体調こそ落ち着きましたが、咳は未だに続いております。何故なんだ……まあ何とか以前のように更新出来るよう無理無く頑張ります。感想での暖かい労りのお言葉、本当にありがとうございます。
前回のTS回、評価は良さげと言ったところですかね。やはりTS物は人を選びます。尚、前回の隠されたネタはらんま1/2、けんぷファー、俺ツイです。最後の辺りには化物語ネタがあります。全部分かった人は居たかな?
さて、ゆゆゆいでは遂に赤奈ちゃんが本格参戦し、切り札たかしーが来ましたね。てっきり東郷さんか樹ちゃんが来ると思ってたのでびっくりしました。次は切り札若葉かな? 尚、どちらも来てくれませんでした。ssrは来てくれるんですが、全部プラスされました←
最近シンフォギアとイドラやり始めました。キャロルほしかったのにガリィちゃん7枚集まりました←
さて、今回は本編です。私の目標は……今年中に本編とDEifを完結させることだから……!!
あ、後書きにアンケあります。
同じ神に成ろう……そう、友奈の顔と美森ちゃんの黒髪をした天の神に言われてからどれくらい経ったのか。ほんの数分しか経ってない気もするし、何時間も経っている気もする。その間色々やったのだが、今の自分はただその場に座り込んでどうにかこの場から逃げ出す方法を考えていた。座り込む、と言っても地面なんかは無いのだけど。
結論から言えば、そんな方法は見つかっていない。というより、想像もつかないと言うべきか。果ての見えない、天の神が居る空間。友奈を助けた時のように神樹様が近くに居る訳でもない。試しにと満開時に飛ぶ要領で上下左右に進んでみたが、景色が変わることは無かった。
端末が無いから変身も出来ないし、今の自分は魂の状態……自分の行動で肉体や魂にどんな影響があるかもわからないし、これ以上動いても活路が見出だせないので皆や神樹様の助けを待つことにして座り込んでいたのだ。それしか出来ないことが、我ながら情けない。あの子の側に居てあげたい時に居られないことが……悔しくて仕方ない。
そうしていると、自分の周りに少し変化が現れた。と言っても、空間に変化が起きた訳じゃない。自分の周囲に、様々な色の動植物の形をした何かが集まってきたのだ。最初は1匹2匹程度だったそれらが、今では足下も見えない程に集まってきている。それこそ自分の周囲の目に見える範囲全てを埋め尽くさんばかりに。
「……なんなんだ、この動物とか植物は……」
― 私達と共にある神々だよ ―
その声が聞こえて、思わず顔を上げる。そこには、自分の前にしゃがみこんでニコニコとしながら自分の顔を覗き込むようにしている天の神の姿があった。
「神、々……まさかこの動物や植物の1つ1つが、お前と同じ神だと言うのかねぇ?」
― その通り。力も弱いし、自我もあるかわからないくらい存在も薄いけどね。地の神が数多の神の集合体となって1つになっているように、“私達”もまた数多の神の集合体。この神達は、その一部。自我が薄い分、獣のように本能的に君の魂に強く惹かれているみたいだね。それこそ、ある意味で“私”以上に ―
天の神に教えられ、再び動植物に視線を向ける。小さいモノはネズミや虫、何かの花や草。大きいならキリンやゾウのような大型の動物から大木まで。まるで1つの森林のようにすら感じるこれら全てが神だと? よく
自分の肩や頭に、猫や鳥の形をした赤や黄色のナニカが乗る。行動は正に動物のソレであるんだが、こんな小動物や風も無いのに靡いている草の1本1本すらも神だもするなら……その実、自分達は力だけでなく数すらも大きく劣っていることに……いや、集合体と言っていたから、力を振るうのはあくまでも天の神という存在になるのか。それでも強大であることには変わらないんだろうけれど。
ふと、1つの神が目についた。それは他の神に比べ、自分の知識には無い姿をしていたからだ。何気なくその神に手を伸ばし、抱き上げて目の前に持って来る。
「ボクをくえ」
「……食べないよ」
