咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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大変お待たせしました(´ω`)

一時日刊ランキングの9位に入ってました。皆様、誠にありがとうございます。

遅れた理由はfgoです。19章でずっと試行錯誤してたらいつの間にか6日も空いてました……申し訳ありません。あ、ちゃんと空想樹は切除しました。

ゆゆゆいもブライダルイベ来ましたね。ウェディングドレスのたかしーとぐんちゃんホント尊い……リリフレもEX激辛来ましたが、クリア出来ません(匙投げ

前話にてアンケートにご協力、誠にありがとうございます。本編花結いとゆゆゆい番外編決定! 死ぬ! でも書く! 1つだけ三桁投票なのは笑いました。

現時点で感想数555件。ファイズと聞いて思い出すのは仮面ライダー? それとも呆れる程有効な戦術?

さて、今回もほのぼのです。安心して見ていってください。


咲き誇る花達に幸福を ー 2 ー

 『夏凜さん、おはようございます。よく眠れましたか? しっかりと朝食は食べましたか? 学校に行く準備は万端ですか? 体調はどうですか? それでは今日も学校、部活と頑張ってください』

 

 私の朝は、そんなメールの着信から始まるようになった。あの最後の戦いで大赦の勇者を辞め、勇者部として戦うと楓さんと友奈に宣言した私。それでも、実際には簡単に辞められるハズもない。未だに私は大赦に所属したままで……ただ、そのままでも普通の学生として生活出来るようになった。

 

 その他の変化として、私への連絡の担当者が変わった。今までは無機質な、硬い定型文しか送ってこないような相手だったのが、今ではこんな文面を毎日送ってくる。そこまで大きな変化ではないけれど、良い変化……とは、言えるかしらね。

 

 『おはようございます。よく眠れましたし、朝食も食べました。学校の準備も昨日の内に終わらせましたし、体調も問題ないです。では』

 

 そこまで書いて、指が止まる。毎日来る担当者からのメール、それに毎日返す私。いつも最後の一言を書くのを、少し躊躇う。結局は書くのだけど。

 

 『行ってきます』

 

 『行ってらっしゃいませ』

 

 不思議なモノだと思う。一人暮らしをしてる私。私以外に誰もいないし、誰の声も聞こえない。なのに、こうして行ってきます、行ってらっしゃいと毎日交わす相手が居る。それが、何とも不思議な気持ちになる。

 

 ただ、嫌じゃない。大赦自体に思うところはあるけど、このメールの相手はそうでもない。送って直ぐに返ってきた一言だけの文面を見ながら、私は自分でも気付かない内に口元がつり上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 「最近さ、妙に視線を感じるのよ。学校や部活中に、なんだけどね」

 

 その日の部活中、風がそう呟いた。

 

 「視線? 姉さんにかい?」

 

 「そうそう。いやー女子力高いのも困りもんよねぇ。それとも溢れ出るカリスマっての? 参っちゃうわー」

 

 「風先輩面白いですもんねー」

 

 「日頃の行いですかねー」

 

 「友奈、銀。それどういう意味? 怒んないから言ってみ?」

 

 「……霊的な何かを感じてるんじゃ……タロットで占おうか?」

 

 「あなたの後ろに居るの~」

 

 「やめてくんない? いや、怖いって訳じゃないんだけどさ、やめてくんない?」

 

 「楓君や友奈ちゃんならともかく、風先輩だから気のせいですよ」

 

 「東郷は酷くない!? あによー皆でよってたかってー!」

 

 楓さんが首を傾げながらそう問うと、風は照れたように頭を掻きながら笑う。すると友奈と銀が笑いながら悪気なさそうに言い、風も笑いながら、しかしちょっと口元をひくひくとさせながら2人ににじり寄り、2人が逃げるように距離を取る。

 

 そんな風に樹がタロットを手に深刻そうな顔で呟き、園子が乗っかって両手を前にだしてだらんとさせ、怪しく笑いながらそう言う。それを聞いた風はビクッと肩を跳ねさせ、そんな風に東郷がとどめを刺すかのようにさらりと言い切った。

 

 友奈達の(多分)悪意のない精神攻撃に晒された風は涙目になりつつ楓さんを盾にするように後ろに回り込み、彼の両肩を掴む。楓さんは苦笑いを浮かべ、大人しく盾になるみたいね。

