ゆゆゆいではハピバイベ始まりましたねぇ。今回は棗、雀、水都だそうで……勇者服棗にはいつもお世話になってます。
ふ
グラサマでエドラム運極にしました。天華百剣ではもうすぐプリヤコラボ、fgoはサバフェス復刻、大忙しですな。石はない(無慈悲
こないだ偶然Twitterで本作を上げてくださっている肩を見つけました。前作も知って下さっていたようで、面白いとの一言が嬉しかったです。この方に限らず、皆様からの面白いの一言は私の活力になります。
今回、前回同様話が進みません。全く進みません。
あれから直ぐに姉さん、樹、夏凜ちゃんの3人も美森ちゃんのことを思い出してくれた。とは言え、全員が思い出した所で彼女の居場所が分かるハズもない。何せスマホからは電話帳やアプリからも美森ちゃんの連絡先が全て無くなっているのだから。
あまり時間を掛けたくはないのが本音だが、今は美森ちゃんのことを忘れていた……いや、忘れさせられていた現状を受け止め、事態の把握に努めることにした。のこちゃんは実家の名家であることと勇者としての立場を利用して大赦に直接向かって話を聞きに行き、銀ちゃんは安芸先生に連絡して探る。
自分も友華さんに連絡し、彼女に説明してから動いてもらうことに。姉さんと夏凜ちゃんは劇を行う予定だった幼稚園に向かい、理由をぼかしながら劇の延期をお願いしに行った。友奈と樹は美森ちゃん存在している写真や動画を片っ端から探してもらう。それらのことに、その日の放課後以降の時間を費やした。
そして翌日、学校で授業を終えてから直ぐに部室へと集まった自分達はそれぞれの成果を報告し合っていた。だが、自分を含め皆の表情は芳しくない。幼稚園の方は延期することを了承してくれたようだ。仲間の1人が病気で、と説明したらしく子供達は早く良くなりますようにと願ってくれたらしい。
「東郷さん、やっぱり写真にも動画にも……どこにも写ってなかった。まるで、元から居なかったみたいに……教室にも机がないし……」
「写真と動画だけじゃなくて、東郷先輩が書いた文字とかも消えてるみたいです。前に皆が書いてくれた応援のメッセージ……東郷先輩のだけ、消えてました。周りの人はみんなカボチャって、書いてくれてたのに……」
「東郷が居た痕跡を根こそぎ消されてるって訳か……こんなの、質の悪いイジメみたいなもんじゃない」
「大赦なら、何か知ってるかもしれないけどね……私も今の担当者に連絡してみたけど、知らないみたいだったわ。楓さん達はどうだったの?」
「わっしーのこと、わたしが話出来る地位の上層部の人や神官、巫女さんに話してみたけど……皆、震えながら知らないって」
「あたしは安芸先生……ああ、あたし達先代組のサポート役の人なんだけど、その人に連絡して今も色々調べてくれてる。連絡はまだ……楓の方は?」
「自分も連絡待ちだねぇ。ただ、今の状況を見る限り……望みは薄そうだ」
これと言って進展はない、か。皆の表情が暗くなり、自分も腕を組みながらどうしたものかと悩み……横目で、ホワイトボードに貼ってある、美森ちゃんだけが消えている写真を見る。
今回の件、明らかに人知を越えてる。自分達の記憶の操作に写真や動画、更には彼女が書いた文字までも消えるとなるととても人間の手では成し得ない。十中八九、それをしたのは神樹様だろう……どうしてそんなことをしたのか、自分には検討もつかない。
……今は彼女の居場所を知るのが先決だ。以前ののこちゃんと銀ちゃんのように大赦に管理されている……という可能性はあまり高くない。そもそもこの香川に居るのかも……なら他の3つの県のどこか? だとしても記憶を消す理由がわからない。
「やっぱり、記憶を消したのは神樹様なのかな……」
「決まってるでしょ。こんなこと、神様でもなけりゃ出来ないわよ……供物のことで見直したと思ったらまたこんな……」
友奈がボソッ呟き、それを聞いた姉さんが苛立ったように吐き捨てる。1度は神樹様に対して深い怒りを抱いた姉さんだ、そうなるのも無理はない……神樹様が記憶を消す理由、か。自分はあの優しい神様が意地悪で消したりしないと思うんだけどねぇ。
「……なんで、神樹様は自分達から記憶を消した?」
「なんでって……なんでだ?」
「分かんないわよ、神様の考えなんて」
「でも、なんでだろう……東郷さん、そんな酷いことされるようなことしたのかな……」
考えていたことが口から出てしまったようで、銀ちゃんが首を傾げ、夏凜ちゃんは首を横に振る。のこちゃんはずっと何かを考えているようで、口元に手を当てて床を眺めている。そして、友奈が悲しげにそう呟いた。
恐らくは、この世界からその存在を消された美森ちゃん。そんなことをされるようなことをしたのかと聞かれれば……した、と言わざるを得ない。壁を破壊したのは事実だし、そのせいで人類滅亡の危機に陥ったのは確かだから。
だが、なぜ今更になって? やるならもっと早く出来たハズ……いや、今でなければならない? 仮にそうだとして、記憶を消す理由はなんだ? 自分達が美森ちゃんを探さないようにする為? 自分達が悲しまない為? それとも極端に考えて、美森ちゃんの存在そのものが許せないから?