それは、カレーらしきモノを頭に乗せたネコの姿をしていた。しかも喋った。ここに居る以上コレも神の1つ何だろうが、何の神だと言うのか。そもそもコレは本当に神なのか。というかカレーなのか、それともネコなのかどっちなんだ。
カレーだかネコだかわからないモノを下ろし、もう1つ目についたモノに手を伸ばし、抱き上げて目の前にもって来る。するとソレも、さっきのネコのように口を開いた。
「食べたい」
「その頭に乗っているモノか、さっきのネコでも食べたらいいんじゃないかねぇ」
ソレは、桜餅らしきモノを頭に乗せたネコだった。というかなんでさっきのネコとこのネコだけこんなにもはっきりとした姿をしているのか。
― 思ったより馴染んでるというか、落ち着いてるね。このまま“私”と一緒に居てくれる覚悟を決めたのかな? ―
「……生憎と、そんな覚悟は決めちゃいないよ。自分は神になんてならない。必ず……皆の所に帰ってみせる」
― そう……だけど、楓くん。このままだと君は私と同じ神に成る。その手や足がその証拠だよ ―
ネコを下ろした後、天の神はそう言ってきた。分かっているんだ、自分に残された時間は少ないということは。視線を下げるとそこには、白い魂の姿であるにも関わらず、肘と膝辺りまで生身のように
恐らく、今の魂の体がまるで肉付けされたかのように肌色になった時、自分は天の神が言う神に成る。元の世界で生きる人間ではなく、この世界に生きる神に。そうなれば、勇者部の皆や安芸先生、友華さんや他の知り合ってきた人達と会うことも無くなるだろう。それは絶対に避けたい。自分は……人で在りたい。
そうは思っても、何も出来ない以上このまま黙って見ていることしか出来ない。天の神はその間、ずっと自分の側に居た。そしてそのまま更に時間は過ぎ、肌色が肩、太ももまで染まった時……この空間に変化が起きた。
― っ……地の神、まさかそんな方法を取るなんてね ―
「……これは……?」
― 怒ってるんだよ。“私達”が……“私”の意思とは関係なく動く程に ―
不意に、この世界が赤く染まった。それを見た天の神は苦々しげな表情を浮かべ、自分の独り言のように呟いた疑問にそう答えた。更にそのまま説明をしてくれた。
今、結界の中でとある儀式が行われようとしていると言う。それは神婚と呼ばれる、神との婚姻だとか。それをすれば婚姻相手に選ばれた人間の命と引き換えに他の人間が神の眷属となり、滅びが間近に迫った世界から助かることが出来るらしい。
「……お前は、怒ってるようには見えないねぇ」
― 楓くんをここに連れてくる前なら怒ってたね。“私達”は人間が神の力を手にしようとしたから滅ぼそうと思った。神婚は思いっきりそれに触れてるんだし。でも、今の“私”は
友奈の声と顔で、友奈と美森ちゃんを彷彿とさせる姿ではっきりとそう言った天の神。その言葉、その真剣な表情に嘘は感じられなかった。それほどに執着されていることに少し寒気を覚える。だが、本当に今は人間に関心が無いと言うのなら、そのこと自体は良いことのハズ……。
(いや、待て。そもそもどうして神婚とやらが必要になったんだ? 自分が居た時はそんな話、聞いたことも無かった。それはつまり、自分が居なくなったあの日の、もしくはその後の出来事になる……)
つまり、自分が居なくなったから出た話である可能性が高い。その理由はなんだ? 考えられるのは……やはり、自分の魂が神の力を強めてしまうかもしれないってことくらい……そうだ、自分の魂が
― 気付いた? そう、地の神が守る人間達に残された時間は殆んど無い。数日もせずに“私達”の理を塗り替えた世界が、地の神の結界ごと人間達を塗り潰す。でも、楓くんには何も出来ないよ。神に成れば話は別だけど、今の君じゃどうすることも出来ない ―
「っ……」
― 諦めなよ、楓くん。人間の世界を諦めて、あの子達のことも諦めて、人間であることを諦めて……神として“私”とずっと此処に居ようよ ―