 

 「まあ、また姉さんの部活中の姿に惚れた男子の誰かかもしれないねぇ」

 

 「……かもしれないですね。前科があるらしいですし」

 

 「楓と夏凜だけが味方よ! 大好き! ……夏凜の“前科”って言い方が気になるけどね」

 

 「姉さん、痛いし苦しいよ」

 

 「ええい抱き着くな!」

 

 振り返ってよしよしと慰めるように風の頭を撫でながら言う楓さんの意見に私も腕を組みながら乗っかり、感動したように風は私達の首に手を回して抱き寄せてきた。楓さんは苦笑いのまま首に回る風の手を掴んで苦しいと言い、私も振り払うことこそないけどそう叫ぶ。こいつ力強いのよ。

 

 そんな私達を見て、他の5人はくすくすと楽しげに笑っていた。私達3人も、なんだか可笑しくなってくすくす笑う。そんな中、私は内心安堵していた。

 

 

 

 (私だっていうのは……気付いてないみたいね)

 

 

 

 風が感じていた視線の主……それは私。と言うのも、別に監視だとか惚れて見ていただとかそういう事ではない。言わば、観察。風だけではなく、勇者部の部員達が改めてどういう人間か……私は、それを確かめる為に見ていたのだ。

 

 例えば風。勇者部部長の風は讃州中学3年の最年長。性格はよく言えば豪胆、悪く言えば大雑把。軽いノリでちゃらんぽらんかと思えばその実結構な苦労人。面倒見が良いのは、その苦労から培われたモノって訳だ。

 

 面倒見の良さも、苦労人っぷりも今なら私もよく理解出来る。あの時の大赦と神樹様への怒りも、家族と私達勇者を大事に思うが故。その気持ちは……結構嬉しい。

 

 (後、女子力女子力うるさい。ついでに大食い。無駄に力強い。料理は美味し……今の無し、今の無し)

 

 次は友奈。最初こそその明るさと強引なまでに近付いてくるのが鬱陶しいとも勇者としての自覚が足りないとも思ったけれど……勇者部を自分の居場所と思える今ではその明るさと強引さに感謝してる。

 

 根性もあるし、勇者部の依頼の猫の飼い主探しでは最後まで諦めずに半日以上歩き続けて捌ききった。諦めの悪さや最悪の状況でも前を向く姿勢は、見習うべきかしらね。

 

 (後、最近は楓さんの近くによく居る。彼の側に居ると笑顔がキラキラしてるように見えるから不思議よね……まあ、その方がらしいけど)

 

 次は東郷。見た目は大和撫子で冷静沈着……かと思えば勇者部メンバーで恐らく最も何をするのかわからない爆弾。そのクセ多才かつ優秀なので対応や扱いに困る。

 

 しかもこいつ、私が敬意を持っている先代勇者の1人であることが発覚。いや、敬意を抱いてない訳ではないのだけど、口にするのは躊躇われる。自他共に認める程の国防魂を持っている。後、楓さんと友奈を見る目がたまに危ない。

 

 (こないだも“3人でも……私は別に側し……”とか言ってたし。いや、意味はよくわからないけど)

 

 次は樹。小動物みたいな見た目で気が弱いかと思えばこれが芯が強い子で家族思い。その思いや心の強さは、戦いを経て近くで見てきた。多分、この子が1番精神的に強い。それは認めざるを得ないのよね。

 

 よくタロット占いをしているところを見かけるけど、何かと死神を引いてる。ツッコミ気質。東郷からは“逸材”と言われ、何かと気にかけられている。

 

 (ただ、東郷みたいな国防国防言うような子にはならないで欲しいわね……東郷みたいなのがもう1人とか疲れるわ)

 

 最後は楓さん。勇者部の黒一点で恐らく、精神年齢は勇者部でも1番高い。基本的に朗らかに笑ってる。もしくは苦笑いしてる。ともすればお爺ちゃんみたいとも言える言動と雰囲気は安心感を覚える。私の中では怒らせると1番怖い。

 

 彼は友奈と同じように私が勇者部を居場所と思えるようになった要因。そして、1番私のイメージに近い先代勇者の1人。近くには大抵勇者部の誰かが居る。それは彼が勇者部の精神的な支柱でもあるから、かしらね。

 

