いつの間にかUAは12万、お気に入りは1200件を突破していました。皆様誠にありがとうございます。
ラストイデアでメタグリ出なくて守護神ばっかり出て苛立ちが募る私です。でもゆゆゆいのバトンガチャで晴れ着の蕎麦派と体操服のうどん派が同時に来てくれたので嬉しい。
友奈の章も気づけば20話目。感慨深いモノです。皆様は何か印象に残っているお話やワンシーンはありますか? DEifとBEifは禁止で←
今回もまた爆発回。満を持してあのお方の登場でございます。
小さい頃、私は色々な史跡に連れていってもらい、歴史や国に興味を持った。その興味だったモノが、今では自分の将来の夢に繋がるとは思ってなかったけれど。
これも小さな頃の話なのだけど……母によると、私達東郷の家にも大赦で働く一族の血が入っているとか。もしかしたら、私にも神樹様にお仕え出来る力があるかもしれない。もしそうならとても嬉しいと、私の母が微笑んでいたことは……覚えてる。
次に思い浮かんだのは、病院で目覚めた時の記憶。手に巻き付いている誰のものかもわからないリボンを見て、知らない人影が3人分見えて、知らない男の子の声が聞こえた気がして……とても綺麗なモノを見た気がして、涙が止まらなかった。
お医者様曰く、事故にあって私は2年間の記憶と両足の機能を失ったのだと言う。入院中も、そして今も記憶が戻ることはなかったけれど……その2年間、立派に生きていたんだと……自慢の娘だと、親は泣きながら言っていた。
退院してしばらく経った頃に、家を引っ越すことになった。ようやく車椅子での生活にも慣れてきたのに、住み慣れた家から見知らぬ場所へと引っ越すことには不安しかなかったけれど……引っ越して良かったのだと思える。友奈ちゃんに、楓君に、勇者部に出会えたのだから。
友奈ちゃんから貰った白い花菖蒲の押し花は、今も大切にしている。楓君と出会ってからは、より一層大切にするようになった。友奈ちゃんの家の隣に引っ越してきたことを、友奈ちゃんに出会えたことを、神樹様に感謝した。
友奈ちゃんに出会えた、それだけで私の世界は変わって見えた。その世界が、楓君と出会って……名前で呼ばれた日から、もっと輝いて見えた。抱いていた不安はどこかに消えて、学校生活が楽しくなって。
そういえば、入学式の前日にお互いの制服姿を見せ合いっこして、その時に初めて友奈ちゃんにぼた餅を作って食べて貰った時、大袈裟なくらい大きな反応の後に“出来るなら毎日食べたい”だなんて言われたっけ……この日に初めて私は、友奈ちゃんのことを“結城さん”ではなく“友奈ちゃん”と名前で呼んだのだ。
「……まるで走馬灯のようね」
そんな風に本当の勇者になる前の頃を思い返す私の前には今、短刀が置かれている。玩具なんかじゃない、本物の。
勇者のお役目は攻めてくる12体のバーテックスを倒すこと。怖い思いをして、辛い思いをして、苦しい思いをして、散華なんて……供物なんてモノを知って、それでも私達は力を合わせて役目を果たした。そう思い返しつつ、布の上から短刀を手に持つ。
……勇者という存在に、お役目に、精霊に、散華に対する疑問は前からあった。ただ、その時は小さなモノで……それが大きくなったのは、楓君の温感の散華を知ってからだ。
楓君は神樹様から散華はいつか治ると聞いたと言う。でも、本当に治るの? その疑問は、あの先代勇者の2人と会うことでより大きくなった。だって楓君も、彼女達も2年もの間治ってないのに、その時点で私達の散華も3ヶ月間治ってないのに。
何よりも……心臓の散華が一番気になった。楓君に死んでほしい訳じゃない。でも、心臓が動いてないのに生きているのはおかしい。その時に、精霊は勇者を
つまり、楓君も彼女も精霊によって生かされているということ。ただ、この時はまだ予想でしかなくて。だけど、それ以外に理由も思い付かなくて。だから彼女達と別れる時に聞いたのだ。“貴女達の端末はどこにあるのか”と。返ってきた答えは、今は“持っていない”。なのに……彼女は生きていた。端末から呼び出す筈の精霊が居ない筈なのに、呼び出す為の端末が無いのに。
