咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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お待たせしました(´ω`)

最近ガンブレモバイルと魔界ウォーズを新たに開拓しました。アサギ可愛すぎませんかね。ゆゆゆいでは勇者服の姉さんが来てくれました。後居ないのは夏凜と銀、園子(小)と夕海子さんです。

fgoでは水着イベント間近。水着武蔵ちゃんが当たりますように。

さて、今回は予告通りDEifの続きです。皆様お待ちかねのアレが来ますよ……極一部←


番外編 花結いのきらめき ー DEif6 ー

 「それじゃ、まずは鷲尾 須美ちゃん。バトルに行ってらっしゃい」

 

 造反神側の勇者、赤嶺 友奈が連れてきた精霊によってやることになった“自分自身”との戦い。勇者達がどんな問い掛けが飛んで来るのかと身構える中、最初に選ばれたのは須美であった。赤嶺の言葉と共に、須美へと変身した精霊が本物の須美へと指を指す。

 

 「どーん!!」

 

 「……それってひょっとして、笑うせぇる……」

 

 「雨野君、それ以上はダメ。というかなんで知っているの……?」

 

 精霊の行動に思わずツッコミを入れかけた新士が最後まで言う前に千景が止める。神世紀生まれの勇者は彼の言葉の意味が分からなかったが、西暦生まれの一部の人間は分かったようで“なぜ知ってる?”と新士を一瞬凝視する。

 

 「っく、う……あ……っ!?」

 

 「……おい、どうした須美? 須美!?」

 

 「須美ちゃん!? ……赤嶺さん、須美ちゃんに何をしたんですか?」

 

 「そう怖い顔しないで欲しいなー。さっきも言ったけど、精霊との対話が始まったんだよ。彼女の意識は今、ここじゃなくて精神世界に居るんだ」

 

 精霊に指を指された須美が一瞬苦しむような声を上げた後、目を虚ろにして立ったまま微動だにしなくなる。銀、そして新士が心配そうに声をかけるがやはり反応は無く、彼女をどうしたんだと新士が鋭く赤嶺を睨み付ける。

 

 その視線に怯むこと無く、赤嶺は表情も変えずにそう説明した。そしてこう続ける……戻ってくるには、精霊の問い掛けに答えるか論戦に打ち勝つしかないのだと。そう言い残し、赤嶺はどこかへと消える。話を聞いた勇者達は心配そうにするが……須美は絶対に勝つのだと、そう信じて反応が無い彼女を見守るのだった。

 

 

 

 そして、精神世界。真っ白な空間にて己へと変身した精霊に、須美は問い掛けられる。

 

 ― 鷲尾 須美にとって、乃木 園子とは何か。目の上のたんこぶではないのか ―

 

 「目の上のたんこぶ? 意味不明なことを。そのっちは友達よ」

 

 そう即答した須美。彼女にとって園子は勿論、銀と新士も大事な友達であり、戦友である。目の上のたんこぶ……邪魔者であるとか、鬱陶しい者であるとか、そんなことは断じて有り得ない。

 

 須美の答えを聞いた精霊は、もしもその意見が偽りであった場合、須美の魂に寄生すると言った。この言葉の意味の正確なところは須美には分からない。だが、決して良い意味ではないことは想像に難くなかった。

 

 「私は今、貴女の精神世界に居る。だから貴女が体験した記憶を映画のように眺める事が出来るのよ。見える見える、貴女の記憶が……」

 

 須美には分からないが、精霊の目には見えている。目の前に居る須美の、この不思議空間に来るまでに彼女が過ごしてきた過去が。養子になる前、お役目の為に養子に出た後。まだ3人と関わりが薄かった頃、本格的にお役目が始まり出した頃……それら全ての記憶が。

 

 「お役目が本格的に始まって、4人の中から隊長を決める時があったでしょう? 隊長がそのっちに決まって、それが家柄や血ではなく実力で……そして、貴女が憎からず思っている“彼”にも自分より向いていると言われて」

 

 

 

 ― 貴女は、天才とも言えて……彼からの信頼も厚いそのっちに、嫉妬と劣等感を抱いているでしょう? ―

 

 

 

 「……何を言うの。そのっちは凄いし、新士君の言ったことも納得出来るものだった。それだけの話よ」

 

