咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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新! 番外編! 平成最後の日!(アツクナレーユメミターアシーターヲー

という訳でお待たせしました(´ω`)

FGO、天華百剣、ゆゆゆい、プリコネ、ラストイデアと色々やってて遅くなりました。しかも11000文字越えました。何やってんだ私は。

今回は予定通りDEifの続き。リクエストにあったものも混ぜ混んでます。

ゆゆゆいで平成最後のガチャ回したら花言葉雪花、名探偵園子(小)が来てくれました。たかしーも重なる奇跡。しかもサッカー部たかしーも……推しが沢山来て嬉しい。

感想見て書くの忘れてたの気付きました。10万UA、誠にありがとうございます! 今後とも本作をよろしくお願いいたします。

今回はあの子が中心になります。


番外編 花結いのきらめき ー DEif4 ー

 その日は……雨が、降っていた。

 

 「……新士」

 

 ポツリと、その名前を呟く。もしかしたら、いつもみたいに朗らかな笑顔と一緒に“なんだい?”なんて返ってくるかもしれない……そう、思って。勿論……そんなことは、無かったけど。

 

 「お……兄ちゃ……ああああっ……うええええん!!」

 

 「樹……うぅ……楓ぇ……っ!」

 

 「……私が……私が、断っていれば……私が……」

 

 「貴方……」

 

 雨野 新士……本名、犬吠埼 楓の告別式。それは大赦の関係者は勿論、元の家族にクラスメート、更に隣のクラスの何人かまで参加する大きなモノになった。仮面を着けた大赦の大人が言うなんとも大層な新士を持て囃す言葉を聞き流しながら、あたしと園子、須美の3人は自分達が花を贈る……新士を送る順番を待っていた。

 

 今、隣のクラスの髪の白い女の子が花を置いて戻ってきた。さっきのは……新士の元の家族だったんだろうか。新士と髪の色が似てる小さい女の子と、大きな女の子。それから男の人と、女の人があたし達の隣を歩いていった。新士の養子先の人は遅れてやってくるらしい……全部、どうでもよかった。

 

 「……新士……」

 

 安芸先生は昨日学校で言ってた。新士はお役目の最中に亡くなった。友達と別れるのは悲しいけど、どうか誇らしい気持ちで見送ろうって……出来る訳が無かった。

 

 よく頑張った。お役目を立派に果たした。彼は英霊となった。お役目のことをよく知りもしない人達の言葉。本気なのか、心無いって奴なのかは……どっちでもいい。でも……でもさ……やっぱり、悲しいじゃんか。

 

 「……そのっち……銀……私達の番よ」

 

 「……」

 

 「……ああ」

 

 須美に言われて立ち上がり、新士が居る箱に向かう。園子はずっと俯いてて、いつもみたいな元気は無くて。須美も、ずっと何かを我慢してるように無表情で。あたしは……鏡を見た時、冗談みたいに死んだ魚みたいな目をしてるなって思って……少しも笑えなくて。

 

 箱……棺だっけ……その前に来て、中を覗き込む。そこには、綺麗な沢山の白い花。そして……まるで眠ってるかのような、新士。その姿を見て、またあの日を思い出した。

 

 首の無い死体。体の前に転がってて、あたし達の方を向いていた首。その光景は樹海化が終わっても変わらなくて、大赦の人が来るまで喉が潰れる程に泣き叫んだ。

 

 「……新……士……」

 

 また、呟く。首が繋がっていなかったなんて嘘みたいに綺麗な状態。もしかしたら、このまま起き上がってくれるんじゃないかって。園子を抱き締めて、苦笑いしながら頭を撫でて……びっくりさせてごめん、なんて……あたしと須美に笑いかけてくれるんじゃないかって。

 

 でも……そんなことは、なくて。そっと、3人で新士の胸の上に花を添える。もう、名前を呟くことも出来なかった。涙も、出なかった。代わりに、後悔ばかり沸き上がる。

 

