咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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お待たせしました(´ω`)

やはり更新速度が遅くなってますね……申し訳ない。しかも今回、時間使った割にいつもよりも文字数少ないです。重ねて申し訳ない。

友奈の章終章よりも禁断ルートの方が感想多いのホント笑う。やっぱり皆類友なのね。仲間沢山。

そういえば、リリスパには楓と書いてフーと読むキャラが居るんですよね。本作勇者部がリリフレ世界に行ったら混乱しそうだ。

リクエストですが、私の力量次第となりますので応えることが出来ないモノもあります。どうかご了承下さい。

さて、前回の温度差のせいで風邪引いたの人もなんか精神とか体にダメージを負った人も、これを見て回復だ!

ケアルガ!(FF
ベホマ!(ドラクエ
シン・サイフォジオ!(ガッシュ
キュアベスト!(黄金の太陽
リカバリー300!(ロックマンエグゼ
ディアラハン!(ペルソナ


番外編 咲き誇る花達と平穏に ー 2 ー

 それは勇者達の散華が治り、楓と友奈も戻って来て休学から復帰してから少し経った日の出来事。

 

 

 

 

 

 

 「少し早かったかな?」

 

 「そうね……もう少し遅くても良かったかも」

 

 五体満足となって自由に歩けるようになった楓と美森は私服姿で大橋の駅前に居た。そこにある時計を見上げて見れば、針は11時半を指している。その時間を見て楓は苦笑いし、美森も同じように苦笑いする。

 

 讃州中学に通う2人がこうして大橋に居るのは、過去の友人との待ち合わせの為だった。過去の友人とは言わずもがな、園子と銀のことである。園子はともかく、銀は自他共に認めるトラブル体質。彼女の意志に関係無く、約束の時間通りに来れる可能性は割と低い。

 

 「銀ちゃんが遅刻したら、美森ちゃんは良く怒ってたねぇ。遅刻よ! 銀! なんて」

 

 「今の私の真似? ……まあ、その時はトラブル体質なんて知らなかったから。楓君とそのっちは苦笑いしてたわね」

 

 「自分ものこちゃんも、あんまり怒るような人間じゃないからねぇ。因みに、真似はどうだった?」

 

 「その分怒った時が怖いのだけど……真似は、100点満点中40点。小学生の時ならともかく、もう声変わりもしちゃってるもの」

 

 「これは手厳しいねぇ」

 

 「「……ふふっ」」

 

 待ち合わせ場所の近くにあるベンチに座り、談笑する2人。ベンチの左側に楓が座り、その右隣には美森が座る。その距離は近く、後少し近付けば肩が触れ合う程。その距離をお互いに離すことなく、クスクスと笑い合う。

 

 話の内容はもっぱら小学生時代の、今この場に居ない待ち人の話。途中で楓が美森の物真似をしてみれば、あの頃から成長して声変わりしたせいで上手く彼女の声を真似られず、厳しい評価を受け……可笑しくなって、2人で顔を見合わせてまた笑った。

 

 「お、楓と須美発見! お待たせ!」

 

 「カエっち、わっしー。こんにちは~」

 

 「こんにちは、2人共」

 

 「こんにちは、そのっち、銀。銀が遅刻しないなんて珍しいわね」

 

 「あたしもあの頃から成長してるんですよ須美さんや」

 

 そうして話していて少しした頃、時計の針が待ち合わせ時間の12時の5分前を指し示した頃に、2人と同じく私服姿の園子と銀がやってきた。挨拶を交わし、時計を見た美森が遅刻じゃないことに驚くと、銀が自分で言った通り小学生の頃よりも成長した胸……夏凜以上園子未満……を張って自慢気に笑う。

 

 2人が美森のことを小学生の時のように“須美”、“わっしー”と呼ぶのは、3人で話し合った結果、そのままで良いということになったからである。美森がかつて鷲尾 須美であったことを忘れない為というのもあるが、今の東郷 美森という名前にあまり馴染みがないという理由もあった。本人達が納得しているので、楓を含めた周りは何も言わない。

 

 「さて、2人も来たことだし……行こうか」

 

 「そうね。あんまりダラダラとしてると遅くなっちゃうし」

 

 「賛成~♪ 久しぶりの皆でお出かけ楽しみだな~♪」

 

 「ちゃんと目的あるんだぞー。あ、2人はお昼食べた?」

 

