咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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お待たせしました……また1週間もお待たせして申し訳ありません。昨日投稿するつもりだったんですが、尋常じゃなく頭が痛くなったので見直しもしつつ今日になってしまいました(´ω`)

ゆゆゆいで満開友奈来ました。本作を書いているからですかね。嬉しくてガッツポーズして壁に利き手ぶつけました。痛い。

ポケモンマスターズ始まりましたね。メイちゃん可愛すぎ問題。私はクリスでスタート←

dffooも始めました。ジャックの中身が鈴村さんなので完全体にしようと思います。

アンケートにご協力、誠にありがとうございます! 本編ゆゆゆいなて神奈様勇者部参戦決定! 勇者か巫女か逸般人か←

そういえば、いつの間にか本作もUA20万越えてたんですよねぇ……皆様、ご愛読本当にありがとうございます。これからも本作を宜しくお願いいたしますm(_ _)m

さて、今回もあまり話は進みませんが……大きく原作と変わります。


咲き誇る花達に幸福を ー 12 ー

 真っ白な空間。そこで神樹は目の前の鏡を通して四国の……勇者達の様子を見ていた。今、鏡に映っているのは友奈。天の神により何かしらの模様を刻まれていた彼女を、神樹は特に注視していた。

 

 ― やっぱり、彼女から感じられる天の神の力が弱まってる……ううん、もう殆ど感じない ―

 

 以前から天の神にしては込めている力が弱いと感じていた模様。神樹の思っていた通り、日に日にその力は弱まっていき、今ではほぼ力を感じられないほど。そのこと自体は喜ばしいことなのだが、やはり不可解だと感じていた。人間嫌いの天の神が、その程度で済ますのかと。

 

 ― 彼女はもう大丈夫そう、かな。……っ!? ―

 

 神樹から見ても、友奈はもう大丈夫だと判断出来る。まだ残っている力のせいで多少の体調不良はあるだろうがそれも次第に収まっていく事だろう。あの模様が祟りにしろ呪いにしろ、耐え抜いた友奈に神樹は称賛の意を込めて笑みを浮かべて呟く。

 

 しかし直ぐにその笑みも無くなり、驚愕したように目を見開いた。そして神樹は鏡に映る光景を友奈から楓へと変える。そこに映っていたのは、自室で机の上にうつ伏して眠っているように見える楓の姿。

 

 ― そんな……どうやって!? ―

 

 そして、その後方の天井付近に浮いている彼の魂に天の神の力を強く感じる赤黒く毒々しいナニカがまとわり付いている姿。神樹が驚いたのは、天の神の力を楓の近くに突然、何の前触れもなく感じたからだった。

 

 神樹は同じ神として天の神の力を感じとることが出来る。だからこそバーテックスの襲来を予期して神託という形で伝えられる。だからこそ友奈の模様の力の減少を知ることが出来る。だというのに、今起きていることを感じ取れなかった。

 

 ― いえ、今は驚いてる場合じゃない!! ―

 

 今まさに楓の魂が何処かへ……恐らくは天の神の元へと連れ去られようとしている。神樹としても、そして世界の為にもそれは絶対に避けなければならない。

 

 神樹は鏡に向かって手を翳し、鏡を通して外側から力を送り込んでナニカへの対処を行う。その場から動くことが出来ず、自分から天の神やバーテックスと直接戦ったりすることは出来ないが、力に対して力をぶつけるくらいは出来る。それに、友奈のように体に刻み込まれているなら引き離すことは難しいが、ただ魂にまとわり付いているだけの天の神の力。楓のお陰で力が増している今の神樹なら対処は充分可能だった。

 

 ― ……ふうっ……間に合って良かった。でも、本当にどうやってあの人に…… ―

 

 神樹がナニカを引き千切るように楓の魂から引き離すことに成功したのは、部屋に入ってきた風が楓の肩を叩いたのと同時であった。無事に彼の魂が体に戻ったことを確認して安堵の息を吐き……そしてまた考える。

 

 天の神が楓を求めているのは分かっていた。だから恨まれることを覚悟で彼を結界から出られないようにしたのだから。だが、どういう訳か今回、天の神は彼を直接狙うことが出来た。もし天の神の力に気付けなかったら、あのまま連れ去られていたかもしれない。