 (意外にも風に匹敵、或いは凌駕する大食いなのよね……そんで園子、東郷のストッパー役。保育園や児童館の子供達からはお爺ちゃんって呼ばれてるのよね……見た目は男版風みたいなのに)

 

 「……ま、こんなもんか。園子と銀に関しては、まだよく分からない部分が多いし」

 

 今まで考えていたことが書かれたメモ帳をパタンと閉じる。あれから自宅へと帰ってきた私は、今まで勇者部部員達のことを思い返していた。それは大赦に報告する為……ではなく、来年に備えてのこと。

 

 来年になれば……風は卒業する。そうなった時、別のまとめ役……新しい部長が必要になる。私の中では次の部長は楓さんか……私が皆を引っ張っていくつもりで居る。このメモ帳に部員のことが書かれているのは、その為に改めて部員のことを把握する為。

 

 勇者部に来る依頼を面倒に思うこともなく、むしろ嬉々としてやってる部員達。無茶することも多くて、いつの間にか思い悩むこともあって、甘ちゃんばっかりで……なんて、最初の頃は思ってたのに。

 

 「今じゃ私も、その甘ちゃん達の仲間入りか……人生何があるかわかんないわー」

 

 思わずそう呟く。訓練ばかりしてた私が、勇者になることが全てだった私が、今では勇者部での時間が大切で……勇者部の奴らのことを、大切な仲間だなんて思ってる。

 

 にぼしを1つ齧る。思い浮かぶのは、友奈と楓さんの笑顔。私に勇者部という居場所をくれた2人。最初は私と距離を取ってたクセに、今じゃよく絡んでくる風。姉と兄が大好きな樹に、友奈と楓さん大好きな東郷。1番よくわからない園子に、どこか私と似たような感じがする銀。

 

 「……明日は、どんなことをするのかしらね」

 

 皆の顔を思い浮かべ、少しだけ明日のことを期待して……視界に入った、棚に飾ってある赤い折り鶴を見て、これをくれた児童館の女の子のことも思い出して……また、笑った。

 

 因みに、私が皆に視線を向けていたのは風以外の全員が気付いていたみたいで……翌日の部室で、なんで最近皆のことを見ていたのかと質問責めにあった。その際、園子の話術で部長のこととか皆を大切に思ってるとかも言ってしまい……その日は物凄く生暖かい優しい目で見られた。尚、楓さんは変わらない朗らかな笑顔で、友奈は私の言葉を聞いて盛大に嬉し泣きしていた。

 

 

 

 『三好君、最近機嫌が良いわね。勇者の子の1人の担当になったからかしら?』

 

 『ああ、安芸さん。そうですね、あの子とメールとは言え少しでも会話出来るのは嬉しいですから……いつか、面と向かって話したいものです』

 

 『大丈夫、人は変われるわ。考え方も、関係も……ね』

 

 『そうであることを願いますよ』

 

 

 

 

 

 

 「東郷さーん! 今度のお休み、予定あるかな?」

 

 「どうしたの? 友奈ちゃん。勿論空いてるけど」

 

 「良かったー。あのね、服を買いに行くんだけど……もし良かったら一緒に行ってくれないかな?」

 

 「えっ、あの、えっと」

 

 夏凜との出来事から数日後のとある日、部室にて友奈が美森にそう言った時のこと。その場には友奈と美森、そして園子しかおらず、他の面子は外に依頼に出ていた。

 

 服、との言葉が出たことで美森がどもる。その脳裏に浮かぶのは、2年前の出来事。銀、自分、そして楓が園子の家で色々と着せられた時のこと。チラリと隣に居る園子を見てみれば、案の定彼女は目を爛々と光らせていた。

 

 

 

 「そういう事なら、私にお任せあれ~」

 

 

 

 「いらっしゃ~い! さあ、あがってあがって~」

 

 「お邪魔しまーす!」

 

 次の休日、友奈と美森は大橋にある園子の実家にやってきていた。園子曰く、実家なら衣装が沢山あるので色々と試着し、気に入った物があれば実際に店に買いにいこうということらしい。友奈がそんな園子にお願いしますと元気に言っている後ろで、美森は気になることがあった。

 

 「それはいいんだけど……どうして楓君達もここに?」

 

 「のこちゃんにお呼ばれされてねぇ。久々に来たねぇ、のこちゃんの家」

 

