ようやくマンガのわすゆ、のわゆ、小説わすゆが揃いました。参考資料が増えたぜ。
今さらながら、本作は原作を沿ってはいますが内容はかなり捏造及びマンガと小説とアニメごちゃ混ぜとなっています。ご了承下さい。
そしてUAが2000間近。ありがとうございます! 今後ともどうか本作にお付き合いくださいませ
祝勝会から1週間程経った頃、自分達4人の合同訓練が始まった。場所は大赦が用意した木造の道場のような所で、放課後と休日の時間を利用してそれぞれの武器を使った訓練を行う。須美ちゃんは弓の命中精度を上げる為にひたすら止まって動いて矢を放ち、のこちゃんも槍を振るい、銀ちゃんは自分と組手をしたり双斧を模した大きな2本の棒を振り回したり。自分もサンドバッグ相手に殴る蹴るを繰り返していた。そんな基礎的な訓練が終われば、4人で体操着に着替えてアスレチックを利用した体幹トレーニング。同じようなトレーニングを積んでいた自分にはそう難しくないモノだったが、他の3人はそうでもなかったらしく……。
「い、よ、おわっ!?」
「よいしょっと……しっかり捕まらないと危ないからねぇ」
上から垂らされた紐を使って登っていく
「あ、足が引っかか……っ」
「須美ちゃん落ち着いて。暴れると余計に出られなくなるからねぇ」
斜面ネット登りというネットの上を進んでいくモノで見事にネットの穴に足を取られて動けなくなった須美ちゃんを救出したり。
「お~高~い……アマっち~助けて~」
「猫か何かかい? じっとしていなよ? 今助けに行くからねぇ」
垂直に立つ梯子のような形をした
そんな日常を繰り返していた時、こんな事があった。それは相変わらず銀ちゃんが遅刻してきた日の訓練が終わって帰る時間となった時、銀ちゃんが一足早く帰宅して自分達は道場の縁側に腰掛けて休憩している時のこと。
「銀ってよく遅刻するし、訓練が終わると直ぐに帰るわよね」
「ん~そうだね~。何か理由があるのかもね~」
「自分が転校してきた時も遅刻してたねぇ。いやぁ、まさか転校初日にあんなユニークな自己紹介されるとは思わなかったなぁ」
その時のことを思い出し、つい笑ってしまう。とは言えそれが切欠で彼女とは良い友人関係を築けているし、まさか同じお役目の仲間として過ごすことになろうとは……何とも不思議な縁もあったものだと思う。
「理由があるにしてもこうも遅刻が多いのは気になるわね……そそくさと帰るのもそうだし。何かあるのなら、私達でどうにか出来ないかしら……という訳で明日の朝から銀を監視してみようかと思うのだけれど、どう?」
「それはストーカーをしますっていう犯罪表明か何かかい?」
いつのまにやら自分の膝の上に頭を乗せて寝入っているのこちゃんの頭を撫でつつ、須美ちゃんの言動にツッコミを入れる。おかしいなぁ、須美ちゃんってこんな子だったかなぁ。それとも真面目な子って皆こんな感じなのかねぇ。
「で、本当にやったんだ?」
「やられた。いやー、まさか朝からずっと見られてるとは思わなかった」
「いつの間にか行くことになってたんだ~」
「新士君はどうして来なかったの?」
「前に言わなかったかい? 自分は朝からトレーニングしてるんだよ。後、昨日は予約していた本の発売日だったからねぇ……それに、女の子のプライベートを覗くのはちょっとねぇ。で、覗きの戦果はどうだったんだい?」
「覗きじゃないわ、観察よ!」
「一昨日は監視って言ってなかったかい? そして人はそれを覗きと呼ぶんだよ須美ちゃん」
あの日から2日経った放課後、4人で道場へと向かう途中で3人から話を聞いていた。昨日の朝、珍しくのこちゃんの姿が教室に無いのが気になっていたけれど、まさか須美ちゃんに付き合わされていたとは……いや、友達のことを知ろうとするその姿勢はいいんだよ。でもどうしてストーカー行為に走ってしまったのか。
で、結局銀ちゃんが遅刻する理由はどうだったのかと聞けば……銀ちゃんの家には生まれたばかりの弟が居たらしく、その弟の世話や家の手伝いもやっていたそうな。登校やおつかいとなれば道中でトラブルに巻き込まれていたという。所謂トラブル体質という奴なのだろう。で、そのトラブルを見て見ぬふりは出来ずに解決する為に奮闘し、結果として遅刻することが多いと。早めに帰るのも弟が心配だからだろう。因みに、昨日は遅刻はせずに3人仲良く登校してきていた。
