咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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大変お待たせしました(´ω`)

中々難産でございました……後、地味に長くなりました。

fgo、デレステ、バンドリ、グラサマ、ラスクラ、天華百剣、ゆゆゆい、とじとも、プリコネと風呂敷広げ過ぎてるなぁと思い始めました。いや、全部面白いからどれを消すとか……ねぇ?←

最近雨が多くて仕事のこともあり、少しモチベが下がっていましたが皆様の感想を読み返したりして回復してました。まだ本作が一桁の話数しかない頃から今まで欠かさず書いて下さってる方も居て……本当に感謝です。読んで下さってありがとうございます。

さて、今回はほぼ原作通りです。覚悟は宜しいか? 消費が激しいんで胃薬と麻婆と赤ワインを追加で配給しますね←


咲き誇る花達に幸福を ー 7 ー

 「あれ? 友奈、楓は?」

 

 「それが……楓くん、何故か結界を越えられなくて……」

 

 「はぁ!? 冗談……な訳ないか……」

 

 友奈が楓に見送られて結界の外に出た時、既に出ていた5人は楓が居ないことに首を傾げた。風が代表して問い掛ければ、友奈は先程の彼の悲痛な叫びを思い出して暗い表情になり、簡単に説明する。当然風達は驚くが、直ぐに話を受け入れた。そんな冗談や悪ふざけを2人がする訳がないと知っているから。

 

 「でも、私が楓くんの分まで頑張りますから!」

 

 「それは違うよ、ゆーゆ。カエっちの分は、私達皆で頑張るんよ~」

 

 「園ちゃん……うん! そうだよね、皆で頑張ろー!」

 

 友奈はそう言いながら両手をぐっと握り締め、笑顔を見せる。彼とそう約束したから、彼にそう頼まれたから。美森を見つけ出すというやる気が何倍にもなった友奈に、園子が笑いながらそれは違うと告げる。美森を見つけ出したいのは皆同じなのだ。そして、楓が出来ないのなら自分達もその分頑張りたいのだと。友奈は、また笑って両手を握り締めた。

 

 そんな会話を終え、6人は改めて外の世界……地獄のような世界を見る。辺り一面文字通りの火の海。時折その火が生き物のように弧を描き、それがよりこの世のモノではない光景という印象を強くする。

 

 「……おっ、レーダーに反応! やっぱり須美は外に居たんだな」

 

 「えっ!? 銀さん、どこですか?」

 

 「えーっと……あっち、だ、な……」

 

 「どうしたの銀ちゃん……って、えーっ!?」

 

 「ちょっと、何よアレ」

 

 少しその光景を見た後にスマホを取り出していた銀は直ぐにレーダーを確認。すると自分達の名前、結界の中に居る楓の名前の他に東郷 美森の名前を見つけた。それを聞いた樹が近寄って画面を覗き込み、銀はレーダーに従って美森の反応がある方向へ指を指し……あんぐりと口を開けた。

 

 そんな彼女の様子を不思議に思った友奈が同じ方向を見るとこれまた驚愕。2人してどうしたと4人も同じように見れば、同じように驚愕。思わず呟いた夏凜の視線の先、6人の遥か上空にあるのは……真っ黒な、ブラックホールとしか言いようがない球体。美森の反応は、その球体と同じ場所にあった。

 

 「あそこにわっしーが……?」

 

 「あーっと……反応見るに、そうなるな」

 

 「東郷さんが……東郷さんがブラックホールになってる……」

 

 「初めて見たわ、久しぶりに会ったらブラックホールになってる奴」

 

 「お姉ちゃん……」

 

 「他に居てたまるかっての……っ、周りにはバーテックスまで居るじゃないの」

 

 教科書でしか見たことのないようなブラックホール。それは完全に6人にとって予想外であり、その衝撃的な光景は少し彼女達の間の空気を弛くした。園子がほえーと呟き、銀がポリポリと頬を掻き、友奈は唖然、風はボケなのけ素なのかわからない反応をし、樹はそんな姉に苦笑いし、夏凜は風にツッコミを入れる。

 