 

 不可解なのは、どうやって彼に力を送り込んだのかだ。直線的な接触なんてこれまで無かった。天の神が直接力を送り込んでくるのは結界がある以上不可能……結界内に天の神が力を送り込める通り道や媒体でもあれば話は別だが。それに、彼の魂が捕らわれるまで気付けなかったのも神樹にとっては理解出来ない。

 

 友奈の模様、彼の魂をこの空間に呼び出せないこと、彼に頻繁に起きている起きるはずの無い眩暈、そして今回の出来事。こうして不可解なことが連続して起きるのは神樹にとって初めての出来事であり、故に中々考えが纏まらない。

 

 ― あの人と話すことが出来れば、解決出来るかもしれないのに…… ―

 

 己だけで考えることに、神樹は限界を感じていた。“私”として確固たる意思、自我を持ち初めて数年。人間のように考え、人間のように喜怒哀楽の感情を得た神樹。結界を作り、人間達へ恵みを与えることが出来ても決して全知全能とは遠い。故に、答えを中々得られない。それが申し訳なく、そして神である自分を情けなく感じていた

 

 巫女達に神託を下すことも考えた。だが、巫女達にはあくまでもイメージでしか伝えることが出来ない。今を起きていることを伝えようとしても不明瞭過ぎてどう伝えたらいいのかわからなかった。故に神託を下すことも出来ず……それが余計に情けなかった。

 

 鏡の向こう、家族で食事をしている彼の姿を見る。楽しそうな食事風景……だが、彼の顔にはまだうっすらと冷や汗が浮かんでいる。それに、神である神樹の目には見えているのだ……まだ赤黒く毒々しい色が腕や体に残る、痛々しい彼の魂が。

 

 ― ……また、話したいな……あの人と……ああ、そっか。これが…… ―

 

 鏡に手を触れる。だが、力を送り込むことは出来てもその手が彼に届くことはない。彼を呼び出せない以上、いつまた話せるかもわからない。以前のように触れあうことも出来ない。

 

 “私”は己の鏡に触れていない手を胸元にやり、強く握り締める。その表情は悲しげに歪み、今にも泣きそうな程。胸の奥に感じている情けなさと申し訳なさ。そして……もう1つ。

 

 ― “さびしい”って……気持ちなんだね ―

 

 目を閉じてそう呟いた神樹は鏡を消し……また独り、思考の海に潜った。

 

 

 

 

 

 

 美森が楓に見つかって怒られる時から時間は少々遡る。楓と友奈に起きていることを知るべく変身した美森が最初に向かったのは、お隣さんでもある友奈の部屋だった。変身したことで増した身体能力は2階にある友奈の部屋のベランダ、その上の屋根に難なく降り立ち、美森は青坊主に偵察に向かわせる。

 

 室内の電気は消えている。が、精霊である青坊主には問題なく見えているらしい。彼(?)は室内を隠すカーテンの隙間を覗き込み、数秒程様子を見た後に美森に体全体を使ってジェスチャーで伝える。

 

 『対象は睡眠中。侵入可能であります』

 

 『了解。中に侵入し、鍵を開けなさい』

 

 『了解であります』

 

 青坊主のジェスチャーを見てから足音を立てずにベランダへと降り立ち、美森は声を出さずハンドサインで青坊主に指示を出す。彼は了解を意味するハンドサインを返した後に一旦消え、部屋の中に出現。中から鍵を開けた。

 

 「……あ」

 

 なるべく音を立てないように少しだけ窓を開け、中に入ろうとした美森。が、その年齢不相応な大きな胸が窓に引っ掛かる。仕方なくもう少しだけ開け、気を取り直して部屋へと入り込んだ。

 

 部屋の中は暗かったが、闇に慣れた目と勇者の視力はカーテンの隙間から入る月明かりもあり、問題なく見通せた。部屋の隅ではサンチョのクッションの上で鼻提灯を膨らませて眠る牛鬼の姿。そして、ベッドの上には友奈が眠っていた。

 

 (勝手に入り込んでごめんね、友奈ちゃん……? 手に、何か持ってる……?)

