なるべくほのぼの→戦闘→ほのぼの、みたいな感じでやっていきたい(願望)ので今回はほのぼの回。
あ、ゆゆゆいやってます。心の美しさたかしーがホント可愛くて可愛くて……←
(初戦は、どうにかなったねぇ)
あれから数時間後の夕方。結論から言えば、自分達はバーテックスとやらを相手に勝利した。
途中、自分が弾いた水球が偶然にも三ノ輪さんの頭に当たって包み込まれてあわや窒息というところを彼女が水球の水を飲み干すという珍事……彼女曰く最初ソーダ、段々ウーロン茶味……こそ起きたものの、のこちゃんの考えた作戦がハマって撃退することに成功。その作戦というのが、自分が水流を耐えたことを見て思い付いたという、傘状にしたのこちゃんの槍を全員で持って水流に耐え、止まった直後に総攻撃というモノ。迎撃に飛んで来た水球は鷲尾さんが全て撃ち落とし、後は自分と三ノ輪さんが叩っ斬るだけ。拙いながら、初戦の連携にしては中々上手くいっただろう。
総攻撃を受けたバーテックスはスゥっと消えていき、大橋の上を桜の花弁が舞う。そんな幻想的な光景は、今も脳裏に焼き付いている。“
戦いが終わった後、自分達は大橋が見える展望台に居た。そこには
とは言うものの、最初に向かったのは保健室だ。のこちゃんと三ノ輪さんは水流に流されていたし、鷲尾さんも頬から血を流している。自分も真っ正直から攻撃を受けていたので両腕と踏ん張っていた足が痛いこと痛いこと……骨が折れてもヒビが入っても居なかったのは勇者服のお陰だろう。ありがとう神樹様、と拝んでおく。後はお役目の事をクラスメイトに質問されたりそれをかわしたりして過ごしつつ、そして放課後の今……ということだ。
「アマっち~待って~」
「うん? のこちゃん?」
さて帰ろう、というところで後ろからのこちゃんに声をかけられる。立ち止まって振り替えってみれば、ミノさんと鷲尾さんの姿もある。
「どうしたんだい? 3人共」
「いやー、さっき鷲尾さんから提案があってさ」
「提案?」
「ええ、と……その……」
なにやらにこにことしているのこちゃんと三ノ輪さんの間に挟まれ、恥ずかしそうにしている鷲尾さん。その口から出てきた言葉は、自分にとっても嬉しい“提案”であった。
「今日、初めてお役目を果たせたことだし……明日の放課後、祝勝会でもどうかしらって……」
「……まさか、鷲尾さんからそうやって誘われるなんてねぇ」
「ね~。私も誘おう誘おうと思ってんだけど、言い出せなくて……」
「あたしはしゅくしょーかいなんて言葉、思い付かなかったしな!」
「三ノ輪さん……こほん。それで、雨野君。どうかしら?」
真面目で、どこか自分達から1歩引いていたように見えていた鷲尾さん。そんな彼女からの提案は意外であり……それはつまり、彼女から歩み寄ろうとしてくれているということであり。
「勿論、喜んで」
それ以外の返答等、自分は持ち合わせていなかった。
翌日の放課後、4人は祝勝会の場所として選んだ大型ショッピングモール、“イネス”へとやってきていた。
「イネス! それは砂漠に現れる巨大なオアシス……新士に案内しようと思って結局出来なかった私の超オススメの場所さ!!」
「自分も忙しかったからねぇ……」
「そういえば、雨野君はいつも直ぐに帰っていたわね。何か用事が?」
「お役目の為のトレーニングをしてたんだよ。1日みっちり、ね」
「アマっちは偉いね~」
「そんな話は後にしなって! このイネスマニアの銀様が隅々まで案内を……」
「今日は祝勝会しに来たのよ? 案内するなら食事が出来るところからにしましょう」
という訳でやってきたのは、イネスの中にあるフードコート。軽食からがっつり食べられる物、スイーツに至るまで揃っているその一角は、大人数が座れるように多くのテーブル席が用意されている。そのテーブル席の1つに、4人は銀オススメというジェラートを手に座って居た。因みにテーブル席は4人用であり、新士の隣に園子、向かいに須美、その隣に銀という席順である。
「制服着て買い食いだなんて初めてだよ~。なんだかドキドキしちゃうね~」
「学校帰りの買い食いはダメ、なんて校則あったっけ?」
「確かにあるけれど、四年生からは節度さえ守れば許可されているわ」