 あたしが間に合っていれば……新士を1人にしなければ。いや、新士じゃなくてあたしが残っていれば……ずっと、そんなことばかり考えて。

 

 

 

 不意に……時間が止まってることに気が付いた。

 

 

 

 「これは……まさか」

 

 「嘘だろ……こんな……こんな時にも、来るのかよ」

 

 須美とあたしが思わず口にする。告別式。お葬式。新士との、大事な親友との……最期の大切の時間なんだ。辛いけど、悲しいけど、だからこそちゃんとお別れしなきゃいけなかったんだ。最後まで見届けて、目に焼き付けなきゃいけなかったんだ。

 

 それを……邪魔するのか。あたし達は、最期のお別れすら……出来ないのか。なんで来るんだよ。なんで襲ってくるんだよ。なんであたし達なんだ。なんで……なんで、なんで! なんで!!

 

 「うう……」

 

 「ああ……っ!」

 

 「う、あ……ああっ」

 

 

 

 「「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっ!!!!」」」

 

 

 

 極彩色の光と……何故か、桜の花びらが新士の姿と世界を隠していく中で……あたし達は怒りと、悲しみを込めて……叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 「……最っ悪の夢見だな」

 

 今なら悪夢を見てハッキリ覚えてたっていう須美の気持ちが分かる。そんな事を思いながら、布団から出る。悪夢を見たからか、パジャマ代わりのTシャツが寝汗でじっとりとしていて気持ち悪い。

 

 園子とも夏凜とも違う、駅近くのマンション……そこで、あたしは1人暮らしをしていた。週末には実家に帰って家族と会っていたけれど、この世界じゃそれも出来ない。大橋さえ取り戻せれば、また帰ることが出来るんだろうけど……当然、小さいあたしは帰れない。そう思うと、少し気が引ける。

 

 「……ふうっ」

 

 風呂に行ってシャワーを浴びて汗を流し、ふと鏡に写る自分の体が目に入る。小学生の時は新士と並んで小さかったあたしも、中学生になって少し背が伸びたし、須美に及ばなくとも胸だって大きくなった。夏凜以上園子未満、ってところか。

 

 朝食を軽く作って着替えて部屋から出る。向かうのは勿論学校。平日だし、この世界でも普通に授業はある。小さいあたし曰く、“夢みたいな世界なのに夢がない”。何だってこんな世界に来てまで勉強しなきゃいけないのか……流石あたしだ、思考回路が似てる。あたしなんだから当たり前か。

 

 (今日は園子、大丈夫かな)

 

 道中、まず考えるのはソレ。前に新士と何かあったらしく、不安定だったのが安定してたけど……安定し過ぎてあたし達の方が不安定になったけど……油断するとまた泣き出すからなぁ。しかも園子ちゃんまで巻き込んで。前に西暦勇者の皆の前で2人で泣き出してびっくりさせてたっけ。

 

 西暦勇者……300年前の初代勇者達。西暦と神世紀じゃあ色々と勝手が違うんじゃないかと思ってたけど、意外とそうでもないらしい。文明レベルを見れば、そんなに大差ないんだとか。

 

 西暦組と神世紀組の仲も良い。同じリーダー格としてか若葉さんと風さんは良く話をしてるし、血筋の繋がりで園子達とも一緒に居ることも多い。そこにひなたも加わる。

 

 高嶋は同じ西暦勇者の千景さんと一緒に行動するのが多いが、やっぱり良く似てるからか友奈とも行動することもある。2人揃うと正に双子。千景さんは小さいあたし達を相手に良くゲームをして遊んでいる。最初は少し取っ付きにくいイメージがあったけど、すっかりそんなこともなくなった。後、よく須美……大きい須美とも何か話し合っているのを見かける。

 