 夏凜が言ったように、美森が居るであろうブラックホールの周囲には射手座、蠍座、乙女座、魚座、牡羊座、牡牛座の反応。それだけではなく、以前の戦いの時にも見た小さなバーテックスがわんさかと存在する。それはレーダーだけでなく肉眼でも捉えられ、それを見た友奈がぎゅっと自身の胸の前で手を握り締める。

 

 (……大丈夫。もう、怖くない。今は皆が居るし、あの時の楓くんの温かさも言葉も覚えてる。だから……怖くない)

 

 かつては小さなバーテックスにトラウマを持っていた友奈。そのトラウマは以前の戦いを経て殆ど治っていた。それに周りには仲間達が居るのだ、最早彼女に小さなバーテックスへの恐怖は無いに等しい。

 

 「よし、あそこまで行ってみよう!」

 

 「いや、そうしたいのは山々なんだけどさ。アタシ達楓みたいに飛べないわよ? どうやって行くのよ」

 

 「は? 楓が飛ぶって……満開でもしてたんですか?」

 

 「えっ? お兄ちゃんは満開しなくても飛べましたよ? 翼を生やして……2年前もそうやってたんじゃ? あれ、違ったかな……」

 

 「翼!? いや、アタシ達の時は楓は翼生やしたりとかしてないし……爪使ってたし、爪飛ばしたりしてたし……最後はそうじゃなかったけど」

 

 「爪!? っていうか爪を飛ばすってなに!?」

 

 「言ってる場合か! 来るわよ!」

 

 ブラックホールを指差しながらそう言う友奈であったが、風に呆れたように言われてガックリとして腕が下がる。風の言に疑問を覚えた先代組の2人の内、銀が不思議そうに聞くと樹が同じように不思議そうにしながら答える。が、楓が満開も無しに飛んでいた等とは2人には初耳である。そして返答である爪を飛ばす等というのも当代勇者達にも初耳であった。

 

 お互いに鳥の翼に天使の羽、犬の爪やフックのような鉤爪を想像していた時に夏凜のツッコミが入り、空から小さなバーテックス達が6人目掛けて口を開きながら突撃してきた。6人は直ぐ様反応して各々跳んで回避し、迎撃していく。

 

 「邪魔よあんたら!!」

 

 「やああああっ!」

 

 「こんな時に! てええええいっ!」

 

 「ふっ、はあっ!!」

 

 風が大剣を振って1体のバーテックスを両断し、その隙を突こうとしたバーテックスを樹のワイヤーが切り捨てる。向かってきたバーテックスを友奈の拳が打ち砕き、更に右足による回し蹴りを一閃することで粉砕。夏凜はバーテックス達を足場にしながら空を駆け、その度に切り捨てていく。更には大量に出した短刀を投げつけ、爆砕していった。

 

 「はああああっ!!」

 

 「でええええりゃああああっ!!」

 

 結界の葉の上に着地した園子は手にした槍を伸ばしながら左から右へと振るい、数多のバーテックスを一気に殲滅していく。それでも近付いてくるバーテックスも頭上から多数の槍を召還、落とすことで串刺しにしていく。

 

 銀は両手の斧剣にある穴に牡丹の紋章が現れ、回転しながら炎が噴き出してそれを纏わせて近くのバーテックスを片っ端から切り裂き、ある程度片付けた後に体を思いっきり後ろに反らし、前へと戻す反動を使って斧剣をぶん投げる。投げられた2本の斧剣は炎を纏いながら回転し、これまた数多のバーテックスを殲滅しながら彼方へと突き進み、ブーメランのように戻ってきた所をキャッチする。

 

 「やるじゃない園子に銀。さっすが先代勇者ってところね」

 

 「えへへ~、褒められた~♪」

 

 「ま、勇者部の火の玉ガールとしてはこれくらいはね」

 

 「とは言え、ここでバーテックスを殲滅してても仕方ないわ。どうやって東郷の所まで行くか考えないと……」

 

 明らかに自分達当代の勇者と比べて殲滅数が多い先代2人を称賛する夏凜と、それを聞いて嬉しそうに笑う園子とニッと右手の斧剣を肩に置きながら笑う銀。複数回の満開を経て得た勇者の力は伊達ではないのだ。