「……はぁ……はぁっ……――っ!!」
短刀を布の上から両手で持ち、その切っ先を自分も腹部に向ける。これは実験。予想が正しければ……でも、正しくなかったら……そう思って、手が震える。息が荒くなる。怖い、怖い……怖い。嫌な想像が浮かんでは消える。でも、確かめなきゃ……確かめて、真実を知らなきゃ。そう思って強く目を瞑って……一息に、短刀を腹部へと突き立てようとした。
「……やっぱり」
端末は操作してない。今は戦いの時でもない。呼び出そうとなんて……してない。なのに、私の精霊である青坊主の姿はそこにあった。短刀から、私を守っていた。私の予想は……正しかった。
勇者は死なない……死ねない。切腹以外にも何度も自害しようとして、その都度止められた。生きていた。端末の電池が切れていても、遠くに置いていても、精霊達はどこからともなく現れて何がなんでも私を生かそうとしていた。
これが只の安全装置なら、それで良かった。でも……今まで感じていた多くの疑問と合わさり、とてもそうだとは私には思えなかった。
「最初の疑問は……真っ白な男の子。これは楓君のことだった。真っ白な綺麗な花もそう。私が最初のバーテックスと次の3体のバーテックスに抱いた怒りも疑問だった。でも、最初に感じた大きな疑問は……私の精霊の数」
楓君以外は皆、後から来た夏凜ちゃんも1体だけだったのに私は最初から3体居た。最初こそ複数の精霊という共通点が嬉しいと感じていたものの、普通に考えておかしい。
この時点……つまりは私が初めて変身し、楓君に“私の失った2年のどこかで楓君と会っているんじゃないか、楓君は私の記憶が失われたことの理由を知っているんじゃないか”と聞いて、プールの授業で先代勇者が2年前に戦っていたと聞いた後から、少しずつ私は自分が先代勇者、もしくはその関係者ではないかと疑っていった。
それが確信に変わったのは……当然、総力戦の後。散華を知り、満開するごとに精霊が増えることを知り……それで私は、自分が先代勇者であったと殆ど確信した。乃木さんと三ノ輪さんに会った後にも、更に確信を深める為に色々と調べてみた。結果は……やはり、というべきかしらね。
記憶が無い2年間、私は鷲尾という名字だった。乃木さんが言っていた“わしお すみ”とは、私のことだったのだろう。適性検査で勇者の資質を持っていると判断された私は、大赦の中でも力を持つ鷲尾家に養女として入ることになり、楓君達と共に勇者のお役目についたのだ。
「そこまで、分かっちゃうんだね」
「流石す……東郷」
「わっしーでも、すみでもいいわ。記憶はないけれど……私は確かに先代勇者で……貴女達の仲間だったのだから」
時刻は夕方……学校が終わってから1人で直接やってきた私は今、乃木さんと三ノ輪さんが2年間過ごしているという部屋に居る。そこは楓君の部屋と同じく、一見すれば普通の部屋だ……彼女達が横たわるベッドとその周囲だけを見れば。
乃木さんが話を続ける。鷲尾家は乃木家と同じように立派な家柄だ。だから、高い適性値を出した私を娘に欲しがり……両親はそれを承諾した。神聖なるお役目の為だからと。
「そして私は3人と一緒に戦って、散華によって両足を、戦いの後遺症で記憶を失ったのね」
「「えっ?」」
「えっ?」
そう言うと、何故か2人はキョトンとしていた。何か、間違っていただろうか。先代勇者ではなかった? それならさっき指摘されてるだろう。なら、一緒に戦った訳じゃない? いや、流石にそれはないでしょう。
なら……散華の内容? でも私の散華は2回のハズ。だから、
「……違うの? 散華は、片足ずつではないの?」
「え、っと……」
「……違うのなら、まさか……記憶が? ……そんな……そんなのって……」
「……わっしー……」