 タマっちはアウトドア派だからか、あたし達と話が合う。ただ、小さいあたしは味方だけどあたしは敵だと胸を見ながら言われたのは……何とも言えない気持ちだったな。小さいあたしも微妙そうな顔してたし。杏は本好きとその物識り具合から園子達、須美達とよく話してる。樹とも一緒に行動してたりするな。ただ、園子が何か端末見せてると目が怪しい気がする。

 

 「あら、銀じゃない」

 

 「おはようございます、銀さん」

 

 「おはようございます、三ノ輪さん」

 

 「あ、風さんに樹に……新士。おはよう」

 

 学校が近くなってきた頃、犬吠埼3姉弟と会った。風さん、樹と視線を動かして新士に目を向けて……夢を思い出して、一瞬息が詰まる。何とか挨拶を返せたけど……手が震えてるのが自分でも分かる。

 

 そのまま一緒に登校することになり、震えを誤魔化すようにさっきの続きを考える。新士のことは、まだ考えて無かったからな。

 

 新士は、やっぱりと言うべきか誰とでも相性が良い……いや、杏とだけは苦笑いしながらあまり近づかないようにしてたっけ。特に園子ちゃんと一緒に居るときは……それでもまあ普通に話したりしてるんだし、人が良いというか。

 

 ひなたの若葉自慢を唯一最後まで聞く新士。その繋がりで若葉さんとも一緒に居ることも多い。ついでにひなた関連で謝られることも多いらしい。性格的に友奈と直ぐに仲良くなった新士は似たような性格の高嶋さんとも直ぐに仲良くなった。その繋がりで千景さんとも話したりするらしいが、小学生とは思えない落ち着きやお爺さんみたいな雰囲気に戸惑われているとか。

 

 タマっちとは、小さいあたしと一緒に外で遊ぶこともある。部室では暇だと園子達や樹を膝枕しながら本を読んでることが多い新士だけど、その身体能力は小学生組の中でも特に高い。インドア派でありながらアウトドア派並の体力を持つ新士を、タマっちは驚いたと話してた。

 

 ……全部、見たり聞いたりしただけだ。あたし自身は、それほど新士と一緒に居たり、話したりすることはない。話すと、思い出すから。一緒に居ると……思ってしまうから。

 

 (なんであの時……こうして側に居られなかったんだよ……)

 

 園子達が新士と一緒に居ないと泣きそうになるのとは逆に……あたしは新士の側に居ると泣きそうになってしまうから。

 

 

 

 

 

 

 西暦勇者達が召喚されてしばらくの時間が経った頃。

 

 「諏訪の勇者、白鳥 歌野です。皆さん宜しくお願いします! 趣味は農業です!」

 

 「諏訪の巫女、藤森 水都です。宜しくお願いします……趣味は、特にないかなぁ、と」

 

 「私は秋原 雪花。北海道から来た勇者だよ。よろしくお願いシャス」

 

 「……古波蔵 棗。沖縄から来た」

 

 西暦にて諏訪、北海道、そして沖縄で勇者と巫女をしていたという4人が新たな仲間として加わっていた。故郷で1人バーテックスに立ち向かっていた彼女達であったが、他の勇者達と共にその都度現れた敵を撃退し、仲間が居る心強さを感じながら信頼関係を築いていく。

 

 そんな彼女達に、共通して驚くことがあった。男の勇者である新士の存在である。勇者と言えば少女というのは当時からの認識であり、男の勇者というのはそれだけで珍しい。それに加え、年下である新士が同年代と比べて爺臭いとすら呼べる程落ち着いているというのも、彼女達にとっては驚くことだったらしい。

 

 性別の違い、それは確かに大きい。が、そこは老熟した精神を持つ新士。その朗らかな笑みとのんびりした口調、年寄り染みた雰囲気ですっかり仲良くなれていた。

 

 「で、姉としては唯一の男である楓が皆にどう思われているのか知りたい訳よ」

 

 「それはいいけど、なんであたしに言うのよ風さんや」

 

 部室の近くの廊下を歩いていた銀(中)とまるで待ち構えていたように進行方向に立っていた風。ばったり会った後に事実確認として上記のような会話をした後の台詞がこれである。