 「こんな女子力イベントに女子力王(アタシ)を呼ばないとは!」

 

 「私はちょっと興味が」

 

 「まあ……1人だけいかないってのも気分悪いし」

 

 「丁度あたしも実家に帰ってきててさ。なんか面白そうだったし、来ちゃった」

 

 美森の視線の先には、昨日話の場には居なかった私服姿の5人。それぞれ理由を述べるが、皆休日ということで特にやることもなかったのでこうしてやってきたのだ。

 

 「ところで園子。その、お前の両親は……」

 

 「2人とも居ないし、ちゃんと連絡してあるから大丈夫。それに……ずっとこのままじゃ、ダメだからね~」

 

 家に入る前、園子と銀がこっそりとそんな会話をしていた。そんなこんなで家の中に入り、衣装部屋へと向かう8人。部屋の前に来た際に2年前の悪夢……ファッションショーと女装が脳裏に浮かんだ楓と銀の足が止まるものの、他のメンバーに背中を押されて無慈悲にも入室する。

 

 「それじゃ、友奈に似合う服選んだら優勝ってことで!」

 

 「えっ!? あっ、負けないわよ! でも優勝ってなんのこと!?」

 

 「すっ、凄い量ですね……選ぶだけで大変そう……」

 

 「今度はあたしじゃなくて友奈、今度はあたしじゃなくて友奈……よし、選ぼう」

 

 部屋に入り、その服の多さに絶句すること数秒、直ぐ様行動に移したのは風。テンション高めに友奈に似合う服とやらを探しに行く彼女に少し遅れ、風の言にツッコミを入れつつ夏凜も探しに動く。

 

 樹は服の多さに慌てて目を回しつつも服を手にしては見比べ、銀は今回は自分ではないと己に言い聞かせた後に友奈の姿を見て動き出す。そんな4人の姿を見ながら、他の4人は座布団に座って美森が持ってきたぼた餅を食べていた。因みに、友奈だけ座布団が2枚であり、側に“本日の主役”と書かれた小さな立て札が置いてある。

 

 「念のために作ってきておいて良かったわ、楓君用の一口ぼた餅……はい、どうぞ」

 

 「ありがとねぇ、美森ちゃん……うん、やっぱり美森ちゃんのぼた餅は美味しいねぇ」

 

 「美味しいよねー。毎日食べたいくらい!」

 

 「ふふっ、そう言ってくれると嬉しいわ。ところで、なんでそのっちは女中さんの格好を……?」

 

 「気分~♪ どう? カエっち。似合う?」

 

 「似合うよのこちゃん。可愛いねぇ」

 

 「えへへ~♪」

 

 和服にエプロン姿の園子を楓が誉めて本人が喜んだ後、園子は友奈にどういう服が良いのかと希望を聞く。しかし、当の本人は自分で選んだことは殆どなく、母親に選んでもらった物を今まで着ていたと言う。そして母親からつい先日、そろそろ自分で選んで買うようにと言われたのだとか。

 

 今着ているのは“かるしうむ”という文字の下に何かの魚の絵が描かれただけのシンプルなモノ。数少ない自分で選んだモノだそうだが、母親には呆れられたらしい。先日美森に同行を頼んだのも、彼女に選んで貰いつつ勉強しようと思っていたからだそうな。つまり、希望を聞かれてもよくわからないので答えようがない。

 

 「友奈ー、服合わせるからこっちおいで」

 

 「わー♪」

 

 「行ってらっしゃーい」

 

 「もう、皆で友奈ちゃんをオモチャにして……」

 

 「友奈は人気者だねぇ。今からどんな格好をしてくるのか楽しみだよ」

 

 「本当なら私だけで……いえ、楓君も誘って2人で楽しむのも……」

 

 「本音が漏れてるよわっしー」

 

 少しして、風がやってきて友奈を連れていった。今から皆に着せ替え人形にされるであろう友奈を思ってか、美森が少しムスッとする。その隣で、楓は皆が友奈に似合う服を探している様を見ながら朗らかに笑いつつ言った。

 

 彼の言葉を聞いてか聞かずか、美森はボソッとそう呟く。その脳裏には己を間に楓、友奈と並んで服屋を巡る姿が浮かんでいる。その呟きに、園子のぽやぽやとした笑みと共にツッコミが入る。

 