 

 眠る友奈に近付き、許可もなく勝手に入り込んだことを内心で謝る美森。ふと、眠る友奈の手に何かあるのに気が付いた。気になって覗き込むようにして確認してみると、それは友奈が良く作る押し花の栞。その花を見て、美森の表情が自然と緩んだ。

 

 (そういえば、海に行った時にも持っていたものね……その花菖蒲の押し花の栞)

 

 それは、かつて美森がお近づきの印として貰った物とは別の白い花菖蒲の栞だった。それを手に眠る友奈の表情はとても安らかで、良い夢でも見ているのかむにゃむにゃと言葉にならない寝言を幸せそうに呟いている。

 

 そんな友奈をずっと見ていたい気持ちに駆られるが、目的を忘れてはいけないと断腸の思いで視線を外して部屋の中を見回す。しかし、部屋の中に不自然な点は無い。流石に漁ると音が出て友奈が起きてしまうかも知れない。これ以上は……と美森が考えた時、不意に勉強机の上に置いてある一冊のノートが目についた。

 

 (あのノート、今まで友奈ちゃんが使ってきた各教科計31冊の中で学校では使ってるのを見たことがない……もしかしたら……)

 

 そう思った美森は机の前に移動してノートを手に取り、軽く開いて見てみる。そして内容を読み進めていく内に、美森の顔はどんどん青ざめていった。

 

 そこに書いてあったのは、去年風が事故に合った日から書いていた模様のことや部員達に起きた不幸との関連性……そして、美森から生け贄のお役目を引き継いでいたこと等。友奈の身に起きていることのほぼ全てが書かれていた。

 

 友奈本人としては、このノートに書いてあるのは自分自身が確認し、忘れないようにする為だ。言わば、自分と模様のことに関する観察日記のようなモノ。自分だけしか見ることがないと想定していた為に確認出来ていた事を全て書いてしまっていた。それを……美森は見ていた。

 

 (あ……友奈、ちゃん……そんな……)

 

 友奈が自分の生け贄というお役目を引き継いでしまっていたことに、そうして彼女が苦しんでいたことに……何よりも、そのことに今の今まで知らずに居たことにショックを隠せない美森。ノートを持つ手が震え、涙も溢れてくる。

 

 しかし、少し読み進めていくとホッと安堵の息が漏れた。そこには今では模様が殆ど薄れてきていることが書かれており、“もうすぐ無くなるかも!?”と字体からも嬉しさが伝わる明るいモノになってきているからだ。実際、もう殆ど苦しさや熱さは感じていないのだろうというのは幸せそうに眠る友奈を見れば分かる。

 

 とは言え、まだ安心は出来ない。完全に模様が消えるまではなにが起きても不思議ではない。涙を拭い、ノートを元の位置に寸分違わず戻しつつ美森は気を引き締める。

 

 (多分、楓君は友奈ちゃんの真実を知っている……もしくは、それに近いところまで推測を立てている。思えば今まで以上に2人が一緒に居るようになったのは、2人が参加しなかったクリスマスイブの日の翌日から。その時点で彼は、きっと……)

 

 友奈の部屋から出て青坊主に鍵を掛けてもらい、美森は再び屋根へと降り立ち……今度は犬吠埼家へと向かいながら思考を回転させる。

 

 恐らくは彼だけが真実に近かったと、美森はほぼ確信している。彼の察しの良さは彼女自身知るところであるし、その察しの良さに救われた経験があるからだ。事実、友奈は体を苦痛に蝕まれている間も楓と共に居る時は本来の笑顔を浮かべられていた。

 

 (……友奈ちゃんの身に起きている真実は分かった。言えない理由も……分かった。楓君が私達に何も言わないのも、多分そこまで理解しているから。だけど……)

 

 ノートを見たことで友奈が誰にも言えなかった理由、楓が恐らくは友奈の異変に気付きつつも他の仲間に伝えなかった理由を美森は理解した。言えば仲間に不幸が訪れると言うのなら、友奈の性格からすれば言えないだろう。もし美森が友奈の立場だとしたら、間違いなく言えない。楓もそこまで理解出来ているのだろうと、美森は予想する。

