咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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お待たせしました(´ω`)

やりたい放題した前回のお話、皆様に好意的に受け止めて貰えたようで何よりです。

fgoクリスマスイベントお疲れ様でした。ボックスガチャは28箱でフィニッシュ。後2箱開けたかったなぁ……。

ゆゆゆいもイベント目白押しですな。しかし私はガチャらない。年末こそが勝負時ですよ。これから来る満開と切札、まだ見ぬ防人組の満開、切札枠が楽しみですね。

リクエスト、感想でものわゆを求めるお声が増えました。本当に増えてきたので、ちょっと考えます。DEifに代わる短編なら行けるか……?

アンケートはやはりというか“かんな”が多かったですね。これは……決まったな(何が?

さて、今回は最終話兼エピローグです。本編最後のお話、どうぞお読みください。


咲き誇る花達に幸福を ー 完 ー

 あの後すぐ、8人は安芸達によって元の病院まで運ばれた。なぜ讃州中学にすぐ安芸達がやってこれたのかと言えばなんということはない。彼女達ならば必ず天の神に打ち勝つと信じていた安芸が、運転手の大赦の男に讃州中学に向かうように指示していただけのことである。

 

 楓が目覚めていることに安芸が驚いた後に涙を流して大赦の男に慰められたり、席が足りなくてぎゅうぎゅうとすし詰め状態になって園子と友奈が楓とくっついてご満悦だったりとした後。病院に着いた8人は直ぐ様一般人とは別室で診断を受けたのだが、いつの間にかケガが治っていることが発覚。どうやら最後に、神樹が治してくれたらしい。こればかりは風も素直に感謝していた。

 

 そして最後の戦いから2ヶ月近く経ち、3月に入った頃……ようやく四国は混乱から立ち直りつつあった。

 

 

 

 

 

 

 現実世界への天の神の襲来。それは出現から程なく樹海化したことにより、その結界内に押し込められて現実から姿を消した。とは言え、その巨体と空間が割れて赤黒く染まった空を目撃した者は数多く居た。勇者達の戦いの影響で何度か地震が起きたことも、住民の不安を煽ったことだろう。

 

 それに加え、神樹が最後の力を楓と友奈に託したことによって花弁となって消えたことにより、結界が消失。同時に、四国の周囲を囲っていた壁も崩壊し、天の神を打倒したことで地獄のようだった結界の外は元の世界の姿を取り戻していた。それが問題だった。

 

 美しい自然を映し出していた結界の外は本来の姿を取り戻し、そこから見える外の世界の町並みは西暦の時代、バーテックスの襲来によって廃墟となったままそこに存在したのだ。まるで、そこから時が止まっていたかのように。

 

 謎の巨大飛行物体、頻発した地震、樹海が傷付いたことによる多くの家屋や集合団地等の建物の一部の損壊、小規模に収まってこそいるが山火事や土砂崩れ、ウイルスが蔓延していると伝えられていた外の世界の現実、神樹の結界である壁の崩壊。壁は神樹が作った結界であることは周知の事実である為、その崩壊を切欠に民衆は神樹の死亡、消失を知ってしまった。

 

 そこからはもう大混乱である。一部の住民は避難生活を余儀無くされ、神樹の恩恵を失ったが故に限りある資源で生きていかねばならなくなった。それは神樹という神と恩恵がある生活に慣れきっていた神世紀の人間には肉体的にも精神的にも苦痛を伴った。

 

 当然、大赦にも多くの陳情やら質問やら追及やらがなされたが……そこは良くも悪くも影響力があり、組織としての規模も大きい大赦。友華を筆頭にした上層部の人間による指示で機敏に動き、四国内の復興や外の調査、事情説明にと奔走した。

 

 そう、大赦はメディアを通じて事情を説明したのだ。神樹のこと、ウイルスの真実、天の神の存在。勇者の存在を除いて、全てを。再び混乱や隠していた大赦に対して怒りが向けられ、中には与太話だとして嘘つき呼ばわりもされたが……一月もする頃にはその働きぶりや動画像等の証拠も提示したことで再び信頼を取り戻していった。

 

 また、限りある資源とは言うが四国の土地そのものにはまだ神樹の恩恵が残っているらしく、数年から十数年単位で野菜や果物、山菜といったものは変わらずに収穫出来るらしいということも住民の心労を軽くしたのだろう。後の調査でその恩恵は外の世界の土地にも広がっているようだということが分かり、いずれ外で暮らすことになっても何とかなるかもしれないという希望も出てきた。

 