 「いいや。こっちで皆で食べるつもりだったからねぇ」

 

 「ええ。だから結構お腹空いてるわ」

 

 4人が揃ったので立ち上がる楓と美森。2人は讃州市に帰らなくてはならない為あまり長い時間居られないので、早速とばかりに歩き始める。その際、楽しそうに笑いながら園子が楓の左側を歩き、美森が右側に居たものの銀に笑いかけて少し距離を空け、銀が嬉しそうにしながら美森と楓の間に入る。

 

 目的地に向かって歩く途中、銀が園子に苦笑した後にそう聞いてきた。待ち合わせ時間よりも早くに来ていた2人は、当然昼食を食べていない。本人達の言うとおり、こうして4人で会うのだから折角なので皆で食べたいという気持ちもあった。

 

 「あたし達もまだ。理由も一緒。という訳で、まずは腹ごしらえだな!」

 

 「どこで食べるの? ミノさん」

 

 「ふっふっふ、決まってるじゃないか園子くん」

 

 

 

 「「「「勿論、イネスさ!」」」」

 

 

 

 「「「「……あははっ!」」」」

 

 決まっている。この4人で集まれば、そして銀が決まってるなんて言えば、イネス以外あり得ない。初めて4人で出掛けた、初戦を勝利で飾り、その祝勝会をした想い出の場所。すっかり成長して変わった4人の、あの頃と変わらないやりとり。4人の顔に、自然と笑顔が浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 「んー、相変わらず美味い!」

 

 「久々に食べたねぇ……ここのジェラート」

 

 「そうね……懐かしいわ」

 

 「美味し~♪」

 

 そうして昼食を食べ終えた4人はデザートとしてジェラートを食べていた。あの時のように4人掛けのテーブル席に、楓の隣に園子。向かいに美森、その隣に銀。食べているジェラートもあの時と同じで楓がイチゴ、美森が宇治金時、園子がメロン、銀がしょうゆ味。

 

 4人の脳裏に、あの日の記憶が甦る。買い食いもしたことがなかった園子、校則を聞いた楓、答えた美森、そしてそんなことはどうでもいいとジェラートを勧める銀。美味しくて、懐かしくて、また笑って……今日はずっと笑顔だなぁと、楓は彼女達の笑顔を見て嬉しく思う。

 

 「ねえねえ、カエっち」

 

 「うん? なんだい? のこちゃん」

 

 「あのね……カエっちのイチゴジェラート、一口ちょーだい?」

 

 「……ああ、いいよ。ほら、あーん」

 

 「あー……ん、ぅ」

 

 不意に、園子が楓の袖を引いた。そして楓がそう聞くと、園子が少し頬を染めて、はにかみながらそう言ってきた。そのやり取りも、以前やったことだ。あの日もこうして園子がおねだりしてきて、楓は今と同じようにスプーンでジェラートを一掬いして彼女の口の中へと入れた。あの日と違うのは……園子も楓も中学生になっていること。

 

 「……ね、ねえ楓君。私にも、その……」

 

 (いいなぁ園子……)

 

 そして、あの日注意していた美森が自分にもしてほしいと言い出していること。銀は口にするのも恥ずかしいのか、幸せそうな園子と楓が持つジェラートに視線が行ったり来たりしていること。

 

 そんな2人を、楓は微笑ましいモノでも見るように笑い……美森に、そして銀にも一口ずつ掬っては食べさせた。勿論、その後には自分も彼女達から食べさせてもらうことになったのだが。

 

 そうして昼食とジェラートを堪能した4人は、当初の目的を果たす為にイネスの中を歩いていた。少しすると、目的地が見えてくる。

 

 「で、何を買うんだっけ?」

 

 「家具とか食器とか色々。家にあるのは帰って来た時の為に置いておきたいしな」

 

 「可愛いのあるかな~」

 

 「大丈夫だと思うわ。銀が毎回のように“イネスには何でもある”って言ってたから」

 

 「おう! なんたって公民館だってあるからな!」

 

 銀が言うように、4人の……というか銀と園子の目的は、家具や食器を買うことだった。なぜそれらが必要なのかと言えば、彼女達が大橋にある実家から讃州市へと引っ越してくるからだ。家族全員ではなく、独り暮らしするという形で。

 