 

 見た状況、聞いた話では確かに仲良くなれているとは思う。しかし、弟が西暦勇者達に実際はどう思われているか……姉としては非常に気になるという。なので、風は新士にはバレないようにこっそりと聞いて回るつもりでいるらしい。銀(中)は変なことに巻き込まれてしまった……と頭を抱えた。

 

 

 

 「雨野君? ああ、彼は良い子だな。少し落ち着き過ぎている気もするが、一緒に居て気が楽だ」

 

 「私の若葉ちゃんの話も最後まで聞いてくれるんです~。代わりに昔の風さんや樹ちゃんの話を聞かせてくれるんですよ?」

 

 「ひなた、またお前は……雨野君にもひなたの話はあんまり聞かなくていいとは言っているんだが、彼はいつも“楽しいから大丈夫”で済ませてしまう。本当に大丈夫なのか少し心配だな」

 

 「大丈夫ですよ若葉ちゃん。若葉ちゃんの恥ずかしい話は、少ししかしていませんから」

 

 「私じゃなくて彼の心配を……待て、恥ずかしい話? なんだそれは? しかも少しはしているのか!?」

 

 最初に聞いたのは、中庭に居た若葉とひなた。真面目で実直な若葉と西暦の人間の中では風達と最も付き合いが長いひなたの話を聞いて、風は安心すると共に弟がこの若葉大好き人間に自分達の何を話したのか気になって仕方がなくなる。

 

 因みに、銀は知っている。ひなたが時折新士に膝枕されている園子達を羨ましげにしているのを彼に見られた後、こっそりと膝枕してもらっていることを。“お疲れ様”と囁かれながら頭を撫でられ、何とも嬉しそうにしていたことを。その時の部屋の扉越しに園子ズと共に見ていたのだから。

 

 

 

 「新士君? うん! 仲良しだよ! 一緒にお散歩行ったりうどん食べたり……あ、前に結城ちゃんも一緒に3人で組み手やったんだ! 2人共手強かったー」

 

 「確かに、小学生とは思えない動きをしていたわね、彼。ゲームの方も結構上手かったわ。前に小学生の子達と一緒に狩りゲーをやったのだけど、サポートがとても上手いの」

 

 「そうなんだ? 今度私も誘って欲しいなー。皆で一緒にやろうよ!」

 

 「勿論、高嶋さんが良いなら。どんなゲームが良いかしら……やっぱり協力プレイが出来る物を……」

 

 「うん! あ、そうだ。新士君はね、私達がこうやってお話してるといつもこう、見守るように笑ってるんだ。それがちょっと気になるなぁ」

 

 「そう、ね。彼が私達を見る目は……とても不思議な感覚を覚えるわ。嫌な訳ではないのだけれど、なんだか……そう、むず痒いというか……」

 

 次に聞きに行ったのは高嶋。丁度寄宿舎に居たようで、部屋の中には千景も居た。早速、と風が銀を連れて新士をどう思うかと聞いてみたところ、そんな答えが返ってきた。

 

 風は後で知ったことだが、新士はお役目の為の鍛練として格闘技を習い、実戦形式での鍛練を行っていた。この世界に来た今でも日課としてランニングや演武を行っている。その為、同じように格闘技や鍛練をしていた友奈ズ、夏凜、若葉等とも時に共に鍛練、もしくは組み手をすることも多かった。なので、西暦勇者の中では高嶋と行動することは意外と多いのだ。

 

 また、養子に出る前には風とゲームをしていたこともあって滅茶苦茶とはいかないまでもそれなりに出来る。腕としては中の中程度ではあるが、勇者の鍛練で上がった動体視力はある程度ゲームでもその力を発揮する。また、人の機微にも聡いので相手が何を求めているのか察するのも早い。サポートとしても優秀なのだ。弟の評価を聞き、風は銀を連れて満足して次へと向かった。

 

 

 

