咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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また1週間……過去の2日、3日投稿はもう遥か昔の話です。お待ちしていて下さった皆様……待たせたな(´ω`)

前回の感想、20件は笑いました。やはり類友か。

以前他のゆゆゆ作品に感想を書いたところ、“愉悦部御用達”と言われました。そんな風に思われているのは喜ぶべきか悲しむべきか。

ゆゆゆいで防人ピックアップ来たので引いたところ、水着亜耶ちゃんと水着メブが来てくれました。2人共可愛すぎて辛い……ゆゆゆいか番外編でいつか亜耶ちゃんと楓の祖父孫の絡みを書くんだ←

さて、今回は前回程がっつり行きませんが……皆様も薄々気付いているであろうアレが来ますよ。


咲き誇る花達に幸福を ー 14 ー

 その振動は楓と友奈よりも先に部室に戻ってきていた6人にも届き、道が砕かれたことによる煙は部室から出た先にある廊下の窓から見えた。

 

 「っ、何? 今の……」

 

 「地震って訳じゃないよな」

 

 「お姉ちゃん、廊下の窓! 煙が上がってる!」

 

 「えっ? うわ……事故でもあったのかしら」

 

 夏凜、銀が一瞬ながら揺れたとハッキリ分かる振動に少し驚き、樹が煙を見て指を指し、風がそれを見てそんな感想を溢す。

 

 全員が部室から出て窓から顔を出し、煙が出ている場所を見る。煙の大きさや量から考えて、事故でも起きたのではないかと考えるがそこまで。気にはなったものの夢の話や依頼の後だったこともあり、野次馬をしに行くような気分でもなかった。

 

 「……ねえ、わっしー。あの場所……」

 

 「ええ……この学校に来る時に通る道よ」

 

 そんな4人に対し、園子と美森は嫌な予感を感じていた。煙が上がっている場所は美森が言うようにこの学校に来る為に通る道の1つであり、美森と友奈の通学路でもある。そして、外の依頼に出ている2人が通る道でもあった。

 

 美森は直ぐにスマホを取り出し、友奈へと電話を掛ける。いつもなら直ぐに出るのだが、今回に限って出ない。それどころか“お掛けになった電話をお呼びしましたが、電波が届かない所にあるか~”というアナウンスが聞こえる始末。

 

 そのメッセージが聞こえたのか、今度は園子がスマホを取り出して楓へと電話を掛ける。しかしこちらも出ることはなく、“電話に出ることが出来ません”とのアナウンス。2人の行動を見ていた4人も流石に嫌な予感を感じ始め、自然と煙が上がっている場所へと視線を向ける。

 

 「……まさか、ね」

 

 「そんなことは流石に……ないよな?」

 

 「そう、ですよね」

 

 たらりと冷や汗が流れたのは誰だったか。もしくは全員なのかもしれないが……この時、美森の脳裏に2人の部屋で見たノートの内容が思い浮かんでいた。即ち、天の神の話をすれば……何か不幸が起きるのではないかと。

 

 その瞬間、美森は駆け出していた。背後から仲間達の声が聞こえた気がするが、そんな事は気にしていられなかった。上履きから下靴へと履き替える暇も惜しいとそのまま学校を飛び出し、煙が上がる場所へと全速力で向かう。

 

 (そんな筈ない……だって、楓君も友奈ちゃんも様子がおかしくなったりしなかったじゃない)

 

 走りながら、自分の予想は外れている筈だと言い聞かせる。確かに天の神に関するかもしれない話はしたが、それをしたのは美森からであって友奈からではない。それに、話してる最中にも話し終わった後にも別段2人の様子が変わったということも無かったではないか。

 

 だから、この嫌な予感は気のせいだ。あの煙と2人は何の関係もない。きっとこうして向かっている途中で部室へと戻っている最中、もしくは煙がある場所の向こうで同じように煙に戸惑ってる2人と合流するんだ。そう思って、走って、ただただ走って、この焦燥感は杞憂だと安堵したくて。

 

 

 

 そして、辿り着いた先で美森が見たのは……身動き1つしない楓と、誰かの血で手を、服を、顔を赤く染めて泣き叫び続ける友奈の……変わり果てた2人の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 翌日、6人は学校を休んで大橋にある大赦の運営する病院の一室に居た。部活はしばらく休止だと既に知らせてある。学校にも休む旨を伝え、学校側も快く了承していた。