 数日前に行われた2人の讃州中学への転入試験。園子も銀も安芸主導の勉強の末に無事合格し、1週間もしない内に生徒として登校することになる。園子は犬吠埼家からそう遠くない距離にあるマンションの1室を借り、銀は週末に実家に帰る為に駅と学校の中間辺りにあるマンションの部屋を借りている。

 

 余程高額な商品を買わない限り、予算は気にしなくて良かった。勇者をしていたことにより、大赦からは充分過ぎる程の金銭を受け取っている。それは他の勇者達も同じである。

 

 「ミノさん、これ買おう!」

 

 「いや、それダブルベッド……あたし独り暮らしだぞ」

 

 「いやいや~、これを買っておけばわたし達がお泊まりしに行ったりカエっちを連れ込んだりしても大丈夫……」

 

 「連れ込むか! シングルでいいよシングルで!」

 

 「そのっち? 真面目にやりなさい?」

 

 「あっ、はい」

 

 「そういうの、自分が居ないところで言って欲しかったねぇ」

 

 園子が指差したのは大きなダブルベッド。独り暮らしをする少女が、しかも小柄な銀が眠るには少々どころではなく大きい。園子が眠るにしても広すぎるだろう。と言ってみれば園子はニヨニヨとしながら言う。聞いた銀は顔を赤くしてツッコミを入れ、直ぐ側にあるシングルベッドを指差した。

 

 園子の言に聞き捨てならんとにっこりと笑いつつも怒りを顕にする美森。怒られるのは嫌なのかあっさり頷く園子の横で、これまでのやり取りを見ていた楓が苦笑いする。当の本人が近くに居るのに連れ込む云々と言われては、流石に苦笑いしか浮かべられなかった。

 

 その後も買い物は続く。楓と美森からも意見を貰いつつ、ベッドに棚にテーブルに椅子、食器、カーペットやシーツ、カーテン。冷蔵庫や洗濯機等の電化製品に、他にも細々とした家具にインテリア。買ったモノは後日引っ越し先に郵送してもらう。それが終われば日用品。折角なので新調したいのだとか。

 

 「いやー買った買った。勇者になる前は絶対に出来ない大きな買い物だった……」

 

 「だろうねぇ。中学生の身でここまで大きな買い物はそうしないだろうしねぇ……金銭感覚、狂わなきゃいいけどねぇ」

 

 「わたしはお買い物自体自分ではあんまりしなかったな~」

 

 「そのっち、お嬢様だものね。昔は買い食いもしなかったって言ってたし」

 

 買い物を終えた4人は日用品の入った袋を手に、またイネスの中をぶらぶらとしていた。使った金額は6桁に届き、自分達が使った金額に戦慄する銀。中学生の身でそれほどの金額を使い、尚余裕があることに金銭感覚が狂うことを心配する楓であった。

 

 

 

 

 

 

 思ったよりも買い物が早く終わったわたし達は買った物をコインロッカーに入れて、カエっち達が帰る時間になるまでイネスの中をぶらぶらと歩くことにした。小学生の頃に何度も皆で来たイネスだけど、成長した今になって歩いてみると視点が違って面白い。

 

 今、わたしの右隣にはカエっちが居る。その隣にミノさんが居て、わたしの左隣にわっしー。またこうして皆と一緒に居られるなんて、本当に夢みたいで……。

 

 ― ……いいんだよ、のこちゃん。それよりも、君達が生きてくれている方が嬉しい。それに……供物だって、いつか戻る。また、この夢のように五体満足で……皆で昔みたいに一緒に居られる日が来るよ ―

 

 初めて夢空間を作ったあの日に、わたし達の夢を……カエっちの夢を叶えられないかもしれないって泣いてしまったわたしにカエっちが言ってくれた言葉。カエっちは抱いていた夢のことを散華してたし、夢空間のこと自体覚えてないだろうけど……本当に、そんな日が来た。カエっちを信じて、良かった。

 

 チラッと、カエっちの横顔を見る。小学生の時はミノさんと同じくらいの身長で、わたしよりも少し低かった彼。気付けばその背はすっかり追い抜かされて、女の子みたいだった顔だって男の子らしくなって。でも……わたしの大好きな笑顔とか、仕草とか……雰囲気とかは、そのままで。

 

 わっしーは……結構変わってた。記憶を捧げた後にカエっちとゆーゆに、勇者部に出会ったからなのかな。でも国防魂とか真面目なところとか変わってないところもやっぱりあって。

 

 (皆変わったところも、変わらないところもあるんだね~)

 

 あの時よりわたし達は大きくなった。子供から、少しずつ大人になっていく。それでも……きっと、わたし達はずっと友達で、親友で。

 

 (確か……西暦の時代だと、こういう時は“ズッ友”って言うんだっけ?)