無力感に苛まれる自分に向かって……天の神は、あの子と同じ顔に優しい笑顔を浮かべてそう言った。
「現実の世界に敵……!?」
「あのバカみたいに大きいのって……もしかして」
「天の……神?」
神樹の元へと向かう車の中で、窓から見える上空に現れた巨大な円形のナニカを見た風が樹海化もしていないにも関わらず敵が現れたことに驚愕し、その敵が何なのかを悟った銀がポツリと呟き、続きを言うように美森がそう溢す。
風達だけではない。四国に住む全ての人々が、その存在を認識し、明らかな異常事態に恐怖を覚えていた。快晴だったハズの空から太陽がその姿を消し、赤黒い空間が青い空を裂いて顔を覗かせる。殆んどの人間は理解不能だろう。
「どうして、天の神が……?」
「神婚をしようとしているからよ。かつて人間が神の力を手に入れようとした事に怒って人類を滅ぼそうとした。だから、神と人間が結婚をするなんて赦せないんでしょう」
「つまり、天の神が直接ゆーゆと神樹様の神婚を邪魔しに来たってことなんだね、安芸先生」
「その通りよ乃木さん。そして、これはチャンスでもあるわ」
「チャンス?」
「そうよ、あれが本当に天の神だってんならチャンスじゃない! アタシ達が倒すべき敵が、向こうから来てくれてるんだから!」
【あっ!!】
車が止まらずに走り続ける中で樹が疑問を口にすると、安芸は前を向いたまま答えた。安芸の言葉は正しい。天の神にとっては人間が神の一部となる神婚は赦せるハズがないタブー中のタブー。それこそ、これまで天の神の行動を決めてきた“私”の決定を待たずして“私達”が邪魔をする為に動く程。
天の神が動いたと言うことは、只でさえ短かった人類に残された猶予が今日この日で消え失せるということでもある。だが、これは安芸と風が言うようにチャンスでもある。どうやって戦うべきか、どうやって見つけるのか悩んでいた相手が自分からやってきているのだから。
「つまり、ここが天王山ということですね、安芸先生」
「そうね、わし……東郷さん。文字通り、この戦いに……あなた達の手に人類の未来が掛かっているわ。でも、ただ戦うだけではダメというのは……分かるわね?」
「理想としては、天の神を素早く倒す。時間を掛けすぎるとゆーゆと神樹様が危ないし、倒しきれないと神婚が成立しちゃうかもしれない……」
「……こうして話してる時間も惜しいわ。天の神は来てるんだから」
「そう、だよな。あたし達は下ろしてもらって、安芸先生達はどこか安全な場所に……」
「っ、樹海化の光!? 車を止めてください!」
そこまで銀が言った時、南の方角から見慣れた極彩色の光が世界を覆い尽くさんばかりに迫ってくる。それに気付いた樹が咄嗟に声を上げると大赦の男が反応して急ブレーキを掛け、停車。そして光はあっという間に世界を、そして人々を呑み込み……樹海化。6人を残し、車と安芸達はその姿を消していた。無論、勇者でない一般の人々も。
見れば、神樹の姿は普段よりもかなり大きく見えた。それは即ち、神樹の近くに来ているということだ。ここまで送り届けてくれた安芸達に感謝しつつ、6人はスマホを手に取る。
「楓を返してもらうわよ」
「うん。絶対、取り返すんだから」
「天の神なんて私の……私達の敵じゃないわ。直ぐに殲滅よ」
「友奈の神婚もしっかり止めないとな」
「カエっちも、ゆーゆも、皆揃って笑顔になる為に」
「これ以上、皆が悲しまない為にも……皆で、これからも生きていく為にも」
「さあ……やるわよ!!」
「「うん!!」」
「「おう!!」」
「はい!!」
6人のスマホから光が溢れる。これが最後だと、誰もが思っていた。当代にして最後の勇者達は変身し、それぞれの武器を手に、遥か上空の巨大な天の神の姿を仰ぎ見る。
そして、6人は見た。巨大な円盤のような姿をした天の神……彼女達が見ている場所が大きく裂け、外の世界のような赤黒い毒々しい色をした空間が見えており……そこに、大きな丸いナニカと、その周囲に12個の丸いナニカがあるのを。その大きな丸いナニカの前に、人影があることを。