 

 今彼女達が居る病室には楓と友奈の2人がそれぞれのベッドの上に眠っていた。美森が先に辿り着いた後、他の5人も遅れてやってきてその惨状を目にして少しの間放心状態になり、友奈の絶叫が途絶えて彼女が気絶した後に園子が大赦に連絡。直ぐに救急車に消防車が来て2人を病院へと運んでいった。

 

 勿論、6人も部室に置きっぱなしにしていた荷物を大赦の人間に回収を頼み、病院へとついていった。病院に着いても2人は目覚めず、ずっと病院に居る訳にもいかなかったのでその日は帰宅し、今日また朝からやって来ていたのだ。

 

 2人が目覚める様子は無かった。友奈の家族と姉妹は医者から話を聞いたが、友奈は少しの打撲や擦り傷程度で楓も道の破片を背中や後頭部に受けているものの命に別状はないと診断されていた……少なくとも、体そのものは。

 

 「楓君……友奈ちゃん……」

 

 病室に美森は泣きそうな声が響く。体に問題はない……だがその精神は、心はどうだろうか。友奈の表情と声に込められた絶望は6人に……中でも同じように絶望した経験がある美森と風には深く届いていた。あの友奈が、それほど迄に絶望する何かが、あの場で起きた。そう察することは簡単だった。

 

 疑問なのは、あの場所で何が起きたのかだ。事故だと予想していたが車やバイクのようなモノは見つからなかったし、自然災害に遇った訳でもない。状況だけを見れば、楓が友奈を庇って怪我をして、それで友奈が絶望した……そう取れる。だが、何から庇ったというのか。そして友奈は、楓は何を見たのか。現状、それらがまるで分からなかった。

 

 6人の心配そうな視線が2人に向けられる。怪我自体は大したことはない。なのに……一向に目覚めない。包帯やガーゼを着けた顔が痛々しい。事故だというのなら、その相手を許すことは出来ない。自然災害だというのなら、運が悪かったと言う他無い。

 

 「……あ」

 

 「わっしー? どうしたの?」

 

 そうして美森の考えが危険な方向へと向かいそうになった時、2人を見ていた美森の口からポツリと声が漏れた。それは2人に繋がれた機器の音を除けば無音の室内にはよく響き、自然と5人の視線が美森へと集中し、園子が問いかける。

 

 「どうして、2人は傷を負っているの……?」

 

 「どうしてって……そりゃあ、あの場所で何かがあったからなんじゃ?」

 

 「私達には精霊が居るのに?」

 

 【あっ!?】

 

 あまりに衝撃的な場面だったからか頭から抜けていたが、こうして2人が1歩間違えれば死んでいたかもしれない怪我を負うのはおかしいのだ。何故なら未だに勇者である8人にはそれぞれに精霊が付いていて、バリアで守ってくれるのだから。

 

 その不自然さに気付き、5人が声を上げる。例え端末が無くとも精霊は現れ、勇者を守る。それは6人全員が知っている。思考は“あの場で何が起きたか”から“どうして精霊が居るのに怪我を負ったのか”へと変わり、また思考する。

 

 「……そういえば、フーミン先輩の時もそうだったよね」

 

 「確かにそうだったよな」

 

 「あの時も不思議に思ってましたけど、結局答えは出なかったですし……」

 

 「バーテックスの攻撃も防ぐバリアを貫通する何か、か」

 

 園子、銀、樹、夏凜と続く会話の中で、美森の脳裏には再び友奈と楓の2人の部屋で見たノートの内容が思い浮かんでいた。それを思い返せば、自然と原因かもしれない存在を思い付く。即ち、天の神かもしれないと。

 

 「……天の神の仕業かもしれない」

 

 「風……先輩?」

 

 「ちょっと、どうしてそこで天の神が出てくるのよ」

 

 しかし、それを口にしたのは美森ではなく風だった。まさか風の口から天の神が出てくるとは思わなかったのか美森が思わずと言ったように呟き、夏凜が腕を組みながら首を傾げる。

 

 「前に楓の部屋にあったノートをこっそり見ちゃったんだけど……そのノートには、友奈の身に起きてるかもしれないことが書いてたのよ。内容が内容だから、聞けなかったし言えなかったんだけどさ」