「そういうこと! さあさ、早速食べようよ。ここのジェラート、めっさ美味いからさ!」
銀の催促にそれもそうだとジェラートを食べ始める4人。選んだ味は新士がイチゴ、須美が宇治金時、園子がメロン、銀がしょうゆ味である。それぞれが美味しいジェラートに舌鼓を打つ中で、須美だけが一口食べた後にジーっと難しい表情でジェラートを睨み付けていた。
「鷲尾さんどしたの? そんなジェラートにガン付けて。美味しくなかった?」
「いえ、その逆に宇治金時味のジェラートが美味しすぎて……でも私はおやつと言えば和菓子かところてん派だったから、こうも簡単に自分の信念が揺らいでしまうのかと思うと……」
「鷲尾さんは真面目だねぇ」
銀の疑問に至って真剣に答える須美。ジェラート1つに真剣に考えてしまう彼女を見て、新士は苦笑いを浮かべながらそう言い、スプーンで一掬いしたイチゴ味のジェラートを自分の口に放り込む。新士としてもこうしたアイスのような洋菓子は久しく食べる。舌の上で蕩ける氷菓子の甘酸っぱい味に、苦笑いから満足げな笑みに変わった。そんな彼の姿を見て何を思ったのか、園子はクイクイと新士の制服の袖を引く。
「ん? なんだい? のこちゃん」
「アマっちのイチゴ味も美味しそうだから……一口ちょ~だい?」
「ああ、いいよ。ほら、あーん」
「あ~……ん~♪」
「「……!? え、何してんの!?」」
園子のおねだりに恥ずかしがる様子もなく、新士は自分のジェラートを掬って園子の口へと運び、園子は流石に照れがあるのか頬を染め、それでも止めることなく受け入れる。味が気に入ったのか、それとも行為がお気に召したのか満足げな笑顔を浮かべる園子。その一連の動きを見て唖然とした後に見ているだけで恥ずかしかったのか顔を赤くして思わず同時に問い掛ける2人。
「何って……のこちゃんが欲しいって言うからジェラートを一口」
「えへへ~初めてあーんして貰っちゃった♪」
「ま、まだお付き合いもしていない男女がそんな……は、ひゃれんちらわ!?」
「落ち着け鷲尾さん。言えてない言えてない」
新士にしてみれば孫に自分の食べ物を分け与えるような行為に恥ずかしさなどある筈もなく、何か悪かったのか? とキョトン顔。園子は幸せそうに笑い、須美は男女のあれこれに耐性が無いのか真っ赤になり、同じように赤くなっていた銀は須美の様子を見て落ち着きを取り戻して冷静に宥める。
そして今度は宇治金時味が気になると須美にねだる園子。はしたくなくはないかと自問自答するも園子の物欲しそうな目には勝てず結局上げる須美。いやいやしょうゆ味こそ最強! と2人に食べさせようとする銀。そんな3人の様子を朗らかな笑みで見ている新士。
(うん……やっぱり彼女達にはこうした平穏な時間を過ごして欲しいもんだねぇ)
華やかな光景を1歩引いた視点で見て満足感を覚える新士。戦いなんて忘れて、今のような時間を過ごして欲しいと彼は思う。先の戦いの誓いがより強いモノとなり、自然と真剣な表情へと変わり……そんな新士の前に、園子が自分のジェラートを乗せたスプーンを差し出した。
「のこちゃん?」
「メロン味、美味しいよ? 今はお役目のことなんて忘れて楽しもうよ、アマっち」
「……そうだねぇ。楽しめる時は楽しまないとねぇ」
先程あーんをしたことへのただのお返しなのか、それとも真剣な表情を浮かべた新士に思うところがあっての行動なのか……新士には判断しかねたが、彼は彼女の行動に純粋に感謝した。今は平和な時間なのだ、先のような思考は無粋だろう。新士はまた朗らかな笑みを浮かべ、それを見た園子も嬉しそうに笑った。そして園子の差し出したスプーンをいざ咥えようとした時、斜め向かいの銀から待ったが掛かる。
「おっと、待ちな新士! メロン味よりもこっちのしょうゆ味を」
「2人共、まだお付き合いもしていない男女が」
「だから硬いって鷲尾さん。友達同士なら普通普通」
「え? そ、そうなの? いやでも男女は流石に……」
「……もう、ミノさんは……アマっち~、早くしないと溶けちゃうよ~?」
「……うん、ちょっと落ち着こうか君たちぁむ」
