身術を教わるどころか“自分で考えて動け、自身に最適な動きを見つけろ”と言われて本当に何も教えて貰えずに実践訓練をすることになるとは思わなかった。お陰で同年代と比べると遥かに身軽に動けるようになったと思うが、数ヶ月程度ではまだまだお役目をこなすには足りないだろう。当初はよく生傷を作り、酷いときにはあちこちに青アザを作っては三ノ輪さんやのこちゃん、鷲尾さん等クラスメイト達に心配されたモノだ。今も心配をかけているのが心苦しい。

 

 他には、自分には基礎知識が足りないということで大赦の成り立ちや今より約300年前に居た初代勇者、神樹様に結界、雨野家の歴史、そして敵について学んだ。学ぶとは言うものの、雨野家の歴史以外は大赦によって検閲を受けた虫食いのような資料、過去の勇者や巫女が書いたとされる御記の一部だけと学ばせる気があるのか無いのかわからないモノばかりで、知れたことはそう多くはなかったが。せいぜいが敵の名前が“バーテックス”であり、樹海と言う特殊な場所で勇者として戦い、バーテックスが神樹様に辿り着く前に撃破ないし撃退しなければならないということ。雨野家は元は“天乃”という字であり、()()()()()との理由から今の字になったこと。なぜ“天乃”で縁起が悪いのかよく分からないが。因みに、資料は養父が大赦に直接頼み込み、許可が出た部分だけ読むことが出来た。保存状態が悪いのか、それとも見られて困るものでもあるのか……。

 

 とまあこんなことを学校以外でやっていたし、今でもやっている。無駄な時間等ないと言わんばかりにみっちりと頭と体に叩き込まれ、睡眠時間は最初4時間程しかなかった。お陰で三ノ輪さんが言っていた超オススメの場所とやらに行くことは出来ていない。我ながらよくこんな生活を続けていられるモノだ。今ではすっかり慣れ、少ない睡眠時間でも熟睡出来るようになったし、疲れを残さないようにもなった。人間の体とは不思議なモノだ。

 

 「新士」

 

 「なんですか? お義父さん」

 

 そうして朝の鍛練を終え、学校に向かう前の朝食の時間。まるで旅館のような広い和室に木製の長机を間に挟んで向かいに座る養父から唐突に名を呼ばれた。因みに雨野家では、朝昼晩と全て和食で統一されており、洋食洋菓子はこの数ヶ月学校給食以外で見た覚えがない。

 

 「もう間もなく、お前が勇者としてお役目を全うする日が訪れるそうだ」

 

 「おや、そうなんですか……まだまだ学び足りないのですがねぇ」

 

 「そして、家での鍛練を一時中断することになった。より正確に言うなら、雨野家とは別の大赦の者の指示に従い、他の勇者達と共に足並みを揃えて訓練を受けさせるように上から指示がきた」

 

 「まあ自分だけで戦う訳ではない以上、必要なことでしょう」

 

 「その通り、必要なことだ。とは言え、まだ時間はあるだろう。本格的に勇者達との訓練が始まるまでは、今の鍛練を続けるように」

 

 「了解しました」

 

 そう、自分だけでバーテックスとやらと戦う訳ではない。恐らくはクラスメイトである三ノ輪さん、のこちゃん、鷲尾さんが同じ勇者として戦うことになるのだろう。彼女達以外に名家の名字を持つ生徒は居ないし、同じクラスというのも都合が良い。ぶっちゃけ転校当初は名家とか全然知らなくてのこちゃんにも普通に接していたのだが、まあ馴れ馴れしいと拒否されている訳でもないので今でも変わらず接している。あの子の相手をしていると妹の樹のことを思い出してついつい甘やかしてしまうのが最近の悩みである。

 

 「新士」

 

 「はい?」

 

 そんなことを考えながら朝食を終えた丁度その時、再び養父から声をかけられる。見れば養父も朝食を終えており、真剣な眼差しでこちらを睨むように見ていた。

 