 

 だが、今までのは()()()()()()()()()()()()()であって()()()()()()()()()()()()ではない。もしかしたら同じなのかも知れないが、美森はそれは違うと確信にも似た気持ちを抱いていた。

 

 思考を止めずに動くこと数分。目的地の犬吠埼家にに辿り着いた美森は記憶にある楓の部屋の窓の所に移動する。犬吠埼家にはそこそこ広い庭があり、手入れは時々大赦の人間がやってきて行っているという。

 

 (部屋の電気は……点いてない。カーテンが閉められているから中の様子はわからない。楓君の気配はベッドの所にあるから、眠っているのだと思うけれど……)

 

 楓の部屋の窓は充分に人が通れる大きさではあるが友奈の部屋の窓よりは小さい。念のため、と窓が開くか確認する美森。案の定開くことはなく、先程と同じように青坊主に指示をして部屋の中で出現して中から鍵を開けてもらう。美森はそれを確認した後にまた少し窓とカーテンを開け、侵入を試みる。

 

 「っ、また引っ掛かって……私は同じ過ちを……」

 

 「へぇ、どんな過ちを犯したんだい?」

 

 「それは窓に胸が……あ」

 

 が、やはりその大きな胸が窓の縁に引っ掛かってしまった。仕方なくまた窓をもう少し開いて侵入し、振り返って窓と己の胸に視線を送って苦々しく毒づく。そうしている彼女の背後からそんな問い掛けが届き、思わず答えようとして……体が硬直する。

 

 ギギギ……と油の切れたブリキの人形のようにゆっくりと振り返る美森。そこにはベッドに腰掛けてにっこりと笑っている楓の姿があり……その隣には夜刀神と、その夜刀神に今にも飲み込まれそうになって小さな手をバタバタとさせている青坊主の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 そして時は戻る。電気の着いた部屋の中心で勇者服の正座をしている美森とベッドに腰掛けたまま腕組みをして珍しく眉間に皺を寄せている楓。隣には夜刀神がチロチロと舌を出し、青坊主が震えながら美森の背中にしがみついている。

 

 「で、なんでこんなことをしたんだい? それもこんな時間に……何の理由も無くした訳じゃないだろう?」

 

 「それは、その……」

 

 時刻は深夜の1時を回った頃。そんな時間に異性の部屋に不法侵入……字面を見ればかなり危ない人だが、理由も無くそんなことをするような子ではないことは楓も知っている。だからお説教もそこそこに理由を聞いたのだが、肝心の美森は言い淀んで答えに詰まる。

 

 無論、理由が無い訳ではない。だが、隠し事をしている相手の隠し事を知ろうとやってきたのにそれを正直に言うのは憚られた。とは言え、このまま黙っていれば解決するという訳でもない。更に言えば、最悪本当に意味も無くしたのだと楓に思われて軽蔑されるかも知れない。

 

 「……楓君、私達に言えない何かを抱えてるんじゃないかって思って……疲れてるみたいだし、よく眠れてないみたいだし……」

 

 「……で、なんでそれが不法侵入することになるのかねぇ」

 

 「その、楓君の部屋にならその理由とか、何かヒントになるものがあるかと思って……ごめんなさい」

 

 結局、美森は正直に伝えることにした。ああだこうだと言い訳を考えて言うより、直接聞いた方が答えてくれるかも知れないと思ったからだ。

 

 美森からそう聞いて、楓はジッと美森の顔を見る。謝った後に俯く彼女は、正座していることもあってか更に小さく、幼く見えた。

 

 (小学生の頃から変に行動的だとは思っていたけど、ねぇ……)

 

 楓の脳裏に小学生の頃、銀を尾行したり雨野の家で訓練していた楓を覗いたりしていたのが浮かんだ。友達や仲間のことを知るためなら犯罪スレスレのこともやっていたことを思いだし、その顔に呆れが浮かび……苦笑いに変わった。

 