 「でも懐かしいわね、そのっちの家での衣装合わせ。銀と楓君を色々着飾って……皆で国防仮面の格好もして……」

 

 「自分は結構恥ずかしい記憶だけどねぇ……特に女装。国防仮面も中々恥ずかしかったけど……ところで美森ちゃん。そのカメラはいったいどこから……」

 

 「ミノさんもカエっちも可愛かったんよ~♪ その時の写真のデータ、パソコンにだーいじに保管してあるんだ~♪」

 

 「……銀ちゃんのだけだよね? 自分のは無いよね?」

 

 「……」

 

 「何か言ってくれないかねぇ……」

 

 美森はムスッとした顔を緩ませ、どこからともなくカメラを取り出して友奈の写真を取る準備をする。そうしつつ思い出を語る彼女に、楓も思い返しながら恥ずかしそうに頬を掻く。女装もコスプレも、彼には少々恥ずかしいのだ。

 

 楓が美森が取り出したカメラに疑問を溢した時、園子もまた思い出の感想を呟く。その際楓にとって聞き逃せない言葉が出てきたので追及するが、園子はふいっと顔を逸らす。そんな彼女に楓は苦笑いするものの、彼女が答えることはなかった。

 

 

 

 という訳で始まった友奈のファッションショー。衣装の中にあったから着てみたという白いスーツに大きな蝶ネクタイ姿の風が司会者のように開始の宣言をした後、衣装部屋の襖から出てきたのは樹プレゼン、ゆったりとした服装の森ガール風の友奈。

 

 「私の好みで申し訳ないんですけど……」

 

 「ま、まあまあね。悪くないんじゃない?」

 

 「うん、ゆったりした服装の友奈は新鮮だねぇ。可愛いねぇ」

 

 「そ、そうかな……えへへ」

 

 「わっしーも残像が出るくらい喜んでるよ~」

 

 「ああ、あの日の悪夢が甦るゾ……」

 

 「銀は何があったのよ……」

 

 友奈の格好におおーっという称賛の声が出る中で、プレゼンした樹が照れたように笑う。夏凜、楓が感想を述べると友奈も頭を掻きながら嬉しそうに笑い、園子が友奈の周囲を残像を生みながら動きつつ写真を撮る美森を微笑ましげに見ながらそう言い、銀は過去のファッションショーを思い出してげんなりとする。その姿に、風が苦笑いしていた。

 

 次のプレゼンは風。普段は元気一杯で活発な友奈だが、今は髪を下ろして花柄のカーディガンにフリルやリボンをあしらったワンピースというガーリッシュスタイルで大人しい雰囲気を醸し出している。案の定、美森は残像を出しながらパシャパシャと写真を撮っている。

 

 「大分雰囲気が変わるねぇ……流石姉さん。髪を下ろした友奈も可愛いねぇ」

 

 「そ、そう? 楓くんはどっちがいいと思う?」

 

 「うん? そうだねぇ……今のも良いけど、いつもの髪型の方が友奈らしいとは思うよ」

 

 「そっか……にへっ」

 

 「ブラボーなんだけど、犬吠埼家は誰主体で服を選んでるの?」

 

 「ええっと、私がいいなって思ったのはお姉ちゃんが既に買ってて……お兄ちゃんのは2人で選んでます。じゃないとお兄ちゃん、いつも1つか2つくらい上のサイズの服を着てますし」

 

 「何年樹と楓の姉をしてると思ってんのよ。因みに、アタシのは残った予算で適当に買ってるわ。可愛い弟と妹を着飾ってあげたいしね」

 

 (上のサイズ……だから袖が手の甲くらいまであるのか……)

 

 楓と友奈がぽやぽやとした雰囲気を作り出している中、園子が疑問に思ったのか樹に問うと苦笑しつつあっさり話す。その後、風も胸を張って自信満々に続けた。基本的に服に無頓着な楓は自分で服を買いに行くことが殆どない為、姉妹が色々と選んでいたらしい。

 

 尚、今の楓の服装は青いデニムに1つ上のサイズの白い長袖Tシャツというシンプルなモノであり、銀は疑問が解けたのかうんうんと頷いていた。

 

 「わ、私のはどうかしら?」

 