 「勇者は本来、年端もいかぬ無垢な少女しかなれん。年端もいかぬという点ではお前もそうだが……仲間として、何よりも唯一の男として、お前は少女達を守るのだ」

 

 「勿論、そのつもりです」

 

 「特に乃木は死なせてはならん。分かっているな? 神樹様の為、世界の為に勇者として戦うことを誉れとし、我が身に代えても守り抜くのだ。乃木を、世界を」

 

 「……分かりました」

 

 勇者の少女を守る、そのことに異はない。元よりそのつもりであるし、今は少年とは言え中身は爺、未来ある子供達を親より先に逝かせる訳にはいかない。欲を言えば勇者のお役目なんぞにつかせず、ごく普通の少女として生きて欲しいモノだが。

 

 自分の中では少女達の命に優先順位等ない。故に、養父の乃木を優先しろとの言葉に反感を覚える。本人としては至極当然のことを言っているつもりなのだろうが。これが養父だけなのか、それとも名家ならば皆“こう”なのか……勇者として戦うことこそ誉れ、我が身に代えても世界を守れ。これが今まで勇者として選ばれた少女達に向けられ続けた言葉であるのなら。

 

 (何ともまあ……残酷なことだ。世界も、神樹様も)

 

 何せそれは、世界の為にその身を捧げろと言われているのと同じなのだから。

 

 

 

 

 

 

 (私達人類は、神樹様のお陰で生活が出来ている)

 

 登校途中、同級生に挨拶しながら鷲尾 須美は考える。

 

 神樹様とは恵みを与え、驚異から人類を守ってくれているご神木。大赦とは、そのご神木を守る為に生まれた組織。その大赦の中でも名家とされる家の子供が、神樹様に関わるお役目の中でも重要なモノに就く。故に失敗は許されないし、全力を持って取り組まねばならない。

 

 (……その、ハズなんだケド)

 

 教室に着いて直ぐ目に入る、机に頭を置いて眠る金糸の髪の少女と、その机の主で朗らかな笑みを浮かべながら少女の頭を撫でる黄色い髪の少年。本当に自分と同じお役目を請け負っているのかと思うほどユルい空気を生み出している2人は、6年生となった今でも変わらない。2人を見ていると自分すらも弛んでしまいそうになるので毎回毎回己の中でお役目の重要性と神樹様という有難い存在について考えるようにしている。が、その努力も毎回無駄になる。平穏、ほのぼのの文字を体現しているかのような構図を学校に来る度に見せつけられるのだからそれも仕方ないのかもしれない。

 

 ハァと溜め息を1つ吐き、須美は自分の席に座る。6年となり、もう少しもすれば4月が終わる日。すっかり慣れた席、見慣れた光景、見慣れたクラスメイト。

 

 「ん~……にゃむ……」

 

 「ん? おっと、のこちゃん。そろそろ起きないと先生くるよ?」

 

 「んぁ……ぁぃ、おじいちゃん……」

 

 【ぷふっ】

 

 そして、時たま見掛ける園子の新士へのお爺ちゃん発言。それを聞いていたクラスメイトから思わずといったように小さく吹き出し、その中には須美も居た。そんな緩い雰囲気が、どこか心地好かった。そしてやってくる担任。遅れてくる銀。担任に怒られる銀。また今日も変わらない1日が始まる……そんな風に須美が考えた時。

 

 

 

 唐突に、その変わらない1日が終わりを迎えた。

 

 

 

 「っ! みんな……っ!?」

 

 ドクン、と言葉に出来ない感覚を味わった須美は反射的に立ち上がり、クラスメイトに声をかける。が、クラスメイト達はピクリとも動かず、だれかが落としたであろう筆記用具が空中で止まり、壁に掛けられた時計が動いていない。まるで、時間が止まっているかのように。

 

 (いえ、まるでじゃなくて……これは本当に時間が……それはつまり)