 「新士? あいつ結構動けるよなー。いや、勇者だから当然なのか? でもなんかお爺ちゃんみたいだろ? 本もよく読んでるみたいだからあんまり動けないと思ってたんだけどさ。小さい方の銀と一緒にサイクリングとかアスレチックコースとかで遊んだんだよ。楽しかったぞ!」

 

 「タマっち先輩、そんなことしてたんだ……私はなんだか避けられてるみたいでして。いえ、一緒に本を読んだり、お勉強したり、お喋りしたりはしますよ? ただ、園子ちゃんと一緒に居る時に私を見つけると離れていくんです……私は2人を温かく見守りたいだけなのに」

 

 「いや、あの息遣いが荒いうっとりとした表情のどこが“温かく見守る”になるんだ。タマにはわからないぞ……勘違いしないでくれよ? あんずはこんな子じゃなくて、本当は女の子らしくて物識りで良い子なんだ……」

 

 「あの2人の小学生カップルを見てると、何だか胸の奥が熱くなってもっと見ていたくなるんです! 先生と一緒でも勿論良いんです、年下の男の子が年上の女の子とカップルなんてそれだけで素晴らしいですし、しかも女の子側は同い年と年上で同一人物! そんな物語でしかあり得ないような状況をこの目で見られるなんて興奮するしかないじゃないですか!」

 

 「折角のタマのフォローを無駄にするようなことはやめタマえよ!?」

 

 寄宿舎から出る為の廊下で、球子と杏の2人と出会った風と銀。これ幸いと弟をどう思って居るかと聞いたところ、そんな答えが返ってきた。球子の楽しげな表情から良い関係を築けているのが見てとれる。問題なのは、その後の杏だった。

 

 避けられてるとは言ったものの、新士は本当に嫌がって彼女だけと関わらないつもりでいる訳ではない。ただ、園子ズと共に居る時に杏と遭遇すると彼女の言う温かい目が妙に彼の危機感を煽るので、状況次第では逃げてしまうのだ。

 

 そんな彼女の言を何とかフォローしようとする球子だったが、その直後の杏の力説から台無しにされる。真の敵は身内とは良く言ったものである。この後も杏を球子が必死に抑え、その隙に風と銀は寄宿舎から出ていくのだった。

 

 

 

 「新士君? こないだ結城さんと彼が一緒に居た時に畑に出来そうな場所はない? って聞いたら2人でこの場所を見つけてくれたのよね。お陰で農業が出来るようになったから感謝してるわ」

 

 「わ、私はまだあまり会話してませんが……その、落ち着く、と思います。何だか、諏訪に居たお爺さんお婆さんと一緒に居るみたいで」

 

 「分かるわみーちゃん! それに彼って他の四国の人と比べてそこまでうどん好きって訳じゃなさそうだから、その内蕎麦派に……ジョーク、ジョークよ風さん。だからそんな目で睨まないで?」

 

 「でも、前に美味しいお蕎麦を出すお店を見つけたからって一緒に行ったよね。新士君、ざるそば8枚も食べてびっくりしました……」

 

 「アンビリーバボーな光景だったわね。それだけ食べて“腹八分目”なんて言うもんだから……8枚食べたことと掛けたギャグなのか、それとも本気なのか……」

 

 「……あの後、園子ちゃん達と一緒にクレープ食べてるの見たよ。食べさせあいもしてた……小学生って進んでるんだね」

 

 「リアリー!?」

 

 寄宿舎から出た2人が向かったのは、讃州中学近くの土地。何もなかったハズのその場所は、今では立派な畑が出来ていた。そこに居るのは農業王と書かれたTシャツとジャージ姿の歌野と、水筒やタオル等を持っている水都。新しく仲間に加わった2人にも、銀を連れた風は弟をどう思っているかを聞いていく。

 