 精霊の言葉を須美は否定する。確かに、隊長になるなら自分が……そう思わなかった訳ではないし、園子の名が挙げられた時には驚いたりもした。その後に新士が言ったことで、まあ精神的なダメージを受けたりもした。

 

 だが、それだけだ。確かに園子が隊長になったのはその実力や頭脳によるモノで新士が頼るのも理解出来る。だからと言って彼女が邪魔である筈がない。それに彼女が隊長であることに、その理由に納得しているのだから。

 

 「……貴女はお役目を果たす時、いつも守られているだけだと、自分の力が足りずに足を引っ張っているのではないかと言う恐怖がある」

 

 「っ!?」

 

 「その恐怖を与えているのは、ある意味出来の良いそのっちと銀の2人と……守ってくれる彼に他ならない。貴女は妬んでいる。そのっちの天性の才能を、彼から頼られる彼女自身を」

 

 

 

 ― その負の感情を向ける相手を……友達と呼べるのかしら? ―

 

 

 

 精霊の言葉を聞いた須美の脳裏に浮かぶのは、彼から頼られる園子の姿。そして、その信頼に応える彼女の姿。

 

 3度、須美は3人と共にお役目を果たした。彼によって守られた最初の戦い。2戦目、3戦目では彼が頼った園子の作戦、そして発想や機転によって勝つことが出来た。自分でも出来た……そう言うことは、須美には出来ない。そういう意味では確かに彼女の能力は園子に劣るだろう。

 

 「……痛いところを突いたつもり? 記憶を眺めることは出来ても、心情は全然読めてないのね」

 

 「……何?」

 

 故に、須美は精霊にハッキリと告げる。

 

 「私は確かに、2人を眩しく思う時がある。彼に頼られるそのっちを羨ましく思う時がある。新士君に守られて……守られているだけでは嫌だと、そう思う時がある。だけどね」

 

 

 

 そんなモノは()()()()にはならないのだと。

 

 

 

 「私が2人に抱いているのは敬意。彼に守られているだけだと思うのは、私自身の力不足。それを人のせいになんてしないわ」

 

 断言する。須美が抱く感情は決して負のモノなんかではない。友達として、仲間として、それ以上の存在として敬意を抱いているのだと。守られているだけだと思うのは自分の問題であり、決して3人のせいなのではないのだと。

 

 「下衆の勘繰りで私達の仲は引き裂けない。消えなさい、妖怪!」

 

 「……自分が至らない部分を既に自分のせいと受け入れていたか……」

 

 その言葉と共に、精神世界と現実世界の須美の姿をした精霊の姿が消えていく。そうして須美自身も、現実世界へとその意識が戻って行くのだった。

 

 

 

 「おお……須美の姿をした精霊が消えていった!」

 

 「勝ったんだね、流石わっしーだよ!」

 

 「須美ちゃんがそう簡単に負けるとは思っていなかったけど、これで一安心だねぇ」

 

 「……あ……銀、そのっち、新士君。ここは……戻ってきたのね」

 

 「うん。わっしーの幻は消えていったよ」

 

 「お帰り須美ちゃん……お疲れ様」

 

 「ただいま、新士君。ふふ、相手も馬鹿な質問をしたものだわ」

 

 3人の仲間に囲まれて嬉しそうにした後、赤嶺に向けて不敵な笑みを浮かべる須美。事実として、彼女は殆ど迷うことも言い淀む事もなく精霊に打ち勝った。大したことは無かったとそう言える程、それこそ完勝と言ってもいい。

 

 「……ねぇ、新士君」

 

 「うん? なんだい?」

 

 「私は、守られてるだけにはなりたくない。私も守れるように……頑張るから」

 

 「っ……」

 

 「……うん、一緒に頑張ろうね」

 

 「ええ!」

 

 守られているだけでは嫌だから。頑張ってもらうだけでは、嫌だから。だから自分も守ることが出来るように頑張るのだと、須美は新士に告げる。それを受けた新士は、朗らかな笑みを浮かべて頷いた……須美の言葉を聞いてハッとし、顔を少し青くした東郷にちらりと視線を一瞬送りながら。

 