「今はそれよりも東郷の居場所よ。家にも居ないし大赦も知らないってんでしょ? 他にどこに居るっていうのよ」
「分かる訳ないでしょ……勇者アプリの入ったスマホでもあれば、そのレーダー機能を使って位置が割り出せるかもしれないけど……」
「そのスマホは大赦にあるしなぁ……くそっ、それさえあれば……」
「あるわよ、三ノ輪さん」
姉さんと夏凜ちゃんと銀ちゃんがそんな会話をしていた時、部室の扉が開いた後にそんな声が聞こえてきた。自分達が一斉に扉へと目を向けると……そこには、スーツ姿の安芸先生と宮司服を着て仮面を着けた、体格からして男性。その男性の手には、大きなアタッシュケース。
「「安芸先生!?」」
「安芸先生って……さっき銀さんが言ってた?」
「楓さん達先代勇者のサポート役……」
「安芸先生、なんでここに?」
「三ノ輪さんから連絡を受けてから色々と私達で探ってみたの。それで分かったことを伝えにね」
驚きの声を上げるのこちゃんと銀ちゃん。樹と夏凜ちゃんも同じように驚いているのを見ながら自分が問い掛けると、先生は真剣な表情をしながらそう言って男性に目配せする。すると男性は簡易テーブルの上にアタッシュケースを置き、開く。そこには自分達が使っていたモノであろうスマホが7台……そこに、1台分のスペースが空いていた。
「見ての通り、鷲尾……東郷さんの端末だけが無いわ。乃木さん、レーダーを見てくれる?」
「あ、はい……っ、わっしーの反応がない……」
「それって……どういうことだ?」
「結論から言えば、東郷さんはこの四国……神樹様の結界内に存在しない。つまり……」
「美森ちゃんは結界の中ではなく……外に居る?」
「そういうことになるわね」
「東郷さんが……結界の外に!?」
「外って、あの火の海でしょ!? しかもバーテックスもうようよと居るし、なんでそんなとこに東郷が居るのよ!?」
安芸先生に言われた通りにのこちゃんが端末を操作して勇者アプリを開き、レーダーを起動する。それを自分達も後ろから見ていたんだが……彼女の言う通り、自分達のスマホの反応はあるのに美森ちゃんのモノだけが無い。それはこの四国に彼女が存在していないことを意味していた。
つまり、彼女は四国ではない場所に居る……それは結界の外以外にあり得ない。それを呟けば安芸先生は肯定し、友奈と姉さんが驚きの声を上げる。確かに、外は火の海だ。バーテックスも数え切れない程居る。そんな所に何故美森ちゃんは……。
「……安芸先生の方は、何か分かったんですか? というか、よく端末を持ってこれましたね」
「正直に言えば、よく分からなかったわ、犬吠埼君。何しろ私自身も三ノ輪さんから連絡が来るまで東郷さんのことを忘れていたし、思い出した後に調べたり聞いたりしてもどこにも情報は無かった」
「なら、何故端末を持ってここに?」
「私の方はダメだったけど、同じように調べていた人が教えてくれたのよ。大赦の上層部の方で、“奉火祭を行わなければならない、生贄を選ばなければならない”って話が上がっていたことを思い出した……ってね」
「奉火祭? それってどこかで……」
「……その調べていた人って、友華さんですか?」
「ええ、その通りよ犬吠埼君。端末を持ち出せたのも友華様……高嶋家が声を掛けて下さって、乃木家、三ノ輪家、上里家、鷲尾家といった名家の人が力を貸してくれたからなの」
「エライ名前がずらずらと出てきたわね……」
やはりのこちゃんの時と変わらないかと少し落胆しつつ、続けて言われた言葉に銀ちゃんが反応する。奉火祭……確かあの男も言っていた、天の神に赦しを乞う為に生贄を炎の海へと投げ入れること、だったか。
……なるほど、美森ちゃんは責任感が強い。そして、自惚れでもなんでもなく、自分達のことを大切に思ってくれていた。恐らくは壁を破壊したこと、もしくはそれ以外の何かが天の神の怒りを買ったんだろう。そして美森ちゃんは自らその生贄になることを決めた……記憶を消したのは、それを自分達が止めようとするのを防ぐ為か?