 

 そうして各々バーテックスを倒しては居るが、本来の目的は美森の元へと向かうこと。こんな場所で無限に襲い来るバーテックスを延々倒したところで永遠に目的は達成出来ないと、そう夏凜が口にする。

 

 「なーに、飛ぶ手段なら満開があるって。ここはあたしが率先して……」

 

 「ちょい待ち。満開したら一時的にとは言え、精霊の加護が無くなっちゃうのよ? それにあんた1人で行かせる訳ないでしょうが……行くとしても、皆で行くのよ」

 

 「……」

 

 「な、なによ。急にじっとこっち見て」

 

 銀はそう言うと結界の葉っぱの先に立つ。以前なら散華の恐怖で躊躇ったかもしれないが、安芸からバージョンアップしたとの話を聞いているのでその恐怖はない。それに飛ぶ手段は満開くらいしかないのだ……使わない理由は無かった。

 

 そんな彼女の右肩を掴みながら待ったを掛けたのは風。部長として、友奈から楓の分まで頑張ると聞いた身として銀を1人で行かせるつもりなど無かった。そんな彼女に止められた銀はきょとんとして振り向き、風の顔をじーっと見つめる。急に見詰められた風は予想外のことに少しビクッとした。

 

 「あー、いや、その……」

 

 

 

 ― はいストップ。まずは須美ちゃんに仕掛けてもらおうね ―

 

 

 

 「風さんはやっぱり、楓のお姉さんなんだなーって」

 

 「何を当たり前のことを言ってるのよあんたは……」

 

 銀の脳裏に浮かぶのは、2年前のお役目のこと。真っ先に飛び出そうとする自分を毎回のように止めた楓。風に止められ、窘められたことでその時の記憶が甦り、銀は懐かしさを覚えたのだ。その懐かしさを胸に苦笑いしながら呟けば、風からは呆れ顔と声が返ってきたが。

 

 「ん~、ミノさんが言ったみたいに皆で満開もいいけど~……あれ位なら船で行けると思うから、わたしがやるね~」

 

 「え? 園子さん、船って……あっ! 確か園子さんの満開は……」

 

 「その通りだよイッつん。という訳で……“満開”!!」

 

 そんな会話の後に園子が高く跳び上がり、力強く叫ぶ。すると結界の方から沢山の光の根が彼女へと伸び、強く発光。その光が収まった時、そこにあったのは満開時の服装に変化した園子と、彼女の満開である巨大な船。その船を久々に見た4人は“おー”と感嘆の声を漏らし、初めて見た夏凜は驚愕から目を見開いた。

 

 「銀と言いあんたと言い、満開に躊躇いがないわね……」

 

 「あたし達の時は最初はバリアなんて無かったですからねー」

 

 「さあ皆、これがわっしー行きの船だよ~」

 

 「お邪魔しまーす!」

 

 「前に見た時も思いましたけど、カッコいい船ですね!」

 

 「わ、私の満開の方がカッコいいわよ!」

 

 次々と園子の船へと跳び乗り、全員が乗ったことを確認してからブラックホールに向かって高速で飛ぶ園子の満開。船を操作する彼女は問題ないが、他の5人は船の速度と火の海の熱風に晒され、船にしっかりとしがみつかないと振り落とされかねない状態であった。

 

 あっという間に、6人はブラックホールの近くまで来ていた。だがその前方に火の海からそ大型のバーテックスが現れ、6人の前に立ちはだかる。そのバーテックス達は、さながらブラックホールを守っているようにも見えた。

 

 「仕掛けてきたか……」

 

 「あいつら、あそこを守ってるの?」

 

 「どうする? 園子」

 

 「む~、だんだん囲まれてるし、倒しながら進むと満開の時間が足りなくなるかも……」

 

 「だったら、私が東郷さんの所に行く! 楓くんの、皆の分まで……東郷さんを連れて帰って来るから! 絶対、一緒に帰って来るから!」

 