 「お~、自分と決着を着けてきたね。小学生なのに凄いなー、もっと迷うかと思ったよ」

 

 そんな称賛の言葉と共に、さっきまで消えていた赤嶺が姿を現す。その赤嶺に、須美はこんな方法では自分達が揺らぐことはないと告げる。だが、赤嶺の表情に焦りは浮かばない。それどころか、例え須美がそうだったとしても他の人間ならばどうか? と投げ掛けてきた。

 

 「そうだ、言い忘れてたんだけど……精霊に取り憑かれるとこの世界の中では再起不能だけど、元の世界に戻れば精霊の影響は消えるから元通り。紳士的な攻撃でしょ? 血を見ずに無力化だもんね」

 

 そう告げた赤嶺は更に続ける。既に他の勇者達……この攻撃が通じそうな者にも精神攻撃を仕掛けているのだと。愛媛で赤嶺が途中から居なかったのは、この攻撃の準備の為。

 

 「今まで調子が良かった分の反動だと思って、自分の幻影と論戦してね」

 

 「つまり、あたしの偽物も出現するってことか!」

 

 「あたしの偽物の可能性もあるぞ」

 

 「面白い! もう1人の私! さぁどっからでもカモン! 連れ帰って農作業を手伝ってもらうわ!」

 

 「……もう1人のアマっち、連れて帰れないかな」

 

 「いいわね園子、それ採用」

 

 「しなくていいから」

 

 赤嶺の言葉に対し、銀達は自分達の偽物が出るかもしれないと身構え、歌野はむしろバッチ来いとばかりに笑い、園子(中)がボソッ呟いて風が反応する。そんな2人の声が聞こえた新士は赤嶺に視線を向けたまま鋭くツッコミを入れる。

 

 そんな6人に対し、赤嶺は少なくとも銀達と歌野には仕掛けるつもりは無いと言う。理由は、精神攻撃なんて効きそうに無いからだとか。そして、3人等よりも遥かに効きそうな者達が居るとも。

 

 いつの間にか増えていた、勇者達の姿をした精霊。それぞれ若葉、杏、千景、高嶋。主に西暦組が狙われる形となったが、それ以外にも夏凜の姿もあった。

 

 「ズルいぞ赤嶺 友奈! 正々堂々と競い合いをしろー!」

 

 「そうだ! 球子さんの言うとおりだー!」

 

 球子、銀(小)が不満を口にするが、赤嶺は自分なりに正々堂々ぶつかっていると言って取り合わない。そして赤嶺は“レクイエム”と呼んだ巨大なバーテックスの体の飛び乗り、再び勇者達から距離を離す。

 

 そうこうしている内に精神世界へと意識が飛んでいく者達。彼女達を信じて待つしかない者達は自分達に出来ないことはないかと話し合い、友奈が言った応援を外からすることで援護することにした。

 

 若葉に、夏凜に、高嶋に。その効果があったのか、3人は次々に精神世界で精霊に打ち勝ち、現実世界へと戻って来る。精神攻撃に晒されているのは、後2人。

 

 「さてさて、精神攻撃もいよいよ最高潮だよ。本命はどういう……って鞭!? んぅ、キツイ……っ」

 

 「こっそりと近付き、襲う時は一気に。補食の基本ね。さあ、捕まえたわよ!」

 

 「意地でも攻撃してくるなぁ……じゃあ無駄だと思うけど!」

 

 レクイエムに乗って離れた場所に居た赤嶺に言った通りこっそりと近付いていた歌野。赤嶺が気付く前に己の武器である鞭を巻き付けて捕獲するが、反撃として赤嶺も無駄と思いつつも精霊をけしかける。

 

 が、歌野のメンタルは赤嶺の想像を越えて強靭だった。精霊も論戦を仕掛けてはみたものの心が折れたように“ダメだ、何を言っても聞かない”とだけ言い残して消えていった。案の定無駄だったと、赤嶺は苦笑いして一時的に捕まるのだった。

 

 この時点で目覚めていないのは杏、千景の2人。しかし、彼女達もまた仲間の応援を受け、他の者達よりも時間がかかったものの論戦に、精霊に打ち勝った。

 