 

 「時間の停止はお役目の合図……だったかねぇ」

 

 「っ! 雨野君、あなた」

 

 「ねぇねぇ。これって敵が来たってことじゃないの?」

 

 「三ノ輪さんも……動けるのね」

 

 見れば園子も自分の席で欠伸をしている。今動いているのはこの4人だけであり、新士が言ったようにこの時間が停止している現実は“お役目”の合図。それ即ち、銀が言うように敵が来たということ。そして、この時間停止現象の後にやってくるのが、神樹様が大地に作り出す特別な“世界”。

 

 

 

「ついに来たんだ……お役目をする時が!」

 

 

 

 銀が言ったと同時に4人を……いや、世界を極彩色の光が呑み込む。その光に4人はとても目を開けては居られず……再び目を開けた時、先程まで居たハズの神樹館の面影など何処にもない、巨大な樹木に埋め尽くされた世界が広がる。それこそが“樹海化”。神樹様を狙う敵と戦う為のバトルフィールドである。

 

 「不思議なモノだねぇ。ぜーんぶ木になっちゃった」

 

 「事前に聞いてなかったらパニクってたな!」

 

 「そんな自信満々に言うことじゃないわよ……」

 

 「あ、大橋は完全に木になってないんだね~」

 

 「で、あのうっすら見えるのが神樹様かねぇ。初めて見たよ」

 

 4人の眼前に広がる樹木の海。その遠くに見える、唯一他の建物のように樹木と化していない瀬戸大橋。そして、うっすらと影だけ見える巨大の樹。それこそが“神樹様”。四国を、人類を守る地の神の集合体。4人は影だけとは言え神樹様の姿を見たことで感嘆の息を吐く。

 

 「そしてあれが……」

 

 「ええ。私達人類の……敵」

 

 結界の向こうと四国を繋ぐ大橋、その上を進む……トゲとアンコウのような触覚の生えた青い巨大なゼリーに同じく巨大なソーダ味の飴玉をくっつけたような、なんとも説明に困るビジュアルのナニカ。それこそが“バーテックス”。後に水瓶座、アクエリアス・バーテックスと呼称される存在である。このバーテックスが大橋を渡りきり、神樹様へと到達した時、人類は滅びる。敵が現れた以上、こうして呑気に喋っている場合ではない。

 

 4人は互いに顔を合わせ、頷いた後にスマホを取り出す。その画面の中心には花のマークが描かれたアイコンが表示されており……事前に説明されていたのであろう、4人は迷い無くタップした。

 

 瞬間、スマホから花弁と共に光が溢れ、4人の体を包み込む。その光が消えると4人の姿は先程までの制服とは違う、それぞれ別の色合いの服を着用していた。須美は薄紫、園子は濃い紫、銀は赤を基調とした服装。新士は全身を覆う黒のインナーの上にオレンジ色を基調とした腰から前後左右に布がはためいている中華風の服を着用し同色の肘から指先まで保護する手甲、膝から爪先まで保護する具足を装着。

 

 これこそが勇者としての戦装束。4人が勇者であることの証左でもある。

 

 「お~……カッコいいな!」

 

 「うーん、何だか恥ずかしいねぇ。君らはともかく、自分はちょっと、ねぇ」

 

 「そんなことないよ~。アマっちも2人も似合ってるよ~♪」

 

 「もう、敵が来ているのだからじっくり見るのは後にしましょう?」

 

 「それもそうだけど……ほほう、これはこれは」

 

 くるくると回りながら勇者服を確認する銀、コスプレのようで照れのある新士、にこにこと3人を誉める園子、そんな緩い空気の中で自分だけは真面目にと意気込みつつ注意する須美。いつの間にか回ることを止め、須美の姿を見る銀。体にフィットする勇者服は、とても小学生とは思えない須美のボディラインをくっきりとさらけ出していた。その視線に幸か不幸か、バーテックスへと視線を向けていた須美は気付かない。