 やっていることは誉められたことではないが、楓はその行動理由自体は別に嫌いではない。銀の時も、彼女のことを心配していたからだ。今回もそう。楓の分かりにくい疲労感や寝不足に気付き、心配だから……その理由を知りたいから、行動に移したのだから。

 

 「そうだねぇ……“悩んだら相談”……それをしなかったのは自分だからねぇ」

 

 「……」

 

 「……少し恥ずかしいんだけどねぇ、前に悪夢を見たんだ。起きた後もしばらく冷や汗が止まらないくらい、嫌な夢を。それ以来、眠るのが怖くて……ね」

 

 友奈のことはまだ言えない。が、自分自身のことは言える。だから楓は、恥ずかしいと言いつつも答えた。

 

 魂の状態で何処かへと連れていかれそうになった楓。あの時の圧迫感と恐怖は、まだ楓の中に残っていた。現実だったのか、それとも夢の中の出来事なのか曖昧なところがあるが、そのせいで楓は眠るのが怖くて仕方ない。

 

 美森の侵入を察知出来たのも、単純に眠っていなかったからだ。もし彼女が来なければ、そのまましばらく彼は眠れずに過ごし、それでも日々の習慣から耐えきれずにほんの少しだけ眠り、日課のトレーニングの時間に起きることになっただろう。尚、青坊主は侵入して鍵を開けた瞬間に夜刀神が補食した。

 

 「またあの悪夢を見るんじゃないか……そう思うと、さ」

 

 「……楓君」

 

 「うん? ……美森ちゃん?」

 

 そう語る楓の顔を、美森は上目遣いに見る。その時の恐怖が甦っているのか僅かに震えている肩。写真で見た時よりも濃くなっているように見える疲労感と目の隈。普段よりも弱々しい楓の姿を見た美森は彼の名前を呼んで立ち上がり……美森の方を見た彼の体を抱きしめた。

 

 「楓君、覚えてる? 小学生の頃、私が同じように悪夢を見て怖くて……貴方に電話したこと」

 

 「……ああ、勿論。覚えているよ」

 

 「その後、楓君は私の部屋まで来てくれて……こうやって抱き締めてくれた。あの時、本当に嬉しくて、安心して……悪夢を見た恐怖も不安も、全部それらに変わっていったの」

 

 「それなら、向かった甲斐があったねぇ……」

 

 2人の脳裏に浮かぶのは、遠足の前日のこと。悪夢を見た美森(すみ)が恐怖から楓へと電話を掛け、そのことを話すと楓は勇者に変身して彼女の部屋へと向かい……こうして、抱き締めあったこと。

 

 「その時に言ってくれた言葉も……本当に、本当に……嬉しかった」

 

 

 

 ― 須美ちゃんが泣いているんだ。だったら自分は、いつでも駆け付けるよ ―

 

 

 

 「だから、今度は私の番。貴方が夢を見て怖くて眠れないなら……私が駆け付けるから。あの日、楓君がしてくれたように……こうして抱き締めるから」

 

 「……うん、ありがとねぇ」

 

 しばらく、2人はそうして抱き締めあっていた。楓の震えもいつの間にか止まり、部屋に飾ってある時計の針が2時を回る頃に彼に眠気が出て来て布団へと入り込み……眠るその時まで、美森はその手を握っていた。

 

 (楓君が寝不足だったのは、悪夢を見たからだったのね……余程怖い夢だったのかしら)

 

 楓の寝顔を見ながら、美森はそう思う。老熟していると言ってもいい彼が眠るのが怖くなる程の悪夢。言い方は悪いかも知れないが、友奈の時よりも思っていたよりは軽い理由で良かったと内心で安堵していた。

 

 そっと、握っていない方の手で楓の前髪を撫でる。当時は楓の方が背が低かった。だが、今ではすっかり追い抜かされ、その体格差に嫌でも男女の差というものを感じさせられる。それでも変わらないのは……抱き締めてもらう時の安心感。気恥ずかしさよりも嬉しさが出るその包容が、美森は大好きだった。

 

 (おやすみなさい、楓君……? あれは、ノート……? まだ真新しい。これも楓君が今まで使ってきた42冊の中で見たことがない……)

 

 完全に寝入ったことを確認し、名残惜しく思いつつも手を離す美森。電気を消してこの場から去ろうとした時、電源へと伸びる手が止まって視線が勉強机の上にあるノートに止まる。

 

 それは友奈の部屋の時の焼き増しのようで、どうにも気になった美森は近付いてノートへと手を伸ばす。友奈の時よりも冊数が多いのは性格や書き方によるものだろう。美森はそれを手に取って開き、読み進めていく。

 

 (これは……やっぱり楓君、殆ど気付いて……? 結界の外に出られない……楓君の魂が天の神の力を強める……?)