 

 ズッ友。この先大人になっても、お爺ちゃんお婆ちゃんになってもずーっと友達。ステキな言葉だなって思う。でも、カエっちとは……もっと“先”の関係になりたいな。わっしーもミノさんも……きっと、同じ気持ちだよね。

 

 「ん? どうしたんだい? のこちゃん。自分の顔をずっと見て」

 

 「え? あ……えっと、ね……カエっち」

 

 「うん?」

 

 「手、握ってもいい?」

 

 そんな風に思いながら見てたからか、カエっちが気付いて、歩きながらそう聞いてきた。咄嗟に返事が出来なくて少しどもっちゃって……自然と、その言葉が出てきた。

 

 「……ああ、いいよ」

 

 カエっちは一瞬だけキョトンとして……いつもみたいに朗かな笑顔を浮かべて、わたしの右手を握ってくれた。嬉しくて、わたしもその手を握り返す。

 

 (温かい……それに、おっきいな~)

 

 大きくて、温かい手。こうして手を繋ぐだけで嬉しくて、少し恥ずかしくて、それ以上に幸福(しあわせ)で……。

 

 「……な、なぁ、楓」

 

 「うん?」

 

 「あ、あたしとも、そのぅ……園子みたいに、さ。いい、かな……?」

 

 「……いいよ」

 

 あ、そういえば4人で居たんだっけ……幸せ過ぎて忘れてた。ミノさんも勇気を出したんだね。わたしと同じように手を繋いだミノさんは顔を真っ赤にして俯いて……でも、口元が緩んでる。可愛い。乙女なミノさん本当に可愛い……あ、なんか降りてきた。脳内でメモっとかなきゃ。

 

 「わっしーも手を繋ご~♪」

 

 「わ、私も? ……そうね。繋ぎましょうか」

 

 「えへへ~、皆仲良しなんよ~♪」

 

 「そうだねぇ……仲良しだねぇ。これまでも……これからもきっと、ね」

 

 「当然! あたし達4人は親友だからな!」

 

 左手はわっしーと繋いで、4人が1つの線になる。その手はきっと離れることもあるけど、また何度だって繋ぎ直せる。だって、わたし達は親友だから。皆が皆、大切で、大事な人達だから。そう思うとまた嬉しくて、皆に会えたことが改めて幸せで奇跡みたいな出来事なんだって思えて……また、笑顔になった。

 

 「カエっち」

 

 「うん?」

 

 「わたしね」

 

 

 

 カエっちも、わっしーも、ミノさんも……皆、みーんな……大好きなんよ。

 

 

 

 「知ってるよ」

 

 「合宿の時も言ってたもんな」

 

 「そうね。そのっちらしかったわ」

 

 「えへへ~♪」

 

 大好きだって知ってくれてるのも、嬉しいもんだよね。

 

 

 

 

 

 

 あれからしばらくして、名残惜しくも私達が帰る時間となってお開きになった。夕日に染まる街中で、手を振った後に背中を向けて去っていく2人の姿に後ろ髪を引かれる思いをしつつ、2人で讃州市に戻る為の電車に乗り込む。幸いにも人は少なくて座席に座れた。楓君は端っこに。私は勿論……彼の右隣に。

 

 「ふう……」

 

 「疲れちゃったかい?」

 

 「そうね……少しだけ」

 

 久しぶりに行ったイネスは先代組の4人だったこともあってかなんだか新鮮で、我ながら楽しくてはしゃいでいたと思う。

 

 本屋さんで立ち読みしたり、玩具屋さんでプラモデルを見たり。そのっちがサンチョのぬいぐるみを見付けて釘付けになったり、銀が弟さんへのお土産をどうするか悩んだり。私達も私達で勇者部の皆へのお土産を悩んだ。

 

 歩き通しで小腹が空いたらまたフードコートで適当に買って、そのっちがまたおねだりしたり。久しぶりにゲームセンターにも寄ったりして……本当に何でもあるわよね、イネス。行かなかったけどカラオケもあったし、何故か銭湯もあったし。