 集まってくる大型のバーテックス達。どうしたモノかと園子が悩んでいると、友奈が船の先端へと移動しながら叫ぶようにそう言った。それを聞いた5人は少し悩む。向かう先は何が起きるか全く予想できないブラックホール。そこに友奈1人を行かせて良いものかと。

 

 しかし、だからと言って全員で行けばいざという時に助けにいけない。ならば数人ずつで……と言いたいが、無限に現れるバーテックスが相手では人手は幾らあっても足りない。それに、問答している時間も惜しい。何せ満開の時間は有限で、決して長時間その状態で居られる訳ではないのだから。5人は、友奈を信じることにした。

 

 「友奈、ちゃんと2人で戻って来るのよ! 部長命令!」

 

 「邪魔する敵は、私達で押さえますから!」

 

 「あんな所じゃ何が起きてもおかしくないわ。気合いよ、友奈!」

 

 「勇者は気合いの他に根性と魂も必要だゾ! 須美のこと、頼んだ!」

 

 「ゆーゆ……わっしーのこと、お願い」

 

 「任せて!」

 

 「それじゃあ一気に……行っくよ~!!」

 

 全員からのエールを受け、友奈は自信を持って頷く。必ず、2人で皆の、帰りを待つ楓の元へと戻るのだと決意を新たにする。その力強い一言を聞いた後、園子は船に薄紫色の光を巨大な鳥のように纏わせ、更に加速して突き進む。

 

 更に近くなるブラックホール。当然、そうはさせないと6体の大型バーテックスが追い掛けてきた。その6体目掛け、園子の光の鳥から大量の薄紫の光がレーザーのようにバーテックス達に向かって飛び、その進行を遅らせる。

 

 「ゆーゆ、今!」

 

 「うん! 皆、行ってきます!」

 

 ようやく辿り着いたブラックホールへと、友奈が飛び込む。残った5人はバーテックス達の足止めをする為に園子の船の上でそれぞれ攻撃をし始める。風は新たな精霊である鎌鼬を得た時に使えるようになった短剣を投げ付け、夏凜も短刀を投げ付ける。樹も雲外鏡の緑色の壁を作り出し、そこから同色のレーザーを放つ。

 

 「お前達だけは……絶対許さない!!」

 

 「ゆーゆの邪魔はさせない!! それから……カエっちの腕の仇!!」

 

 そして銀と園子はそれぞれ炎を纏わせた斧剣を投げ付け、レーザーでバーテックス達……特に乙女座、蠍座を重点的に狙って攻撃していた。今でこそ五体満足の楓……その腕を2年前に奪った蠍座。そして、ずっと側に居たかった時に限って襲ってきた乙女座。時を経ても尚、その2体への恨みは根深かった。

 

 

 

 

 

 

 ブラックホールの中を、私は両手を体の前で×字に重ねて牛鬼のバリアに守られながら突き進んでいた。足場とかはどこにも無い。進んでるのか、落ちてるのかもわからない。ただ、ブラックホールの奥に見える光を吸い込んでるように見える黒い渦が近付いてきているのは分かる。

 

 手の方から“キィン!”ていう音が聞こえた。多分、ゲージが減った音。バリアが発生してるからもしかしてと思ったけど、やっぱりここは私が居たらダメな場所なんだ。それでも、私は止まらない。 絶対にあの黒い渦のところへ行くんだ。

 

 「東郷さん……」

 

 また“キィン!”ていう音がした。気にせずに突き進むとまた同じ音。それでも、止まらない。皆と、楓くんと約束したから。絶対に一緒に戻るんだって。

 

 「東郷さん……っ!」

 

 4回目の音。それが聞こえた後、私はやっと黒い渦に辿り着いた。そしてその中へと入り込むと……さっきまでの黒しかない世界が嘘みたいに光がシャワーみたいに溢れて、私に降りかかってきた。

 

 「あ……ああああああああっ!!」

 

 体が光に引っ張られるような、逆に押し出されるような感覚。それを感じた後、気付けば私は前に上も下も雲に覆われているような空間に居た時のような桜色の体……魂なのかな、そんな状態になっていた。自分の姿を見てから落ちてきた方を見ると、私の元の体がそこにあって……この体と、元の体が桜色の光の糸みたいなので繋がっていた。