 次のプレゼンは夏凜。“かるしうむだぶる”と書かれた文字の下に何かの魚が2尾書かれた絵のTシャツにジャケット、ショートパンツといったカジュアル友奈。シャツの絵が問題なのか、それとも組み合わせが問題なのか、風は“お、おう”としか答えず、写真を撮る美森も先と比べて明らかに動きが少なかった。

 

 「カジュアル、っていうのかな? 動きやすそうで自分はいいと思うけどねぇ」

 

 「なんだかにぼっしーがいつも着てる服って感じかな~」

 

 「あっ、じゃあ夏凜ちゃんとお揃いだ! わーい♪」

 

 「え!? あ、そ、そうね……」

 

 「……ペアルック……? 友奈ちゃんと……?」

 

 「須美、なんか黒いのが出てる出てる」

 

 反応が微妙な数人に対し、服装の良し悪しがわからない楓はそうでもないらしく首を傾げながら不思議そうに呟く。その横で園子が感想を言うと、友奈は嬉しそうに夏凜に抱き付いた。当の本人は満更でも無さそうに顔を赤くし……それを見た美森が顔は笑顔で、その背後に何か真っ黒なモノが出てくる。そんな彼女を、銀が宥めていた。

 

 次は銀。彼女が選んだのは桃色のドレス。沢山の花があしらわれた帽子も被せ、どこにあったのか白い日傘を持った貴婦人友奈が現れた。これまた新鮮な友奈の姿に、美森の写真を撮る指も体も高速で動く。

 

 「お嬢様ゆーゆだ~♪」

 

 「ドレスも似合うねぇ……うん? どうしたんだい友奈」

 

 「う、動きにくくて……後、汚すのが怖いです」

 

 「あー、そこまで意識してなかった。悪い、友奈」

 

 が、友奈本人としては似合うか否かより動きにくさが目立ったらしい。また、他のと比べても明らかに高そうなドレスを汚すことの恐怖もあるらしく、銀には悪いと思いつつも早く脱ぎたいらしい。そこまで意識していなかったと、銀は苦笑いしつつ謝った。

 

 遂に真打ち登場! とニワトリの着ぐるみ姿……本人曰く、勝負服で現れた園子。彼女曰く、コンセプトは“長月”とのこと。

 

 「長月……9月? 季節じゃなくて9月限定なの?」

 

 「まあとりあえず見てみましょうか……って友奈が出てこないんだけど」

 

 「ゆーゆ? どうしたの~?」

 

 「園ちゃん……あの、楓くんが居るのにこの格好は流石に……」

 

 「大丈夫大丈夫、可愛いよゆーゆ。という訳でどーん♪」

 

 「わ、わわわっ!?」

 

 園子のコンセプトを聞いた美森が疑問符を浮かべるが、風がまあとりあえず見てみようと促し……肝心の着替えた友奈が襖から出てこないことに首を傾げる。他のメンバーも疑問に思いつつ、園子が中へと入るとそこに居たのは着替えたはいいものの恥ずかしそうにしている友奈。

 

 襖越しに聞こえる声曰く、楓が居ては恥ずかしいとのこと。いったいどんな服を着せたんだ……と2人を除く全員が思った後、園子が友奈の背中を押して部屋から出す。そうして出てきたのは……バニーガール姿の友奈であった。

 

 「バニーゆーゆで~す♪ バニーさん、いいよね~」

 

 「確かに可愛いけど……ちょっと刺激的だねぇ」

 

 「全く動じてないように見えるんですが楓さんや」

 

 「あううー……」

 

 「ぷはーっ!!」

 

 「東郷おおおおっ!?」

 

 「鼻血ってそんな風に出ましたっけ!?」

 

 「「出るよ(ゾ)?」」

 

 「なんで楓さんと銀は普通にしてるの!?」

 

 のほほんとしている園子とこれまたのほほんと感想を述べる楓、そんな彼に飽きれ顔でツッコむ銀。異性の、というか楓の前にバニーガール姿で出るのは流石の友奈も恥ずかしいのか、再び襖に隠れる。

 

 そんな彼女の姿に、美森が写真を撮りつつ上を向いて鼻血を噴水の如く噴き出していた。それを見た風、樹、夏凜が驚きと心配と疑問の声を上げるが、以前にも見たことがある楓、銀は肯定。そんな2人に、夏凜のツッコミが入るのだった。

 