 歌野曰く、この場所は友奈と新士の2人が歌野の依頼で見つけたという。趣味の農業が出来るようになったと、それはもうキラキラとした笑顔で言った。対して水都は、その大人しい性格からかあまり共に行動したりはしないらしい。が、その老成した雰囲気は彼女にとって故郷に住む老人達を思い出すのだとか。

 

 そして、若葉とうどん対蕎麦でよく論争をする歌野にとって新士は蕎麦派になる候補だと言う……が、そこはうどんは女子力を上げると普段から豪語するうどん好きの風。家の弟をどうする気だ? おん? と睨み付け、睨み付けられた歌野は冷や汗をかきながら冗談だと首と両手を振った。その後また驚いたのは、新士の大食いっぷりにか、それとも食べさせあいの部分にだったのか。

 

 

 

 「新士君? いや、こっち来てからそんな時間経ってないからあんまり絡んでないけどさ……あの子、絶対年誤魔化してるよね。あの落ち着きっぷりで小学生はあり得ないでしょ」

 

 「……新士は、良い奴だ。沖縄の話をすると、樹と共に沖縄の歌を歌ってくれた。海の声も、新士は良い奴だと言っている」

 

 「いや、海の声って……まあ、別に悪い子だって言ってる訳じゃないよ。それどころか、棗さんの言うとおり良い子だよね。話してて退屈にならないし。聞き上手って奴かにゃあ」

 

 「ん……私が喋らなくても側に居てくれた。お互いに何も話さなかったが、あの空気は心地好かった」

 

 「後は、ちょっと服装に無頓着なのが気になるかな? 可愛い顔してるし素材は良いんだからさ、もっとファッションに興味を持って欲しいよ。何なら私が色々着飾ってあげるしさ」

 

 畑から部室に戻る際、風達は一緒に歩いていた雪花と棗を見つけて近付き、同じように質問をした。すると雪花は右手の人差し指を頬に当て、首を傾げながらズバッと言ってのける。これには風と銀も少し思うところがあったのか、表は苦笑い、内心で頷いてしまう。

 

 棗はあまり表情は動かないものの、新士に対して悪感情を抱いている訳ではないらしい。それどころか樹と共に沖縄の歌を歌ってもらってご満悦のようだ。何故神世紀生まれの新士が沖縄の歌を知っているのかという謎が出てきたが。

 

 ファッション関係に興味がある雪花にとって、現在風が買ってきた服をそのまま着ているのは見た目はともかく本人が服に興味が無いのが少し不満らしい。容姿を褒められて姉として鼻が高いと風は胸を張り、着飾ることを了承。小学生時代に女装させられていたことを思い出した銀は内心彼に向けて合掌をした。

 

 

 

 

 

 

 「いやー、満足満足。やっぱり弟と皆が仲が良いと安心するわ」

 

 「そりゃあようござんしたね……マジでなんであたし付き合わされたんだ……」

 

 あれから部室に戻ってきたあたしと風さん。言葉通り満足げにしてる風さんはいいけど、あたしとしては付き合わされたことに疑問しかない。まあ楽しかったのは楽しかったし……親友が良く思われているのは、確かに嬉しいけど。

 

 部室にあるパイプ椅子に座り、途中で買ったジュースを開けて一口飲む。ホッと一息つくと、風さんが端末を操作してポケットにしまった後に同じようにジュースを片手にあたしの方を見ていることに気付いた。

 

 「うーん……やっぱり、楓のことを嫌ってる訳じゃないのね、銀」

 

 「は? そりゃ、当たり前ですよ。これでも……親友だったんですし」

 

 

 

 「じゃあ、なんで楓から距離を取ってるのよ」

 

 

 

 ひゅっと、変な息が漏れて思わず俯く。バレていることは……別に不思議じゃない。須美と園子だって気付いてたし。ただ、それを新士の家族の風さんから直接聞かれるとは思ってなかっただけで。

 

 「……それは、その……」

 

 「……楓が死んだのは自分達のせいだから合わせる顔が無いとでも思ってる?」

 

 「っ……なんで……」

 