 

 「友奈の身に起きてるって……何が起きてるってのよ」

 

 「ゆーゆがわっしーを助けに行った時、天の神に何かされて、それで苦しめられていた……だよね? フーミン先輩」

 

 「園子? お前も何言って……どういうことだよ」

 

 「わたし、最近帰るの早かったでしょ? カエっちがクリスマス位からゆーゆの側に居る時間が長くなって、ずっと気にかけてたから……それに、ゆーゆもわたし達に何か言おうとした後に強引に話を変えたことが何度かあったからね。ちょっと気になって、安芸先生に調べてもらったり自分でも大赦に行って調べたりしたんだ」

 

 美森は風が自分と同じように彼のノートを見ていたことを知り、なるほどと納得する。だが、ノートの内容を知らない者達にとっては寝耳に水。夏凜が疑問を溢すと、風よりも先に園子が答えた。

 

 銀が聞けば、園子も理由を語る。ここしばらく、園子は部員の誰よりも先に下校していた。それは家に帰っているからではなく、彼女自身が言った疑問を解消する為に大赦に向かい、そこで安芸にも手伝ってもらいながら調べていた為だ。

 

 実のところ、詳しいことは分かっていない。分かっているのは、美森を助けに行ったあの日に友奈が何らかの干渉を受けていたということと、そのせいで友奈が苦しめられていたということだけ。それが分かったのも新年を迎えてしばらくした後である。

 

 勿論、大赦が何かしらの行動を起こさなかったのには理由がある。神樹からの信託が降りなかったこともあるが、1番の理由は友奈の模様が周囲に被害を及ぼすことを知ってしまったからだ。友奈の心を、そして周囲を天の神の力から守る為にも、大赦は静観する他無かった。少なくとも、対処法を見つけるまでは……結局、今日まで見つけられなかったのだが。

 

 「でも、ゆーゆは段々元気になってきた。だからもう大丈夫だと思ってたんだけど……」

 

 「……友奈ちゃんは、私の生贄としてのお役目を代わったって。その事や天の神のことを言おうとすれば、私達に不幸なことが起こるって悩んでた」

 

 「っ、友奈が……だから様子がおかしかったのね……ん? 風や園子はともかく、なんで東郷はそんなこと知ってんのよ」

 

 「でも、そのっちが言ったみたいに最近は元気になってきてた。その体にあった天の神の力も薄れてきてるみたいって……」

 

 「無視か」

 

 「夏凜、今は抑えて抑えて」

 

 園子が眠ったままの友奈を見下ろしながら続け、美森が自分が知ったことを呟く。それを聞いて夏凜は友奈の様子を思い出して納得し……なんで美森がそんなことを知っているのかと疑問を口にする。が、美森は答えずにそのまま話を続け、額に青筋を浮かべる夏凜を銀が抑える。

 

 風、園子、美森のした話で全員が友奈が天の神のせいで苦しめられていたことは理解した。それ故に今回何が起きたのかも朧気ながら理解する……即ち、こうして2人が怪我をして眠ることになったのは天の神のせいなのだと。精霊のバリアを貫通したのも、天の神の力なのだと。

 

 そこで会話が止まり、6人の視線が再び2人に集中する。こうして話していても、起きる気配はまるでない。病室という、6人にとってもいい思い出が無い場所であることもあってどうしても不安感が募る。

 

 特に先代組の3人はそれが大きかった。包帯やガーゼを着けてベッドに眠る楓……それは否が応にも小学生の時の遠足の日の戦い、その後のことを思い出してしまう。本当に死ぬ寸前だった……血塗れの彼の姿を。

 

 そのまま時間は過ぎていく。6人は病室に居られる限界まで2人の側に居て……結局、その日は2人が目覚めることはなかった。

 

 

 

 翌日、休日で学校が無かったので6人は再び病院へと訪れることに。その際美森はいち早く病室に現れ、2人のベッドの間にある椅子に座り、友奈の手にそっと何かを握らせる。それは、彼女が最初に友奈と出会った時に貰った白い花菖蒲の押し花の栞だった。

 

 「友奈ちゃん……楓君……目を覚まして……」

 