 『神樹様は約300年、我々を守ってきてくださいました。それだけでなく、我々の未来までもその命を賭して守ってくださったのです。神樹様の死は言葉に出来ない程に悲しく、神樹様が居ない生活と未来への不安は尽きないでしょう』

 

 3月のとある日、テレビやラジオから友華の声が聴こえてくる。それは讃州市にある避難所の1つに設定されている讃州中学の食堂に設置されているテレビからも同じように聞こえていた。画面の中にはどこかの会場にて友華を始めとする大赦の名家、重鎮の人間の姿があり、友華が代表として壇上に上がって話している所だった。

 

 『それでも、我々は生きていかねばなりません。我々を守り、育て、生かしてくれた神樹様への感謝を込めて。雛鳥がやがて親鳥の元から巣立つように、我々もまた、神樹様という親から巣立つ時が来たのです。苦しいことはあるでしょう。辛いこともあるでしょう。厳しいことも、悲しいことも、老若男女関係なく襲い来ることもあるでしょう』

 

 その讃州中学の食堂に、楓を除く勇者部の姿はあった。避難してきている人達の為に大量のうどんを作る風と美森、銀。せっせと材料を運んでは取りに行くを繰り返す友奈と夏凜。出来たうどんを取りに来た人達へと笑顔で手渡す樹と園子。

 

 『それでも、我々は生きています。神樹様の恩恵は今も尚我々を助け、守り、生かしてくれています。そんな我々が神樹様に恩を返すには、自分達の足で真っ直ぐと立って懸命に生きていく事なのです。まずは大人である我々が手本として、子供達にその姿を見せ付けていかねばなりません。神樹様ではなく自分達大人が、未来ある子供達を今度こそ守り、導いていかねばなりません』

 

 大人も子供も関係なく友華の言葉に聞き入り、その姿に見入っていた。大赦の中でもトップに程近い位置にいる人間の、その真剣な表情と心からの真摯な言葉。壇上の上に身一つで立ち、台本も何もない己の口から出る言葉。それは確かに、聞く者の心に染み渡る。

 

 『生きましょう。未来ある子供達に誇れるように、未来の子供達に誇れるように。神樹様への恩返しというだけでなく、自分自身の確かな意思をもって。誰かが出来ないと言うのなら、共に乗り越えましょう。誰かが困っているのなら、手を差し伸べましょう。自分の為だけでなく、誰かの為にも“勇んで”動きましょう。そうして動けたなら……きっと』

 

 

 

 ― あなたの誇りに……誰かにとっての“勇者”になれるハズです ―

 

 

 

 

 

 

 「その格好での作業は辛くないですか? 息苦しいとか暑いとかありそうですけどねぇ」

 

 「いえいえ、これが以外と通気性が良いんですよ。それに、慣れました」

 

 7人が避難所で動いている時、楓は別の場所でスコップ片手に瓦礫や土砂等の撤去作業を手伝っていた。無論、専門の人間が必要な場所ではなく一般人でも作業可能な場所でだが。少し離れた場所では同じようにボランティアとして作業している人間の姿が見え……近くには共にスコップで泥の除去をしているいつもの格好をした大赦の人間の姿があった。

 

 その大赦の人間は楓の質問に軽い調子で答える。声からして男と分かるその人間は、安芸と共に何度か姿を見せている。その為、楓を初めとして他の7人も程度の差はあれど信用していた。

 

 楓はスコップを動かす手を止め、現場のどこかに置いてあるラジオから聴こえてくる友華の声に耳を傾ける。楓は友奈以外の6人から彼が魂を連れ去られていた時の病室での会話、神婚へと友奈を誘導したという話を報告として聞かされていた。だが、別に彼は彼女へと怒りや不信感を抱くことはなかった。

 

 「……良かったのですか? 世界を救ったのはあなた方勇者であると……勇者の存在を世に知らせなくても」

 

 「それ、分かってて言ってますよねぇ? ……良いんですよ。自分達は自分達にとって大事で、大切なナニカの為に戦ったんです。世界を救ったとか、そういうのは結果的にという話ですし……それに、余計な混乱を招きかねませんし、危険なことに巻き込まれたくもないですしねぇ」

 

 楓の言葉に、大赦の男は分かっていると頷く。世間的には、神樹が残り少ない力の全てを賭けて天の神と相討ち、世界を救ったとされていて勇者の存在など知られていない。それは勇者部全員が納得していた。

 

 たった8人の子供達が天の神、その神が生み出した化物と戦って世界を守り、最後には世界を救った。そんな勇者達を世に知らしめるとどうなるか。色々と考えられるが、一言で纏めるなら“面倒なことになる”だろう。

 