彼女達の脳裏に、美森から聞いた夢の話が浮かぶ。だが、今はそれを気にしている場合ではないと6人は樹海化した際に出てきた高い岩場へと移動する。勇者の身体能力を持って素早く最も高い場所に移動し終えた6人。それでも、天の神は遥か彼方。
「来るわよ!」
人影の背後の12個あるナニカの内の1つが強く発光する。すると人影の前に獅子座が使っていた火球が生まれ、巨大化し、6人目掛けて飛んでくる。それを見た風が叫ぶと同時にバラバラに散開し、火球を回避。樹海に着弾した火球は爆風を起こし、樹海の一部を焼いた。
「初っぱなから飛ばしてくるじゃない……!」
「お姉ちゃん、また攻撃が来る!」
「あれは、射手座の奴か!」
無事に回避できた6人。風が内心を代弁するように冷や汗をかきつつ天の神を見ながら叫んだ直後に人影の背後の12個あるナニカの先程とは違う場所が強く発光。直後、天の神の体の別の場所の空間が裂け、その中の赤黒い空間に存在する光の玉から大量の光の針……矢が降り注いだ。
全員が再び回避の為に跳躍。何とか避けることに成功したが、それで安心は出来ない。回避した後にまた先程の光の矢が降り注いできたのだから。それだけではなく、人影の背後の小さなナニカが更に3ヶ所同時に強く発光。同じく別の場所の空間が裂け、その中から滝のような水流が、小さいながら子供1人呑み込めそうな光弾が、誘導する爆弾が勇者達に襲いかかってきた。
「あれは水瓶座と山羊座の攻撃!?」
「乙女座の攻撃まで……バーテックスの親玉なだけあるって訳ね!」
攻撃の種類が増える毎に避けることが困難になっていく。風と銀はその大剣と斧剣を用いて光の矢と光弾を防ぎ、夏凜の短刀と樹のワイヤー、美森の射撃で爆弾を破壊していき、園子が槍の先に傘状に展開した勇者の力で水流を防ぐ。
今のところ、ダメージは無い。だが、誰が見ても防戦一方であることは明白。相手は空に居てこちらは地上に居るのだから仕方ない。だが、何よりも速度こそが重要なこの場面でそれは致命的であり……故に、“ソレ”を行うことに躊躇いは無かった。
【満開!!】
樹海に黄色いオキザリスが、緑色の鳴子百合が、青いアサガオが、赤いツツジが、紫色のバラが、真っ赤なボタンが咲き誇る。そしてその場から素早く移動しながら攻撃を回避しつつ、人影を目指して上昇していく。
無論、それを黙って見ている天の神ではない。人影の背後のナニカが発光し続け、天の神の体の裂けた空間数ヶ所から矢が、水流が、光弾が飛んでくる。が、先程とは違って飛ぶことが出来る今、右へ左へと宙を自由に舞うことで地上に居た時よりも余裕を持って回避、ないしは最高速で動くことで攻撃を置き去りにする。
「東郷! あんたは友奈の所に行きなさい!」
「風先輩!? 急に何を」
「念のためよ! 今、友奈がどの辺に居るかわかんないし……あんたが1番友奈のこと分かってるしねぇ!」
「友奈を止めてきなさい! そんで、私達が勝つところを見せて、神婚なんて必要なかったって教えてやるのよ!」
「先輩……夏凜ちゃん……」
攻撃を避けながら、大声で風と夏凜が美森に叫ぶ。天の神を倒すつもりで居ると言っても、勢い任せで倒せるとは楽観視出来ない。だから、保険として友奈の神婚を止めにいく者が必要になる。そして、それが出来るのは……。
「友奈さんのことなら、東郷先輩が1番ですから。天の神は私達に任せてください!」
「よく言った樹! という訳で、友奈のことは任せたぞ! 須美!」
「ゆーゆのこと、お願いね? わっしー。それまで天の神は絶対、近付かせないから!」
「皆……了解! 東郷 美森、最大戦速で友奈ちゃんの元へ向かいます!」
友奈の親友である、美森に他ならない。仲間達の言葉を受け、戦艦のような満開を反転。1人神樹の元へと宣言通り最高速で向かう。当然、彼女を狙って天の神から光の矢が放たれるが……それは園子の船の前に展開された紫色の光の盾に防がれる。