(あの時お帰りと言っていた男の子とは別に姉弟が居たのか……それも赤ん坊の)
これはまた、彼女を生き残らせる理由が増えた。物心ついた時に姉の姿が無いなんて……そんな悲しい出来事を現実にする訳にはいかない。そしてそれを実現する為にも己を高め、彼女達との連携をより高度なモノにしなければ。
「まあ、銀ちゃんが良い子で働き者だってことはわかったよ。偉い偉い」
「私も~。ミノさん偉い偉い~」
「何だよ2人して……あっ、新士撫でるの上手いな……」
「アマっちはね~、ナデナデの天才なんだよ~♪」
「慣れてるからねぇ……ほら、須美ちゃんも一緒に。撫で、撫で」
「な、撫で、撫で……?」
「ほわ~……♪」
そんな風に決意を新たにしつつ、3人で銀ちゃんの頭をこれでもかと撫でていた。
時間が止まったのはそうして銀の頭を撫でていた時だった。2回目だったこともあり、4人は敵が来たのだと察し、直ぐ様スマホを取り出してアプリをタップ。勇者として変身し、大急ぎで大橋へと向かう。そう時間も掛からずにたどり着いた大橋に居たのは、やはりバーテックス。後にライブラ・バーテックスと呼称されることになるそれは、4人から見て左に巨大な分銅、右に小型の3つの分銅をぶら下げた、その名の通り天秤のような姿をしていた。
「あの姿は……天秤?」
「天秤が空に浮いてるね~」
「よし! まずはあたしが」
「はいストップ。まずは須美ちゃんに仕掛けてもらおうね」
「任せて。出来れば、この矢で終わって欲しいのだけれど……っ!」
新士は勇ましく突っ込もうとする銀の肩を掴んで押さえ、須美へと目配せをする。須美自身も初擊は自分が請け負うつもりだったので頷いて勇者としての力で3本精製した矢をつがえ、祈りを口にして放つ。放たれた矢は真っ直ぐにバーテックス目掛けて突き進み……途中で巨大な分銅に吸い寄せられ、深く突き刺さった。
それを見た新士は直ぐに右手をバーテックスに向けて突き出して4本の爪を射出。反動で腕が跳ね上がると同時に須美の矢よりも速い速度で射出された爪は、やはり同じように分銅に吸い寄せられ、深く突き刺さる。
「どう思う?」
「遠距離からの攻撃はあの巨大な分銅に吸収されるみたいね……矢は刺さってるから、何度も射れば壊せるかもしれないわ」
「速さも関係無いみたいだね~。このままなら、アマっちとわっしーに撃ってもらった方が安全かな~?」
「えっ!? あたしの出番無し!?」
「その大きな斧でも投げてみるかい? 回収が面倒そうだけどねぇ」
初擊の結果としては上々。むしろ反撃してこない現状からすれば、前回のバーテックスよりも楽に終わるとも思ってしまう。だが、やはり人類の敵がその程度で終わる筈もなかった。バーテックスが、その体を独楽のように高速で回転させ、4人目掛けて突撃してきた。
須美と新士がそれぞれ矢と爪を放って迎撃しようとするが、高速回転するバーテックスに弾かれる。2人は同時に舌を打ち、新士と園子、須美と銀にわかれて左右に跳び、突撃を回避する。
「流石にそう甘くはないか……」
「あれじゃ近付けないね~」
「くっそー、近付けたらぶった切ってやるのに!」
「っ! また来るわ!」
只でさえ巨大な敵が、その大質量の体を回転させながらぶつけに来る。当たれば勇者服の上からであろうとミンチになるだろう。それこそ小学生でも分かる結果にならない為に、4人は再度突撃してきたバーテックスを必死に避ける。幸いというべきか、一直線かつそう速い速度でもないので避けること自体は容易い。新士と須美は避けながらも矢と爪を放ち続けているが、吸い寄せられることこそ無いがやはり無駄に終わり悔しげに顔を歪める。
「さて、どうしたもんかねぇ……のこちゃん、何か手はないかい?」
「えっ? うーん……うーん……」
「くっ……回転さえ止まれば……」
「あーもう! あんな竜巻みたいな奴どうすればいいんだよー!!」