 「園子に東郷、そしてあんた。3人の楓への対応を見てれば、大体予想出来るわ……それに、前にお葬式の時の夢を見てね。そこに……小学生組の姿があったことを思い出したのよ」

 

 言い当てられた。その後に風さんも同じような夢を見ていたことにびっくりして……ああ、そう言えばあたしも風さんと樹みたいな女の子を見たなと思い出す。

 

 ……あたしが新士から距離を取る……避けてるのは、つまりはそういうことだ。あの日からずっと、ずっと後悔してた。あたしが間に合っていれば、新士は死ななかったのにって。告別式を終えても、その後のバーテックスを倒しても、大赦に奉られていても、供物が戻ってきても……転校してきて勇者部に入っても、この世界に来てからも……ずっと。

 

 「……あたしがあの日間に合ってたら……新士は中学生になって、一緒に讃州中学に通えたかもしれないんだ」

 

 「……」

 

 「園子だってあんな風に泣かなくて済んだんだ……須美だって、好きだった相手を忘れることなんてなかったかもしれない。風さんと樹も家族を失わなくて良かった。あたしが……あたし、が……っ!」

 

 「……バカね、銀」

 

 後悔して、吐き出して、申し訳なくて、泣いて……情けなくて。そんなあたしを、風さんは優しげな声でそう呟いて、あたしの頭を抱き締めてきた。あたしより大きな胸の柔らかさを感じつつ、抱き締められたことに困惑して涙が止まる。

 

 「全部もしもとか、たらればの話じゃないの。そんなに楓のことを思ってくれてるのは嬉しいけれど、そこまで思い悩むこともないのに」

 

 「でも……でもぉ……!」

 

 「あんたがそんなんじゃ、楓が困っちゃうわよ。あの子はきっと、恨むどころか気にしてすらいないわよ。むしろ、そんな風に悩ませてごめん、なんて謝ってくるかもね」

 

 頭を撫でられながら、耳元で囁くように言われる。そんな事はない……そう言おうとして、風さんの言葉に納得しそうになる。苦笑いして、そのまま言ってくるのが想像出来る。

 

 「だから、いいの。もうそんなに悩まなくても……いいのよ」

 

 「風さんは……樹は、あたしを何とも思わない……ん、ですか」

 

 「思うところがない、とは言わないわ。でもね……この世界の楓が、あんた達のことを恨んでも居なければ怒っても居ないの。それどころか、あんたに避けられて寂しいなんて言ってるのよ? そっちの方が腹立つわ」

 

 「新士が……?」

 

 「そうよ。それでも納得出来ないってんなら、楓に寂しい思いをさせた罰として楓に会わせる。それで……全部、本人に直接吐き出しちゃいなさい。あの子はもう……全部知ってるんだから」

 

 新士が、あたしに避けられて寂しい? それに、全部知ってるって……ああ、そう言えば園子もそんなこと言ってたっけ。もう9割気付いてるとか……本当に、知っているのか。自分がもう死んでるのも……その死因も、全部。

 

 ……会うのが、怖かった。新士に恨み言を言われるのが、怒りをぶつけられるのが……怖かった。そんな事はないって思っても、もしかしたらって思って……怖かったんだ。

 

 今でも夢に見る。一見すれば座っているだけに見えるその後ろ姿。声をかけてもまるで反応しなくて、嫌な予感が膨れ上がって動けなくて……須美と園子が来てからやっと近付けて、近付いたら……。

 

 あんな姿で死んでいい奴じゃなかったんだ。もっともっと一緒に居たくて、いつか……あたし達の夢が叶った姿を見て欲しかったんだ。その未來を奪ったのはあたしだって……園子と須美から好きな人を奪ったのはあたしだって……ずっと、思ってたんだ。

 

 「……あたしは……また、新士と一緒に居ても……いいんですか?」

 

 「勿論」

 

 「あたしは……新士と話したり……遊んだりしても……いいんですか?」

 