 「まさか全員戻って来るとはね……コングラチュレーション。それじゃ……力を溜めた私が直接戦ってみるしかないかな」

 

 称賛の言葉と共に動き出す赤嶺。戦闘態勢に入った彼女を止めるべく友奈が動き、お互いにぶつかり合う。だが、僅かに友奈が押された。以前よりも力が増しているも驚く友奈に当然だと告げ、赤嶺はいつものように大量のバーテックスを呼び出し、勇者達へとけしかける。

 

 精神攻撃等よりも分かりやすいと、勇者達はバーテックスとの戦闘を開始。数こそ多いが、勇者側も変身可能になった園子(中)と銀(中)が加わり、精神攻撃を仕掛けてきたことへの怒りもあり、そう時間を掛けずに殲滅、勝利する。

 

 勝利して直ぐに、樹がワイヤーを使って赤嶺の体を雁字搦めにして縛り付ける。幾度となく何らかの力で逃げている赤嶺を警戒してか、それはもう厳重に。仲間の心を傷付けるような事をされて、樹も珍しく本気で怒っていたのだ。

 

 「とっても怒ってるね……まあ当然だよね」

 

 「……私、分かりません。精神攻撃は嫌だったけど、それでもきちんと抜け出す説明はなされていた」

 

 「そうなんです。貴女は……なんというか、まるであの手この手で私達を試しているかのよう」

 

 「ふふ……重要なのはそっちが勝ったってことだよ。造反神の勇者相手にね……凄いことだよ? 造反神は天の神に近しい力の持ち主なのに」

 

 「そ、そこまで強い存在なんですか?」

 

 仲間達が樹が捕まえた赤嶺に一挙手一投足逃さないとばかりに鋭い視線を送る中で、杏と須美が疑問を投げ掛ける。が、赤嶺は取り合わずにただ事実だけを述べ、褒めた後に樹が聞き返す。

 

 天の神は世界の理を塗り替え、火の海へと変える力を持つ存在。そんな存在に近しい力を持つとなれば、造反神の力も勇者達の想像を越えるだろう。もう1柱似たような格の神が居るらしいが、この神は中立の立場に居ると言う。

 

 「それほど強いのなら、初期に押されていたのにも納得ね」

 

 「土地が真っ赤だったものね」

 

 「でも、それだけ強いのなら天の神に負けなかったのでは……?」

 

 「天の神は周囲も強いからね。何より別……これはいいか。また作戦を練り直してくるよ。皆、バイバイねー」

 

 その神に対して勇者達は疑問をぶつけるが、赤嶺は特に確信めいたことを言うこともなくいつものようにこの場から逃げようとする。しかし、無駄だとは理解しつつも動いた者が居た。

 

 「そう何度も逃がさないぞ!」

 

 「いい加減捕まってくれませんかねぇ……?」

 

 「もう無駄だって薄々分かってるのに動いてみるあたりは流石勇者だね。勇者の男の子もお姉様に負けず劣らず速いし……お姉様に強く掴まれるのは嬉しいな。君も、何だか不思議な温かさを感じるよ」

 

 「っ!?」

 

 「……」

 

 「だけど、私は捕まえられないよ。じゃあねー」

 

 赤嶺の片腕を、素早く隣に移動した棗と新士の2人ががっしりと強く掴む。が、2人とも赤嶺の言うとおり無駄だとは理解している。それでも、動かずには居られなかった。

 

 結局、赤嶺はそう言った後にあっという間に消え失せる。全員が僅かな落胆と共に赤嶺が居た場所を少しの間見つめ、首を振って気持ちを切り替えようととしたその時だった。

 

 「っ!? アマっち、後ろ!」

 

 「えっ?」

 

 「くっ、まだ居たの!? 新士君!」

 

 「ちっ、新士にも!?」

 

 「ふふ……どーん!」

 

 真っ先に気付いたのは園子(中)。唐突に、本当に唐突に新士の後ろに現れたもう1人の新士。彼女の声に反応し、振り返った新士は鏡合わせのように居たもう1人の自分……精霊の姿を見て間の抜けた声を出し、東郷が思わず手を伸ばすも届かず、銀(中)の驚愕の声を聞いたのを最後に……新士の意識は、精神世界へと引き込まれた。

 