ならばと、天の神は裂けた空間から炎に包まれた星屑を大量に出現させる。それは数百、数千と数を増やし、どんどん空間の中から現れてはまた空間の奥から出てくる。
「今更、そんな小さいのが何匹来たってええええ!!」
「赤い勇者を、舐めるなよ!!」
真っ先に迎撃に動いたのは夏凜と銀の赤い勇者達。夏凜が満開の4本の巨碗の左側2本を振るうとそこから大量の短刀が星屑目掛けて飛び、殲滅していく。その隣では銀が6本の満開の巨碗の3本ずつで持っていた巨大な斧剣を背を反らして振りかぶり、思いっきりぶん投げる。それは炎を纏いながら回転して突き進み、星屑を同じように殲滅していった。
「ってやべっ!?」
「させません!!」
「ミノさんは、やらせない!!」
「ナイスよ樹! 園子! せええええい!!」
再び人影の背後のナニカが発光。夏凜と違って武器を手放した銀に向かって新たに裂けた空間から蠍座の尻尾が4本、彼女を串刺しにしようと伸びてきた。だが、その内2本は樹のワイヤーによって四方八方から逆に串刺しにされて動きを止め、もう2本は園子のオール部分の槍が飛んできてこれまた串刺しにされ、動きが止まった4本を風がまとめて巨大化させた大剣で切り裂いた。
凌ぎきった……そう5人が安堵したのも束の間。大量の光の矢が止まり、代わりに巨大な槍にすら見える大きな光の矢が超高速で夏凜に向かって放たれた。夏凜がそれに反応出来たのは、これまでの訓練の賜物だろう。瞬間的に4本の巨刀を盾にすることで直撃は免れた。衝撃で回転してしまった体を直ぐに立て直し……その顔を見た樹から悲鳴に似た声が上がる。
「か、夏凜さん! 顔に、血が!?」
「っ……バリアを抜かれたってことか……バリアを、抜いた? ってことは……」
夏凜の頬に一筋の傷が出来、そこから血が流れていた。それはつまり、勇者の身を守ってきた精霊バリアを天の神の攻撃が貫いたということだ。それを確認した時、夏凜と……夏凜の呟きを聞いた全員が同じことを脳裏に描いた。
ずっと不思議だったのだ。なぜ、風が事故に遭った時に精霊が守ってくれなかったのかと。なぜ、ただのトラックがバーテックスの攻撃を防ぐバリアを抜いて風に大怪我をさせたのかと。だが、目の前に答えが現れた。思えば、病院で楓のノートを見ながら話し合っていた時点で答えは出ていたのかもしれない。風が大怪我をしたのも、友奈がその事で深く悲しんだのも、全ては。
「やっぱり全部……お前のせいかああああっ!!」
「っ、夏凜! 待ちなさい!」
怒り爆発。誰が聞いても分かる怒声と共に、夏凜は風の制止の声も聞かずに天の神の本体と思わしき人影に向かって突撃する。その夏凜目掛け、再び大量の光の矢が降り注ぐ。だが、彼女は4本の巨刀を盾にそのまま突き進んだ。しかしそれで防ぎきれるハズも無く、左手首の近くを、右太腿を掠り、肉を削られる。
「ぐっ、ん、の、おおおお!!」
「夏凜!! い゛っ、が……っ」
「くっ、夏凜! 銀! っ、邪魔を……っ!!」
「わ、わわっ!」
痛みに顔をしかめ、速度が低下するがそれでも止まらない夏凜の背後から大量の矢が迫る。数多の攻撃をしている合間に天の神が出していた蟹座の板が勇者達の意識の外から地上付近に移動しており、矢を反射したのだ。真っ先に気付いた銀が夏凜に追い付き、その右手を掴んで引っ張ることで強引に避けさせる。その際、銀の右頬を掠って血が流れ、右腕に1本の矢が突き刺さり……矢が消えると、その部分に穴が空いて血が噴き出す。
血を流す2人を見て、風が焦ったようにその名を叫ぶ。だが、勇者達の傷も焦りも天の神には関係無い。再び尻尾が、水流が、矢が、光弾が飛んでくる。尻尾は樹が対処し、矢と水流は移動しながら避ける。光弾は誘導してくるが、銀が傷付いたことで落ち着きを取り戻した夏凜が短刀を飛ばして対処する。
(……さっきから攻撃が来る度に、人影の後ろの奴が光ってる。それに、攻撃が来る場所の奥にも光の玉みたいなのがあって、そこからバーテックスの攻撃を出してる。どっちかが……もしくは、どっちも力の元? それなら……!)