そうじゃ、ないのね。片足ずつではなく、両足。そして、記憶……それで2回。散華は、そんな大切なモノまで奪っていくのね。だから戻る素振りもなかった。そもそも治るハズが、戻るハズがなかった。両足も……記憶も。
失った2年間に、どれだけ大切な思い出があったんだろう。私が覚えていない楓君、私が覚えていない友達……4人で一緒に学校に通っていたかもしれない。一緒に遊んだかもしれない。一緒に戦う以外にも、きっと多くの楽しかった思い出が……大切な、忘れたくない、忘れてはいけない思い出が……沢山、沢山あったハズなのに。
「……記憶を失った私は次なる戦い……今の戦いに回された」
「……大赦は身内だけじゃやっていけなくなって、勇者の資質を持つ人を全国で調べたんだよ」
調べた結果、勇者部の皆の適性値が高かった。風先輩も言っていたわ、自分達のグループが選ばれる可能性が一番高かったと。楓君が来たのも、一番可能性が高かったから。そして、私が友奈ちゃんの家の隣に引っ越してきたのも……大赦に仕組まれたことで。
その事実を、東郷の家の両親は知っていた。そして、事故で記憶喪失になったと嘘までついて……今も、本当のことを黙ってる。
「……家が裕福だったのは、少し疑問だったの。それに、満開をしてからは家の食事の質が上がったわ。思えば、合宿での料理も豪華なものだった」
「大赦が手当てとして、家に援助してるんだろうね。私達の家も……そうだったから」
「正直、あたしはそこは助かってるんだけどさ。まだ小さい弟も居るし……2年も会ってないけど」
「つまり、あれはご褒美だとか労っていたのではなく……お供え物のようモノ。私達を……祀ってたのね」
この2人と同じように……そしてそう考えると、楓君の部屋の前にある注連縄の理由も分かった。彼は既に祀られているのだ。人気の無い、窓の無い薄暗い通路の奥で、同じく窓の無い個室に……1人で。
「……楓君がこの部屋で同じように祀られていないのは、何故? サポート役として来たのは知っているけれど……」
「……カエっちはね、次の勇者の子達と……わっしーのことが心配だったんだよ」
「私……達……?」
「うん。だからサポート役として行くことを選んだんだって……それに、大赦には今の勇者の子達の精神的主柱になってもらおうって意図もあったみたいだね……私達の時みたいに」
「……」
「だから、カエっちはわっしー達の所に行って、一緒に勇者として戦った。だから、カエっちは私達と同じ部屋じゃなくて、わっしー達がお見舞いに来れる部屋に居る。正直、嫉妬してるんだよ? わっしー達ばっかりカエっちと居られてズルいって」
楓君がやってきたのは、私達が心配だったから……それを聞いて、嬉しいと思っている私が居る。少なくとも、そう思ってくれる位には過去の私と仲が良かったって思えるから。だけど、そこには大赦の打算も含まれている……思い出を、私達の思いを汚された気がした。沸々と怒りが沸いてくる。
その後の嫉妬云々は、本気半分冗談半分と言ったところかしら。三ノ輪さんも同じみたい。それは乃木さんが言ったように、彼が彼女達にとって精神的主柱となっていたからか……それとも……。
「わたしもミノさんも散華で動けなくなって、カエっちに会えなくて、こんな場所に祀られて……」
こんな場所と言われ、部屋の入口付近に目を向ける。そこから見える床には夥しい数の人の形にも見える長細い板が刺さっていて、天井や壁には隙間が見えない程に大量の人形の紙が貼り付けられている。
彼女達を神聖な者として祀っているのだとは思う。だけど……この部屋は不気味で、気持ち悪い。まるで、彼女達を人として扱って居ないような……いえ、人として扱ってないのね。神様に身体を捧げたから、その身が神様に近付いたから。
「……でも、今は辛くないんだ。カエっちと……わっしーとまた会えたし、こうやって会いに来てくれたし」
「だなー。楓とも会えるようになったしさ。これで散華も治ればなぁ……」
「……本当に……」