 

 「……!? く、ううううっ!」

 

 今度はいきなり、光が飛んできてる方から炎みたいなのが避けられないくらい沢山飛んできた。思わず両手で防ぐと……この魂の体に当たった所が火傷みたいに赤くなった。元の体は大丈夫かなと思って見てみれば、今の私みたいに炎に煽られてるみたいだったけど、目に見えるダメージはないみたい。

 

 ……多分、繋がってる糸が切れたりこの体が無くなったりするようなことがあれば……死んじゃうよね。それは嫌だけど、今は東郷さんを……そう思ってると、今度は水玉みたいな、シャボン玉みたいなのが飛んできて……そこに東郷さんが映ってて、それに思わず手を伸ばして触れてみた。すると……東郷さんの記憶が頭の中に流れ込んできた。

 

 東郷さんが壁を壊してしまったせいで天の神の怒りを買い、外の火の勢いが強まっている。それを鎮める為には、私達が楓くん達から聞いた奉火祭を行う必要がある。だけど、その為には……神の声を聞ける数人の巫女さん達を生贄とする必要がある。そして……勇者であると同時に巫女の適性を持つ東郷さんなら、1人でその数人の代わりになれる。

 

 東郷さんは自分のせいで誰かを犠牲にするのは嫌だった。そして、自分なら代わりになれると知っちゃったから頷いた……私達の為に。神樹様に、私達が東郷さんのことを忘れるように願って。

 

 「……東郷さん、そんなにも私達のことを大事に思ってくれてたんだ。そうだよね……そう思ってくれてたから……でも」

 

 私達を大事に思ってくれてたから、大切に思ってくれてたから……壁を壊したりして、今も1人で犠牲になろうとして。でもね、東郷さん……私も、楓くんも、皆も東郷さんのことが大事で、大切なんだよ。だから絶対に連れて帰る。それに……約束したもんね。

 

 

 

 ― 忘れたくないよ! 忘れられたくないよ! 私を……私を1人にしないで!! ―

 

 ― うん……うん! ―

 

 ― ああ……1人にしないよ ―

 

 

 

 私と、東郷さんと、楓くんの3人でした約束。東郷さんを忘れない。東郷さんを1人にしない。だから……何度だって助ける。何度だってそこに行く。楓くんの分まで、皆の分まで。

 

 「私が……頑張る!! ああああああああっ!!」

 

 そう声に出して更に奥に向かう。飛んでくる炎は私の体に当たって、それはとても熱くて痛いけれど……全部無視する。無視してひたすら前に、前に! 前に!!

 

 それからどれくらい進んだのかわからない。気がつけば私は、前にも来たことがあるあの空間に来ていた。前は楓くんがここから出してくれたけど……今度は私が、東郷さんをここから連れ出すんだ。

 

 周りを見てみると、近くに私の体が横になって浮かんでた。上を見上げると、まるで大きな目のようにも見える穴。ふわりと満開の時に飛ぶイメージでそこに向かって見ると……居た。私達が探していた東郷さんが……大きな鏡に体が沈み込んでて、まるで燃え尽きたみたいに煤けているように黒くなってる。

 

 「東郷さん!?」

 

 思わず名前を叫んで近付いて頬っぺを触ってみる。でも、何の反応もしてくれなくて。鏡の上には今の私みたいな、魂みたいな体の東郷さんが炎で焼かれてて。

 

 こんな、こんなの酷い……東郷さんは居なくなった日からずっとこうやって、私達を守る為に……ずっと1人で。必要なことなのかもしれない。それでも私は……こんなの嫌だよ。

 

 「東郷さん、今助けるから……熱っ! く、ううううっ!」

 

 東郷さんを鏡から出そうとして両手を鏡に伸ばすと指先が沈んで、指先が凄く熱くなった。まるで、鏡の向こうに炎があるみたい。それでも両手を突っ込んで、鏡の向こうにある東郷さんの体を掴んだ。そこから両足も使って少しずつ引っ張り出す。

 