 美森は病院が嫌いだ。彼女にとって、病室は悲しい記憶しかない場所だから。小学生の時の楓の大怪我を見た場所で、散華によって記憶を失った後に目覚めた場所で、彼の温感や記憶の散華を知った場所で、園子と銀の2人と記憶を失ったまま思い出したくても思い出せずに再会した場所で……全身を散華した友奈を見続けた場所だから。

 

 その時の記憶が甦る。同時に、その時の恐怖や寂しさもまた……甦る。あんな思いはしたくない。また寂しい日々を送りたくはない。眠り続ける大切な親友を、大切な人達を見続けるのはもう嫌だった。そんな思いを言葉に込め、両手を広げて2人の手を握る。

 

 「っ!?」

 

 瞬間、楓と繋いでいた手を引っ込め、その手を目の前に持ってくる。友奈の手は布団の中にあったこともあって温かい。なのに楓の手は、同じように布団に入っている筈なのに……。

 

 美森は青ざめながら立ち上がり、楓の胸に服の上から耳を当てる。トクントクンと、生きている証である鼓動は聞こえた。その音に安心しつつ、恐る恐る彼の頬に手を当てる。その頬は、先程握った手のように冷たかった。暖房が効いている部屋に居るのにも関わらず。

 

 「……ぁ……ぅ……」

 

 その事実に絶句している美森の後ろで、か細い声をあげながら友奈が目覚めた。

 

 

 

 

 

 

 気が付いたら真っ白な部屋に居た。頭がぼうっとしててあんまり考えられなくて、喉がなんだかとても痛くて。右手に何か握ってるような気がして。

 

 「友奈ちゃん!」

 

 「とー……ごー……さん……?」

 

 目の前に、天井の代わりに泣きそうな……でも嬉しそうな東郷さんの顔が出てきた。前にも見たことあるような気がするな~なんて、少しだけ懐かしい気持ちになった。その後に右手に持ってるモノを確認したくて、それを目の前に持ってきて。

 

 

 

 ― 友奈ああああああああっ!! ―

 

 

 

 「……あ……」

 

 

 

 「友奈ちゃん……?」

 

 「う、あ……ああ……ごほっ、ごほっ!」

 

 白い花菖蒲の押し花を目にして、あの光景が一気に甦る。楓君の全身に見えた模様。それから、私の名前を叫びながら沢山の光から私を助けてくれて……牛鬼と夜刀神がバリアを張ってくれて……そのバリアが、ガラスみたいに割れて。

 

 涙が出てくる。声も、さっきよりも出なくなって、息がしにくくて。自分の口から呻き声が出て、喉が痛いから少しむせちゃって、空いてる左手で喉を押さえながら東郷さんの方に横向きになって。

 

 

 

 東郷さんの向こうに……頭に包帯をしてベッドに横たわったまま動かない楓くんの姿が見えた。

 

 

 

 「い、や……いやぁ……!」

 

 「友奈ちゃん! 落ち着いて!」

 

 「やああああああああ!! 楓くん!! やだ、ああああ……!!」

 

 「友奈ちゃん!! どうしたの!?」

 

 「楓くんが、天の……連れて……うああああああああん!! ああああああああっ!!」

 

 「……友奈ちゃん……」

 

 思わず体を起こして楓くんの所に行こうとして、東郷さんに抱き止められた。楓くんに手を伸ばしても届かない。東郷さんが私を止めているから。その状態が、嫌でも何も出来なかったあの瞬間を思い出してしまって……私は、もっと泣いて。東郷さんに伝えようとしても、全然声にならなくて。

 

 喉が痛くても、頭が回らなくても涙も声もその時の光景も止まらなくて。皆が来るまで私は、ずっと東郷さんに抱き締められて頭を撫でられながら泣き続けた。

 

 

 

 皆が来たのは、そうして泣いてた私が落ち着いてからしばらくしてのことだった。あの日から2日、私はそれだけ眠ってたらしい。皆私と楓くんを見ながら真剣な、悲しげな表情をしてる。それは……私がさっき、私達の身に起きたことを話したから。病人服の中を見て、もう私の体には模様はなくて……話しても大丈夫だと思ったから。

 

 東郷さんから生け贄のお役目を代わったことも、模様のことも、皆に起きた不幸も、風先輩の交通事故も……あの日に楓くんの魂みたいなのが連れ去られたこととかのことまで、言えなかったこと全部。言えなかったことを、ごめんなさいって謝って。