「っ! ミノさん、それだぁ!」
「はい?」
「ぴっかーんと閃いた!」
「行くよ銀ちゃん」
「おう!」
「1!」
「2の!」
「「3っ!!」」
腰を落として腕を下ろした姿勢で両手を組んでいる新士に向かって銀が走り、お互いに声を出しあってタイミングを計り、銀の右足が新士の手に乗った瞬間に思いっきり腕を上げて銀を上空へと向かって投げ、タイミング良く銀も飛び上がる。お互いにお互いを信じ、事前に少しでも連携訓練をしていたからこそできた芸当である。
「止ぉぉぉぉまぁぁぁぁれぇぇぇぇっ!!」
気合いを込めた叫びを上げ、手にした双斧の片方を回転するバーテックス……その中心に見えている頭部のような部分目掛けて投げ付ける。投げた斧の丸く空いた穴に牡丹の花の紋章が浮かび、回転。そこから炎を吹き出し、纏って回転しながら突き進んだ斧はバーテックスを頭から細い胴体の半ばまで切り裂いた。
園子が考えたのは、銀が溢した“竜巻”という言葉から、相手が回転するのだからその上から見た中心は台風の目のような無風空間、もしくは側面よりも防御が薄いのではないかということ。飛び込む役が銀になったのは、相手が突撃してくる前に攻撃でき、尚且つ最も威力が出るのが彼女だったからである。斧を投げたのは直接突っ込む前のワンクッション。その一撃で止まったところを追撃する……予定だったのだが。
「完全には、止まらないか!」
先程に比べれば、バーテックスの全体像が見えるようになった分遥かにマシになっている。だが、それでも遠心力で分銅が浮き上がるくらいには速度が出ていた。直接切り裂いたのなら止まったかもしれないが、投擲だけでは少しばかり威力が足りなかった。それを見た銀の口から悔しげな声が漏れる。
「大丈夫よ銀! 私達を……信じて!」
そんな須美の声が聞こえた瞬間、銀は見た。須美の前に現れた菊の紋章、それを彼女の放った矢が通った瞬間矢が巨大化し、分銅に当たって貫いた瞬間を。
「アマっち、やっちゃうよ~!」
「うん、やっちゃおうか、のこちゃん」
「「はぁぁぁぁっ!!」」
須美の矢で完全に回転が止まり、そこに畳み掛けるように槍と爪を突き出してバーテックスの両肩らしき部分を貫き、もぎ取った園子と新士の姿を。
「銀!」
「銀ちゃん!」
「ミノさ~ん!」
「あはっ! 最っ高だよ、マイフレンズ!!」
銀は笑顔を浮かべ、残った斧から炎が吹き出す。それを投げた斧とは違う場所に叩き込み、突き刺さっていた斧を回収し、再び炎を吹かせながらバーテックスの全身を切り刻む。
桜の花吹雪が巻き起こったのは、余すこと無くバーテックスを切り刻んだ銀が着地したのと同時だった。
「正直に言って驚いたわ。あなた達がここまで連携を取れるなんて……」
「「ふふーん♪」」
「もう、2人共……」
「皆で訓練、頑張りましたからねぇ」
バーテックスを撃退した翌日、勇者4人の担任であり、大赦側から4人のサポートとして派遣されていた安芸は放課後に生徒指導室に4人を呼び出し、先の戦いの戦闘データを見ながら驚愕の表情を浮かべてそう言った。そんな彼女に対し、銀と園子の2人はドヤァと誇らしげに胸を張り、須美と新士はそんな2人に苦笑い。
4人を見ながら、安芸は思考する。女3人に男1人、そんな構成の面子の4人だが、当初は性別による不和や人間性の問題が起きるのではと予想していたのだが、それを良い意味で覆してくれたのは嬉しい誤算だった。合同訓練に入ったのが敵との戦いの後ということで連携具合……正直に言えば、安芸は銀が鉄砲玉の如く突撃するか須美の対応が遅れるか、園子が予測できない動きをするかと心配していた。新士の心配はあまりしていない。強いて言うなら、5年生の頃から仲が良かった2人と違い、須美と反りが合わないかもしれなかったことくらいだろう。
だが、4人の仲は至って良好。連携の程度も2戦目であることを考えれば上々。怪我らしい怪我もない分、1戦目と比べれば遥かに良い。4人が無事であったことを内心喜びつつ、安芸は顔に出さずに真剣な表情で口を開く。
「とは言え、これで満足してはいけないわ。今の段階でこれなら、あなた達はもっと上に行けるハズ。そこで」