同じように調べていた人というのは、やはり友華さんだったらしい。自分が連絡を入れてから直ぐに動いてくれたんだろう。そして上層部でもある彼女だからこそ情報を得られた……端末は、彼女が出来る自分達への最大限の支援だろうか。
「ねえ、楓。結局なんで東郷は外に居るかもしれないって話になんのよ。それからその、奉火祭? ってなんなの?」
「それに生贄って何のこと……? 東郷さんに何が起きてるの?」
「……そっか、フーミン先輩達は外の世界のこと、詳しくは知らないんだね」
「外の世界のこと? えっと、本当はこの四国以外は滅んでて、外は火の海で……」
「あと、さっき風が言ったようにバーテックスがうじゃうじゃ居るってくらいね」
「それじゃあ、先に外の世界のことと……バーテックスの親玉である、天の神のことについて説明しておこうか。尤も、自分もある人物から聞かされた程度なんだけどねぇ」
疑問符を浮かべる姉さんと不安げな友奈。のこちゃんが納得したように頷くと、樹と夏凜ちゃんがそう言った。そうか、彼女達にはまだ話していなかったんだっけ。1度はお役目を終えたから、話す必要も無いと思ってたからねぇ。
そうして、自分はのこちゃんと銀ちゃん、安芸先生と一緒に4人にあの男から聞かされたことを説明した。自分の最初の養子先のことや自分が養子となった本当の理由等は、今は言う必要がないので黙っておいたけどねぇ。
天の神。外の世界は既に滅んでいて、今は炎の海。倒すべきバーテックスはそれこそ数えきれない程存在していて、そのバーテックスもウイルスではなく、神が造り出したもの。そもそもバーテックスが襲い掛かってくるのも、元はと言えば人間のせい。
奉火祭とは、国譲りという神話……神代の時、土地神の王が天の神に自らの住み処から出ないことを代償として、その地を不可侵とすることを赦してほしいと願った、というものを当時、つまり西暦時代の大赦がその故事を模倣した儀式のこと。そしてそれは、外の炎の海に生贄を投げ入れることで成される。説明を聞いた4人は皆同じように顔を青ざめさせていた。
「後から調べて分かったことなんだけど、この生贄とは神の声を聞ける巫女のこと。それが数人必要らしいの」
「東郷は勇者でしょ? なら生贄の条件には……」
「風さん……須美は確かに勇者だけど、巫女の適性も持ってるんだ」
「それに、美森ちゃんも奉火祭の話も世界の真実も知ってる。彼女は壁を壊したことに罪の意識を感じていたし、責任感も強い……」
「じゃあ東郷さんは……自分から……?」
「……多分ね~。実際のところは見ていないからわからないけれど……」
「本当のことを知るには、本人に直接聞くしかない、か……」
安芸先生が補足を入れて姉さんがそれに疑問を投げ掛けるが、銀ちゃんが説明して自分が続ける。それを聞いた友奈が暗い表情のまま呟き、のこちゃんが肯定し、夏凜ちゃんが手にしたスマホを見ながら締める。
結局のところ、真実はわからない。集めた情報からああだろうこうだろうと推理するだけ。それでも、だいぶ真実に……美森ちゃんに近付けた気がする。
「……東郷を探しに外に行くなら……また、勇者にならなきゃいけないのよね」
「お姉ちゃん……」
「外の世界は人間が生きていられる環境じゃないからねぇ……」
「……犬吠埼 風さん、だったわね。気休めにしかならないかもしれないけれど……勇者システムはバージョンアップされているの」
そう言ってから、安芸先生は説明してくれた。勇者システムのバージョンアップ。今回から勇者になり、満開したとしても散華は起こらないという。満開ゲージは始めから最大まで貯まっていて、満開をすれば全てのゲージを、精霊バリアが発動すればその度に1ずつ減り……その変身の最中では回復せず、生身で居る時に時間経過で回復していくのだと言う。