 子供を矢面に立たせていた事実は大赦の印象を更に悪くするだろう。勇者の実名が知れれば興味本位で、或いは悪意や善意で近付いてくる者も出てくるだろう。中には神樹の消滅は勇者の責任だなんだと騒ぎ立てたり、勇者の力を失っているとしてもその存在を危険視して排除に動く者だって出るかもしれない。

 

 考えられる可能性はそれこそ細かなモノを含めれば数えきれない。だからこそ、勇者の存在そのものを秘匿したままにしておくのだ。勇者達に危険が及ばぬように。大赦の保身と取られるかもしれないが、大赦は良くも悪くも影響力が大きい組織。過去も今も、そしてこれからも必要な組織である為、これ以上のイメージダウンは避けねばならなかった。

 

 「元々、誰かからの称賛とかからは無縁だったんです。今まで通りですよ」

 

 「……その称賛が欲しいと、思ったことはないのですか? 誰かに認められたいと、思ったことはないのですか?」

 

 「無いですねぇ。勇者部の皆で勝利を分かち合える。勇者部の皆で皆の頑張りを認め合える。それで良いんですよ……自分達は」

 

 「……」

 

 「称賛は、皆の“お疲れ様”。認知は、皆で誰々の何々が凄かったや良かった、なんて感想で充分。報酬は……皆と過ごす、“ありふれた日常”。これ以上のモノが必要ですかねぇ?」

 

 朗らかな笑顔を浮かべて即答する楓に、大赦の男はただ頭を下げた。そんな風に2人が会話をしていると、少し離れた場所から2人の元に向かって歩いてくる人影が2つ。

 

 「犬吠埼君、三好君。お昼のお弁当を持ってきたわよ」

 

 それは私服姿の安芸と、楓がこうして外での活動をしている時に知り合った亜麻色の長髪の小柄な少女であった。安芸の言うお弁当が入っているのであろう少し大きめのバスケットを少女が持ち、ペコリと楓達に向かってお辞儀をしてからまだ残っている瓦礫に足を取られないようにしながら歩いてくる姿を見つつ、楓はボソリと呟く。

 

 「……“三好”、ですか。自分達が揃っている前では仮面を外さず、声も出さないのはそれが理由で?」

 

 「安芸さん……」

 

 楓の言葉を聞き、男は仮面に手を当てつつ呆れたような声を出す。その態度に、楓は男の人物像に確信を抱き……自分のかつての担任がしまったと言わんばかりに口元に手を当てているのを見て、思わず苦笑い。少女は不思議そうにきょとんとしていた。

 

 「黙っていた方が良さそうですねぇ?」

 

 「お願いします……これは、私がどうにかしないといけない……いつか、自ら勇んで動かねばならない問題ですから」

 

 くすくすと笑う楓に、男は仮面を少し外して顔を見せながら、その顔に苦笑いを浮かべる。男の顔は楓の予想通りの茶髪と……どこか、夏凜に似ていた。

 

 

 

 

 

 

 「それじゃあ、姉さんの受験合格と樹の部長就任を祝って……乾杯!」

 

 【かんぱーい!】

 

 それから数日後のとある日、8人の姿は部室にあった。中ではそれぞれ持ち寄った様々なお菓子や料理をテーブルの上に広げ、オレンジやらリンゴやらのジュースや麦茶、紅茶等のペットボトルから各々が好きに注いだ紙コップを掲げて楓の音頭と共に乾杯をする。それは楓が言った通り、風の高校受験の合格と樹の次期勇者部部長就任のお祝いパーティーであった。

 

 風には“受験合格おめでとう!!”、樹には“新! 勇者部部長!!”とそれぞれ書かれた手作りのタスキが掛けられており、2人は照れ臭そうにしている。手にした飲み物を飲み、食べ物を少し摘まんだところで、風が話し始める。

 

 「いやー合格して本当に良かったわ。これも園子が勉強手伝ってくれたお陰ねぇ」

 

 「いやいや~、それほどでも~♪」

 

 「結構ドタバタしたからギリギリだったみたいだけどねぇ」

 

 「避難所のお手伝いとかもやってましたからね、風先輩」

 

 年を越す前から園子に受験勉強の手伝いをしてもらっていた風。受験前に天の神が襲来し、勉強どころではなくなったので少し疎かになってしまったものの、何とか合格することが出来た。場所は讃州中学からそう離れてはいない高校である。

 

 風の頑張りを知る7人としても、彼女の合格を聞いた時には本当に嬉しく思い、安堵の息を吐いた。あれだけ頑張って勉強し、天の神とも戦い、その後も勇者部として活動していたのだ、これで落ちていたら当人でなくとも落ち込んでいただろう。