「やああああっ!!」
全員で力を合わせて天の神の攻撃を凌いで居る中で、園子は必死に頭を回していた。状況を打破する為に、勝利を引き寄せる為に。小学生の頃からそうしてきた。その頭脳を彼に頼られることが好きだったから。
素早く思考を終えた園子が取った行動は、勇者の力を持って風のように槍を巨大化させ、それを幾つも用意すること。そして、空間の中にある光の玉のようなモノと人影の後ろにあるナニカを人影ごと砕く為に凄まじい勢いで放った。
そして、各空間からの迎撃をものともせずに槍が光の玉と人影に辿り着いたその時。
各空間から大きな爆発が発生し、その爆風で勇者達を吹き飛ばした。
(皆……戦ってるんだよね……きっと)
その爆発を、友奈も見ていた。彼女とて気付いているのだ。上空に現れたモノは天の神であり……勇者部の皆が、天の神と戦っているのだと。戦う力の無い、己とは違って。
地上に咲き誇る花を見た時、友奈は泣きそうになった。それほどに綺麗な花達だったから。その花に込められた皆の意思を感じたから。天の神を倒すと、友奈の神婚を止めると、楓を取り返すと……その強い意思を感じ取ったから。
(ごめんなさい……皆)
目を伏せながら心の中で1度謝り、友奈は振り返る。そこには、1本の巨木……神樹の姿があり、その根元に1つの豪奢なベッド。そして、その上に横たわる楓の体があった。
樹海化しても、勇者部と天の神の戦いが始まっても心配しつつも歩き続けた友奈。ほんの少し前に、彼女はこうして神樹の元に辿り着いていた。樹海化して消えた大赦の人間から手順も聞かされている。後はその通りに動けば……神婚は成立する。
(……楓、くん……)
神樹に近付く友奈。そうすれば必然、楓の体にも近付いていった。そうしてベッドの前まで来た彼女は、泣きそうな顔のまま彼の体を見下ろす。
その体に、魂は無い。上空に存在する天の神、その中に存在するのだろう。それが分かっていても、友奈にはどうすることも出来ない。もしかしたら仲間達が天の神に打ち勝ち、魂を取り返すのかもしれない。だが……それを待つ猶予はない。人類に残された時間は無い。大赦の人間に、道中で友奈は繰り返し教えられていた。
「最後に……楓くんに……皆に……」
その後に続く言葉を、友奈は言い出せなかった。最後にしてもらいたかったことが、してほしかったことが多かったから。また抱き締めてほしかった。名前を呼んでほしかった。手を繋いでほしかった。笑顔を見せてほしかった。笑い合いたかった。楽しく過ごしたかった。そうして……お別れしたかった。
我慢出来ず、友奈は声も無く涙を流した。これが最後。これで、最後。そう思って、友奈は横たわる彼の手を握ろうとその手を伸ばして……。
その手を、勇者達を守ってきた精霊バリアが弾いた。
「痛っ……えっ? 夜刀神……ちゃん?」
「シャーッ……」
痛みに一瞬目を閉じて手を引き、再び目を開いた友奈が見たのは楓の前にいつの間にか現れて友奈に向かって舌をチロチロと出しながら威嚇する夜刀神の姿。バリアに弾かれたことと夜刀神に威嚇されて目を瞬かせる友奈。だが、次に起きたことで彼女は本気で目を見開いた。
「え……? えっ……!?」
夜刀神が突如強く発光し、あまりの眩しさから友奈は両手を光から逃れるように顔の前に持ってくる。そして光が収まり、友奈が手を下ろして目を開いた時。
夜刀神の姿はそこには無く……文化祭の時に友奈が見た、友奈と同じ姿の桜色の着物を着た少女が、友奈を悲しげに見詰めていた。
原作との相違点
・原作……誰がこんな酷いことを……!
という訳で、最終決戦スタートというお話でした。原作と大きく違う所は全員が満開し、銀が参戦しており、東郷さんだけが友奈の元へ向かっているということですね。今回、分かりづらいかもしれませんが少しだけ原作ネタが入ってます。分かりやすいのも入ってます←
本編ですが、予定通りに進めば残り3~4話で完結します。最終話の前にDEifの最終話を挟みます。それまで番外編は一切書きません。最終話後に書きますがね……リクエストの中で最も鬱いアレを。
それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)
いずれ書く親密√。そのお相手は……
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結城 友奈
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乃木 園子
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東郷 美森
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まさかの三好 夏凜
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いや、このキャラと!(感想やメッセに