「ん?」
「本当に、治ると思ってるの? だって……2年間もそのままなんでしょう?」
そうだ……私は、それを聞きに来た。真実を知りに来た。私達が知らない……でも、先代勇者がきっと知ってる真実。私が思って、友奈ちゃんと風先輩にも溢した疑問。
戦いは本当に終わったのか。散華は本当に治るのか。壁の……神樹様の結界の向こうは、どうなっているのか。きっと……彼女達は知ってると思うから。
「治るよ。時間は掛かっても、きっと」
「どうして、そう思えるの?」
「カエっちが大丈夫って言ってくれたからね。いつだってそう言ってくれて、約束だって守ってくれた。だからきっと大丈夫」
「……三ノ輪さんも、そう思ってるの?」
「ああ。きっと大丈夫さ。体も治って……夢だって叶えられる!」
「それ、わたしが前に言ったセリフだよね~」
「い、いいだろ? あたしだって……本気でそう思ってるんだから」
本気で信じているのだろう。2人は笑って、そう言った。私だって、そう信じたい。戦いは本当に終わったって、散華はいつか戻るって。でも、状況がそうさせてくれない。1度疑ってしまったら、もうそれを切り離せない。
……これ以上は、2人は何も言わないだろう。話の流れを変えられてしまったし、乃木さんからは重要なことを教えようと言う気が感じられない。真実を知らないのか、それとも……
「……2人の夢って、何?」
「わたしはね、小説家かな。2年前はサイトに投稿してたりしたんだよ? カエっちも、面白いって言ってくれたんだ~」
「あたしは……お嫁さん、だな。出来れば……ごにょごにょ……」
「……素敵な夢ね」
「わっしーの夢は?」
「私? 私はね……」
「「「歴史学者さん」」」
「……酷いわ2人共」
「えへへ~、ごめんね。でも……忘れてないよ」
「うん。須美が忘れても……あたし達は、ずっと覚えてるから」
「……うん」
私の知らない
少し、前向きになれた気がした。本当に散華が戻るかもって、少し思える気がした。記憶が戻ったら、何を話そうか。友奈ちゃんに思い出を語るのも良い。逆に2人に今の私の思い出を語るのも良い。きっと……楽しいから。
そう……思えていたのに。
「楓君も夢を語ってたの?」
「えっ? あ……その……」
「……? どうしたの?」
「いや、その……楓も、言ってたよ。あたし達の夢が叶ったところを見たいんだって」
楓君らしい、と思ってしまう。自分の将来よりも、私達の将来の姿を見たいと思う辺り、特に。でも、なんで彼女達は急に狼狽えたのか……嫌な予感がした。さっきまでの思いが、一気に消え失せるような……嫌な予感が。
「今、なんで狼狽えたの?」
「それは、その……」
三ノ輪さんがキョロキョロと目を動かし、乃木さんは口を閉じて何も話さない。どうして? ……三ノ輪さんの反応には、見覚え……というか、つい最近私も同じ反応をした記憶がある。風先輩には言うつもりは無かった楓君の温感の散華について口を滑らしてしまった時に……。
……
「……まさか……楓君の散華の1つは、私と同じ……」
「……」
「楓君は、あの総力戦の時も合わせて7回満開しているわ。散華は右足、左目、左耳、心臓……温感。後の2つは、分からなかった。彼も教えてくれないし……怖くて聞けなかった」
「温感……それは、知らなかったな~……」
「答えて。残り2つの内の1つ……それはもしかして……私と同じ、記憶なの?」
「……」
「お願い……教えて」
「……わっしー達と会った日とは別の日に、3人で昔の話をしてた時にね。わたし達との思い出とか、出会いとか、細かいとこまで全部覚えたのに……私達の夢と……自分の夢のことだけ、忘れてたんだ。だから……多分ね」
その言葉が、嫌にハッキリと耳に残った。
可能性としては、あり得た。だって、私がそうなったんだから。皆の散華がバラバラなように、皆が同じ散華を味わう可能性もある。実際に、楓君と同じ散華が私と風先輩にも起きている。だったら、私のように記憶を失うことも……もう、前向きになんて考えられない。全部、全部疑わしくなった。違う……全部“嘘”だと思うようになった。