 手足が熱い。少しずつしか引っ張り出せない。それに、まるで邪魔するみたいに私の左胸の所に何かの模様みたいなのが出てきて、そこが凄く熱くて、痛くて。でも、そんなことに構っていられない。

 

 「東郷さんを離して!」

 

 少しずつ引っ張り出す。その度に左胸の模様が熱くなって、痛くなって、それが少しずつ広がっていって……耐えろ。耐えて、東郷さんを。

 

 「皆が東郷さんを助けに来てる! 皆が……皆と!」

 

 もう少し。後少し。熱い。痛い。でも、もう腰まで抜けた。あともうひと踏ん張り。

 

 

 

 「楓くんが……待ってるんだ!! ううううああああああああああああああああ!!」

 

 

 

 そうやって頑張って、やっと東郷さんの体が鏡から全部抜けて……助けられたって安心して東郷さんを抱き締めた時。模様から感じてた熱さと痛みが全身に広がっていって。

 

 次に気付いた時には……いつの間にか結界の中に戻ってて。私と東郷さんは皆に心配そうに見られていて……楓くんに力強く抱き締められていた。

 

 

 

 

 

 

 友奈が美森を助け出した後、美森を捕らえていた鏡とブラックホールは砕け散り、消滅した。ブラックホールがあった場所からは勇者服姿で意識を失っている2人が落下し、直ぐに気付いた園子が船で落下地点に移動して回収。そのまま全員で結界の中へと戻った。

 

 戻ってきた7人を見た楓は安堵したものの、意識を失っている2人を見て近寄って抱き締め、必死になって声を掛けていた。幸いにも友奈は直ぐに目を覚ましたが、美森は目覚めず……楓が美森を抱き抱え、大橋の自分達も入院していた病院へと向かい、そこで友華が手配していたと言う医療スタッフに美森を預け、心配しながらも7人はそれぞれの家に帰ることになった。

 

 「……ぁ……?」

 

 「やった! 東郷さんの目が覚めた!」

 

 「わっしー!」

 

 「須美、大丈夫か?」

 

 美森が目覚めたのはそれから数日後のこと。目を覚ました彼女が最初に見たのは、嬉しそうに己を見る6人。そこに楓の姿が無いことに疑問を覚えたが、自身の右手が誰かに握られていることに気付き……そちらへと視線を動かせば、椅子に座って俯きながら、両手で強く美森の手を握って祈るように額に当てている楓の姿があった。

 

 「ここ、は……」

 

 「病院よ。あんた、数日寝てたのよ」

 

 「助けて、くれたんですか……? でも、このままじゃ世界が火に……」

 

 「事情は安芸って人と楓達からも聞いたわ。それに、火の勢いは安定してるからもう大丈夫だって」

 

 風からそう聞かされた美森はまさか自分以外が生け贄に? と慌てるが、そうではないと告げられる。そこから彼女は仲間達によって説明を受けた。

 

 助け出された美森は、本来ならそのまま死んでいる程の生命力を根刮ぎ奪われていた。恐らくはそれで生け贄というお役目を果たしたことになったのではないかという。今こうして生きているのは訓練の賜物か、それとも本人自身の気質なのか体が非常にタフであり、本当に死ぬ前に仲間達が助けるのが間に合ったからではないかとのこと。

 

 「体鍛えててよかったね、わっしー」

 

 「2年前からの訓練が役にたったな!」

 

 「どこも異常無しだそうです」

 

 「私……本当に助かったの……?」

 

 「そうよ、ギリギリセーフ!」

 

 「お役目ご苦労様。まあしばらくは入院だろうけど、この際ゆっくりしなさい。あ、劇は幼稚園の方に待ってもらってるんだから、退院したら覚悟しなさいよ」

 

 園子と銀が笑ってそう言い、樹が安心させるように微笑み、風が腰に手を当てながらにししっと笑い、夏凜が腕を組みながら悪戯っぽく告げる。

 

 仲間達のそんな姿を嬉しく思う美森だったが、自身の手を握ったまま何も言わない楓のことが気になった。普段の彼なら朗らかな笑みを浮かべ、皆のように話しかけてくれそうなモノだが。

 