 

 「敵は未知の部分が多いわ。まずはある程度接近して、そこから牽制を……」

 

 「よっしゃ行くぞー!」

 

 「ミノさん待って~」

 

 「ってこらぁ! 待ちなさい2人共!!」

 

 「行っちゃったねぇ……自分達も遅れずに行こうか」

 

 「ええ……もう!」

 

 

 

 勇者となったことで身体能力が大きく向上したのか、数分と掛からずに大橋に辿り着く4人。その手にはどこから取り出したのか、それぞれ武器を手にしていた。銀は身の丈近くもある双斧、園子は複数の穂先が浮いた槍、須美は勇者の力で矢を作り出して放つ弓。

 

 4人の目の前には遠巻きでも確認できたバーテックス。遠くからでもはっきりと見えただけあり、その姿は奇妙かつ巨大。小学生の小さな体と比べると、その差はさながら鼠と虎、蟻と象。これから4人はこれほど巨大な相手を幾つも相手取らなければならない。だが、まずは目の前の敵に集中する。

 

 「一番槍はこの銀様が」

 

 「悪いけれど、男として一番槍は渡せないねぇ」

 

 「あっ! ズルいぞ新士!」

 

 「雨野君!?」

 

 「お~、アマっち速~い」

 

 先に飛び出していた銀よりも速く、新士はバーテックスへと接近する。男として、という言葉に嘘はない。だが、未知の敵に対して無策で銀を最初に近付けさせる訳にはいかないという思いもあった。養父に頼まれるまでもない。男であり、精神的に年上でもある自分が、孫のような年齢の少女達をなるべく守らねばという使命感。勇者といういつ死ぬかもわからないお役目に付く少女達を、少しでも傷付かせぬ為に、新士は前に出て姿勢を低くし、両手を広げる。

 

 「これはね、ただの手甲じゃあない」

 

 そう言うと新士はバーテックスの飴玉のような部分から飛んで来た水流を飛び上がることで避け、すれ違い様に両手を振るう。振るった先にあったバーテックスのゼリーと飴玉のような部分には、大きく4つの切れ込みが入っていた。

 

 「こいつはね、爪なのさ。そして」

 

 着地した新士の両手の手甲から伸びる、長さ1m程の鋭い4つの刃。それは収納可能な爪であった。新士の武器は殴る蹴るを目的とした手甲具足ではなく、敵を切り裂く獣のような鋭い爪である。

 

 そして新士は振り返って右手を切り裂かれたゼリー状の部分に向ける。すると次の瞬間にはガガガガッ!! という銃声のような音が響き、反動で新士の右手が跳ね上がり、バーテックスの体には4つの小さな穴が空いた。右の手甲からは爪が無くなり、爪が在ったところに穴が空き、そこから白煙を出している。かと思えば、シャコンとまた爪が生えてきた。

 

 「射出も可能。しかも無限弾()……なんて、ちょっと寒いかねぇ」

 

 「なにそれ!? カッコいいじゃん!」

 

 新士の動き、武器を見て興奮気味に目を光らせる銀。そんな銀と言葉にこそしてないもののコクコクと頭を縦に振って似たり寄ったりな園子に苦笑いを浮かべつつ、須美と新士はバーテックスに視線を向ける。そこには、切り裂かれ穴を開けられたバーテックスが変わらずに浮いている。

 

 一見すれば新士の攻撃によって大ダメージを受けているようにも見える。が、数秒と経たない内に塞がっていき、遂には最初と同じく無傷な姿に再生する。それを確認した2人は思わず顔をしかめ、そんな2人を他所に次は銀がバーテックス目掛けて突っ込む。

 

 「新士にばかりやらせない! せりゃあっ!!」

 