 「あの子も、そう望んでるわ」

 

 「あたしは……あたし、はぁ……っ……新士とまだ……友達で、親友で……居ても、いいですか……っ!!」

 

 

 

 「勿論だとも」

 

 

 

 「……え……あ……」

 

 泣いて、思ってることを叫ぶように言ったら、風さんとは違う声が答えた。その声の方を向くと、部室の扉がいつの間にか開いていて……そこに、新士の姿があって。

 

 「なん、で……」

 

 「三ノ輪さん……銀ちゃんが自分を避ける理由を知りたくてねぇ。姉さんに頼んでたんだよ」

 

 「部室の隣の部屋に隠れてもらってて、話始める前に合図を送ってね。悪いとは思ったけど……今のあんたは荒療治でもしないとね。つまり、今までの話は全部楓自身も聞いてたのよ」

 

 合図なんていつの間に……と思って、話す前に風さんが端末を弄ってたのを思い出す。多分、あれで新士に合図を送って、その後新士は扉の前であたしと風さんの話を……あたしの叫びも全部。

 

 「のこちゃんもそうだけど……そんな風になるまで自分を思っていてくれてありがとねぇ」

 

 「あ……」

 

 「……でも、もういいんだよ。自分は、自分が死んだことよりも君達が生きていてくれることの方が嬉しいんだ。自分を、忘れないでいてくれていることが嬉しいんだよ」

 

 忘れる訳がない。期間だけ見れば、1年位しか一緒に居なかった。でも……その短い時間の中でも、あたし達は確かに仲間で、友達で、親友で。

 

 いっぱい楽しいことをしたんだ。いっぱい話したんだ。もっと楽しいことをしたかったんだ。もっといっぱい話したかったんだ。もっと……もっと、一緒に居たかったんだ。

 

 「……もっと、一緒に居たかったんだ」

 

 「そうだねぇ。自分も……もっと一緒に居たかったよ」

 

 「もっと……おんなじ時間を過ごせたハズなんだ……っ!」

 

 「……うん」

 

 「ごめん! ごめん新士! あたしが間に合っていたら! あたしがもっと早く動けていたら! もっと強かったら! お前を……ひとりに、しなかったらぁ……!!」

 

 「うん……自分も、もっと強かったら。生きていれば……君を、君達をそんな風に……泣かさなくてすんだのにねぇ……自分こそごめんね、銀ちゃん」

 

 「うああああ!! ああっ、ぐ……ひ……ううううっ!!」

 

 全部……吐き出して。新士と風さんに抱き締められて……あたしは、心の底から澱んだものを全て追い出すように……本気で泣き叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 翌日、悪夢は見なかった。代わりに……遠足の、楽しかった部分の夢を見た。アスレチックコースで遊んで、焼きそばを食べて、景色を見て……そんな、楽しかった夢。

 

 いい気分で朝食を食べて、用意をして学校に向かう。その途中で、前みたいに犬吠埼3姉弟と遭遇して。

 

 「あら銀。おはよう」

 

 「おはようございます、銀さん」

 

 「おはよう……銀ちゃん」

 

 

 

 「うん、おはよう!!」

 

 

 

 今日も……楽しい1日が始まった。




という訳で、DEif時空の銀ちゃん救済話でした。リクエストからはDEifの告別式、勇者達の新士への印象? と盛り込ませてもらいました。

東郷さんと比べると、銀ちゃんは明確に救済されています。風先輩にも先輩&姉として動いてもらいました。

さて、今日で平成が終わり、令和がやってきますね。令和初投稿は本編になります。本編と言えば、本編ゆゆゆいはどうしましょうかね。

花結いの章をがっつりやるか、番外編オンリーか。一応勇者の章を終えてから、おまけストーリーとしてゆゆゆいやるか。話数がかなり増えますが、ゆゆゆいが楽しいのが悪い(責任転嫁

次の番外編は未定です。友奈の章終わりぐらいか、また何かの記念になるか。

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