 この後も園子のターンは続いた。B系友奈、ふわもこ姫系と続き、メンバーも可愛い可愛いと絶賛。美森の残像と使いきったフィルムがどんどん増えていく。

 

 「着ぐるみ~♪」

 

 「着ぐるみ!?」

 

 「でも似合ってます! 後、なんでお兄ちゃんまで着ぐるみ!?」

 

 「何故か自分の分まで持ってきてねぇ。折角だからって」

 

 「園子はいつの間にニワトリから赤ずきんに?」

 

 最後に、と出てきたのは猫、恐らくサンチョの着ぐるみを着た顔だけ出ている友奈だった。トレードマークの桜の花の髪飾りも猫の顔になっていて、恐ろしく似合っている。尚、すぐ近くで“かわい”と己から吹き出た鼻血でダイイングメッセージを残した美森が横たわっている。

 

 感想を述べた後、樹が園子の横に居る、何故か顔だけ出ている狼の着ぐるみを着てお茶を飲んでいる楓を指差す。これまた友奈同様、恐ろしく似合っていた。その横に居る園子もいつの間にかニワトリの着ぐるみから赤ずきんの格好へと着替えており、それを見た銀が不思議そうにしていた。

 

 その後も優勝者が決まることはなく、日が暮れるまで友奈は楓、美森を除いた5人の着せ替え人形となっていた。尚、最終的に優勝者は友奈の好みの服を選んだ美森となった。因みに、何故最初から選ばなかったのかと風に聞かれた美森は……。

 

 「楽しんでる所に水を差すのも野暮でしょ? ……まあそれは建前で、最後に美味しいとこだけ持っていければいいかなって。色んな格好の友奈ちゃんも見れたし♪」

 

 とハッキリと言い切った。にっこりと微笑む美森はいっそ清々しかったとは楓、友奈、園子を除くメンバーの総意である。

 

 

 

 

 

 

 「結局、楓君は選ばなかったわね」

 

 「服の良し悪しは分からなくてねぇ……」

 

 「楓くんにも選んで欲しかったなー。もし選ぶとしたらどんな服を選んでたの?」

 

 「そうだねぇ……自分が着てるような大きめのゆったりした服かな」

 

 「それはそれで見てみたかったかも~」

 

 大橋から讃州市へと帰る電車の中で、美森、楓、友奈、園子の4人はそんな会話をしていた。銀は大橋の実家に戻り、風、樹、夏凜の3人は服を選び疲れたのか座席に風を中心に樹と夏凜が左右に座り、その肩に寄り添うようにして眠っている。因みに、4人は右から美森、友奈、楓、園子の順番で座っている。

 

 ふと、友奈は美森が膝の上に置いている紙袋から覗いている、ぼた餅が入っていた重箱とは別の何か……白い袋が目についた。

 

 「東郷さん。それなーに? 来る時はもってなかったと思うけど」

 

 「これはね」

 

 

 

 『……ねえそのっち。この服、譲ってもらえないかしら?』

 

 『いいよ~♪ その服はわっしーが1番良く似合うと思うしね~』

 

 『ありがとう、そのっち』

 

 

 

 「思い出の服、かな」

 

 「思い出の服? どんなの?」

 

 「今は内緒。いつか見せてあげるわね」

 

 「楽しみにしてるね!」

 

 (思い出の服ってもしかして……アレかい?)

 

 (うん、アレ。サイズは今のわっしーに合わせてあるんだ~)

 

 大切そうにその紙袋を抱き抱える美森。その顔に浮かぶ優しい笑顔を見て、友奈は楽しみだと同じように笑った。その服の正体に気付いた楓は園子に確認を取り、答えがあっていたことでこちらも微笑ましげに笑う2人を見ていた。

 

 そんな、平和な1日の出来事。 




原作との相違点

・夏凜のメールを送る担当が変更

・夏凜の家に園子と友奈が不法侵入しない

・友奈のファッションショーに銀参加

・バニーガールで恥ずかしがる友奈

・赤ずきんの格好をする園子



という訳で、またまた勇者部所属ぷにっと時空のお話でした。詳しい友奈の格好は自分で買って見てください。私の語彙力ではこの表現が限界でした……個人的にガーリッシュ友奈が好きです←

次回もまたほのぼの予定です。その後は本編か、それとも番外編か……悩みますな。いい加減勇者の章入れとも思われてそうですが。

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