割り込んできた銀をいつもにこにことしている彼女にしては珍しく微妙そうな表情になる園子。2人の行動を咎めようとするも銀に丸め込まれそうになる須美。流石にこれ以上は周りの迷惑になると3人を落ち着かせようとする新士。そしてその口に園子がスプーンを放り込むのであった。
ジェラートを食べ終えた4人は銀の案内でイネスの屋上へとやってきていた。そこからは街の様子が良く見えた。その中には勿論、4人が戦った大橋の姿もある。
「昨日の戦いは大変だったねぇ」
ふと、大橋を見た新士からそんな言葉が洩れる。それを聞いた3人もまた、昨日のバーテックスとの戦いを思い返していた。新士は皆が無事なことを心から喜び、戦いを終えたことを嬉しく思っている。だが、3人の心は喜びばかりではなかった。
勿論、戦いに勝利した喜びはある。だが、まともに動くことも出来ず新士に守られてばかりだったと考えている須美。同じアタッカーとして新士に劣っていると感じてしまっている銀。戦闘中に気を失っていたことを情けなく思っている園子。そんな3人の様子を見た新士は苦笑いを浮かべ、落下防止の壁に背中を預けて彼女達に向き直る。
「どうしたんだい? 嬉しくなさそうだねぇ」
「……いえ、こうして皆無事でお役目をこなせたのは嬉しいわ。だけど……」
「だけど?」
「活躍したの、新士ばっかりだったからさ。なんかこう、やったー! って喜び難いというか」
「そんなことないと思うけどねぇ。勝てたのは皆で力を合わせた結果さ。鷲尾さんがいなければ、水球が邪魔でまともに近付けなかった。三ノ輪さんみたいな攻撃力は自分にはないし、のこちゃんの閃きが無ければ水流も水球も攻略出来なかった。ほら、皆が居てくれたから、自分達は勝てたのさ」
「アマっち……」
「守る、なんて偉そうに言ったけれど……自分だけじゃ勝つのは難しい。だから、さ」
そう、勝つのは難しい。どれだけ誓いを立てても、どれだけ覚悟を決めても、新士1人で全ての敵に勝てると思うほど彼は楽観的ではない。彼女達を生き残らせる為には、何よりも彼女達の力が必要なのだ。4人で力を合わせなければ、昨日のように生きて帰ることが難しいと理解しているから。独り善がりの頑張りでは、逆に悪い結果になることを老熟した精神が知っているから。新士はいつものように微笑んで少女達に向けて手を伸ばし……3人は自然と伸ばされた手に視線を向け、そして笑みを浮かべる新士の顔へと移す。
「こんな自分と、これからも勇者仲間として仲良くしてくださいな」
「雨野君……」
「……勇者仲間だけじゃ……私はイヤだな~」
「……だよな、園子。勿論、あたし達は仲間だけどさ」
「の、乃木さん? 三ノ輪さん?」
新士の言葉に嬉しく思い、その手を取ろうとする須美だったが、俯く園子と苦笑いする銀の言葉に困惑して手を止めてしまう。何か彼の言葉に不満な点でもあったのだろうか? そんな心配をする須美だったが、2人は彼女の隣を抜けて新士の手を取った。
「乃木さんちの園子さんはね~、アマっちとは前からお友達なんだよ~」
「三ノ輪さんちの銀様もな! 転校してきたあの日からずっとマイフレンドだと思ってたのにさ!」
「……うん、そうだったねぇ」
「ほら、鷲尾さんも!」
「きゃっ!?」
須美の伸ばそうとして止まっていた手を掴み、銀は自分達の方へと引き寄せて手を合わせさせる。その際に初めて異性と触れ合う形になったことで赤くなるが、笑う3人の顔を見た須美は手を引くことなく、むしろ包むように握る。
自分1人ではとてもお役目をこなせない、というのは守られていた須美が一番良く分かっていた。だから少しでも仲良くなってチームワークを高めようと今回の祝勝会を提案したのだ。その提案は、この行動は、須美にとっても勇気が居ることだった。友達の作り方なんて知らない、他人と仲良くなる方法なんてわからない。それでも、そんなんじゃダメだと思ったから、今の時間がある。
「……私も、仲間として……ううん」
ー 自分が守る! 自分が、頑張る!! ー
何よりも……守られるよりも、一緒に戦いたいと思ったから。彼1人で頑張らせるよりも、一緒に頑張りたいと思ったから。お役目だからではない。勇者だからでもない。
「私と、友達になってください。友達として……仲良くしてください」