 再びバーテックスは水流、それとは別に水球を撃ち出して銀を迎撃しようとする。が、銀は先に攻撃を見ていたこともあり、左右にジグザグと進んで飛び上がり、双斧を振るい切り裂く。しかしバーテックスは周囲に水球を作り出し、銀は咄嗟にその水球ごと切り裂くも深く切ることが出来ず、彼女が着地する頃には新士の時と同じように再生したバーテックスの姿があった。

 

 「浅かった! くそー、再生するなんてズルいぞ!!」

 

 「ミノさん、危ない!」

 

 「園子! 助かっ」

 

 「あっごめん、これ無」

 

 浅い手応えとあっさり再生した姿に怒りを向けて地団駄を踏む銀目掛け、バーテックスは水流を放つ。それを事前に察知した園子は銀の前に出て槍を突き出し、複数の穂先を傘のように展開、水流を受け止める。が、園子の小さな体では踏ん張りが利かず、数秒と保たずに2人まとめて水流に流されてしまった。

 

 「2人共!?」

 

 「よくも! っ、のっ、おっ!?」

 

 2人が流されたことに焦る須美とこれ以上はやらせないとバーテックスに接近する新士。だがバーテックスは新士を近付けさせない為か薙ぎ払うように水流を放ち、同時に連続して水球を飛ばす。新士は水流から逃げる為に薙ぎ払われる方向にバーテックスを回り込むように走り抜け、水球は左右に跳んで回避し、避けきれなかった最後の一発を仕方なく裏拳にて弾くも園子よりも更に小さな体、しかも避け続けた為に姿勢が悪かったので弾いた腕ごと吹き飛ばされる。

 

 「雨野君!! これ以上は、やらせない!」

 

 自分以外の味方がやられる姿を見て、須美は連続して弓を射る。バーテックスは再び周囲に水球を作り出して矢を受け止め、幾つか抜けて突き刺さるもやはり再生していく。その光景は須美の心に大きなダメージを与えた。

 

 「そんな、受け止められ……いや、当たっても……あうっ!」

 

 反撃として須美目掛けて放たれる水流。須美は何とか避けることに成功するが、躓いて転んでしまう。それでも直ぐに体を起こし、バーテックスを睨み付け。

 

 

 

 須美の戦意を砕くように、ほんの数ミリ横を水流が通り過ぎ、橋の表面を砕いた。

 

 

 

 (私達が諦めたら……世界が終るのに……)

 

 理解している。橋の向こう側、バーテックスがやってきた方向から少しずつ橋が黒く染まっていっている。その現象は“侵食”と呼ばれ、侵食が広がると現実世界に影響を与え、不幸や事故という形で現実に被害が出る。

 

 (でも……でも……)

 

 須美に少しずつ迫るあまりに巨大かつ強大な敵。お役目を成し遂げるという使命感を持ち、世界を守る為だと奮起して挑んだ戦い。しかし敵には攻撃が通じているのかも分からず、味方である3人も攻撃を受けて吹き飛んだ。須美自身、先の水流が掠った頬から血を流している。

 

 (こんな敵……どうすれば……)

 

 喪失しかけの戦意、そしてそれによる行動の停止。それは敵からすれば絶好のチャンスに他ならず……案の定、バーテックスは須美目掛けて水流を飛ばしてきた。今の状態で当たれば、須美は大きなダメージを負うだろう。下手をすれば、死ぬかもしれない。だが、そんな彼女の前に1つの影が現れる。

 

 「やらせる訳には……いかないねぇ!!」

 

 新士だった。彼は須美の前に出て両腕を前に出し、手甲を合わせて盾のようにして水流を受け止める。先程のように吹っ飛ばされぬように具足の爪先から出た爪を地面に引っかけてしっかりと踏ん張り、十数秒もの間放出された濁流のような水流を小さな体で受けきる。

 

 「雨野、くん……」

 

 「うん、ちょっと遅れちゃったねぇ」

 

 「ぶ、無事だったのね。良かった……あ、危ない!」

 