 

 「次の部長は樹、か。納得だけど、正直ちょっと意外だったわ」

 

 「だな。あたしは楓か須美がやるんだと思ってた」

 

 「私はお兄ちゃんか夏凜さんだと思ってたんですけど……」

 

 「私はパソコン関係を担っているから、部長業まで手は出せないもの」

 

 「まあ、私は最初そのつもりだったんだけどね……樹なら問題ないでしょ」

 

 「自分は初めから樹だと思っていたからねぇ。それに、早い内に部長として経験を積んで、自分達が卒業した後も勇者部を存続させていって貰わないとねぇ」

 

 「せ、責任重大だ……が、頑張る!」

 

 「その意気だよ樹ちゃん! 私も手伝うね!」

 

 「はい!」

 

 勇者部の次期部長は樹に任命されている。夏凜と銀と樹が言ったように、風は当初の候補として楓か美森、もしくは夏凜を候補として挙げていた。が、自宅で楓が今言ったことを告げた為、考え方を変えて樹に変更したのだ。それに加え、今の樹ならしっかりこなせるだろうと姉の贔屓目無しに考えていた。

 

 最初は大変かもしれない。しかし、樹は部長としての風の背中を見続けてきたし、何よりも心強い仲間達が居る。プレッシャーこそ感じてはいるが、決して嫌々やっている訳ではない。むしろ、姉と同じように、或いはそれ以上に部長をやるんだと気合いを入れていた。

 

 わいわいと和やかに、楽しく進むパーティー。風と楓に頭を撫でられ照れる樹。その様子を見てくすくす笑う美森と樹を少し羨ましそうに見る友奈。腕を組みながら穏やかな表情で樹を見る夏凜。楓に自分の作ってきた料理を食べて美味しいと呟く楓を見てはにかむ銀。何やら風に笑顔で言い寄って頭に手刀を受ける園子。

 

 そうして、楽しい時間は過ぎていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 パーティーから数日経ったとある日の学校の帰路。楓から共に着いてきて欲しいと言われ、8人揃って歩いて病院に向かっていた。

 

 「ねぇ楓くん。病院に何しに行くの? ひょっとしてどこかケガしちゃった!? それとも病気!?」

 

 「違う違う。友華さんから自分達に会って欲しい人が居るって言われてねぇ。何でも、北海道で見つけた唯一の生き残りの女の子らしいよ」

 

 「西暦の人が生き残っていたの!?」

 

 「あの火の海をどうやって……」

 

 心配そうにする友奈だったが、楓の説明を受けて安心し、友奈を含め全員が驚愕する。美森と銀の驚きの声に、楓は自分も聞いた話なんだけどと前置きしてから話し始める。

 

 大赦の知り得た情報では、恐らくは外の世界は世界の理が天の神によって塗り替えられていた間、塗り替えられる直前の状態で時間が止まっていたらしい。その天の神が打倒され、理も元に戻ったことで止まっていた時間は再び動き出した。つまり外の世界は西暦の時代のまま保管されていたことになる。

 

 この事に気付いた大赦は、理が塗り替えられる前の世界の情報をかき集め、最も生き残りが居そうな場所へと調査隊を派遣。色々と紆余曲折はあったものの、北方の大地……北海道のとある洞窟にて1人の少女を発見したと言う。衰弱が激しく意識もなかったが、直ぐ様連れ帰り病院で治療をし、先日ようやく意識を取り戻したのだとか。

 

 「しかもその子は勇者だったらしいよ」

 

 「西暦の勇者……初代勇者の1人ということね」

 

 「それで同じ勇者だった私達が呼ばれたって訳か」

 

 「初代勇者かー、どんな人だろうね!」

 

 「優しい人だといいですね」

 

 「西暦のお話とか聞けるかな~」

 

 「いや、ようやく意識を取り戻したって……あたしらが行って大丈夫なのか……?」

 

 「友華さんが言ったなら大丈夫でしょう。私も、西暦の話が聞けるか楽しみだわ」

 

 そんな会話が繰り広げられた後、しばらくしてから8人は出会う。西暦の時代、北海道にて1人戦い抜いた黒い勇者と。300年の時を超え、奇跡のような出逢いをするその勇者の少女は今から半年後、9月頃に新たな部員として共に過ごすことになることを……この時の8人はまだ知らない。

 

 

 

 (……あれ?)