注意点として、ゲージが無くなれば精霊バリアは無くなり、ダメージを直接受けることになる。そして満開はゲージが最大の時にしか使えない。散華のような代償が消えた分、安全面は少し不安が残るねぇ。
「……だとしてもアタシは、皆を勇者に変身させるのは……」
「姉さんには悪いけれど、自分は行くよ」
「楓!?」
「勿論わたしも行くよ、カエっち」
「当然! この三ノ輪 銀様もな!」
「園子に銀まで……分かってるの!? 大赦が本当のことを言ってる保証なんて無いのよ!? またあんた達があんなことになったら……」
姉さんの大赦への怒りや恨みは分かる。それに散華のことも知ってるし、その状態の自分を知ってるから余計に不安に思うのも、分かる。自分達のことを思って勇者への変身を拒むのも……分かる。
実際、姉さんだけでなく他の皆もスマホの画面を見て難しく表情を浮かべていた。大赦の人間である安芸先生からの説明、そして前の散華、勇者として戦ってきた記憶……不安に思うのも仕方ない。怖いと思うのも……仕方ない。それでも、自分とのこちゃんと銀ちゃんは行くと言った。美森ちゃんを探し出すのだと、決めた。
「フーミン先輩も、皆も怖いよね……それが当たり前なんだよね。分かるよ」
「だったら!」
「風さん。確かにあたし達は散華のせいで酷い目にあったし、大赦が隠してた真実を知って絶望もしかけたよ。それでも、さ……それでも勇者として戦えたのは、楓とか園子とか須美とか……家族とか、自分達にとって大切な人達の為だから。今回も変わらない。須美っていう大事な奴の為に、あたし達は行くんだ」
「銀……」
「まあ、そういう訳だよ姉さん。それに、他の大赦の人から言われたならともかく……安芸先生と友華さんなら信じられるからねぇ。勿論、強要はしない。でも……自分達は、行く。もう1度勇者になって……美森ちゃんを探しに」
「楓も……っ」
姉さんが何と言おうと自分達の決意は変わらない。銀ちゃんが言ったように酷い目にはあったし、絶望もしかけた。あの大橋での戦いはハッキリと覚えている。ああ、覚えているとも。心が折れかけて、それでも一緒に戦ってくれた3人。自分を守ると、一緒に頑張ると言ってくれて……散華によって消えていく記憶を忘れたくないと、消さないでと泣きながら叫んでいた
きっと、彼女は1人で居る。自分達に忘れてほしくないと、忘れたくないと叫んでいたあの子が……それをしてまで、そうすることを選んだから。だから自分が……自分達がそこに行くんだ。勇者部として初めて樹海に行くことになった時に自分に手を伸ばしてくれたように……今度は、自分が彼女に手を伸ばすんだ。
「……私も信じる」
「友奈……」
「風先輩……私も、楓くん達と行きます」
最初にそう言ったのは友奈であった。彼女自身、内心では美森を探しに行きたいのと再び勇者となることへの恐怖がせめぎあっていた。また散華なんてしたら、また皆と会えなくなったら……そんな恐怖が。それでも、その恐怖を飲み込んだ。自身にとって大事で、大切な美森を探すことを決めた。
風の言うことも分かる。だが、楓達と同じように決めた。楓達が信じる大赦の人間の話を信じると……決めたのだ。
「ま、勇者部が行方不明なんだから……同じ勇者部が見つけないとね」
「私も行きます」
「夏凜、樹……あーもう、部長を放って部員達で決めるんじゃないわよ……アタシも行く。東郷のこと、放っておけないし……楓達のことは信じてるから。楓達が信じてる大赦の人も……まあ、信じるわ」
「……ありがとねぇ、姉さん」
結局、全員が行くことを決めた。もう1度勇者となり、美森を探しだして連れ戻すことを……決めた。そんな4人を、先代組の3人は嬉しそうに笑って礼を言い……笑い合う勇者7人を、安芸は微笑みながら見つめ……大赦の男もまた、仮面の下で彼女と同じ表情を浮かべていた。