 

 「……ホント、ウチの弟はスゴいわ」

 

 「何よ急に……? なに? そのノート」

 

 「昨日言ってた、楓の部屋にあったノート。中身は……見れば分かるわ」

 

 「ああ、友奈の身に起きてたことが書いてるっていう……これ、本当に全部予想? 友奈の言ったこと、殆ど合ってるじゃない」

 

 「小学生の頃から察しが良かったけど、ここまで来ると凄いを通り越して怖いな……」

 

 「だからカエっちはゆーゆの側に……」

 

 「お姉ちゃんはいつこのノートを知ったの?」

 

 「前に楓が晩御飯に呼んでも全然来なかったことがあってねぇ。呼びに行ったら寝ちゃってて、起こしたら少し慌てて先に部屋から出て……久々に楓の部屋に入ったなーなんて思って見回したらこれが目についてね。楓もお年頃なのかしら、なんて思いながら見てみたら内容がこれだもの。しばらく立ち尽くしちゃったわ」

 

 風先輩が持ってきた楓くんのノートを皆で見る。そこには、予想だと言いつつも私の状態をほぼ言い当ててる内容が書かれてた。楓くんは気付いてくれてた。私を見てくれてた。私を……守ってくれてた。なのに……私は。そう思ったら、また涙が出てくる。

 

 「にしても……大赦と言い、天の神と言い……何回人の家族を引き離せば気が済むのよ……っ!」

 

 「“カエっちの魂が天の神の力を強めてしまう”……カエっちは何でそう思ったんだろう」

 

 「何か、思い当たる節でもあったのかね……それにその糸みたいなのを切ったハサミ……嫌な予感しかしないな」

 

 「……これ、本当だったらヤバいんじゃない?」

 

 「ですよね……」

 

 「そうね……只でさえ神樹様と天の神の力には差があるみたいだし……これが本当だったら、また外の火の海の勢いが増すかもしれないもの。いえ、もしかしたらそれ以上のことに……」

 

 風先輩が壁を叩いて怒る。前にも風先輩達は散華のせいで離れなくちゃいけなかったから……怒るのも当然だよね。園ちゃんと銀ちゃんは楓くんの文章に疑問を持ったみたい。私もなんで楓くんがそう思ったのか不思議だけど……もしもそれが本当なら、天の神が楓くんの魂を連れてったのはそれが目的だと思った。ハサミについては今も私の中で嫌な予感が膨れ上がってる。上手く言葉に出来ないのがもどかしい。

 

 夏凜ちゃんと樹ちゃん、東郷さんはもしこの内容が本当だったらって考えて冷や汗をかいてた。東郷さんの話を聞いた皆も……勿論私も、事実ならと思うと何も言えなくなる。

 

 他にも気になった部分がある。“視線の正体は天の神?”と、そう書かれた部分。天の神に、楓くんは見られていた。なんで、どうやって、どこから。思い付くのは私の模様くらいだけど、私も皆もそんな視線は感じてない。でも、楓くんが書いてることだし……その部分については、私達は何も言えなかった。

 

 「……良かった、皆ここに居てくれて」

 

 「安芸先生……と、友華さん?」

 

 そうやって皆で話していると、病室の扉が開いた。その音に皆が釣られて扉の方に向くと、そこには前に部室に来てくれた、楓くん達4人のサポート役だったっていう、私服姿の安芸さんと礼服と仮面の人。それから……どこか見覚えがある、私と少し似ているような気がする、着物を着た茶髪の女の人の3人が居た。声に出した東郷さんと、園ちゃんと銀ちゃんは知ってるみたいだけど……。

 

 「園子ちゃん、須美ちゃん、銀ちゃん……お久しぶりね。皆さんは……覚えているかしら。以前に1度会っているのだけど」

 

 「えっ? えーっと……」

 

 「……お姉ちゃん。この人、前に合宿で使わせてもらった旅館の女将さんじゃ……」

 

 「あー! 楓が言ってた年齢詐偽の義理の母親の!」

 

 「滅茶苦茶失礼なこと言ってんじゃないわよバカ風!!」

 

 「おうっ!?」

 