1枚の紙を差し出す安芸。4人が前のめりになって紙の内容を見ると、そこにあるのは強化合宿と大々的に書かれた4文字と、その簡単な備考。
「強化……」
「合宿……?」
「バーテックスとの戦いが本格的になってきた為、今後大赦はあなた達勇者を全面的にバックアップします。強化合宿はその一環ね。連携の強化、親交を深める、勇者の力をより使いこなす。やれることは全部やるわ。学校のこと、家庭のことを気にする必要もないから」
本来なら、もっと早くやるべきだったのだけれど……と安芸は内心舌を打つ。しかし彼女に決定権はない。決めるのは大赦の上に居る者達で、自分はあくまでもその決定に従って勇者達をサポートしていくだけ。後はせいぜい上に必要だと思ったことを申請する程度。この強化合宿とて、その申請をしてからしばらく経ってようやく通ったのだ。
安芸は目の前で合宿だーお泊まり会だーと喜んでいる元気娘2人とそれを嗜める2人を見る。どちらが誰かなんて言う必要もないだろう……それはさておき、その光景はどう見ても仲が良い小学生そのもの。しかも自分の教え子。そんな4人の双肩に世界の命運がのし掛かり、背中には四国全ての人間の命が背負わされている。
(本当に……どうして神樹様は私達大人に力を授けてくださらなかったの……)
4人から見えない位置で、子供達を想う先生の手が握り締められた。
(私達を信じて、か)
安芸から強化合宿の旨を告げられた日の帰り道、須美は1人昨日の戦いの際に自分が言った言葉を思い返していた。
5年生の頃は他の3人に殆ど関わることもなく、マトモにお役目を果たせるのかとか、どう他の勇者と関わればいいのかとか、そんな事を考えていた。それが今では自然とあんな言葉が出る程に3人のことを信頼している自分が居た。驚きはある。それ以上に、心地よさがあった。
バーテックスを攻略する作戦の際に銀が飛び込むことになった時、彼女が怪我をする可能性を考慮して須美は作戦に1度待ったを掛けていた。いや、飛び込む役が園子であれ新士であれ、彼女は同じように止めただろう。それでも決行したのは、やはり仲間の言葉があったからだ。
『大丈夫、とは言わないよ。実際危険だからねぇ。それでも、誰かがやらなくちゃいけなくて、銀ちゃんが最適なんだ』
『でも、銀が怪我したら……怪我じゃ済まなかったら!』
『うん……怖いよねぇ。友達がそうなったらって考えると、怖くて怖くて仕方ないよねぇ……でも、勇気を出して信じてみようか』
『信、じる?』
『そう、信じる。のこちゃんの作戦を、銀ちゃんの攻撃を。そして、須美ちゃん自身を』
『私自身も……?』
『いっぱい訓練したんだからさ。自分の努力を信じてあげよう。少なくとも……自分は須美ちゃんのこと、2人のことを信じているよ』
きっとその言葉が無ければ、止まりきらなかったバーテックスに銀が落ちていくのを黙って見ていたか、初動が遅れて止められなかったかもしれない。だが、結果は知っての通り。むしろ心配が勝って仲間を信じきれていなかったハズの自分が、自信を持って信じてと言えた。
(新士君の言葉を、信じて良かった)
仲間を、友達を信じることがこんなにも心地よくて心強いなんて思わなかった。自分を信じてくれる人が居ることが、こんなにも嬉しいだなんて思わなかった。
勇気を出して、良かった。須美は晴れやかな気持ちで家までの道を歩くのだった。
原作との相違点
・道場とか合同訓練とかバーテックスとの戦闘とか色々
・連携についての安芸の評価が上々
・須美の心境がポジティブ寄りに
アスレチックの名前は調べました。割とそのまんまな名前なんですね。
天秤との戦闘は割とあっさり。須美ちゃんに“私達を信じて”と言わせて皆仲良くボコボコにして銀ちゃんにハイテンションで切り刻んで欲しかっただけです←
安芸先生、個人的に好きです。この人の立ち位置ホント泣きそうになる。
次回はいよいよ合宿のお話。銀ちゃんの顔はどうなるのか。
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