初めて出来た友達として、共に戦っていきたいのだ。
「鷲尾さんも何言ってんだか。もう仲良しだろー? あたし達!」
「うん! 仲良し~♪ でもそれなら、あだ名考えないと~。スミスケとか?」
「す、スミスケはやめてくれないかしら……」
「あたしのことは銀な! 新士は新士でいいよな?」
「だ……男子を呼び捨てにするのははしたなく」
「ないから!」
尚、須美のあだ名は“わっしー”に決まり、須美は園子を“そのっち”と呼ぶようになり、銀は呼び捨てするようになり、新士は名前にちゃん付けすることが決まった。
「別に送ってもらわなくても良かったのに」
「こんな夕方に女の子1人は危ないからねぇ」
「そ、そっか……」
祝勝会の帰り道、新士は須美と園子が車で迎えにきてもらうのに対して銀だけが徒歩で帰ることを知り、送っていこうと銀と共に彼女の家までの道のりを歩いていた。祝勝会が放課後の後だったこともあり、空はすっかり茜色に染まっている。犯罪らしい犯罪等殆ど起きない街とは言え、小学生の少女を1人で帰らせるのは気が引けたのだ。新士の気遣いが恥ずかしいのか、銀の頬が赤く染まる……が、夕焼けのせいか新士はそれに気付かなかった。
「……あ、ここがあたしんち」
しばらくすると、銀の家に辿り着く。極普通の和風の一軒屋である銀の家は、新士の脳裏に数ヶ月前まで普通に暮らしていた犬吠埼の家を思い出させる。
「上がってく? お茶くらいなら出すよ」
「お誘いは嬉しいけれど、実は自分の家は反対方向なんだよねぇ。だから急いで帰らないと」
「そっか……送ってくれてありがとな! また明日!」
「うん、また明日ねぇ」
銀が家に入ったことを確認した後、新士は家に背を向けて元来た道を戻りだす。その直後、家から銀のただいまー! という声の後に姉ちゃんおかえりー! と元気な少年の声が聞こえてきた。
(彼女にも姉弟がいたのか……)
思えば、少女達のプライベートなことはよく知らない。今まで学校で会うくらいしか交流の時間がなく、そんなことは知ることも聞くこともしなかったのだから仕方ない。だが、今日1日で少しは知ることが出来た。
須美は、真面目で硬いところがあるが自分を変えようと勇気を出せる子だった。園子は、意外と周りを見ていてスキンシップが激しいことがわかった。銀には姉弟がいて、そしてイネスが大好きだった。
(姉弟、か。姉さんと樹はどうしているかねぇ……)
ふと、寂しさが新士の心に入り込む。お役目の為のトレーニングをしていた為、この数ヶ月ロクに連絡を取れていない。そもそもお役目の守秘義務のせいで連絡を取ることを養父より禁じられている。顔を見ることも、声を聞くことも出来ず、手紙等も出すことが出来ない……だが、あの日の泣き顔は今でも思い出せる。
(……生きて、お役目を終わらせないとねぇ。彼女達も生き残らせて、自分も生き残る。言うは易し、行うは難し)
新士はスマホを取り出し、画面に映る勇者の変身アプリを見たあとに引っくり返す。そこには、今日イネスにあったプリクラで撮った4人の集合写真が貼られていた。
須美の首に左手を回して右手でピースしている笑顔の銀。少し重そうにしながらも同じように左手でピースして小さく微笑む須美。そんな2人の前に頬をくっつけてアップで映る笑顔の園子と朗らかな笑みの新士。
「……まあ、なんとかするかねぇ」
そう言って、新士はスマホをポケットに入れるのだった。
原作との相違点
・銀が水球を飲み干す原因が主人公(!?)
・銀と園子が新士を通じて既に友達
・原作よりも早く須美が名前呼びに
・4人でプリクラ撮った
おや? 園子の様子が……というお話でした。副題を付けるなら友達、仲間あたりでしょうかね。イネスで広がる友達の輪。しょうゆジェラートって美味しいんですかね?
少年のハートを忘れなかったお爺ちゃんは自分1人で出来ることなんて高が知れてることを理解しています。なので、皆を守るために皆で頑張ろうと仲良く決意するお話でした。因みにこの作品、ヒロインはまだ未定だったりします←
それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)