 

 

 

 

 

 「……やられたねぇ。まさか自分にも来るとは」

 

 「その割には、この世界に来てからあんまり驚いてないみたいだねぇ」

 

 「似たような体験をしたことがあるだけさ。さて、さっさと済ませよう。あまり皆を心配させたくないからねぇ」

 

 「そうだねぇ……なら、早速問わせてもらうよ」

 

 真っ白な空間に、新士は他の皆と同じように精霊と向かい合わせに立っていた。もう終わったと思って油断したと苦笑する新士に、同じ顔の精霊はそう言って彼の前に現れる。

 

 話もそこそこに、新士は精霊にそう促す。恐らくはこれが今回の最後の戦い。自分さえ勝利すれば、後は帰るだけ。この空間に来る直前に仲間達の焦る声が聞こえたから、早く終わらせて安心させてあげたかった。そして、精霊は新士に問う。

 

 

 

 ― 雨野 新士……犬吠埼 楓は、この世界に生まれて良かったのか? ―

 

 

 

 「っ……」

 

 「答えられないなら、君の魂に寄生させてもらう。もっとも、それはこの世界でしか意味がないのだけどねぇ」

 

 それは、新士に突き刺さる言葉であった。元々はこの世界の住人ではない、転生者と言う特殊な存在である彼だからこそ、その問いかけは彼の心に深く入り込む。

 

 彼の脳裏に浮かぶのは、この世界に生まれてからの約12年。犬吠埼の家族、そしてお役目を共に果たす3人の仲間。未来において、犬吠埼の両親が死別していることは姉妹から聞かされていた。それが、自分達がお役目を果たしていた時期であることも。

 

 彼はこの世界が何かの作品であったことを理解している。が、その内容は12年の中で忘れてしまっていた。少なくとも、己が居ることで既に本来の内容からは離れているのは分かるが。だからこそ、思うのだ。自分が居なければ、自分が転生などしなければ……より良い未来があったのではないかと。

 

 犬吠埼の家族が全員で暮らせる未来が、園子が泣かない未来が、東郷が記憶を失わない未来が、銀が苦しまない未来が……自分さえ居なければ訪れていたのではないかと。

 

 「……そう思ったことがない、とは言わないよ。この世界に来て……自分のことを想ってくれて、そして苦しんでいたあの子達を見てからは余計にね」

 

 「そう、皆苦しんでいた。それは君の死こそが……いや、君の存在自体が原因。君との出会い、君との繋がり……それこそが間違いなんだ」

 

 「そうかも……知れないねぇ」

 

 「認めるのかい?」

 

 「そうだねぇ……少なくとも自分じゃあ、明確な答えなんて出せそうにないや。だけど」

 

 

 

 ― 生まれてきたことが間違いだとは……思わない ―

 

 

 

 新士の言葉に、精霊は目を見開いた。それは答えられる筈がないと思って居たからか、それとも他に何か理由があるのか。

 

 「自分の過去を見たのなら、君も見て、聞いたハズだ」

 

 新士が……楓が産まれた時、既に彼は自意識があった。母親の腹から産まれ、医者に取り上げられ……母の側まで近付けられた時。そして、父親がその手に自分の小さな体を抱いた時、楓は確かに聞いた。

 

 「“産まれてきてくれてありがとう”……その時の両親の言葉は、ハッキリと覚えているよ」

 

 何せそれが、彼が“犬吠埼 楓”として生まれた時に両親から初めて告げられた言葉だったのだから。その時から、楓はこの世界の住人になったのだから。

 

 「姉さんは自分を良く構ってくれたし、樹は自分の後ろを良く付いて回ったよ。自分の名前を呼んで、自分の手を引いて、自分と手を繋いで、遊んで、勉強もして、たまに一緒に寝て……幸福(しあわせ)な暮らしだった」

 

 初めての弟である楓を、風はこれでもかと可愛がっていた。楓がある程度動けるようになれば、その手を引いて共に過ごしていた。樹が産まれると今度は楓が姉の真似だと言って構い、風が少し拗ねると今度はそっちを構い……たまに姉と妹が楓を取り合ったりもしたが、その時には3人で一緒に色んなことをやって、仲良く過ごした。

 