 首だけ振り返り、何ともないと朗らかな笑みを浮かべる新士。そんな姿にホッと安堵する須美だったが、新士目掛けて飛んでくる水球が見えて声を上げる。新士は直ぐに前に向き直ると左腕を右から左へと勢いよく払い、水球を弾いた。その際に上半身が軽く仰け反るものの、地面に引っかけた爪のお陰で吹っ飛ばされることはなかった。

 

 須美はなぜ新士が避けることなく弾いたのか疑問に思ったが、直ぐに新士が避けていれば自分が水球を受けていたことを悟る。そして心にやってくるのは、不甲斐なさと情けなさ。

 

 「あ、ご、ごめんなさ……」

 

 「怖いよねぇ。まさか敵があんなにバカデカいなんて思わなかったし、攻撃は痛いし……うん、怖くて当然だよねぇ」

 

 「あ、う……」

 

 「正直自分も怖いけれども……鷲尾さん、とぉ!」

 

 その場から守る為に動かずに居る新士の言葉に返すことが出来ずにいる須美。そんな2人目掛け、バーテックスはその場で止まりながら先程よりも少し大きな水球を放ち、新士は右フックで殴る。見た目よりも弾力のある水球は、殴られた方向へと逸れていった。

 

 「三ノ輪さん、とぉ!!」

 

 続けて飛んでくる、先よりも更に一回り大きな水球。新士の体を呑み込む程のそれを、新士はさながらバレーボールのトスのように両腕を組んで下から上へと打ち上げる……ことには成功したものの、勢いを殺しきれず尻餅をつく。思わず手を伸ばす須美だったが、バーテックスが水流を放つ準備を()()()()()姿を見て叫ぶ。

 

 「雨野君!! 逃げて!!」

 

 「のこちゃんが、怖い思いをずっとすることになるのならああああああああっ!!」

 

 須美の叫びを無視して立ち上がる新士。しっかりと地面を踏み締めて先程よりも具足の爪を伸ばし、地面に突き刺して体を固定し、両腕を前にして盾とする。それとほぼ同時に手甲の上から直撃する水流。それはもはや滝を直接叩き付けられているにも等しい勢いで、普通に考えれば小学生の……ましてや150にも満たない小柄な新士が受け止めきれるモノではない。故に、これは異常な光景なのだろう。

 

 僅か数センチ。数センチ後ろに下がった程度で、その滝のような水流を受け止め、須美を守りきっているこの光景は。

 

 「ぅ……あ、アマっち……!?」

 

 「……すっげぇよなぁ園子。新士の奴、あたしと同じくらいちっさいのにさ」

 

 流されてから今まで意識を失っていた園子。そして園子を守っていた銀。2人は自分達が受けたそれよりも強い水流を手甲の上から受け……そして今、水流が止まるまで受け止めきった新士の姿を見て、ただただ凄いという感想しか持てなかった。

 

 

 

 「自分が守る! 自分が、頑張る!!」

 

 

 

 水流によって頬と右太ももが切れ、そこから血を流し、両腕が激しく痛んでも、新士は拳を強く握り締めて構える。叫ぶのはこうして命懸けで戦い、恐怖し、傷付いた少女達の姿を見たが故の己への誓い。

 

 「男として……勇者として!!」

 

 普段の老人のような雰囲気を感じさせない、小さくも大きなその背中を、自分達を想い確固たる決意と覚悟を持って叫ぶ少年の姿を、少女達はただ見詰めていた。




原作との相違点

・須美の攻撃が敵に届いている(効いているかは不明)

・侵食のスピードが遅い



副題は決意表明、覚悟完了、勇者誕生辺りですかね。中身お爺ちゃんの主人公がという意味で。

参考資料が動画、マンガくらいなのでかなり原作と違ってると思います。個人的には丸写しになるよりはいいかなと思ってたり←

ある程度進んだらIFストーリーやゆゆゆい時空、主人公のプロフ等書いて投稿しようかと思います。でもプロフって割と賛否両論ががが。

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)
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