 「……ごめんね、美森ちゃん。自分は……数日とは言え君のことを忘れてしまっていた。忘れないと、1人にしないと約束したのにねぇ……」

 

 「私もごめんね、東郷さん。約束したのに、何日か忘れちゃってて……」

 

 「私の方こそ……そんなに心配させて、ごめんなさい」

 

 「仕方ないよ。私でも、そうしたと思うから」

 

 美森がそう思った直後、楓が口を開いた。相変わらず俯いたままで、その声は微かに震えていたが……美森にも、そして他の6人にも彼が深く悔やんでいることは理解出来た。ましてや彼は唯一彼女を助けに行くことはおろか結界の外に出ることすら叶わず、1人安全な場所で身を案じることしか出来なかったのだから。

 

 彼に続いて友奈も謝り、美森も謝る。忘れたことを、心配させたことを。そうして謝る彼女に、風と夏凜は告げる。次からはちゃんと全部話せと、自分達も忘れてしまっていたのだからお互い様であると。

 

 「それでも……皆、思い出してくれた。夢じゃないのね……っ」

 

 「そうだよ、東郷さん」

 

 「……ありがとう」

 

 「それはこっちの台詞だよ、美森ちゃん」

 

 「え……?」

 

 自ら神樹に願ったとは言え、やはり忘れられるのは怖かった。だが、皆思い出してくれて、助けてくれた。それが、美森には堪らなく嬉しかった。夢ではないかという疑問も、楓の手の温もりが、友奈の言葉が、皆の笑顔が現実であると教えてくれる。皆に、現実に感謝して……楓にそう言われて、思わず彼の方へと顔を向けて。

 

 そして、顔を上げて……目尻に涙を溜めながら笑顔を浮かべる楓を見た。

 

 「自分達の為にこんなになって……それでも生きていてくれて……ありがとう……っ!!」

 

 そう言った彼の目尻からこぼれ落ちた涙を見て……嬉しそうに笑う美森の目からも、涙が溢れた。

 

 

 

 

 

 

 あれからしばらく、皆がそれぞれの用事や家のことで帰ってからもギリギリまで楓と友奈は美森の元に居た。楓は美森を助けに行けなかった分、少しでも長く彼女の側に居たくて。友奈もまた、こうして3人で居たくて。

 

 そうしてギリギリまで居た後に病院を出れば外はすっかり暗くなっており、讃州市に戻った後に楓は友奈を彼女の家まで送って行った。

 

 「ありがとねぇ、友奈」

 

 「え?」

 

 「自分の分まで頑張ってくれて、美森ちゃんを連れて皆で戻ってきてくれて。本当に……本当に嬉しかった」

 

 友奈の家の前に着いた時、楓は彼女に面と向かって御礼を言った。急に御礼を言われた友奈はきょとんとしたものの、次の彼の言葉で何の御礼なのか気付き……彼が浮かべる朗らかな笑顔を見て、彼女も自然と笑みを浮かべた。

 

 「……うん」

 

 「じゃあまたねぇ。お休み、友奈」

 

 「うん! お休みなさい、楓くん」

 

 

 

 そうやってお互いに笑いあって別れた後。友奈は入浴する際に鏡を見て険しい表情を浮かべていた。その視線の先にあるのは、鏡に写る自分の裸……その左胸にある、太陽のような……ともすれば眼にも見えるような、禍々しい赤黒い模様。

 

 「……楓くん……」

 

 その模様を見ていると……何故だか、彼の笑顔が浮かんだ。




原作との相違点

・銀関連

・友奈とか皆の台詞とか

・乙女座が友奈を追いかけない。蠍座と共に園子と銀に攻撃されてた

・その他色々色々色々色々



前回の後書きで楓不在だからさっくり終わらせると言ったな。あれは嘘だ(うわああああ

現時点で園子と銀の満開を知らないのは夏凜だけという。そして2年前と現在でかなり戦闘方法が違う楓のことで当代と先代の間に知識の差が……シリアスの中の僅かなほのぼのです。

次回も本編です。番外編とDEifはいつになりますかね……お待たせしているリクエストの消化もしたいですし。DEifも終わらせないと。

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)
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