 「お役目の為に養子に出て雨野 新士となってから、彼女達3人に出会った。初日の銀ちゃんのこと、その翌日ののこちゃんのこと……お役目が本格的に始まってからの須美ちゃんのこと、全部覚えてる」

 

 転校初日に遅刻しておかしな自己紹介をした銀。その翌日に話して、それだけのことなのにとても嬉しそうにしていた園子。お役目が始まるまであまり関わりが無かったが、始まってからは良く一緒に居た須美。

 

 初めてバーテックスと戦って、初めて勝利した後の祝勝会。初めて皆で食べたジェラートの味を新士は今でも思い出せる。その後の戦いも、合宿も、園子の家で色々と服を見たことも……お互いの夢を語り合ったことも、遠足の4日前の日に至るまでのその全てを。

 

 「自分は、生まれたことが間違っているかもしれない。それでも……自分が生まれたことを否定出来る訳がない。自分が生まれたことを祝福してくれた、自分が居たことで笑顔でいてくれた人達が居るんだから」

 

 「より良い未来があったかも知れないのに?」

 

 「自分が生まれたからこそ、良くなった未来があるかも知れない」

 

 「彼女達を酷く悲しませたのに?」

 

 「それだけ想ってくれていることは嬉しい。それに……彼女達は、きっと乗り越えてくれるさ」

 

 「乗り越えられないかも知れないのに?」

 

 「乗り越えるさ。そして……きっと、その手に未来を、夢を掴み取ってくれる。成長した姉さんも樹も、のこちゃんに須美ちゃんに銀ちゃんも……彼女達が未来で得た仲間である結城さんと夏凜さんも。皆で手にしてくれるさ」

 

 「……最後に、もう1度だけ問うよ。“君がこの世界に生まれたことは間違っていたか”?」

 

 

 

 「間違っていない。自分が生まれたことは望まれたことで……きっと、この“犬吠埼 楓”の12年の短い人生にも意味はあったんだからねぇ」

 

 

 

 新士(かえで)が朗らかな笑みと共に答えたのと、現実世界のもう1人の新士が消えたのは殆ど同時だった。そして彼の意識も現実世界へと戻って来た時、周囲には家族である姉妹と中学生、小学生の姿の仲間達。そしてその9人を見守るように他の勇者達が居た。

 

 「楓! 無事!?」

 

 「お兄ちゃん、大丈夫だった?」

 

 「姉さん、樹……大丈夫だよ。ちゃんと勝ってきたからさ」

 

 心配そうにしつつペタペタと新士の顔に触れる風。樹も不安気にしながら近付いて聞くと楓は数秒姉妹の顔を見て安心させるように笑いかける。その表情を見て、2人も安堵の息を漏らした。

 

 「さっすが新士! 歌野さんに負けず劣らずの早さだったな!」

 

 「アマっちも流石~♪」

 

 「新士君なら心配いらないとは思っていたけれど……本当に良かったわ」

 

 「ありがとねぇ。まあ……楽勝だったよ」

 

 新士の帰還に無邪気に喜ぶ小学生組の3人。この3人としては、新士が精神攻撃に負ける姿が思い浮かばなかったことだろう。それでも心配だったのは当然のことだが。銀は新士の肩に手を置き、園子は両手を合わせて称賛し、須美も胸に手を当ててホッとしつつ微笑む。そんな3人に、新士は冗談めいたように答えた。

 

 「アマっち……良かった……」

 

 「肝が冷えたってこういう感じなんかな……」

 

 「新士君が勝てて良かった……もしものことがあれば、何をするかわからないもの……私が」

 

 「そっちの3人は心配し過ぎだよ……でも、ありがとねぇ。東郷さんは落ち着こうねぇ」

 

 中学生組の3人は同時に安堵の息を吐いた。精神世界での戦いとは言え、彼が1人で戦うというのは彼女達にとって絶対に避けたかったことであるから。それでも、今回はちゃんと戻って来てくれたことが嬉しく……思わず目尻に浮かんだ涙を拭った。

 

 久方ぶりの赤嶺 友奈との戦い。それを、勇者達は無事勝利したのだった。

 

 

 

 

 

 