 

 

 

 その病院への道中、楓の後ろを歩いていた友奈は見た。風と話をしながら歩く彼の両肩に、見覚えのある角の生えた白い蛇と……3本の足が生えた黒いカラスの姿があったのを。その1匹と1羽は友奈の方へと向き直り……その顔に、自分と良く似た緑色の瞳の少女と青色の瞳の少女の顔が重なり、自分に向かって微笑んだ気がした。

 

 「わっ……?」

 

 不意に、風が吹いて思わず友奈は目を閉じる。再び開けた時には、そこに先程みた蛇とカラスの姿はなく……友奈の声が聞こえたのか、楓が足を止めて振り向く。

 

 「友奈、どうかしたかい?」

 

 「……ううん、なんでもないっ」

 

 友奈はそう言って笑い、少し走って楓の左隣に立ち、その手を繋いだ。そのことに楓は少し驚いた表情を浮かべたが直ぐに朗らかに笑い、その手を握り返す。

 

 「えへへ……♪」

 

 そして友奈は……幸福(しあわせ)そうに笑った。

 

 「ゆーゆズルいよ~。わたしもカエっちと手を繋ぐ~♪」

 

 園子が楓の右手を繋ぎ、嬉しそうに笑う。

 

 「もう、そのっちったら」

 

 そんな彼女達を見て、美森がくすくすと笑う。

 

 「園子は相変わらずだな」

 

 銀が懐かしそうに笑い、楓の手に目をやって少し頬を赤くする。

 

 「いやー、弟がモテモテで姉のアタシも鼻が高いわー」

 

 風が2人に挟まれている楓を見て笑いながら胸を張り。

 

 「もしかしたら、どちらかが私の義理のお姉ちゃんになるかもね」

 

 樹が姉の言葉を聞いてそんなことを笑いながら冗談混じりに言い。

 

 「そうなった時の風の顔が見物ね」

 

 夏凜がどんな彼女の姿を想像したのか楽しげに笑って。

 

 「ほら皆、あんまり遅くならない内に行くよ」

 

 【はーい!】

 

 元気良く返事をする皆の声を聞いて……楓はまた、朗らかに笑った。

 

 

 

 

 

 

 これは、勇者となって大切な人達の為、世界の為に戦う少女達と共に戦う、神様さえ魅了する魂を持った中身お爺さんな転生者がのんびりと2度目の青春を謳歌したり、少女達とほのぼのしたり、重いシリアスになったり、時に暗い勘違いを無意識に突っ込んだり……そして最後には大事な、大切な人達と共に笑って、掴んだ幸福な未来に向かって生きていく……まあ、そんな感じの物語。

 

 その中でありふれた日常の中で咲き誇る、満開の笑顔の花達に……幸福を。




原作との相違点

・最終決戦を住民は見ていない

・神樹消失後に石油等の天然資源が出るのではなく、恩恵が残り、他の土地にも広がっている

・北海道に生き残りが居る

・勇者部5ヶ条のまま

・幸福そうに笑う勇者部の人数が8人



という訳で、これにて“咲き誇る花達に幸福を”の本編は完結となります。ここまでのご愛読、誠にありがとうございました。現時点でUA270,465、お気に入り1602件、感想930件、総合評価4032ptでした。

正直なところ、番外編込みとは言えここまで話が長くなり、多くの方から評価を頂けたことに驚いています。また、1年という期間で完結出来たことにも。皆様の暖かく、面白い感想は私の力になりました。改めて御礼申し上げます。

ここで少し今回のお話の補足をば。5ヶ条ですが、あれは原作での勇者部のケンカ、時間が無い友奈との言い争いに近い会話があったからこそ生まれたものだと私は思っています。また、原作では友奈は人間としてというよりも勇者として、という意識が強く自身のことなど二の次三の次な感じでした。

が、本作の友奈は勇者として戦うよりも“自分として”戦う意識が既にありました。神婚云々の言い争いもなかった為、結果として“無理せず自分も幸せであること”という6ヶ条は生まれなかったです。ここは賛否両論ありそうですが、ご理解頂けたら幸いです。

他にも色々疑問やこの後8人はどうなるのか、と考えることはあると思いますが、そこは原作に習ってそのままにしましょうかね。終わってからも考察、想像、妄想してもらうのも楽しそうですし。私が←

さて、本編こそ完結致しましたが本作はまだまだ続きます。書けてないリクエストもありますし、何よりも楽しみにしていただいている本編の設定のゆゆゆいが残ってますからね。楓は園子と銀と同じく切札枠か、それとも最初から戦うのか。

改めましてここまでのご愛読、誠にありがとうございました。番外編、ゆゆゆいとまだまだ続く本作をこれからも宜しくお願い致します。

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)

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