「ところで楓。友華って誰?」
「合宿の時に居た女将さんを覚えているかい?」
「ああ、あの見た目詐欺の……あの見た目で80とか嘘でしょ」
「あの人、自分の養子先の人。つまり、自分の義理の母親なんだよねぇ」
「「「「嘘ぉっ!?」」」」
「言ってなかったのか楓……」
「わたし達も似たようなリアクションしたよね~」
安芸と男が部室から出ていった後、7人は屋上に出て来てスマホを手にし、久しぶりに勇者アプリをタップ。画面から花弁と共に光が溢れ、それぞれ変身を完了させる。その直後、それぞれの側にこれまた久しぶりに見る精霊達が姿を現した。尚、6人の勇者服に変化はないが、唯一楓だけ左手にしかなかった水晶が右手にも付いていた。
「また宜しくね、牛鬼」
「久しぶりだねぇ、夜刀神」
「ちょ、こら、くすぐったいって! もうっ」
「やっぱりお兄ちゃん達って精霊に懐かれてるよね」
友奈の頭の上にうつぶせに寝そべる牛鬼、楓の首に巻き付いて頬を舐める夜刀神、出てくるなり風の顔に飛び付いてペロペロと舐める犬神、樹の差し出す両手の上で跳び跳ねる木霊。
「セバスチャン久しぶり~♪ ちょっと太った?」
「いや、精霊は太らんでしょ……」
「……元気?」
「外道メ」
「相変わらずね、あんた」
「諸行無常」
友奈の牛鬼のように園子の頭の上にうつぶせに寝そべる烏天狗、銀の右肩に乗っている鈴鹿御前、夏凜の横に浮かぶ義輝。それぞれが久しぶりに会う精霊とコミュニケーションを取っていた。そんな中、
「夜刀神も久しぶり~♪ 今度こそ撫でさせ」
「シャーッ」
「に゛ゃー! また噛まれたー!」
「わー! 園ちゃん大丈夫!?」
「まーたやってんのか園子……」
「あれ、なんかこんな光景前にも見たような……」
そんなこんなで7人は屋上から勇者の身体能力をフルに使って跳びながら移動する。目指すは大橋、その壁の向こう。讃州市から大橋まではそれなりに距離があるが、勇者の身体能力を持ってすれば10分もせずに辿り着くことが出来た。
壁の上に辿り着いた7人。その脳裏に、壁の向こうにある地獄のような光景が浮かんだ。だが、それで足を止めることはない。美森を見つけ、連れ戻すと決めたのだから。
最初に結界の外に出たのは夏凜。次に銀、風、樹と続き、園子がその後に続く。楓と友奈はお互いに顔を見て頷きあい、楓が先に結界の外へと出ようとする。
そして楓の手が結界へと触れた瞬間、バチッという音と共にその手が弾かれた。
「……えっ?」
「楓くん!? 大丈夫!?」
「あ、ああ……大丈夫だよ友奈。でも、今のは……」
弾かれた手のひらを見つめて唖然とする楓に、友奈が慌てて近付いてその手を握る。少しだけ放心した後、楓は苦笑いを浮かべて心配する友奈に大丈夫だと告げ、手のひらと結界を交互に見る。
友奈に手を離してもらい、恐る恐る楓はまた結界へと手を伸ばす。しかし、その手が触れた瞬間、先程と同じように弾かれた。試しにもう片方の手、足、肩と触れてみるがやはり同じように弾かれ、それならと勢いをつけて結界に跳んでみるが……結界を越えることは出来ずに弾かれ、楓は壁の上で尻餅をついた。
「……んで……なんで! なんでだ神樹様! なんで自分は結界を越えられないんだ!」
「楓、くん……」
「美森ちゃんが、あの子が結界の外に居るかもしれないんだ! あの子を1人にしないと約束した! 見つけ出すと、連れ戻すと決めたんだ! 皆で探し出すと言ったんだ! なのに……なんで自分だけが!!」
それは怒りか、それとも悲しみか。楓は必死な顔で叫び、その度に腕を結界へとぶつけ……そして、弾かれる。その手が結界を越えることは1ミリ足りともない。
2年前、楓は結界を越えられた。数ヶ月前の戦いでも、越えられた。なのに今回は越えられない。他の皆は何の問題もなく越えられたと言うのに、楓だけが。その叫びを、その表情を友奈は胸を締め付けられる思いで見ていた。見ていることしか……出来なかった。