あの後直ぐに2人と別れた私は、そのまま人気の無いところで変身して結界の壁の上にやってきていた。外の世界に蔓延するウイルスから人類を守っているという結界。その向こうからやってくるバーテックス。12体全てを倒したと言うが、実際はどうなのか。
誰も教えてくれない、つい最近まで疑問にすら思わなかった結界の向こう。本当に戦いが終わっているなら良い。外にバーテックスが、或いはその元となるモノが無いなら良い。全て私の一人相撲だったということになり、散華のことだって少しは信用出来るようになる。
でも……もし、そうでないなら。私の予想通りなら。大赦も神樹様も嘘をついていて、楓君が……私達が騙されているのなら。
「……私は、真実が知りたい」
一見すれば、壁の向こうには夕焼けに染まった野山が広がっている。とてもウイルスが蔓延しているとは思えない位に綺麗な景色。そう思いつつ前に進んで、結界を越えた時。
目の前に、地獄が広がった。
「何……これ。これが……こんなのが、本当の世界だって言うの!? こんな……地獄みたいな世界が!?」
火の海、そう言う他にない。予想外なんて言葉で片付けられない。想像もつかなかった。だって、一瞬前まで綺麗な景色が広がってて。なのに、その景色が一気に地獄に変わって。
私が居るのは……巨大なんて言葉では言い表し切れない程に大きな、黄金の大樹。宇宙にすら届くそれこそが、結界の真の姿。私達が住む四国を覆う、神樹様の守り。
その光景に唖然としていると、不意に敵意を感じた。上に視線を向けると、そこには無数の口らしき部分だけがある白い化物の姿……分かる。あれは全て、バーテックスなのだと。
「くっ!」
口を開いて襲いかかってくる小さなバーテックス達。小さなと言っても、人間1人くらい容易く飲み込める程には大きい。咄嗟に出した拳銃で撃ち抜く。その一撃で倒せるくらいには脆い。だけど、数が多いなんてモノじゃない。それこそ……そう、目に見える白い光が、全てこの化物達だって言うのなら……敵は、バーテックスは……文字通り、
「っ……あっ!?」
その数にまた絶望し、後ろから襲いかかってきたバーテックスの攻撃を避けようとして、絶望のせいか上手く動けなくて柔らかな何かの上に倒れ込んでしまって。
その柔らかな何かが、下から迫ってきていたバーテックスだと気付いた。
「い……やああああああああっ!!」
拳銃から散弾銃に変え、目に見えるバーテックスを片っ端から撃っていく。一撃で倒せる。散弾銃だから一気に複数倒せる。なのに減らない、減らない! 減らないの!! 撃っても撃っても撃っても視界からバーテックスが消えなくて、無限に私に向かってくる。
撃つ。射つ。討つ。減らない、キリがない。仕方なく私は元来た場所に戻り、大きな葉に隠れる。これも結界の一部だからか、バーテックスは寄ってこない。乱れた呼吸を整えつつ、また上に視線を向ける。
「……そんな……あれは、楓君と友奈ちゃんが倒したバーテックス……」
そこには、無数の白いバーテックスが集まっていって、最初に戦った乙女座の形を成していっている光景があった。他にも、倒したハズのバーテックスが形作られていっている。
あんなに苦しい思いして、辛い思いをして倒したのに。バーテックスは次々生まれていっている。そうでなくとも、小さなバーテックスが数えきれない程居るのに。
これが“真実”。これが……こんな残酷なモノが。私達が倒したバーテックスは、これの何分の、何十分の……ううん、何千、何万、何億分の1にもならない。戦いなんて終わる訳がない。たった6人で、あの2人を含めてもたった8人しか勇者は居ないのに。
これを私達が倒すの? このまま私達が戦い続けるの? 散華で体の機能を失いながら、ずっと? 先代勇者はこれを知っていたの? 知っていて、戦ったの?