 それからも勇者達は戦いを続けた。愛媛を奪還する際、2体の超大型のバーテックスが現れるが起きた。神託では堅守……向かってくる敵を迎撃すると出たが、今まで神託の通りに戦ってきた勇者達はここにきて神託が無くとも挑むという選択を取る。

 

 数多の敵が密集する敵地に向かうという初めてかつ危険な行動ではあったが、その甲斐あって超大型の1体を打倒。その後のもう1体の超大型バーテックスと赤嶺、大量のバーテックスとの戦いを制し、愛媛を奪還する。

 

 奪還後、更に神樹の力が戻ったことで巫女達による浄化の儀……敵の侵入を防ぐおまじないをすることで守りを固める。そして奪還する目標を徳島へと定め、再び動き出した勇者達。その際、再び仲間が増えることになる。

 

 「歴代勇者の方々ですね。神樹様からの神託で把握しております。私は国土 亜耶と言います。皆様、宜しくお願いします」

 

 最初に現れたのは巫女の国土 亜耶という少女。勇者達を尊敬するあまりに出会って即土下座をするという低姿勢っぷりを見せたが、同学年だと言う樹と杏、そして勇者達と接していくことで緊張も解け、勇者達のノリに少しずつ染まっていって自然体で居られるようになる。

 

 そんな彼女を迎えてからしばらく。徳島での戦いは膠着状態へと陥り、それを打開する為に赤嶺から一騎討ちの提案があった。勇者達は話し合いの末にそれに乗り、赤嶺と戦うことになった友奈が無事に勝利。徳島の大半を奪還することに成功する。そして、この勝利によって残りの仲間が来られることになった。

 

 が、その仲間の1人が赤嶺の嘘を信じてしまい、勇者達と戦うことに。後から召還された3人の仲間もとりあえず戦闘を行い……ある程度戦ったところで、ようやく誤解が解けた。

 

 「楠 芽吹……」

 

 「三好 夏凜……!」

 

 「あれ、雀ちゃん!?」

 

 「あれ、勇者部の皆さん!?」

 

 「っ!? ……おじいちゃ……雨野、新士……?」

 

 「おや、君は確か隣のクラスの……山伏さん、だったかねぇ? 大きくなったねぇ……って、中学生だから当たり前か」

 

 戦いを終え、樹海から部室へと戻った勇者達。新たにやってきた防人の4人の1人の弥勒 夕海子から謝罪を受け、和解した後に新たに自己紹介をして状況の説明を行う。また、神樹が呼び出せる仲間はこれで全員であるらしい。

 

 「しずく、皆にシズクを紹介できる?」

 

 「うん、これなら……せーのっ」

 

 「はぁーっ! 勇者様達、夜露死苦! 山伏 シズクだ!」

 

 「「わぁっ!?」」

 

 「「ワイルド!?」」

 

 「おや、もう1人の山伏さんですか? 宜しくお願いしますねぇ」

 

 「ちょいと新士君、受け入れるの早すぎないかねチミィ」

 

 しずくの第2人格であるというシズクの登場に樹と杏、高嶋と千景が驚くも新士はぽやぽやと笑って直ぐに受け入れ、雪花が呆れと共にツッコミを入れる。そうして仲を深めていった。

 

 多少のギクシャクはあったものの、力を合わせて戦っていき、遂には徳島の奪還を成した。これで残すは高知のみとなる。勝利、そして後少しで全ての土地を奪還し、お役目を果たすことが出来る。

 

 (……後は、高知だけ。そこを奪還してしまえば……お役目が終わってしまえば、また新士君と……分かってるのに……分かってる、のに……)

 

 そしてそれは……この世界での奇跡の邂逅が終わることを意味していた。




という訳で、今回は須美ちゃんのちょっとだけ変わった問い掛けとメインでもある新士への問い掛けでした。転生主人公物にありがちなことではありますが……このDEifでは、避けては通れない所でした。

開き直りとも取れるかもしれませんが……新士が実は感じていた恐怖や思いは感じてもらえたでしょうか。もしも皆様が新士の立場に居たら、どうなったでしょうね?

さて、次回は本編か番外編か……番外編でほのぼの入れたい気もしますし、本編を進めたい気もします。つまりは未定です。どうしよっかな←

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