試しに、友奈は己の手を結界へと伸ばす。すると楓のように弾かれる……なんてことはなく、手は問題なく結界の向こうへと消えた。彼女は越えられるのだ。なのに楓だけが……出ることが出来ない。外に、美森を探しに行くことが……出来ない。
「探しに……あの子のところに行かせてくれ……お願いだ神樹様……」
何度も弾かれる。どれだけ叫んだところで、神樹は何も答えてはくれず……自分だけが出られない、美森を探しに行けないという現実が彼を打ちのめす。遂には結界の前に崩れ落ち……壁に両手を着き、神樹に懇願し……それでも、神樹が答えることはなかった。
「……楓くん。私が……私達が楓くんの分まで東郷さんを探してくる。楓くんの分まで……私が頑張る」
「……友奈……」
「だから……だから、楓くんは私達の帰りを待ってて。絶対に東郷さんを連れて、皆で帰ってくるから」
そんな楓を、友奈は見ていたくなかった。だから、友奈は楓の前に片膝を着き、彼の両手の上に己の手を乗せた。そうして自然と近くなった目を合わせ……笑って、そう言った。
どういう訳か楓は出られない。こんなにも探しに行きたがっているのに、辛くて、悲しくて、泣きそうな程に顔を歪めているのに。そんな彼の代わりに頑張ると……彼の分まで頑張ると、友奈は決めた。
(私は、楓くんの笑ってる顔が好きだから)
見てるだけで幸せになれる……あの朗らかな笑顔が見たいから。
「……分かった。自分の分まで頼んだよ、友奈。それから……ありがとねぇ」
「うんっ!」
その笑顔が見れたから……その笑顔に見送られたから……友奈は頑張れる気がした。
― ごめんなさい ―
真っ暗な空間。そこで鏡越しに2人の様子を見ていた神樹は、楓に向かってそう呟いた。彼女は何も意地悪をしている訳ではない。彼だけ通さないことには、勿論理由がある。
高次元の魂を持つ楓は、そこに存在しているだけで神樹の力を引き上げ、寿命を伸ばす。供物を戻したことで再び減った力も殆ど戻ってきている程。いずれは天の神の力に匹敵し、凌駕することも可能。しかしそれは……天の神にも作用してしまう。
仮に天の神が楓という魂を手にした場合、神樹の力を強めているように天の神の力を強めてしまう。そうなれば神樹に、勇者に天の神に対抗する術は無くなってしまう。故に、楓が天の神の手に渡ることだけは絶対に阻止しなければならない。
だからこそ、神樹は楓だけ通さないように細工をしたのだ。その結果、彼を悲しませることになったとしても。例え、彼に恨まれることになったとしても。そう思いながら、神樹は友奈を見送った後も壁の上に立ちながら結界の向こうに映る綺麗な景色を眺める楓を鏡越しに見つめ……。
― ……ごめんなさい ―
誰にも聞こえないその場所で、神樹の辛そうな声だけが響いた。
原作との相違点
・多過ぎて書ききれません。もうこれいらない気がしてきた←
という訳で、まあ説明回です。まさか外にすらいけないとはこの隊長の目をもってしても見抜けなんだ。皆様から感想で楓どうすんだと書かれていましたが、そもそも外に出さないという手段を取りました。いや、出したら色々面倒ですしね。
新しい勇者システムに関してはほぼ原作通り。但し、本作では神樹様の力が増していることもあり、減ったゲージは変身していない時に限り充電されます。今回減ったとしても、変身を解除すればまたゲージは最大値まで回復するということですね。
さて、次回も本編です。やっと外の世界での出来事が……楓不在ということもあり、さっくり終わらせる予定です。そこから先は地獄だぞ。
それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)