「はぁっ……はぁっ……!」
結界の中に戻り、荒い息を吐く。後ろを見てもあの地獄は無く、また綺麗な景色が広がるだけ。他の人間にはこう見えている。殆どの人は、あんな地獄があることなんて知らずに平和に過ごしているんだ。私達という勇者の、犠牲の上で。
脳裏に、乃木さんと三ノ輪さんの笑顔が……楓君の笑顔が浮かんだ。そして……泣きたくなる程に綺麗な、白い花も。
「ああああっ!! ひっ……ぐぅ……ううううっ!! うああああああああっ!!」
友奈ちゃんの、風先輩の、樹ちゃんの、夏凜ちゃんの顔が次々と浮かんで……絵画が燃えるように消えていく。想像の中のあの火の海が、皆の笑顔を焼いていく。
「な……んとか、しないと……なんとかしないと……なんとか、しないと……っ!」
泣きながらも必死に考える。またバーテックスがやってくる。また戦わされる。あんな姿になっても戦っていた楓君も、私達も。もしかしたら、乃木さんと三ノ輪さんも。
このままだとまた辛い思いをする。また苦しい思いをする。また、満開して、散華して、何かを失う。そして最後にはあんな風に祀られて、それでも勇者として戦わされて……いつか、体の何もかもを。それこそ、記憶さえも。
『君は……』
『貴女は……』
― ダ レ ? ―
「それは、ダメ……それだけは、絶対にダメ! それだけはイヤ、忘れられるのはイヤ!!」
2人に、皆に忘れられるのは、また忘れるのは絶対にイヤ。もしそんなことになったら耐えられない。助けなきゃいけない。これ以上苦しませたくない。これ以上辛い思いをさせたくない。
どうする、どうする……どうすればいいの。あんなの、解決策なんて浮かばない。生きている限り戦わされる。精霊が生かして戦わせる。神樹様が、大赦が、勇者の力がお役目を強要する。
思い付かない。それでも、思い付かなきゃ。こんな苦しいだけの世界から、こんな救いのない地獄から皆を助けなきゃ。頭を抱えて、神樹様の……神樹の結界の壁に頭を付けて考える。
― 大丈夫……神樹様が守ってくださるよ ―
― そうだねぇ……きっと、守ってくれるよ ―
「……あった」
頭を上げ、大赦の本部がある方角を……樹海化した時、神樹の影が見える方角を見る。今は何も見えないそこを目指して、バーテックスはやってくる……
そうよ……結界も、精霊も、勇者の力も、全て神樹の力。だったら……
許さない。大赦も、神樹も、世界も。楓君を苦しめて、友奈ちゃんを傷付けて、皆を犠牲にして、生贄にして。私だけなら良かった。私だけが勇者で、生贄だったなら。でも、そうじゃなくて……私の大切な人達を、私の大好きな人達を、私が大好きだった人達をこれ以上世界の為に……そう、言うのなら。
「私が……終わらせてやる」
暗い覚悟をした私の狙撃銃から放たれた一撃は大きな光の砲撃となり……壁の上部を半円形に抉り、結界に大きな穴を開けた。
原作との相違点
・(散華内容を)勘違い東郷さん
・でも尋常じゃなく察しがいい東郷さん
・途中で仲良くお話していた東郷さん
・やっぱり気付いてしまう東郷さん
・友奈の留守電はなし(そんなことやれる心境でも状況でもない)
・ダイナマイ東郷さん
・世界の真実や天の神のことは話さなかった園子様
・その他色々多すぎィ!
という訳で、全部東郷さん視点でした。最も大きな違いは、彼女が現時点で天の神の存在を知らないことです。恐らく、東郷 美森が知ることはないでしょう。思い出すことはあるでしょうがね←
で、やっぱりこの人勝手に動くの……駄目だ、私にも制御出来ねぇ。恐るべし東郷さん。
園子は世界の真実を教えるつもりはありませんでした。なのに楓の記憶散華を言ってしまったのは、既に東郷さんが確信していたからです。そしてドカン。
さあ、盛り下がって参りました。ほら、心とか精神とか。これで盛り上がる人は私と握手←
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