 急に聞かれて私が思いだそうとしてると、樹ちゃんが風先輩に耳元で何か言うと風先輩は女の人を指差してそう叫んだ。瞬間、夏凜ちゃんが思いっきり風先輩の頭を叩く。私も流石にそれは……と思ったけど、女の人……友華さんは気にした様子もなくあらあら、なんて頬に手を当てて笑ってた。その笑い方は……なんだか、楓くんに似ていた。

 

 「友華さん。安芸先生も、どうしてここに?」

 

 「理由は2つあるわ。単純にお見舞いに来た、というのが1つ」

 

 「もう1つはなんですか? ……正直、良い予感はしないんですけど」

 

 「……その予感は正しいわ、三ノ輪さん。こっちが本命の理由なんだけど……無理かもしれないけれど、落ち着いて聞いて」

 

 園ちゃんが聞くと、安芸さんは直ぐに答えてくれた。その時の目は楓くんに向いてて……友華さんも、泣きそうな顔で楓くんのことを見てた。やっぱり義理でもお母さんだから心配なのかな……当たり前だよね。だからこうして来たんだから。

 

 それから、銀ちゃんがそう聞いた時……安芸さんが、凄く辛そうな顔をした。一気に嫌な予感が膨れ上がる。怖くて怖くて仕方なくて、手にある花菖蒲の押し花を両手で胸に抱えてしまう。そうして、口を開いたのは友華さんで……それを聞いて、私は思ったんだ。

 

 

 

 「このままだとそう遠くない内に……ほぼ間違いなく、四国は滅びることになります」

 

 

 

 それは……私が楓くんに守られてしまったからなんだって。何も出来なかった私のせいなんだって……思ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 「……ここは」

 

 気がつけば自分は見覚えのある、上下が雲に覆われているような場所……以前、友奈が魂の状態で閉じ込められていた場所に、同じように魂の状態で居た。

 

 何故ここにいるのか経緯はわからない。だが、直前の記憶は以前に獅子座の後ろに現れたような縦に裂けた空間から見えた天の神らしき鏡による攻撃から友奈を庇ったところで終わっている。その事を考えれば……ここに連れてきたのは天の神である可能性が高い。

 

 

 

 ― やっと……ここに連れてくることが出来たよ―

 

 

 

 「っ!?」

 

 そういえば、友奈は無事だろうか。怪我はしていないだろうか。あんなにも自分を見て怖がっていたのはどうしてだろうか……そんな疑問ばかり浮かんでいた自分の後ろから、聞き覚えのある声がした。驚愕して直ぐに振り返り……また驚愕する。

 

 (……やれやれ、全く……)

 

 その存在を見て、思わず口元がヒクつく。体が硬直する。恐らく、目の前の存在は天の神なのだろう。自分を見続け、友奈を苦しめ、姉さんを事故に合わせた元凶。300年以上前から人類を滅ぼそうとしてきた、バーテックスの大元。そうだと分かっていても、変な笑いが出る……それも、仕方ないだろう。

 

 

 

 ― はじめまして ―

 

 

 

 (神様ってのは、その()がデフォルトなのかねぇ……?)

 

 何せその姿は、その顔は、その声色さえも……腰までの長い黒髪や目の色が赤黒く毒々しい色をしていること、そして黒い着物を着ていることを除けば、友奈と全く同じなのだから。

 

 ― やっと逢えたね……楓くん ―

 

 そう言って天の神は……あの子と同じように笑った。




原作との相違点

・最早原作など意味はない(無慈悲



という訳で、前回ほどのインパクトはないお話でした。前回の友奈の絶望に反して勇者部の絶望感は感じにくいでしょうが……これでも本人達は精神的に参ってます。ただ、直接見た上に元凶かもしれないと知ってる友奈と皆で聞いた6人との違いですね。

風ですが、彼女がノートの存在を知ったのは楓が最初に連れ去られそうになった時です。あの時から風も友奈の身に起きてることを予想ではありますが知ってました。表に出さなかったのは、楓と友奈と同じ理由ですね。言いたくても言えなかったんです。

さて、久々に友華が出ました。大赦のお偉いさんが告げる滅び……さて、どうなることやら。そして皆様の予想通り、天の神が遂に……おかしいな、あの子の姿になる予定なんて無かったのに。黒髪だからでしょうか←

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)
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