 

 そこに書いてある友奈の身に起きていることの予想。それは友奈の部屋で見たノートの内容と然程変わらず、改めて彼の察しの良さに驚愕する。その途中、何故結界の外に出られないのかの理由の部分を見て首を傾げた。

 

 そこには、“自分の魂が天の神の力を強めてしまうから?”という疑問が書かれていた。正直なところ、美森にはこの言葉の意味はよくわからない。だが、意味もなく書くことではないだろうと記憶に留め、更に読み進めるがそれ以上気になる情報は無かった。

 

 そうしてノートを見ている時……そして、来た時とは逆に窓から出ていく彼女の姿を、夜刀神はずっと見ていた。

 

 

 

 

 

 

 夢を見た。樹海で戦っている時の夢を見た。空を見上げれば赤く染まっていて……太陽が、そこにはあって。

 

 「……」

 

 太陽を見る。その周囲に、更に12個の小さな太陽があって……それらを背負う人影があって。私はその太陽に向かって跳んだ。後方に、同じように跳ぶ誰かの気配がする。その気配に意識を向けている暇は無くて、ただその人影に向かって手を伸ばした。

 

 人影に近づく。人影の姿が少しずつ露になっていく。

 

 「○○っ!!」

 

 夢を見ている私にはまだその人影の正体はわからない。だけど、夢の中の私は分かっているようで……多分、その名前を叫ぶようにして呼んだ。だけど人影は答えることはなくて。

 

 「○○○っ!!」

 

 そうやって叫ぶ私の前に、真っ白な勇者服を着た誰かが現れて……その人影に向かっていって。泣きそうな声で、私には聞き取れないその人影の名前を呼んで。

 

 そこで、目が覚めた。

 

 

 

 「……」

 

 布団から起き上がる。夢を見た。そして、その夢をはっきりと覚えていた。まるで、あの日のように。

 

 以前と違うのは、人死にを知らせるような夢ではなかったということ。でも……良い夢とは決して言えなかった。そしてこれを、只の夢だと言える程今の私は楽観的になれなかった。

 

 「もう、間違えない」

 

 枕元に置いてある端末に手を伸ばす。まずは過去に私の夢の話をしたことがある先代組の3人。次に友奈ちゃん達4人……は部活の時に直接伝えよう。もう、言わなかったことを言えばよかったと後悔したくないから。

 

 そう思って私は……楓君はやっと眠れたんだからと、まずはそのっちに電話を掛けた。




原作との相違点

・友奈が勇者御記を所持していない(大赦が結城家に来てないのでそもそも持ってない)

・友奈が安眠出来ている。どんな夢を見ていたかは内緒

・東郷さん、2度胸が引っかかる

・犬吠埼家はマンションではなく庭付き一戸建て(今更)

・その他多過ぎて最早書ききれんよ←



という訳で予告通り、その頃の神奈様と東郷さんでした。勇者御記は原作では友奈の苦しい状況を知る切欠となる重要なファクターでしたが、逆に言えば苦しい状況から脱しつつある本作ではそこまで重要ではないのでカット。代わりにノートに日記のように書いていました。他の仲間よりも先に真実を知る東郷さんである。

東郷さんの胸は2度引っかかる。絶対にやろうと思ってました。青坊主が夜刀神に飲まれるのもやろうと思ってました。ほら、卵と蛇だし←

いよいよ原作4話が終了。その後にやってくるのは原作だと友奈の神婚やそれを阻止しようとやってくる天の神。それに立ち向かう勇者部でしたが……本作ではどうなることやら。そもそも今年中に本編完結出来るのやら。

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