 

 ゲームセンターでは銃の形をしたコントローラーを使うシューティングゲームをした。楓君と2人で協力して、最初の挑戦で完全制覇したし。そのっちはクレーンゲームで目当ての商品を1度で手に入れていたわね。

 

 銀は踊りを踊るゲームをしていた。楓君も挑戦していたけど、意外にも彼は踊るのは苦手だったようで直ぐにゲームオーバーになっていた。そんな彼がやったゲームはブロックが落ちてくるパズルゲームだった。最高最速難易度をあっさりクリアするのは正直かなりびっくりした。

 

 「……楽しかったねぇ」

 

 「……うん」

 

 楽しかった。またこんな日が来るなんて思わなかった。イネスで過ごす間にも小学生の頃の記憶が甦って、今と昔の差違が何だか面白くて。買い物も、買い食いも、散策も、ゲームも……全部、全部楽しくて。時間が過ぎるのは早くて……別れ際は、やっぱり寂しくて。

 

 ……何となく、彼の右肩にもたれ掛かる。左手を、彼の右手に重ねる。あの日の戦いで失われた右手。握ろうとして握れなかった絶望は、今でもよく思い出せる。

 

 「美森ちゃん」

 

 「あ……ふふ」

 

 不意に名前を呼ばれて、楓君が重ねていた手を反して……その手を繋いでくれた。その手に、私は指を絡める。所謂、恋人繋ぎ。久々に会う2人に遠慮していたけど……手を繋いでるのが、羨ましかった。だから……今、こうして繋いでくれるのが嬉しい。

 

 「讃州市までまだ少しかかるし……寝ててもいいんだよ?」

 

 「……それじゃあ、お言葉に甘えて……このままでも、いい?」

 

 「勿論だよ」

 

 「ありがとう、楓君」

 

 事実疲れていたことだし、と楓君の言葉に甘えて、こうしてもたれ掛かったまま、手を繋いだまま眠ろうとして……その前に携帯を取り出して、その裏側を見る。そこにあるのは……ゲームセンターで最後に撮ったプリクラ。

 

 大橋での戦いの後、全員が失くしてしまっていた写真。それをもう1度撮りたかった。誰も反対なんてしなくて、むしろ喜んで撮ったモノ。

 

 私の首に左手を回して右手でピースして元気に笑ってる銀。少し重そうにしつつも同じように左手でピースして小さく微笑んでる私。そんな私達の前で頬をくっつけてアップで映る笑顔のそのっちと、朗らかに笑ってる楓君。あの日と同じ構図。違うのは……私達が成長していること。

 

 (いつか……勇者部の皆とも)

 

 引っ越してくる2人が入って8人になる勇者部。その8人で、こうした写真を撮りたい。その時には楓君と友奈ちゃんと隣合っていたい。3人でまた写真を撮るのもいい。そんな風に未来を想像して……私は目を閉じた。

 

 

 

 数日後、勇者部でそのっちと銀の引っ越しの作業の手伝いをした。作業が終わった後は引っ越し祝いとして楓君達の家で8人全員でささやかながらパーティーをした。料理は風先輩が作って、私もぼた餅を持っていって、皆美味しいって言ってくれて。遂に夏凜ちゃんもぼた餅を食べてくれた。この際には“まあ、美味しいんじゃない?”なんて2個目を食べながら言ってくれた。

 

 楓君が居る。友奈ちゃんが居る。そのっちが居る。銀が居る。樹ちゃんが居て、風先輩が居て、夏凜ちゃんが居て……私が居る。そんな空間が、過ごす時間が、笑い合える関係が、その何もかもが嬉しくて、楽しくて、大切で。

 

 神樹様。私は……私達は間違いなく……幸福(しあわせ)です。




という訳で、番外編とは名ばかりの次章の導入みたいなお話でした。2と題打っては居ますが、DEifとは違って別にシリーズ化してる訳じゃありません。本当に山無し谷無しなほのぼの話は総じてこのタイトルで行きます。

次回、もう1つ番外編を書く予定です。つかぶっちゃけDEif書きます。こっちも進めます。勇者は揃っている。後は、分かるな?←

勇者の章ですが、かなり原作と流れとか変わります。というか原作通りに進められる訳がない(神婚とか楓とか)。

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)

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